(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】プレスシステム
(51)【国際特許分類】
B21D 43/09 20060101AFI20220530BHJP
B30B 15/14 20060101ALI20220530BHJP
B30B 15/30 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
B21D43/09 F
B30B15/14 A
B30B15/30 107
(21)【出願番号】P 2017182584
(22)【出願日】2017-09-22
【審査請求日】2020-08-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】394019082
【氏名又は名称】コマツ産機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桜井 均
(72)【発明者】
【氏名】山崎 広陽
(72)【発明者】
【氏名】桶谷 篤夫
(72)【発明者】
【氏名】南 俊宏
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013093(JP,A)
【文献】特開2006-192458(JP,A)
【文献】特開2015-100807(JP,A)
【文献】特開2016-123990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/09
B30B 15/14
B30B 15/30
B30B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、前記電動モータによる回転運動を昇降方向運動に変換する偏心機構と、上金型を装着可能で、前記偏心機構を介して昇降駆動するスライドと、下金型を装着可能なボルスタとを有し、前記ボルスタに対する前記スライドの昇降動作によってワークをプレス加工する、プレス部と、
前記ワークを搬送する搬送部と、
前記プレス部および前記搬送部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、所定のプレスモーションに基づき、プレス加工一回毎に、前記電動モータを交互に正逆回転させて、前記スライドを昇降駆動し、
前記ワークを前記上金型と干渉せず搬送可能な前記スライドの位置が送り可能高さであり、前記送り可能高さよりも高く、前記スライドの上死点よりも低い、前記プレスモーションの最高位置が待機高さであり、
前記制御部は、前記スライドが前記送り可能高さと
前記上死点よりも低い位置にある前記待機高さとの間を移動している間に、前記ワークの搬送も行なっている、プレスシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記電動モータの減速中に、前記搬送部による前記ワークの搬送を開始する、請求項1に記載のプレスシステム。
【請求項3】
前記制御部は、前記スライドが前記送り可能高さから前記待機高さまでの間を移動している間に、前記搬送部による前記ワークの搬送を開始する、請求項1に記載のプレスシステム。
【請求項4】
前記制御部は、前記スライドの上昇時に前記送り可能高さを通過してから前記電動モータの減速を開始する、請求項2または3に記載のプレスシステム。
【請求項5】
前記制御部は、前記電動モータの加速中に、前記搬送部による前記ワークの搬送を完了する、請求項1に記載のプレスシステム。
【請求項6】
前記制御部は、前記スライドが前記待機高さから前記送り可能高さまでの間を移動している間に、前記搬送部による前記ワークの搬送を完了する、請求項1に記載のプレスシステム。
【請求項7】
前記制御部は、前記スライドの下降時に前記送り可能高さを通過する前に前記電動モータの加速を完了する、請求項5または6に記載のプレスシステム。
【請求項8】
前記搬送部は、前記ワークの搬送が完了していることを検出する送り完了検出部を有し、
前記制御部は、前記スライドの前記昇降方向において前記送り可能高さよりも高く前記待機高さよりも低い位置に、監視位置を設定し、
前記制御部は、前記待機高さから下降する前記スライドが前記監視位置に到達した時点で前記ワークの搬送完了が検出されていない場合に、前記送り可能高さよりも高い位置で前記スライドを停止できるように、前記待機高さおよび前記監視位置を設定する、請求項5~7のいずれか1項に記載のプレスシステム。
【請求項9】
前記電動モータは、サーボモータである、請求項1~8のいずれか1項に記載のプレスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプレスにおいて、クランク軸がサーボモータによって回転されるときの回転モーションを設定する方法が、たとえば特開2013-184222号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のサーボプレスにおいて、振子モーションで運転されるスライドの動作と、フィーダの動作とは、交互に行なわれている。一方、サーボプレスでは、さらなる生産速度の向上が求められている。
【0005】
本発明の目的は、生産速度を向上できるプレスシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来のサーボプレスでは、振子モーションの場合、ワークを金型と干渉させず搬送可能な下限位置をスライドの停止位置とし、スライドの移動距離を最短にすることで、生産速度を向上する方策が採られていた。本発明者らは、サーボプレスの生産速度をさらに向上させるための検討を進める上で、スライドの停止位置を上方に移動させてスライドの移動距離を長くすることで生産速度の向上を実現できることを見出し、本発明を以下のような構成とした。
【0007】
すなわち、本発明に係るプレスシステムは、プレス部と、搬送部と、制御部とを備えている。プレス部は、電動モータと、偏心機構と、スライドと、ボルスタとを有している。偏心機構は、電動モータによる回転運動を昇降方向運動に変換する。スライドは、上金型を装着可能であり、偏心機構を介して昇降駆動する。ボルスタには、下金型を装着可能である。プレス部は、ボルスタに対するスライドの昇降動作によってワークをプレス加工する。搬送部は、ワークを搬送する。制御部は、プレス部および搬送部を制御する。制御部は、所定のプレスモーションに基づき、スライドを昇降駆動する。ワークを上金型と干渉せず搬送可能なスライドの位置が送り可能高さであり、送り可能高さよりも高く、プレスモーションの最高位置が待機高さである。制御部は、スライドが送り可能高さと待機高さとの間を移動している間に、ワークの搬送も行なっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプレスシステムによれば、生産速度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に基づくプレスシステムの構成を説明する図である。
【
図2】実施形態に基づくプレス装置の斜視図である。
【
図4】プレス装置の別の要部を示す一部断面の平面図である。
【
図5】実施形態に基づくプレスシステムの駆動系の概要を説明する図である。
【
図6】実施形態に基づくCPUの機能ブロック図である。
【
図7】スライドが送り可能高さにあるときの金型およびワークの配置を示す模式図である。
【
図8】スライドがタッチ位置にあるときの金型およびワークの配置を示す模式図である。
【
図9】スライドが加工終了位置にあるときの金型およびワークの配置を示す模式図である。
【
図10】スライド位置パラメータの各位置に対応するメインシャフトの回転角度を説明する第1の図である。
【
図11】スライド位置パラメータの各位置に対応するメインシャフトの回転角度を説明する第2の図である。
【
図12】実施形態に基づくプレスシステムのモーション生成について説明するフロー図である。
【
図13】実施形態に基づくプレスシステムにより生成されたプレスモーションおよびフィーダモーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0011】
本例においては、プレス装置に関し、順送型のプレス装置を例に挙げて説明する。
<全体構成>
図1は、実施形態に基づくプレスシステムの構成を説明する図である。
図1に示されるように、プレスシステムは、アンコイラ100と、レベラーフィーダ(搬送部)200と、プレス装置(プレス部)10と、搬送コンベア120とを備えている。
【0012】
アンコイラ100には、コイル材(帯板)が巻き付けられている。本実施形態においては、ワーク(材料)としてコイル材をプレス加工する場合について説明する。アンコイラ100から巻き出されたコイル材が、レベラーフィーダ200を介して、プレス装置10に搬送される。
【0013】
レベラーフィーダ200は、アンコイラ100からプレス装置10に搬送するコイル材の送り高さの位置を調整するとともに、設定された搬送方向の動作条件(フィーダモーション)に従って、プレス装置10に対してコイル材を搬送する。
【0014】
プレス装置10は、レベラーフィーダ200から搬送されたコイル材をプレス加工する。
【0015】
搬送コンベア120は、プレス装置10においてプレス加工により成形されたワークを搬送する。たとえば、搬送コンベア120は、成形されたワークを次のプレス装置に搬送することも可能である。
【0016】
プレスシステムの各部は同期しており、一連の作業が順次連続して実行される。アンコイラ100からコイル材がレベラーフィーダ200を介してプレス装置10に搬送される。そして、プレス装置10でプレス加工され、加工されたワークは搬送コンベア120により搬送される。上記一連の処理が繰り返される。
【0017】
なお、上記プレスシステムの構成は、一例であり、特に当該構成に限られるものではない。
【0018】
レベラーフィーダ200は、プレス装置10からの指示に従って動作する。この点で、レベラーフィーダ200を制御する制御部は、プレス装置10に設けられる。
【0019】
なお、本例においては、レベラーフィーダ200を制御する制御部がプレス装置10に設けられる構成について説明するが、これに限られず、たとえば、プレス装置10を制御する制御部がレベラーフィーダ200側に設けられていても良い。プレス装置10およびレベラーフィーダ200を制御する制御部が、プレス装置10およびレベラーフィーダ200とは別の位置に配置され、プレス装置10およびレベラーフィーダ200は遠隔操作される仕様であってもよい。実施形態においては、1つの制御部がレベラーフィーダ200およびプレス装置10をともに制御する場合について説明する。
【0020】
<プレス装置>
図2は、実施形態に基づくプレス装置10の斜視図である。
【0021】
図2に示されるように、一例としてプランジャが設けられていない順送型のプレス装置が示されている。
【0022】
プレス装置10は、本体フレーム2と、スライド20と、ベッド4と、ボルスタ5と、コントロールパネル6と、制御部40とを備えている。
【0023】
プレス装置10の本体フレーム2の略中央部には、スライド20が上下動自在に支承されている。スライド20に対する下方には、ベッド4上に取り付けられたボルスタ5が配置されている。本体フレーム2の側方には、制御部40が設けられている。本体フレーム2の側方の、制御部40に対して前方には、制御部40に接続されたコントロールパネル6が設けられている。
【0024】
スライド20の下面には、ワークを加工するための金型のうちの、上金型が着脱可能に装着されている。ボルスタ5の上面には、ワークを加工するための金型のうちの、下金型が着脱可能に装着されている。これらの金型に対応する所定のワークを下金型に位置させ、上金型をスライド20と共に降下させて、上金型と下金型との間にワークを挟み込んでプレス加工する。
【0025】
また、プレス装置10本体と通信可能に設けられた外部から遠隔操作可能なリモコン(リモート制御部)70が設けられている。オペレータ(運転者)はリモコン70を操作することにより各種の設定操作を行うことが可能である。リモコン70は、制御部40と通信し、リモコン70からの指示に従ってプレス装置10を動作させることが可能である。
【0026】
本例においては、リモコン70において、スライド20を上下動作させることが可能な上ボタン72および下ボタン74と、決定ボタン76とが設けられている場合が示されている。
【0027】
コントロールパネル6は、プレス装置10を制御するために必要な各種データを入力するものであり、データを入力するためのスイッチやテンキー、および設定画面やプレス装置10から出力されるデータを表示する表示器を有している。
【0028】
表示器としては、透明タッチスイッチパネルを液晶表示器またはプラズマ表示器などのグラフィック表示器の前面に装着した、プログラマブル表示器が採用されている。
【0029】
このコントロールパネル6は、予め設定されたデータを記憶したIC(Integrated Circuit)カードなどの外部記憶媒体からのデータ入力装置、または無線や通信回線を介してデータを送受信する通信装置を備えていてもよい。
【0030】
本例においては、プレス装置10に対してコントロールパネル6およびリモコン70の双方が設けられる構成について説明するが、上記プレス装置10の構成は一例であって当該構成に限定されるものではない。プレス装置10に対して、たとえばコントロールパネル6およびリモコン70の一方のみが設けられてもよい。
【0031】
図3は、プレス装置10の要部を示す側断面図である。
図3に示されるように、プレス装置10は、サーボプレスである。
【0032】
プレス装置10は、サーボモータ121と、球面孔33Aと、ねじ軸37と、球体部37Aと、ねじ部37Bと、コンロッド本体38とを有している。さらに、プレス装置10は、雌ねじ部38Aと、コンロッド39と、メインシャフト110と、エキセン部110Aと、サイドフレーム111と、軸受部112~114と、メインギア115と、動力伝達軸116と、伝達ギア116Aと、軸受部117,118と、プーリ119とを有している。
【0033】
プレス装置10では、サーボモータ121によりスライド20を駆動している。サーボモータ121は、電動モータの一例である。スライド20の上部に形成された球面孔33A内には、ダイハイト調整用のねじ軸37の下端に設けられた球体部37Aが抜け止めされた状態で回動自在に挿入されている。球面孔33Aおよび球体部37Aにより、球状継手が構成されている。ねじ軸37のねじ部37Bは、上方に向けてスライド20から露出し、ねじ軸37の上方に設けたコンロッド本体38の雌ねじ部38Aに螺合している。ねじ軸37およびコンロッド本体38により、伸縮自在なコンロッド39が構成されている。
【0034】
なお、ダイハイトとは、スライド20を下死点に配置したときのスライド20の下面からボルスタ5の上面の距離をいう。
【0035】
コンロッド39の上部は、メインシャフト110に設けられたクランク状のエキセン部110Aに回動自在に連結されている。メインシャフト110は、本体フレーム2を構成する左右一対の厚板状のサイドフレーム111間において、前後3箇所の軸受部112,113,114で支承されている。メインシャフト110の後部側には、メインギア115が取り付けられている。
【0036】
メインギア115は、その下方に設けられた動力伝達軸116の伝達ギア116Aと噛合している。動力伝達軸116は、サイドフレーム111間において、前後2箇所の軸受部117,118で支承されている。動力伝達軸116の後端には、従動側のプーリ119が取り付けられている。プーリ119は、その下方に配置されたサーボモータ121により駆動される。
【0037】
プレス装置10は、ブラケット122と、出力軸121Aと、プーリ123と、ベルト124と、ブラケット125と、位置検出器126と、ロッド127と、位置センサ128と、補助フレーム129と、ボルト131,132とをさらに有している。
【0038】
サーボモータ121は、略L字形状のブラケット122を介してサイドフレーム111間に支持されている。サーボモータ121の出力軸121Aは、プレス装置10の前後方向に沿って突出しており、出力軸121Aに設けられた駆動側のプーリ123と従動側のプーリ119に巻回されたベルト124により動力が伝達される。
【0039】
また、スライド20の背面側には、上下2箇所からサイドフレーム111間に向けて後方に突出した一対のブラケット125が取り付けられている。上下のブラケット125間には、リニアスケールなどの位置検出器126を構成するロッド127が取り付けられている。このロッド127には、スライド20の上下位置を検出するためのスケールが設けられており、同じく位置検出器126を構成する位置センサ128に上下動自在に嵌挿されている。位置センサ128は、一方のサイドフレーム111に設けられた補助フレーム129に固定されている。
【0040】
補助フレーム129は、上下方向に縦長に形成されており、下部がボルト131によりサイドフレーム111に取り付けられ、上部が上下方向に長い長孔内に挿入されたボルト132により上下方向に摺動自在に支持されている。このように補助フレーム129は、上下いずれか一方側(本実施形態では下側)のみがサイドフレーム111に固定され、他方側が上下動自在に支持されているため、サイドフレーム111の温度変化による伸縮の影響を受けないようになっている。これにより、位置センサ128は、サイドフレーム111のそのような伸縮の影響を受けずに、スライド位置およびダイハイト位置を正確に検出可能としている。
【0041】
一方、スライド20のスライド位置およびダイハイトは、スライド20内に設けられたスライド位置調整機構133(
図4)によって調整される。
図4は、プレス装置10の別の要部を示す一部断面の平面図である。
【0042】
スライド位置調整機構133は、
図4に示されるように、球体部37Aの外周にピン37Cを介して取り付けられたウォームホイール134と、ウォームホイール134と噛合するウォームギア135と、ウォームギア135の端部に取り付けられた入力ギア136と、入力ギア136に噛合する出力ギア137(
図3)を有したインダクションモータ138とで構成される。インダクションモータ138は、軸方向長さが短いフラット形状とされ、コンパクトに構成されている。インダクションモータ138の回転動によりウォームホイール134を介してねじ軸37を回動させることが可能である。これによってねじ軸37のねじ部37Bとコンロッド本体38の雌ねじ部38Aとの螺合長さが変化し、スライド20のスライド位置およびダイハイトが調整される。
【0043】
<プレスシステムの駆動系の構成>
図5は、実施形態に基づくプレスシステムの駆動系の概要を説明する図である。
【0044】
図5に示されるように、レベラーフィーダ200は、搬送ローラ63と、サーボモータ62と、エンコーダ64と、送り完了検出部68と、サーボアンプ60とを含んでいる。
【0045】
プレス装置10は、制御部40と、サーボアンプ66と、サーボモータ121と、エンコーダ65と、メインギア115と、メインシャフト110と、エキセン部110Aと、スライド20と、上金型22Aと、下金型22Bと、ボルスタ5とを含んでいる。
【0046】
制御部40は、CPU(Central Processing Unit)42と、メモリ44と、通信回路46と、入力部48とを含んでいる。
【0047】
通信回路46は、リモコン70と通信可能に設けられている。
CPU42は、サーボアンプ60に目標値を出力する。サーボアンプ60は、目標値に基づいてサーボモータ62に速度指示する。搬送ローラ63は、サーボモータ62の駆動に従ってワークWの搬送動作を実行する。送り完了検出部68は、ワークWの搬送動作が完了しているか判断し、搬送動作が完了しておりワークWが停止していることを検出した場合には、その検出結果を送り完了信号としてCPU42に出力する。
【0048】
エンコーダ64は、サーボアンプ60に速度指示に従うサーボモータ62の回転数に応じたフィードバック信号を出力する。
【0049】
サーボアンプ60は、エンコーダ64からのフィードバック信号に基づいてサーボモータ62への電力供給を制御することによりサーボモータ62の回転数を目標値に従う値に調節する。
【0050】
当該処理によりCPU42は、ワークWの搬送動作における搬送速度を制御する。
また、同様に、CPU42は、サーボアンプ66に目標値を出力する。サーボアンプ66は、目標値に基づいてサーボモータ121に速度指示する。メインギア115は、サーボモータ121の駆動に従いメインシャフト110を駆動する。メインシャフト110の駆動に従って、エキセン部110Aは回動する。エキセン部110Aは、スライド20と連結されており、エキセン部110Aの回動動作に従い上金型22Aが装着されたスライド20は昇降動作する。エキセン部110Aは、サーボモータ121による回転運動をスライド20の昇降方向運動に変換する偏心機構を構成している。設定された昇降方向の動作条件(プレスモーション)に従ってスライド20が昇降駆動され、スライド20が下死点位置に下降することにより、上金型22Aと下金型22Bとの間に搬送されたワークWに対してプレス加工が実行される。
【0051】
上金型22Aは、スライド20に装着されており、スライド20の昇降動作に伴ってスライド20と一体に上下方向に往復移動する、可動金型である。下金型22Bは、ボルスタ5に装着されており、ボルスタ5上に載置され固定されている、固定金型である。ボルスタ5に対するスライド20の昇降動作によって、上金型22Aと下金型22Bとの間にワークWが挟み込まれ、ワークWがプレス加工される。
【0052】
エンコーダ65は、サーボアンプ66に速度指示に従うサーボモータ121の回転数に応じたフィードバック信号を出力する。
【0053】
サーボアンプ66は、エンコーダ65からのフィードバック信号に基づいてサーボモータ121への電力供給を制御することにより、サーボモータ121の回転数を目標値に従う値に調節する。
【0054】
当該処理によりCPU42は、スライド20の昇降動作における速度を制御する。
実施形態に基づくCPU42は、メモリ44に格納された制御データに基づいてレベラーフィーダ200(単にフィーダとも称する)による搬送動作とプレス装置10のスライド20の昇降動作とを同期させた処理を実行する。
【0055】
具体的には、メモリ44は、スライド20の昇降動作とレベラーフィーダ200によるワークの搬送動作とが関連付けられた制御データを記憶する。
【0056】
入力部48は、各種のパラメータの入力を受け付ける。本例においては、入力部48は、コントロールパネル6またはリモコン70を介して、パラメータの入力を受け付ける。オペレータは、コントロールパネル6のスイッチおよびテンキー、またはリモコン70の各ボタンを操作することにより、各種のパラメータを入力する。コントロールパネル6とリモコン70とは、実施形態の操作部を構成している。
【0057】
入力部48が受けるパラメータは、スライド20のボルスタ5に対する昇降方向における位置に関するスライド位置パラメータを含んでいる。入力部48が受けるパラメータは、レベラーフィーダ200の動作に関する搬送パラメータを含んでいる。
【0058】
<モーション生成>
次に、実施形態に基づくモーションの生成方法について説明する。
【0059】
図6は、実施形態に基づくCPU42の機能ブロック図である。
図6に示されるようにCPU42は、タッチ速度生成部51と、プレスモーション生成部53と、フィーダモーション生成部55と、モーション合成部56と、実行部58とを含んでいる。
【0060】
機能ブロック図の各々は、メモリ44に格納されている所定のアプリケーションプログラムをCPU42が実行することにより、各部(通信回路46など)と連携して実現される。
【0061】
タッチ速度生成部51は、入力部48に入力されたワークWの材質および板厚に基づいて、スライド20が下降して上金型22AがワークWに接触するときのスライド20の速度(タッチ速度)を設定する。
【0062】
プレスモーション生成部53は、入力部48に入力されたスライド位置パラメータに基づいて、プレスモーションを自動生成する。スライド位置パラメータは、送り可能高さと、タッチ位置と、加工終了位置とを含んでいる。
【0063】
フィーダモーション生成部55は、入力部48に入力された搬送パラメータに基づいて、フィーダモーションを自動生成する。搬送パラメータは、送り長さを含んでいる。
【0064】
モーション合成部56は、プレスモーション生成部53が生成したプレスモーションと、フィーダモーション生成部55が生成したフィーダモーションとを自動で合成して、合成モーションを自動生成する。
【0065】
送り可能高さは、搬送されるワークWに上金型22Aが干渉しないスライド20の位置の下限を示す。
図7は、スライド20が送り可能高さにあるときの金型およびワークWの配置を示す模式図である。スライド20が送り可能高さよりもボルスタ5から離れていれば、ワークWを上金型22Aと干渉せず搬送可能である。
【0066】
タッチ位置は、上金型22AがワークWに接触するときのスライド20の位置を示す。
図8は、スライド20がタッチ位置にあるときの金型およびワークWの配置を示す模式図である。ボルスタ5に向かって降下するスライド20がタッチ位置に到達するとき、下金型22B上に載置されているワークWに上金型22Aが接触する。
【0067】
加工終了位置は、ワークWのプレス加工が終了する時点でのスライド20の位置を示す。
図9は、スライド20が加工終了位置にあるときの金型およびワークWの配置を示す模式図である。ボルスタ5に向かって降下するスライド20が加工終了位置に到達すると、ワークWのプレス加工が終了する。
【0068】
送り長さは、ワークWの搬送方向における、ワークWのプレス加工終了後、次回のプレス加工開始前に、レベラーフィーダ200がワークWを搬送する長さを示す。レベラーフィーダ200により搬送されるワークWの搬送速度は、送り速度と称される。送り速度は、メモリ44に保存されている。または送り速度は、入力部48に入力される搬送パラメータに含まれていてもよい。
【0069】
プレスモーション生成部53がプレスモーションを生成すると、単位時間当たりの生産量を最大にするための運転モードが設定される。また、生産速度(単位:SPM(Shot per minute))が設定される。
【0070】
運転モードは、回転モーション、反転モーション、および振子モーションを含んでいる。
【0071】
回転モーションは、エキセン部110A(
図3)を一方向に1回転してスライド20を1サイクル駆動する運転モードである。
【0072】
反転モーションは、スライド20の上死点および下死点にそれぞれ対応するエキセン部110Aの回転角度の間に設定した所定の下限位置、上限位置に対応する2つの回転角度間で、下降行程と上昇行程とで反転駆動する運転モードである。
【0073】
振子モーションは、スライド20の下死点に対応するエキセン部110Aの下死回転角度からそれぞれ正転方向および逆転方向に所定角度離れた2つの回転角度を2つの上限位置とし、このうちの一方の上限位置から下死回転角度を通過して他方の上限位置まで一方向に回転駆動して、スライド20を下死点をはさんで往復駆動する運転モードである。
【0074】
実行部58は、モーション合成部56により生成された合成モーションに基づいて、レベラーフィーダ200の搬送動作およびプレス装置10のプレス加工を制御する。具体的には、実行部58は、合成モーションに基づいてサーボアンプ60,66にそれぞれサーボモータ62,121を駆動するための目標値を出力し、プレスモーションとフィーダモーションとが同期する同期処理を実行する。
【0075】
図10は、スライド位置パラメータの各位置に対応するメインシャフト110の回転角度を説明する第1の図である。
図10には、スライド20の上死点TDC、下死点BDC、待機高さP0、監視位置Pa、送り可能高さP1、タッチ位置P2、加工終了位置P3、飛び跳ね防止高さP4、送り可能高さP5、および待機高さP6に対応する、メインシャフト110の回転角度が示されている。
図10には、メインシャフト110が図中の時計回り方向に回転するときの、スライド位置パラメータの各位置が示されている。
【0076】
スライド20は、待機高さP0と待機高さP6とを上限位置として、下死点BDCをはさんで往復駆動する、振子モーションを運転モードとする。スライド20は、待機高さP0から降下を始め、監視位置Pa、送り可能高さP1、タッチ位置P2および加工終了位置P3を順に通過して下死点BDCに至り、下死点BDCから上昇して飛び跳ね防止高さP4、送り可能高さP5を順に通過して待機高さP6まで移動して停止する。待機高さP0,P6は上死点TDCよりは低い位置にあるため、スライド20が上死点TDCを通過することはない。
【0077】
図10に示されるように、待機高さP0は、送り可能高さP1よりも高い位置にある。待機高さP6は、送り可能高さP5よりも高い位置にある。待機高さP0,P6は、プレスモーションの最高位置である。監視位置Paは、スライド20の昇降方向において送り可能高さP1よりも高く待機高さP0よりも低い位置に、設定されている。
【0078】
加工終了位置P3は、下死点BDCよりも上方の位置として設定されている。降下するスライド20は、下死点BDCに到達するよりも前に、加工終了位置P3を通過する。
【0079】
飛び跳ね防止高さP4は、下死点BDCよりも上方の位置として設定されている。スライド20は、下死点BDCを通過した後に上昇を開始して、飛び跳ね防止高さP4を通過する。ワークWのプレス加工が終了した後に上金型22Aを上昇させるときにワークWが上金型22Aと下金型22Bとの間でバタつくことを防止できるように、加工終了位置P3から飛び跳ね防止高さP4まで移動する間のスライド20の速度は、低速に設定される。
【0080】
飛び跳ね防止高さP4は、ワークWの材質、板厚および加工方法の条件毎に、異なる位置が設定され得る。設定された飛び跳ね防止高さP4は、メモリ44(
図5)に保存されている。プレス加工されるワークWの材質、板厚、または加工方法を変更する場合に、当該ワークWに対応する飛び跳ね防止高さP4がメモリ44に保存されていなければ、加工を開始する前に複数回試行することにより、飛び跳ね防止高さP4が設定される。
【0081】
図11は、スライド位置パラメータの各位置に対応するメインシャフト110の回転角度を説明する第2の図である。
図11には、
図10と同様に、スライド20の上死点TDC、下死点BDC、待機高さP0、監視位置Pa、送り可能高さP1、タッチ位置P2、加工終了位置P3、飛び跳ね防止高さP4、送り可能高さP5、および待機高さP6に対応する、メインシャフト110の回転角度が示されている。
図11には、メインシャフト110が図中の反時計回り方向に回転するときの、スライド位置パラメータの各位置が示されている。
【0082】
図11に示す待機高さP0は、
図10に示すスライド20の停止位置である待機高さP6と同じ位置である。
図10,11に示す監視位置Pa、送り可能高さP1、タッチ位置P2、加工終了位置P3、飛び跳ね防止高さP4および送り可能高さP5は、
図10,11中の上死点TDCおよび下死点BDCを通る直線を対称軸として、線対称に設定されている。
図11に示す待機高さP6は、
図10に示すスライド20の移動開始位置である待機高さP0と同じ位置である。スライド20は、待機高さP0から降下を始め、監視位置Pa、送り可能高さP1、タッチ位置P2および加工終了位置P3を順に通過して下死点BDCに至り、下死点BDCから上昇して飛び跳ね防止高さP4、送り可能高さP5を順に通過して待機高さP6まで移動して停止する。
【0083】
図12は、実施形態に基づくプレスシステムのモーション生成について説明するフロー図である。
【0084】
図12に示されるように、まずステップS1において、入力部48へ各種パラメータを入力する。具体的には、オペレータは、コントロールパネル6またはリモコン70(
図2)を操作することにより、モーション生成のために必要な各パラメータを入力する。
【0085】
次にステップS2において、タッチ速度を設定する。具体的には、タッチ速度生成部51は、入力されたワークWの材質および板厚に基づいて、制御部40のメモリ44(
図5)に記憶されているワークWの材質毎のタッチ速度テーブルを参照して、タッチ速度を設定する。
【0086】
次にステップS3において、フィーダモーションを生成する。具体的には、フィーダモーション生成部55は、入力された送り長さおよび送り速度に基づいて、フィーダモーションを生成する。
【0087】
図13は、実施形態に基づくプレスシステムにより生成されたプレスモーションおよびフィーダモーションを示す図である。
図13(A)のグラフの横軸は時間を示し、縦軸はサーボモータ121による回転駆動に基づくメインシャフト110の角速度ωを示す。角速度ωmaxは、メインシャフト110の角速度の最大値として設定されている値を示す。角速度ω1は、ステップS2で設定されたタッチ速度に対応するメインシャフト110の角速度を示す。メインシャフト110が角速度ω1で回転することにより、スライド20の加工速度はタッチ速度に設定される。
図13(A)中には、待機高さP0、監視位置Pa、送り可能高さP1、タッチ位置P2、加工終了位置P3、飛び跳ね防止高さP4、送り可能高さP5および待機高さP6がプロットされている。
図13(B)のグラフの横軸は時間を示し、縦軸はワークWの搬送速度vを示す。
【0088】
図13(B)に示されるように、ワークWが停止した状態(搬送速度v=0)から、設定された送り速度に到達するまで、所定の加速度で加速する。送り速度に達した後、所定の加速度で減速することで設定された搬送長さだけワークWが搬送された時点において搬送速度v=0まで減速され得る位置まで、設定された送り速度でのワークWの搬送が継続する。搬送速度が増大または減少するときの加速度の所定値は、メモリ44に保存されている。
【0089】
ワークWは、設定された送り速度から所定の加速度で減速して、設定された搬送長さだけワークWが搬送された時点で搬送速度v=0になり、ワークWの搬送が完了する。以上のようにして、フィーダモーションが生成される。
【0090】
図12に戻って、次にステップS4において、プレスモーションを生成する。具体的には、プレスモーション生成部53は、入力された送り可能高さ(P1)、タッチ位置(P2)および加工終了位置(P3)、ならびにステップS2で設定されたタッチ速度に基づいて、プレスモーションを生成する。
【0091】
図13(A)に示されるように、待機高さP0はスライド20が停止している位置であり、そのため待機高さP0におけるメインシャフト110の角速度ωはゼロである。待機高さP0は、所定の加速度で加速することで送り可能高さP1に対応する回転角度において最大角速度ωmaxにまで加速され得る位置として、設定される。
【0092】
スライド20は、待機高さP0から下死点BDCへ向けて下降を開始し、メインシャフト110が最大角速度ωmaxに達するまで所定の加速度で加速する。メインシャフト110は、スライド20が送り可能高さP1を通過するときに、速度が最大角速度ωmaxに達する。スライド20は、最大の速度で送り可能高さP1を通過する。メインシャフト110は、スライド20の下降時に、スライド20が送り可能高さP1を通過する前に、加速を完了する。
【0093】
最大角速度ωmaxに達した後、所定の加速度で減速することでタッチ位置P2に対応する回転角度においてタッチ速度ω1にまで減速され得る位置まで、最大角速度ωmaxでのメインシャフト110の回転が継続する。メインシャフト110の最大角速度ωmaxおよび加減速するときの加速度の所定値は、メモリ44に保存されている。
【0094】
メインシャフト110は、最大角速度ωmaxから減速して、スライド20がタッチ位置P2に到達する時点で角速度ω1で回転する。その後、メインシャフト110は、スライド20が加工終了位置P3に到達するまで、等しい角速度ω1で回転する。これにより、スライド20は、タッチ位置P2から加工終了位置P3まで、タッチ速度で下降する。
【0095】
スライド20が加工終了位置P3に到達すると、メインシャフト110(およびスライド20)は加速を開始する。スライド20が加工終了位置P3と飛び跳ね防止高さP4との間を移動中は、ワークWのバタつきを防止するために、スライド20はタッチ速度よりも僅かに大きい速度で移動し、メインシャフト110は角速度ω1よりも僅かに大きい速度で回転する。
【0096】
スライド20が飛び跳ね防止高さP4に到達すると、メインシャフト110は、最大角速度ωmaxに到達するまで、所定の加速度で再加速する。最大速度ωmaxに達した後、スライド20が送り可能高さP5に到達するまで、最大角速度ωmaxでのメインシャフト110の回転が継続する。スライド20は、最大の速度で送り可能高さP5を通過する。
【0097】
スライド20が送り可能高さP5を通過すると、メインシャフト110は、最大角速度ωmaxから所定の加速度で減速する。メインシャフト110は、スライド20の上昇時に、送り可能高さP5を通過してから、減速を開始する。メインシャフト110は、スライド20が待機高さP6に到達する時点で、回転を停止する。スライド20は、待機高さP6の位置で、停止する。待機高さP6は、送り可能高さP5に対応する回転角度から所定の加速度で減速することで角速度ゼロにまで減速される位置として、設定される。以上のようにして、プレスモーションが生成される。
【0098】
次にステップS5において、合成モーションを生成する。具体的には、モーション合成部56は、ステップS3で生成されたフィーダモーションと、ステップS4で生成されたプレスモーションとを合成して、合成モーションを生成する。
【0099】
図13に示されるように、スライド20が最高速で送り可能高さP5を通過した後、ワークWの搬送を開始する。スライド20が送り可能高さP5を通過する時点では、ワークWの搬送速度v=0である。ワークWの搬送を開始する時点で、スライド20は、送り可能高さP5から待機高さP6までの間を移動している。スライド20が送り可能高さP5と待機高さP6との間を搬送している間に、ワークWの搬送も行なわれる。スライド20の減速中に、レベラーフィーダ200によるワークWの搬送が開始される。
【0100】
待機高さP6で停止したスライド20は、所定時間後、降下を開始する。スライド20が待機高さP6に到達したときに回転を停止したメインシャフト110は、所定時間後、逆方向への回転を開始する。
【0101】
ワークWが所定の加速度および設定された送り速度で送り長さだけ通常通り搬送されるときの、ワークWの搬送開始から送り完了までに経過する時間は、フィーダ移動時間と称される。メインシャフト110は、フィーダ移動時間が経過した時点からプレス待ち時間(マージン)ts経過後、スライド20が監視位置Paに到達するように、回転を開始する。レベラーフィーダ200は、スライド20の加速中に停止される。ワークWは、待機高さP0から降下するスライド20が送り可能高さP1よりも高い位置である監視位置Paに到達する時点よりもプレス待ち時間(マージン)ts前に、送り完了している。スライド20が送り可能高さP1に到達する時点で、ワークWは送り完了している。
【0102】
このようにして、ワークWの搬送動作と上金型22Aの昇降動作との干渉が起こらない合成モーションが生成される。
【0103】
監視位置Paの設定手法について説明する。
図14は、監視位置Paの設定手法を示す図である。
図14(A)(B)のグラフの横軸は時間を示す。
図14(A)のグラフの縦軸はスライド20の位置Pを示す。
図14(B)のグラフの縦軸はサーボモータ121による回転駆動に基づくメインシャフト110の角速度ωを示す。
【0104】
図14(A)中の実線は、時刻Taまで所定の加速度で加速しながら下降し、時刻Taでスライド20の強制停止を開始した場合のスライド20の位置を示し、
図14(B)中の実線は、時刻Taまで所定の角加速度で加速しながら回転し、時刻Taでメインシャフト110の回転の強制停止を開始した場合のメインシャフト110の角速度を示す。
図14(A)中の破線は、通常の動作でスライド20が降下する場合の、時刻Ta以降のスライド20の位置を示し、
図14(B)中の破線は、通常の動作でメインシャフト110が回転する場合の、時刻Ta以降のメインシャフト110の角速度を示す。
【0105】
上述した通り、待機高さP0はスライド20が停止している位置であり、そのため待機高さP0におけるメインシャフト110の角速度ωはゼロである。メインシャフト110は、スライド20が送り可能高さP1を通過するときに最大角速度ωに達するように、所定の加速度で加速する。時刻Taにおいて、
図14(A)に示すように、スライド20は監視位置Paに到達する。
【0106】
スライド20が待機高さP0から下降して監視位置Paに到達した時刻Taの時点で、制御部40は、ワークWの送り完了が検出されているかどうかを判断する。つまり制御部40は、スライド20が待機高さP0から下降を開始してから所定時間後の時刻Taの時点で、送り完了検出部68(
図5)からワークWの搬送が完了していることを示す送り完了信号の入力を受けているかどうかを判断する。
【0107】
時刻TaにおいてワークWの送り完了が検出されていない場合に、制御部40は、スライド20を強制停止させる。
図14(B)に示すように、メインシャフト110は、時刻Ta以降、所定の加速度で減速する。時刻Tbにおいて、メインシャフト110は回転を停止し
図14(B)に示す角速度ωがゼロになり、スライド20が停止する。スライド20が停止する停止位置Pbは、
図14(A)に示すように、送り可能高さP1よりも高い位置である。
【0108】
このように、待機高さP0から下降を開始し監視位置Paに到達したスライド20が、ワークWの送り完了が検出されていない場合に、監視位置Paにおいて減速を開始して送り可能高さP1よりも高い停止位置Pbで停止できるように、監視位置Paが設定される。
【0109】
図12に戻って、次にステップS6において、生成された合成モーションに従って、ワークWを加工する。実行部58は、生成された合成モーションに基づいて、ワークWのプレス加工を実行する。
【0110】
次にステップS7において、ステップS5で生成された合成モーションに基づくワークWの加工時の結果が、適切であるか否かを判断する。たとえば、サーボモータ121の電流値からメインシャフト110の回転に要するトルクを算出し、当該トルクが許容値を超えている場合、加工時の結果が不適であると判断される。またたとえば、加工時に発生する振動を測定し、その振動が許容値を超えている場合、加工時の結果が不適であると判断される。トルクまたは振動などの許容値は、メモリ44に保存されている。
【0111】
加工時の結果が不適であると判断された場合(ステップS7においてNO)、次にステップS8において、合成モーションを修正する。たとえば、プレス加工中の速度(すなわち、スライド20のタッチ速度(メインシャフト110の角速度ω1))以外の速度を小さくする修正が行われる。
【0112】
合成モーションの修正後、ステップS6に戻り、修正された合成モーションに従って、ワークWを加工する。続いてステップS7において、修正された合成モーションに基づくワークWの加工時の結果が、適切であるか否かを判断する。
【0113】
加工時の結果が適切であると判断された場合(ステップS7においてYES)、ステップS9に進み、合成モーションがメモリ44に保存される。
【0114】
次にステップS10において、結果を出力する。スライド位置パラメータおよび搬送パラメータとして入力された値と、モーションの自動生成に伴って定められた設定および算出された値とが、コントロールパネル6の表示部に表示される。オペレータは、表示器の該当の画面を見ることによって、プレスシステムの運転状態を容易に把握することができる。
【0115】
そして、処理を終了する(エンド)。
<作用・効果>
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0116】
実施形態に基づくプレスシステムによれば、
図10,11に示すように、送り可能高さP1よりも高い位置にある待機高さP0が設定され、送り可能高さP5よりも高い位置にある待機高さP6が設定される。
図13に示すように、ワークWは、スライド20が送り可能高さP5と待機高さP6との間を移動している間に搬送を開始され、スライド20が待機高さP0と送り可能高さP1との間を移動している間に搬送を完了する。ワークWの搬送と、スライド20の移動とが、時間的に重なっている。
【0117】
スライド20を送り可能高さP1,P5で停止させる場合、送り可能高さP1,P5でスライド20の速度がゼロである必要がある。スライド20を停止させる位置を、送り可能高さP1,P5ではなく、送り可能高さP1,P5よりも高い待機高さP0,P6とすることで、送り可能高さP1,P5を通過する時点で、スライド20はゼロよりも大きい速度で移動している。これにより、スライド20が送り可能高さP1から下降する時間、および、スライド20が上昇して送り可能高さP5に到達するまでの時間を短縮できる。より具体的には、スライド20が送り可能高さP1から下死点BDCを経由して送り可能高さP5まで移動する時間を短縮できる。
【0118】
スライド20が送り可能高さP1を通過する前、およびスライド20が送り可能高さP5を通過した後は、金型と干渉することなくワークWを搬送できる。スライド20が下死点BDCから送り可能高さP5まで移動する時間が短縮されているので、ワークWの搬送を開始するタイミングを早めることが可能になる。プレス加工の1サイクルに要する時間が短縮されることにより、プレスシステムの生産速度を向上することができる。
【0119】
また
図13に示すように、メインシャフト110は、スライド20が送り可能高さP5を通過してから待機高さP6に到達するまでの間に、最大角速度ωmaxからゼロにまで減速している。したがってサーボモータ121も、スライド20が送り可能高さP5を通過してから待機高さP6に到達するまでの間に減速している。サーボモータ121の減速中に、レベラーフィーダ200によるワークWの搬送が開始される。
【0120】
このようにすれば、ワークWの搬送時間とスライド20の移動時間とを確実に重ねることができる。スライド20の移動距離を短くする観点からは送り可能高さP5により近い位置に待機高さP6を設定するのが望ましく、ワークWの搬送開始時点では既にサーボモータ121が減速している設定とすることで、より送り可能高さP5に近い待機高さP6にスライド20を容易に停止させることが可能になる。
【0121】
また
図13に示すように、メインシャフト110は、スライド20が送り可能高さP5を通過してから減速を開始している。したがって、スライド20の上昇時に、スライド20が送り可能高さP5を通過してから、サーボモータ121の減速を開始している。送り可能高さP5を通過する時点では、サーボモータ121は減速していない。スライド20は、最高速度で送り可能高さP5を通過する。このようにすれば、スライド20が送り可能高さP1から下死点BDCを経由して送り可能高さP5まで移動する時間を、確実に短縮することができる。
【0122】
また
図13に示すように、メインシャフト110は、スライド20が待機高さP0より移動を開始してから送り可能高さP1に到達するまでの間に、角速度ゼロから最大角速度ωmaxにまで加速している。したがってサーボモータ121も、スライド20の待機高さP0から送り可能高さP1までの移動中に加速している。サーボモータ121の加速中に、レベラーフィーダ200によるワークWの搬送が完了する。
【0123】
このようにすれば、ワークWの搬送時間とスライド20の移動時間とを確実に重ねることができる。スライド20の移動距離を短くする観点からは送り可能高さP1により近い位置に待機高さP0を設定するのが望ましく、ワークWの送り完了時点ではサーボモータ121は加速中であり最高速度未満の速度で移動する設定とすることで、より送り可能高さP1に近い待機高さP0からスライド20を降下させることが容易に可能になる。
【0124】
また
図13に示すように、メインシャフト110は、スライド20が送り可能高さP1を通過するよりも前に、加速を完了している。したがって、スライド20の下降時に、スライド20が送り可能高さP1を通過する前に、サーボモータ121の加速を完了している。送り可能高さP1を通過する時点では、サーボモータ121は最高速度に達している。スライド20は、最高速度で送り可能高さP1を通過する。このようにすれば、スライド20が送り可能高さP1から下死点BDCを経由して送り可能高さP5まで移動する時間を、確実に短縮することができる。
【0125】
また
図14に示すように、待機高さP0から下降するスライド20が監視位置Paに到達した時点でワークWの送り完了が検出されていない場合に、送り可能高さP1よりも高い停止位置Pbでスライド20を停止できるように、待機高さP0および監視位置Paが設定されている。これにより、ワークWの搬送に異状が発生した場合でも、ワークWと金型との干渉を確実に回避することができる。
【0126】
なおこれまでの説明においては、スライド20の運転モードが振子モーションである例について説明した。上述した実施形態の思想は、運転モードが振子モーションである場合に限られず、プレス加工時にサーボモータ121をワークWのプレス加工一回毎に交互に正逆回転させることによってスライド20をボルスタ5に対して昇降動作させる場合に、適用可能である。たとえば、運転モードが反転モーションである場合にも、上述した実施形態の思想を適用することが可能である。
【0127】
プレス装置は、実施の形態で説明した構成に限られるものではなく、たとえば、コンロッドとスライドとの間にプランジャとプランジャホルダとが介在する構成であってもよい。偏心機構は、クランクシャフト構造でもよいし、ドラム構造でもよい。
【0128】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0129】
2 本体フレーム、4 ベッド、5 ボルスタ、6 コントロールパネル、10 プレス装置、20 スライド、22A 上金型、22B 下金型、37 ねじ軸、38 コンロッド本体、39 コンロッド、40 制御部、42 CPU、44 メモリ、46 通信回路、48 入力部、51 タッチ速度生成部、53 プレスモーション生成部、55 フィーダモーション生成部、56 モーション合成部、58 実行部、60,66 サーボアンプ、61 表示器、62,121 サーボモータ、63 搬送ローラ、64,65 エンコーダ、68 送り完了検出部、70 リモコン、72,74 ボタン、76 決定ボタン、100 アンコイラ、110 メインシャフト、110A エキセン部、115 メインギア、200 レベラーフィーダ。