(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】美爪料除去剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20220530BHJP
A61Q 3/04 20060101ALI20220530BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20220530BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q3/04
A61K8/35
A61K8/37
(21)【出願番号】P 2020012607
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2020-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】513029633
【氏名又は名称】三協化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 智紀
(72)【発明者】
【氏名】荒川 陽祐
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-331522(JP,A)
【文献】特開2017-141187(JP,A)
【文献】特開2009-035498(JP,A)
【文献】国際公開第2014/199966(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0158835(US,A1)
【文献】特開平06-248579(JP,A)
【文献】Nail Polish Remover,(ID#):4497329,Mintel GNPD,2016年12月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン及びケン化度1~50モル%の部分ケン化ポリビニルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂(A)、及び
沸点が40~130℃である有機溶剤(B)
を含有する美爪料除去剤であって、
前記有機溶剤(B)が、
ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、酢酸エチル、アセトン及びメチルエチルケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記熱可塑性樹脂(A)の含有量が1~70質量%であ
り、
前記有機溶剤(B)の含有量が20質量%以上95質量%以下である、美爪料除去剤。
【請求項2】
前記有機溶剤(B)が、ジメチルカーボネートである、請求項
1に記載の美爪料除去剤。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂(A)が、ポリビニルブチラール及びポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1
又は2に記載の美爪料除去剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネイルエナメルやジェルネイル等の美爪料を除去する美爪料除去剤(nail-coating remover)に関し、詳しくはゲル状美爪料除去剤に関する。
【背景技術】
【0002】
手や足の爪の表面又は付け爪の表面等に塗布された美爪料を除去するために使用される美爪料除去剤(以下、「リムーバー」ともいう)の形態としては、液状のものが一般的である。リムーバーの形態が液状である場合、リムーバーを脱脂綿に染み込ませて爪の上に配置し、アセトン等の有機溶剤がすぐに揮発するのを防ぐためにアルミホイルで指を包み込む必要がある。そのため、爪だけでなく皮膚も脱脂されて肌荒れを起こすという問題がある。
【0003】
これに対し、増粘剤が配合されたゲル状のリムーバーも知られている。リムーバーの形態がゲル状である場合、爪に塗布した際に垂れず、爪のみにピンポイントで塗布することができるため、液状のリムーバーに比べて、取り扱いやすいという利点がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、爪に直接塗り付けるだけで、ネイルサロン等で行われている従来のソフトジェルネイル除去方法と同程度の除去効果を発揮し得るソフトジェルネイル用リムーバーゲル及びその製造方法を提供することを目的として、ヒドロキシアルキルセルロース、アセトン親和性スメクタイト及び有機溶剤を含有し、有機溶媒がアセトンを含有するソフトジェルネイル用リムーバーゲルが開示されている。
【0005】
特許文献2には、形成されたゲルの状態が安定で、外観、使用感に優れたゲル状ネイルエナメルリムーバーを提供することを目的として、シリカを0.1~50重量%含み、残分が湿潤剤を含む溶剤からなり、該溶剤に対する湿潤剤の重量比が4以下であるゲル状ネイルエナメルリムーバーが開示されている。
【0006】
特許文献3には、外観が透明で、安全性、保存安定性、使用性に優れた特性を示す美爪料除去剤に関し、スメクタイト型粘土鉱物を特定の第4級アンモニウムイオンで処理した有機変性粘土鉱物とプロピレンカーボネートとを含有する美爪料除去剤が開示されている。
【0007】
特許文献4には、引火性が低く、爪や皮膚を脱脂することがないプロピレンカーボネートを主溶剤とし、ベタつきや、高分子の後残りなどの弊害がなく、充分なゲル強度を有するゲル状エナメルリムーバーを提供することを目的として、次の成分(a)~(d):(a)プロピレンカーボネート20~95重量%、(b)エタノール、イソプロピルアルコール及びn-プロピルアルコールからなる群より選ばれる低級アルコール2~75重量%、(c)カルボキシビニルポリマー0.1~5重量%、(d)エチレンジアミンテトラポリオキシエチレンポリオキシプロピレン0.1~5重量%を含有するゲル状エナメルリムーバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5484624号公報
【文献】特開2000-95646号公報
【文献】特開平10-182359号公報
【文献】特許第2926363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1~4に記載されているゲル状リムーバーは、増粘剤によって増粘している。しかしながら、液状リムーバーと同様にアセトン等の有機溶剤が塗布後すぐに揮発してしまうため、依然としてアルミホイルで指を包み込む必要がある。そのため、美爪料の除去作業中、被施術者は指を使うことができず、他の作業を行うことができないという問題がある。
【0010】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、美爪料の除去性能に優れ、かつ、美爪料の除去作業中に被施術者が指を動かして他の作業を行うことができる美爪料除去剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討した結果、ポリビニルブチラール樹脂やポリビニルピロリドン樹脂等の特定の熱可塑性樹脂と、沸点が40~130℃である特定の有機溶剤とを含有する美爪料除去剤が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下に関する。
<1> ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アルキルセルロース及びケン化度1~50モル%の部分ケン化ポリビニルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂(A)、及び
沸点が40~130℃である有機溶剤(B)
を含有する美爪料除去剤であって、
前記有機溶剤(B)が、炭酸エステル類、酢酸エステル類、ケトン類、グライム類及び環状エーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記熱可塑性樹脂(A)の含有量が1~70質量%である、美爪料除去剤。
<2> 前記有機溶剤(B)が、炭素数3~5の炭酸エステル類、炭素数3~6の酢酸エステル類、炭素数3~6のケトン類、炭素数4~7のグライム類及び炭素数4~6の環状エーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記<1>に記載の美爪料除去剤。
<3> 前記有機溶剤(B)が、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸t-ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン及び1,4-ジオキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記<1>又は<2>に記載の美爪料除去剤。
<4> 前記有機溶剤(B)が、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、酢酸エチル、アセトン及びメチルエチルケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記<1>~<3>のいずれか1つに記載の美爪料除去剤。
<5> 前記有機溶剤(B)が、ジメチルカーボネートである、上記<1>~<4>のいずれか1つに記載の美爪料除去剤。
<6> 前記熱可塑性樹脂(A)が、ポリビニルブチラール及びポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも一種である、上記<1>~<5>のいずれか1つに記載の美爪料除去剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明の美爪料除去剤は、造膜性に優れるため、美爪料の除去作業中に被施術者が指を動かして他の作業を行うことができ、しかも、有機溶剤の配合量を減らしても美爪料を効率的に除去することができ、美爪料の除去性能に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。本明細書において、「XX~YY」の記載は、「XX以上YY以下」を意味する。
【0015】
本明細書において、「美爪料除去剤」とは、ネイルエナメル等の非光硬化型ネイル化粧品と、ソフトジェルネイル等の光硬化型ネイル化粧品の双方の美爪料を除去することができるリムーバーを意味する。ただし、ジェルネイルにおいては、主にベースコートの除去を目的とする。
【0016】
本発明の美爪料除去剤は、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アルキルセルロース及びケン化度1~50モル%の部分ケン化ポリビニルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂(A)、及び沸点が40~130℃である有機溶剤(B)を含有する美爪料除去剤であって、前記有機溶剤(B)が、炭酸エステル類、酢酸エステル類、ケトン類、グライム類及び環状エーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記熱可塑性樹脂(A)の含有量が1~70質量%である。
【0017】
本発明の効果が得られる理由は定かではないが、以下のように推定される。
本発明のリムーバーに含まれる熱可塑性樹脂(A)が有機溶剤(B)中に分散して水素結合等の相互作用により安定した多層構造体による立体網状構造を形成し、その結果として増粘という現象が生じる。ここで、リムーバーの空気側表面の有機溶剤(B)が揮発し、熱可塑性樹脂(A)による網状構造が被膜を形成する。被膜が形成されることで、美爪料の除去作業中に被施術者が指を動かしてもリムーバーが垂れることを抑制できる。また、被膜が形成されると、リムーバーの空気側表面からの有機溶剤(B)の揮発を抑制するとともに、リムーバーの爪側表面から有機溶剤(B)が美爪料に浸透することで、効率的に美爪料を除去することができる。
なお、従来増粘剤として使用されているベントナイトやシリカでは、増粘するものの被膜を形成しないため、有機溶剤(B)がすぐに揮発してしまう。また、ポリエチレングリコールでは、枝分かれの無い構造をしているため有機溶剤中でのポリエチレングリコール同士の相互作用が弱く、充分な網状構造を形成できず被膜を形成できない。
【0018】
<熱可塑性樹脂(A)>
本発明のリムーバーに含まれる熱可塑性樹脂(A)は、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アルキルセルロース及びケン化度1~50モル%の部分ケン化ポリビニルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である。本発明のリムーバーが熱可塑性樹脂(A)を含むことで、熱可塑性樹脂(A)が被膜を形成し、リムーバーの空気側表面からの有機溶剤(B)の揮発を抑制するとともに、リムーバーの爪側表面から有機溶剤(B)が美爪料に浸透することで、効率的に美爪料を除去することができる。また、被膜が形成されることで、美爪料の除去作業中に指を動かしてもリムーバーが垂れることを抑制でき、使用性に優れる。
【0019】
熱可塑性樹脂(A)は、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アルキルセルロース及びケン化度1~50モル%の部分ケン化ポリビニルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、安定性、使用容易性の観点及び有機溶剤(B)との相溶性等の観点から、ポリビニルブチラール及びポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0020】
ポリビニルブチラールとしては市販品を用いることができる。例えば、積水化学工業株式会社製「エスレックB」が挙げられ、具体的には「BL-S」、「BM-1」、「BH-3」等が挙げられる。なお、「エスレックB」はポリビニルアルコールにアルデヒドを反応させて得られるポリビニルアセタールであり、ブチラール基を有する繰り返し単位以外にも、水酸基を有する繰り返し単位及びアセチル基を有する繰り返し単位を有する。本発明に用いることができるポリビニルブチラールは、ブチラール基を有する繰り返し単位以外にも、水酸基を有する繰り返し単位及びアセチル基を有する繰り返し単位を有してもよい。
【0021】
ポリビニルブチラールの数平均分子量は、被膜を形成する観点から、好ましくは15,000~130,000、より好ましくは19,000~110,000である。
【0022】
ポリビニルピロリドンとしては市販品を用いることができる。例えば、第一工業製薬株式会社製「ピッツコール(登録商標)」が挙げられ、具体的には「K-90」(K値:92~96、重量平均分子量:1,200,000)、「K-50」(K値:48~52、重量平均分子量:250,000)、「K-30」(K値:27~33、重量平均分子量:45,000)等が挙げられる。また、Ashland製の製品では、「K-120(K値:114-130、重量平均分子量:2,100,000~3,000,000)、「K-90」(K値:85~90、重量平均分子量:1,000,000~1,700,000)、「K-60」(K値:50~62、重量平均分子量:390,000~470,000)、「K-30」(K値:36~35、重量平均分子量:40,000~80,000)等が挙げられる。更には、東京化成工業株式会社製「K90」(K値:84~95)も挙げられる。
なお、K値は、分子量と相関する粘性特性値であり、毛細管粘度計により測定される相対粘度値(25℃)をFikentscherの式に適用して算出される値である。
【0023】
ポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、被膜を形成する観点から、K値(分子量と相関する粘性特性値)として、好ましくは40~120、より好ましくは50~110である。具体的には、造膜性及び剥離性の両立の観点から、K-50、K-60及びK-90などが好ましい。
【0024】
本発明におけるアルキルセルロースは、セルロースのヒドロキシ基がアルキル基でエーテル化された化合物である。セルロースのヒドロキシ基がヒドロキシアルキル基又はカルボキシアルキル基でエーテル化された化合物は、本発明におけるアルキルセルロースに含まれない。したがって、ヒドロキシアルキルセルロース及びカルボキシアルキルセルロースは、本発明におけるアルキルセルロースに含まれない。
【0025】
なお、ヒドロキシアルキルセルロースやカルボキシアルキルセルロースでは、有機溶媒への溶解選択性が低い。また、網状構造による効果が大きく、流動性を失いゼリー状になる。そして、網状構造を形成するものの、網状構造が複雑となるため網状構造内に閉じ込められた有機溶剤が揮発しにくくなり、美爪料の除去効率が低い。
【0026】
アルキルセルロースにおけるアルキル基の炭素数は、被膜を形成する観点から、好ましくは1~8、より好ましくは1~4、更に好ましくは1~3である。アルキルセルロースとしては、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース等が挙げられ、中でもエチルセルロースが好ましい。エチルセルロースとしては、例えばダウ・ケミカル社製「Ethocel(登録商標)」が挙げられ、具体的には「STD-200」(重量平均分子量:187,800、数平均分子量:80,733)等が挙げられる。
【0027】
部分ケン化ポリビニルアルコールのケン化度は、被膜を形成する観点から、1~50モル%であり、好ましくは5~40モル%、より好ましくは10~35モル%である。
部分ケン化ポリビニルアルコールの重合度は、被膜を形成する観点から、好ましくは100~2,000、より好ましくは150~1,800である。
部分ケン化ポリビニルアルコールとしては市販品を用いることができる。例えば、日本酢ビ・ポバール株式会社製「JMR」が挙げられ、具体的には、「JMR-150L」(ケン化度:23モル%)等が挙げられる。
【0028】
本発明のリムーバーにおける熱可塑性樹脂(A)の含有量は、被膜を形成する観点から、1質量%以上であり、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、そして、有機溶剤(B)への溶解性の観点から、70質量%以下であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。
【0029】
<有機溶剤(B)>
本発明のリムーバーに含まれる有機溶剤(B)は、沸点が40~130℃である有機溶剤である。そして、有機溶剤(B)は、炭酸エステル類、酢酸エステル類、ケトン類、グライム類及び環状エーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
有機溶剤(B)の沸点は、美爪料の除去効率の観点から、40℃以上であり、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、造膜性の観点から、130℃以下であり、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下である。
【0030】
炭酸エステル類は、好ましくは炭素数3~5の炭酸エステル類であり、より好ましくはジメチルカーボネート(沸点:90℃)、エチルメチルカーボネート(沸点:107℃)、ジエチルカーボネート(沸点:126℃)である。
酢酸エステル類は、好ましくは炭素数3~6の酢酸エステル類であり、より好ましくは酢酸メチル(沸点:56.9℃)、酢酸エチル(沸点:77.1℃)、酢酸n-プロピル(沸点:102℃)、酢酸イソプロピル(沸点:89.5℃)、酢酸n-ブチル(沸点:126℃)、酢酸イソブチル(沸点:118℃)、酢酸sec-ブチル(沸点:112℃)、酢酸t-ブチル(沸点:97℃)である。
ケトン類は、好ましくは炭素数3~6のケトン類であり、より好ましくはアセトン(沸点:56℃)、メチルエチルケトン(沸点:79.6℃)、ジエチルケトン(沸点:102℃)、メチルプロピルケトン(沸点:102.26℃)、メチルイソブチルケトン(沸点:118℃)である。
グライム類は、好ましくは炭素数4~7のグライム類であり、より好ましくは1,2-ジメトキシエタン(沸点:85℃)である。
環状エーテル類は、好ましくは炭素数4~6の環状エーテル類であり、より好ましくはテトラヒドロフラン(沸点:66℃)、1,4-ジオキサン(沸点:101℃)である。
【0031】
有機溶剤(B)としては、好ましくはジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸t-ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン及び1,4-ジオキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、酢酸エチル、アセトン及びメチルエチルケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくはジメチルカーボネートである。
【0032】
本発明のリムーバーにおける有機溶剤(B)の含有量は、美爪料の除去性能の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
【0033】
本発明のリムーバーにおける熱可塑性樹脂(A)及び有機溶剤(B)の合計含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。
【0034】
<その他成分>
本発明のリムーバーは、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、熱可塑性樹脂(A)及び有機溶剤(B)以外の成分(その他成分)を含んでもよい。
【0035】
本発明のリムーバーは、熱可塑性樹脂(A)と有機溶剤(B)とを相溶させるための補助溶媒として低級一価アルコールを含んでもよい。
低級一価アルコールとしては、炭素数1~4の一価アルコールが好ましい。低級一価アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、n-ヘキサノール、i-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはメタノール又はエタノール、より好ましくはエタノールである。
本発明のリムーバーにおける低級一価アルコールの含有量は、熱可塑性樹脂(A)と有機溶剤(B)とを相溶させる観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。下限値は特に限定されないが、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上である。
【0036】
本発明のリムーバーは、爪を保護し健全化を保つために爪保護剤を含んでもよい。
爪保護剤としては、ワセリン、スクワラン等の炭化水素油;ホホバ油、オリーブ油等の植物油;ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸;セタノール、オレイルアルコール等の高級アルコール;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類;グリセリン等の多価アルコールが挙げられる。
本発明のリムーバーにおける爪保護剤の含有量は、本発明の効果を阻害せずかつ爪を保護する観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。下限値は特に限定されないが、好ましくは0.5質量%以上である。
【0037】
本発明のリムーバーは、酸化防止剤を含んでもよい。酸化防止剤としては、特に限定されないが、安全性及び入手容易性の観点から酢酸トコフェロールが好ましい。
本発明のリムーバーにおける酸化防止剤の含有量は、本発明の効果を阻害せずかつリムーバーの酸化を防止する観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。下限値は特に限定されないが、好ましくは0.5質量%以上である。
【0038】
本発明のリムーバーは、熱可塑性樹脂(A)の溶解性及び有機溶媒(B)の揮発性を阻害しない量の水を含有してもよい。水の含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下である。
【0039】
<美爪料除去剤>
本発明のリムーバーの形態は、被膜を形成する観点から、ゲル状であることが好ましい。
本発明のリムーバーは、ソフトジェルネイル等の光硬化型ネイル化粧品の特にベースコート部分を効果的に除去することができる。また、ネイルエナメル等の非光硬化型ネイル化粧品も効果的に除去することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されない。
【0041】
実施例にて使用した化合物は以下のとおりである。
<熱可塑性樹脂(A)>
PVB:ポリビニルブチラール
PVB1:「BL-S」(水酸基:約22モル%、アセチル基3~5モル%、ブチラール化度:74±3モル%、BM型回転粘度計による20℃の粘度:10~30mPa・s、数平均分子量:約2.3万、ガラス転移温度:61℃)、積水化学工業株式会社製
PVB2:「BM-1」(水酸基:約34モル%、アセチル基3モル%以下、ブチラール化度:65±3モル%、BM型回転粘度計による20℃の粘度:60~100mPa・s、数平均分子量:約4.0万、ガラス転移温度:67℃)、積水化学工業株式会社製
PVB3:「BH-3」(水酸基:約34モル%、アセチル基3モル%以下、ブチラール化度:65±3モル%、BM型回転粘度計による20℃の粘度:60~120mPa・s、数平均分子量:約11.0万、ガラス転移温度:71℃)、積水化学工業株式会社製
PVP:ポリビニルピロリドン
PVP1:「K90」(K値:84~95)、東京化成工業株式会社製
PVP2:「ピッツコール K-90」(K値:92~96、重量平均分子量:1,200,000)、第一工業製薬株式会社製
PVP3:「ピッツコール K-50」(K値:48~52、重量平均分子量:250,000)、第一工業製薬株式会社製
PVP4:「ピッツコール K-30」(K値:27~33、重量平均分子量:45,000)、第一工業製薬株式会社製
PVA:部分ケン化ポリビニルアルコール(「JMR-150L」、ケン化度:23モル%、融点:190℃、日本酢ビ・ポバール株式会社製)
EC:エチルセルロース(「STD-200」、重量平均分子量:187,800、数平均分子量:80,733、ダウ・ケミカル社製)
【0042】
<(A’)成分>
HPC:ヒドロキシプロピルセルロース(「VH」、日本曹達株式会社製)
HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(「60SH-10000」、信越化学工業株式会社製)
PEG:ポリエチレングリコール(「PEG20000」、富士フイルム和光純薬株式会社製)
ベントナイト:「クニビス-110」、クニミネ工業株式会社製
【0043】
<有機溶剤(B)>
DMC:ジメチルカーボネート(沸点:90℃)
アセトン(沸点:56℃)
酢酸エチル(沸点:77.1℃)
EMC:エチルメチルカーボネート(沸点:107℃)
【0044】
<(B’)成分>
プロピレンカーボネート(沸点:240℃)
エチレンカーボネート(沸点:260.7℃)
【0045】
<その他成分>
エタノール
プロピレングリコール
酢酸トコフェロール
【0046】
実施例1~31、比較例1~8
100mLガラス瓶に、表に示す組成(質量比)で各試料を投入し、撹拌子を入れてからガラス瓶を密閉した。このガラス瓶をマグネチックスターラーに配置し、均一溶液になるまで充分な時間撹拌し、美爪料除去剤(リムーバー)を調製した。なお、常温で溶解が困難と思われた試料については、45~50℃の温水で温めながら撹拌し、リムーバーを調製した。得られた各リムーバーについて、以下の評価を行った。
【0047】
[評価方法]
(1)透明性
試料を目視観察し、以下の基準に従って評価した。透明性が高いほど、熱可塑性樹脂(A)が有機溶剤(B)と相溶して均一な状態を維持していることを示す。
5:透明
4:半透明
3:やや白濁
2:白濁
1:白濁かつ二層分離
【0048】
(2)塗布性(流動性)
試料塗布時に流動性があるかどうかを目視観察し、以下の基準に従って評価した。
〇:流動性あり
×:流動性無し
【0049】
(3)造膜性
豚蹄に、株式会社ワールドビューティワークス社製「SHINYGEL Professional」の「パワーベース」、「カラージェル」及び「クリスタルトップ」を順次塗布して、ジェルネイルを形成した。ジェルネイル上に試料を塗布して塗膜を形成した。15分間放置した後の塗膜を指触により、以下の基準に従って評価した。
5:充分に強い塗膜が形成され、かつ、付着が無い
4:充分に強い塗膜が形成されるが、やや付着あり
3:強い塗膜が形成されるが、やや付着あり
2:強い塗膜が形成されず、付着あり
1:塗膜が形成されない
【0050】
(4)剥離性
上記(3)の塗膜が形成されたジェルネイルをスパーテルにて剥離し、その難易を以下の基準に従って評価した。
5:ジェルネイルが膨潤し、ジェルネイルを軽い力で簡単に剥離できる。
4:ジェルネイルが膨潤し、ジェルネイルを軽い力でほとんどを容易に剥離できるが、一部は剥離に多少の力が必要
3:ジェルネイルが膨潤し、ジェルネイルを軽い力で剥離できる部分もあるが、半分程度は剥離に力が必要
2:ジェルネイルがあまり膨潤しておらず、ジェルネイルの剥離は困難
1:ほとんど変化がない
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
表に示した結果から明らかなとおり、ポリビニルブチラール樹脂やポリビニルピロリドン樹脂等の特定の熱可塑性樹脂(A)と、沸点が40~130℃である特定の有機溶剤(B)とを含有する本発明のリムーバーは、造膜性に優れる。そのため、美爪料の除去作業中に被施術者が指を動かして他の作業を行うことができるという優れた効果を奏する。
また、表5に示されているとおり、本発明のリムーバーは造膜性に優れるため、有機溶剤(B)の配合量を減らしても美爪料を効率的に除去することができ、美爪料の除去性能にも優れる。