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▶ デルタ オブ スウェーデン アーベーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】モデリングコンパウンド
(51)【国際特許分類】
   C08L 3/00 20060101AFI20220530BHJP
   A63H 33/00 20060101ALI20220530BHJP
   C08K 3/20 20060101ALI20220530BHJP
   C08K 5/04 20060101ALI20220530BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20220530BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
C08L3/00
A63H33/00 F
C08K3/20
C08K5/04
C08K5/103
C08L83/04
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2017542021
(86)(22)【出願日】2016-02-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2016053196
(87)【国際公開番号】W WO2016128582
(87)【国際公開日】2016-08-18
【審査請求日】2019-02-12
【審判番号】
【審判請求日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】1502459.9
(32)【優先日】2015-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507317144
【氏名又は名称】デルタ オブ スウェーデン アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】スレッソン、スタファン
(72)【発明者】
【氏名】モデル、ジョナス
(72)【発明者】
【氏名】スレッソン、クライスター
【合議体】
【審判長】杉江 渉
【審判官】細井 龍史
【審判官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5972092(US,A)
【文献】米国特許6359057第(US,B1)
【文献】米国特許第4076547(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第2172514(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つのデンプン含有細粉;
b)アルコール、グリコール、ポリオール、ケトン、エステル、アミド、その環状化合物を含む、およびそれらの混合物から選択された、25℃で2kPa未満の蒸気圧を有する、少なくとも1つの酸素含有低蒸気圧極性溶媒;および
c)水
を含む、不乾性モデリング生地であって、
水c)の重量は低蒸気圧溶媒b)の重量未満であり、
成分b)は前記不乾性モデリング生地の重量に基づき20重量%~70重量%で存在し、
前記不乾性モデリング生地中のデンプン含有細粉a)の総量が、前記モデリング生地の重量に基づき15~60重量%の範囲である
不乾性モデリング生地。
【請求項2】
加えて、
d)少なくとも1つの柔軟剤;
を含む、請求項1に記載の不乾性モデリング生地。
【請求項3】
加えて、
e)少なくとも1つの保存剤;
f)少なくとも1つの添加物
の少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の不乾性モデリング生地。
【請求項4】
成分a)は、60%~88%のアミロペクチンを有する少なくとも1つの「標準細粉」および少なくとも90%のアミロペクチンを有する少なくとも1つの「ワキシー細粉」を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の不乾性モデリング生地。
【請求項5】
前記標準細粉は、コムギ粉、ライ麦粉、タピオカ粉、トウモロコシ(コーン)粉、ジャガイモデンプン、コメ粉(とりわけ中粒および長粒コメ粉)およびそれらの混合物から選択される、請求項4に記載の不乾性モデリング生地。
【請求項6】
前記ワキシー細粉はワキシーコーンスターチ、ワキシー(もち)コメ粉(とりわけ、短粒または丸粒コメのコメ粉)、ワキシージャガイモデンプンおよびそれらの混合物から選択される、請求項4または5に記載の不乾性モデリング生地。
【請求項7】
95:5~5:95の「標準細粉」:「ワキシー細粉」比を有する
請求項4~6のいずれか一項に記載の不乾性モデリング生地。
【請求項8】
成分a)は、コメ粉およびもち米粉の混合物を含む、ならびに/または
成分a)は15~50重量%で存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の不乾性モデリング生地。
【請求項9】
前記コメ粉が、中粒もしくは長粒コメ粉であり、かつ/または、前記もち米粉が、丸粒もしくは短粒コメ粉である請求項8に記載のモデリング生地。
【請求項10】
成分b)はグリセロールであり、および/または
成分b)は32重量%~65重量%で存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の不乾性モデリング生地。
【請求項11】
成分c)は5~45重量%で存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載の不乾性モデリング生地。
【請求項12】
成分d)は存在し、少なくとも1つのシロキサン、少なくとも1つの塩、少なくとも1つの脂質またはそれらの混合物から選択され、ならびに/または
成分d)は存在し、ポリジメチルシロキサン、グリセロールモノオレエートおよび/または硫酸カリウムアルミニウムを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の不乾性モデリング生地。
【請求項13】
成分d)は1重量%~15重量%の量で存在する、請求項1~12のいずれか一項に記載の不乾性モデリング生地。
【請求項14】
成分f)は0.01重量%~10%重量のレベルで存在し、界面活性剤、香り、芳香剤、色、保存剤、塩、乾燥剤、硬化剤、収斂剤、潤滑剤、手触り改変剤またはそれらの混合物を含む、請求項2~13のいずれか一項に記載の不乾性モデリング生地。
【請求項15】
成分f)は0.01重量%~10重量%のレベルで存在し、少なくとも1つのポリマを含む、請求項3~14のいずれか一項に記載の不乾性モデリング生地。
【請求項16】
成分f)は、セルロース誘導体、疎水的に改質されたセルロース誘導体、疎水的に改質されたポリアクリレート、ポリアクリル酸、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、プロピレンオキシドコポリマと共重合されたポリエチレンオキシドポリマ、ポリ酢酸ビニル-コ-ビニルアルコールおよびそれらの混合物から選択される少なくとも1つのポリマを含む、請求項15に記載の不乾性モデリング生地。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の不乾性モデリング生地および1~40%の少なくとも1つのフィラー材料を含む、充填生地。
【請求項18】
i)少なくとも1つのデンプン含有成分、少なくとも1つの低蒸気圧極性溶媒および水を混合すること;
ii)得られた混合物を加熱すること
を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の不乾性モデリング生地を形成するための方法。
【請求項19】
iii)前記加熱混合物を練ること;
をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
iv)前記加熱混合物を乾燥させること
をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
工程ii)は、70~99℃で5分~4時間の間実施される、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記水を、30~70%の相対湿度で蒸発させること、ならびに/または
柔軟剤を混合することをさらに含む、請求項18~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記柔軟剤が、グリセロールモノオレエート、脂肪酸のモノおよびジグリセリド(E471)、ミョウバンおよび/もしくはポリジメチルシロキサンである請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項18~23のいずれか一項に記載の不乾性モデリング生地を形成させ、続いて、1~40%の少なくとも1つのフィラーを組み入れることを含む、充填生地を形成するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、押出、圧延、モールディング、または彫刻のために使用することができる柔軟なモデリングコンパウンドに関する。特に本発明はデンプン系モデリングコンパウンドに関する。
【背景技術】
【0002】
50年を超える間、デンプン系モデリングコンパウンドが公知になり、使用されてきた(McVicker et al.)。デンプン系モデリングコンパウンド中のバインダは、様々な起源に由来し、コムギ、ライ麦、コメ、またはタピオカ由来の細粉が挙げられる。当技術分野で知られている方法によれば、そのようなデンプン系バインダは、水、塩、潤滑剤、および/または保存剤などの他の成分と混合することができ、モデリングコンパウンドが形成され得る。
【0003】
以前のモデリング材料は、一般にデンプン系生地(dough)および不乾性粘土に分割することができる。Play-Doh(RTM)などのデンプン系生地は、典型的には水と結合され、覆いがされないままだと乾燥を受けやすい。反対に、不乾性モデリング材料は典型的には、使用時に生地と同じ「感触」を与えない粘土である。一般にPlasticine(RTM)などの不乾性粘土は、高レベルの、ミネラルフィラーなどのフィラーが組み入れられた炭化水素液またはワックスに基づく。同様の公知の製品としては、Fimo(RTM)、Sculpey(RTM)およびCernit(RTM)などのポリマ粘土が挙げられ、それらは典型的にはPVC、炭化水素および可塑剤に基づく。公知の不乾性材料、とりわけ炭化水素を組み入れたものでは、使用後に手に残留物が残る傾向があり、とりわけ暖かい条件下ではベタベタになる場合がある。さらに、デンプン系生地は、とりわけ、子供による使用のためには、より望ましい「感触」を有する。
【0004】
デンプンはほとんどの緑色植物から生成される多糖であり、穀物粒中の貯蔵エネルギーの主要な起源である。デンプンの他に、細粉は典型的にはタンパク質、食物繊維、および脂肪を含む。デンプンは、水溶性多糖アミロースおよびアミロペクチンの混合物である。
【0005】
アミロースは比較的低分子量である。これは直鎖で、α(1→4)結合されたグルコース分子から構成され、溶液中でヘリカルコイルを形成する。アミロペクチンは溶液中で、高度に分枝し、ずっと高い分子量を有し、より高い粘度を有する。アミロペクチン中のグルコース単位は、直鎖様式で連結され(α(1→4)グリコシド結合)、一方、分枝は24~30グルコース単位毎に生じるα(1→6)結合により起こる。
【0006】
溶解アミロペクチンデンプンは、保存および冷却中に、アミロースリッチデンプンよりも低いレトログラデーション(ゲル化)傾向を有する。アミロースは、水中1%という低い濃度で、すでにレトログラデートする傾向を有する。
【0007】
デンプンでは、アミロペクチンが支配し、一般に、多糖含量の約70%であるが、量は起源によって変動する。中粒コメはより高い比率のアミロペクチンを有し、もち米中では、それは100%までである。例えば、コムギデンプンは、約75%のアミロペクチンを含み;タピオカデンプンは約83%のアミロペクチンを含む。ワキシーコーンスターチは約99%超のアミロペクチンを含む。
【0008】
半結晶デンプン顆粒では、アミロースおよびアミロペクチンは重要な成分である。デンプン水溶液を加熱すると、ゼラチン化が誘導され、その間、デンプン顆粒の結晶構造が破壊され、デンプン顆粒は水および水和物を吸収し、溶液の粘度が増加する(Thomas & Altwell)。新たに製造されたデンプンゲルが冷却された時からすぐに、レトログラデーションプロセスが始まる。これには、直鎖アミロース鎖およびアミロペクチン分子の直鎖領域の整列および分子間水素結合の結合による、デンプン分子の再会合が含まれる。
【0009】
これらのプロセスは全てデンプン系モデリングコンパウンドで起こり、その特性に影響する。手触りはソフトから始まり、操作し、成形するのが容易であり、2~3日以内に著しく硬くなり得る。これは、Doane JrおよびTsimbergにより、レトログラデーション阻害剤を2-10%の量で、デンプン系モデリングコンパウンドに添加することにより対処された。レトログラデーション阻害剤として、彼等はレトログラデーションに抵抗性であることが知られているアミロペクチンデンプンを使用した。
【0010】
しかしながら、前に知られているデンプン系モデリングコンパウンドの全てについて別の欠点がある。それらは大量の水(典型的には50%以上)を溶媒として含むので、それらは乾燥し、使用と使用の間、密閉容器内で保存されなければならない。周囲空気に曝露されて残ったかたまりは時間と共に(典型的には2~3時間)硬くなり、遊ぶ価値が失われる。水を添加することにより手触りを取り戻すことは、しばしば非常に困難、または不可能である。というのも、添加された水の再組み込みは問題があるからである。これは、低い相対湿度においてだけでなく、正常(40-60%)およびさらには高い相対湿度(例えば60%以上)でも当てはまる。モデリングコンパウンドの残留物がプラスチック金型および押出機(子供によって生地と共に使用される)中で乾燥すると、それらはこびり付き、金型および押出機は、きれにするのが(非常に)困難になる。
【0011】
特性の増強された安定性を有するモデリングコンパウンドを提供することはかなり好都合であろう。特に、乾燥するおよび/または特性が変化する傾向が少ないモデリングコンパウンドを提供することは、特に周囲環境に開かれたままである場合、好都合であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
金型および押出機中での生地乾燥の問題を低減させる、不乾性または乾燥抵抗性生地を提供することは、好都合であろう。乾燥を避けるための特別な予防措置の必要しで、保存することができる生地を提供することもまた、好都合であろう。特に、生地は密閉容器中で保存する必要はない場合、好都合であろう。これらは使用者にとって明らかな利点となるだけでなく、製造者は、気密容器中に製品をパックする必要がなくなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らはここで、生地を低い蒸気圧を有する少なくとも1つの極性液体と共に配合することにより、モデリング生地の乾燥が劇的に低減され得ることを立証した。
【0014】
第1の態様では、本発明は、下記を含むモデリング生地を提供する;
a)少なくとも1つのデンプン含有細粉;
b)少なくとも1つの低蒸気圧極性溶媒;および
c)水性成分。
【0015】
任意的であるが、好ましい成分としては下記の1つ以上が挙げられる;
d)少なくとも1つの柔軟剤;
e)少なくとも1つの保存剤;および/または
f)少なくとも1つの添加物。
【0016】
一般に、水性成分c)の重量は低蒸気圧溶媒b)の重量未満である。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、本明細書で記載されるモデリング生地および少なくとも1つのフィラー材料を含む、充填モデリング生地を提供する。典型的には、フィラーは、充填生地製品の1~40重量%の量で存在する。そのような充填生地は少なくとも1つのフィラー材料が添加された、本明細書で記載される任意のモデリング生地を含むであろう。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、本明細書で記載されるモデリング生地を形成するための方法を提供し、方法は、少なくとも1つのデンプン含有細粉、少なくとも1つの低蒸気圧極性溶媒および水性成分を混合すること、ならびに得られた混合物を加熱することを含む。方法には、乾燥および/またはニーディング工程が続き得る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のモデリング生地では、成分a)は少なくとも1つのデンプン含有材料である。これは典型的には「細粉」(「デンプン含有細粉」)であり、この用語は、60%を超えるデンプン含量および1mm未満の平均粒子直径を有する任意の微粒子材料を示すために本明細書で使用される。一般に、本明細書で全体を通して言及される「細粉」は、ミリングなどの物理的技術により生成されるが、任意の他の好適な技術、例えば化学または酵素消化、熱処理、溶解および沈殿または技術の任意の組み合わせにより生成され得る。典型的には少なくとも90重量%の細粉が1μm~1000μmの粒子サイズ範囲内に入る。多くの好適なデンプン含有材料が当技術分野で知られており、好適な材料および組み合わせは容易に確立され得る。本発明において使用するのに特に有効なデンプン含有材料としては、コムギ粉、ライ麦粉、タピオカ粉、トウモロコシ(コーン)粉、ジャガイモデンプン、コメ粉およびそれらの混合物が挙げられる。コメ粉およびそれらの混合物が好ましい。
【0020】
アミロペクチンを多く含むデンプン含有材料(例えば、細粉)は、生地配合物において利点を有する。特に我々は、アミロペクチンを多く含むいくらかの細粉を含む生地配合物は、かなり高い相対湿度でソフトにすぎることに対し、よりよく抵抗する傾向があることを見出した。本発明の全ての態様に適用可能な1つの実施形態では、成分a)は60%~88%のアミロペクチンを有する少なくとも1つの「標準細粉」および少なくとも90%のアミロペクチンを有する少なくとも1つの「ワキシー」細粉を含み得る。好適な標準細粉はコムギ粉、ライ麦粉、タピオカ粉、トウモロコシ(コーン)粉、ジャガイモデンプン、コメ粉(とりわけ中粒および長粒コメ粉)およびそれらの混合物であってもよい。そのような細粉中のアミロペクチンの割合は一般に、60%~88%、好ましくは70%~85%である。好適な「ワキシー」細粉としては、ワキシーコーンスターチ、ワキシー(もち)コメ粉(とりわけ、短粒または丸粒コメのコメ粉)、ワキシージャガイモデンプンおよびそれらの混合物が挙げられる。好適な混合物は95:5~5:95、好ましくは40:60~90:10、最も好ましくは60:40~85:15の「標準細粉」:「ワキシー細粉」比を有し得る。
【0021】
高度に有効な組み合わせは、コメ粉(例えば中粒または長粒コメ粉)およびもち米粉(例えば丸粒または短粒コメ粉)の混合物である。そのような混合物は95:5~5:95、好ましくは40:60~90:10、最も好ましくは60:40~85:15のコメ粉:もち米粉比を有し得る。
【0022】
コメ粉の利点は、グルテンを実質的にまたは完全に含まないことである。いわゆる「もち米」であっても、実際には、グルテンを含まず、グルテンアレルギーまたは不耐性を有するものにとって好適である。他のグルテンを含まない細粉/デンプンが存在し(例えば、トウモロコシまたはジャガイモデンプン)、本発明の全ての態様において使用することができるが、コメ粉は非常に好適であり、容易に入手できる。グルテンを本質的に含まないことは、生地組成物がグルテンアレルギーおよび/またはグルテン不耐性を有するものにとって好適であるという利点を提供する。一般に、発明の全ての態様の生地は食用ではないが、不注意で、または誤って口にすると、とりわけ生地を子供が使用する場合、問題となる可能性がある。本質的にグルテンを含まないと、生地が嚥下される場合であっても、全てのグルテン耐性問題が回避される。よって、発明の全ての態様に適用可能な1つの実施形態では、生地は1重量%未満のグルテン(例えば0~1重量%または0.0001重量%~1重量%)、好ましくは0.1重量%未満、最も好ましくは0.01重量%未満のグルテンを含み得る。
【0023】
本発明の全ての態様におけるモデリング生地中のデンプン含有材料成分a)の総量は典型的には、10~60重量%、好ましくは15~50重量%、より好ましくは25~45重量%の範囲にある。最も好ましくは成分a)の量は30重量%~45重量%である。本明細書で示される全てのパーセンテージは、別記されない限り、成分a)~f)を含む最終生地製品の重量パーセンテージとして表される。同様に、全てのパーセンテージは、水を含む生地に関したものであるので(水は、他の成分の重量パーセンテージに影響する)、本明細書で示される量は、30%~70%の範囲内の1つ以上の相対湿度レベルでの生地中の平衡レベルであってもよい。1つの実施形態では、示される重量パーセンテージは、50%相対湿度での平衡で適用される。
【0024】
本明細書で示される成分のパーセンテージは、成分a)~f)を含む、またはこれらから成る生地に関する。生地が、1つ以上の不活性フィラー成分g)をさらに含む場合、そのフィラーの重量は一般に、明確に指示される場合を除き、本明細書で示される量では、考慮に入れない。
【0025】
モデリング組成物の成分b)は少なくとも1つの低蒸気圧溶媒である。一般に、任意のそのような溶媒は25℃で、2kPa未満、好ましくは1Ka未満、より好ましくは0.1kPa未満(例えば0.01kPa未満)の蒸気圧を有するであろう。好適な極性溶媒の例としては、酸素含有有機溶媒、例えばアルコール、グリコール(例えばプロピレングリコール)、ポリオール(例えばグリセロール)、ケトン、エステル、アミド、例えば環状化合物、およびそれらの混合物が挙げられる。特に、グリセロールは、乾燥しない生地配合物を提供することが見出されている。組成物はまた水を含むので、低蒸気圧溶媒は一般に、水と少なくとも部分的に混和されるであろう。好ましくは、溶媒は、少なくとも10重量%まで水に溶解できるまで十分極性であり、最も好ましくは、水と完全に混和する。上記で考えられるものなどの酸素含有有機分子、特にそれらの分子量の少なくとも10%の酸素を含むものは非常に好適である。動物および/または植物油などの溶媒は典型的には、本発明において有用となるのに十分極性ではない。
【0026】
1つの実施形態では、低蒸気圧溶媒は、鉱物油またはパラフィンなどの炭化水素溶媒ではない。さらなる実施形態では、低蒸気圧溶媒は動物性脂肪または植物性脂肪(例えば植物油)ではない。
【0027】
極性低蒸気圧溶媒の量は、生地製品に結合および柔軟性を提供するのに十分である。典型的には、これは、生地の約20重量%~70重量%、好ましくは約30重量%~約60重量%(例えば30重量%~65重量%または32重量%~60重量%)の量である。約35重量%~55重量%の量が非常に好ましく、40重量%~50重量%が最も好ましい。
【0028】
グリセロールは非常に好ましい低蒸気圧溶媒である。グリセロールは、約99.5%純度から約86%純度以下までの多くの純度で使用可能である。より低い純度は材料の残りを構成する対応する量の水を含む。任意の好適な純度レベルが使用され得るが、生地中に存在するグリセロールおよび水性成分の量を計算する場合、グリセロール材料中のかなりの量の水が、グリセロール成分の低減および水性成分の対応する増加の一因となるはずである。
【0029】
加熱工程中の少量の水が膨潤を促進することが見出されており-すなわち、水がプロセス溶媒として考えられる。水は明らかに溶媒であり、生地と混合するので、含水量は、新規不乾性生地中ではまた、周囲環境における相対湿度(%RH)に依存する。平衡状態では、生地中の含水量は高%RHでより高く、低%RHでより低くなる。生地特性を水取込と平衡させることが重要であり、よって、低%RHでは、生地はわずかにより堅固であり、高%RHではわずかによりソフトとなる。生地は柔軟で、全ての標準的な、および一般的な%RH(例えば30%~70%RH)で使用することができなければならない。この%RHウィンドウは、湿度が特定の%RHに制御された気候チャンバ中で生地を保存することにより評価することができる。
【0030】
本発明の組成物の水性成分c)はこのように、製造および保存条件によって幾分変動するが、典型的には総組成物の約1~45重量%、好ましくは約5~35重量%、より好ましくは約10~30重量%(例えば10~20重量%または15~30重量%)で存在する。この量は低い相対湿度環境では低減され、高い相対湿度では大きくなる可能性があり、本明細書で示される量は、30%~70%の範囲内の1つ以上の相対湿度レベルでの平衡レベルであり得る。1つの実施形態では、示される水性含量は50%相対湿度で平衡にて適用される。水性成分は典型的には水である。
【0031】
上記のように、アミロペクチンを多く含む細粉は生地配合物において利点を有する。特に我々は、アミロペクチンを多く含むいくらかの細粉を含む生地配合物は高い%RHによりよく抵抗する傾向があることを見出した。欠点は、低%RHで(過度に)弾力のある手触りである。弾力は、任意的な柔軟剤を添加することにより、減少させることができ、時として完全に妨害することができる。そのような柔軟剤は任意的であるが、成分a)の少なくとも一部が高アミロペクチン細粉、例えばもち米粉、ワキシーコーンスターチ(ワキシーコーン粉)またはワキシージャガイモデンプンであるそれらの実施形態を含む本発明の全ての態様において使用することができる。
【0032】
任意的な柔軟剤はある一定の半有機化合物、例えばシロキサン(例えばポリジメチルシロキサン)、ある一定の有機化合物、例えばグリセリド(モノ、ジ、トリ、またはそれらの混合物)、またはある一定の無機化合物、例えば塩(NaClまたは硫酸カリウムアルミニウムで例示される)とすることができる。ミョウバン(硫酸カリウムアルミニウム)は、低%RHでより柔軟な生地を提供し、同時に、生地に高%RHでの軟化に対してより良好な抵抗性を与えることができるように見える。標準試料(ミョウバンなし)は低%RHで堅固で弾力があり、高%RHではソフトすぎ、ベタベタすぎる。そのような任意的な柔軟剤の混合物は、頻繁に有益な結果を提供する。存在する場合、柔軟剤(成分d))の総含量は、20重量%未満、例えば15重量%未満(例えば1重量%~20重量%または1重量%~15重量%)、好ましくは10重量%未満、より好ましくは8重量%未満のレベルで含められる。各個々の柔軟剤は典型的には、15重量%未満(例えば1重量%~15重量%)、より好ましくは10重量%未満で存在する。
【0033】
典型的な有機化合物は低分子量、例えば2000amu未満、好ましくは1000amu未満を有する。有機化合物は、一般に無毒性であり、天然源由来とすることができる。脂質およびそれらの誘導体は、柔軟剤として使用するための典型的な有機化合物である。一般に、有機化合物は炭化水素ではない。より一般的には、それらは分子構造中に少なくとも1つの酸素を含む。ハロゲン化有機分子はより好ましくない。
【0034】
グリセリド柔軟剤は、発明の全ての態様に好適な好ましい実施形態を形成する。好適なグリセリドは、典型的にはエステル結合により接合された、グリセロール極性「頭」部分および1、2または3つの非極性「尾」部分を含む。好適な非極性部分としては、飽和および不飽和脂肪酸、例えばC8~C24脂肪酸が挙げられる。具体例としては、天然脂肪酸に基づく非極性鎖が挙げられる。天然脂肪酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、フィタン酸、パルミトレイン酸(palmitolic)、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ベヘン酸またはリグノセリン酸が挙げられる。好ましい非極性鎖は、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノール酸、特にオレイン酸(のエステル)に基づく。グリセロールの混合物は明らかに好適であり、ジまたはトリアシルグリセロールでは、各非極性基は独立して選択され得る。モノアシルグリセロールが非常に好ましく、例えばグリセロールモノオレエート、グリセロールモノリノリエート、グリセロールモノステラート(monosterate)、グリセロールモノパルミタートおよびそれらの混合物である。トリカプリル酸/カプリン酸グリセリル関連脂質は、特にカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸鎖と共に、さらに好ましい例を形成する。
【0035】
モノアシルグリセロールは非常に有益な柔軟剤の群を形成し、それらは、本発明の全ての態様において驚くべき利点を提供することが見出された。グリセロールモノオレエート(GMO)および他のモノアシルグリセロールは、水または極性溶媒(例えば本発明で使用されるもの)と接触すると液晶相構造を生成させることが知られており、これらの構造は典型的には生体接着性が高い。しかしながら、本発明者らは、驚いたことに、グリセロールモノオレエート(monooletate)(GMO)を添加すると、生地は手に対しより粘着性となると考えられる(液晶相は一般に生体接着性であるため)ことを観察した。発明者らは反対のこと、GMOは「剥離剤」として機能し、そのため、GMOを(典型的には、0.1重量%~10重量%で)有する生地は手またはプロセス機器に粘着せず、GMOを有さない比較試料よりもずっと接着しないことを見出した。この特徴は、相当するモノアシルグリセロール(例えば、本明細書で記載されるアシル鎖を有するもの)およびそのようなモノアシルグリセロールのジアシルグリセロール(また、特に、本明細書で記載されるアシル鎖を有するもの)との混合物に適用されると考えられる。本発明の全ての態様に適用可能な1つの実施形態では、よって、生地は少なくとも1つのモノアシルグリセロール、好ましくは上記本明細書で記載される少なくとも80%のアシル鎖を有するモノアシルグリセロールを含み得る。グリセロールモノオレエート(GMO)は非常に好ましい例である。GMOが本発明の生地において使用される場合、最良の非粘着効果を達成するために、典型的には高い純度を有する。よって、少なくとも70%のグリセロールモノオレエート、好ましくは少なくとも80%を含むGMO成分が好ましい。
【0036】
本発明の全ての態様に適用可能な対応する実施形態では、生地は、少なくとも1つのモノアシルグリセロールおよび少なくとも1つのジアシルグリセロールを(例えば、95:5~5:95、好ましくは、30:70~70:30の重量比で)含み得る。モノアシルおよびジアシル成分の両方の場合、これらは好ましくは、上記本明細書で記載されるように少なくとも80%のアシル鎖を有する。「脂肪酸のモノおよびジグリセリド」はE471で指定される食品安全乳化剤である。そのような混合物が使用され得る。非常に好ましい実施形態では、モノグリセリド(例えばGMO)およびモノ/ジグリセリド混合物(例えばE471)の両方が使用され得る。
【0037】
本発明者らは、加えて、モノおよびジグリセリドの混合物(例えばE471)の使用により、発明の全ての実施形態のモデリング生地に優れた手触りが提供され得ることを立証した。特に、そのような混合物を、とりわけモノアシルグリセロール(例えばGMO)と組み合わせて使用すると、長期間放置後(例えば3日以上)、生地の優れた加工性が提供され得る。
【0038】
いずれの無毒性塩も、柔軟剤中に潜在的に含められ得るが、これらは典型的には水溶性である。無毒性または低毒性ナトリウム、アルミニウム、カルシウムまたはカリウム塩が好ましく、塩化物、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩などが挙げられる。塩化ナトリウム(Sodium chlorine)、塩化カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウムおよび同様の塩、とりわけ硫酸カリウムアルミニウムが非常に適切である。
【0039】
本発明者らによりなされた別の驚くべき観察は、本明細書で示される塩、特にミョウバンは、%RHの変動による生地の手触りの変化を減少させるように見えることであり、そのため、生地は低%RHでソフトになり、同時に高%RHでより良好に手触りを保持する(全てミョウバンなしの標準試料と比較)。理論に縛られないが、これは、離液(またはHofmeister)系列による、高い「塩析」効果に関連すると考えられる。よって1つの実施形態では、生地は、離液系列で塩化物を含むそれ以下のアニオン(例えば硫酸、リン酸、酢酸および/または塩化物)を含む少なくとも1つの塩を含み得る。同様に、1つの実施形態では、生地は、離液系列でナトリウムを含むそれ以下のカチオン(例えばアンモニウム、カリウム、および/またはナトリウム)を含む少なくとも1つの塩を含み得る。明らかに、そのようなアニオンおよびカチオンはどちらも存在することができ、好ましくは存在する。そのような塩は、約15重量%まで、好ましくは約12重量%まで、例えば1~12重量%または5~10重量%で存在し得る。
【0040】
ある一定の他の成分(添加物-本明細書では成分f))もまた、全ての態様の生地中、典型的にはモデリング生地中に、10重量%未満(例えば0.01~10重量%)、好ましくは5重量%未満(例えば0.01~5重量%または0.1~4重量%)の量で存在し得る。そのような成分は、当技術分野でモデリング組成物のために適切であるとよく知られている多くを含み、界面活性剤(例えば、ステリック酸(steric acid)のPEGエステル、ラウリン酸のPEGエステル、エトキシル化アルコール、PEGソルビタンエステル、例えばPEGソルビタンモノオレエート、PEGソルビタンモノステラート(monosterate)、PEGソルビタンモノラウレート))、香りまたは芳香剤(例えば香油または精油)、色(例えば無毒性、食用色素)、保存剤、塩、乾燥剤、硬化剤、収斂剤、潤滑剤(例えば、鉱物油、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満または1%未満、またはプロピレングリコール)、フィラーなどが挙げられる。
【0041】
界面活性剤を成分f)として含む1つの利点は、主成分と様々な添加物の間の適合性を改善すること、および保存中での別々の相への脱混合および分離(材料特性を損なうであろう)を回避することである。このために、本明細書で記載される界面活性剤、ならびに疎水的に改質されたポリマ(例えば、疎水的に改質されたセルロース誘導体、疎水的に改質されたポリアクリレートなど)が使用され得る。
【0042】
成分f)の添加物はまた、生地の手触りを改変するために使用され得る。ポリマは、粘度および弾力を改変するのに使用されることがよく知られており、本発明では、多くのポリマは、「水性成分」c)および「低蒸気圧極性溶媒」b)と適合可能であり得る。上記本明細書で言及されるポリマは、このために好適なものの一つである。他のものとしては、非イオン性またはイオン性(カチオン性およびアニオン性)ポリマ、例えばセルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、四級アンモニウム修飾セルロースを参照);キトサン;様々なホモポリマ(例えば、ポリアクリル酸;様々なポリアクリレート;ポリビニルアルコール;ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド);ポリアクリルアミド;ポリエチレンオキシド;ポリビニルピロリドン、ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムクロリド)、など)およびコポリマ(例えば、プロピレンオキシド、エチレンブチレン、カプロラクトンと共重合された様々なポリエチレンオキシドポリマ;ポリ酢酸ビニル-コ-ビニルアルコールなど)が挙げられる。
【0043】
多くの好適な保存剤(成分e))が当技術分野で知られており、保存機能が別の成分、例えば、塩または有機分子により提供されない場合にのみ、頻繁に必要とされる。よって、保存剤成分e)は、存在しても、しなくてもよい。存在する場合、好適な保存剤としては、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン(E番号E218)、エチルパラベン(E214)、プロピルパラベン(E216)、ブチルパラベンおよびヘプチルパラベン(E209)が挙げられる。あまり一般的ではないパラベンとしては、イソブチルパラベン、イソプロピルパラベン、ベンジルパラベンおよびそれらのナトリウム塩が挙げられる。組成物は任意の特定のまたは添加した保存剤がなくても、低~中相対湿度では真菌増殖に対して抵抗性である可能性がある。例えば、組成物は、少なくとも1ヶ月間、好ましくは少なくとも2ヶ月間、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%の相対湿度で、および好ましくは70%RHまでの湿度で、真菌増殖に対して安定であり得る。
【0044】
本発明の方法において特に有用であることが見出された特定の柔軟剤の好ましい範囲は、0.2~3%、好ましくは0.5~2%のGMO、1~5%、好ましくは2~4%のPDMS、0.5~10%、好ましくは1~3.5%のミョウバンおよび/または0.5~5%、好ましくは1~3%のE471を含む。示される範囲内のこれらの作用物質は、個々に、または任意の組み合わせで使用され得、全て同じモデリング生地製品において使用され得る。
【0045】
保存剤成分e)は、存在する場合、微生物増殖の阻害を提供するのに好適なレベルにある。そのような量は典型的には、3重量%未満(例えば0.01~3重量%)、好ましくは2重量%未満または1重量%未満(例えば0.01~1重量%)である。
【0046】
本明細書で記載される充填生地は、成分g)-少なくとも1つのフィラーが添加されたモデリング生地を含む。そのようなフィラーは、ダレを低減させ、手触りおよびエンボッシング特性を改善する、および/または光沢がない外観(艶消し効果)を与えるために使用され得る。フィラーはまた、有用性を犠牲にせずに、材料の重量生産コストを低減させるのに有用である。充填生地は、発明のモデリング生地よりも少しより乾燥し、「ボロボロする」(砕けやすい)傾向があるが、典型的には有用性を妨げず、いくつかの混合物において好都合であり得る。
【0047】
好適なフィラーは、使用時に反転(invert)および無毒性であるものとして選択され、二酸化チタン、ミアナイト(myanite)、炭酸カルシウム、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、シリカ、アルミノケイ酸、アルミナ、ドロマイト、ケイ酸カルシウム-マグネシウム、タルク、炭酸カルシウム-マグネシウムおよび同様のよく知られたフィラーから選択される少なくとも1つのフィラーを含み得る。タルクが好ましいフィラーである。
【0048】
低重量添加で大量に添加することができる別の粒子/フィラーはプラスチック封入ガスフィラー、例えばガス含有プラスチックミクロスフェアである。典型的な例は、Expancell(https://www.akzonobel.com/expancel/を参照されたい)である。そのようなフィラーは、詳細な成型構造にダレ防止特性を提供することができ、また、生地の密度を低減させることができる。
【0049】
本発明の充填生地は、60~99重量%の本明細書のいずれかの実施形態(好ましくは、本明細書で記載される好ましい実施形態のいずれか)において記載されるモデリング生地および1~40重量%フィラー(例えば、上記で示されるもの)を含む。充填生地は好ましくは、5重量%~30重量%のフィラー、より好ましくは10~25重量%のフィラーを含む。
【0050】
本発明の方法では、混合工程は、機械混合の任意の適切な手段、例えば市販の生地-ミキサにより実施され得る。加熱工程もまた、確立された手段、例えば燃焼加熱、電気加熱または蒸気などの媒体を用いた加熱を使用して実施され得る。加熱は典型的には、少なくとも70℃(例えば70~120℃、好ましくは70~99℃)、好ましくは少なくとも80℃、より好ましくは85~99℃である。最も好ましい温度範囲は90~99℃である。加熱期間は、典型的には約5分~約4時間、好ましくは約10分~約60分間である。
【0051】
本発明の方法は、デンプン含有材料(例えば、本明細書のいずれかの実施形態において記載される成分a))および低蒸気圧液(例えば、本明細書のいずれかの実施形態において記載される成分b))の混合物を加熱することに依存する。水性成分(例えば、本明細書で記載されるc))は、加熱工程中、任意で存在し得る。典型的には、水性成分の量は、製造プロセス中では、最終モデリング生地製品で要求されるものより多くなる。この追加の水はデンプン含有材料の膨潤を、特により低い温度で助ける。よって、本発明の方法で添加される成分は、一般に最終製品に対して示される量であるが、これらは、20重量%までの追加の水の添加により、%の観点で幾分低減され得る。よって、本明細書で示される任意の他の成分の重量パーセンテージ量は、発明の方法では、20%までだけ低減され得る。これにより、20重量%までの過剰水の蒸発後の各成分の正確な比が得られる。
【0052】
より高い温度(例えば、100℃超)まで加熱すると、加熱ために配合物中に含められる水の量をより少なくすることができる。しかしながら、配合物は典型的には、周囲温度および湿度で平衡化された時点で、水を獲得し、または喪失する。従来の生地とは異なり、本発明のモデリング生地は、含水量が周囲温度および湿度(例えば、25℃、30%~70%相対湿度)で平衡化されても、柔軟で良好なモデリング特性を保持する。
【0053】
発明の方法が99℃超まで加熱することを含む場合、これは、一般に、加熱中の水の損失を低減させるために、密閉および/または加圧加熱容器中で実施される。
【0054】
1つの実施形態では、1つ以上のデンプン含有材料、低蒸気圧溶媒および/または水性(および、任意で添加される)成分(例えば、成分a)~c)(または、d)が存在する場合a)~d))が、デンプンのゼラチン化に必要とされるものより低い温度まで予熱され得る(例えば40~68℃、好ましくは50~65℃)。そのような予熱工程が起こる場合、少なくとも70℃までの加熱(上記)は約5~60分、好ましくは5~30分間起こり得る。
【0055】
実施例:
発明を以下、下記非限定的な例を参照して説明する:
材料:
【表1】
【0056】
実施例1:
1.グリセロール 120g
2.水 60g
3.コメ粉 75g
4.もち米粉 25g
5.グリセロールモノオレエート 3.7g
6.短鎖PDMS(おおよその粘度範囲5-100cPにおける) 3.7g
グリセロール(1)および水(2)を混合し、コメ粉(3および4)を液体中に分散させた。分散物を気密プラスチックバッグに封入し、約92℃まで、細粉が液体を濃化するまで加熱した。プラスチックバッグを開き、過剰プロセス水を蒸発させ、一方、グリセロールモノオレエート(5)および短鎖PDMS(6)(ポリジメチルシロキサン)を添加し、生地を練って、最終製品とした。
【0057】
グリセロールモノオレエート(5)および短鎖PDMS(6)を添加する前、生地は弾力すぎ、かつ粘着性でベタベタすぎであったが、添加後、40%RHで、弾力が少なくなり、かつ粘着性/ベタつきが少なくなり、ならびに良好な生地特性を有した。70%RHでは、これは、所望のものよりソフトでベタつきが大きくなった。
【0058】
数ヶ月間の室内気候での長期保存は配合物を変化させず、乾燥させなかった。同じように、同じ時間の間保存した市販のモデリング生地(Play-Doh(RTM))試料は乾燥し、硬くなったことが見出され、モデリング目的には使用できなかった。
【0059】
実施例2:
1.グリセロール 130g
2.水 60g
3.コメ粉 75g
4.もち米粉 25g
5.グリセロールモノオレエート 7.3g
7.トリカプリル酸/カプリン酸グリセリル 15g
グリセロール(1)および水(2)を混合し、コメ粉(3および4)を液体中に分散させた。分散物を気密プラスチックバッグに封入し、約92℃まで、細粉が液体を濃化するまで加熱した。プラスチックバッグを開き、過剰プロセス水を蒸発させ、一方、グリセロールモノオレエート(5)およびトリカプリル酸-カプリン酸グリセリル(7)を添加し、生地を練って、最終製品とした。
【0060】
グリセロールモノオレエート(5)およびトリカプリル酸-カプリン酸グリセリル(7)を添加する前、生地は弾力すぎ、かつ粘着性でベタベタすぎであったが、添加後、40%RHで弾力が少なくなり、かつ粘着性/ベタつきが少なくなり、ならびに良好な生地特性を有した。70%RHでは、これは、所望のものよりソフトでベタつきが大きくなった。
【0061】
数ヶ月間の室内気候での長期保存は配合物を変化させず、乾燥させなかった。同じように、同じ時間の間保存した市販のモデリング生地(Play-Doh(RTM))試料は乾燥し、硬くなったことが見出され、モデリング目的には使用できなかった。
【0062】
実施例3:
1.グリセロール 130g
2.水 60g
3.コメ粉 75g
4.もち米粉 25g
5.グリセロールモノオレエート 3.7g
7.トリカプリル酸/カプリン酸グリセリル 3.7g
8.ミョウバン 3.7g
グリセロール(1)および水(2)を混合し、コメ粉(3および4)を液体中に分散させた。分散物を気密プラスチックバッグに封入し、約92℃まで、細粉が液体を濃化するまで加熱した。プラスチックバッグを開き、過剰プロセス水を蒸発させ、一方、グリセロールモノオレエート(5)およびトリカプリル酸-カプリン酸グリセリル(7)を添加し、生地を練った。少量の水に溶解したミョウバンを添加し、生地を練って、最終製品とした。
【0063】
生地は、40%RHで、良好な特性を有し、あまり弾力的ではなかった。加えて、70%RHでは、これはまた、良好な特性を有し、あまりソフトでなく、ベタベタでなかった。
【0064】
数ヶ月間の室内気候での長期保存は配合物を変化させず、乾燥させなかった。同じように、同じ時間の間保存した市販のモデリング生地(Play-Doh(RTM))試料は乾燥し、硬くなったことが見出され、モデリング目的には使用できなかった。
【0065】
実施例4:非常に高い量のミョウバンは使用可能であり、モノ-ジグリセリドは、手触りを制御するために使用することができる。顔料および香りを添加して、より消費者志向の製品を得ることができる。
1.グリセロール 130g
2.水 65g
3.コメ粉 70g
4.もち米粉 30g
5.グリセロールモノオレエート 2.5g
6.短鎖PDMS(おおよその粘度範囲5-100cPにおける) 15g
8.ミョウバン 45g
9.モノ-ジグリセリド(E471) 4.5
10.蛍光顔料(Radiant GWTシリーズから緑色) 2.5g
11.バニラの香り 0.4g
グリセロール(1)および水(2)を混合し、コメ粉(3および4)を液体中に分散させた。分散物を気密プラスチックバッグに封入し、約92℃まで、細粉が液体を濃化するまで加熱した。プラスチックバッグを開き、過剰プロセス水を蒸発させ、一方、グリセロールモノオレエート(5)および短鎖PDMS(6)を添加し、生地を練った。固体ミョウバン(8)およびモノ-ジグリセリド(9)を添加し、生地を練った。顔料(10)および香り(11)を添加し、いい匂いを有する最終的な色彩豊かな製品を得た。
【0066】
幾分ボロボロで砕けやすいが、生地は、40%RHで、かなり良い特性を有し、あまり弾力的でなかった。加えて、70%RHでは、これはまた、良好な特性を有し、あまりソフトでなく、ベタベタでなかった。幾分粒状の手触りが、全てのミョウバンが溶解されたわけではなかったことを示し得る。
【0067】
数日間の室内気候での長期保存は配合物を変化させず、乾燥させなかった。
【0068】
実施例5:より高い調製温度はより低い量の細粉の使用を可能にする。
1.グリセロール 130g
2.水 65g
3.コメ粉 50g
4.もち米粉 25g
5.グリセロールモノオレエート 2.5g
6.短鎖PDMS(おおよその粘度範囲5-100cPにおける) 10g
10.蛍光顔料(Radiant GWTシリーズから緑色) 1.5g
グリセロール(1)および水(2)を混合し、コメ粉(3および4)を液体中に分散させた。分散物を気密プラスチックバッグに封入し、約111℃まで、細粉が液体を濃化するまで加熱した。プラスチックバッグを開き、過剰プロセス水を蒸発させ、一方、グリセロールモノオレエート(5)および短鎖PDMS(6)を添加し、生地を練った。顔料(10)を添加し、最終的な色彩豊かな製品を得た。
【0069】
生地は、40%RHで、良好な特性を有し、あまり弾力的でなかった。70%RHでは手触りは最適ではなく、幾分ソフトすぎで、ベタベタすぎであった。
【0070】
数日間の室内気候での長期保存は配合物を変化させず、乾燥させなかった。
【0071】
実施例6:GMOは粘着防止特性を与えるのに重要であり、この特性は、GMOをモノ-ジグリセリドで置き換えることにより、十分には得られなくなる。
1.グリセロール 130g
2.水 65g
3.コメ粉 70g
4.もち米粉 30g
8.ミョウバン 4.5g
9.モノ-ジグリセリド(E471) 4.5
10.蛍光顔料(Radiant GWTシリーズから緑色) 2.5g
11.バニラの香り 0.4g
グリセロール(1)および水(2)を混合し、コメ粉(3および4)を液体中に分散させた。分散物を気密プラスチックバッグに封入し、約92℃まで、細粉が液体を濃化するまで加熱した。プラスチックバッグを開き、過剰のプロセス水を蒸発させ、一方、モノ-ジグリセリド(9)を添加し、生地を練った。水に溶解したミョウバン(8)を添加し、生地を練った。顔料(10)および香り(11)を添加し、いい匂いを有する最終的な色彩豊かな製品を得た。
【0072】
生地は、40%RHで、快適な手触りを有し、あまり弾力的でなかったが、手およびプロセス機器に対して粘着性であった。
【0073】
4.5gのGMOをこの後の段階で添加しても、少なくともすぐには、特性を修復しなかった。
【0074】
数日間の室内気候での長期保存は配合物を乾燥させずに可能であった。
【0075】
実施例7:高い量のGMOを、粘着防止特性を失わせずに添加することができる。
1.グリセロール 130g
2.水 65g
3.コメ粉 70g
4.もち米粉 30g
5.グリセロールモノオレエート 25g~65g
グリセロール(1)および水(2)を混合し、コメ粉(3および4)を液体中に分散させた。分散物を気密プラスチックバッグに封入し、約92℃まで、細粉が液体を濃化するまで加熱した。プラスチックバッグを開き、過剰プロセス水を蒸発させ、一方、GMO(5)を添加し、生地を練った。
【0076】
高いGMO含量は手触りを生地様から粘土様に変化させ、快適な手触りは完全に弾力がないものとなり、「死んだ」感触を有した。より多くのGMOを添加すると、粘土様特性がより際だった。全く予想外なことに、配合物は、最高GMOレベルでも、手およびプロセス機器に対して非粘着性であった。
【0077】
数日間の室内気候での長期保存は配合物を乾燥させずに可能であった。
【0078】
実施例8:モノ-ジグリセリドは有効な柔軟剤および手触り提供剤である。
基本処方:
1.グリセロール 130g
2.水 65g
3.コメ粉 70g
4.もち米粉 30g
5.グリセロールモノオレエート 4.5g
グリセロール(1)および水(2)を混合し、コメ粉(3および4)を液体中に分散させた。分散物を気密プラスチックバッグに封入し、約92℃まで、細粉が液体を濃化するまで加熱した。プラスチックバッグを開き、過剰プロセス水を蒸発させ、一方、GMO(5)を添加し、生地を練った。配合物は手およびプロセス機器に対して非粘着性であり、幾分、弾力すぎ、かつ堅固すぎる手触りを有した。
【0079】
2.25gのモノ-ジグリセリド(E471)を生地(基本処方)の量の半分に添加し、これを練って配合物にすると、40%RHであまり弾力的でない良好な特性を有する生地が得られた。
【0080】
余分な2.25gのグリセロール(1)を生地(基本処方)の残りの半分に添加し、これを練って配合物にしても、モノ-ジグリセリドを添加することにより見られた改善された特性は得られなかった。
【0081】
数週間の保存後の一般的な観察結果は、生地は、手触りを最適なものに回復させる前に、1分程度練って、働かせなければならず、配合物はしばしば、最初からわずかに硬すぎるというものであった。配合物中にモノ-ジグリセリドがあると、これは反対になり、生地は事実上最初から適切な特性を有する。
【0082】
これにより、モノ-ジグリセリドは、溶媒グリセロールとは別の方法で生地に手触りを提供することが示される。
【0083】
実施例9
1.グリセロール 130g
2.水 65g
3.コメ粉 70g
4.もち米粉 30g
5.グリセロールモノオレエート 2.5g
6.短鎖PDMS(おおよその粘度範囲5-20cPにおける) 8.0g
8.ミョウバン 4.5g
9.モノ-ジグリセリド(E471) 4.5
グリセロール(1)および水(2)を混合し、コメ粉(3および4)を液体中に分散させた。分散物を気密プラスチックバッグに封入し、約98℃まで、細粉が液体を濃化するまで加熱した。プラスチックバッグを開き、過剰のプロセス水を蒸発させ、一方、グリセロールモノオレエート(5)を添加し、生地を練った。GMOは、手またはプロセス機器に粘着しない生地を提供した。短鎖PDMS(6)を添加し、ベタ付き防止特性を提供させ、ミョウバン(8)を添加し、広い%RHウィンドウにおいて快適な生地特性を維持させ、およびモノ-ジグリセリド(9)を添加し、ソフトさおよび適切な手触りを生地に提供させた。
【0084】
実施例10
1.グリセロール 130g
2.水 65g
3.コメ粉 70g
4.もち米粉 30g
5.グリセロールモノオレエート 2.5g
6.短鎖PDMS(おおよその粘度範囲5-100cP) 8.0g
8.ミョウバン 4.5g
9.モノ-ジグリセリド(E471) 4.5
12.タルク 50.0g
グリセロール(1)および水(2)を混合し、コメ粉(3および4)を液体中に分散させた。分散物を気密プラスチックバッグに封入し、約98℃まで、細粉が液体を濃化するまで加熱した。プラスチックバッグを開き、過剰のプロセス水を蒸発させ、一方、グリセロールモノオレエート(5)を添加し、生地を練った。GMOは、手またはプロセス機器に粘着しない生地を提供した。短鎖PDMS(6)を添加し、ベタ付き防止特性を提供させ、ミョウバン(8)を添加し、広い%RHウィンドウにおいて快適な生地特性を維持させ、およびモノ-ジグリセリド(9)を添加し、ソフトさおよび適切な手触りを生地に提供させた。タルク(12)を最後に添加し、視覚的艶消し効果および改善された細部察知刻印(detail pick up on imprints)を追加させた。生地は、良好なモデリング特性を維持しながら、実質的な量のフィラーを組み入れることができたことが観察された。添加されたフィラーが多いほど、生地はボロボロになった。結果は良好な遊び挙動を有する不乾性生地を維持した。
【0085】
実施例11
1.グリセロール 120g
2.水 60g
3.コメ粉 75g
4.もち米粉 25g
5.グリセロールモノオレエート 3.7g
6.短鎖PDMS(おおよその粘度範囲5-100cPにおける) 3.7g
最初に、成分1~6を用いて、実施例1の方法に従い、生地を調製した。試料の3分の1をそのまま維持した。3分の1に、以下を添加し、ニーディングによりマトリクス中に溶解させた:
13.安息香酸ナトリウム保存剤0.5g、最終材料の約0.5%に対応する
17.ポリビニルピロリドンポリマ1g、最終材料の約1%に対応する
【0086】
試料の最後の3分の1に、下記を添加し、ニーディングによりマトリクス中に溶解させた:
14.エチルパラベン保存剤0.15g、最終材料の約0.15%に対応する
15.メチルパラベン保存剤0.15g、最終材料の約0.15%に対応する
16.エチルヒドロキシエチルセルロース0.15g、最終材料の約0.15%に対応する
【0087】
3つの試料を室温で高い相対湿度にて(100%RHに近い)バケツ中で保存した。2ヶ月後、保存剤を有さない試料は、増殖材料(細菌、カビ、または真菌)のバイオフィルムで完全に覆われたが、安息香酸ナトリウムを有する試料はより少ない増殖を有し、メチルパラベンおよびエチルパラベンを有する試料は、増殖がないように見えた。この実施例により、ポリマおよび保存剤はマトリクスと適合し、材料が非常に高い相対湿度に曝露される場合、保存剤の添加が必要とされ得ることが示される。
【0088】
補完実験により、保存剤が添加されていない試料を用いても、より低い(<70%RH)相対湿度では、細菌、カビ、または真菌の増殖はないことが証明されたことに注意されたい。保存剤を有さない生地(成分1~5)のかたまりを気候チャンバにて70%RHの相対湿度で保存した。2ヶ月の保存後、増殖は観察できなかった。
【0089】
参考文献
McVicker et al., 米国特許第3,167,440号
David J. Thomas & William Altwell, Starches (1999)
L.E. Doane Jr and L. Tsimberg,米国特許第6,713,624B1号