(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】ユーザの定常的行動を変容させる情報提示装置、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20220530BHJP
G01C 21/36 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
G06Q50/10
G01C21/36
(21)【出願番号】P 2019045271
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】栗木 優一
(72)【発明者】
【氏名】多屋 優人
【審査官】鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-031071(JP,A)
【文献】特開2017-045142(JP,A)
【文献】国際公開第2017/187584(WO,A1)
【文献】特開2017-040551(JP,A)
【文献】特開2005-353033(JP,A)
【文献】国際公開第2018/116703(WO,A1)
【文献】特開2010-170419(JP,A)
【文献】特開2010-016444(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0301255(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G01C 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに対して提示情報を提示する情報提示装置であって、
複数の提示情報を予め登録した提示情報テーブルと、
当該ユーザ
が操作した端末から収集した、操作位置又はアクセスサイトに基づく時系列位置を記憶する行動履歴記憶手段と、
前記行動履歴記憶手段を用いて、当該ユーザが一連の同一行動をとる定常的時系列位置を検出する定常的時系列位置検出手段と、
前記提示情報テーブルの中から任意の提示情報を提示する情報提示手段と、
当該ユーザについて、前記定常的時系列位置と、前記提示情報の提示後における時系列位置とを比較して、行動変容が有っ
たか否かを判定する行動変容判定手段と
を有することを特徴とする情報提示装置。
【請求項2】
前記情報提示手段は、当該ユーザが前記定常的時系列位置における開始位置へ現に移動したタイミングで、又は、当該ユーザの行動中の任意のタイミングで、前記提示情報を提示する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報提示装置。
【請求項3】
前記提示情報テーブルは、提示情報毎に、異なる心理特性となる複数の心理フラグを付与しており、
当該ユーザにおける定常的時系列位置毎に、前記行動変容判定手段における判定結果を、一定期間蓄積する行動変容蓄積手段と、
前記行動変容蓄積手段を用いて、行動変容有りと判定された1つ以上の提示情報から、心理フラグ毎の回数を抽出する心理フラグ抽出手段と、
当該ユーザにおける当該定常的時系列位置毎に、前記心理フラグ抽出手段によって抽出された回数が最多となる心理フラグが、行動変容を促したものと推定する心理特性推定手段と
を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の情報提示装置。
【請求項4】
前記行動変容蓄積手段は、ユーザ毎に且つ定常的時系列位置毎に、前記行動変容判定手段における判定結果を、一定期間蓄積し、
前記情報提示手段は、「ユーザ毎」に、「定常的時系列位置毎」に、又は、「ユーザ及び定常的時系列位置の組」毎に、最多となる心理フラグに基づく提示情報を提示する
を更に有することを特徴とする請求項3に記載の情報提示装置。
【請求項5】
前記行動履歴記憶手段は、ユーザが所持した携帯端末から、地図位置を時系列に収集したものであり、
ユーザの行動に基づく前記時系列位置とは、地図上の時系列位置である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の情報提示装置。
【請求項6】
前記定常的時系列位置は、定常的に走行している道路区間であり、
前記提示情報は、定常的に走行している道路区間から、予め登録した迂回道路区間へ走行を促す情報である
ことを特徴とする請求項5に記載の情報提示装置。
【請求項7】
前記時系列位置は、道路走行時の車両を運転しているユーザの携帯端末から収集されるものであり、
前記提示情報は、定常的に走行している道路区間に、工事又は通行止めが発生した際に、当該ユーザに提示すべき情報である
ことを特徴とする請求項6に記載の情報提示装置。
【請求項8】
前記定常的時系列位置は、定常的に操作している一連操作であり、
前記提示情報は、定常的に操作している一連操作から、予め登録した迂回操作順序へ促す情報である
ことを特徴とする請求項
1から7のいずれか1項に記載の情報提示装置。
【請求項9】
ユーザに対して提示情報を提示する装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
複数の提示情報を予め登録した提示情報テーブルと、
当該ユーザ
が操作した端末から収集した、操作位置又はアクセスサイトに基づく時系列位置を記憶する行動履歴記憶手段と、
前記行動履歴記憶手段を用いて、当該ユーザが一連の同一行動をとる定常的時系列位置を検出する定常的時系列位置検出手段と、
前記提示情報テーブルの中から任意の提示情報を提示する情報提示手段と、
当該ユーザについて、前記定常的時系列位置と、前記提示情報の提示後における時系列位置とを比較して、行動変容が有っ
たか否かを判定する行動変容判定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
ユーザに対して提示情報を提示する装置の情報提示方法であって、
前記装置は、
複数の提示情報を予め登録した提示情報テーブルと、
当該ユーザ
が操作した端末から収集した、操作位置又はアクセスサイトに基づく時系列位置を記憶する行動履歴記憶手段と
を有し、
前記行動履歴記憶手段を用いて、当該ユーザが一連の同一行動をとる定常的時系列位置を検出する第1のステップと、
前記提示情報テーブルの中から任意の提示情報を提示する第2のステップと、
当該ユーザについて、前記定常的時系列位置と、前記提示情報の提示後における時系列位置とを比較して、行動変容が有っ
たか否かを判定する第3のステップと
を実行することを特徴とする装置の情報提示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの定常的行動に対して情報を提示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
対象者(例えば生徒)の行動に介入する介入者(例えば教師)に対して、効果的な介入情報を提示する技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、介入者の行動情報に対する信頼度を算出すると共に、対象者の行動に対する介入者の介入効果を分析する。信頼度が閾値以上となる介入者の行動情報とその介入効果とに基づいて、介入者に対して、対象者の行動に介入すべき情報を提示する。
【0003】
また、ユーザ特性(例えば心理的特性等)に基づいて商品を選択すると共に、そのユーザに訴えるセールストークや製品説明を含む広告情報を提供する技術がある(例えば特許文献2参照)。この技術によれば、ユーザ毎に、予め心理テストを受けてもらい、心理特性を分類する。また、商品毎に、各心理特性に応じたキャッチフレーズを用意する。その上で、ユーザ毎に、その心理特性に応じたキャッチフレーズを含む広告情報を提示する。その後、提示された広告情報に対してユーザがアクセス又は購入をした場合、そのログが蓄積される。広告情報に反応があったユーザの心理特性を平均化することで、広告情報の提示に反応するユーザ特性を分析することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-026014号公報
【文献】再公表特許WO01/067319
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1によれば、対象者の目標行動と介入者の行動情報とを、予め手動で入力する必要がある。また、対象者の目標行動の達成度は、介入者の主観に基づくものであって、介入行動の効果が曖昧とならざるを得ない。
また、特許文献2によれば、ユーザが心理特性のアンケートに事前に回答する必要がある。即ち、アンケートに回答せず、心理特性が不明なユーザに対しては、最適な広告情報を提示することできない。
このように、前述した従来技術はいずれも、ユーザ自ら、行動情報や心理特性を予め入力する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、ユーザに予め回答させることなく、各ユーザの心理特性に応じた情報を提示することができる情報提示装置、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ユーザに対して提示情報を提示する情報提示装置であって、
複数の提示情報を予め登録した提示情報テーブルと、
当該ユーザが操作した端末から収集した、操作位置又はアクセスサイトに基づく時系列位置を記憶する行動履歴記憶手段と、
行動履歴記憶手段を用いて、当該ユーザが一連の同一行動をとる定常的時系列位置を検出する定常的時系列位置検出手段と、
提示情報テーブルの中から任意の提示情報を提示する情報提示手段と、
当該ユーザについて、定常的時系列位置と、提示情報の提示後における時系列位置とを比較して、行動変容が有ったか否かを判定する行動変容判定手段と
を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の情報提供装置における他の実施形態によれば、
情報提示手段は、当該ユーザが定常的時系列位置における開始位置へ現に移動したタイミングで、又は、当該ユーザの行動中の任意のタイミングで、提示情報を提示することも好ましい。
【0009】
本発明の情報提供装置における他の実施形態によれば、
提示情報テーブルは、提示情報毎に、異なる心理特性となる複数の心理フラグを付与しており、
当該ユーザにおける定常的時系列位置毎に、行動変容判定手段における判定結果を、一定期間蓄積する行動変容蓄積手段と、
行動変容蓄積手段を用いて、行動変容有りと判定された1つ以上の提示情報から、心理フラグ毎の回数を抽出する心理フラグ抽出手段と、
当該ユーザにおける当該定常的時系列位置毎に、心理フラグ抽出手段によって抽出された回数が最多となる心理フラグが、行動変容を促したものと推定する心理特性推定手段と
を更に有することも好ましい。
【0010】
本発明の情報提供装置における他の実施形態によれば、
行動変容蓄積手段は、ユーザ毎に且つ定常的時系列位置毎に、行動変容判定手段における判定結果を、一定期間蓄積し、
情報提示手段は、「ユーザ毎」に、「定常的時系列位置毎」に、又は、「ユーザ及び定常的時系列位置の組」毎に、最多となる心理フラグに基づく提示情報を提示する
を更に有することも好ましい。
【0011】
本発明の情報提供装置における他の実施形態によれば、
行動履歴記憶手段は、ユーザが所持した携帯端末から、地図位置を時系列に収集したものであり、
ユーザの行動に基づく時系列位置とは、地図上の時系列位置である
ことも好ましい。
【0012】
本発明の情報提供装置における他の実施形態によれば、
定常的時系列位置は、定常的に走行している道路区間であり、
提示情報は、定常的に走行している道路区間から、予め登録した迂回道路区間へ走行を促す情報であることも好ましい。
【0013】
本発明の情報提供装置における他の実施形態によれば、
時系列位置は、道路走行時の車両を運転しているユーザの携帯端末から収集されるものであり、
提示情報は、定常的に走行している道路区間に、工事又は通行止めが発生した際に、当該ユーザに提示すべき情報であることも好ましい。
【0015】
本発明の情報提供装置における他の実施形態によれば、
定常的時系列位置は、定常的に操作している一連操作であり、
提示情報は、定常的に操作している一連操作から、予め登録した迂回操作順序へ促す情報であることも好ましい。
【0016】
本発明によれば、ユーザに対して提示情報を提示する装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
複数の提示情報を予め登録した提示情報テーブルと、
当該ユーザが操作した端末から収集した、操作位置又はアクセスサイトに基づく時系列位置を記憶する行動履歴記憶手段と、
行動履歴記憶手段を用いて、当該ユーザが一連の同一行動をとる定常的時系列位置を検出する定常的時系列位置検出手段と、
提示情報テーブルの中から任意の提示情報を提示する情報提示手段と、
当該ユーザについて、定常的時系列位置と、提示情報の提示後における時系列位置とを比較して、行動変容が有ったか否かを判定する行動変容判定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、ユーザに対して提示情報を提示する装置の情報提示方法であって、
装置は、
複数の提示情報を予め登録した提示情報テーブルと、
当該ユーザが操作した端末から収集した、操作位置又はアクセスサイトに基づく時系列位置を記憶する行動履歴記憶手段と
を有し、
行動履歴記憶手段を用いて、当該ユーザが一連の同一行動をとる定常的時系列位置を検出する第1のステップと、
提示情報テーブルの中から任意の提示情報を提示する第2のステップと、
当該ユーザについて、定常的時系列位置と、提示情報の提示後における時系列位置とを比較して、行動変容が有ったか否かを判定する第3のステップと
を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の情報提示装置、プログラム及び方法によれば、ユーザに予め回答させることなく、各ユーザの心理特性に応じた情報を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】移動経路における定常的時系列位置と迂回時系列位置とを表す説明図である。
【
図2】操作順序における定常的時系列位置と迂回時系列位置とを表す説明図である。
【
図3】本発明における情報提示装置の機能構成図である。
【
図4】本発明における行動履歴記憶部を表す説明図である。
【
図5】本発明における定常的時系列位置検出部の処理を表す説明図である。
【
図6】本発明における提示情報テーブルを表す説明図である。
【
図7】本発明における行動変容判定部の処理を表す説明図である。
【
図8】本発明における心理フラグ抽出部の処理を表す説明図である。
【
図9】本発明における心理特定推定部の処理を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
本発明の情報提示装置は、ユーザの定常的な時系列行動に対して、情報を提示することによって、その時系列行動を変容させようとするものである。
ここで、ユーザの定常的な時系列行動としては、例えば車両の<移動経路>に基づくものと、端末の<操作順序>に基づくものとがある。
移動経路の場合、定常的時系列位置として地図上位置(例えばメッシュIDや緯度経度)となる。
操作順序の場合、定常的時系列位置として端末の操作上位置(例えばアクセスしたURLや、タップしたアイコン・ボタン)となる。
【0022】
<移動経路に基づく定常的時系列位置>
図1は、移動経路における定常的時系列位置と迂回時系列位置とを表す説明図である。
【0023】
ユーザは、携帯端末を所持し、例えば自動車のような車両に搭乗しているとする。携帯端末は、定期的に位置情報を測位しており、本発明の情報提示装置は、携帯端末の位置情報を常に収集している。携帯端末における測位機能としては、端末GPS(Global Positioning System)測位や基地局GPS測位がある。
【0024】
図1(a)によれば、情報提示装置は、携帯端末毎に、定常的時系列位置を導出する。ここで、定常的時系列位置は、その携帯端末を所持したユーザにとって、定常的な移動経路を意味する。定常的時系列位置は、例えば地図上のメッシュIDの時系列の配列パターンによって表される。例えば毎日、同一の配列パターンがある場合、そのユーザによって、その配列パターンの移動経路は、定常的であるといえる。
【0025】
図1(b)によれば、定常的時系列位置となる移動経路(道路区間)に、例えば工事中や通行止めのような交通障害が発生したとする。このような交通障害は、例えばVICS(登録商標、Vehicle Information and Communication System)情報やITS Connectなどの交通状況情報(渋滞や、交通規制など)から得られる。このような場合、情報提示装置は、ユーザに対して例えば情報「渋滞回避の裏道を教えます」を提示する。これによって、ユーザに対して、定常的時系列位置から行動変容(迂回)を促している。
【0026】
情報「渋滞回避の裏道を教えます」の提示を受けた際に、移動経路を迂回道路へ変更するユーザもいれば、定常的な移動経路を変更しないユーザもいる。一方で、定常的な移動経路を変更しなかったユーザに対して、別の情報「○○がオススメする経路」を提示すると、移動経路を迂回道路へ変更するかもしれない。このような違いの一因として、各ユーザの心理特性の影響がある。各ユーザの心理特性と、その提示情報が与える心理特性との関係に応じて、定常的な移動経路を変容させるか否かが変わってくる。
【0027】
<操作順序に基づく定常的時系列位置>
図2は、操作順序における定常的時系列位置と迂回時系列位置とを表す説明図である。
【0028】
ユーザは、例えばデバイス(例えばポインティングデバイス)を用いて、端末を操作しているとする。端末は、ユーザ操作を時系列に取得しており、本発明の情報提示装置は、その操作順序を常に収集している。ユーザ操作としては、例えばアイコンやボタンに対する選択操作や、ブラウザを用いたWebサイトの閲覧操作がある。
【0029】
図2(a)によれば、情報提示装置は、端末毎に、定常的時系列位置を導出する。ここで、定常的時系列位置は、その端末を操作するユーザにとって、定常的な操作順序を意味する。定常的時系列位置は、例えばアイコンやボタン、URLの配列パターンによって表される。例えば毎日、同一の配列パターンがある場合、そのユーザにとって、その配列パターンの操作順序は、定常的であるといえる。
【0030】
図2(b)によれば、定常的時系列位置となる操作順序に、例えば別の操作(例えば広告情報の閲覧)をさせたいとする。このような場合、情報提示装置は、ユーザに対して例えば情報「クーポンを発行します」を提示する。これによって、ユーザに対して、定常的時系列位置から行動変容(迂回)を促している。
【0031】
情報「クーポンを発行します」の提示を受けた際に、操作順序を迂回操作へ変更するユーザもいれば、定常的な操作順序を変更しないユーザもいる。一方で、定常的な操作順序を変更しなかったユーザに対して、別の情報「裏技操作方法」を提示すると、操作順序を迂回操作へ変更するかもしれない。このような違いの一因も、各ユーザの心理特性の影響がある。各ユーザの心理特性と、その提示情報が与える心理特性との関係に応じて、定常的な移動経路を変容させるか否かが変わってくる。
【0032】
図3は、本発明における情報提示装置の機能構成図である。
【0033】
情報提示装置1は、ユーザに対して提示情報を提示する。
図1によれば、情報提示装置1は、行動履歴記憶部10と、定常的時系列位置検出部11と、提示情報テーブル12と、情報提示部13と、行動変容判定部14と、行動変容蓄積部15と、心理フラグ抽出部16と、心理特性推定部17とを有する。これら機能構成部は、装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、装置の情報提示方法としても理解できる。
【0034】
[行動履歴記憶部10]
行動履歴記憶部10は、当該ユーザの行動に基づく時系列位置を記憶する。「時系列位置」とは、移動経路に基づく地図位置(例えばメッシュID)の配列パターンであってもよい。また、操作順序に基づく操作位置(例えばアイコン・ボタンやURL)の配列パターンであってもよい。
尚、以下では、ユーザの行動に基づく時系列位置は、移動経路に基づく地図上のメッシュIDであるとして説明する。
【0035】
図4は、本発明における行動履歴記憶部を表す説明図である。
【0036】
図4(a)によれば、行動履歴記憶部10は、端末ID毎に、時系列(例えば日時刻順)の通信レコードを記憶する。通信レコードとしては、移動経路の場合、例えばメッシュID、基地局ID、緯度経度又は搭乗移動体であってもよい。
日時刻 :端末から受信した日時刻
メッシュID:端末の位置に基づく地図上メッシュのID
基地局ID :端末が位置に基づく捕捉している基地局のID
緯度経度 :端末のGPS測位によって取得された位置情報
搭乗移動体 :端末を所持するユーザが搭乗している移動体(例えば自動車)
【0037】
図4(b)によれば、端末ID毎に、時間帯(例えば日単位)で、地図上のメッシュIDを時系列に並べた配列パターンを表す。メッシュIDの配列パターンは、その端末の移動経路を表すこととなる。
【0038】
図5は、本発明における定常的時系列位置検出部の処理を表す説明図である。
【0039】
[定常的時系列位置検出部11]
定常的時系列位置検出部11は、行動履歴記憶部10を用いて、当該ユーザが一連の同一行動をとる定常的時系列位置(定常的な配列パターン)を検出する。
時系列位置が移動経路である場合、定常的時系列位置は、定常的に走行している道路区間である。また、時系列位置が操作順序である場合、定常的時系列位置は、定常的に操作している一連操作である。
【0040】
定常的時系列位置検出部11は、端末ID毎に、複数回出現している配列パターンを検出する。その検出にあたり、例えば以下のようなパラメータを設定する。
抽出期間 :任意の期間(例えば1ヶ月)
定常判定回数 :定常的時系列位置の配列パターンの発生回数(例えば5回)
定常メッシュID数:定常的時系列位置の位置数(例えばメッシュ数=4)
【0041】
その上で、定常的時系列位置検出部11は、以下のステップを実行する。
(S1)
図5(a)は、端末ID毎に、抽出期間(例えば1ヶ月)における地図上のメッシュIDの配列パターン(端末の移動経路)を抽出し、日単位で並べる。
(S2)次に、最初のメッシュIDから順に、定常メッシュID数(例えば4個)だけを抽出する。
図5(a1)によれば、最初に、配列パターン[52385764, 52385765, 52385768, 52385770]が抽出されている。
(S3)次に、
図5(b)によれば、S2で抽出された配列パターン[52385764, 52385765, 52385768, 52385770]を含む配列パターンを抽出する。これによって、配列パターン[52385764, 52385765, 52385768, 52385770]が発生する回数を抽出する。
(S4)定常判定回数5回以上発生した場合、この配列パターン[52385764, 52385765, 52385768, 52385770]は、定常的時系列位置であると判定される。
(S5)次に、配列パターンの開始位置を1つだけシフトさせる。
図5(a2)によれば、配列パターン[52385765, 52385768, 52385770, 52385775]が抽出されている。そして、S3へ戻って、発生回数を抽出する。
【0042】
このように、抽出期間の全てのメッシュIDの配列パターンについて処理を実行する。
尚、S5で、メッシュIDの配列パターンを1つずつシフトさせていく中で、過去に既に定常的時系列位置と判定されたメッシュIDの配列パターンは、処理済みとして無視し、更に配列パターンを1つシフトさせる。
一方で、過去に定常的時系列位置と判定されたメッシュIDの配列パターンがなければ、S3へ戻る。
【0043】
[提示情報テーブル12]
提示情報テーブル12は、複数の提示情報を予め登録したものである。
【0044】
図6は、本発明における提示情報テーブルを表す説明図である。
【0045】
移動経路の場合、提示情報は、定常的に走行している道路区間から、定常的時系列位置の開始位置及び終了位置が一致する迂回道路区間へ走行を促す情報である。
また、操作順序の場合、提示情報は、定常的に操作している一連操作から、定常的時系列位置の開始位置及び終了位置が一致する他の一連操作へ促す情報である。
【0046】
図6によれば、提示情報テーブル12には、提示情報毎に、異なる心理特性となる複数の心理フラグが付与されている。
例えば提示情報「渋滞回避の裏道を教えます」には、心理ID[T1]が付与されており、その心理ID[T1]には心理フラグ「希少性」に[1]が立っている。
また、例えば提示情報「○○がオススメする経路」には、心理ID[T2]が付与されており、その心理ID[T2]には心理フラグ「権威」に[1]が立っている。
更に、例えば提示情報「割引券を贈呈」には、心理ID[T3]が付与されており、その心理ID[T3]には心理フラグ「報酬」に[1]が立っている。
更に、例えば提示情報「裏技操作方法」には、心理ID[T1]が付与されており、その心理ID[T1]には心理フラグ「希少性」に[1]が立っている。
更に、例えば提示情報「クーポン発行」には、心理ID[T3]が付与されており、その心理ID[T3]には心理フラグ「報酬」に[1]が立っている。
勿論、1つの心理IDに対して複数の心理フラグに[1]が立っていてもよいし、心理の強度に応じて例えば[1]~[10]のフラグが立っていてもよい。
【0047】
[情報提示部13]
情報提示部13は、提示情報テーブル12の中から任意の提示情報を提示する。
ここで、情報提示部13は、例えば以下のタイミングで提示情報を提示する。
(1)当該ユーザが定常的時系列位置における開始位置へ現に移動したタイミング
(2)当該ユーザの行動中の任意のタイミング
「開始位置」とは、例えば移動経路を定常的時系列位置から迂回させたい場合に、迂回の分岐となる位置である。この開始位置で、任意の提示情報をユーザに提示し、行動変容(移動経路の迂回)を試みることとなる。
【0048】
情報提示部13は、定常的時系列位置の配列パターン(例えば工事中の道路区間を含む)と、それに対する迂回時系列位置の配列パターンとを予め登録したものであってもよい。迂回時系列位置の開始位置が、定常的時系列位置の配列パターンに含まれる場合、その開始位置で、任意の提示情報をユーザへ提示する。
迂回時系列位置(迂回する道路区間)は、定常的時系列位置の開始位置及び終了位置と一致するものであってもよいし、必ずしも一致しなくてもよい(広域迂回等)。移動経路の場合、工事区間に応じて迂回経路を設定するものであってもよい。
【0049】
情報提示部13は、最初は、異なる心理IDとなる提示情報をランダムに、ユーザに提示する。その後、心理特性推定部17からユーザ毎の心理特性が出力された際に、情報提示部13は、そのユーザに応じた心理IDとなる提示情報を選択するようになる。
【0050】
[行動変容判定部14]
行動変容判定部14は、当該ユーザについて、定常的時系列位置と、提示情報の提示後における時系列位置とを比較して、行動変容(介入効果)が有ったか否かを判定する。
【0051】
前述した
図1によれば、地図メッシュID52385764の位置で、情報「渋滞回避の裏道を教えます」がユーザに提示されている。その後、ユーザの位置が、地図メッシュID52385760へ移動している場合、定常的時系列位置の地図メッシュID52385765とは異なって、移動経路を迂回したと判定することができる。即ち、提示情報がユーザに与えた心理的効果によって、定常的時系列位置から、行動が変容したと判定することができる。
【0052】
行動変容判定部14は、情報提示部13に予め登録された迂回時系列位置の配列パターンが、行動履歴記憶部10における当該ユーザの移動経路(地図メッシュIDの配列パターン)に含まれる場合、行動変容有り(介入効果有り)と判定するものであってもよい。
一方で、迂回時系列位置の配列パターンが、行動履歴記憶部10における当該ユーザの移動経路(地図メッシュIDの配列パターン)に含まれない場合、行動変容無し(介入効果無し)と判定するものであってもよい。
【0053】
図7は、本発明における行動変容判定部の処理を表す説明図である。
【0054】
図7によれば、特定のユーザの端末ID(ABC)に対して、地図メッシュID[52385764]の位置で、提示情報D1,D2,D3をそれぞれ提示している。
提示情報D1を提示した後、端末IDの移動経路となる地図メッシュIDの配列パターンが変容している。この場合、行動変容有りと判定される。
提示情報D2を提示した後、端末IDの移動経路となる地図メッシュIDの配列パターンは変容していない。この場合、行動変容無しと判定される。
提示情報D3を提示した後、端末IDの移動経路となる地図メッシュIDの配列パターンは変容していない。この場合、行動変容無しと判定される。
【0055】
[行動変容蓄積部15]
行動変容蓄積部15は、ユーザ毎に且つ定常的時系列位置毎に、行動変容判定部14における判定結果を、一定期間蓄積する。
【0056】
[心理フラグ抽出部16]
心理フラグ抽出部16は、行動変容蓄積部15を用いて、行動変容有りと判定された1つ以上の提示情報から、心理フラグ毎の回数を抽出する。
【0057】
図8は、本発明における心理フラグ抽出部の処理を表す説明図である。
【0058】
図8によれば、端末ID毎に、各情報提示位置について、行動変容有りと判定された提示情報の心理フラグを対応付けたものである。この心理フラグの表を用いることによって、端末ID毎に、情報提示位置毎に、又は、端末ID及び情報提示位置の組毎に、合計値(集計値)を算出することができる。
【0059】
[心理特性推定部17]
心理特性推定部17は、当該ユーザにおける当該定常的時系列位置毎に、心理フラグ抽出部16によって抽出された回数が最多となる心理フラグが、行動変容を促したものと推定する。
【0060】
図9は、本発明における心理特定推定部の処理を表す説明図である。
【0061】
図9(a)によれば、端末ID(ユーザ)毎に、行動変容「有り」と判定された各心理フラグの発生回数の集計が記録されている。
図9(b)によれば、定常的時系列位置の開始位置毎に、行動変容「有り」と判定された各心理フラグの発生回数の集計が記録されている。
図9(c)によれば、端末ID(ユーザ)及び定常的時系列位置の開始位置の組毎に、行動変容「有り」と判定された各心理フラグの発生回数の集計が記録されている。
心理特性推定部17は、推定結果を、情報提示部13へ出力する。
【0062】
前述した情報提示部13は、心理特性推定部17から推定結果を入力する。そして、情報提示部13は、「ユーザ毎」に、「定常的時系列位置毎」に、又は、「ユーザ及び定常的時系列位置の組」毎に、最多となる心理フラグに基づく提示情報を提示する。
例えば、ユーザABCについて心理フラグ「希少性」が高い場合、そのユーザABCには、できる限り心理フラグ「希少性」が高い提示情報を提示する。
例えば、定常的時系列位置の開始位置について心理フラグ「報酬」が高い場合、その位置に出現したユーザには、できる限り心理フラグ「報酬」が高い提示情報を提示する。
【0063】
以上、詳細に説明したように、本発明の情報提示装置、プログラム及び方法によれば、ユーザに予め回答させることなく、各ユーザの心理特性に応じた情報を提示することができる。
本発明によれば、行動変容のログが蓄積されるほど、ユーザ毎に及び/又は定常的時系列位置毎に、心理効果に沿った効果的な提示情報をユーザに提示することができる。
【0064】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0065】
1 情報提示装置
10 行動履歴記憶部
11 定常的時系列位置検出部
12 提示情報テーブル
13 情報提示部
14 行動変容判定部
15 行動変容蓄積部
16 心理フラグ抽出部
17 心理特性推定部
2 携帯端末