(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】白金ナノ粒子混合パウダーとその製造方法および白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品とその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/00 20060101AFI20220530BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20220530BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20220530BHJP
A01N 25/12 20060101ALI20220530BHJP
C04B 35/63 20060101ALI20220530BHJP
E04F 13/14 20060101ALI20220530BHJP
E04F 15/08 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
C04B35/00
B82Y30/00
B82Y40/00
A01N25/12 101
C04B35/63 030
E04F13/14 103A
E04F15/08 A
(21)【出願番号】P 2017247097
(22)【出願日】2017-12-23
【審査請求日】2020-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】512112862
【氏名又は名称】バイオエポック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124718
【氏名又は名称】増田 建
(74)【代理人】
【識別番号】100136216
【氏名又は名称】増田 恵美
(72)【発明者】
【氏名】鍬本 功
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-131666(JP,A)
【文献】特開2011-037982(JP,A)
【文献】特開2013-176489(JP,A)
【文献】特開2011-178596(JP,A)
【文献】特開2014-083066(JP,A)
【文献】特開2011-230104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のセラミック・パウダーを用いて成形するセラミックス成形品において、
平均粒径1~10nmの白金ナノ粒子が、平均粒径0.1~10μmのセラミック・パウダー中に混合拡散された白金ナノ粒子混合パウダーが、前記所定のセラミック・パウダーに対して、重量%で0.1~20%均一に混合されており、
前記平均粒径0.1~10μmのセラミック・パウダーと前記所定のセラミック・パウダーとが同一である、白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品。
【請求項2】
前記セラミックス成形品はタイルである、請求項
1に記載の白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金ナノ粒子混合パウダーとその製造方法および白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品、例えばタイルとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックスとは、狭義には陶磁器を含む窯業製品の総称として用いられることもあるが、広義には無機物粉体等を成形・加熱処理して焼成した焼結体を指す。以下、本明細書では原則的に、焼成したセラミックス製品(半製品)等をセラミックス(ceramics)と、無機物粉体などのセラミックス製品の材料をセラミック(ceramic)と呼ぶ。
【0003】
陶器、ガラスやコンクリートなど、金属や木材、プラスチック以外の材料でつくられた人工物は、全てセラミックス製といって過言ではない。食器としての使用法が代表的だが、住宅の屋根に使う瓦や、壁などに張るタイル、トイレや洗面台も陶磁器の一種であり、これらはすべてセラミックス成形品である。また、IoT時代の主役を担うICチップやあらゆる家電製品に必須の半導体もセラミックでつくられており、日常生活のいたるところでセラミックスは使われている。
【0004】
セラミックスの材料は、金属や非金属を問わず、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物などの粉体である。このようなセラミックスの粉体(セラミック・パウダー)は、粉体のまま化粧品のファンデーションの中に混入されて用いられる場合もあり、また、顔料や染料、塗料の成分としても用いられる。
【0005】
一方、O157などの大腸菌やノロウィルスなどの感染、これら各種細菌やウィルスによる食中毒は、毎年発生して社会問題となっている。そのため、食品製造工場、飲食業などの食品業関連企業や、抵抗力が衰えた病人、子供、老人等を受け入れる病院や養老センターなどでは徹底した衛生管理が求められる。したがって、これらの企業、施設を始め、家庭でも至る所で用いられる食器やタイル等のセラミックス成形品にも、抗菌、抗ウィルス加工が求められ、抗菌、抗ウィルスコーティングなどの対処がなされている(特許文献1参照)。
【0006】
しかし、セラミックス成形品の表面に抗菌、抗ウィルス加工を施しても、表面に傷が入ったり、表面コーティングが剥がれたり効果が劣化したりして、必ずしも衛生対策は万全ではなかった。
【0007】
特許文献2は、ナノサイズの複数の白金ナノ粒子を備える歯ブラシについて開示している。この特許文献2には、抗菌、抗ウィルス、消臭作用を持つ白金ナノ粒子を、内部にまで分散させた歯ブラシの植毛部に植毛する糸状細線が開示されているが、この糸状細線はナイロン製であり、セラミックスとは製法、用途が異なる。
【0008】
【文献】特開2010-29647号公報
【文献】特開2014-83066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、長年使用して表面が傷ついたり劣化したりしても、抗菌、抗ウィルス、消臭効果が衰退することがないタイルなどのセラミックス成形品と、これを実現するための白金ナノ粒子混合パウダーとその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る白金ナノ粒子混合パウダーは、平均粒径1~10nmの白金ナノ粒子が、平均粒径0.1~10μmの粉体中に混合拡散されている。
【0011】
本発明に係る前記粉体は、セラミック・パウダーであってよい。
【0012】
本発明に係る白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品は、所定のセラミック・パウダーを用いて成形するセラミックス成形品において、上記白金ナノ粒子混合パウダーが、前記所定のセラミック・パウダーに対して、重量%で0.1~20%均一に混合されている。
【0013】
本発明に係る白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品は、上記粉体と、上記所定のセラミック・パウダーとが、同一種類の材料であるのが望ましい。
【0014】
本発明に係る白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品は、タイルであってよい。
【0015】
本発明に係る白金ナノ粒子混合パウダーの製造方法は、
(1)平均粒径が0.1~10μmの粉体を準備するステップと、
(2)平均粒径が1~10nmの白金ナノ粒子を含むコロイド溶液(以下、「白金ナノ粒子溶液」という。)を準備するステップと、
(3)前記粉体を前記白金ナノ粒子溶液に均一に混合させてスラリー化した白金ナノ粒子混合スラリーを生成するステップと、
(4)前記白金ナノ粒子混合スラリーを乾燥させるステップと、
を含む。
【0016】
本発明に係る白金ナノ粒子混合パウダーの製造方法において、上記前記粉体を準備するステップは、粉体をセラミック・パウダーとしてよい。
【0017】
本発明に係る白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品の製造方法は、所定のセラミック・パウダーを成形させたセラミックス成形品の製造方法において、
(11)所定のセラミック・パウダーを準備するステップと、
(12)上記白金ナノ粒子混合パウダーを準備するステップと、
(13)前記所定のセラミック・パウダーに前記白金ナノ粒子混合パウダーを均一に混合させて白金ナノ粒子を含む原料パウダーを調製するステップと、
(14)調製した前記白金ナノ粒子を含む原料パウダーを成形するステップと、
を含む。
【0018】
本発明に係る白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品の製造方法において、調製した前記白金ナノ粒子を含む原料パウダーを成形するステップ(14)は、前記白金ナノ粒子を含む原料パウダーをタイルの形状に成形させてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品は、これを形成する材料の表面だけでなく、その内部まで、略均一に白金ナノ粒子が拡散されている。そのため、長年使用して表面が傷ついたり劣化したりしても、抗菌、抗ウィルス効果、消臭効果等が減退せず、白金ナノ粒子が有するこれらの効果を永続させることができる。
【0020】
このような本発明の白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品は、本発明に係る白金ナノ粒子混合パウダーを、そのセラミックス成形品の材料となる所定のセラミック・パウダーに少量混合させることにより、公知の方法で加熱・焼成して容易に製造することができる。白金ナノ粒子は高価であっても、これを含む白金ナノ粒子混合パウダーは、上記所定のセラミック・パウダーに少量(例えば1%)混合させるだけで良いので、比較的安価に白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品を製造することができる。
【0021】
また、本発明に係る白金ナノ粒子混合パウダーは、平均粒径0.1~10μm程度の公知の粉体と白金ナノ粒子溶液とを均一に混合させることにより、容易に製造することができる。したがって、本発明に係る白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品は、従来のセラミックス成形品の所定のセラミック・パウダーに、容易に製造可能な白金ナノ粒子混合パウダーを少量混合するだけで製造でき、白金ナノ粒子が有する抗菌、抗ウィルス効果、消臭効果等の優れた効果を発揮することができる。
【0022】
この白金ナノ粒子混合パウダーの製造において、白金ナノ粒子溶液と混合させる粉体の種類は、白金ナノ粒子の特質を変容させない範囲で特に限定されず、これらを混合させた粉体と混合させるセラミック・パウダーの種類も特に限定されない。したがって、所望のセラミックス成形品の材料に適した白金ナノ粒子混合パウダーを選択可能である。すなわち、本発明に係る白金ナノ粒子混合パウダーは、多様な種類の材料から成るセラミックス成形品に対応することができ、抗菌、抗ウィルス等の白金ナノ粒子特有の効果をセラミックス成形品に発現させることができる。
【0023】
さらに、本発明に係る白金ナノ粒子混合パウダーは、上記のように白金ナノ粒子溶液と混合させる粉体の種類を選択することにより、白金ナノ粒子混合パウダー自身を、化粧品のファンデーションや、顔料や染料、塗料の成分として用いることができ、抗菌、抗ウィルス等の白金ナノ粒子特有の効果を発現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品の斜視図。
【
図2】(a)無加工布の、黄色ブドウ球菌の増殖試験の結果図、(b)本発明に係る白金ナノ粒子を含むタイルの、黄色ブドウ球菌の増殖試験の結果図、(c)本発明に係る白金ナノ粒子を含むタイルの、黄色ブドウ球菌の増殖試験の結果図。
【
図3】(a)本発明に係る白金ナノ粒子混合パウダーの製造方法を表すフロー図、(b)本発明に係る白金ナノ粒子を含むタイルの製造方法を表すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明に係る白金ナノ粒子とその製造方法およびこれを用いたセラミックス成形品の実施形態について説明する。なお、以下各図面を通して同一の構成要素には同一の符号を使用するものとする。
【0026】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明は以下の記載に何ら限定して解釈されるものではない。
1.白金ナノ粒子混合パウダーとその製造方法
(1-1)白金ナノ粒子混合パウダー
【0027】
本発明に係る白金ナノ粒子混合パウダーは、平均粒径1~10nmの白金ナノ粒子が、平均粒径0.1~10μmの粉体中に混合拡散された粉体である。
【0028】
本明細書において「白金ナノ粒子」とは、平均粒径が1~10nmの白金のコロイド粒子をいい、これを溶液中に含む「白金ナノ粒子溶液」を、以下に詳述する実施例1のようにして調製することができる。この白金ナノ粒子溶液は、「白金ナノ粒子」自体の性能と同様に、様々なウィルス及び細菌に対する極めて高い殺傷能力を長期間に亘って安定的に持続することができ、「抗ウィルス」、「抗菌」及び「消臭」などの性能を持つ。この白金ナノ粒子溶液の上記性能(「抗ウィルス性能」、「抗菌性能」及び「消臭性能」)は、信頼し得る試験測定機関に於ける厳密な測定結果により既に実証された公知事実である。
【0029】
また、平均粒径0.1~10μmの粉体は、例えば平均粒径0.1~10μmのセラミック・パウダーであるが、「粉体」の材料はセラミックに限定されず、種々の金属や有機化合物など、自由に選択することができる。ただし、混合する平均粒径が1~10nmの白金ナノ粒子を表面に付着させ易い材料が望ましい。
【0030】
なお、本明細書においては、セラミックス成形品(ceramics)を、陶磁器を含む窯業製品の総称として用い、無機物を加熱処理し焼き固めて成形した焼結体を指すものとし、セラミック・パウダーはこのセラミックス成形品を成形するための材料、すなわち、金属や非金属を問わず、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物などの無機固体材料粉体の総称として用いる。
【0031】
以下、先ず「白金ナノ粒子溶液」の製造方法を説明し、これを用いて白金ナノ粒子混合パウダーを製造する方法について、実施例を挙げて説明する。
(1-2)白金ナノ粒子溶液の製造方法
[白金ナノ粒子溶液]
【0032】
下記ステップ(2)における白金ナノ粒子溶液を、以下の実施例1のようにして製造した。
【実施例1】
【0033】
(工程)白金ナノ粒子溶液の調製
0.208gの塩化白金酸カリウム(K2PtCl4)を50mLの純水に溶解して0.01mol/L(Pt(0)として0.050g/L)の塩化白金酸カリウム水溶液を調製した。また、別途、0.129gのクエン酸ナトリウムを50mLの純水に溶解して0.01mol/L(0.066g/mL)のクエン酸ナトリウム水溶液を、0.881gのアスコルビン酸を50mLの純水に溶解して0.1mol/L(0.452g/L)のアスコルビン酸水溶液をそれぞれ調製した。上記の0.01mol/L塩化白金酸カリウム水溶液50mLを1800mLの純水に加えた後、さらに0.01mol/Lクエン酸ナトリウム水溶液50mLと0.1mol/Lアスコルビン酸水溶液50mLをそれぞれ加え、約5分間強く撹拌することで、平均粒径が4nmの白金のコロイド状粒子(以下「白金ナノ粒子」と言う。)を含む溶液、すなわち下記ステップ(2)の白金ナノ粒子溶液を得た。なお、平均粒径の測定は溶液を分散・乾固させて行った電界放出型走査電子顕微鏡測定による。
【0034】
上述のように、「白金ナノ粒子溶液」とは、平均粒径が1~10nmのナノサイズ(例えば4nm) の白金の粒子の粉を1リットルの水(精製水又は純水等)で溶解して成る水溶液である。この様な「白金ナノ粒子溶液」は取引市場で販売されており、入手可能である。
(1-3)白金ナノ粒子混合パウダーの製造方法
【0035】
上述の白金ナノ粒子溶液を用いて、本発明に係る白金ナノ粒子混合パウダーを以下のようにして製造することができる(
図3(a)参照)。
【0036】
本発明に係る白金ナノ粒子混合パウダーの製造方法は、
(1)平均粒径が0.1~10μmの粉体を準備するステップと、
(2)平均粒径が1~10nmの白金ナノ粒子を含むコロイド溶液(白金ナノ粒子溶液)を準備するステップと、
(3)前記粉体を前記白金ナノ粒子溶液に均一に混合させてスラリー化した白金ナノ粒子混合スラリーを生成するステップと、
(4)前記白金ナノ粒子混合スラリーを乾燥させるステップと、
を含む。
【0037】
このような本発明に係る白金ナノ粒子混合パウダーの製造方法において、上記(1)の粉体を準備するステップは、粉体を、例えば平均粒径0.1~10μmのセラミック・パウダーとしてよいが、上述のように粉体の材料はセラミックに限定されず、種々の金属や有機化合物など、自由に選択することができる。ただし、混合する平均粒径が1~10nmの白金ナノ粒子を表面に付着させ易い材料が良く、表面積を大きくして白金ナノ粒子の付着性を高めると共にステップ(3)で混合させる粉体中に均一に拡散されやすいように、平均粒径が0.1~10μmであることが好ましい。
【実施例2】
【0038】
本実施例2では、粉体として平均粒径が4~5μmの炭酸カルシウム製及び酸化アルミナ製のセラミック・パウダーを用い、白金ナノ粒子溶液は平均粒径が4nmの白金ナノ粒子を含むコロイド溶液を用いた。この白金ナノ粒子溶液を、準備したセラミック・パウダーに混合させ、泥状になるまでセラミック・パウダーを加えつつ攪拌し、スラリー化した白金ナノ粒子混合セラミック・スラリーを生成した。
【0039】
上記炭酸カルシウム製又は酸化アルミナ製の白金ナノ粒子混合セラミック・パウダーは、上記ステップ(1)~(4)により製造される。すなわち、白金ナノ粒子混合パウダー(白金ナノ粒子混合セラミック・パウダー)の製造方法は、
(1)平均粒径が4~5μmの炭酸カルシウム製又は酸化アルミナ製のセラミック・パウダーを準備するステップと、
(2)平均粒径が4nmの白金ナノ粒子溶液を準備するステップと、
(3)前記セラミック・パウダーを前記白金ナノ粒子溶液に均一に混合させてスラリー化した白金ナノ粒子混合スラリー(白金ナノ粒子混合セラミック・スラリー)を生成するステップと、
(4)前記白金ナノ粒子混合スラリー(白金ナノ粒子混合セラミック・スラリー)を乾燥させるステップと、を含む。
【0040】
本実施例2においては、炭酸カルシウム製又は酸化アルミナ製のセラミック・パウダー1に対して4の体積比で白金ナノ粒子溶液を混合させた。生成した白金ナノ粒子混合セラミック・スラリーを室温で自然乾燥させて、炭酸カルシウム製と酸化アルミナ製の2種類の白金ナノ粒子混合セラミック・パウダーを得た。
2.白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品
(2-1)白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品
【0041】
一般に、セラミックス成形品は以下のような工程を経て製造する。すなわち、
(101)ガラスや陶磁器などの製品に合わせて原材料を混ぜ合わせる原料調整工程
(102)調合した原料を使って製品を成形する工程
(103)成形した製品を焼成する工程
(104)研磨、切削等の仕上げ加工工程
【0042】
本発明に係る白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品は、上記(101)の原材料(所定のセラミック・パウダー)に、白金ナノ粒子混合パウダーを混合して白金ナノ粒子を含む原料パウダーを調製し、以後の(102)~(104)の工程を行って製造する。白金ナノ粒子混合パウダーは、実施例2で製造した炭酸カルシウム製や酸化アルミナ製のような白金ナノ粒子混合パウダーであり、本実施形態においては上記所定のセラミック・パウダーに対して、重量%で0.1~20%均一に混合して白金ナノ粒子を含む原料パウダーを調製する。
【0043】
本発明に係る白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品において、白金ナノ粒子に混合する上記粉体(セラミック・パウダー)と、上記所定のセラミック・パウダーとが、同一種類の材料であるのが望ましい。
(2-2)白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品の製造方法
【0044】
上述のような本発明に係る白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品の製造方法は、所定のセラミック・パウダーを成形させたセラミックス成形品の製造方法において、
(11)所定のセラミック・パウダーを準備するステップと、
(12)上記白金ナノ粒子混合パウダーを準備するステップと、
(13)前記所定のセラミック・パウダーに前記白金ナノ粒子混合パウダーを均一に混合させて白金ナノ粒子を含む原料パウダーを調製するステップと、
(14)調製した前記白金ナノ粒子を含む原料パウダーを成形するステップと、
を含む。さらに、
(15)成形した前記白金ナノ粒子を含む原料パウダーを焼成するステップと、
を含んでもよい(
図3(b)参照)。
【0045】
ステップ(11)において、所定のセラミック・パウダーは、タイルなどセラミックス成形品の材料となる、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物などの粉体であり、製造目的となるセラミックス成形品によって適宜選択することができる。
【0046】
ステップ(14)において、射出成形、押出し成形などの公知の成形方法を用いて、上記白金ナノ粒子を含む原料パウダーを金型により成形させる。適切な金型を選択して上記白金ナノ粒子を含む原料パウダーを成形させ、公知の方法で冷却して、白金ナノ粒子を含む所望の形状のセラミックス成形品を得ることができる。すなわち、調製した白金ナノ粒子を含む原料パウダーを、タイルの他、金型を変えることによって、あらゆる当該金型の形状に成形させることができる。
3.白金ナノ粒子を含むタイル
【0047】
本発明に係る白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品は、タイルであってよい。 一般的なタイルの製造方法は、以下のような乾式製法と湿式製法とがある。
【0048】
(乾式製法)
(201)粉末にした原料(坏土)を、金型を装着した高圧プレス機に充填し、成形する。
(202)その後、泥しょう状に細摩した釉薬を、スプレーがけなどの方法で、乾燥させたタイルの表面に施す。
(203)そして、ローラーハースキルンで、タイルを重ねずに平置きで30分~2時間焼成する。
【0049】
(湿式製法)
(301)原料を土練機にかけ含水量が均一になるよう水を加えながら十分に練り、含水率が20~25%に調整された土のかたまりをつくる。
(302)その土のかたまりを真空押出成形機で板状に押し出し、押し出されたものをピアノ線で所定のサイズに切断して成形する。
(303)成形された生素地を台車に積み、70~80℃の乾燥炉で、3~5日かけて完全に乾燥させる。
(304)乾燥させたタイルを台車に積み、トンネル窯をゆっくりと移動させながら20~40時間かけて焼成する。
【0050】
本発明に係る白金ナノ粒子を含むタイルは、上記乾式又は湿式のいずれの製法を用いてもよいが、上記ステップ(11)~ステップ(15)から成る本発明に係る白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品の製造方法を用いて製造することができる。すなわち、成形するステップ(14)において、原料パウダーを所望のタイルの形状に成形することにより、本発明の白金ナノ粒子を含むタイルを得ることができる。
【実施例3】
【0051】
実施例2で製造した炭酸カルシウム製と酸化アルミナ製の2種類の白金ナノ粒子混合パウダーを用いて、上記ステップ(11)~ステップ(15)により、5cm×5cm、厚さ1cm程度の炭酸カルシウム製および酸化アルミナ製の2種類のタイル10を得た。
【0052】
図1に示す模式図は、本実施例4に係る白金ナノ粒子を含むタイル(セラミックス成形品)10の斜視図である。タイル10の表面及び内部にはドットが描かれているが、このドットは白金ナノ粒子を表すものである。
4.抗菌試験
【実施例4】
【0053】
実施例3で得た炭酸カルシウム製と酸化アルミナ製の2種類のセラミック製タイル10のセラミックス片を用いて、白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品の抗菌試験を行った。この抗菌性能の試験機関は、「財団法人日本紡績検査協会」である。供資菌は黄色ブドウ球菌とし、試験方法は、「JIS Z 2801」を用いた。「黄色ブドウ球菌」に対する抗菌性能試験の結果を、
図2(a)~(c)に示す。
【0054】
図2(a)において、増殖値の算出法は「logMb-logMa」であり、以下の試験成立条件は、増殖値≧1.0である。そして、
図2(b)、(c)において、殺菌活性値の算出方法は、殺菌活性値=logMa-logMc、静菌活性値=(logMb-logMa)-(logMc-logM
0)である。
【0055】
ここで、「増殖値」とは、白金ナノ粒子を有していない標準綿布において、植菌後18時間内に生菌が増殖した対数値である。
【0056】
また、「殺菌活性値」は、植え付けた菌を一定時間後にどの程度減少させたかを示す指標で あり、対数表示で示される。即ち、「殺菌活性値」の評価は、
1)「殺菌活性値」が負の場合・・・「与えた菌が増加している」
2)「殺菌活性値」が0の場合・・・「与えた菌の増減はゼロ」
3)「殺菌活性値」が正の場合・・・「与えた菌が減少している」
4)「殺菌活性値」が1の場合・・・「与えた菌が十分の一に減少している」
5)「殺菌活性値」が3の場合・・・「与えた菌が千分の一に減少している」
となる。
【0057】
また、「静菌活性値」は、抗菌処理をしていない試料と比較して、処理した試料がどの程度菌の増殖を抑制したかを示す数値であり、抗菌防臭効果を判断するための数値である 。JIS規格では、「抗菌防臭効果あり。」の評価の基準は、「静菌活性値」が2.0以 上の場合である。
【0058】
従って、
図2(b)の試験結果より、白金ナノ粒子を含む炭酸カルシウム製タイルの「殺菌活性値」は3.2以上で、その「静菌活性値」は2.7以上であることから、白金ナノ粒子を含む炭酸カルシウム製タイル10は、黄色ブドウ球菌に対して 十分に高い抗菌効果を有していることが分かる。
【0059】
また、
図2(c)の試験結果より、白金ナノ粒子を含む酸化アルミナ製タイルの「殺菌活性値」は2.6で、その「静菌活性値」は2.9であることから、白金ナノ粒子を含む酸化アルミナ製タイルに関しても、黄色ブドウ球菌に対して十分に高い抗菌効果を有しているとの結論が得られる。
【0060】
以上より、本願発明者は、高いレベルでの抗菌性・消臭性・抗ウィルス性を備えた白金ナノ粒子混合パウダーおよび白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品(タイル)を開発・実現化することが出来た。
【0061】
以上、実施形態、実施例を用いて説明したが、本発明に係る白金ナノ粒子混合パウダーと白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品、白金ナノ粒子を含むタイル及びこれらの製造方法は、上記実施形態等に限定されるものではない。
【0062】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る白金ナノ粒子混合パウダーは、極めて広範な種類の材料から成るセラミックス成形品に利用することができ、その成形品である白金ナノ粒子を含むタイルなどの白金ナノ粒子を含むセラミックス成形品は、抗菌、抗ウィルス、抗臭効果等を必要とする極めて広範な日用品、電気・電子部品及び機器、医療器具などに用いることができる。
【符号の説明】
【0064】
10: 白金ナノ粒子混合パウダーを用いて成形したタイル(セラミックス成形品)