(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】橋桁の架設方法
(51)【国際特許分類】
E01D 21/06 20060101AFI20220530BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20220530BHJP
E01D 19/10 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
E01D21/06
E01D19/12
E01D19/10
(21)【出願番号】P 2018005215
(22)【出願日】2018-01-16
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】317008481
【氏名又は名称】日本橋梁株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】正司 明夫
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 幸治
(72)【発明者】
【氏名】川端 一徳
(72)【発明者】
【氏名】中原 智法
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-163410(JP,A)
【文献】特開2017-008671(JP,A)
【文献】特開2005-023684(JP,A)
【文献】特開2001-164513(JP,A)
【文献】特開平08-003933(JP,A)
【文献】特開2017-002559(JP,A)
【文献】特開平10-001915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 21/06
E01D 19/12
E01D 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋桁を橋梁の下部構造から送り出して架設する橋桁の架設方法であって、
送り出す橋桁を地組する橋桁地組工程を行い、当該橋桁地組工程では、地組した橋桁上にPCa床版を非合成状態で仮固定すること
を特徴とする橋桁の架設方法。
【請求項2】
前記橋桁地組工程では、仮固定した前記PCa床版にPCa壁高欄をさらに仮固定すること
を特徴とする請求項1に記載の橋桁の架設方法。
【請求項3】
前記PCa床版の仮固定は、上部にねじ溝が切削加工されたねじ付きスタッドに高ナットを介してボルトを延長し、このボルトに螺合するナットで鋼製プレートを緊結することにより仮固定していること
を特徴とする請求項1
又は2に記載の橋桁の架設方法。
【請求項4】
前記PCa床版と前記橋桁を接合する経時硬化材を打設する前に、前記ボルトを取り外すことによって高ナットの被り厚さを確保すること
を特徴とする請求項
3に記載の橋桁の架設方法。
【請求項5】
前記PCa壁高欄の仮固定では、前記PCa床版の外側へ
前記PCa壁高欄が転倒しないように止め付ける転倒防止材を設置すること
を特徴とする請求項2に記載の橋桁の架設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋桁を橋梁の下部構造に架け渡して設置する橋桁の架設方法に関するものであり、詳しくは、橋梁の橋桁を架け替える際などに、PCa床版が仮固定された橋桁を架設するPCa床版付き橋桁の架設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋桁の架設方法において、道路や線路など下方の施設の交通規制を極力低減するために、手延機連結機構と軌条設備(水平移動機構)等を用いて橋桁を橋脚や橋台等の下部構造から送り出して架設する送り出し架設方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、橋桁1の架設予定地点を挟んで両側に橋脚7・8を立設し、橋桁1を送り出す側の橋脚7より後方に間隔をあけ固定ベントを立設し、固定ベント上に跨って送り出し設備13を設置し、送り出し設備13上で橋桁を後方へ順次直列に連結するとともに、先頭の橋桁1Aの先端上部に手延べ機5の基端部を連結して前方へ張り出させる一方、反対側の橋脚8より後方に間隔をあけて固定ベントを立設し、それらの固定ベント上に跨って橋桁9を後方へ直列に連結して設置し、送り出し設備13上の橋桁を台車を介して前方へ送り出して架設する桁の送り出し架設方法が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0016]~[0021]、図面の
図1等参照)。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の従来の桁の送り出し架設方法では、橋桁の架設終了後に、コンクリート床版の設置や、壁高欄の設置などを行う後作業が残っていた。このため、これらの後作業が完了するまで、新設の際には開通までの期間や、架け替えの際には通行止めのトータル的な期間が長くなるという問題があった。
【0005】
また、特許文献2には、橋桁2上に仮設したレール1上を走行する車輪付き運搬台車12と、その前進方向にスライドするスライド梁11を用いて、床版4をスライド梁11で吊り下げた状態で、スライド梁11を運搬台車1でレール1上を走行させて所定位置の橋桁2上に床版4を架設する橋梁床版の架設方法が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0027]~[0039]、図面の
図1等参照)。
【0006】
しかし、特許文献2に記載の橋梁床版の架設方法は、床版の架設方法であり、橋桁を架け渡したり、取り替えたりする場合に適用できるものではなかった。このため、橋桁の架設工事や取替工事に伴う前述の後作業を含めてトータル的な交通規制期間の短縮を達成するという問題は解決できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-28733号公報
【文献】特開2015-169029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、交通規制を伴う桁架設後の後作業の作業時間を短縮することができる橋桁の架設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る橋桁の架設方法は、橋桁を橋梁の下部構造から送り出して架設する橋桁の架設方法であって、送り出す橋桁を地組する橋桁地組工程を行い、当該橋桁地組工程では、地組した橋桁上にPCa床版を非合成状態で仮固定することを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る橋桁の架設方法は、請求項1に記載の橋桁の架設方法において、橋桁地組工程では、仮固定した前記PCa床版にPCa壁高欄をさらに仮固定することを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る橋桁の架設方法は、請求項1又は2に記載の橋桁の架設方法において、前記PCa床版の仮固定は、上部にねじ溝が切削加工されたねじ付きスタッドに高ナットを介してボルトを延長し、このボルトに螺合するナットで鋼製プレートを緊結することにより仮固定していることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る橋桁の架設方法は、請求項3に記載の橋桁の架設方法において、前記PCa床版と前記橋桁を接合する経時硬化材を打設する前に、前記ボルトを取り外すことによって高ナットの被り厚さを確保することを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る橋桁の架設方法は、請求項2に記載の橋桁の架設方法において、前記PCa壁高欄の仮固定では、前記PCa床版の外側へ前記PCa壁高欄が転倒しないように止め付ける転倒防止材を設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1~5に係る発明によれば、コンクリート床版の設置や壁高欄の設置などを行う橋桁設置後の後作業において、揚重機で各床版を吊り上げて何度も旋回するなどの時間のかかる作業を他の作業と同時並行で行うことができる。このため、交通規制を伴う作業の作業時間を短縮することができる。
【0016】
特に、請求項2に係る発明によれば、揚重機で各壁高欄を吊り上げて何度も旋回するなどの時間のかかる作業を他の作業と同時並行で行うことができる。このため、交通規制を伴う作業の作業時間をさらに短縮することができる。
【0018】
特に、請求項3に係る発明によれば、PCa床版の仮固定が、容易且つ確実に行うことができる。このため、作業時間が短縮されるだけでなく、橋桁の架設作業を安全に行うことができる。
【0019】
特に、請求項4に係る発明によれば、仮固定を解除して経時硬化材を打設する作業が容易に短時間で行うことができる。また、必要な被り厚さを確実に確保することができる。
【0020】
特に、請求項5に係る発明によれば、転倒防止材によりPCa壁高欄がPCa床版の外側へ転倒するおそれを完全に払拭することができ、極めて安全である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る橋桁の架設方法の第1ステップを示す工程説明図である。
【
図3】同上の新設の橋桁上に仮固定されたPCa床版とPCa壁高欄の接合部分を示す部分拡大図である。
【
図4】同上の新設の橋桁上に仮固定されたPCa床版とPCa壁高欄を示す平面図である。
【
図5】
図4の橋軸直角方向に沿ったA-A線断面図である。
【
図6】
図4の橋軸方向に沿ったB-B線断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る橋桁の架設方法の第2ステップを示す工程説明図である。
【
図8】同上の橋桁の架設方法の第3ステップを示す工程説明図である。
【
図9】同上の橋桁の架設方法の第4ステップを示す工程説明図である。
【
図10】同上の橋桁の架設方法の第5ステップを示す工程説明図である。
【
図11】同上の橋桁の架設方法の第6ステップを示す工程説明図である。
【
図12】同上の橋桁の架設方法の第7ステップを示す工程説明図である。
【
図13】同上の橋桁の架設方法の第8ステップを示す工程説明図である。
【
図14】
図6の高ナットをねじ付きスタッドにねじ込んで下降させる工程を示す工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る橋桁の架設方法を実施するための一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1~
図14を用いて、本発明の実施形態に係る橋桁の架設方法について説明する。第1下部構造K1~第4下部構造K4の3径間(3支間)に架け渡された鋼桁の橋を床版及び高欄も橋桁ごと一緒に架け替えて新しい橋桁を架設する場合を例示して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る橋桁の架設方法の第1ステップを示す工程説明図である。
【0024】
<第1ステップ>
(第1径間既設桁撤去工程)
先ず、本実施形態に係る橋桁の架設方法では、
図1に示すように、第1ステップとして、第1径間D1に架け渡された既設の橋桁EGを撤去する第1径間既設桁撤去工程を行う。
【0025】
具体的には、第1下部構造(橋台)K1と第2下部構造(橋脚)K2との間に架け渡された既設の橋桁EGを揚重機である移動式の油圧クレーンCLで吊り上げて、搬出車であるトレーラーTL等を用いて搬出撤去する。撤去作業の時間を短縮するためには、例えば、大型クレーンである300t級の自走式の油圧クレーンCL(オールテレーンクレーン)を用いて、第1径間D1に架け渡された既設の橋桁EG全体を一括して吊上げ撤去することが好ましい。
【0026】
(送出し設備組立工程)
また、本実施形態に係る橋桁の架設方法では、第1ステップとして、第1径間既設桁撤去工程と同時並行で、送出し設備SMを組み立てる送出し設備組立工程を行う。
【0027】
具体的には、仮設の軌条桁TGを設置し、この軌条桁TGに新設の橋桁1を送り出す際のレールとなる軌条設備(図示せず)を組み立てる。そして、この軌条設備上を新設の橋桁1がスライド自在となるように、台車設備DCや送出し装置SDを設置する。なお、軌条桁TG、台車設備DC、送出し装置SD、軌条設備等の前述の送り出し架設方法において新設の橋桁1を送り出す設備を総称して送出し設備SMと指称している。
【0028】
(第1回橋桁地組工程)
そして、本実施形態に係る橋桁の架設方法の第1ステップでは、送出し設備組立工程で組み立てた送出し設備SMの上に、送り出す新設の橋桁1を地組する第1回橋桁地組工程を行う。
【0029】
図2は、新設の橋桁1を示す側面図であり、
図3は、その新設の橋桁1上に仮固定されたPCa床版2とPCa壁高欄3の接合部分を示す部分拡大図である。また、
図4は、PCa床版2とPCa壁高欄3を示す平面図である。
図5は、
図4の橋軸直角方向に沿ったA-A線断面図、
図6は、
図4の橋軸方向に沿ったB-B線断面図である。
【0030】
図2、
図3に示すように、この第1回橋桁地組工程では、地組した新設の橋桁1上にPCa床版2とPCa壁高欄3を仮固定する。ここで、仮固定とは、PCa床版2と新設の橋桁1とを合成するコッター部分やPCa床版2同士を接合する間詰部にモルタルやグラウトなどの経時硬化材を打設して一体化せずに、経時硬化材未施工の非合成状態で固定することを指している。
【0031】
なお、PCa床版2は、予め工場等で打設されて硬化して既に所望の強度が発現したプレキャスト鉄筋コンクリート製の床版であり、図示しないPC鋼材が埋設されてプレテンション方式でプレストレスが付与されたPC床版(プレストレストコンクリート床版)である。PCa壁高欄3も、同様に、所望の強度が発現したプレキャスト鉄筋コンクリート製の壁高欄である。
【0032】
そして、本実施形態に係るPCa床版2は、
図3に示すように、PCa床版2,2間の間詰部に突出する継手鉄筋2aが配筋され、この間詰部に所定時間経過後に硬化する経時硬化材である接合モルタルが打設されて硬化することで一体化させるタイプのPCa床版である。この継手鉄筋2aの先端には、円筒状の鋼材2bがカシメ止められている。
【0033】
第1回橋桁地組工程では、
図4、
図5に示すように、鋼桁からなる複数条(図示形態では4条)の新設の橋桁1を1径間に架け渡すのに必要な本数、橋軸方向Xに沿ってボルト接合して組み立てる。なお、
図2に示すように、新設の橋桁1の送出し方向先端には、先端を軽量化するとともに、仮受TKからの反力を得るために手延機連結構TMが取り付けられる。
【0034】
本工程におけるPCa床版2の新設の橋桁1への仮固定は、
図4に示すように、PCa床版2に形成された桁との合成用の8個のコッター21~28のうち半数を用いて行う。橋軸方向Xにおいても、橋軸直角方向Yにおいても、PCa床版2のいずれか一方のコッター及び床版端部が拘束されていないフリーの状態とすることにより、後述の送出しの際に、PCa床版2に曲げ応力やせん断応力が伝達されないようにするためである。
【0035】
図4に示すように、図示形態では、コッター21,24,26,27において、新設の橋桁1にPCa床版2を仮固定している。
図5は、仮固定している部分を表すため、コッター22,23を透視してコッター26,27部分を破線で表している。
【0036】
なお、コッター21とコッター26、コッター27とコッター24というように互い違いに固定するのは、PCa床版2が新設の橋桁1のフランジ上を水平方向にズレることを防止するためである。
【0037】
通常、合成用のコッター21~28には、2本の頭付スタッド10が新設の橋桁1の上フランジ上に溶植されて接合される。しかし、
図4~
図6に示すように、PCa床版2を新設の橋桁1へ仮固定するために、本工程では、2本の頭付スタッド10の他、上部にねじ溝が切削加工されたねじ付きスタッド11を溶植する。そして、高ナット12を介してねじ付きスタッド11の上方に全ネジボルト13を延長し、この全ネジボルト13に螺合するナット14でコッター21,24,26,27の上面に架け渡した矩形の鋼製プレート15を緊結してPCa床版2を新設の橋桁1へ仮固定する。
【0038】
その上、本橋桁地組工程では、
図4、
図5に示すように、PCa床版2の地覆部2c上にPCa壁高欄3を仮固定する。PCa壁高欄3のPCa床版2への仮固定は、PCa壁高欄3の底面に開口する固定孔30へ地覆部2cに立設された鋼棒31を嵌め込む。そして、転倒防止材としてPCa床版2とPCa壁高欄3にアンカー止めされた鋼製ワイヤ32で地覆部2cの外側へPCa壁高欄3が転倒しないように止め付ける。
【0039】
なお、鋼棒31の両端には、円筒状の鋼材33がカシメ止められている。また、PCa壁高欄3の固定孔30の周囲及び地覆部2cの鋼棒31の周囲には、スパイラル筋34が配筋されている。鋼棒31へ作用する曲げモーメントにより、周辺のコンクリートに働く割裂引張応力へ対抗するためである。
【0040】
<第2ステップ>
図7は、本発明の実施形態に係る橋桁の架設方法の第2ステップを示す工程説明図である。
【0041】
(第2径間既設桁撤去工程)
次に、本実施形態に係る橋桁の架設方法では、
図7に示すように、第2ステップとして、第2径間D2に架け渡された既設の橋桁EGを撤去する第2径間既設桁撤去工程を行う。具体的な撤去方法は、前述の第1径間既設桁撤去工程と同様である。
【0042】
(下降設備及び仮受組立工程)
また、本実施形態に係る橋桁の架設方法では、第2ステップとして、第2径間既設桁撤去工程と同時並行で、新設の橋桁1を下降させる下降設備DM及び仮受TKを組み立てる下降設備及び仮受組立工程を行う。
【0043】
具体的には、第1下部構造K1である橋台の上に下降設備DMを組み立てるとともに、第2下部構造K2である橋脚の上に手延機連結構TMを支持する仮受TKを組み立てる。
【0044】
(第1回送出し工程)
そして、送出し設備SMを用いて、第1回橋桁地組工程で組み立てた新設の橋桁1を第2下部構造K2へ向け第1径間D1へゆっくりと送り出す。このとき、軌条桁TG上を台車設備DCを用いて新設の橋桁1をスライド移動させて行き、第2下部構造K2上に組み立てた仮受TKに手延機連結構TMが到達するまで送り出す。
【0045】
<第3ステップ>
図8は、本発明の実施形態に係る橋桁の架設方法の第3ステップを示す工程説明図である。
【0046】
本発明の実施形態に係る橋桁の架設方法の第3ステップでは、送出し設備SMの上において、新設の橋桁1の1径間分の橋桁を増設する第2回橋桁地組工程を行う。前述の第1回橋桁地組工程と同様に、新たに増設した新設の橋桁1上にPCa床版2とPCa壁高欄3を仮固定する。
【0047】
<第4ステップ>
図9は、本発明の実施形態に係る橋桁の架設方法の第4ステップを示す工程説明図である。
【0048】
(第3径間既設桁撤去工程)
次に、本実施形態に係る橋桁の架設方法では、
図9に示すように、第4ステップとして、第3径間D3に架け渡された既設の橋桁EGを撤去する第3径間既設桁撤去工程を行う。具体的な撤去方法は、前述の第2径間既設桁撤去工程と同様である。
【0049】
(下降設備及び仮受組立工程)
また、本実施形態に係る橋桁の架設方法では、第4ステップとして、第3径間既設桁撤去工程と同時並行で、新設の橋桁1を下降させる下降設備DM及び仮受TKを組み立てる下降設備及び仮受組立工程を行う。
【0050】
具体的には、第2下部構造K2である橋脚の上に下降設備DMを組み立てるとともに、第3下部構造K3である橋脚の上に手延機連結構TMを支持する仮受TKを組み立てる。
【0051】
(第2回送出し工程)
そして、送出し設備SMを用いて、第2回橋桁地組工程で組み立てた新設の橋桁1を第3下部構造K3へ向け第2径間D2へゆっくりと送り出す。このとき、軌条桁TG上を台車設備DCを用いて新設の橋桁1をスライド移動させて行き、第3下部構造K3上に組み立てた仮受TKに手延機連結構TMが到達するまで送り出す。
【0052】
<第5ステップ>
図10は、本発明の実施形態に係る橋桁の架設方法の第5ステップを示す工程説明図である。
【0053】
本発明の実施形態に係る橋桁の架設方法の第5ステップでは、送出し設備SMの上において、新設の橋桁1の1径間分の橋桁を増設する第3回橋桁地組工程を行う。前述の第1回、第2回橋桁地組工程と同様に、新たに増設した新設の橋桁1上にPCa床版2とPCa壁高欄3を仮固定する。
【0054】
<第6ステップ>
図11は、本発明の実施形態に係る橋桁の架設方法の第6ステップを示す工程説明図である。
【0055】
(下降設備及び仮受組立工程)
本実施形態に係る橋桁の架設方法では、第6ステップとして、第3径間において、新設の橋桁1を下降させる下降設備DM及び仮受TKを組み立てる下降設備及び仮受組立工程を行う。
【0056】
具体的には、第3下部構造K3である橋脚の上に下降設備DMを組み立てるとともに、第4下部構造K4である橋台の上に下降設備DMを組み立てる。
【0057】
(第3回送出し工程)
そして、送出し設備SMを用いて、第3回橋桁地組工程で組み立てた新設の橋桁1を第4下部構造K4へ向け第3径間D3へゆっくりと送り出す。このとき、軌条桁TG上を台車設備DCを用いて新設の橋桁1をスライド移動させて行き、第4下部構造K4上に組み立てた下降設備DMに新設の橋桁1の先端が到達するまで送り出す。
【0058】
<第7ステップ>
図12は、本発明の実施形態に係る橋桁の架設方法の第7ステップを示す工程説明図である。
【0059】
本実施形態に係る橋桁の架設方法では、第7ステップとして、
図12に示すように、架設用仮設設備を解体する仮設設備解体工程を行う。
【0060】
具体的には、移動式の油圧クレーンCLを用いて、新設の橋桁1の先端に取り付けた手延機連結構TMを解体撤去するとともに、別の油圧クレーンCLを用いて、送出し設備SMを解体撤去する。
【0061】
<第8ステップ>
図13は、本発明の実施形態に係る橋桁の架設方法の第8ステップを示す工程説明図である。
【0062】
(橋桁下降工程)
本実施形態に係る橋桁の架設方法では、第8ステップとして、
図13に示すように、下降設備DMを用いて、新設の橋桁1を下降させて所定の高さへ据え付ける橋桁下降工程を行う。
【0063】
図14は、
図6の高ナットをねじ付きスタッドにねじ込んで下降させる工程を示す工程説明図である。
図14に示すように、橋桁下降工程後に、全ネジボルト13を高ナット12から取り外して、仮固定を解除する。そして、所定の被り厚さが確保できるまで高ナット12をねじ付きスタッド11にねじ込んで下降させる。その後、各コッターに経時硬化材である接合モルタルを打設してPCa床版2と新設の橋桁1とを一体化させる。
【0064】
なお、必要数の頭付スタッド10に加えて、ねじ付きスタッド11を溶植する場合を例示して説明したが、ねじ付きスタッド11に高ナット12が螺着されていることで、頭付スタッド10と同様の合成効果が期待できる。このため、必要数の頭付スタッド10の1本をねじ付きスタッド11に代替することで、スタッドの本数を増やすことなくPCa床版2の仮固定を実現することができる。
【0065】
その他、伸縮装置等を取り付け、本実施形態に係る橋桁の架設方法である橋桁のである橋桁の架け替え工事が完了する。
【0066】
以上説明した本実施形態に係る橋桁の架設方法によれば、PCa床版2の設置やPCa壁高欄3の設置などを行う橋桁1の設置後の後作業において、油圧クレーンCLで各床版を吊り上げて何度も旋回するなどの時間のかかる作業を既設の橋桁の撤去作業と同時並行で行うことができる。このため、交通規制を伴う作業の作業時間を短縮することができる。
【0067】
また、本実施形態に係る橋桁の架設方法によれば、新設の橋桁1を送り出す際に、PCa床版2に曲げ応力やせん断応力が伝達されにくく、ひびが入るなどのPCa床版2が損傷するおそれが低減される。
【0068】
その上、本実施形態に係る橋桁の架設方法によれば、仮固定を解除して経時硬化材を打設する作業が容易に短時間で行うことができる。また、必要な被り厚さを確実に確保することができる。
【0069】
それに加え、本実施形態に係る橋桁の架設方法によれば、転倒防止材である鋼製ワイヤ32によりPCa壁高欄3がPCa床版2の外側へ転倒するおそれを完全に払拭することができ、極めて安全である。
【0070】
以上、本実施形態に係る橋桁の架設方法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【符号の説明】
【0071】
1:新設の橋桁(橋桁)
EG:既設の橋桁
10:頭付スタッド(スタッド)
11:ねじ付きスタッド(スタッド)
12:高ナット(ナット)
13:全ネジボルト(ボルト)
2:PCa床版(床版)
2a:継手鉄筋
2b:円筒状の鋼材
2c:地覆部
21~28:コッター
3:PCa壁高欄(壁高欄)
30:固定孔
31:鋼棒
32:鋼製ワイヤ(転倒防止材)
33:円筒状の鋼材
34:スパイラル筋
K1:第1下部構造
K2:第2下部構造
K3:第3下部構造
K4:第4下部構造
D1:第1径間
D2:第2径間
D3:第3径間
SM:送出し設備
SD:送出し装置(送出し設備)
TG:軌条桁(送出し設備)
DC:台車設備
DM:下降設備
TK:仮受
TM:手延機連結構
CL:油圧クレーン(揚重機)
TL:トレーラー(搬出車)
X:橋軸方法
Y:橋軸直角方向