(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】クリップ付き筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 25/02 20060101AFI20220530BHJP
【FI】
B43K25/02 180
B43K25/02 100
(21)【出願番号】P 2019138143
(22)【出願日】2019-07-26
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】500231377
【氏名又は名称】株式会社泰誠
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】富田 恭章
【審査官】富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3141902(JP,U)
【文献】実開昭60-105185(JP,U)
【文献】登録実用新案第3122588(JP,U)
【文献】米国特許第07213996(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0163555(US,A1)
【文献】実開昭57-105794(JP,U)
【文献】実開平07-011383(JP,U)
【文献】実開平04-073590(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 25/00-25/02、29/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリップを備えた筆記具であって、
前記クリップは、上端部の両側に延設された翼部を介して胴軸又はキャップの上端部に固定されていて、前記クリップの内側面と前記胴軸又はキャップの外側面との間に、昇降体が前記翼部間を昇降するための間隙が保持され、
前記クリップの内側面に、前記昇降体に突設された係合突子が係合するガイド溝が形成され
、
前記胴軸又はキャップに前記ガイド溝に対応する抜け止め溝が形成され、前記昇降体に前記抜け止め溝に係合する第2係合突子が突設されていることを特徴とするクリップ付き筆記具。
【請求項2】
前記ガイド溝は、1本の縦溝である、請求項1に記載のクリップ付き筆記具。
【請求項3】
前記ガイド溝は、1本のジグザグ溝である、請求項1に記載のクリップ付き筆記具。
【請求項4】
前記ガイド溝は、長さの異なる2本の縦溝である、請求項1に記載のクリップ付き筆記具。
【請求項5】
前記ガイド溝は、1本の曲線溝である、請求項1に記載のクリップ付き筆記具。
【請求項6】
前記クリップに、前記昇降体の露出部のデザインに対応するデザインが施されている、請求項1乃至
5のいずれかに記載のクリップ付き筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクリップ付き筆記具に関するものであり、より詳細には、胴軸又はキャップにクリップを備えた種々のタイプのクリップ付き筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
胴軸又はキャップにクリップを備えた種々のタイプのクリップ付き筆記具が市販され、広く利用されている。一般的なクリップ付き筆記具におけるクリップは、単に上着やシャツのポケットに引っ掛け保持するための機能を果たすに過ぎないものであって、その抜き差しに際して何ら形態上の変化はなく、使用者の興味をそそるものではない。
【0003】
従来、クリップを操作することにより、具備されているキャラクター等の部材を変化させたり、出没させたりする筆記具が提案されている(特許文献1:実用新案登録第3107513号公報、特許文献2:実用新案登録第3105554号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3107513号公報
【文献】実用新案登録第3105554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来提案されている、クリップを操作することにより、具備されているキャラクター等の部材を変化させたり、出没させたりする筆記具の場合、そのキャラクター等の部材に動きや変化をもたらす機構は胴軸内に組み込まれるものであるため、全体的機構が複雑となり、コスト高となる問題があり、また、そのような問題があるため、種々のパターンのものを提供することが採算上難しいという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、比較的シンプルな構成で廉価にて種々のパターンのものを供給でき、指先操作をすることなく、一般のクリップと同様に、単に上着やシャツのポケットに引っ掛ける操作をすることにより、隠れていたキャラクター等の部材を表出させて、その動きや変化を楽しむことができるクリップ付き筆記具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、クリップを備えた筆記具であって、前記クリップは、上端部の両側に延設された翼部を介して胴軸又はキャップの上端部に固定されていて、前記クリップの内側面と前記胴軸又はキャップの外側面との間に、昇降体が前記翼部間を昇降するための間隙が保持され、前記クリップの内側面に、前記昇降体に突設された係合突子が係合するガイド溝が形成され、前記胴軸又はキャップに前記ガイド溝に対応する抜け止め溝が形成され、前記昇降体に前記抜け止め溝に係合する第2係合突子が突設されていることを特徴とするクリップ付き筆記具である。
【0008】
一実施形態においては、前記ガイド溝は、1本の縦溝であり、あるいは、長さの異なる2本の縦溝であり、あるいは、1本のジグザグ溝であり、あるいは、1本の曲線溝である。
【0010】
一実施形態においては、前記クリップに、前記昇降体の露出部のデザインに対応するデザインが施される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るクリップ付き筆記具は上記構成であるので、比較的シンプルな構成で廉価にて種々のパターンのものを供給でき、指先操作をすることなく、一般のクリップと同様に、単に上着やシャツのポケットに引っ掛ける操作をすることにより、隠れていた
キャラクター等の部材を表出させて、その動きや変化を楽しむことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るクリップ付き筆記具の第1の実施形態の正面図及び側面図である。
【
図2】
図1に示す実施形態における動きを示す正面図及び側面図である。
【
図3】
図1におけるA-A線、B-B線、C-C線及びD-D線に沿った断面図である。
【
図4】
図1に示す実施形態における昇降体の斜視図である。
【
図5】本発明に係るクリップ付き筆記具の第2の実施形態の正面図及び側面図である。
【
図6】
図5に示す実施形態における動きを示す正面図及び側面図である。
【
図7】
図5におけるA-A線、B-B線、C-C線及びD-D線に沿った断面図である。
【
図8】
図5に示す実施形態における昇降体の斜視図である。
【
図9】本発明に係るクリップ付き筆記具の第3の実施形態の正面図及び側面図である。
【
図10】
図9に示す実施形態における動きを示す正面図及び側面図である。
【
図11】
図9におけるA-A線、B-B線、C-C線及びD-D線に沿った断面図である。
【
図12】
図9に示す実施形態における昇降体の斜視図である。
【
図13】本発明に係るクリップ付き筆記具の第4の実施形態の正面図及び側面図である。
【
図14】
図13に示す実施形態における動きを示す正面図及び側面図である。
【
図15】
図13におけるA-A線、B-B線、C-C線及びD-D線に沿った断面図である。
【
図16】
図13に示す実施形態における昇降体の斜視図である。
【
図17】本発明に係るクリップ付き筆記具における昇降体脱落防止手段の一例を示す横断面図である。
【
図18】本発明に係るクリップ付き筆記具における昇降体脱落防止手段の他の例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態について、添付図面に依拠して説明する。本発明に係るクリップ付き筆記具は、クリップ2を備えた、ノック式その他任意の形態の筆記具であって、クリップ2は、その上端部の両側に延設された翼部3を介して胴軸1の上端部に固定される。図示した例はキャップのないノック式筆記具であるが、キャップ付きの筆記具の場合は、クリップ2はキャップに取り付けられる。多くの実施形態においては翼部3間が上下に開放され、また、クリップ2の内側面と胴軸1の外側面との間に、昇降体6が左右の翼部3間を昇降するための間隙5が保持される。そして、クリップ2の内側面に、昇降体6に突設される係合突子7が係合するガイド溝が形成される。
【0014】
ガイド溝は適宜深さに形成され、表面側からは視認し得ないものであって、種々の態様のものとすることができ、後述するように、その態様に応じて昇降体6の動きに変化が生ずる。
図1乃至
図3に示されるガイド溝は、単なる1本の縦溝10で、最も一般的なものである。また、
図5乃至
図7に示されるガイド溝は、1本のジグザグ溝11であり、
図9乃至
図11に示されるガイド溝は、長さの異なる平行な2本の縦溝12,13である。その場合、長尺の縦溝12と短尺の縦溝13は、上端が合わせられる(
図11参照)。更に、
図13乃至
図15に示されるガイド溝は、1本の曲線溝14とされている。
【0015】
昇降体6は、通例、長方形の板状体であり、そのクリップ2側の下部に係合突子7が突設される。そして、少なくとも、露出することになるクリップ2側の上部に、動物、キャラクターその他の絵柄や文字、図形、記号等の表出デザイン8が表現される。好ましくは、クリップ2に、この昇降体6の表出デザイン8に対応するデザインが施される。その場合は、双方のデザインの組み合わせを楽しむことができる。
【0016】
図9乃至
図11に示される、ガイド溝が長さの異なる平行な2本の縦溝12,13である場合は、長尺のガイド溝12に対応する長尺の昇降体6aと、短尺のガイド溝13に対応する短尺の昇降体6bとが用いられる。
【0017】
図13乃至
図15に示されるようにガイド溝が曲線溝14である場合の昇降体6cは、縦溝13のように短尺で、下底が曲面とされ、また、係合突子7は曲線溝14に対応する円弧状に形成される(
図16参照)。この実施形態の場合の昇降体6cは、後述するように曲線的に上昇するので、クリップ2の上面ではなく、側面から突出することになる。そのため、昇降体6cが突出する側の翼部3aは、反対側の翼部3の約半分の長さとされる(
図15参照)。
【0018】
昇降体6(昇降体6a,6b,6cを含む)は、その係合突子7がクリップ2の内側面に形成されるガイド溝に係合することによって、クリップ2と胴軸1の間に保持されるが、クリップ2が過度に開かれると、係合突子7がガイド溝10~14から抜けて脱落するおそれがある。そこで、好ましい実施形態においては、昇降体6の脱落防止手段が講じられる。
【0019】
図17に示される脱落防止手段は、ガイド溝10~14の奥を広げると共に、係合突子7の先端に肥大部を形成する方法である。この方法の場合は、肥大部がガイド溝10~14の縁に引っかかってガイド溝10~14から抜けることはないので、昇降体6が脱落することはない。
【0020】
また、
図18に示される脱落防止手段は、胴軸1の外側面に、ガイド溝10~14に対応する形態の抜け止め溝16を形成すると共に、昇降体6の係合突子7突設面とは反対の面に、抜け止め溝16に係合する第2係合突子7aを突設する方法である。この方法の場合は、昇降体6の表裏両面の係合突子7,7aがガイド溝10~14と抜け止め溝16に係合しているため、昇降体6の下部が胴軸1側、クリップ2側のいずれの側に片寄っても、昇降体6が脱落することはない。
【0021】
上記構成の本発明に係るクリップ付き筆記具の場合、筆記時や載置時においては、昇降体6は、自重で、その係合突子7がガイド溝10~14の最下端に達するまで下降するため、クリップ2の後ろ側に隠れて露見しない。これに対し、上着やシャツの胸ポケットに差し込んだ場合は、胸ポケットの上縁部21が胴軸1とクリップ2との間に入り込んで昇降体6を押し上げるように作用する。かくして、クリップ2の後ろ側に隠れていた昇降体6の上部が露見し、そこに表現されている動物、キャラクターその他の絵柄や文字、図形、記号、社名や会社のロゴ等が表出するため、興味をそそられる。
【0022】
ここで、ガイド溝10のように縦溝である場合は、昇降体6は単に直線的に上下動するに過ぎないが、例えば、
図1乃至
図4に示される実施形態のように、クリップ2の上部に花を表現し、昇降体6の上部の表出デザイン8として、クリップ2の花と同種で色違いの花を表現することにより、昇降体6の上昇時に、花束を表現させることが可能となる。
【0023】
また、ガイド溝11のようにジグザグ溝である場合は、昇降体6は頭を左右に振りながら上下動し、また、ガイド溝12のように曲線溝である場合は、昇降体6は頭を円弧状に移動させながら上下動する。更に、ガイド溝13,14が長さの異なる平行な2本の縦溝である場合は、先ず、長尺の昇降体6aの上部が現われ、次いで間をおいて、短尺の昇降体6bの上部が現われるという面白さがある。このように、ガイド溝の形態を変えることにより、昇降体6に種々の動きを与えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係るクリップ付き筆記具は上記構成であるので、比較的シンプルな構成で廉価にて種々のパターンのものを供給でき、指先操作をすることなく、一般のクリップと同様に、単に上着やシャツのポケットに引っ掛ける操作をすることにより、隠れていたキャラクター等の部材を表出させて、その動きや変化を楽しむことができる効果のあるものであり、その産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0025】
1 胴軸
2 クリップ
3 翼部
4 軸本体
5 キャップ
6,6a,6b,6c 昇降体
7,7a 係合突子
8 表出デザイン
10 縦溝
11 ジグザク溝
12,13 縦溝
14 曲線溝
16 抜け止め溝