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特許7080513有効成分としてリポペプチド挿入リポソームを含むワクチンアジュバントおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】有効成分としてリポペプチド挿入リポソームを含むワクチンアジュバントおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/39 20060101AFI20220530BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220530BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220530BHJP
   A61K 39/145 20060101ALI20220530BHJP
   A61K 39/25 20060101ALI20220530BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20220530BHJP
   C07K 7/06 20060101ALN20220530BHJP
   C12N 15/117 20100101ALN20220530BHJP
   C07K 14/11 20060101ALN20220530BHJP
   C07K 14/04 20060101ALN20220530BHJP
   C07K 14/18 20060101ALN20220530BHJP
   C12N 15/38 20060101ALN20220530BHJP
   C12N 15/44 20060101ALN20220530BHJP
   C12N 15/40 20060101ALN20220530BHJP
【FI】
A61K39/39
A61P31/12
A61P35/00
A61K39/145
A61K39/25
A61K39/12
C07K7/06 ZNA
C12N15/117 Z
C07K14/11
C07K14/04
C07K14/18
C12N15/38
C12N15/44
C12N15/40
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020531405
(86)(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 KR2018009173
(87)【国際公開番号】W WO2019035605
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-03-17
(31)【優先権主張番号】10-2017-0103788
(32)【優先日】2017-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0005418
(32)【優先日】2018-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520053843
【氏名又は名称】チャ ワクチン リサーチ インスティテュート カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CHA VACCINE RESEARCH INSTITUTE CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】560,Dunchon-daero,Jungwon-gu,Seongnam-si,Gyeonggi-do 13230 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ヨム,ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】アン,ビョンチョル
(72)【発明者】
【氏名】ジョ,ヒョンジン
(72)【発明者】
【氏名】ベク,スンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ウンジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,スギョン
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-506309(JP,A)
【文献】国際公開第2017/083963(WO,A1)
【文献】特表2014-528955(JP,A)
【文献】Vaccine,2011年,29,p.1045-1052
【文献】Pharmaceutics,2016年,8,7,p.1-22
【文献】Jpn J Infect Dis.,2014年,67,p.235-244
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分として、脂質二重層にリポペプチドが挿入されたリポソームおよび免疫活性物質からなる、ワクチンアジュバントであって、
リポペプチドが、Pam3-CSKKKK、PHC-SKKKK、Pam2Cys-SKKKK、PamDhc-SKKKK、Pam-CSKKKK、Dhc-SKKKKおよびFSL-1からなる群より選択されるいずれか1つ以上であり、
免疫活性物質が、Poly(I:C)およびQS21からなる群より選択されるいずれか1つ以上である、
前記ワクチンアジュバント。
【請求項2】
脂質二重層が、DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン)、DOPE(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウム)、DC-chol(3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール)、DOPG(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])、DPPC(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、DOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)およびコレステロールからなる群より選択されるいずれか1つ以上である、請求項1に記載のワクチンアジュバント。
【請求項3】
Poly(I:C)が、50~5,000bpの長さである、請求項1に記載のワクチンアジュバント。
【請求項4】
請求項1に記載のアジュバントおよび抗原を含む、ワクチン組成物。
【請求項5】
抗原が、病原体のタンパク質、組み換えタンパク質、糖タンパク質、ペプチド、多糖、リポ多糖またはポリヌクレオチドである、請求項4に記載のワクチン組成物。
【請求項6】
抗原が、細胞またはウイルス由来のものである、請求項4に記載のワクチン組成物。
【請求項7】
抗原が、水痘帯状疱疹ウイルスgE(糖タンパク質E)抗原、日本脳炎ウイルスgE(糖タンパク質E)抗原および季節性不活性型インフルエンザウイルス抗原からなる群より選択されるいずれか1つ以上である、請求項4に記載のワクチン組成物。
【請求項8】
ワクチンが、細胞媒介性免疫応答を誘導する、請求項4に記載のワクチン組成物。
【請求項9】
ワクチンが、Th1免疫応答を誘導する、請求項4に記載のワクチン組成物。
【請求項10】
活性成分として請求項4に記載のワクチン組成物を含む、ウイルス感染のための予防または治療剤。
【請求項11】
活性成分として請求項4に記載のワクチン組成物を含む、がんのための予防または治療剤。
【請求項12】
ウイルス感染のための予防または治療剤を調製するために使用するための、請求項4に記載のワクチン組成物の使用。
【請求項13】
がんのための予防または治療剤を調製するために使用するための、請求項4に記載のワクチン組成物の使用。
【請求項14】
1)脂質およびリポペプチドをそれぞれ有機溶媒中に溶解し;
2)有機溶媒中に溶解した脂質と、Pam3-CSKKKK、PHC-SKKKK、Pam2Cys-SKKKK、PamDhc-SKKKK、Pam-CSKKKK、Dhc-SKKKKおよびFSL-1からなる群より選択されるいずれか1つ以上であるリポペプチドとを混合し;
3)有機溶媒を蒸発させ、蒸留水を添加し、次いで再水和することで、多重膜ベシクル懸濁液を生成し;
4)多重膜ベシクル懸濁液にバッファー溶液を添加して、脂質二重層にリポペプチドが挿入されたリポソームを形成し;および
5)脂質二重層にリポペプチドが挿入されたリポソームを、Poly(I:C)およびQS21からなる群より選択されるいずれか1つ以上である免疫活性物質と混合する、
という工程を含む、請求項1に記載のワクチンアジュバントの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、活性成分としてリポペプチド挿入リポソームを含むワクチンアジュバント、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
水疱または帯状疱疹は、VZV(水痘帯状疱疹ウイルス)により引き起こされ、単一の脊髄または脳神経の感覚神経において分布して皮膚上で発症する疾患である。VZV感染の初期段階においては、ウイルスは、皮膚の表皮および真皮において増殖し、次いで周囲の神経細胞中に浸透し、潜伏し続ける。増殖のプロセスにおいて、潜伏期の前に水疱が発生して発疹が生じ、その後、ウイルスは神経節において潜伏し続ける。身体の耐性が低下すると、VZVは再活性化し、帯状疱疹の形態において現われる。VZVの再活性化および帯状疱疹の発症は、特に高齢者および免疫抑制剤処置を受けている者において、T細胞を中心とする細胞性免疫応答の低下と関連する。帯状疱疹が発症すると、水泡性病変が現れ、病変が回復した場合であっても、神経痛が後効果として残る。神経痛は、いったん発症すると、治癒させることが困難であり、重篤な疼痛に起因する低いクオリティ・オブ・ライフを引き起こす。
【0003】
VZVに感染し、初期応答が無視される場合、それは潜伏し続け、最終的にVZAが再活性化されて、重篤な疼痛を伴う帯状疱疹を引き起こす。この場合、抗ウイルス剤を一般に投与するが、身体において潜伏期の間に耐性を有している可能性が高いVZVの死滅または不活化を誘導することは困難である。
【0004】
VZVのための抗ウイルス剤として、アシクロビル、germinated cyclofam、ファムシクロビルなどが挙げられ、そのうち、アシクロビルが最も商品化されている。しかし、アシクロビルは、水疱発疹の24時間以内に投与される場合にのみ、有効である。言い換えれば、アシクロビルは、ウイルス感染または水疱発疹の24時間後、またはVZVの再活性化により引き起こされる帯状疱疹の発症の後に投与された場合には、抗ウイルス剤として有効ではない。
【0005】
高齢者および免疫抑制剤の患者の数が増加するにつれて、韓国において、帯状疱疹の発生率は、迅速に増大する。しかし、根本的な処置が存在しないので、それを予防するためにワクチンを開発することが必要である。
【0006】
市販の帯状疱疹ワクチンは、臨床治験においてその効率について証明されているが、帯状疱疹発生率は、ワクチンの投与により50%しか低下しておらず、このことは、それがあまり効力を有さないことを示している。加えて、市販の帯状疱疹ワクチンは、弱毒化生ワクチンであるため、ワクチンは、帯状疱疹の高い発生率により、免疫抑制剤の患者、妊婦、および妊娠する可能性があるものへの投与において限定要因を有する。帯状疱疹ウイルスは、神経節において潜伏し続け、帯状疱疹は、身体の耐性が低下した場合にVZVの再活性化により発症するので、体液性免疫応答よりも細胞媒介性免疫応答を誘導することがより重要である。したがって、有効かつ安全であって、細胞媒介性免疫応答を誘導することができる、帯状疱疹ワクチンを開発することが必要である。
【0007】
抗原の分子パターンは、免疫応答の結果に影響を及ぼす。このことは、いくつかの型の病原体関連分子パターン(PAMP)リガンド(リポ多糖、核酸、リポタンパク質またはタンパク質など)の混合物である病原性微生物全体が抗原として用いられる場合に、特に重要である。抗原提示細胞の表面上の病原体認識受容体(PRR)は、PAMPを認識して多様な共刺激分子およびサイトカインを誘導するためのシグナルを促進することにより誘導される型の免疫応答に関与する。例えば、インターフェロンガンマおよびIL-12は、ウイルス感染に対する免疫応答のために重要なTh1細胞応答を誘導する。Th1型免疫応答は、より多くのIgG2aまたはIgG2b産生および強力な細胞媒介性免疫応答を誘導する。
【0008】
このことに関して、韓国特許第10-1723605号は、VZVのタンパク質をコードするVZV由来遺伝子の挿入部位を含むプラスミドを含む、帯状疱疹を予防および処置するためのDNAワクチン組成物を記載し、韓国特許出願番号10-2014-0022799は、韓国人患者から単離されたVZV MVA06のゲノムDNAおよびそのオープンリーディングフレームによりコードされるタンパク質を含む、水疱および帯状疱疹のワクチン組成物を記載する。
【0009】
したがって、本発明者らは、安全であり、かつ、体液性免疫応答のみならず細胞媒介性免疫応答をも誘導する帯状疱疹ワクチンを開発するために研究してきた。研究の過程において、本発明者らは、Pam3-CSKKKK(Pam3CSK4)リポペプチドおよび脂質を含むリポソーム型複合アジュバントであるLipo-pamを調製し、調製されたアジュバント中にPoly(I:C)および抗原を含むワクチン組成物は、低分子組み換えタンパク質抗原に対して、体液性免疫応答のみならず細胞媒介性免疫応答をも高度に誘導することを確認した。本発明者らはまた、Pam3-CSKKKK、Dhc-SKKKK、PamDhc-SKKKKなどの多様なリポペプチド、または水痘帯状疱疹ウイルスのgE(糖タンパク質E)抗原、ならびに日本脳炎ウイルスまたは季節性不活性型インフルエンザウイルス抗原のgE(糖タンパク質E)抗原を用いて調製された本発明のワクチン組成物は、顕著な効果を示すことを確認した。したがって、本発明のアジュバントを含むワクチン組成物が、リポペプチドの型および抗原を限定することなく、商業的に有効に用いることができることを確認することにより、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】韓国特許第10-1723605号
【文献】韓国特許出願番号10-2014-0022799
【発明の概要】
【0011】
発明の要旨
活性成分としてリポペプチド挿入リポソームを含む、ワクチンアジュバント、これを含むワクチン組成物、およびその使用を提供することが、本発明の目的である。
【0012】
上の目的を達成するために、本発明は、活性成分としてリポペプチド挿入リポソームを含む、ワクチンアジュバントを提供する。
本発明はまた、本発明のアジュバントおよび抗原を含む、ワクチン組成物を提供する。
本発明はまた、活性成分として本発明のワクチン組成物を含む、ウイルス感染のための予防または治療剤を提供する。
【0013】
加えて、本発明は、活性成分として本発明のワクチン組成物を含む、がんのための予防または治療剤を提供する。
加えて、本発明は、本発明のワクチン組成物を対象に投与するステップを含む、ウイルス感染のための予防または治療方法を提供する。
加えて、本発明は、本発明のワクチン組成物を対象に投与するステップを含む、がんのための予防または治療方法を提供する。
【0014】
加えて、本発明は、ウイルス感染のための予防または治療剤を調製するために使用するための、本発明のワクチン組成物の使用を提供する。
加えて、本発明は、がんのための予防または治療剤を調製するために使用するための、本発明のワクチン組成物の使用を提供する。
【0015】
有利な効果
本発明の脂質およびリポペプチドを含む複合アジュバントであるLipo-Pamを含むワクチン組成物は、細胞媒介性免疫応答のみならず体液性免疫応答をも高度に誘導し、水痘帯状疱疹ウイルスのgE抗原ならびに日本脳炎ウイルスまたは季節性不活性型インフルエンザウイルス抗原のgE抗原を用いることにより調製されたワクチン組成物は、顕著な効果を示した。したがって、本発明の組成物は、商業的に有効に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、VZVのgE遺伝子がpPGXIIベクター中に導入されたpPGXII-VZVgEプラスミドの生成を説明する模式図である。
図2図2は、組み換えVZVgE抗原の精製ステップ(A)および最終的な精製された組み換えVZVgE抗原(B)により行われたSDS-PAGEの結果を説明する図のセットである。Mは、サイズをチェックするためのマーカーであり、1は細胞培養培地であり、2は、ブチル-セファロースクロマトグラフィー溶離液であり、3は、DEAE-セファロースクロマトグラフィー溶離液であり、4は、CHTクロマトグラフィー溶離液であり、5は、SP-セファロースクロマトグラフィー溶離液であり、6は、濃縮-脱塩ろ過後を意味する。
図3図3は、VZVgE抗体価(A)および抗体アイソタイプ(B)を、リポソームの調製方法およびリポソーム中に含まれる構成成分の比率により比較するグラフのセットである。
図4A図4は、組み換えワクチンのVZV組み換えgE抗原について、IFN-γおよびIL-4のELISPOTアッセイの結果(A)ならびにIFN-γ、IL-4およびTNF-αのELISAアッセイの結果(B)を、リポソームの調製方法およびリポソーム中に含まれる構成成分の比率により比較するグラフのセットである。
図4B図4は、組み換えワクチンのVZV組み換えgE抗原について、IFN-γおよびIL-4のELISPOTアッセイの結果(A)ならびにIFN-γ、IL-4およびTNF-αのELISAアッセイの結果(B)を、リポソームの調製方法およびリポソーム中に含まれる構成成分の比率により比較するグラフのセットである。
図5図5は、Lipo-pamを用いて調製されたワクチンの、共焦点顕微鏡により観察された構造を確認する図である。
【0017】
図6図6は、脂質およびPam3-CSKKKKの組成ならびにLipo-pam中に含まれるPoly(I:C)の用量を変更することにより調製されたVZV組み換えgE抗原およびアジュバントを含むワクチン組成物についての、全IgG抗体価を比較するグラフである。
図7A図7は、Lipo-pam中に含まれる脂質およびPam3-CSKKKKの組成ならびにPoly(I:C)の用量を変更することにより調製されたVZV組み換えgE抗原およびアジュバントを含むワクチン組成物についての、IFN-γおよびIL-4のELISPOTアッセイの結果(A)ならびにIFN-γ、IL-4およびTNF-αのELISAアッセイの結果(B)を比較するグラフのセットである。
図7B図7は、Lipo-pam中に含まれる脂質およびPam3-CSKKKKの組成ならびにPoly(I:C)の用量を変更することにより調製されたVZV組み換えgE抗原およびアジュバントを含むワクチン組成物についての、IFN-γおよびIL-4のELISPOTアッセイの結果(A)ならびにIFN-γ、IL-4およびTNF-αのELISAアッセイの結果(B)を比較するグラフのセットである。
図8図8は、Lipo-pam中に含まれる脂質の用量を変更することにより調製されたアジュバント、および様々な用量の組み換えVZVgE抗原を含む、ワクチン組成物についての全IgG抗体価を比較するグラフである。
図9A図9は、Lipo-pam中に含まれる脂質の用量を変更することにより調製されたアジュバント、および様々な用量の組み換えVZVgE抗原を含む、ワクチン組成物についての、IFN-γおよびIL-4のELISPOTアッセイの結果(A)ならびにIFN-γ、IL-4およびTNF-αのELISAアッセイの結果(B)を比較するグラフのセットである。
図9B図9は、Lipo-pam中に含まれる脂質の用量を変更することにより調製されたアジュバント、および様々な用量の組み換えVZVgE抗原を含む、ワクチン組成物についての、IFN-γおよびIL-4のELISPOTアッセイの結果(A)ならびにIFN-γ、IL-4およびTNF-αのELISAアッセイの結果(B)を比較するグラフのセットである。
図10図10は、Lipo-pam中に含まれる脂質およびPoly(I:C)の用量を変更することにより調製されたアジュバント、および様々な用量の組み換えVZVgE抗原を含む、ワクチン組成物についての全IgG抗体価を比較するグラフである。
【0018】
図11A図11は、Lipo-pam中に含まれる脂質およびPoly(I:C)の用量を変更することにより調製されたアジュバント、および様々な用量の組み換えVZVgE抗原を含む、ワクチン組成物についての、IFN-γおよびIL-4のELISPOTアッセイの結果(A)ならびにIFN-γ、IL-4およびTNF-αのELISAアッセイの結果(B)を比較するグラフのセットである。
図11B図11は、Lipo-pam中に含まれる脂質およびPoly(I:C)の用量を変更することにより調製されたアジュバント、および様々な用量の組み換えVZVgE抗原を含む、ワクチン組成物についての、IFN-γおよびIL-4のELISPOTアッセイの結果(A)ならびにIFN-γ、IL-4およびTNF-αのELISAアッセイの結果(B)を比較するグラフのセットである。
図12図12は、弱毒化帯状疱疹ワクチンおよび組み換えワクチンの組み換えVZVgE抗原に対する全IgG抗体価を、アジュバントの処方により比較するグラフである。
図13図13は、弱毒化帯状疱疹ワクチンおよび組み換えワクチンのVZV組み換えgE抗原について、IFN-γおよびIL-4のELISPOTアッセイの結果(A)ならびにIFN-γ、IL-4およびTNF-αのELISAアッセイの結果(B)を、アジュバントの処方により比較するグラフのセットである。
図14図14は、弱毒化帯状疱疹ワクチンおよび組み換えワクチンについての、サイトカインを分泌するCD4+T細胞の出現頻度を、アジュバントの処方により比較するグラフである。
図15図15は、弱毒化帯状疱疹ワクチンおよび組み換えワクチンについての、CD4+T細胞の多機能性を、アジュバントの処方により比較するグラフである。
【0019】
図16図16は、弱毒化帯状疱疹ワクチンおよび組み換えワクチンの組み換えVZVgE抗原に対する全IgG抗体価を、アジュバントの組成および処方により比較するグラフである。
図17A図17は、弱毒化帯状疱疹ワクチンおよび組み換えワクチンの組み換えVZVgE抗原についての、IFN-γおよびIL-4のELISPOTアッセイの結果(A)ならびにIFN-γ、IL-4およびTNF-αのELISAアッセイの結果(B)を、アジュバントの組成および処方により比較するグラフのセットである。
図17B図17は、弱毒化帯状疱疹ワクチンおよび組み換えワクチンの組み換えVZVgE抗原についての、IFN-γおよびIL-4のELISPOTアッセイの結果(A)ならびにIFN-γ、IL-4およびTNF-αのELISAアッセイの結果(B)を、アジュバントの組成および処方により比較するグラフのセットである。
図18図18は、組み換えワクチンの組み換えVZVgE抗原に対する全IgG抗体価を、Lipo-pamの組成および調製方法により比較するグラフである。
図19A図19は、組み換えワクチンの組み換えVZVgE抗原について、IFN-γおよびIL-4のELISPOTアッセイの結果(A)と、IFN-γ、IL-4およびTNF-αのELISAアッセイの結果(B)とを、Lipo-pamの組成および調製方法により比較するグラフのセットである。
図19B図19は、組み換えワクチンの組み換えVZVgE抗原について、IFN-γおよびIL-4のELISPOTアッセイの結果(A)と、IFN-γ、IL-4およびTNF-αのELISAアッセイの結果(B)とを、Lipo-pamの組成および調製方法により比較するグラフのセットである。
図20図20は、組み換えワクチンの組み換えVZVgE抗原に対する全IgG抗体価を、脂質の型および用量、免疫活性物質の型、および組み換えVZVgE抗原の用量により比較するグラフである。
【0020】
図21A図21は、組み換えワクチンの組み換えVZVgE抗原について、IFN-γおよびIL-4のELISPOTアッセイの結果(A)ならびにIFN-γ、IL-4およびTNF-αのELISAアッセイの結果(B)を、脂質の型および用量、免疫活性物質の型、および組み換えVZVgE抗原の用量により、比較するグラフのセットである。
図21B図21は、組み換えワクチンの組み換えVZVgE抗原について、IFN-γおよびIL-4のELISPOTアッセイの結果(A)ならびにIFN-γ、IL-4およびTNF-αのELISAアッセイの結果(B)を、脂質の型および用量、免疫活性物質の型、および組み換えVZVgE抗原の用量により、比較するグラフのセットである。
図22図22は、組み換えワクチンの組み換えVZVgE抗原に対する全IgG抗体価を、Lipo-pamを構成するリポペプチドの型により比較するグラフである。
図23A図23は、組み換えワクチンの組み換えVZVgE抗原について、IFN-γおよびIL-4のELISPOTアッセイの結果(A)、ならびにIFN-γ、IL-4およびTNF-αのELISAアッセイの結果(B)を、Lipo-pamを構成するリポペプチドの型により比較するグラフのセットである。
図23B図23は、組み換えワクチンの組み換えVZVgE抗原について、IFN-γおよびIL-4のELISPOTアッセイの結果(A)、ならびにIFN-γ、IL-4およびTNF-αのELISAアッセイの結果(B)を、Lipo-pamを構成するリポペプチドの型により比較するグラフのセットである。
図24図24は、組み換えJEVgE抗原に対する全IgG抗体価(A)、および不活化JEV抗原に対する全IgG抗体価(B)を比較するグラフのセットである。
図25A図25は、組み換えワクチンの日本脳炎ウイルスgE抗原について、IFN-γおよびIL-4のELISPOTアッセイの結果(A)、ならびにIFN-γ、IL-4およびTNF-αのELISAアッセイの結果(B)を、アジュバントの処方により比較するグラフのセットである。
図25B図25は、組み換えワクチンの日本脳炎ウイルスgE抗原について、IFN-γおよびIL-4のELISPOTアッセイの結果(A)、ならびにIFN-γ、IL-4およびTNF-αのELISAアッセイの結果(B)を、アジュバントの処方により比較するグラフのセットである。
【0021】
図26図26は、4株の季節性不活性型インフルエンザウイルス(H1N1、H3N2、B-YまたはB-V)に対する全IgG抗体価を、アジュバントの処方により比較するグラフのセットである。
図27図27は、4株の季節性不活性型インフルエンザウイルス(H1N1、H3N2、B-YまたはB-V)のIFN-γのELISPOTアッセイの結果を、アジュバントの処方により説明するグラフのセットである。
図28図28は、4株の季節性不活性型インフルエンザウイルス(H1N1、H3N2、B-YまたはB-V)のIL-4のELISPOTアッセイの結果を、アジュバントの処方により説明するグラフのセットである。
【0022】
図29図29は、4株の季節性不活性型インフルエンザウイルス(H1N1、H3N2、B-YまたはB-V)のIFN-γのELISAアッセイの結果を説明するグラフのセットである。
図30図30は、4株の季節性不活性型インフルエンザウイルス(H1N1、H3N2、B-YまたはB-V)のTNF-αのELISAアッセイの結果を説明するグラフのセットである。
図31図31は、4株の季節性不活性型インフルエンザウイルス(H1N1、H3N2、B-YまたはB-V)のIL-4のELISAアッセイの結果を説明するグラフのセットである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
好ましい態様の記載
本明細書において以後、本発明を詳細に記載する。
本発明は、活性成分としてリポペプチド挿入リポソームを含む、ワクチンアジュバントを提供する。
【0024】
リポペプチドは、いくつかのアミノ酸およびグリセロール分子に結合した脂肪酸からなり得る。リポペプチドを構成するアミノ酸またはグリセロール分子中の脂肪酸の数は、1つ以上であってよい。この時点において、脂肪酸およびアミノ酸は、化学修飾されていてよい。リポペプチドは、グラム陽性もしくはグラム陰性細菌またはマイコプラズマに由来する分子の一部であっても、分子全体の形態におけるリポタンパク質であってもよい。例えば、リポペプチドは、Pam3Cys-SKKKK、Pam3-CSKKKK、PHC-SKKKK、Ole2PamCys-SKKKK、Pam2Cys-SKKKK、PamCys(Pam)-SKKKK、Ole2Cys-SKKKK、Myr2Cys-SKKKK、PamDhc-SKKKK、Pam-CSKKKK、Dhc-SKKKKおよびFSL-1からなる群より選択されるいずれか1つ以上であってよい。リポペプチドは、リポソーム中で、20~250、20~50、50~250、150~250、50~150、20~2500、20~500、50~2500、150~2500または50~1500μg/用量の濃度で含まれていてよい。
【0025】
リポソームは、脂質からなっていてもよい。脂質は、カチオン性、アニオン性または中性の脂質であってよい。例えば、脂質は、DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン)、DOPE(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウム)、DC-chol(3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール)、DOPG(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])、DPPC(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、DOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)およびコレステロールからなる群より選択されるいずれか1つ以上であってよい。脂質は、リポソーム中で、15~300、15~150、15~90、15~50、15~40、20~30、15~3000、15~1500、15~900、15~500、15~400または20~300μg/用量の濃度で含まれていてよい。
【0026】
本発明によるワクチンアジュバントは、免疫活性物質をさらに含んでもよい。免疫活性物質は、Poly(I:C)、QS21、MPLA(モノホスホリルリピドA)、CpGおよびフラゲリンからなる群より選択されるいずれか1つ以上であってよい。Poly(I:C)は、1型インターフェロンの強力な誘導因子として、in vitroおよびin vivoでの研究において、用いられてきた。さらに、Poly(I:C)は、哺乳動物における最も強力な抗原提示細胞である樹状細胞を、安定に、かつ成熟して形成させることが知られている(Rous, R. et al 2004, International Immunol, 16:767-773)。先の報告によれば、Poly(I:C)は、強力なIL-12誘導因子である。前記のIL-12は、Th1の発達を促進することにより細胞媒介性免疫応答およびIgG2aまたはIgG2b抗体形成を誘導する、重要な免疫活性物質である。Poly(I:C)の長さは、50~5,000bpであってよい。Poly(I:C)は、アジュバント中で、10~150、10~90、10~50、10~30、30~60、30~90、30~150、30~50、10~1500、10~900、10~500、10~300、30~600、30~900、30~1500または30~500μg/用量の濃度で含まれていてよい。
【0027】
QS21は、南アメリカにおいてQuillaja saponaria Molinaの樹皮から抽出される1990.14Daの分子量を有するトリテルペングルコシドと称されるサポニン物質の部分である。MPLAおよびコレステロールなどの脂質と組み合わされた場合、QS21は、マクロファージおよび樹状細胞などの抗原提示細胞からTh1型サイトカインを分泌させることにより、体液性および細胞媒介性免疫応答を誘導することが知られている。QS21は、アジュバント中に、1~150、1~90、1~50、1~30、3~60、3~90、3~150、3~50、1~1500、1~900、1~500、1~300、3~600、3~900、3~1500または3~500μg/用量の濃度で含まれていてよい。
【0028】
本発明はまた、本発明のアジュバントおよび抗原を含む、ワクチン組成物を提供する。
アジュバントは、上記のような特徴を有していてもよい。例えば、アジュバントは、リポペプチド挿入リポソームを含んでもよく、免疫活性物質をさらに含んでもよい。
【0029】
抗原は、それらが宿主の身体に侵入した場合に、宿主の免疫系により認識されて免疫応答を引き起こすことができる、全ての物質を含み、病原体のタンパク質、組み換えタンパク質、糖タンパク質、ペプチド、多糖、リポ多糖またはポリヌクレオチドであってよい。例えば、抗原は、水痘帯状疱疹ウイルスのgE(糖タンパク質E);日本脳炎ウイルスのgE(糖タンパク質E)抗原;季節性不活性型インフルエンザウイルス抗原;インフルエンザウイルスの赤血球凝集素抗原およびノイラミニダーゼ抗原;百日咳菌の百日咳毒素抗原、糸状赤血球凝集素抗原およびパータクチン抗原;ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原、ヘリコバクター・ピロリA、B、C、YおよびW-135群の莢膜多糖抗原;破傷風菌の破傷風トキソイド抗原;ジフテリアのジフテリアトキソイド抗原;肺炎球菌3型莢膜多糖抗原;結核抗原;ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のGP-120およびGP-160抗原;コレラ毒素Bサブユニット抗原;ブドウ球菌エンテロトキシンB抗原;赤痢菌多糖抗原;水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質抗原;サイトメガロウイルス(CMV)抗原、肝炎A(HAV)、B(HBV)、C(HCV)、D(HDV)およびG(HGV)抗原;呼吸器多核体ウイルス(RSV)抗原または単純ヘルペス抗原により例示され得る。
【0030】
ワクチン組成物は、加えて、バッファー、等張化剤、保存剤、安定化剤および可溶化剤を含んでもよい。バッファーとして、リン酸、酢酸、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、クエン酸などを用いることができる。
ワクチンは、抗原特異的体液性免疫応答のみならず、細胞媒介性免疫応答をも高度に誘導することができる。
【0031】
ワクチンは、Th1免疫応答を増強することができる。抗ウイルスおよび抗がん免疫応答のために有効なTh1免疫応答を増強するIgG2aまたはIgG2b抗体は、ヘルパーT細胞1(Th1)により生成されるサイトカインにより誘導される。したがって、本発明のワクチン組成物は、ウイルス感染またはがんのための予防または治療剤として用いることができる。
【0032】
本発明の特定の態様において、本発明者らは、第1に、組み換え水痘帯状疱疹ウイルスgE抗原(図1および2を参照)を調製し、DC-Chol、DOPEまたはDPPC脂質をPam3-CSKKKKと混合することによりLipo-Pamを調製して、これにPoly(I:C)またはQS21を免疫活性物質として添加した。次いで、それに調製された組み換え水痘帯状疱疹ウイルスgE抗原を添加することにより、水痘帯状疱疹ウイルスに対する組み換えワクチンを調製した。
【0033】
組み換えワクチンにおいて、Pam3-CSKKKKは、脂質と共にリポソームを形成し、組み換えVZVgE抗原を、リポソームの表面上に結合させた(図5)。
組み換えワクチンは、体液性免疫応答のみならず、細胞媒介性免疫応答をも高度に誘導した(図3、4および6~21を参照)。
【0034】
多様な型のリポペプチドをDC-CholおよびDPPCと混合することによりLipo-pamを調製し、Poly(I:C)および組み換えVZVgE抗原をLipo-pamに添加することにより、組み換えワクチンを調製した。調製された組み換えワクチンは、体液性免疫応答のみならず、細胞媒介性免疫応答をも高度に誘導した(図22および23を参照)。
【0035】
また、Poly(I:C)および組み換え日本脳炎ウイルスgE抗原を、DC-Chol、DPPCおよびPam3-CSKKKKを混合することにより調製されたLipo-Pamに添加することにより、日本脳炎ウイルスに対する組み換えワクチンを調製した。調製された組み換えワクチンは、体液性免疫応答のみならず、細胞媒介性免疫応答をも高度に誘導した(図24および25を参照)。
【0036】
加えて、Poly(I:C)および4株の季節性不活性型インフルエンザウイルス抗原を、DC-Chol、DOPEまたはDPPCおよびPam3-CSKKKKを混合することにより調製されたLipo-Pamに添加することにより、季節性不活性型インフルエンザウイルスに対する組み換えワクチンを調製した。調製された組み換えワクチンは、体液性免疫応答のみならず、細胞媒介性免疫応答をも高度に誘導した(図26および31を参照)。
【0037】
したがって、リポペプチド挿入Lipo-Pamをアジュバントとして含む本発明のワクチン組成物は、抗原の型を限定することなく免疫増強効果を有するので、商業的に有効に用いることができる。
【0038】
本発明はまた、活性成分として本発明のワクチン組成物を含む、ウイルス感染またはがんのための予防または治療剤を提供する。
ワクチン組成物は、上記のような特徴を有していてもよい。例えば、ワクチン組成物は、アジュバントおよび抗原を含んでもよい。アジュバントは、リポペプチド挿入リポソームを含んでもよく、免疫活性物質をさらに含んでもよい。
【0039】
本発明の予防または治療剤は、薬学的に受入可能なキャリアを含んでもよく、ヒトまたは動物のために処方することができる。それは、多様な経路により投与することができる。投与の経路は、経口、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下および皮内投与を含む。好ましくは、処方物は、注射として投与される。注射は、生理食塩水およびリンガー溶液などの水性溶媒、ならびに植物油、高級脂肪酸エステル(例えばオレイン酸エチルなど)およびアルコール(例えば、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、グリセリンなど)などの非水性溶媒を用いることにより調製することができる。それは、劣化を防止するための安定化剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、BHA、トコフェロール、EDTAなど)、乳化剤、pH制御のためのバッファー、微生物の増殖を防止するための保存剤(例えば、硝酸フェニル水銀、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレゾール、ベンジルアルコールなど)の医薬用キャリアを含んでもよい。
【0040】
本発明の予防または治療剤は、薬学的に有効な量により投与することができる。「薬学的に有効な量」という用語は、ワクチン効果を示すことができ、かつ同時に副作用または重篤もしくは過剰な免疫応答を引き起こさない量を意味し、正確な用量は、ワクチン中に含まれるべき抗原に依存して変化するであろう。本発明の予防または治療剤の有効な用量は、年齢、体重、健康状態、性別および薬物感受性、投与経路および投与方法にしたがって、当業者が容易に決定することができる。投与頻度は、1日に1回、または1日に数回である。
【0041】
本明細書において以後、以下の例により、本発明を詳細に記載する。
しかし、以下の例は、単に本発明を説明するためのものであり、本発明の内容は、それらに限定されない。
【0042】
例1.組み換え水痘帯状疱疹ウイルスgE抗原の調製
<1-1>プラスミドの構築
第1に、遺伝子(配列番号1)を、VZVのgE(糖タンパク質E)遺伝子発現領域の外側の領域において制限酵素認識配列(5’におけるNheI部位および3’におけるXhoI部位)ならびにコザック配列を含むように合成した。この時点において、ヒトヘルペスウイルス3型(HHV-3)ゲノム全体のORF68(糖タンパク質E)からC末端アンカードメインを取り除く形態におけるCHO細胞についてのコドン最適化配列を、鋳型として用いた。配列番号1により表されるVZVの1.6kbのgE遺伝子を、NheIおよびXhoI制限酵素で消化し、pPGXIIベクター中にサブクローニングした。結果として、VZVgE発現プラスミドであるpPGXII-VZVgEを調製した(図1)。
【0043】
<1-2>細胞株の選択
例<1-1>において調製したpPGXII-VZVgEプラスミドのDNAを、AhdI制限酵素で自由化し、これを、HT(ヒポキサンチン-チミジン)を含む培地中で6回継代したCHO DG44(S)-EX細胞中に、pDCH1P(dhfr)プラスミドDNAと一緒に、エレクトロポレーションによりトランスフェクトした。次いで、形質転換した細胞を、HTを含む培地中に播種した。細胞が十分に増殖したら、細胞を選択培地中でHTなしで培養した。約2週間後、最初に順応させた細胞群を得た。得られた細胞群を用いて、ドットブロットおよびウェスタンブロットを行って、最初に順応させた細胞群から4つの高生産株を選択した。選択された株を、限界希釈法により希釈し、各々の株を、1細胞/ウェルとなるように、10プレートの96ウェルプレート中に播種し、単一細胞株を単離した。単離された単一細胞株のコロニーを24ウェルのプレートに移し、培養し、次いで、十分な細胞数を確保してから、エルレンマイヤーフラスコ中で懸濁培養した。6回の継代の後、細胞が一定の速度で増殖しつつ95%以上の生存率が保たれている場合、流加培養を行って、生産性および安定性を確認した。最終的な細胞株は、高い生産性を有し、かつ80%以上の安定性を保つ、5つの候補細胞株の中から、細胞増殖および生産性を考慮して選択した。
【0044】
<1-3>細胞株の培養
例<1-2>において最終的に選択された細胞株を、EfficientFeed C+(Invitrogen)を添加した後、
HyCell CHO(GE Healthcare)培地を含む7.5リットルの広口瓶の発酵槽中に、6.5×10細胞/mlの密度で播種し、培養した。この時点において、発酵槽は、32℃、DO30%、100rpmで操作し、培地のpHを6.8より高く維持した。発酵槽中のグルコースおよび乳酸の含有量を、毎日分析し、グルコース含有量が20mmol/lより下に低下した場合、45%のD-グルコースを1v/v%の濃度で添加し、10日間にわたり培養した。
【0045】
<1-4>抗原精製
例<1-3>において培養された細胞から、デプスフィルターを用いて培養培地を回収し、それからVZVの組み換えgE抗原を精製した。特に、組み換えVZVgE抗原を、4ステップのカラムクロマトグラフィーにより、ブチル-セファロース、DEAE-セファロース、CHTヒドロキシアパタイトおよびSP-セファロースを連続して、ならびにワンタイムUF/DFをバッファー交換のために用いて、精製した。
結果として、図2において示されるとおり、精製された組み換えVZVgE抗原は、約70kDaの分子量を示した(図2)。
【0046】
例2.リポペプチドおよびPoly(I:C)の用量による組み換えワクチンの免疫原性の比較
<2-1>試験ワクチンの調製および投与
第1に、DC-Chol:DOPEリポソームを調製するために、DC-CholおよびDOPEを、それぞれクロロホルム中に溶解し、次いで、窒素ガスにより有機溶媒を蒸発させつつ、混合溶液が容器の底壁上に均一に分布するように、ガラス容器を回転させた。この時点において、底壁上に薄いフィルムが形成された。形成されたフィルム中に残留している有機溶媒を、真空乾燥機中で1時間にわたり保管することにより取り除いた。完全に乾燥した脂質フィルムに蒸留水を添加し、その後、超音波浴を用いて10分間かけて十分に再水和した。多重膜ベジクル(MLV)懸濁液が生成されたら、20mMのリン酸ナトリウム中に300mMのNaClを含む2×のバッファー溶液(pH7.0)を、蒸留水と同じ量で添加した。生じたMLVを、3秒/3秒(パルスオン/オフ)の条件下において5サイクルの超音波処理(5分/サイクル)に供し、DC-Chol:DOPEリポソームを小単層ベジクル(SUV)の形態において調製した。
【0047】
加えて、DC-Chol、DOPEおよびPam3-CSKKKKをそれぞれ有機溶媒中に溶解し、DC-CholとDOPEとを3:7の比で混合し、Pam3-CSKKKKを25μg/用量または100μg/用量の濃度でそれに添加したことを除いて、DC-Chol:DOPEリポソームと同じ様式において、Lipo-Pamを調製した。
【0048】
この時点において、25μgのPam3-CSKKKK(これはリポペプチドである)を、20μgまたは200μgのPoly(I:C)と混合することにより、対照となるL-pampoを調製した。
その後、アジュバントを、以下の表1において示される組成物と混合し、VZVgE抗原を、5μg/用量の濃度で混合物に添加して、試験ワクチンを調製した。G2、G5およびG9群の場合、混合物を超音波処理し、抗原を添加して、試験ワクチンを調製した。調製されたワクチンを、6週齢のC57BL/6メスマウス(Orient Bio Inc., Korea)に、2週間の間隔で2回、筋肉内注射した。
【0049】
各々の試験群についての試験ワクチンの調製条件
【表1】
【0050】
<2-2>体液性免疫応答の分析
例<2-1>において投与された試験ワクチンにより誘導された体液性免疫応答を分析するために、免疫の前である第0週において、第1のワクチン接種の2週間後である第2週において、および第2のワクチン接種の2週間後である第4週において、マウスの血清を分離することにより、抗原特異的抗体形成をELISAで分析することにより、抗体価を決定した。
【0051】
第1に、組み換えVZVgE抗原に対する全IgG抗体価を、以下の方法により確認した。特に、精製された組み換えVZVgE抗原を、100ng/ウェルの濃度で、96ウェルのマイクロプレート上にコーティングし、次いで、非特異的結合を防止するために、1%のウシ血清アルブミンを添加することにより1時間にわたり反応させた。マイクロプレートを洗浄した。連続希釈した血清を、プレートの各ウェルに添加し、その後、37℃で2時間にわたり反応させた。抗マウスIgG-HRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ、KPL、USA)を、二次抗体として1時間にわたりプレートに添加し、その後、同じ条件下において反応させた。反応させたマイクロプレートを洗浄し、呈色試薬TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)ペルオキシダーゼ基質(KPL、USA)をそれに添加し、その後、室温で10分間にわたり反応させた。停止溶液を用いて呈色反応を停止させ、次いで、ELISAリーダーを用いて、450nmでODを測定した。抗体価を、陰性対照のOD値の2倍に相当するOD値を示す抗体希釈倍率の逆数として定義した。
【0052】
一方、組み換えVZVgE抗原に対する抗体アイソタイプの力価を、一次抗体としてヤギ抗マウスIgG1、ヤギ抗マウスIgG2a、ヤギ抗マウスIgG2bまたはヤギ抗マウスIgG2cを用い、二次抗体としてウサギ抗ヤギIgG-HRPを用いたことを除き、組み換えVZVgE抗原に対する全抗体価と同じ方法により分析した。
【0053】
結果として、図3Aにおいて示されるとおり、組み換えVZVgE抗原に対する全IgG抗体価は、DC-Chol:DOPEリポソームとL-pampo(Poly(I:C)200μg+Pam3-CSKKKK 25μg)を混合することにより調製されたワクチンを投与されたG3群において、最も高かった。Lipo-pamおよびPoly(I:C)を混合したか否かにより体液性免疫応答を比較した場合、全IgGは、Lipo-pamおよびPoly(I:C)を混合することにより調製されたワクチンを投与されたG6群において、抗原およびLipo-pamのみを混合することにより調製されたワクチンを投与されたG5群と比較して、より高かった(図3A)。
【0054】
図3Bにおいて示されるとおり、組み換えVZVgE抗原に対する抗体アイソタイプの分析は、全試験群において、IgG1と比較して、より高いIgG2bおよびIgG2c型の抗体価を示した。特に、IgG2型の抗体価は、L-pampoをリポソームと混合したG3群、およびPoly(I:C)をLipo-pamと混合したG6群において高かった(図3B)。
【0055】
<2-3>細胞媒介性免疫応答の分析
例<2-1>において投与された試験ワクチンにより誘導された細胞媒介性免疫応答を、第2のワクチン接種の2週間後である第4週においてマウスから脾臓を抽出することにより全脾細胞を単離した後で行ったELISPOTおよびサイトカインELISAにより分析した。
【0056】
特に、ELISPOTアッセイを行うために、抗IFN-γまたは抗IL-4を結合させたELISPOTプレートをPBSで洗浄し、次いで、完全培地を添加することによりプレートを活性化した。マウス脾細胞を5×10細胞/ウェルの密度でELISPOTプレート中に分配した後、例1において調製された組み換えVZVgE抗原をそれに添加し、その後、37℃の5%CO2インキュベーター中で、24時間または48時間にわたり反応させた。次いで、脾細胞を取り除き、プレートをPBSで洗浄した。マウスIFN-γELISpotPLUSキット(Mabtech、Sweden)およびマウスIL-4 ELISpotPLUSキット(Mabtech、Sweden)中のビオチン化抗体を、0.5%のFBSを含むPBS中で希釈し、それぞれ、プレートの各ウェルに添加し、その後、室温で2時間にわたり反応させた。プレートを洗浄した後、プレートの各ウェルにHRP共役ストレプトアビジンを添加し、その後、室温で1時間にわたり反応させた。プレートを洗浄し、それに、呈色試薬TMBを添加し、その後、明瞭なスポットが現れるまで反応させた。反応が完了した後、三次蒸留水を添加して、反応を停止させた。プレートを蒸留水で数回洗浄し、室温で乾燥させ、ELISPOTリーダーを用いてスポットを計算した。
【0057】
一方で、サイトカインELISAを行うために、マウス脾細胞を、1.5×10細胞/ウェルの密度で96ウェルのプレート中に分配し、それに、例1において調製された組み換えVZVgE抗原を添加し、その後、37℃の5%CO2インキュベーター中で48時間にわたり反応させた。培養溶液を、各々の試験群について、試験管に移し、4℃において3000rpmでの5分間にわたる遠心分離により得られた上清を、サイトカインELISAを行うための試料として用いた。マウスIFN-γELISAキット(BD、USA)マウスIL-4 ELISAキット(BD、USA)およびマウスTNF-αELISAキット(BD、USA)中に含まれるコーティングのための抗体を、コーティングバッファー中で希釈し、96ウェルのプレート中に分配して、37℃で2時間にわたりプレートをコーティングした。プレートをPBSTで洗浄し、これに10%のFBSを添加し、その後、37℃で1時間にわたりブロッキングした。プレートを洗浄した後、標準溶液および上で得られた脾細胞培養溶液を、プレート中に分配し(100μl/ウェル)、その後、室温で2時間にわたり反応させた。プレートを洗浄し、これに、ビオチン化抗体とHRP共役ストレプトアビジンとを混合することにより調製された機能検出剤(working detector)を100μl/ウェルの濃度で添加し、その後、室温で1時間にわたり反応させた。プレートを洗浄した後、呈色試薬TMBをそれに添加し、その後、室温で5~10分間にわたり反応させた。停止溶液を用いて呈色反応を停止させ、ELISAリーダーを用いて450nmでODを測定した。
【0058】
結果として、図4Aにおいて示されるとおり、IFN-γELISPOTの分析により、Lipo-PamおよびPoly(I:C)を混合することにより調製されたワクチンは、リポソームおよびL-pampoを混合することにより調製されたワクチン(G2およびG3群)と比較して、全体的により高いIFN-γの産生を誘導した。特に、G6群は、他の試験群よりも著しくより高いIFN-γを産生し、G8およびG9群もまた、比較的高いIFN-γを産生した。加えて、抗原G9群の添加の前の超音波処理プロセスの追加を除いてはG7群と同じ処方物は、G7群よりも著しくより多くのIFN-γを産生した。加えて、抗原の添加の前に超音波処理を用いたことを除きG7群と同じ処方物であるG9群は、G7群よりも著しくより高いIFN-γを産生した。IL-4のELISPOT分析もまた、IFN-γELISPOTの結果と類似の傾向を示し、IL-4産生は、G6群において高かった。Lipo-pamおよびPoly(I:C)が混合されたか否かにより細胞媒介性免疫応答を比較した場合、IFN-γおよびIL-4の産生は、Lipo-pamおよびPoly(I:C)を混合することにより調製されたワクチンを投与されたG6群において、抗原をLipo-pamのみと混合することにより調製されたワクチンを投与されたG5群と比較して、より高かった(図4A)。
【0059】
図4Bにおいて示されるとおり、IFN-γELISAの結果により、Lipo-PamおよびPoly(I:C)を混合することにより調製されたワクチンは、リポソームおよびL-pampoを混合することにより調製されたワクチンと比較して、大量のIFN-γ分泌を誘導した。特に、最も高いIFN-γの分泌は、G6およびG8群において誘導された。IL-4およびTNF-αELISAの結果もまた、IFN-γELISAの結果と類似の傾向を示し、G6群において、大量のIL-4およびTNF-αの分泌が誘導された。Lipo-pamおよびPoly(I:C)が混合されたか否かにより細胞媒介性免疫応答を比較した場合、IFN-γ、IL-4およびTNF-αの分泌は、Lipo-PamおよびPoly(I:C)を混合することにより調製されたワクチンを投与されたG6群において、抗原をLipo-pamのみと混合することにより調製されたワクチンを投与されたG5群と比較して、より高かった(図4B)。
【0060】
したがって、上記のとおり、帯状疱疹ワクチンが体液性免疫応答よりも細胞媒介性免疫応答を誘導することは、より重要である。L-pampoリポソームを混合することにより調製されたワクチンは、混合物の粒子サイズを均一に分散させ、これを安定化させるために、さらなる超音波処理、微流体化剤(microfluidizer)または押出成形機を受ける必要があった。しかし、Lipo-PamおよびPoly(I:C)を混合することにより調製されたワクチンは、さらなる処理なしで、より安定であり、より長期にわたり粒子サイズを維持した。したがって、細胞媒介性免疫応答をより良好に誘導し、処方物の安定性において優れたLipo-Pamに基づくワクチン処方物を開発することは、有効であった。
【0061】
例3.Lipo-pamを用いることにより調製された組み換えワクチンの構造の確認
第1に、Lipo-pamを用いることにより調製されたワクチンの構造を確認するために、DC-Chol(ジメチルエタンカルバモイルコレステロール)およびDOPE(ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン)脂質を、Marina Blueで染色し、Pam3-CSKKKKを、6-TAMRAおよびSE(6-カルボキシテトラメチルローダミン、サクシニミジルエステル)で染色し、組み換えVZVgE抗原を、フルオレセインでそれぞれ染色した。Lipo-Pamは、DC-Chol、DOPEおよびPam3-CSKKKKを溶解し、DC-CholとDOPEとを混合し(3:7)、Pam3-CSKKKKを25μg/用量の濃度でそれに添加したことを除いて、例<2-1>において記載されるものと同じ様式により調製した。次いで、Lipo-PamおよびPoly(I:C)を40μg/用量の濃度で混合し、抗原を5μg/用量の濃度でそれに添加することにより、試験ワクチンを調製した。共焦点顕微鏡を用いて、ワクチンの構造を確認した。
【0062】
結果として、図5において示されるとおり、リポソーム脂質を染色した色素により生じた半径は、Pam3CSKを染色した色素により生じた半径とほぼ同じであったが、組み換えVZVgE抗原を染色した色素により生じた半径は、それらよりも大きかった。このことにもかかわらず、調製されたワクチンが、Pam3-CSKKKKおよび脂質がリポソームを形成し(Lipo-pam)、組み換えVZVgE抗原がリポソームの表面に結合した構造を有することを確認した(図5)。
【0063】
例4.リポペプチドおよびPoly(I:C)の用量による組み換えワクチンの免疫原性の比較
脂質の比、Pam3-CSKKKKの用量、Poly(I:C)の用量、およびリポソームへの組み換えVZVgE抗原の結合の程度により、組み換えワクチンの免疫原性を比較した。
【0064】
<4-1>試験ワクチンの調製および投与
Lipo-Pamは、DC-Chol、DOPEおよびPam3-CSKKKKを溶解し、DC-CholとDOPEとを混合し(1:1~3:7)、Pam3-CSKKKKを25または100μg/用量の濃度でそれに添加したことを除いて、例<2-1>において記載されるものと同じ様式により調製した。次いで、Lipo-PamおよびPoly(I:C)を、20、40、60、80または160μg/用量の濃度で混合し、組み換えVZVgE抗原を5μg/用量の濃度でそれに添加することにより、試験ワクチンを調製した。調製されたワクチンを、6週齢のC57BL/6メスマウス(Orient Bio Inc., Korea)に、2週間の間隔で2回、筋肉内注射した。
【0065】
各々の試験群についての試験ワクチンの調製条件
【表2】
【0066】
<4-2>組み換えVZVgE抗原とLipo-pamとの間の結合の確認
例<4-1>において調製されたLipo-pamと、例1において調製された組み換えVZVgE抗原との間の結合力を、分子ふるいクロマトグラフィーを用いて、常法により確認した。
結果として、高Pam3-CSKKKK処方物中においては(G5~G7、G11およびG12群)、組み換えVZVgE抗原の大部分が、Lipo-pamに組み合わされた。加えて、gE抗原に競合的に結合する低用量のPoly(I:C)を有するG2群においては、組み換えVZVgE抗原の大部分が、Lipo-pamに結合した。
【0067】
<4-3>体液性免疫応答の分析
例<4-1>において投与された試験ワクチンにより誘導された体液性免疫応答を分析するために、免疫の前である第0週において、第1のワクチン接種の2週間後である第2週において、および第2のワクチン接種の2週間後である第4週において、マウスの血清を分離することにより、試料を調製した。組み換えVZVgE抗原に対する全IgG抗体価を、調製された試料を用いて、例<2-2>において記載されるものと同じ様式により分析した。
【0068】
結果として、図6において示されるとおり、全IgG抗体価は、DC-CholとDOPEとを3:7の比で混合することにより調製されたLipo-pamを用いる場合(G2~G7)において、DC-CholとDOPEとを1:1の比で混合することにより調製されたLipo-pamを用いる場合(G8~G12)よりも、一般に高かった。加えて、全IgG抗体価は、Pam3-CSKKKK(リポペプチド)およびPoly(I:C)の用量に比例して高く誘導された(図6)。特に、全IgG抗体価は、G2、G5、G6およびG7群の中でも、G2、G6およびG7群において高く、ここで、組み換え抗原の大部分がLipo-pamに結合した。
【0069】
一方、Pam3-CSKKKKおよびPoly(I:C)を25μgおよび20μg/用量の濃度で用いるG2群と、Pam3-CSKKKKおよびPoly(I:C)を100μgおよび80μg/用量の濃度で用いるG6群との全IgG抗体価は、同様であった。したがって、Pam3-CSKKKKおよびPoly(I:C)の最適用量は、Lipo-pamを構成する脂質、またはワクチン中で用いられる組み換えVZVgE抗原により決定されたことを確認した。
【0070】
<4-4>細胞媒介性免疫応答の分析
例<4-1>において投与された試験ワクチンにより誘導された細胞媒介性免疫応答を分析するために、第2のワクチン接種の2週間後である第4週において、マウスから脾臓を抽出することにより、全脾細胞を単離した。次いで、ELISPOTアッセイおよびサイトカインELISAにより、例<2-3>において記載されるものと同じ様式により、細胞媒介性免疫応答を分析した。
【0071】
結果として、図7Aにおいて示されるとおり、DC-CholとDOPEとを3:7の比で混合することにより調製されたワクチンは、DC-CholとDOPEとを1:1の比で混合することにより調製されたワクチンよりも多くのIFN-γおよびIL-4を産生した。25μg/用量のPam3-CSKKKKを用いた場合において、IFN-γおよびIL-4は、DC-CholおよびDOPEが3:7の比において用いられ、Poly(I:C)が40μg/用量の濃度で用いられた場合に、最も多く産生された。100μg/用量または200μg/用量のPam3-CSKKKKを用いる場合において、より高い濃度のPoly(I:C)において、より多くのIFN-γおよびIL-4が産生されたが、25μg/用量のPam3-CSKKKKを用いては、試験群と比較して著しく低いIFN-γおよびIL-4が産生された(図7A)。
【0072】
図7Bにおいて示されるとおり、サイトカインELISAの結果により、DC-CholとDOPEとを3:7の比で混合することにより調製されたワクチンは、DC-CholとDOPEとを1:1の比で混合することにより調製されたワクチンと比較して、より多くのIFN-γおよびIL-4の分泌を誘導したが、一方、TNF-αの分泌は、いずれの場合においても同様であった。ELISPOTの結果と同様に、25μg/用量のPam3-CSKKKKによるワクチンは、100または200μg/用量のPam3-CSKKKKによるワクチンと比較して、より多くのIFN-γ、IL-4およびTNF-αの分泌を誘導した。特に、DC-CholとDOPEとを3:7の比で混合することにより調製されたワクチンの中では、40μg/用量のPoly(I:C)を用いるG3群、およびDC-CholとDOPEとを1:1の比で混合することにより調製されたワクチンの中では、20μg/用量のPoly(I:C)を用いるG8群が、3種のサイトカインの最も多い分泌を誘導した(図7B)。
【0073】
例5.脂質の用量および組み換えVZVgE抗原による組み換えワクチンの免疫原性の比較
3:7の比で混合されたDC-Chol:DOPE、25μg/用量のPam3-CSKKKK、および20μg/用量のPoly(I:C)を用い、脂質の用量および組み換えVZVgE抗原によるワクチンの免疫原性を比較した。
【0074】
<5-1>試験ワクチンの調製および投与
Lipo-Pamは、DC-Chol、DOPEおよびPam3-CSKKKKを溶解し、DC-Chol、DOPEおよびPam3-CSKKKKを、脂質の濃度(DC-Chol:DOPE=3:7)が31.25、62.5または125μg/用量となり、Pam3-CSKKKKの濃度が25μg/用量となるように混合したことを除いて、例<2-1>において記載されるものと同じ様式により調製した。次いで、以下の表3において示されるとおり、Lipo-Pamを20μg/用量の濃度でPoly(I:C)と混合し、組み換えVZVgE抗原を2、5または10μg/用量の濃度でそれに添加することにより、試験ワクチンを調製した。調製されたワクチンを、6週齢のC57BL/6メスマウス(Orient Bio Inc., Korea)に、2週間の間隔で2回、筋肉内注射した。
【0075】
各々の試験群についての試験ワクチンの調製条件
【表3】
【0076】
<5-2>体液性免疫応答の分析
例<5-1>において投与された試験ワクチンにより誘導された体液性免疫応答を分析するために、免疫の前である第0週において、第1のワクチン接種の2週間後である第2週において、および第2のワクチン接種の2週間後である第4週において、マウスの血清を分離することにより、試料を調製した。組み換えVZVgE抗原に対する全IgG抗体価を、調製された試料を用いて、例<2-2>において記載されるものと同じ様式により分析した。
【0077】
結果として、図8において示されるとおり、抗原の増加と共に脂質の用量を増加させることは、抗体の誘導を補助することを確認した。加えて、DC-CholおよびDOPCを用いるG11群の全IgG抗体価は、他の試験群のものよりも低かった(図8)。
【0078】
<5-3>細胞媒介性免疫応答の分析
例<5-1>において投与された試験ワクチンにより誘導された細胞媒介性免疫応答を分析するために、第2のワクチン接種の2週間後である第4週において、マウスから脾臓を抽出することにより、全脾細胞を単離した。次いで、ELISPOTアッセイおよびサイトカインELISAにより、例<2-3>において記載されるものと同じ様式により、細胞媒介性免疫応答を分析した。
【0079】
結果として、図9Aにおいて示されるとおり、IFN-γおよびIL-4のELISPOTの結果により、2μg/用量の組み換えVZVgE抗原および125μg/用量のDC-Chol:DOPE脂質を用いることにより調製されたG8群において、最も多いIFN-γおよびIL-4が産生された(図9A)。
図9Bにおいて示されるとおり、サイトカインELISAの結果により、2μg/用量の組み換えVZVgE抗原および125μg/用量のDC-Chol:DOPE脂質を用いることにより調製されたG8群は、3種のサイトカインの最も多い分泌を誘導し、これは、ELISPOTアッセイの結果と同様であった。しかし、DC-CholおよびDOPCを用いることにより調製されたG11群は、他の試験群より少ないサイトカイン分泌を誘導した(図9B)。
【0080】
例6.脂質の用量、Poly(I:C)および組み換えVZVgE抗原による組み換えワクチンの免疫原性の比較
3:7の比で混合されたDC-Chol:DOPE、および25μg/用量のPam3-CSKKKKを用い、脂質の用量、Poly(I:C)および組み換えVZVgE抗原によるワクチンの免疫原性を比較した。
【0081】
<6-1>試験ワクチンの調製および投与
Lipo-Pamは、DC-Chol、DOPEおよびPam3-CSKKKKを溶解し、DC-Chol、DOPEおよびPam3-CSKKKKを、脂質の濃度(DC-Chol:DOPE=3:7)が62.5、125または250μg/用量となり、Pam3-CSKKKKの濃度が25μg/用量となるように混合したことを除いて、例<2-1>において記載されるものと同じ様式により調製した。次いで、以下の表4において示されるとおり、Lipo-Pamを20、40、80または100μg/用量の濃度でPoly(I:C)と混合し、組み換えVZVgE抗原を2、5または10μg/用量の濃度でそれに添加することにより、試験ワクチンを調製した。調製されたワクチンを、6週齢のC57BL/6メスマウス(Orient Bio Inc., Korea)に、2週間の間隔で2回、筋肉内注射した。
【0082】
各々の試験群についての試験ワクチンの調製条件
【表4】
【0083】
<6-2>体液性免疫応答の分析
例<6-1>において投与された試験ワクチンにより誘導された体液性免疫応答を分析するために、免疫化の前である第0週において、第1のワクチン接種の2週間後である第2週において、および第2のワクチン接種の2週間後である第4週において、マウスの血清を分離することにより、試料を調製した。組み換えVZVgE抗原に対する全IgG抗体価を、調製された試料を用いて、例<2-2>において記載されるものと同じ様式により分析した。
【0084】
結果として、図10において示されるとおり、62.5μg/用量の脂質および20μg/用量のPoly(I:C)を用いることによりLipo-pamを調製した場合、2μg/用量の組み換えVZVgE抗原を用いることにより調製されたG2群と、5μg/用量の組み換えVZVgE抗原を用いることにより調製されたG3群との間で、全IgG抗体価は同様であった。250μg/用量の脂質および80μg/用量のPoly(I:C)を用いることによりLipo-pamを調製した場合、2μg/用量の組み換えVZVgE抗原を用いることにより調製されたG8群、5μg/用量の組み換えVZVgE抗原を用いることにより調製されたG9群および10μg/用量の組み換えVZVgE抗原を用いることにより調製されたG10群の間で、全IgG抗体価は同様であった(図10)。アイソタイプ分析において、IgG2b/IgG1の比は、G8、G9、G2,およびG6群において他の試験群より高く、IgG2c/IgG1の比は、G8、G6,およびG9群において他の試験群より高かった。
【0085】
<6-3>細胞媒介性免疫応答の分析
例<6-1>において投与された試験ワクチンにより誘導された細胞媒介性免疫応答を分析するために、第2のワクチン接種の2週間後である第4週において、マウスから脾臓を抽出することにより、全脾細胞を単離した。次いで、ELISPOTアッセイおよびサイトカインELISAにより、例<2-3>において記載されるものと同じ様式により、細胞媒介性免疫応答を分析した。
【0086】
結果として、図11Aにおいて示されるとおり、IFN-γおよびIL-4のELISPOTの結果により、2μg/用量の組み換えVZVgE抗原と125μg/用量の脂質および40μg/用量のPoly(I:C)を用いることにより調製されたLipo-pamとを用いたG6群において、最も多いIFN-γおよびIL-4が産生された(図11A)。
【0087】
図11Bにおいて示されるとおり、サイトカインELISAの結果により、2μg/用量の組み換えVZVgE抗原と125μg/用量の脂質および40μg/用量のPoly(I:C)を用いることにより調製されたLipo-pamとを用いるG6群が、最も多いIFN-γ、IL-4およびTNF-αの分泌を誘導した(図11B)。
【0088】
例7.抗原の用量による弱毒化帯状疱疹ワクチンおよび組み換えワクチンの免疫原性の比較
組み換えワクチン中に含まれる抗原の用量による、Zostavax、市販の弱毒化生ワクチン、および組み換えVZVgE抗原を用いることにより調製された組み換えワクチンの免疫原性を比較した。
【0089】
<7-1>試験ワクチンの調製および投与
Lipo-Pamは、DC-Chol、DOPEおよびPam3-CSKKKKを溶解し、DC-Chol、DOPEおよびPam3-CSKKKKを、脂質の濃度(DC-Chol:DOPE=3:7)が125μg/用量となり、Pam3-CSKKKKの濃度が25μg/用量となるように混合したことを除いて、例<2-1>において記載されるものと同じ様式により調製した。加えて、25μg/用量のPam3-CSKKKK、200μg/用量のPoly(I:C)および5μg/用量の抗原を混合することによりL-pampoを調製し、これを対照として用いた。その後、以下の表5において記載されるとおりの組成を有する試験ワクチンを、調製した。Zostavaxまたは調製されたワクチンを、6週齢のC57BL/6メスマウス(Orient Bio Inc., Korea)に、2週間の間隔で2回、筋肉内注射した。
【0090】
各々の試験群についての試験ワクチンの調製条件
【表5】
【0091】
<7-2>体液性免疫応答の分析
例<7-1>において投与された試験ワクチンにより誘導された体液性免疫応答を分析するために、免疫の前である第0週において、第1のワクチン接種の2週間後である第2週において、および第2のワクチン接種の2週間後である第4週において、マウスの血清を分離することにより、試料を調製した。組み換えVZVgE抗原およびそのアイソタイプに対する全IgG抗体価を、調製された試料を用いて、例<2-2>において記載されるものと同じ様式により分析した。
【0092】
結果として、図12において示されるとおり、Zostavaxで処置されたG2群および水酸化アルミニウムを用いたG3群は、L-pampoまたはLipo-Pamを用いたG4、G5およびG6群より低い全IgG抗体レベルを示した(図12)。アイソタイプ分析において、多くのIgG1型抗体は、水酸化アルミニウムを用いたG3群において形成され、IgG2b/IgG1およびIgG2c/IgG1の比は、Lipo-pamを用いたG5およびG6群において、L-pampoを用いたG4群におけるものより高かった。
【0093】
<7-3>細胞媒介性免疫応答の分析
例<7-1>において投与された試験ワクチンにより誘導された細胞媒介性免疫応答を分析するために、第2のワクチン接種の2週間後である第4週において、マウスから脾臓を抽出することにより、全脾細胞を単離した。次いで、脾細胞を用いて、例<2-3>において記載されるものと同じ様式により、ELISPOTアッセイおよびサイトカインELISAを行った。フローサイトメーターを用いてIFN-γ、TNF-αおよびIL-2についての細胞内サイトカイン染色(ICS)分析を行うことにより、各処方物中の組み換えVZVgE抗原に対して特異的なサイトカインを分泌するCD4+T細胞のレベルを比較することにより、細胞媒介性免疫応答を分析した。
【0094】
結果として、図13Aにおいて示されるとおり、IFN-γおよびIL-4のELISPOTの結果により、Zostavaxを投与されたG2群においては、著しく低いIFN-γおよびIL-4が産生され、一方、Lipo-pamを用いたG5およびG6群においては、最も多いIFN-γおよびIL-4が産生された(図13A)。
図11Bにおいて示されるとおり、サイトカインELISAの結果により、Zostavaxを投与されたG2群においては、最も少ないIFN-γ、IL-4およびTNF-αの分泌が誘導され、一方、Lipo-pamを用いたG5およびG6群においては、最も多いIFN-γ、IL-4およびTNF-αの分泌が誘導された(図13B)。
【0095】
図14において示されるとおり、各々の試験群において分泌されたサイトカインの傾向は、Lipo-pamを用いたG5およびG6群における、各々のサイトカインを分泌するCD4+T細胞の高い出現頻度を示した(図14)。
加えて、図15において示されるとおり、gE抗原特異的CD4+T細胞の多機能性を比較した結果により、各々の試験群において100%の細胞がサイトカインのうちの1つ以上の型を分泌すると仮定すると、1つ以上のサイトカインを分泌するCD4+T細胞のうち、3つ全てのサイトカインを分泌するT細胞が高い試験群は、Lipo-pamを有したG5およびG6群であった。一方、Zostavaxを投与されたG2群および水酸化アルミニウムを用いたG3群は、1つのみのサイトカインを分泌するCD4+T細胞の比率が高いことを示し、このことは、低い多機能性を確認する(図15)。
【0096】
例8.脂質の用量およびPoly(I:C)による弱毒化帯状疱疹ワクチンおよび組み換えワクチンの免疫原性の比較
Zostavax、市販の弱毒化生ワクチン、および組み換えVZVgE抗原を用いることにより調製された組み換えワクチンの免疫原性を、組み換えワクチン中に含まれる脂質およびPoly(I:C)の用量により比較した。
【0097】
<8-1>試験ワクチンの調製および投与
Lipo-Pamは、DC-Chol、DOPEおよびPam3-CSKKKKを溶解し、DC-Chol、DOPEおよびPam3-CSKKKKを、脂質の濃度(DC-Chol:DOPE=3:7)が125μg/用量となり、Pam3-CSKKKKの濃度が25μg/用量となるか、脂質の濃度(DC-Chol:DOPE=1:1)が125μg/用量となり、Pam3-CSKKKKの濃度が25μg/用量となるように混合したことを除いて、例<2-1>において記載されるものと同じ様式により調製した。加えて、25μg/用量のPam3-CSKKKK、200μg/用量のPoly(I:C)および5μg/用量の抗原を混合することにより、L-pampoを調製した。DC-Chol:DOPEリポソームは、例<2-1>において記載されるものと同じ様式により調製した。次いで、Lipo-Pamを20、40または80μg/用量の濃度のPoly(I:C)と混合し、組み換えVZVgE抗原を5μg/用量の濃度ででそれに添加すること(G6~G9群)により、同時に、Lipo-Pamを40μg/用量の濃度のPoly(I:C)および5μg/用量の濃度の組み換えVZVgE抗原と混合することにより(G10およびG11)、Lipo-PamをDC-Chol:DOPEリポソームと混合することにより(G5群)、または100μg/用量の水酸化アルミニウムと5μg/用量の組み換えVZVgE抗原とを混合することにより、試験ワクチンを調製した。Zostavaxまたは調製されたワクチンを、6週齢のC57BL/6メスマウス(Orient Bio Inc., Korea)に、2週間の間隔で2回、筋肉内注射した。
【0098】
各々の試験群についての試験ワクチンの調製条件
【表6】
【0099】
<8-2>体液性免疫応答の分析
例<8-1>において投与された試験ワクチンにより誘導された体液性免疫応答を分析するために、免疫化の前である第0週において、第1のワクチン接種の2週間後である第2週において、および第2のワクチン接種の2週間後である第4週において、マウスの血清を分離することにより、試料を調製した。調製された試料を用いるELISAによる抗原特異的抗体形成の分析により、抗体価を決定した。組み換えVZVgE抗原に対する全IgG抗体価を、例<2-2>において記載されるものと同じ様式により分析した。
【0100】
結果として、図16において示されるとおり、Zostavaxで処置されたG3群、および水酸化アルミニウムを用いるG2群は、L-pampoまたはLipo-Pamを用いるG4~G11群より低い全IgG抗体価を示した(図16)。
【0101】
<8-3>細胞媒介性免疫応答の分析
例<8-1>において投与された試験ワクチンにより誘導された細胞媒介性免疫応答を分析するために、第2のワクチン接種の2週間後である第4週において、マウスから脾臓を抽出することにより、全脾細胞を単離した。次いで、ELISPOTアッセイおよびサイトカインELISAにより、例<2-3>において記載されるものと同じ様式により、細胞媒介性免疫応答を分析した。
【0102】
結果として、図17Aにおいて示されるとおり、IFN-γおよびIL-4のELISPOTの結果により、Zostavaxを投与されたG3群においては著しく低いIFN-γおよびIL-4が産生され、一方、40μg/用量のPoly(I:C)とDC-Chol:DPPC(1:1)を用いることにより調製されたLipo-pamとを用いたG7群、ならびにLipo-Pam、40μg/用量のPoly(I:C)および5μg/用量の組み換えVZVgE抗原を用いたG11群においては、多くのIFN-γおよびIL-4が産生された(図17A)。
【0103】
図17Bにおいて示されるとおり、サイトカインELISAの結果により、40μg/用量のPoly(I:C)とDC-Chol:DPPC(1:1)を用いることにより調製されたLipo-pamとを用いるG7群、ならびにDC-Chol:DOPEリポソームおよびL-pampoを用いるG5群において、最も多いIFN-γの分泌が誘導された。加えて、IL-4の分泌は、処方物の間で著しくは異ならなかったが、DC-Chol:DPPC(1:1)を用いることにより調製されたLipo-pamを用いたG7~G9およびG11群において、多くの分泌が誘導された。TNF-αは、G5、G7、G9およびG11群において多く誘導された(図17B)。
【0104】
例9.脂質の型、Poly(I:C)の用量および組み換えVZVgE抗原混合の方法による、組み換えワクチンの免疫原性の比較
脂質の型、Poly(I:C)の用量、およびLipo-pamの調製において組み換えVZVgE抗原を混合する方法による、ワクチンの免疫原性を比較した。
【0105】
<9-1>試験ワクチンの調製および投与
Lipo-Pamは、DC-Chol、DOPEおよびPam3-CSKKKKを溶解し、DC-Chol、DOPEおよびPam3-CSKKKKを、脂質の濃度(DC-Chol:DOPE=3:7)が125μg/用量となり、Pam3-CSKKKKの濃度が25μg/用量となるか、脂質の濃度(DC-Chol:DPPC=1:1または3:7)が125μg/用量となり、Pam3-CSKKKKの濃度が25μg/用量となるように混合したことを除いて、例<2-1>において記載されるものと同じ様式により調製した。加えて、25μg/用量のPam3-CSKKKK、200μg/用量のPoly(I:C)および5μg/用量の組み換えVZVgE抗原を混合することにより、L-pampoを調製した。次いで、Lipo-Pamを40または200μg/用量の濃度のPoly(I:C)と混合し、組み換えVZVgE抗原を5μg/用量の濃度でそれに添加することにより、(G3~G6群)、または、Lipo-Pamを40または200μg/用量の濃度のPoly(I:C)および5μg/用量の濃度の組み換えVZVgE抗原と同時に混合することにより、試験ワクチンを調製した(G7~G10群)。調製されたワクチンを、6週齢のC57BL/6メスマウス(Orient Bio Inc., Korea)に、2週間の間隔で2回、筋肉内注射した。
【0106】
各々の試験群についての試験ワクチンの調製条件
【表7】
【0107】
<9-2>体液性免疫応答の分析
例<9-1>において投与された試験ワクチンにより誘導された体液性免疫応答を分析するために、免疫化の前である第0週において、第1のワクチン接種の2週間後である第2週において、および第2のワクチン接種の2週間後である第4週において、マウスの血清を分離することにより、試料を調製した。組み換えVZVgE抗原に対する全IgG抗体価を、調製された試料を用いて、例<2-2>において記載されるものと同じ様式により分析した。
【0108】
結果として、図18において示されるとおり、脂質の型およびPoly(I:C)と抗原とを混合する方法によっては、全IgG抗体価には何らの差異も存在しなかった(図18)。アイソタイプ分析において、IgG2b/IgG1およびIgG2c/IgG1の比は、DC-Chol:DPPCを3:7または1:1の比において用いるG4~G6群において、他の群におけるものより高かった。
【0109】
<9-3>細胞媒介性免疫応答の分析
例<9-1>において投与された試験ワクチンにより誘導された細胞媒介性免疫応答を分析するために、第2のワクチン接種の2週間後である第4週において、マウスから脾臓を抽出することにより、全脾細胞を単離した。次いで、ELISPOTアッセイおよびサイトカインELISAにより、例<2-3>において記載されるものと同じ様式により、細胞媒介性免疫応答を分析した。
【0110】
結果として、図19Aにおいて示されるとおり、IFN-γのELISPOTの結果により、DC-Chol:DPPCを用いることにより調製されたLipo-pamを用いるG4~G6およびG8~G10群において、L-pampoを用いるG2群ならびにDC-Chol:DOPEを用いるG3およびG7群におけるものよりも、より多くのIFN-γが産生された。IL-4のELISPOTの結果により、全試験群において同様のレベルにおいてIL-4が産生された(図19A)。
【0111】
図19Bにおいて示されるとおり、サイトカインELISAの結果により、DC-Chol:DOPEを用いる処方物よりも、DC-Chol:DPPCを用いる処方物により、最も多いIFN-γおよびTNF-αの分泌が、誘導された。IFN-γおよびTNF-αの分泌は、DC-Chol:DPPCを1:1の比で用いるG6およびG10群において、最も多く誘導された。IL-4は、L-pampoを用いるG2群において、DC-Chol:DPPCを1:1の比で用いるG6およびG10群におけるものよりも、より多く分泌された。DC-Chol:DOPEを用いるG3およびG7群において、DC-Chol:DPPCを用いる群と同様のレベルのIL-4が誘導された(図19B)。
【0112】
例10.脂質の型および用量、免疫活性物質の種類および組み換えVZVgE抗原の用量による、組み換えワクチンの免疫原性の比較
脂質の型および用量、免疫活性物質の種類および組み換えVZVgE抗原の用量により、ワクチンの免疫原性を比較した。免疫活性物質として、Poly(I:C)またはQS21を用いた。
【0113】
<10-1>試験ワクチンの調製および投与
Lipo-Pamは、DC-Chol、DOPE、DPPCおよびPam3-CSKKKKを溶解し、DC-Chol、DPPCおよびPam3-CSKKKKを、脂質の濃度(DC-Chol:DOPE=3:7)が125μg/用量となり、Pam3-CSKKKKの濃度が25μg/用量となるか、脂質の濃度(DC-Chol:DPPC=1:1)が、62.5、125または250μg/用量となり、Pam3-CSKKKKの濃度が25μg/用量となるように混合したことを除き、例<2-1>において記載されるものと同じ様式により調製した。加えて、25μg/用量のPam3-CSKKKK、200μg/用量のPoly(I:C)および5μg/用量の組み換えVZVgE抗原を混合することにより、L-pampoを調製した。次いで、Lipo-Pamを40μg/用量の濃度でPoly(I:C)と混合することにより(G2~G8群)、または、Lipo-Pamを、5μg/用量の濃度のQS21と混合すること(G9)および組み換えVZVgE抗原を5μg/用量の濃度でそれに添加することにより、試験ワクチンを調製した。調製されたワクチンを、6週齢のC57BL/6メスマウス(Orient Bio Inc., Korea)に、2週間の間隔で2回、筋肉内注射した。
【0114】
各々の試験群についての試験ワクチンの調製条件
【表8】
【0115】
<10-2>体液性免疫応答の分析
例<10-1>において投与された試験ワクチンにより誘導された体液性免疫応答を分析するために、免疫化の前である第0週において、第1のワクチン接種の2週間後である第2週において、および第2のワクチン接種の2週間後である第4週において、マウスの血清を分離することにより、試料を調製した。組み換えVZVgE抗原に対する全IgG抗体価を、調製された試料を用いて、例<2-2>において記載されるものと同じ様式により分析した。
【0116】
結果として、図20において示されるとおり、脂質の型による全抗体価は、DC-CholおよびDOPEを用いることにより調製されたLipo-pamを用いたG2群において最も高く、免疫活性物質としてPoly(I:C)の代わりにQS21を用いたG9群においては、高い抗体形成が誘導された(図20)。
【0117】
<10-3>細胞媒介性免疫応答の分析
例<10-1>において投与された試験ワクチンにより誘導された細胞媒介性免疫応答を分析するために、第2のワクチン接種の2週間後である第4週において、マウスから脾臓を抽出することにより、全脾細胞を単離した。次いで、ELISPOTアッセイおよびサイトカインELISAにより、例<2-3>において記載されるものと同じ様式により、細胞媒介性免疫応答を分析した。
【0118】
結果として、図21Aにおいて示されるとおり、IFN-γのELISPOTの結果により、脂質としてDC-CholおよびDPPCを用いた群において、脂質としてDC-CholおよびDOPEを用いたG2群におけるものよりも、より多くのIFN-γが産生された。IFN-γは、脂質としてDC-CholおよびDPPCを用い、免疫活性物質としてQS21を用いることにより調製されたLipo-pamを用いたG9群において、最も多く産生された。加えて、IL-4のELISPOTの結果により、脂質としてDC-CholおよびDPPCを用いた群において、脂質としてDC-CholおよびDOPEを用いたG2群におけるものよりも、より多くのIL-4が産生された。IL-4は、40μg/用量のPoly(I:C)および5μg/用量の組み換えVZVgE抗原を用いたG6群と、5μg/用量のQS21および5μg/用量の組み換えVZVgE抗原を用いたG9群とにおいて、同様のレベルで産生された(図21A)。
【0119】
図21Bにおいて示されるとおり、サイトカインELISAの結果により、DC-Chol:DPPCを用いたG3~G8群において、脂質としてDC-Chol:DOPEを用いたG2群におけるものよりも、より多くのIFN-γ、IL-4およびTNF-αの分泌が誘導された。5μg/用量のQS21および5μg/用量の組み換えVZVgE抗原を用いたG9群において、40μg/用量のPoly(I:C)および5μg/用量の組み換えVZVgE抗原を用いたG6群におけるものよりも、より多くのIFN-γおよびTNF-αの分泌が誘導された。IL-4の分泌は、いずれの群においても同様のレベルで誘導された(図21B)。
【0120】
したがって、<例10>の結果から、Lipo-pamの調製における免疫活性物質として、QS21のみならずPoly(I:C)の使用が、体液性および細胞媒介性免疫応答を誘導し、したがって、ワクチンの効力が改善されたことを確認した。
【0121】
例11.リポペプチドの種類による組み換えワクチンの免疫原性の比較
組み換えVZVgE抗原を用いることにより調製された組み換えワクチン中に含まれるリポペプチドの型によるワクチンの免疫原性を比較した。
【0122】
<11-1>試験ワクチンの調製および投与
Lipo-Pamは、DC-Chol、DPPCおよびリポペプチドを溶解し、DC-Chol、DPPCおよびリポペプチドを、脂質の濃度(DC-Chol:DPPC=1:1)が125μg/用量となり、リポペプチドの濃度が25μg/用量となるように混合したことを除いて、例<2-1>において記載されるものと同じ様式により調製した。粒子サイズ分析計(Malvern, Nono-ZS)を用いて、Lipo-Pamのサイズおよびゼータ電位を測定した。この時点において、リポペプチドとして、Pam3-CSKKKK、Dhc-SKKKK、PamDhc-SKKKK、Pam-CSKKKK、Pam2Cys-SKKKK、PHC-SKKKKまたはFSL-1を用いた。
【0123】
次いで、Lipo-Pamを40μg/用量の濃度でPoly(I:C)と混合すること、および組み換えVZVgE抗原を5μg/用量の濃度でそれに添加することにより、試験ワクチンを調製した。粒子サイズ分析計(Malvern, Nono-ZS)を用いて、試験ワクチン組成物のサイズおよびゼータ電位を測定した。
【0124】
リポペプチドの型によるLipo-Pamのサイズおよびゼータ電位
【表9】
【0125】
リポペプチドの型による組み換えワクチンのサイズおよびゼータ電位
【表10】
【0126】
結果として、表9において示されるとおり、Lipo-Pamは、組み換えワクチンを、沈殿物を伴わずに、適切に生成し、これは、90~130nmのサイズであった(表9)。加えて、表10において示されるとおり、リポペプチド、Poly(I:C)および抗原を含むワクチン組成物は、120~300nmのサイズを有する組み換えワクチンを形成した(表10)。
次いで、以下の表11において示されるとおり、調製されたワクチンを、6週齢のC57BL/6メスマウス(Orient Bio Inc., Korea)に、2週間の間隔で2回、筋肉内注射した。
【0127】
各々の試験群についての試験ワクチンの調製条件
【表11】
【0128】
<11-2>体液性免疫応答の分析
例<11-1>において投与された試験ワクチンにより誘導された体液性免疫応答を分析するために、免疫化の前である第0週において、第1のワクチン接種の2週間後である第2週において、および第2のワクチン接種の2週間後である第4週において、マウスの血清を分離することにより、試料を調製した。組み換えVZVgE抗原に対する全IgG抗体価を、調製された試料を用いて、例<2-2>において記載されるものと同じ様式により分析した。
結果として、図22において示されるとおり、抗体は全試験群において生成され、特に、より高い抗体価は、他の試験群と比較して、G3、G7、ならびにリポペプチドとしてPam3-CSKKKK、Pam2Cys-SKKKKおよびFSL-1を用いることにより調製されたLipo-pamを用いたG9群において誘導された(図22)。
【0129】
<11-3>細胞媒介性免疫応答の分析
例<11-1>において投与された試験ワクチンにより誘導された細胞媒介性免疫応答を分析するために、第2のワクチン接種の2週間後である第4週において、マウスから脾臓を抽出することにより、全脾細胞を単離した。次いで、ELISPOTアッセイおよびサイトカインELISAにより、例<2-3>において記載されるものと同じ様式により、細胞媒介性免疫応答を分析した。
【0130】
結果として、図23Aにおいて示されるとおり、IFN-γのELISPOTの結果により、抗体は全試験群において生成され、特に、IFN-γは、リポペプチドとしてPam3-CSKKKK、Dhc-SKKKK、Pam-CSKKKKまたはPHC-SKKKKを用いることにより調製されたLipo-pamを用いたG3、G4、G6およびG8群において、良好に生成された。加えて、IL-4のELISPOTの結果により、IL-4は、リポペプチドとしてPam3-CSKKKK、Dhc-SKKKK、Pam2Cys-SKKKKまたはPHC-SKKKKを用いたG3、G4、G7およびG8群において、良好に産生された(図23A)。
【0131】
図23Bにおいて示されるとおり、サイトカインELISAの結果により、リポペプチドとしてPam3-CSKKKKまたはDhc-SKKKKを用いたG3およびG4群において、より多くのIFN-γ、IL-4およびTNF-αの分泌が誘導された。
したがって、<例11>の結果から、Lipo-pamの調製において用いられた任意の型のリポペプチドが、体液性および細胞媒介性免疫応答を誘導し、したがって、本発明によるLipo-pamは、抗原と多様な型のリポペプチドとの組み合わせを用いたワクチンの調製のために用いることができることを確認した。特に、組み換え帯状疱疹ワクチンの調製において、体液性および細胞媒介性の両方の免疫応答を誘導するPam3-CSKKKKは、ワクチンの効力を改善するためのリポペプチドとして用いることができる。
【0132】
例12.L-pampoまたはLipo-pamを用いて処方された日本脳炎ウイルスgE抗原に対する組み換えワクチンの免疫原性の比較
組み換え日本脳炎ウイルスgE抗原を用いて、L-pampoまたはLipo-pamを用いて処方された組み換えワクチンの免疫原性を比較した。
【0133】
<12-1>試験ワクチンの調製および投与
Lipo-Pamは、DC-Chol、DOPEおよびPam3-CSKKKKを溶解し、DC-Chol、DOPEおよびPam3-CSKKKKを、脂質の濃度(DC-Chol:DOPE=3:7)が125μg/用量となり、Pam3-CSKKKKの濃度が25μg/用量となるように混合したことを除いて、例<2-1>において記載されるものと同じ様式により調製した。25μg/用量のPam3-CSKKKK、20μg/用量のPoly(I:C)および0.1または0.5μg/用量の組み換えJEVgE抗原を混合することにより、L-pampoを調製した。組み換えJEVgE抗原を、バキュロウイルス-昆虫細胞系において発現させ、精製した。次いで、Lipo-Pamを40μg/用量の濃度でPoly(I:C)と混合し、組み換えJEVgE抗原を0.1または0.5μg/用量の濃度でそれに添加することにより、試験ワクチンを調製した。調製されたワクチンを、6週齢のC57BL/6メスマウス(Orient Bio Inc., Korea)に、2週間の間隔で2回、筋肉内注射した。
【0134】
各々の試験群についての試験ワクチンの調製条件
【表12】
【0135】
<12-2>体液性免疫応答の分析
例<12-1>において投与された試験ワクチンにより誘導された体液性免疫応答を分析するために、免疫化の前である第0週において、第1のワクチン接種の2週間後である第2週において、および第2のワクチン接種の2週間後である第4週において、マウスの血清を分離することにより、試料を調製した。組み換えJEVgE抗原または不活化JEV抗原を、96ウェルのマイクロプレート上に100ng/ウェルの濃度でコーティングしたことを除いて、例<2-2>において記載されるものと同じ様式により調製された試料を用いて、JEVgE抗原に対する全IgG抗体価を分析した。
【0136】
結果として、図24Aおよび24Bにおいて示されるとおり、組み換えJEVgE抗原に対する全IgG抗体価(図24A)および不活化JEV抗原に対する全IgG抗体価(図24B)は、0.5μg/用量の抗原と共にLipo-pam処方物を用いたG7群(G7群)において、最も高かった。組み換えJEVgE抗原に対する抗体のアイソタイプ分析の結果として、IgG1型の抗体価は、L-pampoを用いたG5群において最も高く、IgG2aおよびIgG2b型の抗体価は、Lipo-pamを用いたG7群において最も高かった。
【0137】
<12-3>細胞媒介性免疫応答の分析
例<12-1>において投与された試験ワクチンにより誘導された細胞媒介性免疫応答を分析するために、第2のワクチン接種の2週間後である第4週において、マウスから脾臓を抽出することにより、全脾細胞を単離した。次いで、ELISPOTアッセイおよびサイトカインELISAにより、組み換えJEVgE抗原または不活化JEV抗原を用いたことを除いて、例<2-3>において記載されるものと同じ様式により、細胞媒介性免疫応答を分析した。
【0138】
結果として、図25Aにおいて示されるとおり、IFN-γおよびIL-4のELISPOTの結果により、IFN-γおよびIL-4は、Lipo-pamを用いたG6およびG7群において最も多く産生された(図25A)。
図25Bにおいて示されるとおり、サイトカインELISAの結果により、IFN-γ、IL-4およびTNF-αは、Lipo-pam処方物(G6およびG7群)、L-pampo処方物(G4およびG5群)および不活化ワクチン(G2およびG3群)の順で分泌された(図25B)。
【0139】
したがって、<例12>の結果より、組み換え日本脳炎ワクチンの調製においてLipo-pamと共に免疫活性物質を使用することにより、体液性および細胞媒介性免疫応答を誘導することにより、ワクチンの効力が改善されたことを確認した。このことは、Lipo-pamが、多様な抗原に対する免疫増強効果を有することを示唆する。
【0140】
例13.ミョウバン、L-pampoまたはLipo-pamを用いて処方された、季節性不活性型インフルエンザウイルス抗原に対するワクチンの免疫原性の比較
季節性不活性型インフルエンザウイルス抗原を用いて、ミョウバン、L-pampoまたはLipo-pamを用いて処方されたワクチンの免疫原性を比較した。
【0141】
<13-1>試験ワクチンの調製および投与
Lipo-Pamは、DC-Chol、DOPE、DPPCおよびPam3-CSKKKKを溶解し、DC-Chol、DOPE、DPPCおよびPam3-CSKKKKを、脂質の濃度(DC-Chol:DOPE=3:7またはDC-Chol:DOPE=1:1)が125μg/用量となり、Pam3-CSKKKKの濃度が25μg/用量となるように混合したことを除いて、例<2-1>において記載されるものと同じ様式により調製した。25μg/用量のPam3-CSKKKK、20μg/用量のPoly(I:C)、および0.5μg/用量の4株の季節性不活性型インフルエンザウイルス抗原を混合することにより、L-pampoを調製した。4株の季節性不活性型インフルエンザウイルス抗原は、A/California/07/2009(H1N1)、A/Hong Kong/4801/2014(H3N2)、B/Phuket/3073/2013(BY)およびB/Brisbane/60/2008(BV)から得られた。これらの抗原を、卵中で増幅させ、産生させ、精製した。次いで、Lipo-Pamを40μg/用量の濃度でPoly(I:C)と混合し、季節性不活性型インフルエンザウイルス抗原を0.5μg/用量の濃度でそれに添加することにより、試験ワクチンを調製した。調製されたワクチンを、6週齢のC57BL/6メスマウス(Orient Bio Inc., Korea)に、2週間の間隔で2回、筋肉内注射した。
【0142】
各々の試験群についての試験ワクチンの調製条件
【表13】
【0143】
<13-2>体液性免疫応答の分析
例<13-1>において投与された試験ワクチンにより誘導された体液性免疫応答を分析するために、免疫化の前である第0週において、第1のワクチン接種の2週間後である第2週において、および第2のワクチン接種の2週間後である第4週において、マウスの血清を分離することにより、試料を調製した。調製された試料を用いて、4株の季節性不活性型インフルエンザウイルス抗原を、96ウェルのマイクロプレート中に、それぞれ25ng/ウェルの濃度でコーティングしたことを除いて、例<2-2>において記載されるものと同じ様式により、季節性不活性型インフルエンザウイルス抗原に対する全IgG抗体価を分析した。
【0144】
結果として、図26において示されるとおり、季節性不活性型インフルエンザウイルス抗原に対する全IgG抗体価は、4株全てにおいて、G4群(L-pampo処方物)において最も高く、また、G5およびG6群(Lipo-pam処方物)においても優れていた。特に、G6群(DC-Chol:DPPC=1:1)において、高いIgG抗体価が観察された。一方、抗原のみを投与されたG2群および免疫増強剤としてミョウバンを用いたG3群における全IgG抗体価は、Lipo-pam処方物を用いた試験群におけるものよりも、著しく低かった(図26)。
【0145】
<13-3>細胞媒介性免疫応答の分析
例<13-1>において投与された試験ワクチンにより誘導された細胞媒介性免疫応答を分析するために、第2のワクチン接種の2週間後である第4週において、マウスから脾臓を抽出することにより、全脾細胞を単離した。次いで、ELISPOTアッセイおよびサイトカインELISAにより、4株の季節性不活性型インフルエンザウイルス抗原を用いたことを除いて、例<2-3>において記載されるものと同じ様式により、細胞媒介性免疫応答を分析した。
【0146】
結果として、図27において示されるとおり、IFN-γのELISPOTの結果により、IFN-γは、4株の季節性不活性型インフルエンザウイルス抗原に対して、G5およびG6群(Lipo-pam処方物)において、最も多く産生された(図27)。図28において示されるとおりIL-4のELISPOTの結果により、IL-4はまた、G5およびG6群(Lipo-pam処方物)においても分泌され、これはまた、抗原のみを投与されたG2群およびミョウバンを添加されたG3群よりも低かった(図28)。
【0147】
図29~31において示されるとおり、サイトカインELISAの結果により、G5およびG6群(Lipo-pam処方物)において、多くのIFN-γおよびTNF-αが産生された(図29および30)。IL-4はまた、G5およびG6群においても分泌され、これは、抗原のみを投与されたG2群およびミョウバンを添加されたG3群におけるものよりも低かった(図31)。
【0148】
したがって、<例13>の結果から、季節性不活性型インフルエンザウイルスワクチンの調製におけるアジュバントとしてのLipo-pamの使用が、体液性および細胞媒介性免疫応答を誘導することにより、ワクチンの効力を改善したことを確認した。上から、また、本発明によるワクチンアジュバントLipo-pamは、多様な種類の抗原と共に、抗原の型を限定することなく、用いることができることを確認した。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19A
図19B
図20
図21A
図21B
図22
図23A
図23B
図24
図25A
図25B
図26
図27
図28
図29
図30
図31
【配列表】
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