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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】車止め
(51)【国際特許分類】
   E01F 13/02 20060101AFI20220530BHJP
【FI】
E01F13/02 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019177922
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021055327
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】591067831
【氏名又は名称】帝金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】大塚 晴一郎
(72)【発明者】
【氏名】瀬山 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】下山 和広
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-019451(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0027015(US,A1)
【文献】特開平07-150530(JP,A)
【文献】特開2008-127821(JP,A)
【文献】特開2006-283523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状部を有する車止めであって、
前記柱状部は、
一部が地中に埋め込まれて上下方向に延びる第1筒状体と、
前記第1筒状体の内部に、当該第1筒状体との間に空間が形成される状態で配置されて、地中と地上とに亘って上下方向に延びる第2筒状体と、
前記第1筒状体と前記第2筒状体との間の前記空間に配置されて当該第1、第2筒状体の周方向に配列され、かつ、各々上下方向に延びる、複数の第3筒状体と、を備え、
前記第1筒状体、第2筒状体及び第3筒状体は、いずれも円筒体からなり、
前記複数の第3筒状体は、各々の径が同一でかつ隣接する当該第3筒状体同士が周方向に互いに当接する状態で前記空間に配置されている、ことを特徴とする車止め。
【請求項2】
請求項1に記載の車止めにおいて、
前記第1筒状体は、地中に埋め込まれる下筒体と、この下筒体に挿入される上筒体とからなる、二分割構造を有している、ことを特徴とする車止め。
【請求項3】
請求項に記載の車止めにおいて、
前記上筒体、前記第2筒状体及び前記複数の第3筒状体は、前記下筒体に対して抜き差し可能に挿入されるものであって、
当該車止めは、さらに、
前記下筒体に隣接する位置で地中に埋め込まれるアンカー部材と、
前記アンカー部材と、前記下筒体に挿入された前記上筒体とを係脱可能に連結する連結部材と、
前記アンカー部材と前記上筒体とが前記連結部材により連結された状態で、当該連結部材による連結状態をロックする施鍵部材と、を備える、ことを特徴とする車止め。
【請求項4】
請求項1乃至の何れか一項に記載の車止めにおいて、
前記第2筒状体と前記複数の第3筒状体とは一体に接合されている、ことを特徴とする車止め。
【請求項5】
請求項1乃至の何れか一項に記載の車止めにおいて、
前記第2筒状体は、筒状の本体部と、この本体部に各々固定されて、前記各第3筒状体を、それらの水平方向の変位を許容する状態で上下方向の両側から各々支持する一対の支持部と、を備えている、ことを特徴とする車止め。
【請求項6】
請求項1乃至の何れか一項に記載の車止めにおいて、
前記第1筒状体は、金属製の筒本体と、この筒本体のうち、地上部分の外表面に設けられた樹脂又はゴムからなる保護部材とを含む、ことを特徴とする車止め。
【請求項7】
請求項1乃至の何れか一項に記載の車止めにおいて、
所定間隔を隔てて各々地中に埋め込まれる一対の前記柱状部と、
これら柱状部の上端部同士を繋ぐ連絡部とを備えた、逆U字型を有する、ことを特徴とする車止め。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車庫、道路、歩道、公園等に設置される車止めに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車庫、道路、歩道、公園等に設置され、車の進入を防止するための車止めは広く知られており、例えば特許文献1にその一例が開示されている。この特許文献1に開示された車止め(車止めポール)は、上下方向に細長い円筒体と、円筒体の外面の所望位置に設けられたフランジと、円筒体の外面に設けられ、フランジから円筒体の一端部に向かって円筒体の軸線に対して傾斜して延びる複数の羽とを備えたものである。この車止めによると、複数の羽が設けられることで、地中への埋め込みの際には比較的容易に埋め込むことができる一方、地中への埋め込み後は、引き抜くことが難しく、設置安定性が良いという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3215043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車止めは、車が衝突したときの衝突荷重を円筒体が受け止めて対抗するものであるが、主要部が単純な円筒体であるため、車の進入を阻止するという点での抑止力にはなるものの、必ずしも実行性が高いとは言えないものが多い。すなわち、低速(時速30キロ~40キロ程度)であっても、車が衝突すると倒れたり折れたりして車の進入を許容してしまうおそれがあり、近年見られる誤操作や不注意に起因する車の暴走による進入を阻止する上で十分とは言えない。その一方で、円筒体の肉厚を厚くしたり中実にしてその強度を単に上げるだけでは、車の侵入を防止できても、衝突時にドライバーが受けるダメージが大きくなる、というトレードオフの問題がある。
【0005】
本発明は、車の進入をより確実に抑制しつつ、ドライバー保護の観点からも有利な車止めを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、柱状部を有する車止めであって、前記柱状部は、一部が地中に埋め込まれて上下方向に延びる第1筒状体と、前記第1筒状体の内部に、当該第1筒状体との間に空間が形成される状態で配置されて、地中と地上とに亘って上下方向に延びる第2筒状体と、前記第1筒状体と前記第2筒状体との間の前記空間に配置されて当該第1、第2筒状体の周方向に配列され、かつ、各々上下方向に延びる複数の第3筒状体と、を備え、前記第1筒状体、第2筒状体及び第3筒状体は、いずれも円筒体からなり、前記複数の第3筒状体は、各々の径が同一でかつ隣接する当該第3筒状体同士が周方向に互いに当接する状態で前記空間に配置されている、ことを特徴とする車止めを提供する。
【0007】
この車止めによると、第1筒状体、第2筒状体及び第3筒状体によって車の衝突荷重を受け止めることができるため、単一の筒状体から形成される柱状部に比べて剪断強度及び曲げ強度を高めることができる。そのため、車の衝突荷重をより確実に受け止めて、車の進入を阻止することが可能となる。しかも、車の衝突荷重を受けて第1筒状体が変形すると、その変形に追従して第2筒状体及び第3筒状体がずれる(又は変形を伴いながらずれる)ことで、衝突荷重が効果的に吸収される。そのため、ドライバーに与えるダメージを軽減することも可能となる。従って、この車止めによれば、車の進入をより確実に抑制しつつ、ドライバーを保護する上でも有利なものとなる。
【0009】
また、第1筒状体に対する車の衝突方向に拘わらず、上記の作用効果を享受することが可能となる。
【0010】
上記車止めにおいて、前記第1筒状体は、地中に埋め込まれる下筒体と、この下筒体に挿入される上筒体とからなる、二分割構造を有している構成とできる。
【0011】
この態様では、車止めを設置する際には、下筒体を地中に埋め込み、例えば第2、第3筒状体を下筒体に挿入した後、上筒体を下筒体に挿入すればよい。そのため、運搬性や現場での施工性の向上が望める。
【0012】
上記車止めにおいて、前記上筒体、前記第2筒状体及び前記複数の第3筒状体は、前記下筒体に対して抜き差し可能に挿入されるものであって、当該車止めは、さらに、前記下筒体に隣接する位置で地中に埋め込まれるアンカー部材と、前記アンカー部材と、前記下筒体に挿入された前記上筒体とを係脱可能に連結する連結部材と、前記アンカー部材と前記下筒体とが前記連結部材により連結された状態で、当該連結部材による連結状態をロックする施鍵部材と、を備える構成とできる。
【0013】
この態様では、必要な場合には、上筒体、第2筒状体及び第3筒状体を下筒体から取り外すことで車の侵入を許容することができる。従って、より使用し易いものにでき、利便性の向上を図ることができる。しかも、上筒体、第2筒状体及び第3筒状体が下筒体に挿入された状態では、施鍵部材によって、上筒体、第2筒状体及び第3筒状体を下筒体から取り外しできない状態にできる。そのため、上筒体、第2筒状体及び第3筒状体が勝手に下筒体から取り外されて持ち去られる等のトラブルを防止することが可能となる。
【0014】
上記車止めにおいて、前記第2筒状体と前記複数の第3筒状体とは一体に接合されている構成とできる。
【0015】
この態様では、第1筒状体内に第2、第3筒状体を一体に挿入し、配設することができる。したがって、施工性が良いものとなる。
【0016】
上記車止めにおいて、前記第2筒状体は、筒状の本体部と、この本体部に各々固定されて、前記各第3筒状体を、それらの水平方向の変位を許容する状態で上下方向の両側から各々支持する一対の支持部と、を備えている構成とできる。
【0017】
この態様では、第3筒状体の水平方向への変位を許容しつつ、すなわち衝突荷重の吸収性能を確保しつつ、施工性の向上を図ることができる。
【0018】
上記車止めにおいて、前記第1筒状体は、金属製の筒本体と、この筒本体のうち、地上部分の外表面に設けられた樹脂又はゴムからなる保護部材とを含む構成とできる。
【0019】
この態様では、筒本体のうち、地上部分の外表面に樹脂又はゴムからなる保護部材が設けられているため、歩行者や自転車との衝突時に、当該歩行者等を保護する上で有利なものとなる。
【0020】
上記車止めにおいて、所定間隔を隔てて各々地中に埋め込まれる一対の前記柱状部と、これら柱状部の上端部同士を繋ぐ連絡部とを備えた、逆U字型を有する構成とできる。
【0021】
この態様では、一対の柱状部それぞれが、車の衝突荷重を確実に受け止めつつ、当該衝突荷重を吸収することができる。したがって、上記のような作用効果を享受できる幅広の車止めを提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、車の進入をより確実に抑制しつつ、ドライバー保護の観点からも有利な車止めを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態の車止めの正面図である。
図2図1のA部の拡大断面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4図4(a)は、第1実施形態の車止めに設けられた第2筒状体及び第3筒状体の平面図、図4(b)は、図4(a)の正面図である。
図5】本発明の第2実施形態の車止めの正面図である。
図6】第2実施形態の車止めに設けられた第2筒状体及び第3筒状体の一部を断面で示した正面図である。
図7図5のVII-VII線断面図である。
図8】本発明の第3実施形態の車止めの正面図である。
図9図8の要部の拡大図である。
図10図9の要部の側面図である。
図11図11(a)は、第3実施形態の車止めに設けられたアンカー部材とそのアンカー部材に連結された連結部材との平面図、図11(b)は、図11(a)の正面図、図11(c)は、図11(a)の側面図である。
図12】アンカー部材に連結された連結部材が下筒体の挿入口を塞いだ状態の要部の側面図である。
図13】本発明の第4実施形態の車止めの正面図である。
図14図13の一部の側面図である。
図15図13のXV-XV線断面図である。
図16】本発明の第5実施形態の車止めの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の車止めの正面図、図2は、図1のA部の拡大断面図、図3は、図2のIII-III線断面図である。
【0026】
第1実施形態の車止め10は、図1に示すように、一部が地中T1に埋め込まれる柱状部1を有する。柱状部1は、図2図3に示すように、第1筒状体2と、第2筒状体3と、複数(この実施形態では10個)の第3筒状体4とを備えている。第1筒状体2、第2筒状体3及び複数の第3筒状体4は、何れも金属製(当例では鉄製)である。
【0027】
第1筒状体2は、地中T1に埋め込まれる下筒体21と、この下筒体21に挿入される上筒体22とからなる、二分割構造を有している。
【0028】
下筒体21は、図1に示すように、略円筒体からなり、上端面に上筒体22を挿入するための挿入口21aを備えている。この実施形態では、下筒体21の下端部は、先細りに形成されているが円筒状であってもよい。
【0029】
下筒体21には、上筒体22、第2筒状体3、及び複数の第3筒状体4それぞれの下部が収容される。
【0030】
上筒体22は、円筒体からなり、下筒体21の挿入口21aから内部に挿入可能な外径を有する。また、この実施形態では、上筒体22の上部に反射テープ部材22aが設けられている。
【0031】
第2筒状体3は、図3に示すように、その外径が上筒体22の内径よりも小さい。より詳しくは、第2筒状体3の外径は、上筒体22の内側に第2筒状体3が入った状態における当該上筒体22の内周面と当該第2筒状体3の外周面との間に形成される隙間tによって全周にわたって空間部5ができる大きさに形成されている。
【0032】
また、図4に示すように、第2筒状体3の上端部近傍に、第3筒状体4の上端と接合された上支持部材31が設けられ、第2筒状体3の下端部に、第3筒状体4の下端と接合された下支持部材32が設けられている。
【0033】
上支持部材31は、円環板状のものから構成され、第2筒状体3の上端部近傍の外周に、溶接等の固定手段によって固定されている。
【0034】
下支持部材32は、円板状のものから構成され、第2筒状体3の下端面に、溶接等の固定手段によって固定されている。なお、この実施形態の下支持部材32は、中心部に、円形状の孔32aを備え、当該孔32aから水抜き等、できるようになっている。
【0035】
各第3筒状体4は、外径が、第2筒状体3の外径よりも小さく、かつ上筒体22の内周面と第2筒状体3の外周面との間に形成される上記空間部5の隙間t(すなわち、上筒体22の内周面と第2筒状体3の外周面との径方向の隙間寸法)よりも小さい外径を有する円筒体から構成されている。
【0036】
そして、第3筒状体4は、上記空間部5に、各第3筒状体4の軸方向が第2筒状体3の軸方向に一致するように、周方向に配列されている。この配列状態で、各第3筒状体4の上端と上支持部材31の下面とが溶接等の固定手段によって固定され、各第3筒状体4の下端と下支持部材32の上面とが溶接等の固定手段によって固定されている。これにより、第2筒状体3と複数の第3筒状体4とがユニット化されている。なお、第2筒状体3(上支持部材31及び下支持部材32)と各第3筒状体4と溶接は、点溶接など比較的強度の低い溶接態様が採用されている。
【0037】
なお、図3に示すように、上筒体22の内周面と第3筒状体4の外周面との間には微少な隙間が設けられている。しかし、上筒体22の内周面と第3筒状体4との間には隙間が形成されていなくてもよく、この点は適宜変更できる。以下の第2~第5実施形態においても同じである。
【0038】
この車止め10は、例えば、次のようにして駐車場等に設置される。
【0039】
まず、図1に示すように、下筒体21の上端面が地面T2に略一致するまで、下筒体21が地中T1に埋め込まれる。この際、下筒体21の下端部が先細りに形成されていることにより、下筒体21を容易に埋め込むことができる。下筒体21の内部には、図2に示すように、砕石や砂などの高さ調整材6が収容される。
【0040】
次に、下筒体21に、ユニット化された第2筒状体3と複数の第3筒状体4とが挿入されるとともに、上筒体22が、第2筒状体3と複数の第3筒状体4とに被さるように挿入される。具体的には、高さ調整材6の位置まで、下筒体21に対して上筒体22、第2筒状体3及び第3筒状体4が挿入される。これにより、上筒体22、第2筒状体3及び複数の第3筒状体4それぞれの下部が下筒体21に収容される。そして、この状態で、下筒体21の内周面と上筒体22の外周面との間にコンクリート等の充填材が充填されることにより、これら下筒体21と上筒体22とが一体化される。
【0041】
この状態では、上筒体22の内周面と第2筒状体3の外周面との間の空間部5に複数の第3筒状体4が配置されるとともに、上筒体22、第2筒状体3及び複数の第3筒状体4それぞれが地中と地上とに亘って上下方向に延びた状態になる。
【0042】
なお、車止め10の上記のような設置作業においては、第2筒状体3と複数の第3筒状体4とがユニット化されているため、例えば第2筒状体3の上端部を把持して、第2筒状体3と共に複数の第3筒状体4を一緒に下筒体21に挿入することできる。したがって、施工性が良い。
【0043】
また、第1筒状体2は、地中に埋め込まれる下筒体21と、この下筒体21に挿入される上筒体22とからなる二分割構造を有しているため、上記の通り、下筒体21を地中T1に埋め込み、これに第2筒状体3等を挿入した後、上筒体22を下筒体21に挿入すればよく、この点においても施工性が良い。すなわち、車止め10が、仮に第1筒状体2、第2筒状体3及び複数の第3筒状体4が一体化されたものであると、その運搬、取り扱いに大きな労力を有する。しかし、上記のような分解構造が採用されていることで、個々の部材の運搬や取り扱いに要する労力を軽減することができ、現場での施工性が良いものとなる。
【0044】
以上のような、第1実施形態の車止め10によれば、単一の筒状体から柱状部が形成される従来の車止めに比べて柱状部1の剪断強度及び曲げ強度が高められる。そのため、柱状部1(第1筒状体2、第2筒状体3及び第3筒状体4)によって車の衝突荷重をより確実に受け止めることが可能であり、よって、車の侵入をより確実に阻止することが可能となる。しかも、車の衝突荷重を受けて第1筒状体2が変形すると、その変形に追従して第2筒状体3及び第3筒状体4が水平方向にずれる(又は第2筒状体3及び第3筒状体4が変形を伴いながら水平方向にずれる)ことで、衝突荷重が効果的に吸収される。そのため、ドライバーが受けるダメージを軽減することも可能となる。
【0045】
したがって、この車止め10によれば、車の進入をより確実に抑制しつつ、ドライバーを保護することが可能となる。
【0046】
また、第1筒状体2、第2筒状体3及び第3筒状体4は、いずれも円筒体からなるため、第1筒状体2に対する車の衝突方向に拘わらず、上述した作用効果を享受することができる。すなわち、車の衝突方向に拘わらず、車の衝突荷重を確実に受け止めることができるとともに、衝突荷重を吸収することができる。
【0047】
なお、上記実施形態では、第2筒状体3(上支持部材31及び下支持部材32)と各第3筒状体4とは溶接等の固定手段により固定されてユニット化されているが、第2筒状体3と各第3筒状体4とが固定されていない態様を採用することも可能である。
【0048】
また、上記実施形態では、下筒体21の内周面と上筒体22の外周面との間にコンクリート等の充填材が充填され、これにより下筒体21と上筒体22とが一体化され、上筒体22の抜き差しが不能な構造となっている。しかし、コンクリート等の充填材を充填することなく、下筒体21に対して上筒体22を抜き差し可能な状態にしておけば、必要な場合には、上筒体22、第2筒状体3及び第3筒状体4を下筒体21から取り外すことで、車の侵入を許容できる。従って、より使用し易いものとなり、利便性の向上を図ることができる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の車止め100について、図5図7に基いて説明する。第2実施形態の車止め100は、一部が地中T1に埋め込まれる柱状部1Aを有する。柱状部1Aは、第1実施形態のものと同様に、第1筒状体102と、第2筒状体103と、複数(この実施形態では10個)の第3筒状体104とを備えている。第1筒状体102は、第1実施形態のものと同様に、下筒体121と上筒体122とからなる二分割構造を有している。
【0050】
第1実施形態では、複数の第3筒状体4が、上下の支持部材31、32を介して第2筒状体3に溶接等の固定手段によって固定されていたが、第2実施形態では、複数の第3筒状体104は第2筒状体103に固定されてはおらず、当該第2筒状体103に設けられた第1支持部132及び第2支持部133によって水平方向に移動可能な状態で支持されている。
【0051】
詳しくは、図6に示すように、第2筒状体103は、下端に設けられた第1支持部132と、上端部に設けられた第2支持部133とを備えている。
【0052】
第1支持部132は、第1支持本体132aと、この第1支持本体132aから上向きに延びる複数の第1抜け止め片132bとを備えている。
【0053】
第1支持本体132aは、第1実施形態の下支持部材32と同様に円板状のものから構成され、第2筒状体103の下端に、溶接等の固定手段によって固定されている。
【0054】
第1抜け止め片132bは、第3筒状体104の数(この実施形態では10個)と同じ数だけ設けられている。各第1抜け止め片132bは、外径が第3筒状体104の内径よりも小さく、第3筒状体104に挿入可能な大きさの円柱体からなる。この実施形態では、当該第1抜け止め片132bに対して第3筒状体104が水平方向に移動可能となるように、第1抜け止め片132bの径が設定されている。換言すれば、第1抜け止め片132bは、第3筒状体104に遊挿(遊嵌)可能な径を有している。
【0055】
複数の第1抜け止め片132bは、第1支持本体132aの上面であってかつ第2筒状体3の外周に配列された第3筒状体104に対応する位置に、第2筒状体103と平行になるように配設されており、各々第1支持本体132aの上面に溶接等の固定手段によって固定されている。そして、各第1抜け止め片132bは、第2筒状体103の外周側に配列された各第3筒状体104の内部に下側から挿入されている。
【0056】
第2支持部133は、第2支持本体133aと、第2支持本体133aから下向きに延びる、第1抜け止め片132bと同数の第2抜け止め片133bとを備えている。
【0057】
第2支持本体133aは、第1実施形態の上支持部材31と同様に円環板状のものから構成され、第2筒状体103の上端近傍の外周面に溶接等の固定手段によって固定されている。
【0058】
第2抜け止め片133bは、第1抜け止め片132bよりも軸方向の長さがやや短く形成されていること以外、第1抜け止め片132bと同等の構成を有している。但し、第2抜け止め片133bの長さは、第1抜け止め片132bよりも長くてもよいし、同じ長さであってもよい。
【0059】
各第2抜け止め片133bは、第2支持本体133aの下面であってかつ各第1抜け止め片132bの上方位置(すなわち、各第1抜け止め片132bに対向する位置)に配設され、各々第2支持本体133aの下面に溶接等の固定手段によって固定されている。そして、各第2抜け止め片133bは、各第3筒状体104の内部に上側から遊嵌(遊挿)状態で挿入されている。
【0060】
従って、第2筒状体103は、第1支持部132と第2支持部133とを介して第3筒状体104を抜け止めした状態で支持している。
【0061】
第2実施形態の車止め100における上記以外の構成は、第1実施形態の車止め10と基本的には同じである。
【0062】
このように構成された第2実施形態の車止め100によっても第1実施形態の車止め10と同様の作用効果、すなわち、車の進入をより確実に抑制しつつ、ドライバーをより高度に保護することが可能となる、とうい作用効果を享受することができる。特に、第2実施形態の車止め100では、第3筒状体104が第1、第2の支持部132、133を介して水平方向に移動可能な状態で第2筒状体103に支持されているので、第1筒状体102が車の衝突荷重を受けて変形すると、その変形に追従して第3筒状体104が水平方向に比較的容易に変位する。つまり、衝突荷重の入力に対して当該衝突荷重を受けつつ第3筒状体104を円滑に変位させることができる。よって、第2実施形態の車止め100によれば、衝突荷重の吸収性能をより確実に確保することが可能となる。
【0063】
なお、第2実施形態の車止め100においても、第2筒状体103が第1、第2の支持部132、133を介して第3筒状体104を支持しているため、例えば第2筒状体103の上端部を把持して、当該第2筒状体103及び複数の第3筒状体104を一体に下筒体121に挿入することができる。したがって、第1実施形態と同様に、車止め100を設置する際の施工性が良い。
【0064】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の車止め200について、図8図12に基いて説明する。
【0065】
第3実施形態の車止め200は、一部が地中T1に埋め込まれる柱状部1Bを有する。柱状部1Bは、第1実施形態のものと同様に、第1筒状体202と、第2筒状体203と、複数の第3筒状体204とを備えている。第3筒状体204は、第1実施形態のものと同等の構成を有している。
【0066】
第1筒状体202は、第1実施形態のものと同様に、下筒体221と上筒体222とからなる二分割構造を有している。下筒体221は、第1実施形態と同等の構成を有している。
【0067】
上筒体222は、外周に、外面から外側に突設された突設片222aを備えている。また、突設片222aには、閂片挿通孔222bが設けられている。上筒体222のそれ以外の構成は、第1実施形態のものと同じである。なお、第3実施形態では、下筒体221の内周面と上筒体222の外周面との間にはコンクリート等の充填材は充填されておらず、よって、上筒体222は下筒体221に対して抜き差しが可能な構造となっている。
【0068】
第2筒状体203は、第1実施形態のものと略同等の構成を有しているが、第3実施形態では、第2筒状体203と第3筒状体204の軸方向の長さが略同等の長さに設定されている。
【0069】
なお、第3実施形態では、第2筒状体203に、第1実施形態の上支持部材31及び下支持部材32に対応するものは設けられていない。つまり、第3実施形態では、第2筒状体203の外周に、複数(10個)の第3筒状体204が配列され、各第3筒状体204と第2筒状体203とが直接溶接等の固定手段により固定されている。この場合、各第3筒状体204と第2筒状体203との溶接は、点溶接など比較的強度の低い溶接態様が採用されている。但し、第2筒状体203と第3筒状体204との固定(支持)構造としては、例えば第1実施形態や第2実施形態の構造を採用してもよく、この点は適宜変更可能である。
【0070】
第3実施形態の車止め200は、さらに、アンカー部材206と、連結部材207と、施鍵部材208とを備えている。
【0071】
アンカー部材206は、下筒体221に隣接する位置に配置されている。このアンカー部材206は、地中T1に打ち込まれる2本のアンカー部261と、アンカー部261それぞれの上端と連結されて地面T2に配設される板状の頭部262とを備えている。
【0072】
連結部材207は、連結部材本体271と、連結部材本体271をアンカー部材206に回動自在に係止する係止部材272とを備えている。
【0073】
連結部材本体271は、下筒体221の挿入口221aを上方から塞ぐことができる大きさ(径)を有する円板部271aと、係止部材272が取り付けられる被取付部271bとを備えている。円板部271aには、上筒体222の突設片222aが挿通される突設片挿通孔271cが形成されている。
【0074】
図9に示すように、係止部材272は、蝶番から構成されている。係止部材272は、その一端側が連結部材本体271の被取付部271bに取付けられ、他端側がアンカー部材206の頭部262に取り付けられている。つまり、係止部材272は、連結部材本体271の被取付部271bとアンカー部材206の頭部262とに跨がった状態でこれらに取り付けられている。これにより、下筒体221に上筒部222が挿入された状態では、図9に示すように、上筒体222にもたれ掛かって起立姿勢となる位置(図9に示す位置)に円板部271aを配置することができ、下筒体221から上筒部222等が抜き取られた状態では、図12に示すように、下筒体221の挿入口221aを塞ぐように地面T2に伏した位置(図12に示す位置)に円板部271aを配置することができるようになっている。そして、円板部271aが上筒体222にもたれ掛かった起立姿勢となる位置(図9に示す位置)に配置されると、上筒体222の突設片222aが当該円板部271aの突設片挿通孔271cを貫通するようになっている。
【0075】
施鍵部材208は、この実施形態では南京錠であり、施鍵部材本体281と、U字状の閂片282とを備えている。閂片282は、上筒体222に設けられた突設片222aの閂片挿通孔222bに挿通可能に設けられており、図9に示すように、突設片挿通孔271cを突設片222aが貫通する状態で、閂片挿通孔222bに閂片282が挿入されるとともに施鍵部材本体281に係止されることにより、施鍵部材208が施鍵される。つまり、アンカー部材206と上筒体222とが連結部材207により連結された状態で、当該連結部材207による連結状態が施鍵部材208によりロックされる。
【0076】
このように構成された第3実施形態の車止め200によっても第1、2実施形態と同様に、車の進入をより確実に抑制しつつ、ドライバーをより高度に保護することが可能となる、とうい作用効果を享受することができる。
【0077】
また、この第3実施形態の車止め200によれば、必要な場合には、上筒体222、第2筒状体203及び第3筒状体204を下筒体221から取り外すことで車の侵入を許容することができる。従って、より使用し易いものにでき、利便性の向上を図ることができる。特に、上筒体222、第2筒状体203及び第3筒状体204を下筒体221から取り外した状態では、下筒体221の挿入口221aを円板部271aで塞ぐことができるため、下筒体221に異物が入り込んで挿入口221aが塞がれる、あるいは歩行者のくつ(ヒール部分等)が嵌まって歩行の妨げになるといった事を防止することができる。
【0078】
しかも、上筒体222、第2筒状体203及び第3筒状体204が下筒体221に挿入された状態では、アンカー部材206と上筒体222とを連結部材207により連結して、当該連結部材207による連結状態を施鍵部材208によりロックすることができるので、上筒体222、第2筒状体及203及び第3筒状体204が勝手に下筒体221から取り外されて持ち去られる等のトラブルを未然に防止することができる。
【0079】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態の車止め300について、図13図15に基いて説明する。
【0080】
第4実施形態の車止め300は、第3実施形態のものと同様に、一部が地中T1に埋め込まれる柱状部1Cと、アンカー部材306と、連結部材307と、施鍵部材308とを備えており、柱状部1Cは、第1筒状体302と、第2筒状体303と、複数の第3筒状体304とを備えている。第2筒状体303、複数の第3筒状体304、アンカー部材306、連結部材307及び施鍵部材308は、第3実施形態のものと略同等の構成を有している。
【0081】
第4実施形態では、第1筒状体302は、金属製の筒本体321と、この筒本体321のうち、地上部分の外表面に設けられた樹脂又はゴム等の弾性部材からなる保護部材322とから構成されている。
【0082】
筒本体321は、地中T1に埋め込まれる下筒体321aと、この下筒体321aに挿入される上筒体321bとからなる二分割構造である。これら下筒体321aと上筒体321bとは、第3実施形態のものと略同等の構成を有しており、上筒体321bには、閂片挿通孔を有する突設片321dが設けられている。
【0083】
保護部材322は、上筒体321bを嵌挿する上筒体嵌挿凹部322aを有する。この上筒体嵌挿凹部322aは、上筒体321bを嵌挿できる内径を有するとともに、上筒体321bの地上部分321eの長さLと略同じ深さで形成されている。また、保護部材322には、筒本体321の突設片321dの先端部が挿通される保護部材用突設片挿通孔322bが設けられている。
【0084】
そして、保護部材322の上筒体嵌挿凹部322aに、上筒体321bの地上部分321eが嵌挿されるとともに、上筒体321bの突設片321dが保護部材322の保護部材用突設片挿通孔322bを通じて保護部材322の外側に導出されている。
【0085】
突設片321dは、連結部材307の円板部371aに設けられた突設片挿通孔に挿通されており、この突設片321dの閂片挿通孔に、施鍵部材308の閂片が挿通されて施鍵部材本体382に係止されている。
【0086】
このように構成された第4実施形態の車止め300によっても第1~第3実施形態と同様に、車の進入をより確実に抑制しつつ、ドライバーをより高度に保護することが可能となる、とうい作用効果を享受することができる。また、この第3実施形態と同様に、必要な場合には、上筒体321b(保護部材322)、第2筒状体303及び第3筒状体304を下筒体321aから取り外すことで車の侵入を許容することができ、これにより、利便性の向上を図ることができる。
【0087】
加えて、この第4実施形態の車止め300によれば、第1筒状体302のうち、上筒体321bの地上部分の外表面に樹脂又はゴムからなる保護部材322が設けられているため、歩行者や自転車が衝突した時に、当該歩行者等を保護する上で有利となる。
【0088】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態の車止め400について、図16に基いて説明する。
【0089】
第5実施形態の車止め400は、所定間隔を隔てて各々地中に埋め込まれる一対の柱状部401と、これら柱状部401の上端部同士を繋ぐ連絡部402とを備えている。各柱状部401は、第1実施形態の柱状部1(車止め10)と略同等の構成を有する。
【0090】
連絡部402は、この実施形態では、正面視で略半円弧状を呈する円筒体から構成されている。連絡部402は、その両端部が各柱状部401の上端部、例えば第1筒状体の上筒体の上端部に溶接等の固定手段により接合されることにより、各柱状部401に連結されている。この場合、円筒体をU字型に屈曲加工することにより、第1筒状体の上筒体と連絡部402とを連続した一体構成としてもよい。
【0091】
これにより、車止め400の全体の形状が正面視で逆U字型を呈し、先の第1~第4実施形態のものに比べて幅広のものに形成されている。
【0092】
このように構成された第5実施形態の車止め400では、一対の柱状部401それぞれが、車の衝突荷重を確実に受け止めつつ、当該衝突荷重を吸収することができる。したがって、設置場所等に応じた幅広の車止めを形成でき、利用価値の高いものとなる。
【0093】
なお、上述した第1~第5実施形態の車止め10、100、200、300、400は、本発明に係る車止めの好ましい実施形態の例示であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0094】
例えば、第1~第5実施形態では、第2筒状体は、第3筒状体よりも径が大きいものから構成されたが、この形態のものに限らず、第2筒状体は、第3筒状体よりも径が小さいものから構成され、或いは、第3筒状体と同じ径のものから構成されてもよく、適宜変更できる。
【0095】
また、第1~第5実施形態では、第2筒状体は、1個から構成されたが、複数の第2筒状体を備えた構成であってもよく、適宜変更できる。
【0096】
また、第1~第5実施形態では、第1~第3筒状体は、全て円筒体から構成されたが、この形態のものに限らず、適宜変更できる。例えば第1~第3筒状体の全部又は第1~第3筒状体の何れか1つ或いは2つを断面多角形(三角、四角、五角…)の筒状体から構成してもよい。
【0097】
また、第1~第5実施形態では、第3筒状体の数は10個であるが、第3筒状体の数は、2個以上であればよく、適宜変更できる。
【0098】
また、第1~第5実施形態では、第3筒状体は、全て同じ大きさ(同じ径)のものから構成されたが、この形態のものに限らず、適宜変更でき、例えば径の異なる2種以上の第3筒状体を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1、1A、1B、1C、401 柱状部
2、102、202、302 第1筒状体
3、103、203、303 第2筒状体
4、104、204、304 第3筒状体
21、121、221、321a 下筒体
22、122、222、321b 上筒体
10、100、200、300、400 車止め
206、306 アンカー部材
207、307 連結部材
208、308 施鍵部材
322 保護部材
402 連絡部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16