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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】移動棚装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/10 20060101AFI20220530BHJP
   A47B 53/02 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
B65G1/10 F
A47B53/02 502C
A47B53/02 502H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018030841
(22)【出願日】2018-02-23
(65)【公開番号】P2019142696
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】山崎 恵一
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-347907(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0083316(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/10
A47B 53/02
G05D 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な移動棚を複数有する移動棚装置であって、
一方の移動棚には、レーザ光を隣接する他方の移動棚に向けて略水平方向の所定の走査可能範囲に照射しその反射光を検出する検出部が設けられ、
前記他方の移動棚には、前記レーザ光が照射される被検出面と、略水平方向に異なる位置に配置され前記レーザ光を前記被検出面と異なる態様で反射する基準部と、が設けられ、
前記検出部は、レーザ光を用いて検出された前記被検出面までの最短距離を表す距離情報と、前記基準部の位置情報と、を取得し、
前記距離情報と前記位置情報とに基づいて前記一方の移動棚及び前記他方の移動棚の相対角度のずれ及び相対位置のずれを検知する検知手段を備えることを特徴とする移動棚装置。
【請求項2】
前記移動棚は、物品を載置可能な棚部を備えており、前記基準部は、前記棚部の上方または下方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の移動棚装置。
【請求項3】
前記被検出面に前記基準部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の移動棚装置。
【請求項4】
複数の前記移動棚はそれぞれ、一つの基準となる基準棚に向けて走行が制御されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の移動棚装置。
【請求項5】
前記移動棚は、隣接する移動棚との離間距離に基づいて制御されることを特徴とする請求項4に記載の移動棚装置。
【請求項6】
前記基準棚は床に固定された固定棚であって、前記検知手段は、前記固定棚に設けられており、複数の前記移動棚と無線手段により接続されていることを特徴とする請求項4または5に記載の移動棚装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走可能な移動棚を複数有する移動棚装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から倉庫や書庫などに用いられ床面上を所望の目的位置まで自走する移動棚を有する電動式の移動棚装置が知られている。例えば、特許文献1に示されるように、車輪をモータにより駆動させることにより床面上を往復動する移動棚を複数備え、移動棚をそれぞれ走行させることにより各移動棚同士の間隔を適宜調整できるようになっている。
【0003】
特許文献1に示される移動棚装置は、移動棚の幅方向に設けられる複数の傾き検出センサと、複数の幅ずれ検出センサと、床面に設けられる複数の傾き被検出体と、床面に設けられる基準点検出体と、を備えている。移動棚装置は、移動棚が走行中に複数の傾き検出センサが複数の傾き検出体を検出した際の時間差または走行距離差に基づいて移動棚の傾きを検知するとともに、移動棚が走行中に複数の幅ずれ検出センサのうちいずれの幅ずれ検出センサが基準点検出体を検出したかに基づいて移動棚の幅ずれを検知し、移動棚の傾きまたは幅ずれの情報に基づいて幅方向に離間した車輪の回転数に差をもたせて制御することで移動棚の傾きまたは幅ずれを修正できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-87518号公報(第5頁、第8図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の移動棚装置にあっては、移動棚の傾きと幅ずれを検出するために傾き検出センサと幅ずれ検出センサとを2種類用意する必要があったため、部品点数が多く、設置作業が煩雑になるばかりか、傾き検出センサと幅ずれ検出センサとを設置するスペースが大きくなってしまうという問題があった。また、傾き被検出体と基準点検出体とが床面に設けられているため、部品点数が多く、設置作業が煩雑となっていた。さらに、床面に設けられた傾き被検出体及び基準点検出体に沿って移動棚装置は移動制御されるものであるため、移動棚装置を設置する場所の汎用性が低いという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、簡素な構造で、且つ設置自由度の高い移動棚装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の移動棚装置は、
自走可能な移動棚を複数有する移動棚装置であって、
一方の移動棚には、レーザ光を隣接する他方の移動棚に向けて略水平方向の所定の走査可能範囲に照射しその反射光を検出する検出部が設けられ、
前記他方の移動棚には、前記レーザ光が照射される被検出面と、略水平方向に異なる位置に配置され前記レーザ光を前記被検出面と異なる態様で反射する基準部と、が設けられ、
前記検出部は、レーザ光を用いて検出された前記被検出面までの最短距離を表す距離情報と、前記基準部の位置情報と、を取得し、
前記距離情報と前記位置情報とに基づいて前記一方の移動棚及び前記他方の移動棚の相対角度のずれ及び相対位置のずれを検知する検知手段を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、一つの検出部からレーザ光を他方の移動棚に向けて照射し該他方の移動棚の被検出面と基準部からの反射光を検出して、一方の移動棚と他方の移動棚との相対角度のずれと相対位置のずれを検知できるため、相対角度のずれを検出するセンサと、相対位置のずれを検出するセンサと、を別々に用意しなくてよく、簡素な構造にすることができる。また、一方の移動棚と他方の移動棚との相対角度及び相対位置を検出するので、移動棚装置の設置自由度が高い。
【0008】
前記移動棚は、物品を載置可能な棚部を備えており、前記基準部は、前記棚部の上方または下方に設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、物品を載置可能な棚部とは異なる位置に基準部が設けられているため、棚部に載置された物品により検出部のレーザ光が遮られることを回避できる。
【0009】
前記被検出面に前記基準部が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、基準部が被検出面の外側に張り出さないため、構造を簡素に、且つコンパクトにすることができる。
【0010】
複数の前記移動棚はそれぞれ、一つの基準となる基準棚に向けて走行が制御されることを特徴としている。
この特徴によれば、各移動棚を蛇行させることなく、基準棚を基準として最短距離で相対角度のずれと相対位置のずれを修正できる。
【0011】
前記移動棚は、隣接する移動棚との離間距離に基づいて制御されることを特徴としている。
この特徴によれば、隣接する移動棚同士の衝突を回避することができる。
【0012】
前記基準棚は床に固定された固定棚であって、前記検知手段は、前記固定棚に設けられており、複数の前記移動棚と無線手段により接続されていることを特徴としている。
この特徴によれば、1つの検知手段で複数の移動棚を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は本発明の実施例における移動棚装置の展開状態を示す上面図、(b)は移動棚装置の収束状態を示す上面図である。
図2】(a)は移動棚を右方から見た側面図であり、(b)は移動棚の下面図である。
図3】移動棚装置の動作制御部を示すブロック図である。
図4】検出部の走査範囲を示す模式図である。
図5】各移動棚に相対位置のずれや相対角度のずれが生じた状態を示す模式図である。
図6】位置情報算出処理を示すフローチャートである。
図7】各移動棚の相対位置のずれ及び相対角度のずれを検知する状態を示す模式図である。
図8】検出部により検出した距離データを座標データに変換した状態を示す模式図である。
図9】各移動棚の相対位置のずれ及び相対角度のずれを修正して収束状態とした状態を示す模式図である。
図10】移動棚装置の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る移動棚装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0015】
実施例1に係る移動棚装置につき、図1から図9を参照して説明する。以下、図1の紙面下側を移動棚装置の正面側(前方側)とし、前方側から見たときの上下左右前後方向を基準として説明する。
【0016】
図1に示されるように、本実施例の移動棚装置1は、床面Fの所定の位置に固定設置された固定棚2と、固定棚2に対して近接及び離間する方向に移動可能な電動式の移動棚3A,3B,3Cと、によって主に構成されており、最も右側に固定棚2が配置され、固定棚2側から左側に向けて順に移動棚3A、移動棚3B、移動棚3Cが配置されている。
【0017】
この移動棚装置1は、図書館や倉庫等で使用されるものであって、固定棚2、移動棚3A、移動棚3B、移動棚3Cをそれぞれ離間させた展開状態(図1(a)参照)と、固定棚2、移動棚3A、移動棚3B、移動棚3Cをそれぞれ近接させた収束状態(図1(a)参照)と、に変更できるようになっている。これによれば、不使用時には、収束状態とすることで移動棚装置1の設置スペースを小さくできるようになっている。また、図示しないが、各移動棚3A、移動棚3B、移動棚3Cを個別に移動することも可能であり、各棚間のスペースを適宜変更することができるようになっている。
【0018】
図2に示されるように、移動棚3Aは、左右両面(固定棚2に対向する面、移動棚3Bに対向する面)に、上下複数段の棚板31により形成される棚部32を有している。この棚部32には、複数の物品を載置できるようになっている。また、移動棚3Aの底板33の下面には、複数(本実施例では4つ)の車輪34Aと、車輪34Aを駆動させる複数(本実施例では前後に2つ)の駆動モータ35Aと、各駆動モータ35Aに電気的に接続される制御装置36A(制御手段)と、後述する検出部37A(図3参照)と、が設けられている。
【0019】
また、各車輪34Aは、前後方向に延び進行方向に対して転向不能な駆動軸(図示略)に軸支されており、各駆動軸は略平行となるように配置されているため、移動棚3Aは、左右方向に略直線的に走行するようになっている。前後の駆動モータ35A,35Aに回転差を与えるように制御することで移動棚3Aは転向できる。尚、移動棚3Aの前後、且つ右側(固定棚2側)に配置される車輪34Aは駆動モータ35A,35Aにより駆動する駆動輪として機能しており、移動棚3Aの前後、且つ左側(移動棚3B側)に配置される車輪34Aは従動輪として機能している。さらに尚、各車輪34Aの他にガイドローラなどを設け移動棚3Aの走行を安定させてもよい。
【0020】
また、移動棚3Aの前後両面には、上下方向に亘って延びる化粧板38,38が取付けられており、化粧板38,38の下端部は、底板33よりも下方に延びているため、移動棚3Aの前後両側から車輪34A、駆動モータ35A、制御装置36A、検出部37Aが見えにくく、見栄えが良い。
【0021】
また、底板33の左右両面には、底板33よりも下側に延びる幕板391A,392Aが設けられており、移動棚3Aの左右両側から車輪34A、駆動モータ35A、制御装置36A、検出部37Aが見えにくく、見栄えが良い。
【0022】
底板33の右面に設けられる幕板391Aの前後方向略中央部には、左右方向に貫通し前後方向に延びる下向き略コ字状の切欠溝部391aが形成されている。また、検出部37Aは、底板33における右側(幕板391A側)、且つ前後方向の略中央部に設置されており、切欠溝部391aに後述するレーザ光37aを通すことで移動棚3Aの右側の棚(固定棚2)を検出できるようになっている。
【0023】
また、底板33の左面に設けられる幕板392Aの左面は、左側の棚(移動棚3B)の検出部37Bにより検出される被検出面392bとなっており、被検出面392bの前後方向略中央部には、左側に向けて開口する下面視略コ字状の凹溝部392a(基準部)が形成されている。尚、移動棚3B及び移動棚3Cは、移動棚3Aと略同一構成であるため、詳しい説明を省略する。さらに尚、固定棚2には、車輪34A、駆動モータ35A、制御装置36A、検出部37A、切欠溝部391aが設けられていない以外、移動棚3Aと略同一構成である。
【0024】
次に、移動棚装置1の動作制御部について図3及び図4に基づいて説明する。図3に示されるように、固定棚2には、後述する検知手段21と送受信機22とが設けられている。これら検知手段21と送受信機22とは、ケーブルにより有線接続されている。尚、検知手段21と送受信機22とは、無線接続されていてもよい。さらに尚、検知手段21及び送受信機22は、固定棚2の上部または下部に配置され、外部から視認し難くなっている。
【0025】
移動棚3Aには、固定棚2の送受信機22と無線接続される送受信機301Aが設けられている。また、移動棚3Aの送受信機301Aは、移動棚3Aに設けられる制御装置36A、検出部37Aにそれぞれ接続されており、制御装置36Aには、移動棚3Aの前後に設けられる各駆動モータ35Aに接続されている。
【0026】
また、移動棚3Bには、固定棚2の送受信機22と無線接続される送受信機301Bが設けられている。また、移動棚3Bの送受信機301Bは、移動棚3Bに設けられる制御装置36B、検出部37Bにそれぞれ接続されており、制御装置36Bには、移動棚3Bの前後に設けられる各駆動モータ35Bに接続されている。
【0027】
また、移動棚3Cには、固定棚2の送受信機22と無線接続される送受信機301Cが設けられている。また、移動棚3Cの送受信機301Cは、移動棚3Cに設けられる制御装置36C、検出部37Cにそれぞれ接続されており、制御装置36Cには、移動棚3Cの前後に設けられる各駆動モータ35Cに接続されている。
【0028】
図4に示されるように、移動棚3Aに設けられる検出部37Aは、レーザ光37aを照射可能な照射部と、照射したレーザ光37aが対象物Xに反射された種々の光のうち検出部37A側(照射方向)へ戻る反射光37bを受光可能な受光部と、を有し、対象物Xとの間の距離を測定可能な所謂レーザレンジファインダである。
【0029】
本実施例における検出部37Aは、照射部が略水平方向の所定の範囲で首振り可能となっており、所定角度ごとにレーザ光37aを照射しその反射光37bを随時検出している。すなわち、検出部37Aは、略水平方向の所定の範囲(本実施例では検出部37Aを中心とした略240度の範囲)が走査可能範囲Zとなっている。また、走査可能範囲Zにおいて対象物Xがない部分では、レーザ光37aが直進し反射光37bが発生しないため、受光部は非検出状態となる。
【0030】
尚、本実施例では、検出部37Aを中心とした略240度の範囲が走査可能範囲Zとなっているが、実際には、隣接する固定棚2との間の距離を検出できればよいので、走査可能範囲Zにおいて、幕板391Aに直交する法線を中心とする例えば、略120度~140度程度の範囲で検出されたデータを、後述する検知手段21による演算に使用するように設定されている。
【0031】
図5に示されるように、例えば、移動棚3A、移動棚3B、移動棚3Cを展開状態としたときに、床面Fの不陸部や各車輪の滑りなどにより、固定棚2に対する各移動棚3A、移動棚3B、移動棚3Cの相対位置のずれや相対角度のずれが生じることがある。尚、図5では、わかりやすく説明するために実際よりも相対位置のずれや相対角度のずれを大きく示している。
【0032】
本実施例の移動棚装置1にあっては、移動棚3A、移動棚3B、移動棚3Cの展開状態から固定棚2に対する各移動棚3A、移動棚3B、移動棚3Cの相対位置のずれや相対角度のずれを修正しながら収束状態とすることができる。
【0033】
次に、移動棚装置1の動作制御部により動作を制御する一例を図3及び図6図9に基づいて説明する。尚、図6図9では、固定棚2、移動棚3A、移動棚3Bの制御態様を例に取り説明する。また、図7では、わかりやすく説明するために実際よりも相対位置のずれや相対角度のずれを大きく示している。さらに尚、以下では、説明の便宜上、固定棚2の被検出面を被検出面292bとし、固定棚2の凹溝部を凹溝部292aとして説明する。
【0034】
図6に示されるように、検知手段21は、各棚の位置情報を算出する位置情報算出処理を随時行っている。具体的には、検出部37A,37Bは、隣接する棚との相対位置のずれ及び相対角度のずれを検出しており、検出部37A,37Bにより検出された隣接する棚との相対位置のずれ及び相対角度のずれのデータは、送受信機301A,301B及び送受信機22を介して固定棚2の検知手段21に送信されるようになっており、検知手段21は、検出部37A,37Bから送信された隣接する棚との相対位置のずれ及び相対角度のずれのデータを記憶する(ステップ1参照)。
【0035】
次に、移動棚3Aと固定棚2(隣接する棚)との相対位置のずれ及び相対角度のずれの検出方法について説明する。検出部37Aは、検出した固定棚2との距離データに基づいて座標データに変換し、座標データ上で最も長く且つ近い線分L1を被検出面292bとして認識する(図8参照)。検出部37Aは、座標データ上で最も長く且つ近い線分L1を被検出面292bとして認識するため、通行人や障害物などを被検出面として認識することを回避することができる。
【0036】
図7に示されるように、被検出面292bは、前後方向に延びており、凹溝部292aを構成する前面292c及び後面292dは、左右方向に延びている。このように、前面292c及び後面292dは、被検出面292bとは直交し異なる角度に形成されているため、検出部37Aのレーザ光37aを被検出面292bとは異なる態様で反射するようになっている。具体的には、走査可能範囲Zにおける凹溝部292aが配置される領域において、検出部37Aの受光部が反射光37bを検出不能となるため、座標データ上の線分L1において空白部分Sが形成される(図8参照)。検出部37Aは、該空白部分Sを固定棚2の凹溝部292aとして認識するとともに、空白部分Sの中間位置を計算し被検出面292bの中心点CP1として認識する。
【0037】
次に、検出部37Aは、検出部37Aと中心点CP1とを結ぶ仮想線T1の角度情報と、検出部37Aにより検出された被検出面292bとの距離データのうち最も短い仮想線x1の角度情報と、に基づいて仮想線T1及び仮想線x1で成す角度θ1を算出し検知手段21に送信する。
【0038】
この角度θ1は、固定棚2に対する移動棚3Aの相対角度のずれである。尚、検出部37Aは、仮想線x1に対して仮想線T1が後方側に位置していることに基づいて、上面から見て、移動棚3Aの後方側端部が前方側端部よりも被検出面292bから離間するように、固定棚2に対して傾いていることを検知する。
【0039】
次いで、検出部37Aは、仮想線x1と被検出面292bとの交点P1を求め、交点P1と中心点CP1とを結ぶ仮想線y1の距離を算出して検知手段21に送信する。この仮想線y1の距離は、固定棚2に対する移動棚3Aの前後方向の相対位置のずれである。具体的には、仮想線x1は、被検出面292bに延びる垂線であり、仮想線T1と、仮想線x1と、仮想線y1と、で直角三角形が形成されることから、三平方の定理や三角比などを用いて仮想線y1の距離を算出できる。尚、検出部37Aは、仮想線x1に対して仮想線T1が後方側に位置していることに基づいて、固定棚2に対して移動棚3Aが前方側に位置ずれしていることを検知する。
【0040】
次に、移動棚3Bと移動棚3A(隣接する棚)との相対位置のずれ及び相対角度のずれの検出方法について説明する。移動棚3Aに対する移動棚3Bの相対位置のずれ及び相対角度のずれは、上記と同様の手順により算出できる。
【0041】
具体的には、図7に示されるように、検出部37Aは、中心点CP2を検知するとともに、検出部37Bと中心点CP1とを結ぶ仮想線T2の角度情報と、検出部37Bにより検出された被検出面392bとの距離データのうち最も短い仮想線x2の角度情報と、に基づいて仮想線T2及び仮想線x2で成す角度θ2を算出して検知手段21に送信する。次いで、検出部37Aは、仮想線x2と被検出面392bとの交点P2を求め、交点P2と中心点CP2とを結ぶ仮想線y2の距離を算出して検知手段21に送信する。
【0042】
次に、図6に戻って、検知手段21は、移動棚3A,3Bと隣接する棚との相対位置のずれ及び相対角度のずれのデータ(ステップ1の結果)から固定棚2に対する移動棚3Bの相対位置のずれ及び相対角度のずれを算出する。具体的には、図9に示されるように、角度θ1と角度θ2との差分と、仮想線y1の距離と仮想線y2の距離との差分と、予め検知手段21が記憶している移動棚3Aのサイズ情報と、により、検出部37Bと中心点CP1とを結ぶ仮想線T3の距離、被検出面292bから延びる垂線である仮想線x3の距離、仮想線T3及び仮想線x3で成す角度θ3(固定棚2に対する移動棚3Bの相対角度のずれ)を算出できる。また、検知手段21は、仮想線T3の距離と仮想線x3の距離とに基づき仮想線y3の距離(固定棚2に対する移動棚3Bの相対位置のずれ)を算出できる。
【0043】
次に、固定棚2、移動棚3A、移動棚3Bを実際に展開状態から収束状態とする制御を行う態様について図9を用いて説明する。
【0044】
修正走行データ算出処理において、検知手段21は、移動棚3A、移動棚3Bが収束状態となるように走行させる基本走行データに対して、隣接する棚との相対位置のずれ及び相対角度のずれのデータを加味した移動棚3A及び移動棚3Bの修正走行データをそれぞれ算出し、移動棚3A及び移動棚3Bに送信する。
【0045】
移動棚3Aの修正走行データは、移動棚3Aの基本走行データと、移動棚3Aと固定棚2との相対位置のずれ及び相対角度のずれのデータ(角度θ1、仮想線y1の距離)に基づいて算出される。移動棚3Bの修正走行データは、移動棚3Bの基本走行データと、図6のステップ2で算出された固定棚2と移動棚3Bとの相対位置のずれ及び相対角度のずれのデータ(角度θ3、仮想線y3の距離)に基づいて算出される。
【0046】
移動棚3Aの制御装置36Aは、移動棚3Aの修正走行データに基づいて、前後に配置される駆動モータ35Aの回転数に差を持たせるように制御する(図3参照)。移動棚3Bの制御装置36Bは、移動棚3Bの修正走行データに基づいて、前後に配置される駆動モータ35Bの回転数に差を持たせるように制御する(図3参照)。
【0047】
このように、移動棚3A及び移動棚3Bの各修正走行データは、固定棚2に対する移動棚3Aの相対位置のずれ及び相対角度のずれと、固定棚2に対する移動棚3Bの相対位置のずれ及び相対角度のずれに基づいて算出されているため、移動棚3A及び移動棚3Bが固定棚2に向けて走行が制御されるようになっている。
【0048】
また、移動棚3Aの修正走行データは、固定棚2との距離に基づいて該固定棚2と干渉しないように移動棚3Aが走行するように算出されており、移動棚3Bの修正走行データには、移動棚3Aとの距離に基づいて該移動棚3Aと干渉しないように移動棚3Bが走行するように算出されている。移動棚3A及び移動棚3Bの走行移動が完了すると、固定棚2、移動棚3A、移動棚3Bが適正に並列された収束状態となる。
【0049】
以上説明したように、本実施例の移動棚装置1は、自走可能な移動棚3A,3B,3Cを有する移動棚装置1であって、移動棚3Bには、レーザ光37aを隣接する移動棚3Aに照射しその反射光37bを検出する検出部37Bが設けられ、移動棚3Aには、レーザ光37aが照射される被検出面392bと、略水平方向に異なる位置に配置されレーザ光37aを被検出面392bと異なる態様で反射する基準部としての凹溝部392aが設けられ、検出部37Bにより検出された被検出面392bと凹溝部392aとの位置情報に基づいて移動棚3A及び移動棚3Aの相対角度のずれ及び相対位置のずれを検知する検知手段を備える。
【0050】
このようにすることで、一つの検出部37Bからレーザ光37aを移動棚3Aに向けて照射し該移動棚3Aの被検出面392bと凹溝部392aからの反射光を検出して、移動棚3Aと移動棚3Bとの相対角度のずれと相対位置のずれを検知できる。具体的には、ここでいう検知手段とは、検出部37に内蔵されている演算装置であって、該演算装置は、仮想線T2及び仮想線x2で成す角度θ2と、仮想線y2の距離を算出することで、移動棚3Aと移動棚3Bとの相対角度のずれと相対位置のずれを検知できるため、相対角度のずれを検出するセンサと、相対位置のずれを検出するセンサと、を別々に用意しなくてよく、簡素な構造にすることができる。
【0051】
また、検出部37Bが被検出面392bと凹溝部392aを検出することで、検出部37が移動棚3Aと移動棚3Bとの相対角度及び相対位置のずれを検知するので、移動棚装置1の設置自由度が高い。
【0052】
また、固定棚2、移動棚3A,3B,3Cは、物品を載置可能な棚部32を備えており、基準部となる凹溝部292a及び凹溝部392aは、棚部32の下方に設けられる幕板392Aに設けられている。これによれば、物品を載置可能な棚部32とは異なる幕板392Aに凹溝部292a及び凹溝部392aが設けられているため、棚部32に載置された物品により検出部37A,37B,37Cのレーザ光37aが遮られることを回避できる。尚、凹溝部292a及び凹溝部392aは、棚部32の上方に設けられる幕板に設けられていてもよい。
【0053】
また、検出部37A,37B,37Cも凹溝部292a及び凹溝部392aと略同一高さに取付けられているため、利用者や通行人が検出部37A,37B,37Cに触れにくく接触などによる故障等を回避できる。
【0054】
また、被検出面292b,392bに凹溝部292a及び凹溝部392aが設けられているため、凹溝部292a及び凹溝部392aを被検出面292b,392bの外側に別個に設ける必要がないため、構造を簡素に、且つコンパクトにすることができる。
【0055】
また、複数の移動棚3A,3Bはそれぞれ、一つの基準となる固定棚2に向けて走行が制御される。具体的には、移動棚3A及び移動棚3Bの各修正走行データは、固定棚2に対する移動棚3Aの相対位置のずれ及び相対角度のずれと、固定棚2に対する移動棚3Bの相対位置のずれ及び相対角度のずれと、を移動棚3A,3Bの基本走行データに加味して算出されているため、移動棚3A及び移動棚3Bは固定棚2に向けて走行が制御されるようになっている。
【0056】
これによれば、移動棚3A,3Bを同時に走行させたときに、移動棚3Bが移動棚3Aに向けて走行する形態に比べて、移動棚3Bを蛇行させることなく、固定棚2を基準として最短距離で相対角度のずれと相対位置のずれを修正できる。
【0057】
また、移動棚3Bは、隣接する移動棚3Aとの離間距離に基づいて制御される。具体的には、移動棚3Bの修正走行データ(移動棚3Bの基本走行データと、固定棚2と移動棚3Bとの相対位置のずれ及び相対角度のずれのデータ(角度θ3、仮想線y3の距離)と、に基づいて算出されたデータ)は、移動棚3Aとの距離に基づいて該移動棚3Aと干渉しないように移動棚3Bが走行するように算出されているため、隣接する移動棚3A,3B同士の衝突を回避することができる。
【0058】
また、検知手段21は、固定棚2に設けられており、複数の移動棚3A,3B,3Cの制御装置36A,36B,36Cと検出部37A,37B,37Cとに対して無線手段(送受信機22、送受信機301A,301B,301C)により接続されている。これによれば、1つの検知手段21で複数の移動棚3A,3B,3Cを制御できるため、各移動棚3A,3B,3Cに検知手段21を設ける形態に比べて構造を簡素にできるとともに、安価に製造することができる。また、検知手段21と移動棚3A,3B,3Cとを接続する配線を必要としないため、見栄えが良い。
【0059】
また、移動棚装置1の構造上、移動棚3Aが遮蔽物となるため、移動棚3Bの検出部37Bにより固定棚2の被検出面292b及び凹溝部292aを直接検出することができないが、検知手段21が無線手段により移動棚3A,3Bと接続されていることにより、固定棚2に対する移動棚3Aの相対位置のずれ及び相対角度のずれ(図6のステップ2参照)と、移動棚3Aに対する移動棚3Bの相対位置のずれ及び相対角度のずれ(図6のステップ3参照)と、に基づいて、固定棚2に対する移動棚3Bの相対位置のずれ及び相対角度のずれ(図6のステップ4参照)を算出することができる。そのため、固定棚2を基準として走行する移動棚3A及び移動棚3Bの修正走行データをそれぞれ算出することができる。
【0060】
尚、本実施例では、説明の便宜上、移動棚3A及び移動棚3Bが固定棚2を基準として走行する形態を例示したが、移動棚3Cも固定棚2を基準として走行させることができる。具体的には、移動棚3Bに対する移動棚3Cの相対位置のずれ及び相対角度のずれを検出し、移動棚3Bに対する移動棚3Cの相対位置のずれ及び相対角度のずれと、固定棚2に対する移動棚3Bの相対位置のずれ及び相対角度のずれと、に基づいて、固定棚2に対する移動棚3Cの相対位置のずれ及び相対角度のずれを算出できる。
【0061】
つまり、所定の移動棚と該所定の移動棚よりも基準棚に近い隣接する移動棚との相対位置のずれ及び相対角度のずれと、基準棚に対する前記隣接する移動棚の相対位置のずれ及び相対角度のずれと、に基づいて所定の移動棚と基準棚との相対位置のずれ及び相対角度のずれを算出することができる。
【0062】
また、前記実施例では、被検出面292bの略全面を検出する検出部37Aを用いていたが、これに限られず、検出部は、少なくとも基準部と該基準部の周辺の被検出面を検出できるものであればよい。また、検出部37Aは、1つの筐体の中に照射部と受光部とを有していたが、照射部と受光部とは別々に設けられていてもよい。
【0063】
また、前記実施例では、検出部37A,37Bに内蔵されている演算装置が検知手段として機能しているが、検出部を、照射部と受光部のみを有する距離センサとし、検出部により検出した距離を検知手段21に送信し、検知手段21で移動棚3Aと移動棚3Bとの相対角度及び相対位置のずれを算出するようにしてもよい。
【0064】
また、前記実施例では、検出部37A,37B,37Cが凹溝部292a及び凹溝部392aと略同一高さに取付けられている形態を例示したが、検出部は、被検出面及び基準部とは異なる高さに取付けられていてもよい。
【0065】
また、前記実施例では、凹溝部292a,凹溝部392aを基準部とする形態を例示したが、これに限られず、基準部は、被検出面と異なる態様でレーザ光を反射できればよく、例えば、被検出面よりも検出部側に突出する凸部や、被検出面と異なる角度に傾斜する面等であってもよいし、反射率の低いまたは高い部材を塗布した塗布面等であってもよい。
【0066】
また、前記実施例では、被検出面292b上に凹溝部292aが設けられ、被検出面392b上に凹溝部392aが設けられる形態を例示したが、これに限られず、基準部は、被検出面と略水平方向(検出部の検出方向)に位置していれば、別個に設けられていてもよい。
【0067】
また、前記実施例では、固定棚2を有し、該固定棚2を基準として移動棚3A,3Bが相対位置及び相対角度のずれを修正しながら走行する形態を例示したが、これに限られず、固定棚2を設けず、例えば、停止している移動棚3Aを基準として移動棚3Bが相対位置及び相対角度のずれを修正しながら走行するようになっていてもよい。
【0068】
また、基準となる基準棚を設けず、移動棚3A及び移動棚3Bが互いに相対位置及び相対角度のずれを修正しながら走行するようになっていてもよい。
【0069】
また、前記実施例では、幕板392Aに凹溝部292a,392a(基準部)が形成されている形態を例示したが、移動棚を構成するフレームなどの幕板392A以外の場所に基準部が設けられていてもよい。
【0070】
また、前記実施例では、被検出面292b,392bの前後方向略中央部に設けられる凹溝部292a,392aを基準部とし、凹溝部292a,392aを検出部37A,37Bで直接検出することにより、中心点CP1,CP2を検知する形態を例示したが、これに限らない。
【0071】
例えば、図10に示される形態では、移動棚3Dのフレームを構成する前後に配置される支柱40F,40Rの左面41,42を被検出面とし、支柱40Fの後面43及び支柱40Rの前面44を基準部としている。これによれば、支柱40Fの後面43及び支柱40Rの前面44は、左方に隣接する移動棚3Eの検出部37Eからのレーザ光を、支柱40F,40Rの左面41,42と異なる態様で反射するため、検出部37Eは、後面43及び前面44の座標データを検出でき、後面43及び前面44の中間位置に移動棚3Dの中心点CP3が存在するので、後面43及び前面44の座標データから中心点CP3の座標データを認識することができる。このように、被検出面は、水平方向に連続していなくてもよい。
【0072】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0073】
前記実施例では、各棚が展開状態から収束状態になるときに、各棚の相対位置及び相対角度のずれを修正する形態を例示したが、これに限られず、例えば、所定時間ごとに各棚の相対的な位置関係が適正となるように相対位置及び相対角度のずれの修正を実行してもよい。
【0074】
また、3つの移動棚3A,3B,3Cに限られず、移動棚の数量は自由に変更することができる。また、被検出面292b,392bは、前後方向に直線状に延びるように形成されていたが、湾曲して延びるように形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 移動棚装置
2 固定棚(基準棚)
3A~3C 移動棚
21 検知手段
22 送受信機(無線手段)
32 棚部
37A~37C 検出部(検知手段)
37a レーザ光
37b 反射光
292a 凹溝部(基準部)
292b 被検出面
301A~301C 送受信機(無線手段)
392A 幕板
392a 凹溝部(基準部)
392b 被検出面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10