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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】装飾シート及び座席
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/30 20060101AFI20220530BHJP
   A47C 7/00 20060101ALI20220530BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220530BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20220530BHJP
   B44C 3/02 20060101ALI20220530BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20220530BHJP
   D06N 3/00 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
B32B3/30
A47C7/00
B32B27/00 E
B32B27/12
B44C3/02 Z
B60N2/58
D06N3/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017150584
(22)【出願日】2017-08-03
(65)【公開番号】P2019025226
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135448
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 泰隆
(72)【発明者】
【氏名】前田 啓子
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-209511(JP,A)
【文献】国際公開第2008/044515(WO,A1)
【文献】特開2014-226822(JP,A)
【文献】国際公開第2005/005560(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/075643(WO,A1)
【文献】特開2000-355197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
A47C 7/00
B44C 1/00- 3/12
B60N 2/58
D06N 3/00- 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維質基材と、
前記繊維質基材の表面を装飾する第一模様と、を含み、
前記第一模様は、前記繊維質基材の表面に付着した樹脂製の樹脂部により形成され、
前記第一模様では、前記繊維質基材の表面からの前記樹脂部の高さは、前記繊維質基材の表面上で前記繊維質基材の表面内の任意の第一方向に沿って漸次変化し、
前記樹脂部は、前記樹脂製の複数の凸部を含み、
前記第一模様は、前記繊維質基材の表面に付着した前記複数の凸部により形成され、
前記複数の凸部は、前記繊維質基材の表面からの高さが異なる複数種の凸部を含み、
前記第一模様では、前記複数の凸部は、前記第一方向に第一間隔で配列され、
前記第一間隔は、前記複数の凸部が前記第一方向に隙間なく接することとなる状態に設定される、装飾シート。
【請求項2】
前記第一模様では、前記複数の凸部は、前記第一方向に交差する前記繊維質基材の表面内の第二方向に配列される、請求項1に記載の装飾シート。
【請求項3】
前記第一模様では、前記複数の凸部は、前記第二方向に第二間隔で配列される、請求項2に記載の装飾シート。
【請求項4】
前記繊維質基材の表面を装飾する第二模様を含み、
前記第二模様は、明度、色相及び彩度の一部又は全部が連続して変化するグラデーションを含む、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の装飾シート。
【請求項5】
前記第一模様と前記第二模様とは、隣り合う状態で、前記繊維質基材の表面に配置される、請求項4に記載の装飾シート。
【請求項6】
前記第一模様と前記第二模様とは、重なり合う状態で、前記繊維質基材の表面に配置される、請求項4又は請求項5に記載の装飾シート。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の装飾シートを表地とした座席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維質基材の表面を装飾する模様を含む装飾シートと、座席に関する。
【背景技術】
【0002】
基材の装飾に関する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、3次元外観を与えるパターンが印刷された基材が開示されている。基材は、不織ウェブ又は不織布、プラスチックフィルム及びそれらの積層体である。パターンは、繰り返しパターンとされる。繰り返しパターンは、実質的に同じ全体形状を有する少なくとも約10個のマクロ単位を含む。パターンの形成は、基材表面への印刷によって行われる。印刷には、インクジェット印刷が用いられる。各マクロ単位は、異なるレベルのコントラストを有する3つ以上の色ゾーンを有する。色ゾーンは、最も暗いものから最も明るいものまで遷移する。基材背景色によって1つの色ゾーンが規定される。色ゾーンの残りの部分は、印刷される。明るい領域によって、基材表面から突出する隆起領域から光が強烈に反射される外観が与えられる。暗い領域によって、隆起領域が基材の他の領域に影を落としている外観が与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2010-510861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各種製品の表面には、装飾シートが設けられる。装飾シートは、各種製品の表地となる。装飾シートは、繊維質基材の表面に装飾用の模様を含む。装飾シートにより、製品の意匠性を高めることができる。発明者は、製品の意匠性を向上させることができる装飾技術について検討した。
【0005】
本発明は、製品の意匠性を向上させることが可能な装飾シートと、意匠性を有する座席を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、繊維質基材と、前記繊維質基材の表面を装飾する第一模様と、を含み、前記第一模様は、前記繊維質基材の表面に付着した樹脂製の樹脂部により形成され、前記第一模様では、前記繊維質基材の表面からの前記樹脂部の高さは、前記繊維質基材の表面上で前記繊維質基材の表面内の任意の第一方向に沿って漸次変化し、前記樹脂部は、前記樹脂製の複数の凸部を含み、前記第一模様は、前記繊維質基材の表面に付着した前記複数の凸部により形成され、前記複数の凸部は、前記繊維質基材の表面からの高さが異なる複数種の凸部を含み、前記第一模様では、前記複数の凸部は、前記第一方向に第一間隔で配列され、前記第一間隔は、前記複数の凸部が前記第一方向に隙間なく接することとなる状態に設定される、装飾シートである。
【0007】
また、前記第一模様では、前記複数の凸部は、前記第一方向に交差する前記繊維質基材の表面内の第二方向に配列される、ようにしてもよい。更に、前記第一模様では、前記複数の凸部は、前記第二方向に第二間隔で配列される、ようにしてもよい。
【0008】
上記の各装飾シートによれば、装飾シートの質感を向上させることができる。装飾シートに立体感を付与することができる。装飾シートの看者に、第一模様の連続的な変化を視覚及び触覚によって感じさせることができる。装飾シートを表地とした製品で、デザインの自由度を高めることができる。
【0009】
装飾シートは、前記繊維質基材の表面を装飾する第二模様を含み、前記第二模様は、明度、色相及び彩度の一部又は全部が連続して変化するグラデーションを含む、ようにしてもよい。この場合、前記第一模様と前記第二模様とは、隣り合う状態で、前記繊維質基材の表面に配置される、ようにしてもよい。この他、前記第一模様と前記第二模様とは、重なり合う状態で、前記繊維質基材の表面に配置される、ようにしてもよい。
【0010】
この構成によれば、デザインのバリエーションを豊かにすることができる。2個の異なる第一模様と第二模様で、立体感を表現することができる。第一模様と第二模様を隣り合う状態で配置した場合、第一模様から第二模様への変化又は第二模様から第一模様への変化を滑らかな印象とすることができる。第一模様と第二模様を重なり合う状態で配置した場合、立体感を強調することが可能となる。
【0011】
本発明の他の側面は、上述した何れかの装飾シートを表地とした座席である。この座席によれば、上述した機能を奏する座席とすることができる。
【0012】
この座席によれば、座席の質感を向上させることができる。座席に立体感を付与することができる。2個の異なる第一模様と第二模様で、立体感を表現することができる。座席の看者に、第一模様の連続的な変化を視覚及び触覚によって感じさせることができる。座席で、デザインの自由度を高め、デザインのバリエーションを豊かにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、製品の意匠性を向上させることが可能な装飾シートと、意匠性を有する座席を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】装飾シートの概略構成の一例を示す斜視図である。第一模様の部分拡大図を示す。
図2】装飾シートの概略構成の他の例を模式的に示す斜視図である。
図3】複数の凸部の各高さの変化の状態を示す図である。上段は、図2に示すA-A線部分断面図である。中段及び下段は、図2に示すB-B線部分断面図である。中段の図示範囲は、第二方向の中心から第三側である。下段の図示範囲は、第二方向の中心から第四側である。
図4】傾斜角の評価に関するサンプル1,2の部分断面写真である。サンプル1,2で測定対象とした範囲の一部を示す。上段は、図1に示す装飾シートに対応するサンプル1の断面を示す。下段は、図9に示す装飾シートに対応するサンプル2の断面を示す。
図5】L表色系による第二模様の色の評価に関するサンプル1の表面の一部を示す写真である。第二模様における色の測定位置を示す。
図6】複数の凸部が1列に配列された第一模様を模式的に示す斜視図である。
図7】装飾シートの概略構成の更に他の例を模式的に示す斜視図である。
図8】装飾シートの概略構成の更に他の例を模式的に示す斜視図である。
図9】装飾シートの概略構成の更に他の例を示す斜視図である。第一模様の外縁領域の部分拡大図を示す。
図10】複数の凸部の各高さの変化の状態を示す図である。図9に示す装飾シートに対応する装飾シートを、図9に示すC-C線又はD-D線の位置に対応する各位置で切断した場合の模式的な部分断面図である。
図11】装飾シートの概略構成の更に他の例を模式的に示す斜視図である。
図12】装飾シートの概略構成の更に他の例を模式的に示す斜視図である。
図13】装飾シートの概略構成の更に他の例を模式的に示す斜視図である。
図14】装飾シートの概略構成の更に他の例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための実施形態について、図面を用いて説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略し又は他の構成等に置換してもよい。他の構成を含むようにしてもよい。
【0016】
<装飾シート>
装飾シート10について、図1図3を参照して説明する。装飾シート10は、所定の製品の表面に設けられる。例えば、装飾シート10は、所定の製品の表地となる。前述の製品としては、座席が例示される。座席には、輸送機器に設けられるシートが含まれる。例えば、座席には、カーシートが含まれる。更に、座席には、ソファーと椅子が含まれる。装飾シート10は、前述の各製品以外の製品の表地であってもよい。この他、装飾シート10は、カバー類の素材となる。カバー類は、所定の製品に被せられる。カバー類としては、シートカバーが例示される。シートカバーは、座席に装着される。更に、装飾シート10は、例えば、各種の内装材、床材、建材、鞄の素材、靴の素材又は衣料の素材として用いることもできる。前述の内装材としては、車両用又は建築用の内装材が例示される。車両用の内装材としては、天井材、ドア材又はフロア材が例示される。建築用の内装材としては、クロスが例示される。クロスは、建築物の内壁又は天井に貼り付けられる。建材としては、前述した建築用の内装材の他、外壁材が例示される。
【0017】
装飾シート10は、繊維質基材20と、第一模様30と、第二模様40を含む(図1及び図2参照)。繊維質基材20は、繊維を含み、表面が合成樹脂により被覆されたシート状の基材である。即ち、実施形態では、装飾シート10は、所定の製品の表地となる繊維質のシート材、又は所定の製品の表地とされた繊維質のシート材である。装飾シート10が上述した座席の表地である場合、又は上述した所定の製品の素材若しくは所定の製品として用いられる場合、繊維質基材20としては、例えば、皮革が採用される。皮革には、合成皮革と人工皮革と塩化ビニルレザーと天然皮革が含まれる。繊維質基材20としては、製品に応じた所定の素材が適宜選択される。この場合、繊維質基材20としては、表面が合成樹脂で被覆されていない繊維質の基材が選択されてもよい。このような繊維質基材20としては、布帛が例示される。布帛には、例えば、織物と編物と不織布が含まれる。更に、繊維質基材20は、例えば、紙製の基材又は紙を含む基材であってもよい。繊維質基材20が紙を含む基材である場合、紙の表面は、合成樹脂で被覆されていてもよい。繊維質基材20の表面は、所定の色とされる。例えば、背景色が黒色である装飾シート10を例とすると、繊維質基材20は、表面が黒色である繊維質基材としてもよい。繊維質基材20の表面色は、諸条件を考慮して適宜決定される。
【0018】
第一模様30と第二模様40は、共に繊維質基材20の表面を装飾する模様である(図1及び図2参照)。第一模様30と第二模様40は、繊維質基材20の表面に形成される。繊維質基材20の表面への第一模様30と第二模様40の形成には、例えば、記録方法が用いられる。即ち、第一模様30と第二模様40は、繊維質基材20の表面に記録される。記録方法によれば、繊維質基材20の表面にフルカラーの模様を記録することができる。記録方法は、例えば、インクジェット記録装置で実行される。インクジェット記録装置による記録方法については、後述する。
【0019】
第一模様30は、樹脂製の樹脂部31により形成される(図1及び図2参照)。樹脂部31は、繊維質基材20の表面に付着する。第一模様30は、繊維質基材20の表面からの樹脂部31の高さHが変化する領域を含む。装飾シート10では、樹脂部31は、樹脂製の複数の凸部31を含む。即ち、装飾シート10では、第一模様30は、樹脂部31としての複数の凸部31により形成される。複数の凸部31は、繊維質基材20の表面に付着する。複数の凸部31は、繊維質基材20の表面からの高さHが異なる複数種の凸部を含む。実施形態では、樹脂部31を複数の凸部31とし、複数の凸部31による第一模様30を例として説明する。凸部31として、四角錐の凸部を例示する。複数の凸部31は、樹脂部31の一実施形態である。従って、樹脂部31及び凸部31には、同じ符号「31」を付している。
【0020】
第一模様30では、複数の凸部31は、第一方向に配列される。更に、第一模様30では、複数の凸部31は、第二方向に配列される。例えば、図2に示す装飾シート10の第一模様30では、複数の凸部31は、第一方向に第一間隔W1で配列され(図3上段参照)、第二方向に第二間隔W2で配列される(図3中段及び下段参照)。即ち、複数の凸部31は、第一方向に隣り合う2個の凸部31が第一距離W1だけ離間した状態で、第一方向に配列される。更に、複数の凸部31は、第二方向に隣り合う2個の凸部31が第二距離W2だけ離間した状態で、第二方向に配列される。図3中段及び下段で、高さHが最も高い凸部31は、同じ凸部である。即ち、図3上中下の各段で、高さHが最も高い凸部31は、図2に示す複数の凸部31のうち、第一方向の第一側で第二方向の中心に設けられた高さHが最も高い凸部である。
【0021】
第一方向と第二方向は、繊維質基材20の表面内の任意の方向である。但し、第二方向は、第一方向に交差する方向である。図1では、第二方向は、第一方向に直交しない。図2並びに後述する図7図9及び図11図14では、第二方向は、第一方向に直交する。前述の各図における第一方向及び第二方向の関係は、例示である。繊維質基材20の表面内で、第一方向と第二方向の各向きは、第一模様30のデザインに応じて変化する。実施形態では、第一間隔W1と第二間隔W2は、同一寸法に設定されている。但し、第一間隔W1と第二間隔W2は、異なる寸法に設定されてもよい。
【0022】
複数の凸部31が高さHが異なる複数種の凸部を含む点に関し、図2に示す装飾シート10の第一模様30を例として、図3に基づき説明する。複数の凸部31の各高さHは、第一方向に沿って漸次変化する(図3上段参照)。更に、複数の凸部31の各高さHは、第二方向に沿って漸次変化する(図3中段及び下段参照)。即ち、図2及び図3に示す第一模様30では、その全体で、複数の凸部31の各高さHは、第一方向の第一側から第二側に向かうに従い漸次低くなり、第二方向の中心から第三側及び第四側の各側に向かうに従い漸次低くなる。
【0023】
図2及び図3に示す第一模様30では、複数の凸部31の各高さHは、次のように設定されている。即ち、第一方向に第一間隔W1で配列される複数の凸部31では、各凸部31の高さHは、各凸部31の頂部が所定の傾きの仮想直線L1に沿った高さとなる(図3上段参照)。第二方向の中心から第三側に第二間隔W2で配列される複数の凸部31では、各凸部31の高さHは、各凸部31の頂部が所定の傾きの仮想直線L2に沿った高さとなる(図3中段参照)。第二方向の中心から第四側に第二間隔W2で配列される複数の凸部31では、各凸部31の高さHは、各凸部31の頂部が所定の傾きの仮想直線L3に沿った高さとなる(図3下段参照)。図2及び図3に示す第一模様30では、仮想直線L1,L2,L3の傾斜角θが等しくなる模様を例示している(図3参照)。但し、このような例示とは異なり、第一模様30は、仮想直線L1,L2,L3の一部又は全部で傾斜角θが異なる態様としてもよい。第一方向及び/又は第二方向の各列又は所定の列の複数の凸部31に対する傾斜角θは、諸条件を考慮して適宜設定される。
【0024】
第二模様40は、明度、色相及び彩度の一部又は全部が連続して変化するグラデーションを含む。図2に示す装飾シート10では、第二模様40のグラデーションで色の変化する方向は、第一方向とされている。但し、第二模様40のグラデーションで色の変化する方向は、第一方向及び/又は第二方向とは異なる方向であってもよい。第二模様40を形成するグラデーションは、第二模様40をどのようなデザインとするかに応じて適宜決定される。第二模様40は、第一方向の第一側で第一模様30と隣り合う。即ち、第一模様30と第二模様40は、第一方向に隣り合う状態で、繊維質基材20の表面に配置される。
【0025】
<第一模様及び第二模様の評価>
発明者は、後述するような優れた効果が得られる実施形態の装飾シート10に関し、次の評価1,2を行った。評価1により、第二模様40との間で意匠の連続的な変化を表現可能な第一模様30で、複数の凸部31の各高さHが漸次変化する領域の傾斜角θを明らかにした。評価2により、第二模様40のグラデーションの色の変化を明らかにした。評価1,2は、図1に示す装飾シート10に対応するサンプル1に基づき行った。
【0026】
以下、サンプル1を対象とした評価1,2により得られた結果を説明する。その際、上記との対応を明らかにするため、実施形態の装飾シート10の各部に対応するサンプル1の各部には、上記で用いた符号と同じ符号を付して説明する。
【0027】
<評価1>
評価1では、サンプル1を対象として、複数の凸部31の各高さHが漸次変化する第一模様30の領域の傾斜角θを求めた。サンプル1では、第一模様30は、高さHが最高の凸部31と最低の凸部31の間で、各凸部31の高さHが漸次変化する領域を含む。例えば、高さHが最高の凸部31を基準とした場合、最高の凸部31から最低の凸部31の間では、各凸部31の高さHは、最低の凸部31の側に漸次低くなる。
【0028】
評価1では、最高及び最低の各凸部31の高さHを、次の方法にて測定した。その後、以下に示す式1から、傾斜角θを求めた。式1から明らかな通り、傾斜角θは、高さHが漸次変化する複数の凸部31の各頂部に沿った仮想直線の傾きに対応する。
<凸部の高さ測定方法>
手順1:サンプルを直線Kに沿って切断
手順2:サンプルの切断面を次の構成のマイクロスコープにて撮影
手順3:手順2の撮影画像を対象として最高及び最低の各凸部31の高さHを測定
<マイクロスコープ構成>
装置本体:株式会社キーエンス製 VHX-S15
レンズ:株式会社キーエンス製 VH-Z100
ディスプレイ:株式会社キーエンス製 VHX-200
【数1】
【0029】
手順1での切断は、カッターにて行った。直線K(図1参照)によって示される切断位置は、同一平面内で第一方向及び第二方向に交差する方向に沿った範囲とした。手順3での測定は、スケールを用いた目視による測定とした。測定の結果、サンプル1では、最高及び最低の各凸部31の高さHの差ΔHは、94.987μmであった(図4上段参照)。サンプル1では、最高及び最低の各凸部31間の距離Gは、90mmであった。従って、式1から、サンプル1の傾斜角θとして、0.06048°が得られた。図4下段のサンプル2及び発明者が好ましいと考える傾斜角θの範囲に関する説明は、後述する。
【0030】
<評価2>
評価2では、評価1と同様、サンプル1を対象として、第二模様40のL表色系におけるL値とa値とb値を測定した。L値は、明度指数と称される。a値とb値は、クロマティクネス指数と称される。a値とb値は、色相と彩度を示す色度に対応する。a値(+)は、赤方向を示し、a値(-)は、緑方向を示す。b値(+)は、黄方向を示し、b値(-)は、青方向を示す。L表色系は、国際照明委員会で規格化(CIE 1976)され、JISにおいても規定(JIS Z 8781-4)された色の表示方法である。従って、前述の測定は、JIS Z 8781-4に準拠した。
【0031】
値とa値とb値の測定には、コニカミノルタジャパン株式会社製の分光測色計(CM-2500d)を用いた。光源は、D65とした。観察視野は、10°とした。測定位置は、図5に示すサンプル1の位置P1~P4の4箇所とした。図5に示すサンプル1の表面領域は、図1に示す装飾シート10の表面の一部に対応する。その後、位置P1のL値を基準として、位置P2,P3,P4との明度差ΔLを、式2により求めた。位置P1のL値とa値とb値を基準として、位置P2,P3,P4との色差ΔEabを、式3により求めた。位置P1のa値とb値を基準として、位置P2,P3,P4との彩度差ΔCを、式4により求めた。式2~4で、L値とa値とb値に対する下付の符号「P1」は、位置P1のL値とa値とb値が代入されることを示す参照符号であり、L値とa値とb値に対する下付の符号「P2,P3,P4」は、位置P2,P3,P4の各位置のL値とa値とb値がそれぞれ代入されることを示す参照符号である。
【数2】
【数3】
【数4】
【0032】
評価2により得られた結果を表1に示す。
【表1】
【0033】
発明者は、表1に示す結果から、第二模様40のグラデーションとして、次のような態様が好ましいと考える。即ち、明度差ΔLの絶対値は、2以上とするとよい。色差ΔEabの絶対値は、8以上とするとよい。彩度差ΔCの絶対値は、6以上とするとよい。
【0034】
<記録方法>
インクジェット記録装置で実行される記録方法について、その概略を説明する。記録方法では、所定の種類のインクが用いられる。記録方法で用いられるインクとしては、活性エネルギー硬化型インクが例示される。活性エネルギー硬化型インクとしては、紫外線硬化型インクと電子線硬化型インクが例示される。活性エネルギー硬化型インクは、例えば、顔料と、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマーと、光重合開始剤を含み、更に必要に応じて添加剤を含む。活性エネルギー硬化型インクは、既に実用化されたインクである。従って、活性エネルギー硬化型インクに関するこの他の説明は、省略する。記録方法の説明では、インクは、紫外線硬化型インクとする。記録方法では、第一模様30と第二模様40に対応させた色のインクが用いられる。例えば、シアンとマゼンタとイエローとブラックのインクが用いられる。更に、シアンとマゼンタとイエローの淡色系である、ライトシアンとライトマゼンタとライトイエローのインクが用いられてもよい。この他、クリアのインクが用いられてもよい。
【0035】
インクジェット記録装置は、公知のインクジェット記録装置と同様、例えば、搬送部と、各色用のインクジェットヘッドと、照射部を備える。搬送部は、搬送面に載せ置かれた繊維質基材20を搬送する。各色用のインクジェットヘッドは、対応する色のインクを吐出する。各色のインクは、搬送部により搬送されている繊維質基材20の表面に着弾する。照射部は、インクが着弾した繊維質基材20の表面に紫外線を照射する。紫外線の照射に伴い、インクが硬化する。第一模様30では、硬化したインクは、繊維質基材20の表面に付着した状態で、樹脂製の凸部31となる。
【0036】
凸部31は、1個の凸部31を形成するインクの量を変化させることで、所定の高さHに形成される。凸部31の高さHを容易に変化させることができる。1個の凸部31を形成するインクの量は、例えば、繊維質基材20の表面の同一位置に着弾させるインクの滴数によって変化する。この他、1個の凸部31を形成するインクの量は、1回の吐出動作で吐出されるインクの体積によって変化する。例えば、凸部31の高さHを高くする場合、その凸部31を配置させる位置には、複数のインクが着弾され、又は体積の大きなインクが着弾される。体積の大きな複数のインクを、繊維質基材20の表面の同一位置に着弾させてもよい。インクジェット記録装置としては、公知のインクジェット記録装置が採用される。前述のようなインクの吐出動作も、公知の技術である。従って、インクジェット記録装置とインクの吐出動作に関するこの他の説明は、省略する。
【0037】
記録方法は、例えば、搬送工程と、記録工程と、照射工程を含む。搬送工程では、繊維質基材20が搬送される。その際、繊維質基材20は、各色用のインクジェットヘッドが設けられた位置を通過する。更に、繊維質基材20は、照射部が設けられた位置を通過する。記録工程と照射工程は、搬送工程の実行中に適宜実行される。
【0038】
記録工程では、各色のインクが各色用のインクジェットヘッドから繊維質基材20に適宜吐出される。各色用のインクジェットヘッドからの各色のインクの吐出は、次の画像データに従い制御される。前述の画像データは、第一模様30と第二模様40を含む画像に対応するデータである。各色用のインクジェットヘッドから吐出された各色のインクは、繊維質基材20の表面に着弾する。これに伴い、繊維質基材20の表面には、第一模様30と第二模様40が記録される。第一模様30が記録される場合、インクジェット記録装置では、凸部31の高さHに応じて、上述した吐出動作が実行される。照射工程では、照射部から紫外線が繊維質基材20の表面に照射される。紫外線の照射に伴い、繊維質基材20の表面に着弾した各色のインクが硬化する。このようにして、装飾シート10が製造される。
【0039】
インクジェット記録装置は、シリアル型又はライン型の何れであってもよい。第一模様30と第二模様40の記録に、電子線硬化型インクが用いられる場合、インクジェット記録装置には、電子線を照射する照射部が設けられる。照射工程では、上記同様、照射部から電子線が照射される。活性エネルギー硬化型インクが用いられない場合、インクジェット記録装置では、照射部は、省略される。記録方法では、照射工程は、省略される。
【0040】
<実施形態の効果>
実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
【0041】
(1)装飾シート10では、第一模様30が繊維質基材20の表面に形成される(図1及び図2参照)。第一模様30は、繊維質基材20の表面に付着した樹脂製の複数の凸部31により形成される。複数の凸部31は、第一方向及び第二方向に配列される。第一模様30では、複数の凸部31は、第一方向に一定の間隔で配列され、第二方向に一定の間隔で配列される(図1の部分拡大図及び図3参照)。第一模様30では、複数の凸部31の各高さHは、第一方向に沿って漸次変化する(図1の部分拡大図及び図3上段参照)。第一模様30では、複数の凸部31の各高さHは、第二方向に沿って漸次変化する(図1の部分拡大図と図3中段及び下段参照)。そのため、装飾シート10の質感を向上させることができる。装飾シート10に立体感を付与することができる。装飾シート10の看者に、第一模様30の連続的な変化を視覚及び触覚によって感じさせることができる。装飾シート10を表地とした製品で、デザインの自由度を高めることができる。装飾シート10により、製品の意匠性を向上させることができる。
【0042】
(2)装飾シート10では、第二模様40が繊維質基材20の表面に形成される(図1及び図2参照)。第二模様40は、明度、色相及び彩度の一部又は全部が連続的に変化するグラデーションを含む。第一模様30と第二模様40は、第一方向に隣り合う状態で、繊維質基材20の表面に配置される。そのため、デザインのバリエーションを豊かにすることができる。2個の異なる第一模様30と第二模様40で、立体感を表現することができる。第一模様30から第二模様40への変化又は第二模様40から第一模様30への変化を滑らかな印象とすることができる。
【0043】
<変形例>
実施形態は、次のようにすることもできる。以下に示す変形例のうちの幾つかの構成は、適宜組み合わせて採用することもできる。以下では、上記とは異なる点を説明することとし、同様の点についての説明は、適宜省略する。
【0044】
(1)第一模様30と第二模様40の形成には、インクジェット記録装置による記録方法が採用される。即ち、第一模様30と第二模様40は、インクジェット記録装置の各色用のインクジェットヘッドから吐出された各色のインクによって、繊維質基材20の表面に記録される。記録方法による第一模様30と第二模様40の形成に関し、インクジェット記録装置とは異なる記録装置を採用してもよい。記録方法は、例えば、捺染装置で実行されてもよい。捺染装置による記録方法によっても、上記同様、複数の凸部31(樹脂部31)による第一模様30とグラデーションを含む第二模様40を、繊維質基材20の表面に記録することができる。凸部31は、上記同様、インクの量を変化させることで、所定の高さHに形成される。
【0045】
捺染装置は、公知の記録装置であり、捺染装置による模様の記録は、既に実用化されている。従って、これらに関するこの他の説明は、省略する。この変形例では、捺染は、例えば、スクリーン捺染又はローラ捺染を意味する。この変形例の捺染は、インクジェット方式によるデジタル捺染を含まない。インクジェット方式によるデジタル捺染は、上述した、インクジェット記録装置による記録方法の記録工程での記録手法に含まれる。
【0046】
(2)第一模様30では、複数の凸部31は、第一方向に一定の間隔で配列され、第二方向に一定の間隔で配列される(図1の部分拡大図及び図3参照)。複数の凸部31の第一方向の間隔は、0に設定してもよい。即ち、複数の凸部31は、第一方向に隙間なく接した状態で配列されてもよい。複数の凸部31の第二方向の間隔は、0に設定してもよい。即ち、複数の凸部31は、第二方向に隙間なく接した状態で配列されてもよい。この他、複数の凸部31は、第一方向及び第二方向の一方又は両方で、一定の間隔で配列されなくてもよい。即ち、複数の凸部31は、第一方向及び/又は第二方向に任意の間隔で配列されてもよい。
【0047】
(3)凸部31として、四角錐の凸部を例示した(図2及び図3と後述する図7参照)。凸部31が四角錐である場合、底面の形状は、上記とは異なる形状としてもよい。即ち、底面の形状は、例えば、長方形、菱形、平行四辺形及び台形の何れであってもよい。凸部は、四角錐とは異なる錐状又は錐台状としてもよい(不図示)。凸部が四角錐以外の錐状又は錐台状である場合、底面の形状は、正多角形とし、又は正多角形ではない多角形としてもよい。この他、凸部31は、半球状としてもよい(図6参照)。更に、凸部31は、柱状としてもよい(図8参照)。即ち、凸部としては、繊維質基材20の表面から突出した各種の凸形状を採用することができる。凸部の形状は、第一模様をどのようなデザインとするかに応じて適宜決定される。
【0048】
(4)第一模様30では、複数の凸部31は、第一方向及び第二方向に配列される(図1の部分拡大図と図2及び図3参照)。第一模様30は、複数の凸部31が第一方向に1列に配置された模様としてもよい(図6参照)。
【0049】
第一模様30では、複数の凸部31の各高さHは、第一方向に沿って漸次変化する(図1の部分拡大図及び図3上段参照)。第一模様30では、複数の凸部31の各高さHは、第二方向に沿って漸次変化する(図1の部分拡大図と図3中段及び下段参照)。第一模様30は、複数の凸部31の各高さHが第一方向に沿って漸次変化し、第二方向に沿って漸次変化しない模様としてもよい(図7参照)。即ち、図7に示す装飾シート10の第一模様30では、第一方向及び第二方向に配列された複数の凸部31の各高さHは、第一方向の第一側から第二側に向かうに従い漸次低くなり、第二方向には同一高さとなる。
【0050】
この他、第一模様30は、複数の凸部31が直線的に配列されていない模様としてもよい。例えば、第一模様30は、複数の凸部31が同心円状に配置された模様としてもよい(図8参照)。この第一模様30では、複数の凸部31の各高さHは、径方向に沿って漸次変化する。即ち、同心円状に配置された複数の凸部31の各高さHは、径方向の中心側から外周側に向かうに従い漸次低くなる。換言すれば、径方向の中心寄りの円周上に配置された複数の凸部31程、高さHが高くなり、径方向の中心に位置する凸部31は、高さHが最も高い凸部となる。但し、径方向は、2次元の直交座標又は極座標の方向である。従って、図8に示す装飾シート10では、第一模様30は、少なくとも第一方向に沿って複数の凸部31の各高さHが変化し、又は第一方向及び第二方向に沿って複数の凸部31の各高さHが変化する模様であるともいえる。直交座標又は極座標では、第一方向と第二方向は、直交した関係として定義することもできる。
【0051】
更に、第一模様30は、図1図2図7及び図8に示す装飾シート10と同様、繊維質基材20の表面内のまとまった所定の領域に、複数の凸部31が散在した状態で配置された模様としてもよい。このような模様としては、シボ模様が例示される。第一模様30がシボ模様である装飾シート10について、図9及び図10図4下段を参照して説明する。図9に示す装飾シート10は、第二模様40を含まない。
【0052】
図9に示す装飾シート10では、第一模様30は、楕円状の模様である。従って、この第一模様30では、複数の凸部31は、繊維質基材20上の楕円状の領域に配置される。第一模様30がシボ模様である場合、複数の凸部31は、不規則な形状とされ、前述の楕円状の領域に不規則に配置される。図9に示す装飾シート10では、第一模様30は、内部領域と外縁領域に区別される。図9で、第一模様30内に示す2点鎖線は、第一模様30の外縁領域及び内部領域の境界部分を示唆する説明用の図示である。図9の部分拡大図では、前述の2点鎖線の図示は、省略されている。図9で、前述の境界部分の近傍から外縁領域に破線で示す直線Kは、評価1と同様の評価を行ったサンプル2の切断位置を示す説明用の図示である。この評価に関する説明は、後述する。
【0053】
図9に示す装飾シート10の第一模様30では、複数の凸部31の各高さHは、内部領域では変化せず、外縁領域では径方向に沿って漸次変化する(図10参照)。つまり、内部領域では、複数の凸部31は、同等の高さの凸部となる。外縁領域では、複数の凸部31は、上述した装飾シート10(図1図2図7及び図8参照)と同様、高さHが異なる複数種の凸部を含む。径方向については、上述した通りである。従って、図9に示す装飾シート10では、第一模様30は、少なくとも第一方向に沿って複数の凸部31の各高さHが変化し、又は第一方向及び第二方向に沿って複数の凸部31の各高さHが変化する模様であるともいえる。
【0054】
第一模様30の外縁領域では、複数の凸部31の各高さHは、各凸部31の頂部が所定の傾きの仮想直線L4又は仮想直線L5に沿った高さとなる(図10参照)。図9に示す装飾シート10の第一模様30では、仮想直線L4,L5の傾斜角θが等しくなる模様を例示している。但し、第一模様30は、仮想直線L4,L5の傾斜角θが異なる態様としてもよい。図10に示す例では、第一模様30は、隣り合う2個の凸部31の間に、繊維質基材20の表面が露出した部分を含まない。但し、第一模様30がシボ模様又はこれに類似した模様である場合についても、第一模様30は、例えば図3に示すように、隣り合う2個の凸部31の間で繊維質基材20の表面が露出した模様としてもよい。これとは反対に、上述した第一模様30(図1図2図7及び図8参照)は、繊維質基材20の表面が露出した部分を含まない模様としてもよい。
【0055】
図10は、上述した通り、図9に示すC-C線又はD-D線の位置に対応する各位置で、図9に示す装飾シート10を切断した場合に対応する模式的な断面図である。換言すれば、図10では、図9に示す装飾シート10との正確な同一性は、考慮されていない。即ち、図10は、図9に示す装飾シート10のC-C線断面図又はD-D線断面図に対応する断面図ではあるが、これらに一致した断面図ではない。
【0056】
図9に示す装飾シート10についても、図1及び図2に示す装飾シート10と同様、上述したような優れた効果が得られる。そこで、発明者は、図9に示す装飾シート10に対応するサンプル2を対象として、上述した評価1と同様の評価を行った。これにより、単独で意匠の連続的な変化を表現可能な第一模様30で、複数の凸部31の各高さHが漸次変化する領域の傾斜角θを明らかにした。上述した測定方法の手順1では、図9に示す直線Kの位置でサンプル2を切断し、手順2でこの切断面を撮影した。この他、この評価は、上述した評価1と同じ方法にて行った。従って、この評価の測定方法に関するこの他の説明は、省略する。
【0057】
測定方法の手順3での測定の結果、サンプル2では、最高及び最低の各凸部31の高さHの差ΔHは、62.235μmであった(図4下段参照)。サンプル2では、最高及び最低の各凸部31間の距離Gは、70mmであった。従って、上述した式1から、サンプル2の傾斜角θとして、0.05075°が得られた。発明者は、サンプル1,2を対象とした評価結果から、意匠の連続性の観点に基づいた好ましい傾斜角θの範囲を、次のように考える。即ち、発明者は、少なくとも「0.05075°≦傾斜角θ≦0.06048°」を含む所定の範囲を、好ましい傾斜角θの範囲と考える。
【0058】
(5)装飾シート10では、第一模様30と第二模様40は、繊維質基材20の表面に形成される(図1及び図2参照)。第一模様30と第二模様40は、隣り合う状態で、繊維質基材20の表面に配置される。装飾シート10では、第一模様30と第二模様40は、重なり合う状態で、繊維質基材20の表面に配置されてもよい(図7及び図8参照)。2個の異なる第一模様30と第二模様40で、立体感を表現することができる。立体感を強調することが可能となる。第一模様30と第二模様40が重なり合う領域は、第一模様30の一部と第二模様40の一部としてもよい(図7参照)。この場合、第一模様30と第二模様40は、第一模様30と第二模様40が連続する部分で重なり合う。第一模様30から第二模様40への変化又は第二模様40から第一模様30への変化を滑らかな印象とすることができる。図8に示す装飾シート10では、第一模様30の全体が第二模様40と重なり合う。第一模様30と第二模様40による複合的な模様とすることができる。立体感を強調することが可能となる。
【0059】
第一模様30と第二模様40を重なり合う状態とする場合、第一模様30と第二模様40の重なり順は、諸条件を考慮して適宜決定される。図7に示す装飾シート10では、第一模様30が背面側とされ、第二模様40が前面側とされている。この場合、複数の凸部31のうち、一部の凸部31は、表面が第二模様40のグラデーションで模様付けされた状態となる。図8に示す装飾シート10では、第一模様30が前面側とされ、第二模様40が背面側とされている。この場合、複数の凸部31は、クリア材質による樹脂製としてもよい。繊維質基材20の表面に第一模様30と第二模様40が設けられる装飾シート10では、前述の前面側は、装飾シート10の表面側であり、背面側は、繊維質基材20の表面側である。
【0060】
装飾シートでは、複数の第一模様30を設けてもよい。装飾シートでは、複数の第二模様40を設けてもよい。複数の第二模様40が設けられる場合、複数の第二模様40の1個は、第一模様30と隣り合う状態で、繊維質基材20の表面に配置され、複数の第二模様40の他の1個は、第一模様30と重なり合う状態で、繊維質基材20の表面に配置されてもよい。この他、第二模様40は、省略してもよい(図9参照)。この場合、繊維質基材20の表面は、第一模様30によって装飾される。装飾シートは、繊維質基材20の表面を装飾する模様として、第一模様30と、第三模様を含むようにしてもよい。第三模様は、グラデーションを含まない各種の模様を含む。第三模様は、繊維質基材20の表面で、第一模様30に対して、第二模様40と同様の各位置に適宜配置されてもよい。更に、装飾シートは、繊維質基材20の表面を装飾する模様として、第一模様30と、第二模様40と、前述の第三模様を含むようにしてもよい。第二模様40と第三模様は、繊維質基材20の表面で、第一模様30に対して、所定の各位置に適宜配置するとよい。
【0061】
(6)第一模様30は、樹脂部31として、複数の凸部31を含む(図1図2及び図7図9参照)。第一模様30では、樹脂部31は、複数の凸部31を含まない樹脂製の構成としてもよい。例えば、第一模様30は、複数の凸部31を含まない図11図14に示すような一体的な樹脂部31により形成されてもよい。図11及び図12に示す装飾シート10では、第一模様30は、格子状の樹脂部31により形成される。図13及び図14に示す装飾シート10では、第一模様30は、単一又は複数の傾斜した平面による樹脂部31により形成される。図11及び図13に示す第一模様30では、繊維質基材20の表面からの樹脂部31の高さHは、繊維質基材20の表面上で、第一方向及び第二方向に沿って漸次変化する。図12及び図14に示す第一模様30では、繊維質基材20の表面からの樹脂部31の高さHは、繊維質基材20の表面上で、第一方向に沿って漸次変化し、第二方向に沿って漸次変化しない。複数の凸部31を含まない樹脂部31では、表面の形状は、曲面状としてもよい。
【0062】
図11図14に示す装飾シート10では、第一模様30と第二模様40は、上述した図7に示す装飾シート10と同様の配置及び重なり順とされている。但し、第一模様30が複数の凸部31を含まない樹脂部31により形成される場合についても、第一模様30と第二模様40は、図8に示すような状態で、重なり合うようにしてもよい。この他、第一模様30と第二模様40は、例えば、図1及び図2に示す装飾シート10と同様、隣り合う状態で、繊維質基材20の表面に配置されてもよい。第一模様30と第二模様40の配置又は第一模様30と第二模様40の配置及び重なり順は、諸条件を考慮して適宜決定される。例えば、前述の決定には、装飾シート10に対して求められるデザインが考慮される。
【0063】
(7)第一模様30では、樹脂部31(複数の凸部31)の高さHは、第一方向に沿って、又は第一方向及び第二方向に沿って、漸次変化する(図1の部分拡大図、図3図6図8図9の部分拡大図、図11図14参照)。第一模様では、樹脂部(複数の凸部)の高さは、漸次変化しなくてもよい。例えば、第一模様は、樹脂部(複数の凸部)の高さが第一方向の第一側から第二側に向かうに従い漸次低くなる領域を含むが、その途中の所定の位置又は領域で、樹脂部(複数の凸部)の高さが、一旦、高くなるような態様であってもよい。第一模様における樹脂部(複数の凸部)の高さの変化の態様は、第一模様をどのようなデザインとするかに応じて適宜決定される。
【0064】
(8)装飾シート10は、繊維質基材20を含み、繊維質基材20の表面には、第一模様30と第二模様40が形成される(図1図2図7図9及び図11図14参照)。装飾シートでは、繊維質基材は、第一繊維質基材と第二繊維質基材を繋ぎ合わせた構成としてもよい。この場合、装飾シートでは、第一模様30は、第一繊維質基材の表面に形成されてもよい。第二模様40は、第二繊維質基材の表面に形成されてもよい。第一繊維質基材と第二繊維質基材は、例えば、縫製されて繋ぎ合わされる。但し、第一繊維質基材と第二繊維質基材は、縫製とは異なる手法にて繋ぎ合わされてもよい。第一繊維質基材と第二繊維質基材は、第一模様30と第二模様40が上述した各配置となる状態で繋ぎ合わされる。
【0065】
(9)上述した実施形態によれば、例えば、次のような座席を特定することもできる。即ち、製品としての状態で、繊維質基材の表面に第一模様と第二模様が形成された座席を特定することもできる。この座席は、繊維質基材と、第一模様と、第二模様を含む。繊維質基材は、上記の繊維質基材20と同様、繊維質の基材である。繊維質基材は、表面が合成樹脂により被覆されたシート状の基材であってもよい。座席は、複数の繊維質基材によって形成されてもよい。第一模様は、上記の第一模様30と同様、繊維質基材の表面を装飾し、樹脂製の樹脂部を含む。樹脂部は、上記の樹脂部31と同様、繊維質基材の表面に付着する。樹脂部は、上記の樹脂部31と同様、樹脂製の複数の凸部を含んでもよい。この場合、複数の凸部は、上記の複数の凸部31と同様、繊維質基材の表面に付着する。第一模様では、繊維質基材の表面からの樹脂部(複数の凸部)の高さは、繊維質基材の表面上で変化する。第二模様は、上記の第二模様40と同様、繊維質基材の表面を装飾し、明度、色相及び彩度の一部又は全部が連続して変化するグラデーションを含む。
【0066】
この座席では、第一模様と第二模様は、上述した装飾シート10での第一模様30と第二模様40と同様の状態で、適宜配置される。例えば、この座席では、第一模様と第二模様は、隣り合う状態で配置される。第一模様と第二模様が隣り合う方向は、第一模様で、樹脂部(複数の凸部)の高さが変化する方向としてもよい。但し、この座席でも、第一模様と第二模様は、重なり合う状態で配置されてもよい。この場合、重なり順は、上記同様とされる。座席が複数の繊維質基材により形成される場合、第一模様と第二模様は、同一の繊維質機材の表面に形成されてもよく、又は異なる繊維質基材の表面にそれぞれ形成されてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 装飾シート、 20 繊維質基材、 30 第一模様、 31 樹脂部,凸部
40 第二模様、 H 高さ、 L1,L2,L3,L4,L5 仮想直線
W1 第一間隔,第一距離、 W2 第二間隔,第二距離、 θ 傾斜角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14