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特許7080535鉄を利用して廃触媒中の白金族金属を捕集するスラグ組成の設計方法
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  • 特許-鉄を利用して廃触媒中の白金族金属を捕集するスラグ組成の設計方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】鉄を利用して廃触媒中の白金族金属を捕集するスラグ組成の設計方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 11/02 20060101AFI20220530BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
C22B11/02
C22B7/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021542210
(86)(22)【出願日】2021-02-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 CN2021074715
(87)【国際公開番号】W WO2021179847
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】202010631384.2
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516265780
【氏名又は名称】北京科技大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】張深根
(72)【発明者】
【氏名】丁云集
【審査官】向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108875285(CN,A)
【文献】特開2005-113193(JP,A)
【文献】特開2005-257175(JP,A)
【文献】Yunji Ding et al.,Highly efficient recovery of platinum, palladium, and rhodium from spent automotive catalysts via iron melting collection,Resources, Conservation & Recycling,2020年04月,Vol.155
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 11/02
C22B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
S1、鉄液滴の溶融スラグでの運動軌跡を解析することにより、鉄液滴が完全に沈降した場合の限界寸法及び沈降速度に基づき、スラグ相の粘度及び密度の範囲を明らかにするステップと、
S2、廃触媒担体のタイプに応じて、スラグ形成剤のタイプを選択し、スラグ相元素の組成を明らかにし、適切な溶融温度区間を選択し、熱力学ソフトウェアによってシミュレーションして計算し、目標スラグ相成分を決定するステップと、
S3、シミュレーションにより決定された目標スラグ相成分に基づき、廃触媒担体をベースとし、スラグ形成剤を添加してスラグ相成分を配合し、廃触媒のスラグ組成に検証及び最適化を行い、白金族金属の効率的な捕集を実現するステップと、
を含む鉄を利用して廃触媒中の白金族金属を捕集するスラグ組成の設計方法であって、
ステップS1は、具体的に、以下の通りであり、
(1)鉄液滴の限界寸法dが20μm以下であると決定し、
(2)溶融効率に基づいて鉄液滴の限界沈降速度νを決定し、鉄液滴の受けた力が平衡した場合の沈降速度が1.0×10-5m/s以上であり、
(3)鉄液滴が完全に沈降した場合の鉄液滴の限界寸法d及び鉄液滴の限界沈降速度νに基づき、鉄液滴が完全に沈降した場合に対応するスラグ相の粘度と密度との関係を決定し、
【数1】
ただし、鉄液滴の限界沈降速度νとは、溶融スラグで鉄液滴の受けた力が平衡した場合の鉄液滴のスラグ相に対する沈降速度を指し、単位がm/sであり、ηは、スラグ相の粘度であり、単位がPa・sであり、dは、鉄液滴の受けた力が平衡した場合の鉄液滴の直径であり、単位がmであり、
は、鉄液滴の密度であり、単位がkg/mであり、
は、溶融スラグの密度であり、単位がkg/mであり、gは、重力加速度であり、単位がm/sであり、
溶融スラグの密度
及びスラグ相の粘度ηは、スラグ相成分及び溶融温度のみに関連し、
【数2】
【数3】
Mは、溶融スラグのモル質量であり、単位がkg/molであり、Tは溶融温度であり、単位がKであり、A、B、a及びbは、スラグ相成分に関連する定数であり、
(4)1573~1773Kの溶融温度範囲で、鉄液滴が完全に沈降した場合に対応するスラグ相の粘度及び密度の範囲を決定し、スラグ相の粘度は、0.30Pa・s以下であり、スラグ相の密度は、3.0×10kg/m以下であり、
前記廃触媒は、コージェライト、アルミナ、ゼオライト、シリカを担体とする白金族金属含有触媒のうちのいずれか1つ又はいずれか1つ以上の組み合わせを含むことを特徴とする鉄を利用して廃触媒中の白金族金属を捕集するスラグ組成の設計方法。
【請求項2】
熱力学ソフトウェアによってシミュレーションして計算し、目標スラグ相成分を決定するステップは、具体的に、鉄液滴が完全に沈降した場合に対応するスラグ相の粘度及び密度の範囲を決定した後、担体の成分に応じて適切なスラグ形成剤を選択し、スラグ組成を明らかにし、溶融温度Tを一定にし、熱力学ソフトウェアによって計算して対応するスラグ相成分の範囲を得て、ケイ酸塩状態図に基づいてスラグ相の融点が1573Kよりも小さい成分区間を選択し、スラグ量が最小となる原則に基づき、最終的な目標スラグ相成分を決定することであることを特徴とする請求項1に記載の鉄を利用して廃触媒中の白金族金属を捕集するスラグ組成の設計方法。
【請求項3】
触媒担体がコージェライトである場合、スラグ相の密度≦2.75×10kg/mであり、スラグ相の粘度≦0.20Pa・sであり、溶融温度は1673~1723Kであり、添加されるスラグ形成剤は、酸化カルシウム、ホウ砂、炭酸ナトリウム、ステンレス鋼スラグ、ごみ焼却飛灰のうちの1つ又は1つ以上の組み合わせを含み、廃触媒とスラグ形成剤の質量比は1:0.8~1:1.2であり、
触媒担体がアルミナである場合、スラグ相の密度≦3.0×10kg/mであり、スラグ相の粘度≦0.30Pa・sであり、溶融温度は1723~1773Kであり、添加されるスラグ形成剤は、酸化カルシウム、ホウ砂、シリカ、炭酸ナトリウム、フッ化カルシウム、石英、廃ガラス、ステンレス鋼スラグ、ごみ焼却飛灰、ごみ焼却主灰のうちの2つ又は2つ以上の組み合わせを含み、廃触媒とスラグ形成剤の質量比は1:1~1:1.5であり、
触媒担体がゼオライトである場合、スラグ相の密度≦2.85×10kg/mであり、スラグ相の粘度≦0.22Pa・sであり、溶融温度は1623~1723Kであり、添加されるスラグ形成剤は、酸化カルシウム、ホウ砂、炭酸ナトリウム、廃ガラス、ステンレス鋼スラグ、ごみ焼却飛灰、ごみ焼却主灰のうちの2つ又は2つ以上の組み合わせを含み、廃触媒とスラグ形成剤の質量比は1:0.5~1:1.1であり、
触媒担体がシリカである場合、スラグ相の密度≦2.45×10kg/mであり、スラグ相の粘度≦0.18Pa・sであり、溶融温度は1573~1673Kであり、添加されるスラグ形成剤は、酸化カルシウム、ホウ砂、炭酸ナトリウム、ステンレス鋼スラグ、ごみ焼却飛灰、ごみ焼却主灰のうちの2つ又は2つ以上の組み合わせを含み、廃触媒とスラグ形成剤の質量比は1:0.4~1:1.0であることを特徴とする請求項1に記載の鉄を利用して廃触媒中の白金族金属を捕集するスラグ組成の設計方法。
【請求項4】
前記スラグ組成の設計方法によってスラグ組成を設計することで、スラグ相と鉄合金の分離効率を向上させ、スラグ中の白金族金属含有量を低減し、スラグ中の白金族金属含有量を10g/t以下にすることができることを特徴とする請求項1に記載の鉄を利用して廃触媒中の白金族金属を捕集するスラグ組成の設計方法。
【請求項5】
鉄を利用して廃触媒中の白金族金属を捕集することは、
S1、配合された捕集剤、廃触媒、スラグ形成剤を均一に混合してから溶融炉に入れるステップと、
S2、まず、10~30min予熱し、その後、昇温して溶融し始めるステップと、
S3、反応完了後、合金溶融物が白金族金属を十分に捕集するとともに底部に沈むように静置し、スラグと合金の分離によって白金族金属に富む鉄合金及び溶融スラグを得るステップと、を含むことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の鉄を利用して廃触媒中の白金族金属を捕集するスラグ組成の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金族金属リサイクルの技術分野に関し、特に鉄を利用して廃触媒中の白金族金属を捕集するスラグ組成の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中国の白金族金属鉱物資源は極めて少なく、原鉱生産量は2~3トンしかないが、消費量は150トンと高く、世界最大の白金族金属消費国であり、供給と需要との矛盾が非常に際立っている。廃触媒は、白金族金属の二次資源の最も重要な供給源であり、その回収は、中国の白金族金属の供給リスクを効果的に緩和し、研究の焦点になっている。
【0003】
中国発明特許(中国特許出願第201810185054.8号)には、FeO、CaO、Al、MgO、SiOを5元スラグ系とし、溶融温度が1600~2000℃と高い、鉄酸化物を捕集剤として利用して自動車廃触媒中の貴金属である白金を回収する方法が開示されている。当該方法によれば、スラグ中の白金含有量が5~15g/tであり、回収率が(>99%)高いが、スラグ組成の設計が合理的ではないため、スラグ相の融点が高く、粘度が大きく、必要とされる溶融温度が高く、フェロシリコンが生成され、且つ、エネルギー消費が高く、耐火材料に対する要求が高く、製造コストが増加する。中国発明特許(中国特許出願第201610883402.X号)には、鉄粉を捕集剤とし、酸化カルシウムを添加してスラグを形成するだけで廃自動車排ガス触媒中の白金族金属を回収し、プラズマ炉によって1500~1800℃で溶融することが開示されており、スラグ量が少なく、白金及びパラジウムの回収率が(>99%)高いという利点を有するが、ロジウムの回収率が(約90%)低く、且つ、スラグ組成が最適化されていないため、溶融温度が高く、難溶性のフェロシリコンが生成されやすく、且つ、プラズマ炉設備が高価であり、運転コストが高い。中国発明特許(中国特許出願第201310005494.8号)には、鉄、銅を捕集剤としてアルミナ担体廃触媒を回収し、スラグ形成剤がナトリウム塩のみであることが開示されており、白金族金属の回収率が98%よりも高いことが実現されたが、ナトリウム塩を添加してスラグを形成するだけで上記効果を達成することが実際には非常に困難であり、スラグ相の融点が高く、同時にナトリウム塩の高温での揮発が激しい。中国発明特許(中国特許出願第201611141140.6号)には、鉄系材料を捕集剤として貴金属を抽出する方法が開示されており、スラグ形成剤は、酸化カルシウム、シリカ、フッ化カルシウム、アルミナ、酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム及びホウ砂のうちのいずれか1つ又はいずれか2つの以上の組み合わせであり、鉄による白金族金属の効率的な捕集が実現されたが、当該方法には、具体的なスラグ組成及びスラグ相成分区間が与えられていない。
【0004】
鉄粉を捕集剤として白金族金属を回収する場合、溶融・捕集過程は、主に鉄、白金族金属、スラグ相の溶融、鉄による白金族金属の捕集及びFe-PGMの沈降を含み、Fe-PGMの沈降過程では、白金族金属を絶えず凝集して捕集する。従って、白金族金属の捕集率は、スラグ中のFe-PGM含有量によるものである。白金族金属の捕集率を向上させるために、スラグ相中の白金族金属含有量を低減し、スラグ組成の設計効率を向上させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国特許出願第201810185054.8号
【文献】中国特許出願第201610883402.X号
【文献】中国特許出願第201310005494.8号
【文献】中国特許出願第201611141140.6号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記技術問題に対して、本発明は、鉄を利用して廃触媒中の白金族金属を捕集するスラグ組成の設計方法を提供し、当該設計方法に基づいてスラグ組成の配合を効率的に行い、実験作業負荷を軽減し、研究開発周期を短縮することを目的とし、迅速、高精度、高効率の特性を有する。また、本発明は、コージエライト、アルミナ、ゼオライト、シリカを担体とする白金族金属含有廃触媒のスラグ組成配合技術を更に提供し、スラグ相の融点が低く、粘度が小さく、密度が小さいスラグ組成が設計され、スラグと鉄の分離効率を向上させ、スラグ中の白金族金属含有量を低減し、白金族金属の高効率、低コストの回収を実現する。
【0007】
本発明は、以下の技術的解決手段を採用する。
【0008】
鉄を利用して廃触媒中の白金族金属を捕集するスラグ組成の設計方法であって、
S1、鉄液滴の溶融スラグでの運動軌跡を解析することにより、鉄液滴の等速沈降速度と、鉄液滴の直径と、スラグ相の粘度と、スラグ相の密度との関係を得て、鉄液滴が完全に沈降した場合の限界寸法及び沈降速度に基づき、スラグ相の粘度及び密度の範囲を明らかにするステップと、
S2、廃触媒担体のタイプに応じて、スラグ形成剤のタイプを選択し、スラグ相元素の組成を明らかにし、適切な溶融温度区間を選択し、熱力学ソフトウェアによってシミュレーションして計算し、目標スラグ相成分を決定するステップと、
S3、シミュレーションにより決定された目標スラグ相成分に基づき、廃触媒担体をベースとし、スラグ形成剤を添加してスラグ相成分を配合し、廃触媒のスラグ組成に検証及び最適化を行い、白金族金属の効率的な捕集を実現するステップと、を含むことを特徴とする。
【0009】
更に、ステップS1は、具体的に、以下の通りであり、
(1)鉄液滴の限界寸法dが20μm以下であると決定し、鉄液滴の限界寸法dは、溶融スラグのうち沈降していない鉄液滴の最大寸法であり、鉄液滴の限界寸法の決定過程としては、具体的に、既知の実験データに基づき、白金族金属の回収率と鉄液滴の直径dとの経験的関係を明らかにし、鉄液滴の限界寸法が20μm以下である場合、白金族金属の回収率は99%以上であり、
(2)溶融効率に基づいて鉄液滴の限界沈降速度νを決定し、
鉄液滴の沈降過程が等速運動を主とするため、その運動変位は、沈降時間にほぼ比例し、
【0010】
【数1】
ただし、Lは、鉄液滴の運動変位(m)であり、測定によって得られ、tは、鉄が溶けた後の沈降時間(s)であり、
溶融效率に基づいて溶融時間を制御し、即ち、鉄が溶けた後の沈降時間tを制御し、鉄液滴の限界沈降速度νが1.0×10-5m/s以上であると決定し、溶融效率は、単位時間当たりに溶融された廃触媒の質量であり、この場合、溶融炉の大きさに基づき、溶融效率≧100kg/hになるように制御し、
(3)鉄液滴が完全に沈降した場合の鉄液滴の限界寸法d及び鉄液滴の限界沈降速度ν
【0011】
に基づき、鉄液滴が完全に沈降した場合に対応するスラグ相の粘度と密度との関係を決定し、
鉄液滴が溶融スラグで受けた力を解析することで、鉄液滴が溶融スラグで受けた力が平衡した場合の方程式を確立し、鉄液滴が溶融スラグで重力、浮力及び粘性力の3つの力の作用を受け、沈降過程において、重力、浮力及び粘性力の3者が平衡した場合、鉄液滴は等速で沈降し、鉄液滴が溶融スラグで受けた力が平衡した場合の方程式は、以下の式(1)の通りであり、
【0012】
【数2】
溶融スラグで受けた力が平衡した場合の鉄液滴のスラグ相に対する沈降速度νと鉄液滴の直径dとの関係を決定し、
【0013】
【数3】
式(2)に基づいて鉄液滴が完全に沈降した場合に対応するスラグ相の粘度と密度との関係を決定し、
式(1)及び式(2)において、ηは、スラグ相の粘度であり、単位がPa・sであり、dは、鉄液滴の限界直径であり、単位がmであり、νは、受けた力が平衡した場合の鉄液滴のスラグ相に対する沈降速度であり、単位がm/sであり、
は、鉄液滴の密度であり、単位がkg/mであり、
は、溶融スラグの密度であり、単位がkg/mであり、gは、重力加速度であり、単位がm/sであり、
鉄合金中の白金族金属含有量が約1.0~2.0wt.%であり、鉄液滴の密度を純鉄の密度として近似すれば、
【0014】
【数4】
であり、
溶融スラグの密度は、主に化学成分及び温度によって決定され、溶融スラグの密度は、純粋な組成成分のモル体積によって推定され、以下のように示され、
【0015】
【数5】
【0016】
【数6】
ただし、Vは、それぞれ酸化物のモル体積及びモル質量であり、Xは、各組成成分のモル体積であり、Xi,1773Kは、各組成成分の1773Kでのモル体積であり、Tは絶対温度(K)であり、
更に、溶融スラグの密度は、以下のように表すことができ、
【0017】
【数7】
ただし、Mは、溶融スラグのモル質量であり、A及びBは、スラグ相成分に関連する定数であり、
更に、スラグ相の粘度は、主に温度及び化学成分によって決定され、(式7)に示され、
【0018】
【数8】
ただし、Tは絶対温度(K)であり、a及びbは、スラグ相成分に関連する定数であり、
(4)1573~1773Kの溶融温度範囲で、鉄液滴が完全に沈降した場合に対応するスラグ相の粘度及び密度の範囲を決定し、スラグ相の粘度は、0.30Pa・s以下であり、スラグ相の密度は、3.0×10kg/mである。
【0019】
更に、熱力学ソフトウェアによってシミュレーションして計算し、目標スラグ相成分を決定するステップは、具体的に、鉄液滴が完全に沈降した場合に対応するスラグ相の粘度及び密度の範囲を決定した後、担体の成分に応じて適切なスラグ形成剤を選択し、スラグ組成を明らかにし、溶融温度Tを一定にし、Factsage熱力学ソフトウェアによって計算して対応するスラグ相成分の範囲を得て、ケイ酸塩状態図に基づいてスラグ相の融点が1573Kよりも小さい成分区間を選択し、スラグ量が最小となる原則に基づき、最終的な目標スラグ相成分を決定することである。
【0020】
更に、前記廃触媒は、コージェライト、アルミナ、ゼオライト、シリカを担体とする白金族金属含有触媒のうちのいずれか1つ又はいずれか1つ以上の組み合わせを含む。
【0021】
更に、触媒担体がコージェライトである場合、好ましくは、スラグ相の密度≦2.75×10kg/mであり、スラグ相の粘度≦0.20Pa・sであり、溶融温度は1673~1723Kであり、添加されるスラグ形成剤は、酸化カルシウム、ホウ砂、炭酸ナトリウム、ステンレス鋼スラグ、ごみ焼却飛灰のうちの1つ又は1つ以上の組み合わせを含み、廃触媒とスラグ形成剤の質量比は1:0.8~1:1.2であり、
触媒担体がアルミナである場合、好ましくは、スラグ相の密度≦3.0×10kg/mであり、スラグ相の粘度≦0.30Pa・sであり、溶融温度は1723~1773Kであり、添加されるスラグ形成剤は、酸化カルシウム、ホウ砂、シリカ、炭酸ナトリウム、フッ化カルシウム、石英、廃ガラス、ステンレス鋼スラグ、ごみ焼却飛灰、ごみ焼却主灰のうちの2つ又は2つ以上の組み合わせを含み、廃触媒とスラグ形成剤の質量比は1:1~1:1.5であり、
触媒担体がゼオライトである場合、好ましくは、スラグ相の密度≦2.85×10kg/mであり、スラグ相の粘度≦0.22Pa・sであり、溶融温度は1623~1723Kであり、添加されるスラグ形成剤は、酸化カルシウム、ホウ砂、炭酸ナトリウム、廃ガラス、ステンレス鋼スラグ、ごみ焼却飛灰、ごみ焼却主灰のうちの2つ又は2つ以上の組み合わせを含み、廃触媒とスラグ形成剤の質量比は1:0.5~1:1.1であり、
触媒担体がシリカである場合、好ましくは、スラグ相の密度≦2.45×10kg/mであり、スラグ相の粘度≦0.18Pa・sであり、溶融温度は1573~1673Kであり、添加されるスラグ形成剤は、酸化カルシウム、ホウ砂、炭酸ナトリウム、ステンレス鋼スラグ、ごみ焼却飛灰、ごみ焼却主灰のうちの2つ又は2つ以上の組み合わせを含み、廃触媒とスラグ形成剤の質量比は1:0.4~1:1.0である。
【0022】
更に、前記スラグ組成の設計方法によってスラグ組成を設計することで、スラグ相と鉄合金の分離効率を向上させ、スラグ中の白金族金属含有量を低減し、スラグ中の白金族金属含有量を10g/t以下にすることができる。
【0023】
更に、鉄を利用して廃触媒中の白金族金属を捕集することは、
S1、配合された捕集剤、廃触媒、スラグ形成剤を均一に混合してから溶融炉に入れるステップと、
S2、まず、10~30min予熱し、その後、昇温して溶融し始めるステップと、
S3、反応完了後、合金溶融物が白金族金属を十分に捕集するとともに底部に沈むように静置し、スラグと合金の分離によって白金族金属に富む鉄合金及び溶融スラグを得るステップと、を含む。
【0024】
本発明の原理は、以下の通りである。鉄と白金族金属が固溶体を形成する原理を使用し、溶融過程において、捕集剤の鉄がまず溶けて、重力作用によって沈降し始め、沈降過程では、白金族金属を絶えず捕集するとともに周囲の鉄液滴と融合して成長し、沈降過程において、重力、粘性力及び浮力の作用を受け、3者が平衡した後に等速下降し、最終的に合金相とスラグ相との分離を実現する。白金族金属の捕集効率は、合金相に入っていない鉄液滴、即ち、スラグと鉄の分離度によるものである。従って、本発明のキーポイントは、スラグ相と鉄合金の分離効率を向上させ、スラグ中の白金族金属含有量を低減することである。モデリング、解き及び解析を行ったところ、捕集率に影響する因子は、溶融温度、時間及びスラグ相成分のみであり、溶融温度及び時間を制御し、熱力学ソフトウェア及びデータによって計算して対応するスラグ相成分の範囲を得る。
【0025】
本発明により開示される鉄を利用して廃触媒中の白金族金属を捕集するスラグ組成の設計方法において、モデリングし、計算して解き、ソフトウェアによってシミュレーション及び解析を行うことで目標スラグ組成を決定し、スラグ形成剤を添加することでスラグ相成分を検証して最適化する。目標スラグ組成の要求に基づき、添加されるスラグ形成剤は、酸化カルシウム、ホウ砂、シリカ、炭酸ナトリウム、石英、廃ガラス、ステンレス鋼スラグ、ごみ焼却飛灰、ごみ焼却主灰のうちの2つ又は2つ以上を含む。廃ガラス、ごみ焼却主灰は、一般固形廃棄物であり、それぞれ主にSiO、NaO、SiO及びCaOを含み、ステンレス鋼スラグ、ごみ焼却飛灰は、有害固形廃棄物に属し、それぞれ主にCaO、SiO、KO、NaO及びCaOを含み、同時にCr、Pb、Zn、Cdなどの重金属を含む。本発明のスラグ組成の設計方法は、研究開発効率を大幅に向上させ、スラグ組成の研究開発周期を短縮するだけでなく、本方法で設計されたスラグ組成によれば、固形廃棄物及び有害固形廃棄物の一部を相乗的に処理することもでき、白金族金属の効率的な捕集が実現され、顕著な経済的、環境的及び社会的利益を有する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の有益な効果は、以下の通りである。
(1)本発明のスラグ組成の設計方法は、鉄による白金族金属の効率的な捕集のために理論的指導及びサポートを提供し、当該方法によれば、実験作業負荷を軽減し、研究開発周期を短縮し、研究開発コストを削減することができる。
(2)本発明のスラグ組成の設計方法は、適用範囲が広く、技術窓口が広く、鉄を利用して各種の廃触媒から白金族金属を捕集するスラグ組成の配合及び成分の最適化に適する。
(3)本発明により設計されたスラグ組成は、融点が低く、粘度が小さく、密度が小さいなどの特性を有し、スラグと鉄の分離効率の向上に寄与し、スラグ中の白金族金属含有量が10g/tよりも低く、白金族金属の回収率が99%以上であり、顕著な経済的利益を有する。
(4)本発明により設計された目標スラグ相成分は、廃ガラス、ステンレス鋼スラグ、ごみ焼却飛灰、主灰などの固形廃棄物又は有害廃棄物をスラグ形成剤として添加することで、廃棄物で廃棄物を処理し、廃棄物をリサイクルするという目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施例の鉄を利用して廃触媒中の白金族金属を捕集するスラグ組成の設計方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、具体的な図面を参照しながら本発明の具体的な実施例を詳しく説明する。下記実施例に記載される技術的特徴又は技術的特徴の組み合わせは、独立していると見なされるべきではなく、より優れた技術的効果を達成するように、それらを組み合わせてもよいことに留意されたい。下記実施例の図面において、各図面における同じ符号は、同じ特徴又は部材を代表し、異なる実施例に使用することができる。
【0029】
本発明は、鉄を利用して廃触媒中の白金族金属を捕集するスラグ組成の設計方法であり、図1に示すように、まず、鉄液滴の溶融スラグでの運動軌跡を解析したところ、
【0030】
【数9】
を得て、その後、Matlabを用いて解いて鉄液滴の運動変位と鉄液滴の直径との関係を得て、鉄液滴が完全に沈降した場合の限界寸法を決定し、スラグ相の粘度及び密度の範囲を明らかにする。熱力学ソフトウェア及びデータによって目標スラグ相成分を計算し、最後に廃触媒のスラグ組成に検証及び最適化を行い、白金族金属の効率的な捕集を実現する。
【0031】
以下、具体的な実施例を参照しながら本発明の実現を詳しく説明する。
【実施例1】
【0032】
コージエライト担体廃触媒を原料とし、境界条件を、溶融温度が1673Kであり、沈降速度≧1.0×10-5m/sであり、限界寸法≦20μmであるように決定し、解いてスラグ相の粘度≦0.2Pa・s、密度≦2.75×10kg/mが得られる。担体成分に基づき、スラグ相Al/SiOの質量比が1:1.4~1:1.6であり、Al≧20wt.%であるように限定し、熱力学ソフトウェアによってシミュレーションして、目標スラグ組成としてCaO 20~22wt.%、SiO 23~35wt.%、Al 21~23wt.%、NaO 8~11wt.%、MgO 7~9wt.%、ZrO 4~6wt.%、CeO 2~4wt.%、Fe 2~4wt.%、B 3~5wt.%を得る。シミュレーションされたスラグ相成分に基づき、100部の廃自動車排ガス触媒、45部の酸化カルシウム、34部の炭酸ナトリウム、10部のホウ砂、10部の鉄粉、5部のフッ化カルシウムを均一に混合してから溶融炉に添加し、15min予熱し、その後、1673Kの条件で溶融し、材料が溶けた後に120min保温しながら沈降させてから流し込み、スラグ中の白金族金属含有量は8.2g/tであり、走査型電子顕微鏡によってスラグ中の鉄微粒子の粒径が12.8μmであることを発見した。
【実施例2】
【0033】
コージエライト担体廃触媒を原料とし、境界条件を、溶融温度が1693Kであり、沈降速度≧1.7×10-5m/sであり、限界寸法≦17μmであるように決定し、解いてスラグ相の粘度≦0.18Pa・s、密度≦2.65×10kg/mが得られる。担体成分に基づき、スラグ相Al/SiOの質量比が1:1.4~1:1.6であり、Al≧20wt.%であるように限定し、熱力学ソフトウェアによってシミュレーションして、目標スラグ組成としてCaO 22~28wt.%、SiO 22~26wt.%、Al 20~25wt.%、NaO 5~17wt.%、MgO 7~10wt.%、ZrO 4~6wt.%、CeO 3~4wt.%、Fe 2~4wt.%、B 3~5wt.%を得る。シミュレーションされたスラグ相成分に基づき、100部の廃自動車排ガス触媒、60部のステンレス鋼スラグ、30部の炭酸ナトリウム、7部のホウ砂、13部の鉄粉を均一に混合してから溶融炉に添加し、20min予熱し、その後、1693Kの条件で溶融し、材料が溶けた後に100min保温しながら沈降させてから流し込み、スラグ中の白金族金属含有量は6.7g/tであり、走査型電子顕微鏡によってスラグ中の鉄微粒子の粒径が6.4μmであることを発見し、シミュレーション結果と一致する。
【実施例3】
【0034】
コージエライト担体廃触媒を原料とし、境界条件を、溶融温度が1723Kであり、沈降速度≧2.2×10-5m/sであり、限界寸法≦10μmであるように決定し、解いてスラグ相の粘度≦0.16Pa・s、密度≦2.45×10kg/mが得られる。担体成分に基づき、スラグ相Al/SiOの質量比が1:1.4~1:1.6であり、Al≧20wt.%であるように限定し、熱力学ソフトウェアによってシミュレーションして、目標スラグ組成としてCaO 20~25wt.%、SiO 24~30wt.%、Al 22~28wt.%、NaO 14~22wt.%、MgO 6~13wt.%、ZrO 4~6wt.%、CeO 3~4wt.%、Fe 2~4wt.%、B 5~9wt.%を得る。シミュレーションされたスラグ相成分に基づき、100部の廃自動車排ガス触媒、40部のごみ焼却飛灰、40部のステンレス鋼スラグ、25部の炭酸ナトリウム、15部のホウ砂、15部の鉄粉を均一に混合してから溶融炉に添加し、20min予熱し、その後、1723Kの条件で溶融し、材料が溶けた後に50min保温しながら沈降させてから流し込み、スラグ中の白金族金属含有量は5.2g/tであり、走査型電子顕微鏡によってスラグ中の鉄微粒子の粒径が4.8μmであることを発見し、シミュレーション結果と一致する。
【実施例4】
【0035】
アルミナ担体廃触媒を原料とし、境界条件を、溶融温度が1723Kであり、沈降速度≧1.6×10-5m/sであり、限界寸法≦10μmであるように決定し、解いてスラグ相の粘度≦0.3Pa・s、密度≦3.0×10kg/mが得られる。担体成分に基づき、スラグ相Al≧40wt.%であるように限定し、熱力学ソフトウェアによってシミュレーションして、目標スラグ組成としてCaO 25~35wt.%、SiO 8~12wt.%、Al 40~50wt.%、NaO 8~12wt.%、Fe 2~4wt.%、CaF 3~4wt.%、B 3~5wt.%を得る。シミュレーションされたスラグ相成分に基づき、100部の白金含有のアルミナ担体廃触媒、70部のごみ焼却飛灰、10部の石英、10部の廃ガラス、26部の炭酸ナトリウム、8部のホウ砂、15部の鉄粉を均一に混合してから溶融炉に添加し、20min予熱し、その後、1723Kの条件で溶融し、材料が溶けた後に70min保温しながら沈降させてから流し込み、スラグ中の白金含有量は9.4g/tであり、走査型電子顕微鏡によってスラグ中の鉄微粒子の粒径が14.5μmであることを発見し、シミュレーション結果と一致する。
【実施例5】
【0036】
アルミナ担体廃触媒を原料とし、境界条件を、溶融温度が1753Kであり、沈降速度≧1.64×10-5m/sであり、限界寸法≦16μmであるように決定し、解いてスラグ相の粘度≦0.26Pa・s、密度≦2.72×10kg/mが得られる。担体成分に基づき、スラグ相Al≧45wt.%であるように限定し、熱力学ソフトウェアによってシミュレーションして、目標スラグ組成としてCaO 15~24wt.%、SiO 13~18wt.%、Al 45~55wt.%、NaO 15~22wt.%、Fe 1~2wt.%、CaF 5~8wt.%、B 5~9wt.%を得る。シミュレーションされたスラグ相成分に基づき、100部のパラジウム含有のアルミナ担体廃触媒、40部のごみ焼却飛灰、30部のごみ焼却主灰、20部の廃ガラス、40部の炭酸ナトリウム、10部のフッ化カルシウム、10部のホウ砂、15部の鉄粉を均一に混合してから溶融炉に添加し、20min予熱し、その後、1753Kの条件で溶融し、材料が溶けた後に70min保温しながら沈降させてから流し込み、スラグ中のパラジウム含有量は7.2g/tであり、走査型電子顕微鏡によってスラグ中の鉄微粒子の粒径が15.4μmであることを発見し、シミュレーション結果と一致する。
【実施例6】
【0037】
アルミナ担体廃触媒を原料とし、境界条件を、溶融温度が1773Kであり、沈降速度≧2.32×10-5m/sであり、限界寸法≦16μmであるように決定し、解いてスラグ相の粘度≦0.22Pa・s、密度≦2.56×10kg/mが得られる。担体成分に基づき、スラグ相Al≧45wt.%であるように限定し、熱力学ソフトウェアによってシミュレーションして、目標スラグ組成としてCaO 27~32wt.%、SiO 10~13wt.%、Al 42~47wt.%、NaO 13~15wt.%、Fe 1~3wt.%、CaF 4~5wt.%、B 4~5wt.%を得る。シミュレーションされたスラグ相成分に基づき、100部のパラジウム含有のアルミナ担体廃触媒、60部のごみ焼却飛灰、20部のごみ焼却主灰、22部の石英、20部の炭酸ナトリウム、11部のホウ砂、10部の鉄粉を均一に混合してから溶融炉に添加し、30min予熱し、その後、1773Kの条件で溶融し、材料が溶けた後に30min保温しながら沈降させてから流し込み、スラグ中のパラジウム含有量は6.3g/tであり、走査型電子顕微鏡によってスラグ中の鉄微粒子の粒径が5.6μmであることを発見し、シミュレーション結果と一致する。
【実施例7】
【0038】
ゼオライト担体廃触媒を原料とし、境界条件を、溶融温度が1623Kであり、沈降速度≧1.3×10-5m/sであり、限界寸法≦15μmであるように決定し、解いてスラグ相の粘度≦0.22Pa・s、密度≦2.85×10kg/mが得られる。担体成分に基づき、スラグ相SiO≧40wt.%であるように限定し、熱力学ソフトウェアによってシミュレーションして、目標スラグ組成としてCaO 20~36wt.%、SiO 40~60wt.%、Al 20~33wt.%、NaO 8~15wt.%、Fe 2~4wt.%、B 2~8wt.%を得る。シミュレーションされたスラグ相成分に基づき、100部の白金含有のゼオライト担体廃触媒、50部のごみ焼却飛灰、20部のステンレス鋼スラグ、10部の廃ガラス、24部の炭酸ナトリウム、6部のホウ砂、15部の鉄粉を均一に混合してから溶融炉に添加し、20min予熱し、その後、1623Kの条件で180min溶融してから流し込み、スラグ中の白金含有量は5.9g/tであり、走査型電子顕微鏡によってスラグ中の鉄微粒子の粒径が13.4μmであることを発見し、シミュレーション結果と一致する。
【実施例8】
【0039】
ゼオライト担体廃触媒を原料とし、境界条件を、溶融温度が1723Kであり、沈降速度≧2.5×10-5m/sであり、限界寸法≦13μmであるように決定し、解いてスラグ相の粘度≦0.19Pa・s、密度≦2.45×10kg/mが得られる。担体成分に基づき、スラグ相SiO≧40wt.%であるように限定し、熱力学ソフトウェアによってシミュレーションして、目標スラグ組成としてCaO 15~24wt.%、SiO 40~56wt.%、Al 18~27wt.%、NaO 12~23wt.%、Fe 1~3wt.%、B 4~11wt.%を得る。シミュレーションされたスラグ相成分に基づき、100部のパラジウム含有のゼオライト担体廃触媒、20部の酸化カルシウム、25部のごみ焼却主灰、34部の炭酸ナトリウム、10部のホウ砂、15部の鉄粉を均一に混合してから溶融炉に添加し、30min予熱し、その後、1723Kの条件で100min溶融してから流し込み、スラグ中のパラジウム含有量は4.1g/tであり、走査型電子顕微鏡によってスラグ中の鉄微粒子の粒径が8.1μmであることを発見し、シミュレーション結果と一致する。
【実施例9】
【0040】
シリカ担体廃触媒を原料とし、境界条件を、溶融温度が1573Kであり、沈降速度≧1.2×10-5m/sであり、限界寸法≦15μmであるように決定し、解いてスラグ相の粘度≦0.18Pa・s、密度≦2.45×10kg/mが得られる。担体成分に基づき、スラグ相SiO≧60wt.%であるように限定し、熱力学ソフトウェアによってシミュレーションして、目標スラグ組成としてCaO 10~25wt.%、SiO 60~78wt.%、Al 7~15wt.%、NaO 0~20wt.%、Fe 0~2wt.%、B 0~3wt.%を得る。シミュレーションされたスラグ相成分に基づき、100部の白金含有のシリカ担体廃触媒、10部の酸化カルシウム、10部のごみ焼却主灰、10部のステンレス鋼スラグ、5部の炭酸ナトリウム、5部のホウ砂、10部の鉄粉を均一に混合してから溶融炉に添加し、20min予熱し、その後、1573Kの条件で溶融し、材料が完全に溶けた後に60min沈降させてから流し込み、スラグ中の白金含有量は9.5g/tであり、走査型電子顕微鏡によってスラグ中の鉄微粒子の粒径が10.7μmであることを発見し、シミュレーション結果と一致する。
【実施例10】
【0041】
シリカ担体廃触媒を原料とし、境界条件を、溶融温度が1623Kであり、沈降速度≧2.1×10-5m/sであり、限界寸法≦16μmであるように決定し、解いてスラグ相の粘度≦0.16Pa・s、密度≦2.4×10kg/mが得られる。担体成分に基づき、スラグ相SiO≧65wt.%であるように限定し、熱力学ソフトウェアによってシミュレーションして、目標スラグ組成としてCaO 12~23wt.%、SiO 65~74wt.%、Al 10~21wt.%、NaO 5~14wt.%、Fe 1~2wt.%、B 2~8wt.%を得る。シミュレーションされたスラグ相成分に基づき、100部のパラジウム含有のシリカ担体廃触媒、30部のごみ焼却飛灰、12部の炭酸ナトリウム、10部のホウ砂、10部の鉄粉を均一に混合してから溶融炉に添加し、15min予熱し、その後、1623Kの条件で溶融し、材料が完全に溶けた後に30min沈降させてから流し込み、スラグ中のパラジウム含有量は7.1g/tであり、走査型電子顕微鏡によってスラグ中の鉄微粒子の粒径が12.3μmであることを発見し、シミュレーション結果と一致する。
【実施例11】
【0042】
シリカ担体廃触媒を原料とし、境界条件を、溶融温度が1673Kであり、沈降速度≧3.6×10-5m/sであり、限界寸法≦14μmであるように決定し、解いてスラグ相の粘度≦0.16Pa・s、密度≦2.37×10kg/mが得られる。担体成分に基づき、スラグ相SiO≧70wt.%であるように限定し、熱力学ソフトウェアによってシミュレーションして、目標スラグ組成としてCaO 0~20wt.%、SiO 70~80wt.%、Al 5~15wt.%、NaO 10~20wt.%、B 5~15wt.%を得る。シミュレーションされたスラグ相成分に基づき、100部のパラジウム含有のシリカ担体廃触媒、10部の酸化カルシウム、10部のシリカ、15部の炭酸ナトリウム、5部のホウ砂、10部の鉄粉を均一に混合してから溶融炉に添加し、20min予熱し、その後、1673Kの条件で溶融し、材料が完全に溶けた後に240min沈降させてから流し込み、スラグ中のパラジウム含有量は3.7g/tであり、走査型電子顕微鏡によってスラグ中の鉄微粒子の粒径が8.6μmであることを発見し、シミュレーション結果と一致する。
図1