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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】二重反転式羽根車及び流体機械
(51)【国際特許分類】
   F03B 3/12 20060101AFI20220530BHJP
   F04D 3/02 20060101ALI20220530BHJP
   F04D 29/32 20060101ALI20220530BHJP
   F03B 7/00 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
F03B3/12
F04D3/02 Z
F04D29/32 Z
F03B7/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018028556
(22)【出願日】2018-02-21
(65)【公開番号】P2019143535
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】重光 亨
(72)【発明者】
【氏名】細谷 拓司
(72)【発明者】
【氏名】川口 裕輝
(72)【発明者】
【氏名】池淵 智史
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-173596(JP,A)
【文献】実公昭41-003569(JP,Y1)
【文献】特開2001-352714(JP,A)
【文献】米国特許第05961282(US,A)
【文献】特公昭31-002004(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 1/00-11/08
F04D 1/00-13/16;17/00-19/02;21/00-25/16;29/00-35/00
F03D 1/00-80/80
F01D 1/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸に配置される第1及び第2の各羽根車よりなり、
前記第1の羽根車は、軸方向に並ぶ軸流式羽根車と斜流式羽根車とを有し、
前記第2の羽根車は、前記第1の羽根車の回転方向と逆方向へ回転する遠心式羽根車であって、前記斜流式羽根車と連なる位置に配置され、
前記第1の羽根車は、ハブと、前記ハブの外周面に前記ハブの軸方向に対して螺旋状に設けられた複数枚の羽根とを備え
前記ハブは、
前記軸流式羽根車を構成し、全長にわたり径が一定の円筒状部と、
前記斜流式羽根車を構成し、径が端部に向けて小さくなる縮径部とを備える、二重反転式羽根車。
【請求項2】
前記第1の羽根車の各羽根は、前記第2の羽根車の外周に突出する請求項に記載の二重反転式羽根車。
【請求項3】
請求項1または2に記載の二重反転式羽根車と、
前記二重反転式羽根車を収容する筒状のケーシングとを備える流体機械。
【請求項4】
前記ケーシング内に固定され、前記第1、第2の各羽根車を前記ケーシング内に回転可能に軸支する筒状体をさらに備える請求項に記載の流体機械。
【請求項5】
前記筒状体内に収容される回転電機をさらに備え、
前記回転電機の回転軸が前記第1、第2の各羽根車の軸と同軸に連結される請求項に記載の流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸に配置される第1、第2の各羽根車からなる二重反転式羽根車及び二重反転式羽根を有する流体機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小水力発電は再生可能エネルギーの一つとして位置付けられており、地球温暖化問題への対応やエネルギー供給システムの多様化のために導入が進められている。小水力発電の中でも、出力が100kWから1000kW程度の比較的規模の大きい発電設備は普及が進みつつあるが、さらなる小水力発電の拡大に向けて、出力が0.1kWから1kW程度の小規模なピコ水力発電の開発が要望されている。ピコ水力発電は、農業用水路や簡易水道、小規模な河川など、あまり利用が進んでいない水資源を有効利用するものであり、水車を設置する土台や導水管を引くなどの大掛かりな工事を行う必要がなく、設営が簡単であり自然環境に与える影響が少ないという利点がある。
【0003】
ピコ水力発電用の水車には、農業用水路や簡易水道へ持ち運んで簡単に設置するためにポータビリティ性が求められており、小型である必要がある。出願人は、非特許文献1において、ピコ水力発電用の小型水車を提案している。非特許文献1の水車は、いわゆる二重反転式であり、前段羽根車と後段羽根車とが同軸上に配置されている。各羽根車は軸流式であり、羽根は、流体(水)が前から後に向けて流れたときに、互いに逆方向に回転するように取り付けられている。
【0004】
このような二重反転式の水車は、羽根車を2つ用いて各羽根車で流体エネルギーを回収しているため、1つの羽根車で同じ流体エネルギーを回収する場合に比べて羽根車の直径が小さくてすみ、小型化が可能である。また、前段羽根車出口での流体エネルギーの旋回速度成分を後段羽根車で回収し、後段羽根車出口での流体エネルギーの旋回速度成分を無くすことができるため、速度の二乗に比例する摩擦損失が小さくなり、回収可能な流体エネルギーが大きく高効率となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】重光亨他著、「二重反転形小型ハイドロタービンのスポーク形状が性能と内部流れに及ぼす影響」、ターボ機械、第44巻第2号、2016年。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1の二重反転式の水車において、さらに回収可能なエネルギーを大きくしようとすると、羽根車に流す流体の流量を増加させて水車に入力する入力エネルギーを大きくすればよい。しかし、流体の流量を増加させると、効率の悪化や羽根車の破損が生じる可能性がある。これを防ぐためには羽根車の径を大きくして水車を大型化する必要があるが、大型化するとピコ水力発電用の水車に求められるポータビリティ性が失われてしまうため、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記した課題に着目してなされたものであり、小型で回収可能なエネルギーが大きい二重反転式羽根車及び流体機械を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による二重反転式羽根車は、同軸に配置される第1及び第2の各羽根車よりなり、前記第1の羽根車は、軸方向に並ぶ軸流式羽根車と斜流式羽根車とを有し、前記第2の羽根車は、前記第1の羽根車の回転方向と逆方向へ回転する遠心式羽根車であって、前記斜流式羽根車と連なる位置に配置される。
【0009】
本発明の二重反転式羽根車を水車や風車用の羽根車として用いる場合、水や空気などの流体が第1の羽根車に向けて入力されると、第1の羽根車は流体からエネルギーを得て回転する。流体は第1の羽根車から出て第2の羽根車に流れ込み、第2の羽根車は流体からエネルギーを得て第1の羽根車とは逆方向に回転し、流体は第2の羽根車から流出する。第1の羽根車、第2の羽根車に接続される発電機等のエネルギー取出手段によりエネルギーが取り出される。
【0010】
遠心式羽根車は流体の入口と出口の外径が異なり、入口の周速度と出口の周速度に差が生じることで遠心力にも差が生じるため、その遠心力の差がエネルギーとなる。一方、軸流式羽根車は、流体の入口と出口の外径が同じなので入口の周速度と出口の周速度に差がなく、遠心力に差が生じないので、遠心力をエネルギーに変換することが出来ない。このため、各羽根車の直径、流体の流量、回転速度が同じ場合には、遠心式羽根車は軸流式羽根車と比較して、高い負荷を掛ける、すなわち遠心式羽根車に入力する流体エネルギーを大きくすることが可能である。斜流式羽根車は、遠心式羽根車と軸流式羽根車との中間的な特性を有する。なお、「負荷を掛ける」とは、入力エネルギーを与えることであり、流量が一定であれば、負荷は、羽根車がポンプに用いられる場合には揚程として表わされ、水車に用いられる場合には落差として表わされ、送風機に用いられる場合には圧力として表わされるものである。
【0011】
本発明においては、第2の羽根車は遠心式羽根車であるため、従来技術の同じ直径の軸流式羽根車と比較して、第2の羽根車に掛ける負荷の大きさをより大きくすることができ、結果として小型を保ったまま第2の羽根車が回収できる流体エネルギーを大きくすることができる。
【0012】
また、二重反転式羽根車においては、摩擦損失を低減して高効率とするには、第1、第2の各羽根車に掛ける負荷の大きさを略均一にする必要があることが知られている。本発明の二重反転式羽根車においては、第2の羽根車に遠心式羽根車を用いるため、第1の羽根車を遠心式羽根車とほぼ等しい大きさの負荷を掛けることが可能なものとする必要がある。
【0013】
各羽根車の直径、流体の流量、回転速度が同じ場合には、軸流式羽根車に掛けることが可能な負荷の大きさは、遠心式羽根車と比較して小さい。また、斜流式羽根車に掛けることが可能な負荷の大きさは、軸流式羽根車よりも大きく遠心式羽根車よりも小さい中程度の大きさである。また、第1の羽根車に掛けることが可能な負荷の大きさは、軸流式羽根車に掛けることが可能な負荷の大きさと斜流式羽根車に掛けることが可能な負荷の大きさとの和である。
【0014】
このため、本発明においては、第1の羽根車を軸流式と斜流式を組み合わせた複合式の羽根車とすることで、第1の羽根車に掛けることが可能な負荷の大きさを、第2の羽根車に掛けることが可能な負荷の大きさとほぼ等しくしている。従って、第2の羽根車出口での摩擦損失を低減することができ、高効率となる。
【0015】
さらに、第1の羽根車に掛ける負荷の大きさを大きくすることが可能となるため、従来技術の小型の軸流式羽根車と同じ直径である場合であっても、結果として第1の羽根車が回収可能な流体エネルギーを大きくすることができる。
【0016】
このように、本発明によれば、第1、第2の各羽根車のそれぞれにおいて回収可能な流体エネルギーが多くなるため、小型を保ちつつ回収可能なエネルギーを大きくすることができる。
【0017】
また、本発明の二重反転式羽根車をポンプや送風機用の羽根車として用いることもできる。この場合、流体の流れは水車や風車用の羽根車の場合と逆になり、第2の羽根車に接続された電動機などのエネルギー入力手段により第2の羽根車を水車や風車用の第2の羽根車の回転方向と逆方向に回転させることで、液体や気体などの流体は第2の羽根車からエネルギーを得て第1の羽根車に向けて流れる。第1の羽根車に接続された電動機などのエネルギー入力手段により、第1の羽根車を第2の羽根車と逆方向に回転させることにより、流体は第1の羽根車からエネルギーを得て第1の羽根車から流出する。これにより、流出する流体に高い圧力や高い揚程など高いエネルギーを与えることができる。
【0018】
好ましい実施形態によれば、前記第1の羽根車は、ハブと、前記ハブの外周面に前記ハブの軸方向に対して螺旋状に設けられた複数枚の羽根とを備え、前記ハブは、前記軸流式羽根車を構成し、全長にわたり径が一定の円筒状部と、前記斜流式羽根車を構成し径が端部に向けて小さくなる縮径部とを備える。
【0019】
好ましい実施形態によれば、前記第1の羽根車の各羽根は、第2の羽根車の外周に突出する。
【0020】
本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の二重反転式羽根車と、前記二重反転式羽根車を収容する筒状のケーシングとを備える流体機械である。
【0021】
上記の流体機械は、前記ケーシング内に固定され、前記第1、第2の各羽根車を前記ケーシング内に回転可能に軸支する筒状体をさらに備えていてもよい。
【0022】
好ましい実施形態によれば、前記筒状体内に収容される回転電機をさらに備え、前記回転電機の回転軸が前記第1、第2の各羽根車の軸と同軸に連結されている。
【0023】
流体機械は、例えば、水車、風車、ポンプ、送風機として用いられる。
流体機械を水車として用いる場合、流体は水または液体であり、流体が第1の羽根車に向けて入力されると、第1の羽根車は流体からエネルギーを得て回転する。第1の羽根車には発電機が接続されており、第1の羽根車により発電機の回転子が回転して発電する。流体は第1の羽根車から出て第2の羽根車に流れ込み、第2の羽根車は流体からエネルギーを得て第1の羽根車とは逆方向に回転する。第2の羽根車には発電機が接続されており、第2の羽根車により発電機の回転子が回転して発電する。流体は第2の羽根車から流出する。流体機械を風車として用いる場合、流体は空気または気体であり、水車の場合と同様に第1の羽根車、第2の羽根車が流体からエネルギーを得て回転して発電を行う。
【0024】
流体機械をポンプとして用いる場合、第2の羽根車に接続された電動機により第2の羽根車を回転させることで、流体は第2の羽根車からエネルギーを得て第1の羽根車に向けて流れる。流体は水又は液体である。第1の羽根車は電動機と接続されており、電動機が第1の羽根車を第2の羽根車と逆方向に回転させることにより、流体は第1の羽根車からエネルギーを得て第1の羽根車から流出する。流体機械を送風機として用いる場合、流体は空気または気体であり、ポンプの場合と同様に流体が第1の羽根車、第2の羽根車からエネルギーを得て送風がなされる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、小型で回収可能なエネルギーが大きい二重反転式羽根車及び流体機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る流体機械の断面図である。
図2】第1の羽根車の(A)は出口側から見た正面図、(B)は斜視図である。
図3】第2の羽根車の(A)は出口側から見た正面図、(B)は斜視図である。
図4】流体機械の子午面図である。
図5】(A)は第1の羽根車の子午面図、(B)は第2の羽根車の子午面図である。
図6】流体機械の他の例を示す子午面図である。
図7】流体機械の他の例を示す子午面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。以下の説明では、流体機械を水車10として用いた例を示し、水車10に流体が入力される側を入口側又は上流側と言い、流体が出力される側を出口側又は下流側と言う。流体である水は、第1の羽根車20から第2の羽根車30に向かう方向(図1において左から右に向かう方向であり、矢印Aの向き)に流れ込む。また、図面において、発電機64、74、84、85は簡略化して示している。
【0028】
図1図5は、本発明の一実施形態の二重反転式羽根車40及び水車10を示す。図1に示すように、水車10は、二重反転式羽根車40と、内部に二重反転式羽根車40を収容する筒状のケーシング50と、ケーシング50内に固定され、第1、第2の各羽根車20、30と同軸に配置されて第1、第2の各羽根車20、30を回転可能に軸支する第1、第2の各筒状体60、70とを備えている。なお、図1において、ケーシング50は断面で示している。
【0029】
二重反転式羽根車40は、同軸に配置される第1、第2の各羽根車20、30よりなり、第1の羽根車20は、軸方向に並ぶ軸流式羽根車21と斜流式羽根車22とを有し、第2の羽根車30は、第1の羽根車20の回転方向と逆方向へ回転する遠心式羽根車であって、斜流式羽根車22と連なる位置に配置される。
【0030】
図2図4に示すように、第1の羽根車20は、ハブ23と、ハブ23の外周面にハブ23の軸方向に対して螺旋状に設けられた複数枚の羽根24とを備えている。ハブ23は、全長にわたり径が一定の円筒状部25と、円筒状部25に連続し径が端部に向けて小さくなる縮径部26とを備えており、入口側に円筒状部25、出口側に縮径部26が配置されている。羽根24は、ハブ23の外周面に周方向に等間隔に配置されており、本実施形態では、上流側から流れる流体による力を受け、入口側から見て反時計回り(図1の矢印Bの向き)に第1の羽根車20が回転するように羽根24が設けられている。羽根24は、ハブ23の出口側端から突出する突出端部27を有しており、突出端部27は第2の羽根車30の外周に被さっている。ハブ23の円筒状部25と羽根24の円筒状部25に設けられた部分とにより軸流式羽根車21が構成され、ハブ23の縮径部26、羽根24の縮径部26に設けられた部分及び突出端部27により斜流式羽根車22が構成される。
【0031】
本実施形態では、羽根24を6枚備え、第1の羽根車20の入口側の直径(「入口チップ径」とも言う)DF1を90mm、ハブ23の入口側の直径(「入口ハブ径」とも言う)DF2を60mm、ハブ23の出口側の直径(「出口外径」とも言う)DF3を54mm、ハブ23の軸方向の長さBFを51mm、円筒状部25の軸方向の長さBF1を41mm、縮径部26の軸方向の長さBF2を10mm、羽根24の突出端部27の突出長さ(「出口羽根高さ」とも言う)BF3を8.7mmとしているが、これに限定されるものではない。
【0032】
第2の羽根車30は、円板状の主板32と、主板32の一方の面上の中央部に設けられたハブ33と、ハブ33の周囲に、周方向に等間隔に複数枚立設された羽根34とを備えている。本実施形態では、上流側から流れる流体による力を受け、入口側から見て時計回り(図1の矢印Bと逆向き)に第2の羽根車30が回転するように羽根34が設けられている。各羽根34は図4図5(B)の子午面図において略L字形状であり、L字の一片34aが主板32と連結し、他片34bがハブ33と連結している。第2の羽根車30は、主板32が入口側、ハブ33が出口側、羽根34のL字の一片34aが入口側、他片34bが出口側となるように配置されており、第2の羽根車30の直径DR1は、第1の羽根車20のハブ23の出口側の直径DF3よりも小さい。第1の羽根車20の羽根24の突出端部27は、羽根34の一片34aの軸方向の長さBR2の全長に被さるか、途中まで被さっている。
【0033】
本実施形態では、羽根34を7枚備え、第2の羽根車30の直径、すなわち主板32の直径(「入力チップ径」とも言う)DR1を50mm、ハブ33の出口側の直径(「出口ハブ径」とも言う)DR2を14mm、第2の羽根車30の出口側の直径(「出口外径」とも言う)DR3を34mm、第2の羽根車30の軸方向の全長BRを20mm、羽根34の一片34aの軸方向の長さ(「入口羽根高さ」とも言う)BR2を8.7mm、主板32の厚みBR1を1mmとしているが、これに限定されるものではない。
【0034】
第1、第2の各羽根車20、30の羽根24、34の形状、羽根24、34の各ハブ23、33への取り付け角度、上記の各種寸法は、第1、第2の各羽根車20、30に掛ける負荷がほぼ等しくなり、高効率化となるように適宜設定される。
【0035】
第1の筒状体60は、第1の羽根車20の上流側に配置されている。第1の筒状体60は、円筒状部61の入口側に先端が先細り形状のガイド部62が形成されたものである。本実施形態においては、ガイド部62は円錐形状であって先端が平面形状のものであるが、先端が尖っていてもよく、丸みを帯びていてもよい。第1の筒状体60の円筒状部61の直径は、第1の羽根車20のハブ23の入口側の直径DF2とほぼ等しい。第1の筒状体60は、第1の筒状体60の外周面に周方向に等間隔を空けて設けられたスポーク63により、ケーシング50の内壁に固定されている。第1の筒状体60内には第1の羽根車20と同軸に発電機64が収容されており、発電機64の回転軸に第1の羽根車20のハブ23に設けられた軸23aがカップリング等により連結されている。これにより、第1の羽根車20はケーシング50内に回転可能に軸支される。発電機64に接続される電線(図示せず)は、第1の筒状体60及びスポーク63の内部を通ってケーシング50に設けられた開口(図示せず)からケーシング50の外に引き出される。
【0036】
第2の筒状体70は、第2の羽根車30の下流側に配置されている。第2の筒状体70は円筒状であり、直径は、ハブ33の出口側の直径DR2とほぼ等しい。第2の筒状体70は、第2の筒状体70の外周面に周方向に等間隔を空けて設けられたスポーク73により、ケーシング50の内壁に固定されている。第2の筒状体70内には第2の羽根車30と同軸に発電機74が収容されており、発電機74の回転軸に第2の羽根車30のハブ33に設けられた軸33aがカップリング等により連結されている。これにより、第2の羽根車30はケーシング50内に回転可能に軸支される。発電機74に接続される電線(図示せず)は、第2の筒状体70及びスポーク73の内部を通ってケーシング50に設けられた開口(図示せず)から外部に引き出される。
【0037】
ケーシング50は、第1の羽根車20及び第1の筒状体60を収容可能な広径部51と、第2の羽根車30及び第2の筒状体70を収容可能であり、広径部51より径の小さい小径部52とを備えている。ケーシング50の両端は開口しており、開口50a、50b は流体の入口又は出口となる。本実施形態では、広径部51の直径は第1の羽根車20の入口側の直径DF1より僅かに大きく、小径部52の直径は、第2の羽根車30の出口側の直径DR3より僅かに大きく設定されている。これにより、第1、第2の各羽根車20、30を流れる流体が第1、第2の各羽根車20、30から径方向外側に漏れ出るのを防ぎ、エネルギー損失を小さくしている。
【0038】
また、広径部51は、出口部51aが出口側に向けて連続して径が小さくなり、第1の羽根車20の外形に沿う形状を有している。これにより、流体の流れる方向が緩やかに変化してエネルギー損失が小さくなる。
【0039】
上記の実施形態の二重反転式羽根車40及び水車10の動作について説明する。
水車はインライン式であり、図1に示すように、ケーシング50の入口側の開口50aに、例えばホース等の水管11が取り付けられる。なお、水車に水管11を取り付けずに、ケーシング50の両端の開口を開放した状態で、河川など流れのある流体に、ケーシング50の入口側の開口50aが上流側を向くようにして水車10を浸漬させてもよい。
【0040】
水がケーシング50の入口側の開口50aから流れ込むと、水は、第1の筒状体60のガイド部62の外面に沿って広がり(図4の矢印a1)、第1の筒状体60の円筒状部61の外側を軸方向に流れるように整流される(図4の矢印a2)。第1の筒状体60の円筒状部61の直径と第1の羽根車20のハブ23の入口側の直径DF2とはほぼ等しいため、水は軸方向にまっすぐ流れて第1の羽根車20の軸流式羽根車21に流入する。
【0041】
水が第1の羽根車20に軸方向(図4の矢印b1)に流れ込むと、第1の羽根車20の各羽根24の表面と裏面に圧力差が生じる(圧力面と負圧面ができる)ことにより揚力が発生し、第1の羽根車20が回転する。水は斜流式羽根車22に流入して流れが径方向の内向きに曲げられ(図4の矢印b2)、斜流式羽根車22から流れ出る。
【0042】
第1の羽根車20の回転により、第1の筒状体60に設けられた発電機64の回転軸が回転して発電する。発電された電力は、第1の筒状体60及びスポーク63内部に通された電線により水車の外に送られ、蓄電池の充電や照明等に用いられる。
【0043】
第1の羽根車20から出た水が第2の羽根車30に径方向内側に向けて流れ込むと(図4の矢印c1)、第2の羽根車30の各羽根34の表面と裏面に圧力差が生じて揚力が発生し、第1の羽根車20とは逆方向に回転する。水は流れが軸方向に曲げられ(図4の矢印c2)、第2の羽根車30から流れ出る。
【0044】
第2の羽根車30の回転により、第2の筒状体70に設けられた発電機74の回転軸が回転して発電する。発電された電力は、第2の筒状体70及びスポーク73内部に通された電線により水車の外に送られ、蓄電池の充電や照明等に用いられる。
【0045】
上記の実施形態によれば、第2の羽根車30に遠心式羽根車を用いているため、従来技術の同じ直径の軸流式羽根車と比較して、第2の羽根車30に掛ける負荷の大きさをより大きくすることができ、結果として小型を保ったまま第2の羽根車30が回収できる流体エネルギーを大きくすることができる。
【0046】
また、第1の羽根車20を軸流式羽根車21と斜流式羽根車22とを組み合わせた複合式の羽根車とすることで、二重反転式羽根車40において第1の羽根車20、第2の羽根車30に掛けることが可能な負荷の大きさを等しくすることができ、第2の羽根車出口での摩擦損失を低減することができ、高効率となる。
【0047】
さらに、第1の羽根車20に掛ける負荷の大きさを大きくすることが可能となるため、従来技術の小型の軸流式羽根車と同じ直径である場合であっても、結果として第1の羽根車20が回収可能な流体エネルギーを大きくすることができる。
【0048】
このように、本発明によれば、第1、第2の各羽根車20、30のそれぞれにおいて回収可能な流体エネルギーが多くなるため、小型を保ちつつ回収可能なエネルギーを大きくすることができる。
【0049】
また、第1の羽根車20の斜流式羽根車22を構成するハブ23の縮径部26は、軸流式羽根車21を構成するハブ23の円筒状部25から連続して設けられているため、水は軸流式羽根車21から斜流式羽根車22に向けて軸方向にスムーズに流れ、摩擦損失が少なくなる。
【0050】
さらに、第1の羽根車20の斜流式羽根車22においては出口側に向けてハブ23の径が縮径しているため、水の流れる方向を軸方向から径方向内向きに緩やかに曲げることができ、摩擦損失を低減することができる。
また、第1の羽根車20の各羽根24は、第2の羽根車30の外周に突出する突出端部27を備えているため、水の流れる方向を効果的に径方向内向きに曲げて水を第2の羽根車30へ送ることができ、摩擦損失を低減することができる。
【0051】
また、第1の筒状体60を備えずに流体が直接第1の羽根車20に入力される場合には、流体は第1の羽根車20のハブ23の端面に当たって径方向外側に向きが曲げられ、次にケーシング50に当たって軸方向に向きが曲げられるため、羽根24の根元側に流体が流入しにくくなったり、第1の羽根車20に流入する流体の流れに偏りが生じエネルギー損失が大きくなる。一方、上記の実施形態によれば、第1の筒状体60が第1の羽根車20の上流側に配置されており、入力された流体が第1の筒状体60のガイド部62と円筒状部61により軸方向に整流されて第1の羽根車20に入力されるため、流体の流れの偏りが防がれ、摩擦損失が小さい。
【0052】
図6に本発明の他の実施形態を示す。
第1の羽根車20のハブ23の出口側端面23bに、第1の羽根車20と同軸に円筒状の第3の筒状体80が嵌め込まれる凹部20aが形成されている。第3の筒状体80は、出口側端面80bから軸方向に延び、周方向に等間隔を空けて配置された複数のスポーク83によりケーシング50の内壁に固定されている。スポーク83は、第1の羽根車20の突出端部27と第2の羽根車30との間であって、第1の羽根車20及び第2の羽根車30の回転を妨げない位置に設けられている。第3の筒状体80内には第2の羽根車30と同軸に発電機84が収容されており、発電機84の回転軸に第2の羽根車30のハブ33に設けられた軸33aがカップリング等により連結されている。第3の筒状体80により第2の羽根車30はケーシング50内に回転可能に軸支される。
【0053】
上記の構成によれば、第2の羽根車30を軸支する第3の筒状体80が第1の羽根車20内に配置されるため、流体機械である水車10を小型化できる。
その他の構成については、図1の実施形態と同様であるため、対応する部分に同一の符号を付すことで説明を省略する。
【0054】
図7に本発明の他の実施形態を示す。
第1の羽根車20のハブ23の出口側端面23bに、第1の羽根車20と同軸に円筒状の第3の筒状体80が嵌められる凹部20aが形成されている。第3の筒状体80は、出口側端面80bから軸方向に延びるスポーク83によりケーシング50の内壁に固定されている。スポーク83は、第1の羽根車20の突出端部27と第2の羽根車30との間であって、第1の羽根車20及び第2の羽根車30の回転を妨げない位置に設けられている。第3の筒状体80内の出口側には第2の羽根車30と同軸に第2の発電機84が収容されており、第2の発電機84の回転軸に第2の羽根車30のハブ33に設けられた軸33aがカップリング等により連結されている。第3の筒状体80内の入口側には第1の羽根車20と同軸に第1の発電機85が収容されており、第1の発電機85の回転軸に第1の羽根車20のハブ23に設けられた軸23aがカップリング等により連結されている。第1の羽根車20の軸23aは凹部20aの底部から突設されている。第3の筒状体80により第1、第2の各羽根車20、30をケーシング50内に回転可能に軸支することができる。
【0055】
第1の羽根車20のハブ23は、円筒状部25が図1の実施形態よりも軸方向に入口側に向けて長く形成され、円筒状部25の入口側に先端が先細りのガイド部23dが形成されている。これにより、入力された流体は軸方向に整流される。
第2の羽根車30を軸支する第3の筒状体80が第1の羽根車20内に配置されるため、流体機械である水車10を小型化できる。
その他の構成については、図1の実施形態と同様であるため、対応する部分に同一の符号を付すことで説明を省略する。
【0056】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0057】
上記の実施形態においては、第1の羽根車20の軸流式羽根車21と斜流式羽根車22とを一体に形成しているが、別個に形成して同軸に連結したいわゆる多段式として形成してもよい。
【0058】
流体機械は水車10に限定されず、例えば、風車、ポンプ、送風機として用いられる。
流体機械を風車として用いる場合は、流体は空気または気体であり、水車の場合と同様に第1の羽根車20、第2の羽根車30が流体からエネルギーを得て回転し、第1の羽根車20、第2の羽根車30に連結された発電機64、74により発電を行う。
【0059】
流体機械をポンプとして用いる場合、上記の実施形態において、発電機64、74、84、85は電動機に置き換えられる。第2の羽根車30に接続された電動機により第2の羽根車30を水車の場合の第2の羽根車30とは逆向きに回転させることで、流体は第2の羽根車30からエネルギーを得て第1の羽根車20に向けて流れる。流体は水又は液体である。第1の羽根車20は電動機と接続されており、電動機が第1の羽根車20を第2の羽根車30と逆方向に回転させることにより、流体は第1の羽根車20からエネルギーを得て第1の羽根車20から流出する。流体には高いエネルギーが与えられる。流体機械を送風機として用いる場合、流体は空気または気体であり、ポンプの場合と同様に流体が第1の羽根車20、第2の羽根車30からエネルギーを得て送風がなされる。
【0060】
流体機械を風車、ポンプ、送風機として用いる場合、第1、第2の各羽根車20、30の羽根24、34の形状や向き、羽根24、34の各ハブ23、33への取り付け角度、各種寸法は、流体機械の用途に合わせて効率良く駆動可能なように適宜設定される。
【符号の説明】
【0061】
10 水車(流体機械)
20 第1の羽根車
30 第2の羽根車
40 二重反転式羽根車
21 軸流式羽根車
22 斜流式羽根車
23 ハブ
24 羽根
25 円筒状部
26 縮径部
27 突出端部
50 ケーシング
60、70、80 第1~第3の筒状体
64、74、84 発電機(回転電機)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7