(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】鉄筋のリブ位置調整装置
(51)【国際特許分類】
B21D 7/00 20060101AFI20220530BHJP
B21F 1/00 20060101ALI20220530BHJP
B21F 23/00 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
B21D7/00 G
B21D7/00 A
B21F1/00 Z
B21F23/00 Z
(21)【出願番号】P 2018179860
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000223056
【氏名又は名称】東陽建設工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮原 章
(72)【発明者】
【氏名】永澤 良之
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106270307(CN,A)
【文献】特開2011-208257(JP,A)
【文献】国際公開第2008/119357(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 7/00
B21F 1/00
B21F 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋を水平状態に載置する第1の載置部材と、
前記第1の載置部材に載置された鉄筋を、前記第1の載置部材の位置よりも高い位置に移動可能に載置する第2の載置部材と、を有し、
前記第2の載置部材は、平行に配置された一対の筒状部材を有し、
前記一対の筒状部材のそれぞれの軸心は水平に保たれ、前記一対の筒状部材の少なくとも一方の軸心が移動可能であって、2つの軸心間距離を変更可能である鉄筋のリブ位置調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄筋のリブ位置調整装置であって、
前記一対の筒状部材は、それぞれの軸心を中心に自由に回転可能である鉄筋のリブ位置調整装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鉄筋のリブ位置調整装置であって、
前記第2の載置部材を移動させる駆動部を備え、
前記駆動部は、前記一対の筒状部材を、鉛直線方向に移動させ、前記一対の筒状部材の少なくとも一方の軸心を水平方向に移動させる鉄筋のリブ位置調整装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の鉄筋のリブ位置調整装置であって、
前記一対の筒状部材は、軸方向に複数の円形鍔状部材を有する鉄筋のリブ位置調整装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の鉄筋のリブ位置調整装置であって、
前記第1の載置部材は、載置される鉄筋の軸方向から見たときに鉛直方向に窪む円弧となる載置面を有する鉄筋のリブ位置調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋のリブ位置調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋を折曲げ加工して所定の形状にすることが行われている。この折曲げ加工には、例えば特許文献1に開示されているように、支点軸とこの支点軸の周りに駆動回動される曲げローラとの協働によって鉄筋を曲げる自動曲装置(鉄筋曲げ機)が用いられている。この自動曲装置に鉄筋を供給する際には、鉄筋の外周面に該鉄筋の長手方向に突条に設けられているリブが折曲げ加工の向きに対して邪魔にならないように90度ずらして供給する。この鉄筋の供給は、作業員が目視にて向きを確認しながら供給作業を行っているが、作業性の向上並びに安全性の観点から、例えばロボットアーム等を利用して鉄筋供給から曲げ加工までを完全自動化にする要望が高まって来ている。
【0003】
この作業員の目視作業に代わる自動装置として、例えば、特許文献2及び特許文献3に示されている装置が提案されている。この両特許文献は、鉄筋のごとき異形棒鋼の形状や寸法を自動測定する装置である。
【0004】
特許文献2においては、熱間圧延直後の異形棒鋼の寸法形状を短時間で測定できる測定装置と、該測定装置の情報から寸法形状を自動的に調節する圧延調整装置とを有する異形棒鋼の自動形状調整装置が提案されている。
【0005】
また、特許文献3においては、高精度且つ迅速に異形棒鋼の外径、基円径、フシ高さ、フシピッチ、フシズレ及びフシ角度を検出する装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-116594号公報
【文献】特開昭63-286233号公報
【文献】特開平5-187825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2においては、異形棒鋼の外周面突起の通過周期を求める速度演算装置、ストロボ発光装置、カメラ装置、形状識別装置、等を有する寸法形状測定装置等が必要な構成である。また、特許文献3においても、カメラ、カメラコントローラ、径変化点検出装置、形状演算装置、出力装置、等が必要な構成である。このように、鉄筋の向き等を測定して自動曲装置への鉄筋の自動供給を可能にする装置は、装置自体が複雑化し且つ大がかりになり高価になるという課題を抱えている。
【0008】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、カメラ装置等を利用した複雑で高価な装置を用いることなく、鉄筋のリブ位置を調整して自動曲装置に供給可能な鉄筋のリブ位置調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は下記手段により達成することができる。すなわち、本発明は下記の通りである。
〔1〕
鉄筋を水平状態に載置する第1の載置部材と、
前記第1の載置部材に載置された鉄筋を、前記第1の載置部材の位置よりも高い位置に移動可能に載置する第2の載置部材と、を有し、
前記第2の載置部材は、平行に配置された一対の筒状部材を有し、
前記一対の筒状部材のそれぞれの軸心は水平に保たれ、前記一対の筒状部材の少なくとも一方の軸心が移動可能であって、2つの軸心間距離を変更可能である鉄筋のリブ位置調整装置。
〔2〕
〔1〕に記載の鉄筋のリブ位置調整装置であって、
前記一対の筒状部材は、それぞれの軸心を中心に自由に回転可能である鉄筋のリブ位置調整装置。
【0010】
〔3〕
〔1〕又は〔2〕に記載の鉄筋のリブ位置調整装置であって、
前記第2の載置部材を移動させる駆動部を備え、
前記駆動部は、前記一対の筒状部材を、鉛直線方向に移動させ、前記一対の筒状部材の少なくとも一方の軸心を水平方向に移動させる鉄筋のリブ位置調整装置。
【0011】
〔4〕
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の鉄筋のリブ位置調整装置であって、
前記一対の筒状部材は、軸方向に複数の円形鍔状部材を有する鉄筋のリブ位置調整装置。
【0012】
〔5〕
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の鉄筋のリブ位置調整装置であって、
前記第1の載置部材は、載置される鉄筋の軸方向から見たときに鉛直方向に窪む円弧となる載置面を有する鉄筋のリブ位置調整装置。
【発明の効果】
【0013】
〔1〕の鉄筋のリブ位置調整装置によれば、鉄筋を水平状態に載置する第1の載置部材と、第1の載置部材に載置された鉄筋を、水平状態を保ったまま第1の載置部材の位置よりも高い位置に移動可能に載置する第2の載置部材と、を有し、第2の載置部材は、平行に配置され、第1の載置部材の位置よりも高い位置に移動可能な一対の筒状部材を有し、一対の筒状部材のそれぞれの軸心は水平に保たれ、一対の筒状部材の少なくとも一方の軸心が移動可能であって、2つの軸心間距離を変更可能であるので、装置が動作したときに、長手方向に一対のリブを有する鉄筋の保持が、第1の載置部材から第2の載置部材に持ち替えられ、この第2の載置部材の一対の筒状部材による鉄筋との接触位置が、鉄筋を保持したまま該鉄筋の下部寄りの位置から左右両側に広がるように移動することができる。これにより、筒状部材にてリブの一端側を押し鉄筋を回転させてリブの位置を移動調整することができる。この結果、撮像装置等を用いる必要のない廉価な機械式の鉄筋のリブ位置調整装置を提供できる。
【0014】
〔2〕の鉄筋のリブ位置調整装置によれば、一対の筒状部材は、それぞれの軸心を中心に自由に回転可能であるので、鉄筋を回転させる際に、回転抵抗を小さくすることができる。
【0015】
〔3〕の鉄筋のリブ位置調整装置によれば、第2の載置部材を移動させる駆動部を備え、駆動部は、一対の筒状部材を、鉛直線方向に移動させ、一対の筒状部材の少なくとも一方の軸心を水平方向に移動させるので、駆動部の駆動により、鉄筋の保持を第2の載置部材にて行うことができると共に、該第2の載置部材により鉄筋との接触位置を変えることができ、リブを移動させることができる。
【0016】
〔4〕の鉄筋のリブ位置調整装置によれば、一対の筒状部材は、軸方向に複数の円形鍔状部材を有するので、複数の円形鍔状部材にて鉄筋の外周面に接触でき、鉄筋に対して、その外周面の形状に左右されることなく安定した接触を確保することができ、鉄筋の回転を良好に行うことができる。
【0017】
〔5〕の鉄筋のリブ位置調整装置によれば、第1の載置部材は、載置される鉄筋の軸方向から見たときに鉛直方向に窪む円弧となる載置面を有するので、鉄筋を載置面の中央に位置させることができると共にリブが真下に向かないようにできる。この結果、鉄筋を第1の載置部材上に置くだけで、第2の載置部材と鉄筋との載置位置の調整が不要となり、且つ鉄筋の向き調整も必要なく、第2の載置部材による持ち上げを円滑にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態の鉄筋のリブ位置調整装置の斜視図であり、鉄筋が第1の載置部材上にある状態を示す。
【
図2】
図1に示す鉄筋リブ位置調整装置において、鉄筋が第2の載置部材上にある状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す鉄筋及び鉄筋に接する円形鍔部材の対応位置を示す拡大斜視図である。
【
図4】
図1に示す鉄筋のリブ位置調整装置の動作を示すための概略図であって、鉄筋が第1の載置部材上に置かれた状態を示す。
【
図5】
図1に示す鉄筋のリブ位置調整装置の動作を示すための概略図であって、第2の載置部材が鉄筋に接し始める状態を示す。
【
図6】
図1に示す鉄筋のリブ位置調整装置の動作を示すための概略図であって、鉄筋が第2の載置部材上に載置され回転される状態を示す。
【
図7】
図1に示す鉄筋のリブ位置調整装置の動作を示すための概略図であって、鉄筋のリブ位置が第2の載置部材により水平に調整された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態の鉄筋のリブ位置調整装置(以下、単に「リブ位置調整装置」とも云う)について、
図1~
図7を参照して説明する。なお、明細書の記載において、上下とは、リブ位置調整装置を設置した状態での上下を云い、左右とは、リブ位置調整装置の第2の載置部材の軸心方向から見たときの左右を云う。
【0020】
図1及び
図2に示すように、本実施形態におけるリブ位置調整装置10は、鉄筋20を水平状態に載置することができる第1の載置部材11が架台部1に取付けられ、この第1の載置部材11に隣接して第2の載置部材12が設けられている。この第2の載置部材12は、駆動部15により上下方向(例えば鉛直方向)に移動可能に設けられており、後述するように、第2の載置部材12が第1の載置部材の位置よりも高い位置に移動することにより、第1の載置部材11上に載置された鉄筋20を、水平状態を保ったまま第2の載置部材12上に載置し直すことができる。
【0021】
ここで、鉄筋20は、異形鉄筋(日本工業規格においては、JIS G 3112:2010の異形棒鋼、及び、JIS G 3117:2017の異形棒鋼として規格されている)であり、例えば、
図3に示すように、その外周面20sには、軸心20cに沿った方向で該外周面20sの円周方向において180度離れた一対のリブ20vが突設されている。また、鉄筋20の円周方向には、一対のリブ20vの間を繋げるように延びるフシ20fが多数設けられている。なお、このフシ20fは、例えば、軸方向にリブ20vを挟んで交互に位置するように配置されている。
【0022】
第1の載置部材11は、架台部1の上部から上方に突出するように取付けられた板状或いはブロック状の部材にて形成されている。そして、第1の載置部材11は、その上端が鉄筋20を載置する載置面11sを有している。この載置面11sは、載置される鉄筋20の軸心20cの方向から見たときに下方(鉛直方向)に窪む円弧として形成されている。
【0023】
なお、
図1及び
図2においては、第1の載置部材11は、1つのみ図示してあるが、実際には、2つ以上ものが所定間隔で架台部1に設けられている。すなわち、第1の載置部材11は、鉄筋20の長手方向において、鉄筋20の長さに対応した間隔で複数個設けられ、鉄筋20を略水平に保持できるように構成されている。
【0024】
第2の載置部材12は、それぞれ軸心12cを有する一対の筒状部材12aが平行に配置されている。また、筒状部材12aは、軸心12cが複数の第1の載置部材11の載置面11sが重なる方向と平行になる向きに水平に保たれている。したがって、一対の筒状部材12aによって鉄筋20を水平に保持することができる。
【0025】
第2の載置部材12は、本実施形態においては、例えば、それぞれの筒状部材12aが、別々の移動台2上に軸支持部3を介して支持されており、更に、例えば別々の駆動部15の駆動シャフト15fの伸縮により移動するように構成されている。この駆動部15によって移動させる構造の詳細は省略するが、2つの移動台2は、上下方向(
図2参照)に移動できるように支持されていると共に、それぞれが左右方向に移動可能に支持されている。したがって、後述するように、一対の筒状部材12aは、水平且つ平行に維持された状態で上下移動可能であり、更に、両筒状部材12aの軸心12cの軸心間距離を変更可能に構成されている。
【0026】
ここで、駆動部15による一対の筒状部材12aのそれぞれの軸心12cの水平方向の移動は、後述するように、例えば、一対の筒状部材12aの上方(
図2における矢印A方向)への移動の後半の移動中において、左右の筒状部材12a同士が互いに相反する水平方向に移動する。
【0027】
なお、筒状部材12aの左右方向の移動については、水平移動用のエアシリンダを別途設けるようにしても良いが、駆動部15の上下方向の駆動力を利用した適宜リンク構造によって水平方向の移動を行うようにすることができる。また、本実施形態の駆動部15は、一対の筒状部材12aを別々のエアシリンダによってそれぞれ動かすように構成されているが、1つのエアシリンダによって一対の筒状部材12aを、上下移動並びに水平移動するようなリンク構造を用いた構造であっても良い。
【0028】
本実施形態の筒状部材12aは、複数の円形鍔状部材12eと複数の筒部材12bと、複数の円形鍔状部材12eと複数の筒部材12bが交互に挿通された軸部材12dと、を有する。すなわち、軸部材12dの軸心12cの方向に沿って、筒部材12bの間隔で複数の円形鍔状部材12eが設けられた構造となっている。
【0029】
また、一対の筒状部材12aの一方が有する複数の円形鍔状部材12eと、一対の筒状部材12aの他方が有する複数の円形鍔状部材12eとは、一対の筒状部材12aの軸方向の位置が重ならないように配置されている。したがって、
図3に示すように、例えば、軸方向において、円形鍔状部材12eは、左右交互にフシ20fの間に位置するように配置されている。また、一対の筒状部材12aは、軸心12cの方向から見た場合、左右の円形鍔状部材12eが重なるように接近して配置(
図4参照)されている。
【0030】
ここで、一対の筒状部材12aは、それぞれの軸心12cを中心に自由に回転可能に構成されている。すなわち、この筒状部材12aは、軸部材12dが軸支持部3に回転可能に支持されていることで回転する。
【0031】
また、筒状部材12aの複数の円形鍔状部材12eは、それぞれの軸心12cを中心に、それぞれ自由に回転可能に設けられている。すなわち、軸部材12dに対して、それぞれの円形鍔状部材12eが回転可能に取付けられている。
【0032】
更にまた、筒状部材12aの複数の円形鍔状部材12eは、それぞれが独立して軸心12cの軸方向(
図3に示す矢印X方向)に所定距離移動できるように構成されている。なお、この移動可能距離は、特に限定するものではないが、鉄筋20のフシ20fの間隔を考慮して適宜大きさに設定することができる。
【0033】
以下、
図4~
図7を参照してリブ位置調整装置10の動作について説明する。
先ず、鉄筋20は、例えばコンベヤ等の搬送手段により1本ずつリブ位置調整装置10まで搬送される。そして、
図4に示すように、第1の載置部材11の載置面11s上に供給される。載置面11s上に供給された鉄筋20のリブ20vの位置は、
図4に示すように、最も下向きの位置の場合でも、リブ20vの下端側が接した状態(リブ20v及び外周面20sの二箇所が載置面11sに接した状態)で載置される。
【0034】
鉄筋20が第1の載置部材11に保持された後、第2の載置部材12が上方に移動(矢印A方向)する。この移動によって、
図5に示すように、円形鍔状部材12eの外周縁が、例えば、リブ20v(図中右側のリブ)の下端側に最初に接する(
図5において第1接触点CP1)。なお、円形鍔状部材12eの外周縁が、鉄筋20の外周面20sに最初に接する場合もあるが、本実施形態では、最初に接触する第1接触点CP1がリブ20vに接するものとして説明する。
【0035】
一対の筒状部材12aが引き続き上昇することで、左右一対の円形鍔状部材12eは、鉄筋20の外周面20sにも接触する(
図6において第2接触点CP2)。これにより、
図6に示すように、鉄筋20は、第2の載置部材12によって、完全に保持され、第1の載置部材11から第2の載置部材12に載置状態が入れ替わる。
【0036】
ここで、円形鍔状部材12eと鉄筋20の外周面20sとの第2接触点SP2の位置は、鉄筋20の軸心20cと筒状部材12aの軸心12cとを結ぶ軸心連結線CL上になる。また、この第2接触点CP2の位置は、リブ20vと載置面11sとが接触している第1接触点CP1の位置よりも鉄筋中心を通る鉛直線寄りでリブ20vよりも下側になる。
【0037】
一対の筒状部材12aは、さらに上昇移動すると共に、その軸心12c間の当初の間隔(d1)を最終的な間隔(d2)までに広げるように左右方向(矢印B方向)に移動する。この軸心12cの間隔を広げるような動作のとき、下側に位置するリブ20v(
図6において右側のリブ20v)が、円形鍔状部材12eによって上方側へ押される。これにより、鉄筋20は、
図6に示すように、所定方向(
図6において反時計回りの矢印R方向)に回転する。
【0038】
この鉄筋20の回転に際しては、円形鍔状部材12eは、リブ20vに当たるときの抵抗によって、その抵抗を弱める方向(時計回りの方向)に回転する。これにより、鉄筋20を回転させるときに、小さい回転抵抗で容易に行うことができる。
【0039】
このように鉄筋20が回転され、最終的には、
図7に示すように、リブ20vの位置が左右水平になるまで回転される。このとき、鉄筋20は、左右の円形鍔状部材12eによって、左右のリブ20vの第1接触点CP1及び外周面20sの第2接触点CP2の四箇所で保持される。これにより、鉄筋20のリブ20vの位置調整が終了する。
ここで、リブ20vの位置調整が行われた鉄筋20は、例えば、ロボットアーム等の把持手段により、把持されて次の加工工程に移送される。
【0040】
このように、本実施形態においては、前掲のように、一対の筒状部材12aの軸心12cの軸心間距離を広げるように動作したときに、長手方向に一対のリブ20vを有する鉄筋20は、その載置位置が、第1の載置部材11から第2の載置部材12に換えられ、この第2の載置部材12の一対の筒状部材12aによる鉄筋20との接触位置が、鉄筋20を保持したまま該鉄筋20の下部寄りの位置から左右両側に広がるように移動することができる。これにより、筒状部材12aにてリブ20vの一端側を押し鉄筋20を回転させてリブ20vの位置を移動調整することができる。この結果、撮像装置等を用いる必要のない廉価な機械式の鉄筋20のリブ位置調整装置10を提供できる。
【0041】
また、本実施形態においては、一対の筒状部材12aは、それぞれの軸心12cを中心に自由に回転可能であるので、鉄筋20を回転させる際に、回転抵抗を小さくすることができる。
【0042】
本実施形態においては、第2の載置部材12を移動させる駆動部15は、一対の筒状部材12aを、鉛直線方向(矢印A方向)に移動させ、一対の筒状部材12aの少なくとも一方の軸心12cを水平方向(矢印B方向)に移動させることから、駆動部15の駆動により、鉄筋20の保持を第2の載置部材12にて行うことができると共に、該第2の載置部材12により鉄筋20との接触位置を変えることができ、リブ20vを押上げるように移動させることができる。
【0043】
また、本実施形態においては、駆動部15は、一対の筒状部材12aのそれぞれの軸心12cを互いに相反する水平方向に同時に移動させるので、鉄筋20を左右方向に移動することなく安定した状態のまま回転させることができる。
【0044】
また、本実施形態のように、一対の筒状部材12aは、軸方向に複数の円形鍔状部材12eを有することで、複数の円形鍔状部材12eにて鉄筋20の外周面20sに接触でき、鉄筋20に対して、その外周面20sの形状に左右されることなく安定した接触を確保することができ、鉄筋20の回転を良好に行うことができる。
【0045】
また、本実施形態においては、一対の筒状部材12aの一方が有する複数の円形鍔状部材12eと、一対の筒状部材12aの他方が有する複数の円形鍔状部材12eとは、一対の筒状部材12aの軸方向位置が重ならない位置に配置されることから、一対の筒状部材12a間における円形鍔状部材12e同士が、軸心12cの軸線方向から見てオーバーラップするように設けることができる。この結果、一対の筒状部材12aの間隔を小さくでき、小径の鉄筋20のリブ位置調整にも対応できる。
【0046】
本実施形態においては、一対の筒状部材12aの複数の円形鍔状部材12eは、それぞれの軸心を中心に、それぞれ自由に回転可能であることから、円形鍔状部材12eが接して鉄筋20を回転させる際に、該円形鍔状部材12eが回転することで、鉄筋20の回転抵抗を小さくすることができる。
【0047】
本実施形態においては、一対の筒状部材12aのそれぞれは、複数の円形鍔状部材12eと複数の筒部材12bと、複数の円形鍔状部材12eと複数の筒部材12bが交互に挿通された軸部材12dとを有することから、筒状部材12aの軸方向の長さ調整が容易で、例えば、鉄筋20との接触部分の数の変更や鉄筋20の長さに対する対応が自在にできる。
【0048】
本実施形態においては、複数の円形鍔状部材12eは、それぞれが独立して軸心12cの軸方向に移動可能であるので、鉄筋20を第2の載置部材12に載置する際に、鉄筋20のフシ20fが円形鍔状部材12eに当たって該円形鍔状部材12eが軸方向へ移動することができる。したがって、鉄筋20の外周面20sを円形鍔状部材12eによって確実に保持することができ、鉄筋20の載置動作の安定化を図ることができる。
【0049】
また、本実施形態においては、第1の載置部材11は、載置される鉄筋20の軸方向から見たときに鉛直方向に窪む円弧となる載置面11sを有するので、鉄筋20を載置面11sの中央に位置させることができると共にリブ20vが真下に向かないようにできる。この結果、鉄筋20を第1の載置部材11上に置くだけで、第2の載置部材12と鉄筋20との載置位置の調整が不要となり、且つ鉄筋20の向き調整も必要なく、第2の載置部材12による持ち上げを円滑にすることができる。
【0050】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば、第2の載置部材12を構成する筒状部材12aの支持構造や駆動部15の構造等は適宜変更できる。
また、上記実施形態においては、一対の筒状部材12aの双方が水平方向に移動する構成としたが、これに限るものではなく、一対の筒状部材12aの少なくとも一方の軸心12cを水平方向に移動できれば良い。
また、上記実施形態においては、第2の載置部材12については、鉛直方向に移動する構成としたが、これに限るものではなく、筒状部材12aの半径方向に斜めに移動する構成であっても良い。
また、本発明の鉄筋のリブ位置調整装置は、鉄筋のリブ位置を調整する工程を含む用途のいずれにも適用可能であり、鉄筋のリブ位置を調整して自動曲装置に供給する用途に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
10 鉄筋のリブ位置調整装置
11 第1の載置部材
11s 載置面
12 第2の載置部材
12a 筒状部材
12b 筒部材
12c 軸心
12d 軸部材
12e 円形鍔状部材
15 駆動部
20 鉄筋
20v リブ
20s 外周面