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特許7080576角部の強度を高める表面構造をもつ手荷物用品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】角部の強度を高める表面構造をもつ手荷物用品
(51)【国際特許分類】
   A45C 5/04 20060101AFI20220530BHJP
   A45C 5/03 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
A45C5/04
A45C5/03
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2015211985
(22)【出願日】2015-10-28
(65)【公開番号】P2016083374
(43)【公開日】2016-05-19
【審査請求日】2018-10-25
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-11
(31)【優先権主張番号】14190747.7
(32)【優先日】2014-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511214071
【氏名又は名称】サムソナイト アイピー ホールディングス エス.エー.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】エリック サイモンズ
(72)【発明者】
【氏名】セルジュ ヴァンヘック
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】関口 哲生
【審判官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】意匠登録第1339387(JP,S)
【文献】中国実用新案第202698065(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45C1/00-15/08
A45F3/00-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手荷物用品であって、
少なくとも部分的に外層で形成され、第1の側面と、第2の側面と、第3の側面とを画定するハウジングと、
前記第1、第2、及び第3の側面の交点に画定される、少なくとも1つの角の部分と、
前記少なくとも1つの角の部分により画定される頂点領域と、
前記外層により形成された第1の表面構造と、
前記外層により形成された第2の表面構造と、を備え、
前記第1の表面構造は、前記頂点領域から、前記頂点領域に対して離れる方向に第1の距離だけ離間して、前記第1の側面と、第2および第3の側面の少なくとも1つとを、横断して延在し、かつ、前記第1の表面構造の長さ方向の一部が長さ方向のその他の部分より前記頂点領域に対してさらに離れるように湾曲しており、
前記第2の表面構造は、前記頂点領域から、前記頂点領域に対して離れる方向に第2の距離だけ離間して、前記第1の側面と、第2および第3の側面の少なくとも1つとを、横断して延在し、かつ、前記第2の表面構造の長さ方向の一部が長さ方向のその他の部分より前記頂点領域に対してさらに離れるように湾曲しており、
前記第1の距離は前記第2の距離より短く、
前記第1の表面構造が頂部と、前記頂部を間に有する隣り合う2つの底部を有して、前記頂部と前記2つの底部の間に高さを有し、前記2つの底部の間に幅を有し、
前記第2の表面構造が頂部と、前記頂部を間に有する隣り合う2つの底部を有して、前記頂部と前記2つの底部の間に高さを有し、前記2つの底部の間に幅を有し、
前記第2の表面構造の前記高さが、前記第1の表面構造の前記高さよりも小さく、前記第2の表面構造の前記幅が、前記第1の表面構造の前記幅よりも大きい、手荷物用品。
【請求項2】
前記第1の表面構造が複数あり、
前記第2の表面構造が複数あり、
複数の前記第1の表面構造の間の距離は、複数の前記第2の表面構造の間の距離よりも小さい、請求項1に記載の手荷物用品。
【請求項3】
前記頂点領域の近くに位置する、複数の前記第1の表面構造の密度は、前記頂点領域から遠位に離間した複数の前記第2の表面構造の密度よりも大きい、請求項2に記載の手荷物用品。
【請求項4】
閉鎖線が前記第2の側面及び前記第3の側面の一部に沿って延び、前記第1の表面構造及び前記第2の表面構造の少なくとも一方は、前記閉鎖線に対して直角に延びる、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の手荷物用品。
【請求項5】
前記第1の表面構造と、前記第2の表面構造とは、前記頂点領域から離れる方向に凸形に湾曲している、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の手荷物用品。
【請求項6】
前記第1の表面構造または前記第2の表面構造の一方は、前記第1、前記第2、または前記第3の側面の内の任意の2つの交差によって形成される端部に沿って延在するが該端部からは離間している、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の手荷物用品。
【請求項7】
前記第1の表面構造と前記第2の表面構造の少なくとも一方は、その長さの少なくとも一部分が、前記第1、前記第2、または前記第3の側面の内の少なくとも1つを横断して、前記角の部分に対して前記横断する側面の対角線方向に並んで延在している、請求項2または請求項3に記載の手荷物用品。
【請求項8】
前記第1の表面構造または前記第2の表面構造の少なくとも一方が、前記頂点領域に印加される衝撃力の一の成分線に対して実質的に垂直方向に延在しており、
前記成分線は、上方の角の部分から同一の側面上に共に形成された下方の角の部分に向かって対角線方向に延伸する線に対して前記上方の角から測ってある範囲の角度内にあって、前記上方の角の部分に隣接する前記ハウジングの短い側面に向かって10度の偏向を含み、かつ、前記上方の角の部分に隣接する前記ハウジングの長い側面に向かって20度の偏向を含む、請求項7に記載の手荷物用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手荷物用品に関し、特に、手荷物ケースの外殻構造の強化に関する。
【背景技術】
【0002】
手荷物ケース、特にハードカバーの手荷物ケースは、旅行中に内容物に対する頑丈な保護容器を提供する。ハードカバー手荷物ケースは比較的剛直な構造を持っているが、旅行中に手荷物作業者などにより移動させられる際に、特定の部分に大きな衝撃力を受けて損傷しやすい。大きな衝撃荷重を受けやすい領域の一つに、角の部分がある。曲率が大きく、従って衝撃を吸収する表面積が小さいために、例えば落下させて角に衝撃がかかると、角部には大きく増幅された荷重がかかる。この影響を軽減するために以前は、角に追加の層を加えて、角部のハードカバー成形層の材料断面を厚くして、手荷物ケースの構造強度を増大させることが試みられた。
【0003】
ハードカバー手荷物ケースの製造にはより軽い材料の使用を加速する努力が継続的に行われており、この課題の対処に、角により多くの層またはより厚い層を追加することは次第に受け入れられなくなりつつある。
【0004】
手荷物ケースの表面構造形成のための様々な手法を含むという点で、本開示に関連する可能性がある文献は以下の通りである。ただしこれらの提案は改善されている可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許出願公開第2429912号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1763430号明細書
【文献】米国特許第3313382号明細書
【文献】米国意匠特許第D665998号明細書
【文献】米国特許第1649292号明細書
【文献】米国意匠特許第D5152566号明細書
【文献】米国特許第4113095号明細書
【文献】米国意匠特許第D429234号明細書
【文献】米国意匠特許第D299589号明細書
【文献】米国意匠特許第D633716号明細書
【文献】米国特許第3251460号明細書
【文献】米国特許第4712657号明細書
【文献】米国特許第2036276号明細書
【文献】米国特許第2950792号明細書
【文献】米国意匠特許第D644435号明細書
【文献】米国特許第3163686号明細書
【文献】米国特許第2510643号明細書
【文献】米国意匠特許第D659395号明細書
【文献】米国意匠特許第D627162号明細書
【文献】米国意匠特許第D710608号明細書
【文献】米国意匠特許第D710609号明細書
【文献】米国特許第1987764号明細書
【文献】英国特許第2184940号明細書
【文献】英国特許第2361692号明細書
【文献】特開第2009-262499号明細書
【文献】米国特許第6131713号明細書
【文献】米国特許第6035982号明細書
【文献】米国特許第4803769号明細書。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、改善された手荷物用品または手荷物ケースを提供すること、特に、手荷物ケースにかかる衝撃力を吸収及び分散させて永久変形などによる損傷リスクを軽減可能な、改善された手荷物ケース外殻デザインを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明によれば添付の特許請求の範囲に記載される、角部の強度を高める表面構造を持つ手荷物ケースが提供される。
【0008】
本開示では特に、外殻が衝撃力を吸収して永久変形に耐えるような、衝撃エネルギを吸収及び分散させることのできる手荷物用品向けの改良された外殻構造が提供される。外殻には、パターン状に形成された畝及び/又は溝などの表面構造が含まれ、衝撃分散が向上される。表面構造は、手荷物用品の一つ以上の角の部分とその周りにより高い密度で形成され、かつ、手荷物ケースの外殻を通して力が伝播するときに衝撃力を軽減または低減するために、角の部分から離れた位置、例えば手荷物用品の主面の中央部分など、ではより低い密度で形成されてもよい。表面構造は、角の部分及びその周りにより集中し、角の部分から離れるとともに少なくなっていてもよい。表面構造の垂直方向の寸法と幅もまた、角の部分でそれぞれより深く、またより狭くなっていて、角の部分から離れた場所ではそれぞれより浅く、またより広くなっていてもよい。表面構造は、手荷物用品の角の部分に印加される衝撃力ベクトルに対して垂直に配置されてもよい。
【0009】
ある実施例では、角の強度を強化させる表面構造を持った手荷物用品が提供される。手荷物用品は、少なくとも部分的に外層で形成され、かつ部分的に第1の側面と第2の側面と第3の側面とを画定するハウジングを含んでいる。角の部分は、第1と第2と第3の側面またはパネルの交差部またはその近くに画定され、また頂点領域は少なくとも部分的に角の部分によって画定される。手荷物用品はまた、第1の細長い表面構造も含むことができる。これは、外層で形成され、かつ頂点領域から第1の距離だけ離間した場所で、第1、第2、第3の少なくとも1つ以上の側面に少なくとも部分的にまたがって延在して、頂点領域に対して湾曲している。手荷物用品はまた、第2の細長い表面構造も含むことができる。これは、外層で形成され、かつ頂点領域から第2の距離だけ離間した場所で、第1、第2、第3の少なくとも1つ以上の側面に少なくとも部分的にまたがって延在して、頂点領域に対して湾曲している。実施例のあるものでは、第1と第2の表面構造のそれぞれは、そのそれぞれの長さの一部に沿って、互いに類似した曲線を形成している。他の実施例では、第1と第2の表面構造は高さと幅の寸法を規定し、頂点領域に近い表面構造の高さと幅が、頂点領域から遠い表面構造よりも、それぞれより高く、またより狭くなっていてもよい。
【0010】
ある実施形態では、手荷物用品のハウジングが、閉鎖線において選択的に相互固定される第1と第2の部分を含んでいる。ある実施例では、第1の部分は少なくとも部分的に外層によって形成されている。
【0011】
ある実施形態では、第2の表面構造は、第1の表面構造よりも頂点領域から遠くに離れている。
【0012】
ある実施形態では、第1の表面構造がある幅を持ち、かつ第2の表面構造がある幅を持っている。ある実施例では、頂点領域から遠い位置にある表面構造の幅が、頂点領域に近い位置にある表面構造の幅よりも大きい。
【0013】
ある実施形態では、第1の表面構造がある高さを持ち、かつ第2の表面構造がある高さを持っている。ある実施例では、頂点領域から遠い位置にある表面構造の高さが、頂点領域に近い位置にある表面構造の高さよりも小さい。
【0014】
ある実施形態では、第1の表面構造がさらに1つの第1の表面構造を含み、かつ第2の表面構造がさらに1つの第2の表面構造を含んでいる。ある実施例では、第1の表面構造とさらに1つの第1の表面構造との間の距離は、第2の表面構造とさらに1つの第2の表面構造との間の距離よりも数倍小さい。
【0015】
ある実施形態では、複数の第1の表面構造がある密度を持ち、複数の第2の表面構造がある密度を持っている。ある実施例では、頂点領域から遠い位置にある第2の表面構造の密度が、頂点領域に近い位置にある第1の表面構造の密度よりも小さい。
【0016】
ある実施形態では、第1の表面構造と第2の表面構造の少なくとも1つは、ハウジングの第1と第2と第3の側面の内の少なくとも2つにまたがって延在する、
【0017】
ある実施形態では、第1の表面構造と第2の表面構造の少なくとも1つは、少なくとも部分的には閉鎖線に対して概ね直角に延在している。
【0018】
ある実施形態では、第1の表面構造と第2の表面構造は、1つの畝を含むか、または1つの溝を含んでいる。
【0019】
ある実施形態では、第1の表面構造が第1の表面構造の組で画定され、かつ第2の表面構造が第2の表面構造の組で画定される。
【0020】
ある実施形態では、第1の表面構造と第2の表面構造は、頂点領域に対して、向う方向に凹形に湾曲するか、頂点領域から離間する方向に凸形となっているか、あるいはこれらの方向と逆方向になっている。
【0021】
ある実施形態では、第1の表面構造または第2の表面構造の1つが、第1、第2、または第3の側面の内の任意の2つの交差によって形成される端部に沿って、ただしそこからは離間して、延在している。
【0022】
ある実施形態では、第1の表面構造と第2の表面構造の1つが、少なくともその長さの一部で、第1、第2、または第3の側面の内の少なくとも1つを横切り、その角の部分に対して対角線方向に延在している。
【0023】
ある実施形態では、第1、または第2の表面構造の1つの複数の部分が、頂点領域に印加される衝撃力の成分線に対して実質的に垂直方向に延在している。
【0024】
ある実施形態では、成分線は、上方の角から同一の側面上に共に形成された下方の角に向かって対角線状に延伸する線から測ったある範囲の角度内にあって、上方の角に隣接するハウジングの短い側面に向かって約10度の偏向を含み、かつ、上方の角に隣接するハウジングの長い側面に向かって20度の偏向を含んでいる。
【0025】
さらなる実施形態と特徴が以下の説明で部分的に説明される。それは当業者には、本明細書の精査により明らかとなるか、または開示の主題の実行により習得されるであろう。本明細書の残りの部分、及びこの開示の一部を構成する図面を参照することにより、本開示の本質及び利点をさらに理解できるであろう。当業者は、本開示の様々な態様と特徴のそれぞれを、ある場合には個別に、また別の場合には本開示の他の態様と特徴との組み合わせで、有利に使用し得ることを理解するであろう。
【0026】
以下の図面を参照することにより説明がより十分に理解されるであろう。ここで部品は寸法通りには表示されていない。図は本開示の様々な実施形態として示されており、本開示の範囲を完全に列挙するものとして解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本開示のいくつかの実施例による手荷物ケースの等角図である。
図2図1の手荷物ケースの背面立面図である。
図3図1の手荷物ケースの右立面図である。
図3A図3の3A部の詳細な拡大部分図である。
図4】本開示のいくつかの実施例による手荷物ケース外殻の部分等角図である。
図5図2の線5-5に沿う、手荷物ケースの外層で形成された表面構造の代表的部分断面図である。
図6】本開示のいくつかの実施例による手荷物ケースの代表的な概略立面図である。
図7】本開示のいくつかの実施例による手荷物ケースの代表的な概略立面図である。
図8】本開示のいくつかの実施例による、手荷物ケースの外層により形成された代替表面構造の代表的な部分断面図である。
図9】本開示のいくつかの実施例による、手荷物ケースの外層により形成された代替表面構造の代表的な部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示は手荷物用品の改良された外殻構造を提供する。具体的には、本開示は、大きな衝撃を受けたときに外殻が衝撃を吸収して永久変形をしないように、衝撃によるエネルギを吸収しかつ分散させることができる外殻構造を提供する。一般的に外殻は、衝撃分散を向上させるためのパターン状に形成された、畝及び/又は溝などの表面構造を含んでいる。ある実施例では、手荷物ケースの外殻を通して力が伝播するときに衝撃力を軽減または低減するために、表面構造は手荷物用品の一つ又は複数の角の部分とその周りにより高い密度で形成され、また、角の部分から離れた位置、例えば手荷物用品の主面の中央部分などではより低い密度で形成されていてもよい。同じように、表面構造の垂直方向の寸法と幅は、角の部分及びその周りにより集中し、角の部分から離れるとともに集中の度合いが下がっていてもよい。ある実施例では、表面構造の垂直方向の寸法と幅が、角の部分の近くでそれぞれより深くまたより狭く、角の部分から離れた場所ではそれぞれより浅くまたより広くなっていてもよい。ある実施例では、表面構造は手荷物用品にかかる衝撃力ベクトルに対して垂直となっていてもよい。
【0029】
図1~3Aにおいて、ハードカバーの手荷物ケース2は、外層6で形成されたハウジング4で画定される。そして正面パネル8、背面パネル10、頂部パネル12、底部パネル14、右側面パネル16、および左側面パネル18を含んでいる。角の部分20は、隣接する任意の2つまたは3つのパネル8、10、12、14、16、18の交差により画定される。例えば、手荷物ケース2には4つの上部の角の部分と4つの下部の角の部分が含まれ、それぞれが隣接する3つのパネルの交差で形成されている。さらに、隣接する任意の2つのパネルの交差で形成される端部もまた、「角の部分」とみなしてよい。本明細書でのパネル8、10、12、14、16、18は「側面」と称してもよい。従って、手荷物ケース2の第1の側面、第2の側面、及び/又は第3の側面はそれぞれ、本明細書に記載の様々なパネル8、10、12、14、16、18の任意のものであってよい。手荷物ケース2はまた、ジッパーのような閉鎖機構を含み、これは側面パネル16、18の中央部と頂部パネル12、底部パネル14に沿って延在し、手荷物ケース2を2つの外殻部分24に分割する閉鎖線22を画定する。2つの外殻部分24を枢動可能に接続するヒンジ(図示せず)が閉鎖線22に沿って配置されている。ジッパーを開放すると、2つの外殻部分24をヒンジ部の周りで枢動させて、内部へのアクセスを可能とすることができる。様々な種類の閉鎖機構とヒンジ構造が使用可能である。手荷物ケース2はまた、好ましくは図に示すような4つのスピナー型車輪26を含み、あるいは他の車輪または支持構造を含んで、ユーザが手荷物ケース2を斜めにして引き寄せるか牽引すること、あるいは直立位置のまま案内することが可能となるようにしてもよい。手荷物ケース2は頂部パネル12に頂部キャリーハンドル28を、そして側面パネル16、18に側面キャリーハンドル30を含んでいてもよい。手荷物ケース2はまた、伸縮可能な引き手ハンドル32を含んでいてもよい。引き手ハンドル32は手荷物ケース2の背面パネル10の外側に沿って整列していてもよい。あるいはそれに代わって、引き手ハンドル32は背面パネル10に沿って整列しているが、手荷物ケース2の内部に配置されていてもよい。本明細書においては、スピナー型車輪26を持つハードカバー手荷物ケース2を参照して説明するが、本明細書で説明する改良は有利なことに、ソフトカバーケース、混合ケース、リュックサック、およびダッフルバッグなどの他の種類の手荷物ケースに実装することも可能である。
【0030】
図1~3Aを引き続き参照すると、手荷物ケース2の2つの外殻部分24は、手荷物ケースのハウジング4の外層6によって形成された表面構造34を含むことができる。表面構造34は、手荷物ケース2に衝撃が加わった時の衝撃耐性を改良して、手荷物ケース外殻24の強度と弾力を向上させる。一般的に衝撃力は角の部分20に最も損害を与える。例えば手荷物ケース2が角の部分から落ちた場合などに、角の部分20は衝撃力を受ける。各角の部分20は、少なくとも部分的に頂点領域36を画定し、そこでは衝撃力Fが手荷物ケース2に最大の衝撃エネルギをもたらす可能性がある。衝撃力Fはある方向すなわちベクトルに沿って印加され、その衝撃力Fは図6図7に示すように、そのベクトルに一致する成分線CLに沿って外層6を伝わる。頂点領域36はまた、様々なパネル8、10、12、14、16、18の2つの間に形成される端部または端部の一部によっても画定され得る。
【0031】
表面構造34の例として、図1~3Aには、実質的に波型の外層6を構成する複数の表面構造34が開示されている。これは通常角の部分20の周りに曲線形状で、かつ、衝撃力Fのベクトル(または成分線CL)にほぼ直角に延在している。実質的に波型の表面構造34は、表面構造34同士の間の弾性変形を通して分散させることによって、衝撃力Fからのエネルギを実質的に吸収するように構成されていてもよい。こうして、少なくとも表面構造34が形成されている外殻24部分を介して、衝撃エネルギが散逸される。表面構造34は角の部分20の永久変形の可能性を低減する。
【0032】
本明細書で記述する表面構造は、2層以上の積層体中に形成されてもよく、これらが例えば内層と外層、あるいは内層と外層と中間層を含んでもよい。これらの層は成形可能なハードカバー材料であってもよいし、またはハードカバー材料とソフトカバー材料の組合せであってもよい。ハードカバー材料は、とりわけ、熱可塑性材料(自己強化型または繊維強化型)、ABS、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン、PVC、ポリアミド、PTFEであってよい。手荷物ケースは、プラグ成形、ブロー成形、インジェクション成形などのような任意の好適な方法によって成形または鋳造されてもよい。さらに、表面構造を形成する層の厚さは、最少で約0.8mm以下程度の薄さであり、最大で約3mm以上であり、好ましくは1mm~2.5mmの範囲であり、さらに好ましくは1mm~2mmの範囲である。表面構造が形成される1層または複数層の厚さは、表面構造部の全体に一定であってもよいし、その中で変化してもよい。厚さを変化させると、衝撃力を吸収する表面構造の能力に影響する可能性があり、表面構造の寸法を、具体的にその手荷物ケースの寸法と用途から予想される衝撃力に合わせて設計することが可能となる。例えば、溝の底またはピークの頂点の厚さは、それらの間に広がる部分よりも大きくてもよい。またはそうではなく、溝の底またはピークの先端が、それらの間に広がる部分よりも薄くてもよい。
【0033】
図1~3Aに示すように、表面構造34は少なくとも1つのパネル8、10、12、14、16、18を少なくとも部分的に横断して延在し、頂点領域36に対して湾曲しており、衝撃力Fが頂点領域36から逸れて分散するようになっている。表面構造34は頂点領域36の近くにあって、比較的連続な波の組になって頂点領域36から放射状に離れていく。隣接する各表面構造は、一般的に隣接する表面構造と同じような曲線に沿って延在してもよい。個別の各表面構造34の曲率は、(両側の)隣接する表面構造のものとは異なっていてもよい。
【0034】
図3A図4、及び図5において、個別の「表面構造」34は、1つの畝40、1つの溝42、または、1つの畝40と1つの隣接する溝42との組み合わせ、で形成されている。表面構造34が畝40である場合、隣接する表面構造は隣接する溝、またはその次に隣接する畝(間にある溝を飛び越えて)によって画定される。表面構造34が溝42である場合、隣接する表面構造は隣接する畝、またはその次に隣接する溝(間にある畝を飛び越えて)によって画定される。「表面構造の組」44は、畝40と隣接する溝42の組合せで形成される。第2の表面構造の組44Bは、異なる畝と隣接する溝である。第3の表面構造の組44Cは、同じように構成されてよい。以下同様である。
【0035】
個別の各表面構造34は、幅寸法Wと、高さ寸法Hと、長さ(または伸長長さ)寸法Lとを画定する。個別の表面構造34が畝40である場合には、幅寸法Wは、片側の隣接溝の底部から、反対側の隣接溝の底部までの寸法である。個別の表面構造34が溝42である場合には、幅寸法Wは、片側の隣接畝の頂部から、反対側の隣接畝の頂部までの寸法である。表面構造34が畝40である場合には、高さ寸法Hは、手荷物ケース2から離れる方向の寸法である。個別の表面構造34が溝42である場合には、高さ寸法Hは、手荷物ケース2に向かう方向の寸法である。長さ寸法Lは、一般的に畝40または溝42が延びる長手方向に沿って計測する。表面構造34の幅寸法W及び高さ寸法Hは、その長さLに沿って変化してもよいし、隣接する畝または溝と同じか、または異なっていてもよい。以下の図5に関する説明で、高さ寸法Hと幅寸法Wの大きさと、表面構造の組44に関するその相対的な違いについて詳述する。畝40の幅Wと溝42の幅Wとの割合は長さLに沿って変化してもよい。ただし、表面構造の組44の全体幅Woは長さLに沿って相対的に一定であってよい。または、表面構造の組44の全体幅Wo(畝40の幅Wと溝42の幅Wから成っている)はその長さLに沿って変化してもよいし、隣接する表面構造の組と同一であってもまたは異なっていてもよい。表面構造の組44のそれぞれの畝40の高さまたは溝42の深さはその長さLに沿って変化してもよい。一般的に、ある材料の厚さに対して、表面構造34または表面構造の組44の、高さの寸法Hが大きくて幅の寸法Wが小さいほど、表面構造34または表面構造の組44は、衝撃力Fの吸収と分散に関して、より弾力的である。高さ寸法Hが小さくて、幅寸法Wが大きいほど、表面構造34または表面構造の組44は衝撃力Fの吸収性と弾力性が小さい。高さ寸法Hまたは幅寸法Wのいずれかを、他方をそのままにして、頂点領域36からの距離に対して変化させてもよい。このそれぞれはそれ自体で吸収性と分散性の特性に影響を与える。従って他とは独立して変化させてもよい。
【0036】
上に述べ、かつ以下でより完全に説明するように、頂点領域36の近くに位置する表面構造34は、幅寸法Wがより狭く、高さ寸法Hがより大きくて、従ってより高密度に配置されていてもよい。頂点領域36からの距離が大きくなるにつれて、表面構造34の高さ寸法Hが一般的に減少し、表面構造34の幅寸法Wが一般的に増大する。これらの寸法変化により、頂点領域36から放射状に遠ざかるほど表面構造34の視覚効果が消失する。これは小石が水に衝撃を与えたときのさざ波効果に似ている。表面構造34がより高密度に配置されていれば、衝撃力Fに対するより大きな弾性を必要とする頂点領域36の付近が一般的により大きな弾性を持ち、永久変形する可能性を小さくする。頂点領域36から離れた場所では、表面構造34はより低い密度となっていてもよい。それは、衝撃力Fはこれらのより遠隔な領域に到達するまでに散逸または減衰されてしまい、小さい弾力性しか必要としないからである。この段落に記載した表面構造34の態様は、表面構造の組44にも同様にあてはまる。
【0037】
間隔の一例として、引き続き図2図4図5を参照すると、表面構造34は、正面パネル8と背面パネル10の内側部46に比べると、頂点領域36の近くでは互いに2倍~3.5倍だけより近接して配置されていてもよい。これ以外のより大きなまたはより小さな間隔の比も可能である。例えば、図2を参照すると高さ700mmの外殻24に対して、頂点領域36近くでは表面構造34同士の距離Xは10mm~12mmの間を変化してもよい。他方、頂点領域36からより遠方、例えば正面パネル8や背面パネル10の内側部46内にある表面構造34同士の距離Yは、30mm~35mmの間を変化してもよい。さらに他の実施例では、表面構造34は、正面パネル8や背面パネル10の内側部46内で次第にすべて消失してもよい。この段落に記載した表面構造34の態様は、表面構造の組44にも同様にあてはまる。
【0038】
図1、3、4を参照すると、第1の細長い表面構造34A(または表面構造の組44A)は、頂点領域36から第1の距離だけ離間して、正面パネル8と背面パネル10を少なくとも部分的に横断して延在して、頂点領域36に対して湾曲している。第2の細長い表面構造34B(または表面構造の組44B)は、頂点領域36から第2の距離だけ離間して、正面パネル8と背面パネル10を少なくとも部分的に横断して延在して、頂点領域36に対して湾曲している。他の実施形態では、頂点領域36から第3の距離だけ離間して、正面パネル8と背面パネル10を少なくとも部分的に横断して延在して、頂点領域36に対して湾曲している、少なくとも1つの第3の細長い表面構造34C(または表面構造の組44C)を、外殻部24が含んでいてもよい。ある実施例では、第1の表面構造34A(または表面構造の組44A)が、第2の表面構造34B(または表面構造の組44B)よりも大きな高さ寸法Hと小さな幅寸法Wとを持ち、第2の表面構造34B(または表面構造の組44B)が、第3の表面構造34C(または表面構造の組44C)よりも大きな高さ寸法Hと小さな幅寸法Wとを持っている。さらに、頂点領域36からの第2の距離は頂点領域36からの第1の距離より大きく、また頂点領域36からの第3の距離は頂点領域36からの第2と第1の距離のいずれよりも大きくてもよい。ある実施例では、第1の表面構造34A(または表面構造の組44A)、第2の表面構造34B(または表面構造の組44B)、及び/又は第3の表面構造34C(または表面構造の組44C)は角の部分20付近にあってもよい。
【0039】
外殻部分24は少なくとも2つの表面構造34(または表面構造の組44)を含んでいてもよい。ただし、外殻部分24は表面構造34(または表面構造の組44)をいくつ含んでいてもよく、個別の手荷物ケース2の大きさと寸法によってのみ制限される。例えば、外殻部分24は3個~6個の表面構造34(または表面構造の組44)を含んでいてもよい。上記のことは主要面のパネル(正面パネル8または背面パネル10)に関連して記述したが、手荷物ケース2の任意のパネル8、10、12、14、16、18に、同じまたは同じような表面構造(または表面構造の組)の配置が実装されてもよいと考えられることに留意されたい。
【0040】
なおも図1図3図4において、表面構造34または表面構造の組44の長さLの異なる部分が、頂点領域36に対して異なる曲がり方をしていてもよい。例えば、表面構造34または表面構造の組44のある部分が頂点領域36に向かって(そちらに向かって凹型に)湾曲し、その一方で同一の表面構造34または表面構造の組44の他の部分が、頂点領域36から離れる方向に(そこから凸型に)湾曲している。同じように、1つの表面構造34または表面構造の組44が頂点領域36に向かって凹型に湾曲し、その一方で隣接するまたは他の表面構造34または表面構造の組44が頂点領域36から離れる方向に凸型に湾曲していてもよい。表面構造34または表面構造の組44の頂点領域36に対する曲率は、表面構造34または表面構造の組44の吸収及び弾性特性に影響する。例えば、隣接する表面構造がどちらも頂点領域36に向かって凹型に湾曲しており、一方、隣接する表面構造34の一方が頂点領域36に向かって凹型に湾曲し、他方が離れるように凸型に湾曲している別の場合に比べて、その他はすべて同じであっても、前者の表面構造34は全体として、相対的により弾性的で吸収的となる。
【0041】
図1図3Aにおいて、第1の表面構造34Aは第1の長さLを持ち、第2の表面構造34Bは第2の長さLを持ってもよい。ある実施例では、第2の長さLは第1の長さLより大きくてもよい。ある実施例では、第1の表面構造34Aと第2の表面構造34Bは、その長さL、Lの少なくとも一部が、2つのパネル8、10、12、14、16、18の間に形成された端部48にほぼ平行に延在していてもよい。ある実施例では、第1の表面構造34Aと第2の表面構造34Bは、その長さL、Lの少なくとも一部が端部領域20に対角的な角度で延在していてもよい。ある実施例では、第1の表面構造34Aと第2の表面構造34Bは、その長さL、Lの少なくとも一部が手荷物ケース2の閉鎖線22にほぼ垂直に延在していてもよい。上では個別の表面構造34に関して説明したが、表面構造の組44も同じ特性を持っていてもよい。
【0042】
図1図3A図5を参照すると、前述したように畝40と隣接する溝42が結合して表面構造の組44を形成している。図3A図5に示すように、各外殻部24には、第1の畝40Aと第1の隣接溝42Aを持つ第1の表面構造の組44Aと、第2の畝40Bと第2の隣接溝42Bを持つ第2の表面構造の組44Bと、第3の畝40Cと第3の隣接溝42Cを持つ第3の表面構造の組44Cとを含んでいてもよい。畝40から溝42への遷移は、図に示すような角張ったものであってよく、これが、衝撃力Fに応答する表面構造34の弾性及び可撓性を支援する。ただしある実施例では、畝40から溝42への遷移は、滑らかなものであってもよく、これが一般的に、衝撃力Fに応答する表面構造34の剛性を増大させる。第1、第2、第3の表面構造の組44A、44B、44Cは、互いに隣接していてもよいし、そうでなくてもよい。
【0043】
引き続き図5を参照すると、第1の表面構造の組44Aの頂部域には第1の頂部50Aが含まれ、第2の表面構造の組44Bの頂部域には第2の頂部50Bが含まれ、第3の表面構造の組44Cの頂部域には第3の頂部50Cが含まれてもよい。第1の表面構造の組44Aの底部域には第1の底部52Aが含まれ、第2の表面構造の組44Bの底部域には第2の底部52Bが含まれ、第3の表面構造の組44Cの底部域には第3の底部52Cが含まれてもよい。第1の畝部分54Aは、頂点領域36を第1の頂部50Aに接続し、第1の溝部分56Aは第1の頂部50Aを第1の底部52Aに接続することができる。第2の畝部分54Bは、第1の底部52Aを第2の頂部50Bに接続し、第2の溝部分56Bは第2の頂部50Bを第2の底部52Bに接続することができる。同様に、第3の畝部分54Cは、第2の底部52Bを第3の頂部50Cに接続し、第3の溝部分56Cは第3の頂部50Cを第3の底部52Cに接続することができ、以下同様である。第1の表面構造の組44Aには、第1の畝部分54A、第1の頂部50A、第1の溝部分56A、および第1の底部52Aを含んでもよい。第2の表面構造の組44Bには、第2の畝部分54B、第2の頂部50B、第2の溝部分56B、および第2の底部52Bを含んでもよい。同様に、第3の表面構造の組44Cには、第3の畝部分54C、第3の頂部50C、第3の溝部分56C、および第3の底部52Cを含んでもよい。
【0044】
図5において、第1、第2、および第3の頂部50A、50B、50Cが公称曲線を画定して、第1、第2、および第3の隣接する溝42A、42B、42Cのそれぞれの深さD、D、Dを画定する。ある実施例では、第1の隣接する溝42Aの深さDは、第2の隣接する溝42Bの深さDよりも大きくてもよい。同様に、第2の隣接する溝42Bの深さDは、第3の隣接する溝42Cの深さDよりも大きくてもよい。ある実施例では、隣接する溝42A、42B、42Cの深さD、D、Dは角の部分20の近くでより大きくて、深さD、D、Dは角の部分20からの距離が大きくなると減少する。ある実施例では、隣接する溝42A、42B、42Cの深さD、D、Dは、表面構造34の長さLに沿って変化してもよい。そのような構成では、従来のデザインよりも、衝撃力Fによって、実質的に頂点領域36近くで手荷物ケース2に導入される衝撃エネルギをより吸収するという利点を持っている。溝42の最大深さは、2.5mm~6mmまで変化し、最適深さはある実施例では5mmである。ある実施例では、隣接する溝42A、42B、42Cの深さD、D、Dは、頂点領域36からの距離と共に減少してもよい。これに代わる実施形態では、隣接する溝42A、42B、42Cの深さD、D、Dは、より浅いものからより深いものに交互に替わっていてもよい。
【0045】
上記のように、表面構造34の幅Wは衝撃力のエネルギを外殻24の部分を通して分散させるために変化していてもよい。図5において、第1の表面構造34Aは第1の幅Wを持ち、第2の表面構造34Bは第2の幅Wを持ち、第3の表面構造34Aがもしあればそれは第3の幅Wを持ってよい。図5にも示すように、第3の幅Wは第2の幅Wよりも大きく、第2の幅Wは第1の幅Wよりも大きくてもよい。ある実施例では、表面構造34の幅Wは頂点領域36からの距離が遠くなるほど大きくなってもよい。例えば、表面構造34の幅Wは、頂点領域36の近くでは相対的に狭くて、頂点領域36から離れた距離では相対的に広くてもよい。ある実施例では、表面構造34の幅Wは、より狭いものからより広いものへ交互に替わってもよい。上記では個別の表面構造34に関して説明したが、表面構造の組44も同じ特性を持っていてもよい。
【0046】
頂点領域36への衝撃力Fの入射角は広範囲に変化し得る。これは殆どいつも、手荷物ケース2のパネル8、10、12、14、16、18の面内の成分ベクトルで与えられる圧縮力となる。衝撃力Fはまた、手荷物ケースパネル8、10、12、14、16、18の面外の力の成分ベクトルにより曲げ荷重ともなる。表面構造34は曲げの力の吸収も強化するものと考えられるが、以下の議論においては、手荷物ケース2のパネル8、10、12、14、16、18面内の圧縮力を主に考える。以下の説明は、手荷物ケース2の主要面パネル(前面または背面パネル8、10)に関するものである。図6図7を参照すると、表面構造34、またはその一部分が上記のように衝撃力Fのベクトルに直交していてもよい。図6は、衝撃力Fの成分線CLに対する表面構造34の配向の一概略例を示す。成分線CLは頂点領域36と、手荷物ケースのパネル8、10、12、14、16、18の面内に印加された衝撃力Fの力ベクトルである。これは図6において通常対向する角の部分20を繋ぎ、図6の面(これは通常、手荷物ケース2の、前面または背面の主要パネル8、10である)の内部に配向する線として画定される。例えば、図6図7に示すように、成分線CLは、左頂部の頂点領域36から右底部の頂点領域36へと正面パネル8に沿って手荷物ケース2を対角線方向に二等分する。図6において、複数の表面構造34の模式的表示は、それらが頂点領域36に印加された衝撃力Fの成分線CLに対してほぼ直交して延在していることを示している。この衝撃力Fと表面構造34の間の相対的配向によって、表面構造による衝撃の散逸効果が最大化される。それは、衝撃力Fの、事実上すべてとは言わないまでも、その大部分が、表面構造の可撓性及び弾力性のある吸収特性によって、表面構造34が圧縮されるように設計された方向にあるからである。
【0047】
次に図7を参照すると、表面構造34は衝撃力Fの成分線CLに対して垂直の位置関係で延在することが望ましいが、衝撃力Fをなお十分に吸収する性質を持ちつつ、表面構造34が好適な配向から少しずれることもあり得る。例えば、表面構造34の延伸長さ58が、成分線CLに対する垂直から、外殻24の短い側面60方向に角度αだけ偏位してもよい。すなわち、表面構造34が成分線CLに対する垂直から偏位して、代わりに右偏位線DRLに対して垂直となってよい。成分線CLと右偏位線DRLとの間の角度はαである。同様に、例えば、表面構造34の延伸長さ58が、成分線CLに対する垂直から、外殻24の長い側面62方向に角度βだけ偏位してもよい。すなわち、表面構造34が成分線CLに対する垂直から偏位して、代わりに左偏位線DLLに対して垂直となってよい。成分線CLと左偏位線DRLとの間の角度はβである。角度αは10度以下、角度βは20度以下であってよく、それでも表面構造34に衝撃力のかなりの吸収をさせることができる。角度αとβが、それぞれ10度または20度より大きい場合でも、ある程度の衝撃吸収はあり、許容できる。この許容される範囲により、表面構造の延伸長さ58の湾曲の設計において、衝撃力の角度のより幅広い分布が可能となり、それとともに結果として、表面構造34が手荷物ケース2全体に持つ美的外観に柔軟性を持たせることができる。
【0048】
次に図8図9を参照すると、これまでに述べたものと同一または同様の結果を達成する、表面構造34の代替実施形態が示されている。これらの構造は、頂点領域36での衝撃力Fの吸収と軽減に関して異なる特性を持っている。一般的に、図8図9の構造は、剛性がより高くて弾性がより小さいが、それでも頂点領域36への衝撃力Fを適切に吸収して軽減する。これらの代替的な畝と溝の表面構造構成の(頂点領域に対する位置および方向に基づく)具体的かつ相対的な幅、高さ、長さ、および湾曲に関する詳細は、図1図7で示す表面構造34(または表面構造の組44)に関して前述した詳細と実質的に同様または同一である。図8では、第1の畝40Aと第2の畝40Bの頂部域が概して平坦な公称面64を画定してもよい。そのような実施例では、丸い底部を持つ第1の溝42Aは第1の畝40Aに隣接し、丸い底部を持つ第2の溝42Bは第2の畝40Bに隣接していて、その両方とも公称面64からある高さ寸法(深さ)だけ内方向に延伸していてもよい。公称面64は平坦でなくてもよくて、代わりに丸くなっているか、斜めになっていてもよい。
【0049】
図9においては、別の実施形態で第1の隣接溝42Aと第2の隣接溝42Bの底部域が、概して平坦な公称面66を画定してもよい。そのような実施例では、丸い頂部を持つ第1の畝40Aと丸い頂部を持つ第2の畝40Bが公称面66からある高さ寸法だけ上方向に延伸していてもよい。公称面66は平坦でなくてもよく、代わりに丸くなっているか、斜めになっていてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態を説明したが、当業者であれば、本発明の精神から乖離することなしに様々な変更、代替構築物、および均等物を使用し得ることがわかるであろう。さらに、いくつかの周知のプロセス及び要素は、本発明を不要に不明瞭にすることを避けるために説明しなかった。従って、上記の説明は本発明の範囲を制限するものとして受け取るべきではない。
【0051】
ここに開示した実施形態は一例として教示するものであって、制限として教示するものではないことを当業者は理解するであろう。従って、上記の説明に含まれ、または添付の図面に示される事項は例示として解釈されるべきであり、制限的な意味で解釈されるべきではない。以下の特許請求の範囲は、本明細書で記述したすべての一般的特徴及び特定の特徴、並びに本方法とシステム、これは言葉の問題で物と方法との中間にあると言われることもあるが、の範囲のすべての記述を包含することが意図されている。
図1
図2
図3
図3A
図4
図5
図6
図7
図8
図9