(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】ブルガダ症候群を排除するためのECG信号の解析及びマッピング並びにアブレーション点の決定
(51)【国際特許分類】
A61B 34/10 20160101AFI20220530BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
A61B34/10
A61B18/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018009438
(22)【出願日】2018-01-24
【審査請求日】2020-11-12
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(73)【特許権者】
【識別番号】519303896
【氏名又は名称】カルロ・パッポーネ
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】カルロ・パッポーネ
(72)【発明者】
【氏名】アハロン・ツルゲマン
(72)【発明者】
【氏名】パオリ・ポッツィ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・ナタリツィア
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/123390(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0116681(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0010201(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0022250(US,A1)
【文献】Koonlawee Nademanee,Prevention of Ventricular Fibrillation Episodes in Brugada Syndrome by Catheter Ablation Over the Anterior Right Ventricular Outflow Tract Epicardium,Circulation,123(12),2011年,p.1270-1279,https://www.researchgate.net/publication/50395255_Prevention_of_Ventricular_Fibrillation_Episodes_in_Brugada_Syndrome_by_Catheter_Ablation_Over_the_Anterior_Right_Ventricular_Outflow_Tract_Epicardium,DOI:10.1161/CIRCULATIONAHA.110.972612
【文献】Pei Zhang,Characterization of the epicardial substrate for catheter ablation of Brugada syndrome,Heart rhythm: the official journal of the Heart Rhythm Society,13(11),2016年,p.2151-2158,https://www.researchgate.net/publication/305630689_Characterization_of_the_epicardial_substrate_for_catheter_ablation_of_Brugada_syndrome,DOI:10.1016/j.hrthm.2016.07.025
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓におけるブルガダ症候群の心外膜アブレーションのためのシステムであって、
ECG信号を測定するためのカテーテルと、
コンピュータであって、
心内膜持続時間マップを作成することと、
電位持続時間に従い設定された少なくとも1つ又は2つ以上の範囲設定領域を含むベースライン心外膜持続時間マップを作成することと、
前記範囲設定領域のうちの1つ又は2つ以上
において前記電位持続時間が200ミリ秒を超える場合、
当該範囲設定領域の心外膜アブレーションを実行することと、を行うように適合されている、コンピュータと、
前記心内膜持続時間マップ及び前記ベースライン心外膜マップを表示するための表示デバイスと、を備え
、
前記ベースライン心外膜マップが、前記電位持続時間が300ミリ秒を超える同心領域、前記電位持続時間が250ミリ秒を超える同心領域、及び前記電位持続時間が200ミリ秒を超える同心領域を備える、システム。
【請求項2】
前記コンピュータが、
心外膜アブレーションの実行後に、更新された心外膜持続時間マップを作成し、BrSパターンが前記更新された心外膜持続時間マップ内に
おけるEGM信号に出現するかどうかを判定することと、
前記BrSパターンが出現する場合、心外膜アブレーションを実行することと、を行うように更に適合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
アジマリンを前記心臓内に注入するための用具を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記コンピュータが、心外膜アブレーションの実行後に、解剖学的体積データを維持することと、電気解剖学的データを追加することとを含む更新された心外膜マップを作成するように更に適合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
アブレーション処置を改善するためのコンピュータ
プログラムであって、前記
コンピュタプログラムが、コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、
心内膜持続時間マップを作成する工程と、
電位持続時間に従い設定された少なくとも1つ又は2つ以上の範囲設定領域を含むベースライン心外膜持続時間マップを作成する工程と、
前記範囲設定領域のうちの1つ又は2つ以上
において前記電位持続時間が200ミリ秒を超える場合、
当該範囲設定領域の心外膜アブレーションを実行する工程と、
を行わせ
、
前記ベースライン心外膜マップが、前記電位持続時間が300ミリ秒を超える同心領域、前記電位持続時間が250ミリ秒を超える同心領域、及び前記電位持続時間が200ミリ秒を超える同心領域を備える、コンピュータ
プログラム。
【請求項6】
心外膜アブレーションの実行後に、更新された心外膜持続時間マップを作成
させ、BrSパターンが前記更新された心外膜持続時間マップ内に
おけるEGM信号に出現するかどうかを判定
させることと、
前記BrSパターンが出現する場合、心外膜アブレーションを実行
させることと、を更に含む、請求項
5に記載のコンピュータ
プログラム。
【請求項7】
心外膜アブレーションの実行後に、解剖学的体積データを維持
させることと、電気解剖学的データを追加
させることとを含む更新された心外膜マップを作成
させることを更に含む、請求項
5に記載のコンピュータ
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、「A Method And System For Eliminating A Broad Range Of Cardiac Conditions By Analyzing Intracardiac Signals,Providing A Detailed Map And Determining Potential Ablation Points」と題され、2017年12月26日に出願された米国特許出願第15/854,492号を、その全体が本明細書に記載されているかのように参照により本明細書に組み込む。本出願は、2017年1月25日に出願された米国仮特許出願第62/450,388号の利益を主張するものである。本出願は、米国特許出願第15/854,485号(2017年12月26日出願)の一部継続出願であり、当該特許文献は、その全体が本明細書に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
実施形態によれば、ブルガダ症候群(BrS)を排除するために、心電図記録(ECG)信号の改善された解析を可能にするシステム及び方法が提供される。本システム及び方法は、信号の持続時間を自動的に測定し、オンセットからオフセットまでの心室電位図(EGM)持続時間に注釈を付けることによって、電位持続時間マップ(PDM)を作成することができる。
【0003】
ブルガダ症候群の心外膜アブレーションの方法は、心内膜持続時間マップを作成することと、少なくとも1つ又は2つ以上の範囲設定領域を含むベースライン心外膜持続時間マップを作成することと、範囲設定領域のうちのいくつかが200ミリ秒を超える場合、200ミリ秒を超える範囲設定領域の心外膜アブレーションを実行することと、を含み得る。本方法は、心外膜アブレーションの実行後に、更新された心外膜持続時間マップを作成することと、BrSパターンが更新された心外膜持続時間マップ内に出現するかどうかを判定することと、BrSパターンが出現する場合、心外膜アブレーションを実行することと、を更に含み得る。本方法は、心外膜アブレーションの実行後に、更新された心外膜持続時間マップを作成することと、異常なEGMが更新された心外膜持続時間マップ内に存在するかどうかを判定することと、異常なEGMが存在する場合、心外膜アブレーションを実行することと、を更に含み得る。本方法は、解剖学的体積データを維持することと、電気解剖学的データを追加することとを含む更新された心外膜マップを作成することを更に含み得る。本方法は、ベースライン心外膜持続時間マップ、及び更新された心外膜マップが、カットオフ間隔を有する同心領域を表示することを更に含み得る。本方法は、ベースライン心外膜持続時間マップを作成する工程において、少なくとも1つのサイクル長を含む関心ウィンドウ(WOI)を定義することと、このサイクル長及び参照注釈に基づいて、以前の心拍を算出することと、WOIのサイクル長内の心拍をWOIに割り当てることと、開始電位持続時間及び終了電位持続時間を見つけ出すことと、WOIに割り当てられた心拍からの最小標準偏差を有する心拍に基づいて、アブレーション点を選択することと、を更に含み得る。
【0004】
心臓内のブルガダ症候群の心外膜アブレーションのためのシステムは、ECG信号を測定するためのカテーテルと、コンピュータであって、心内膜持続時間マップを作成することと、少なくとも範囲設定領域のうちの1つ又は2つ以上の領域を含むベースライン心外膜持続時間マップを作成することと、範囲設定領域のうちの1つ又は2つ以上が200ミリ秒を超える場合、200ミリ秒を超える範囲設定領域の心外膜アブレーションを実行することと、を行うように適合されている、コンピュータと、心内膜持続時間マップ及びベースライン心外膜マップを表示するための表示デバイスと、を備え得る。本システム内のコンピュータは、心外膜アブレーションの実行後に、更新された心外膜持続時間マップを作成することと、BrSパターンが更新された心外膜持続時間マップ内に出現するかどうかを判定することと、BrSパターンが出現する場合、心外膜アブレーションを実行することと、を行うように更に適合されていてもよい。本システム内のコンピュータは、心外膜アブレーションの実行後に、更新された心外膜持続時間マップを作成することと、異常なEGMが更新された心外膜持続時間マップ内に存在するかどうかを判定することと、異常なEGMが存在する場合、心外膜アブレーションを実行することと、を行うように更に適合されていてもよい。本システムは、アジマリンを心臓内に注入するための用具を更に備えてもよい。本システム内のコンピュータは、心外膜アブレーションの実行後に、解剖学的体積データを維持することと、電気解剖学的データを追加することとを含む更新された心外膜マップを作成するように更に適合されていてもよい。本システム内のコンピュータは、ベースライン心外膜持続時間マップ及び更新された心外膜マップ上に、カットオフ間隔を有する同心領域を表示するように更に適合されてもいてよい。本システム内のコンピュータは、少なくとも1つのサイクル長を含む関心ウィンドウ(WOI)を定義する工程と、このサイクル長及び参照注釈に基づいて、以前の心拍を算出する工程と、WOIのサイクル長内の心拍をWOIに割り当てる工程と、開始電位持続時間及び終了電位持続時間を見つけ出す工程と、WOIに割り当てられた心拍からの最小標準偏差を有する心拍に基づいてアブレーション点を選択する工程と、を実行することによって、ベースライン心外膜持続時間マップを作成するように更に適合されていてもよい。
【0005】
ブルガダ症候群の心外膜アブレーションのためのコンピュータプログラム製品も提示される。
【0006】
本発明のこれら及びその他の目的、特徴及び利点は、添付の図面と関連付けて解釈されるべき、その例示的実施形態に関する以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明をより深く理解するために、本発明の詳細な説明を実例として参照するが、この説明は以下の図面と併せて読むべきものであり、図中、同様の要素には同様の参照数字を付してある。
【
図2】実施形態における例示の方法のフロー図である。
【
図4A】高周波アブレーションの前後のPDMを示す。
【
図4B】高周波アブレーションの前後のPDMを示す。
【
図7】一実施形態におけるブルガダ症候群の心外膜アブレーションのワークフロー図である。
【
図8】本発明の技法が使用される実施形態による、心臓アブレーションのリアルタイムマッピングのための例示のマッピングシステムを示す。
【
図9】一実施形態における医療用システムの例示の構成要素を示すブロック図である。
【
図10A】1人の例示の患者についての試験結果を示す。
【
図10B】1人の例示の患者についての試験結果を示す。
【
図10C】1人の例示の患者についての試験結果を示す。
【
図11】1人の患者についての追加の試験結果を示す。
【
図12】1人の患者についての自発性1型ブルガダパターンを示す。
【
図13】1人の患者についての自発性1型ブルガダパターンにおけるRFアブレーションを示す。
【
図14】例示の患者についてのRFアブレーション前後のPDMを示す。
【
図15】例示の患者についてのECGの変化を示す。
【
図16】例示の患者についてのアブレーションの結果の表を示す。
【
図17】研究対象集団の電気生理学的特性の表を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ブルガダ症候群(BrS)は、構造的に正常な心臓を有する患者における突然死の高発生率を伴うECG異常である。この症候群又は障害は、前胸部導出における不完全右脚ブロック及びST部の上昇によって特徴付けられるいくつかのECGパターンのうちの1つに関連する突然死によって特徴付けられる。
【0009】
BrSは、悪性心室性不整脈に起因する心臓突然死の素因になる遺伝的に決定された疾患である。本システム及び方法の第1の態様は、EGM信号を解析すること、アブレーション点を決定すること、及びマッピングカテーテル上にキャリパーを手動で編集して、持続時間を設定することによって、ブルガダ症候群を治療することである。本システムの第2の態様は、BrS患者の心外膜層上で見つけ出されたEGMの持続時間に従って、異常基質の可視化を可能にする、以下に提示された例示の方法である。
【0010】
図1は、中心において、電位持続時間マップ(PDM)(例えば、RV心外膜マップ)、左の列において選択されたポイントビューア、及び右の列においてPasoビューアを示す。このPDMは、15.0ミリ秒~171.0ミリ秒の範囲のShortex Complex Interval(SCI)のスケールを使用する。PDMは、EGMがマッピング法に従って自動的に作成する各ポイントについての電位持続時間を測定するために、本システムを用いて作成される。
図1の左側に示されるEGMは、MAP1-2及びMAP3-4を含み、それぞれがマッピングカテーテルのトレーシングの方向の変化を示すピーク101を有する。
【0011】
例示の方法は、BrS患者の心外膜層において見つけ出されたEGM持続時間に従って、異常基質を可視化するために実行される。例えば、CARTO(登録商標)3システム(Biosense Webster)のコンプレックス細分化心房電位図(CFAE)モジュールを使用して、それぞれの電気解剖学的に取得されたポイントに対して、2つのキャリパー、すなわち第1のキャリパーを記録されたEGMのオンセット上に、また第2のキャリパーを記録されたEGMのオフセット上に配置することによって、手動で移動される。CFAEが、取得されたポイントでの双極性EGM信号における分裂を使用して算出を行うことに留意されたい。この分裂は、左右の境界を有する間隔持続時間としてマークされる。本方法は、異なる延長の程度を示す、色分けされたマップ(色が異なるハッチングパターンを使用して示される)等のコード化マッピングを含み得るPDMの作成を可能にする、心室のEGM持続時間の正確な測定をもたらす。異常な基質の適切な特徴付け、並びにこのようなEGMの位置特定は、処置を成功裏に達成するために、カテーテルアブレーションの適切な標的を確立する助けとなり、PDMはこのような特徴付けを可能にする。
【0012】
図1に示されるように、本システムは、EGM信号を自動的に注釈を付けて測定し(左パネルに示されるように)、アブレーションによるブルガダ症候群の排除のためのPDMを作成するために使用することができる。このシステムは、アブレーションする場所を検出する過程を自動化することによって、CARTO(登録商標)3等の従来のソフトウェアを改善するために、注釈技法を使用する。
【0013】
図2は、ブルガダ症候群におけるアブレーション点を自動的に決定するための例示の方法のフロー図である。
図2に示されるように、本方法は、以下の通りに実行される。
【0014】
工程S201において、関心ウインドウ(WOI)が定義され、このWOIは、通常、電圧振幅(ピーク間のmV)及び信号持続時間を算出するために使用されるEGM及び/又はECGにおける間隔である。例示のEGMが、
図1に示される。
【0015】
工程S202において、少なくとも2つの以前の心拍が、サイクル長及び基準注釈に基づいて算出され、WOIが、この心拍の2つに割り当てられる。それぞれの電気解剖学的に取得されたポイント(例えば、ポイントEGM)が、例えばPDM、CFAE、LAT、双極性電圧等のマップタイプに従ってマップを着色するために使用されるデータを含有することに留意されたい。例示のマップが
図10~14(以降に記述)に示される。1つの取得ポイントにおいて、例えば、ECG及びEGMの2500ミリ秒に等しいウィンドウが記録される。例えば、心拍についての基準注釈を2000ミリ秒に置く場合、第1のWOI[-50ミリ秒、350ミリ秒]は2000ミリ秒-50ミリ秒(例えば、1950ミリ秒)から2000ミリ秒+350ミリ秒(例えば、2350ミリ秒)になる。心拍サイクル長が800ミリ秒である場合、2500ミリ秒のWOIには複数の心拍が存在する。以前の心拍基準を、1200ミリ秒(2000ミリ秒-800ミリ秒[例えば、1200ミリ秒])に置くならば、WOIは、1200ミリ秒-50ミリ秒(例えば、1150ミリ秒)から1200ミリ秒+350ミリ秒(例えば、1550ミリ秒)になるであろう。上述した時間間隔が、例として使用されており、限定するものとしてみなされるべきではないことに留意されたい。
【0016】
次に、各心拍の各WOIに対して、以下の通りに工程S203~211に示されるように、電位持続時間が算出される。
【0017】
工程S203において、ピークが、WOI内の所定の閾値に基づいて算出され、WOI内のピークのリストが作成される。EGM信号値がmVで測定され、一例では、0.05mVを超えるmV値を有するピークがマークされる。しかしながら、ピーク閾値が医師によって設定されてもよいことに留意されたい。
【0018】
工程S204において、以下の通りに工程S205~S207に示されるように、電位持続時間開始(PD開始)が、WOIの出発点から確認することによって定義される。
【0019】
工程S205において、2つの連続したピークが同じ徴候を有し、かつ同じピーク絶対値が2*Min未満であるかどうかが判定される。
【0020】
工程S206において、S205=YES(はい)である場合(2つの連続したピークが同じ徴候を有し、かつ連続したピークの絶対値が2*Min未満である場合)、現在のピークが第2のピークとして設定され、次のピークが得られ、方法は工程S205に戻る。
【0021】
工程S207において、S205=NO(いいえ)である場合(2つの連続したピークが同じ徴候を有せず、かつ/又は連続したピークの絶対値が2*Min以上である場合)、現在のピークの前の勾配の開始が見つけ出され、これが開始電位持続時間としてマークされる。
【0022】
工程S208において、以下の通りに工程S209~S210に示されるように、電位持続時間終了(PD終了)が、WOIの終了点から確認することによって定義される。
【0023】
工程S209において、2つの連続したピークの距離が、120ミリ秒を超えるかどうかが判定される。
【0024】
工程S210において、S209=はいである場合(2つの連続したピークが120ミリ秒を超える場合)、PD終了部分の開始が、2つの連続したピークの最低時間を有するピークとしてマークされ、方法は工程S209に戻る。
【0025】
工程S211において、S209=いいえである場合(2つの連続したピークが120ミリ秒を超える距離を有しない場合)、このときは、工程S211において、2つの連続したピークが同じ徴候を有し、かつ同じピークの絶対値が2*Min閾値未満であるかどうか、2つの連続したピーク間の時間が120ミリ秒を超えるかどうか、又は2つの連続したピーク間の時間が25ミリ秒未満であるかどうかが判定される。
【0026】
電位持続時間の安定性及び再現性が極めて重要な因子であり得ることを念頭に置いて、一実施形態では、本技法は別の因子を考慮に入れることができ、この技法は、二重又は遅延電位の存在下で、遅延活動がまた2500ミリ秒記録ウィンドウ内に含まれる全ての心拍において存在するということを検証可能である。
【0027】
工程S212において、S211=はいである場合(2つの連続したピークが同じ徴候を有し、かつピークの絶対値が2*Min未満であり、2つの連続したピーク間の時間が120ミリ秒を超えるか、又は2つの連続したピーク間の時間が25ミリ秒未満である場合)、次のピークが最低時間で得られ、方法は工程S211に戻る。
【0028】
工程S213において、S211=いいえである場合(2つの連続したピークが同じ徴候を有せず、ピークの絶対値が2*Min以上であるか、又は2つの連続したピーク間の時間が120ミリ秒以下であるか、若しくは2つの連続したピーク間の時間が25ミリ秒以上である場合)、現在のピークの後の勾配の開始が見つけ出され、終了電位持続時間としてマークされる。
【0029】
工程S214において、電位持続時間値が、電位持続時間開始と電位持続時間終了との間の差としてミリ秒で算出される。
【0030】
工程S215において、選択されたポイント電位持続時間値が、各心拍のWOI上の位置の最小標準偏差を有する心拍として設定される。BrSの治療後にBrS及びBS ECG ISを誘発するときのBS ECG IS間の領域測定値は、処置をいつ停止するかの指標を提供し得ることに留意されたい。
【0031】
PDM及び上述した解析によれば、≧200ミリ秒の持続時間を示す任意のEGMは異常とみなされ得、したがって、カテーテルアブレーションの標的となる。3つの異なる同心領域が、異なるカットオフ間隔、例えば、それぞれ≧300ミリ秒、≧250ミリ秒、及び≧200ミリ秒を設定することによる延長の程度に従って特定される。異なるカットオフは、
図3A、3B及び3Cに示され、以下により詳細に記載されるように、基質の小さな「コア」(≧300ミリ秒のEGM持続時間を示す領域)から開始し、その後、それぞれ≧250ミリ秒及び≧200ミリ秒の電位持続時間を有するより大きな領域に移動するアブレーション処置を案内するために必要である。
【0032】
本発明の技法は、上述した領域内に位置する全ての遅延及び延長したEGM活動を排除することを可能にし得る。全ての異常な電位の廃止及び安定したBrS-ECGパターンの排除を確実にするために、クラスIC薬剤負荷がアブレーションの終了時に実行される。薬剤負荷後にBrS-ECGパターンが再出現する場合には、心外膜PDMは、200ミリ秒よりも大きなPDMを有する標的位置をアブレーション用に特定するためにPDMを使用する心外膜の再マップとなる。ECGパターンを完全に正常化するために、これが繰り返されて、いかなる残留する又は追加の異常信号も更なるRF適用のために特定される。最終的な終点、例えばアブレーション点は、クラスIC薬剤試験によって証明されたBrS ECGパターンの排除及び非誘発性、並びにマッピング処置中に特定された任意の延長及び分裂された電位のRFカテーテルアブレーションを使用した廃止によって得られる。
【0033】
図3A、3B、及び3Cは、ブルガダ症候群の同心性基質分布を示し、すなわち、これらの図面のそれぞれは、クラスIC薬剤負荷後の心外膜PDMを示す。これらのマップは、各双極性EGMの持続時間を収集することによって再構成されている。色分け(異なるハッチングパターンで示される)は、赤色301から紫色305までの範囲であり、赤色301は、110ミリ秒未満の持続時間を呈する領域を示している。紫色305は、より長いEGM持続時間(
図3Aでは≧300ミリ秒、
図3Bでは≧250ミリ秒、及び
図3Cでは≧200ミリ秒)を有する領域を表している。追加の色(図示されず)は、>110ミリ秒~300ミリ秒の領域を表す。適用される異なるカットオフに従って、同心性の分布が示され、ここでは最長の電位(≧300ミリ秒の持続時間)は、内円に位置し(
図3A)、一方で比較的短いが、それでも≧200ミリ秒のものは、外円にある(
図3C)。より長い電位持続時間を示す領域は、異なる寸法を有する(それぞれ、≧300の領域は5.9cm
2であり、≧250の領域は14.7cm
2であり、≧200ミリ秒の領域は27.6cm
2である)。
図3A、3B、3Cの各マップの下に、アジマリン試験後にcoved型パターンが発生するときの紫色305領域内で記録されたEGMの例が示される(
図3A、3B、3Cの各パネルにおいて、それぞれ322ミリ秒、255ミリ秒及び230ミリ秒の持続時間のEGM)。
【0034】
QRS複合群は、典型的な心電図、例えばEGM又はECGで見られる図形の偏向のうちの3つの組み合わせについての名称である。QRSは、通常、トレーシングの中心にあり、最も視覚的に明白な部分である。これは、ヒトの心臓の左右の心室の脱分極に相当する。成人において、偏向は、通常、0.06~0.10秒続き、子供において、及び身体活動中には、これはより短い場合がある。Q、R、及びS波は続発して、全ての誘導で全てが出現することはなく、単一の事象を反映するので、通常、まとめて扱われる。Q波は、P波の後の任意の下向きの偏向である。R波は、上向きの偏向として続き、S波は、R波の後の任意の下向きの偏向である。T波は、S波に続き、場合によっては、追加のU波がT波に続く。QRSの停止後に遅延活動が延長され、これは、分裂され分離した遅延構成要素によって特徴付けられる。QRSは、右心室及び左心室の同時の活動化を表す。
【0035】
図3A、3B及び3Cの下部に示される各EGMパネルにおいて、V1 ECG誘導、遠位、近位双極性及び単極性信号が、それぞれ上から下まで、200mm/秒の速度で示される。
【0036】
本明細書に記載される技法は、持続時間マップ構築のための手動の測定の既存のプロセスを改善するであろう。医師は、持続時間マップの再構成中に採取される各ポイントに対して2つの持続時間キャリパーを手動で移動及び測定する必要はもはやなくなる。本方法を使用して、それぞれの取得されたポイントの電位持続時間を算出することによって、本システムは、心室のEGM持続時間を、オンセットからそのオフセットまで自動的に注釈を付け、かつ信号持続時間を自動的に測定して、ブルガダ症候群の基質特徴付けのためのPDMを作成することができる。
【0037】
更に、延長されたEGM検出及びそれらの電位持続時間に関する定量のプロセスは、本技法によって改良される。このアプローチは、適切なアブレーション標的領域を正確に特定する客観的な注釈を有するPDMを作成する。本システムは、処置の速度を高めるために、アブレーション及び/又は多電極マッピング(MEM)カテーテルによって、双極性及び電位持続時間情報を自動的に取得する。本方法は、取得したポイントのマッピング双極性信号の2.5秒での2つの心拍で実行することができ、最適な位置安定性を有する心拍に関する電位持続時間を選択することができる。これは、位置安定性が、電位持続時間の算出において考慮に入れられることを可能にし、これは手動では行うことができない。
【0038】
図4A及び4Bは、RFアブレーションの前後のPDMを示す。
図4Aの上部は、アブレーション前のPDMを示し、一方で
図4Aの下部は、紫色領域305で見つけ出される延長及び分裂された電位(遠位双極性EGM 255ミリ秒持続時間「DP-EMG」)の例を示す。アブレーションの後、
図4Bの上部は異常に延長されたEGMの消失を伴うPDMを示し、遅延構成要素(電位持続時間が200ミリ秒より大きい0.05mVを超えるQRSピーク後の活動化)が廃止されたことを強調している(EGM持続時間143ミリ秒である、
図4Bの下部)。
図4Bの下部のアスタリスクは、アブレーション前に記録された遅延構成要素の消失を示す。
図4Bに示されるEGMは、
図4Aに示される延長及び分裂された電位を以前に示される同じ領域内に登録されている。各EGMパネルでは、記録されたV1 II ICS ECG誘導、遠位、近位双極性、及び単極性信号は、上から下にそれぞれ示される。
図4Aの下部では、V1誘導が典型的なcoved型パターンを示しており、これに対して、
図4Bの下部では、同じECG誘導は、アブレーション後に、BrSパターンが修正されて、水平で平坦なST部の上昇を示すことを実証していることに留意されたい。
【0039】
図5は、2つの垂直線又は境界線、R1及びR2によりマークされた電位持続時間の算出を示す。これらの境界は、2000ミリ秒-50ミリ秒(1950ミリ秒)から2000ミリ秒+400ミリ秒(2400ミリ秒)までのWOI[-50、400]を示す。図示するように、電位持続時間は、200ミリ秒を超える。点線の垂直線の周りにQRSがあり、遅延構成要素は、2つの境界線R1及びR2でマークされた電位持続時間の右側部分に表示される。
【0040】
図6は、BS ECG信号の変化、すなわち、BrSが誘発された場合のBS ECG信号601の変化、及びBrSをアブレーションで処置した後のBS ECG信号602を示す。したがって、ECG 602は、クラスIC薬剤注入の終了を指し、ECG 601はRFアブレーションの終了を指す。
【0041】
図7は、ブルガダ症候群の心外膜アブレーションのワークフロー図である。工程S701において、心内膜双極性/持続時間RVマッピングが実行される。工程S702においては、心外膜双極性/持続時間マッピングが実行され、例えば
図1に示されるようなベースラインPDMを作成する。工程S703においては、アジマリン注入が施され、アジマリン試験が実行される。工程S704において、FAM(解剖学的体積)データを維持し、電気解剖学的データを追加する、更新された心外膜持続時間マップが生成される。工程S705において、範囲設定領域があるかどうか、すなわち、電位持続時間が閾値の量を超えている、例えば、200ミリ秒超の閾値の領域があるかどうかが判定される。そうである場合(S705=はい)、工程S806で、範囲設定領域(1つ又は複数)のカテーテルアブレーションが実行される。工程S707において、アジマリン試験が繰り返されるが、この試験は、最初に工程S703で実行されたものである。
【0042】
工程S708において、BrSパターンが再出現するかどうかが判定される。BrSパターンが確かに再出現する場合(S708=はい)、処置は工程S704に続く。BrSパターンが確かに再出現しない場合(S708=いいえ)、工程S709にて、更新された心外膜持続時間再マップが作成される。工程S710において、任意の異常なEGMが特定されるかどうかが判定される。特定されない場合(S710=いいえ)、処置は終了する。
【0043】
1つ又は2つ以上の異常なEGMが特定される場合(S710=はい)、工程S711にて、新しい異常なEGM領域のカテーテルアブレーションが準備され、プロセスは工程S709に続く。
【0044】
範囲設定領域が200ミリ秒以下である場合(S705=いいえ)、処置は終了する。
【0045】
図8を参照すると、情報52(例えば、PDM及び他のマップ並びに患者の一部の解剖モデル及び信号情報)を生成し表示するために使用され得る例示の医療システム800の図が示される。用具22等の用具は、例えば、患者28の心臓26内の電位をマッピングするための複数の電極を有するカテーテル等の、診断又は治療処置のために用いられる任意の用具であってよい。代替的に、用具は、必要な変更を加えて、心臓、肺、又はその他の人体臓器内(例えば、耳部、鼻部、及び咽喉(ENT))等の異なる解剖学的部分の他の治療目的及び/又は診断目的で使用されてもよい。用具は、例えば、プローブ、カテーテル、切断用具、及び吸引デバイスを含んでもよい。
【0046】
操作者30は、用具22の先端56が心臓26の腔に入るように、患者の解剖学的構造の一部(例えば、患者28の脈管系等)に用具22を挿入することができる。制御コンソール24は、心臓26内部にある用具の3次元位置座標(例えば、先端56の座標)を決定するために、磁気式位置検出を用いてもよい。位置座標を決定するために、制御コンソール24内の駆動回路34は、コネクタ44を介して磁場発生装置36を駆動して、患者28の解剖学的構造内に磁場を生成することができる。
【0047】
磁場発生装置36は、患者28の外部の既知の位置に配置された1つ又は2つ以上のエミッタコイル(
図8には図示されず)を含み、このコイルは、患者の解剖学的構造の関心部分を含む既定の作業範囲内に磁場を生成するように構成されている。エミッタコイルのそれぞれは、異なる周波数で駆動されて一定磁場を放出することができる。例えば、
図8に示される例示の医療システム800では、1つ又は2つ以上のエミッタコイルは、患者28の胴の下に配置されることができ、それぞれが患者の心臓26を含む既定の作業範囲内に磁場を生成するように構成されている。
【0048】
図8に示されるように、磁場位置センサ38が、用具22の先端56に配設される。磁場位置センサ38は、磁場の振幅及び位相に基づいて、用具の3次元位置座標(例えば、先端56の位置座標)を示す電気信号を生成する。電気信号は、用具の位置座標を決定するために、制御コンソール24に伝達され得る。電気信号は、ワイヤ45を介して制御コンソール24に伝達されてもよい。
【0049】
代替的に、又は有線通信に加えて、電気信号は、例えば、制御コンソール24の入力/出力(I/O)インタフェイス42と通信することができる用具22の無線通信インタフェイス(図示されず)を介して、制御コンソール24に無線通信されてもよい。例えば、開示内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,266,551号は、とりわけ、信号処理装置及び/又は計算装置に物理的に接続されていないワイヤレスカテーテルについて記載しており、これは参照により本明細書に組み込まれる。もっと正確に言えば、送受信機はカテーテルの近位端に取り付けられている。送受信機は、例えばIR送信、RF送信、ブルートゥース送信、又は音響送信等の無線通信方法を使用して、信号処理装置及び/又は計算装置と通信する。無線デジタルインタフェイス及びI/Oインタフェイス42は、当該技術分野で既知である、例えば、IR、RF、ブルートゥース、規格のIEEE 802.11ファミリーの1つ(例えば、Wi-Fi)、又はHiperLAN規格等の任意の好適な無線通信規格に従って動作することができる。
【0050】
図8は、用具22の先端56に配設された単一の磁場位置センサ38を示しているが、用具は、それぞれが用具の任意の部分に配設された1つ又は2つ以上の磁場位置センサを含み得る。磁場位置センサ38は、1つ又は2つ以上の小型コイル(図示されず)を含んでもよい。例えば、磁場位置センサは、異なる軸に沿って配向された多数の小型コイルを含んでもよい。代替的に、磁場位置センサは、別のタイプの磁気センサ又は他のタイプの位置検出器(例えば、インピーダンスに基づく位置センサ若しくは超音波位置センサ)のいずれかを含んでもよい。
【0051】
信号プロセッサ40は、位置及び向きの座標の両方を含む用具22の位置座標を決定するために、信号を処理するように構成されている。上述した位置検知方法は、Biosense Webster Inc.,(Diamond Bar,Calif.)製のCARTO(商標)マッピングシステムにおいて実装されており、本明細書に引用される特許及び特許出願において詳細に説明されている。
【0052】
用具22はまた、先端56内に収容された力センサ54を含み得る。力センサ54は、用具22(例えば、用具の先端56)によって心臓26の心内膜組織に加えられる力を測定し、制御コンソール24に送信される信号を生成することができる。力センサ54は、先端56のバネによって接続された磁場送信機及び受信機を含んでいてもよく、バネのたわみの測定に基づいて力の指標を生成することができる。この種のプローブ及び力センサの更なる詳細は、米国特許出願公開第2009/0093806号及び同第2009/0138007号に記載されており、これらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。代替的に、先端56は、例えば、ファイバー光学又はインピーダンス測定を用い得る別のタイプの力センサを含んでもよい。
【0053】
用具22は、先端56に連結され、かつインピーダンスに基づく位置検出器として機能するように構成された、電極48を含んでもよい。追加的に又は代替的に、電極48は、特定の生理学的性質、例えば、1つ又は2つ以上の位置における局所表面電位(例えば、心組織の電位)等を測定するように構成されてもよい。電極48は、心臓26の心内膜組織をアブレーションするために、RFエネルギーを印加するように構成され得る。
【0054】
例示の医療システム800は、磁気に基づくセンサを使用して用具22の位置を測定するように構成され得るが、他の位置追跡技術を用いてもよい(例えば、インピーダンスに基づくセンサ)。磁気位置追跡技術は、例えば、米国特許第5,391,199号、同第5,443,489号、同第6,788,967号、同第6,690,963号、同第5,558,091号、同第6,172,499号、同第6,177,792号に記載されており、これらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。インピーダンスに基づく位置追跡技術は、例えば、米国特許第5,983,126号、同第6,456,828号、及び同第5,944,022号に記載されており、これらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
I/Oインタフェイス42により、制御コンソール24と、用具22、体表面電極46、及び任意のその他のセンサ(図示されず)との相互作用が可能になる。信号プロセッサ40は、体表面電極46から受信した電気インパルス、並びに医療システム900のI/Oインタフェイス42及び他の構成要素を介して用具22から受信した電気信号に基づいて、3D空間内の用具の位置を決定し、また表示情報52を生成することができ、この情報は表示部50に示され得る。
【0056】
信号プロセッサ40は、用具22から信号を受信しかつ制御コンソール24の他の構成要素を制御するのに好適なフロントエンド回路及びインタフェイス回路を有する、汎用コンピュータに含まれ得る。信号プロセッサ40は、本明細書に記載する機能を実行するように、ソフトウェアを使用してプログラムされてもよい。ソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子的形態で制御コンソール24にダウンロードされてもよく、又はそれは、光学的、磁気的、若しくは電子的記録媒体等の持続性有形媒体上に提供されてもよい。代替的に、信号プロセッサ40の機能のうちの一部又は全てが、専用の又はプログラム可能なデジタルハードウェア構成要素によって実行されてもよい。
【0057】
図8で示される実施例では、制御コンソール24は、ケーブル44を介して体表面電極46に接続されており、体表面電極46のそれぞれは、患者の皮膚に付着するパッチ(例えば、
図8では電極46の周りの円として示される)を使用して患者28に取り付けられている。体表面電極46は、可撓性基材上に集積された1つ又は2つ以上の無線センサノードを含み得る。1つ又は2つ以上の無線センサノードは、局所的なデジタル信号処理を可能にする無線送信/受信ユニット(WTRU)、無線リンク、及び小型の再充電可能電池を含み得る。パッチに加えて又はそれに代替して、体表面電極46はまた、患者28によって着用される、体表面電極46を含む物品を使用して患者上に位置付けられてもよく、着用された物品の位置を示す1つ又は2つ以上の位置センサ(図示されず)を含んでもよい。例えば、体表面電極46は、患者28によって着用されるように構成されたベストに埋め込まれてもよい。手術中、体表面電極46は、心組織の分極及び脱分極によって生じる電気インパルスを検出し、ケーブル44を介して情報を制御コンソール24に送信することによって、3D空間内の用具(例えば、カテーテル)の位置を提供するのに役立つ。体表面電極46は、磁気位置追跡装置を装備していてもよく、患者28の呼吸サイクルを特定し追跡するのに役立ち得る。有線通信に加えて又はそれに替えて、体表面電極46は、無線インタフェイス(図示されず)を介して制御コンソール24と又は相互に通信してもよい。
【0058】
診断処置中、信号プロセッサ40は、表示情報52を提示することができ、情報52を表すデータをメモリ58に記憶することができる。メモリ58は、ランダムアクセスメモリ又はハードディスクドライブ等、任意の好適な揮発性及び/又は不揮発性メモリを含んでいてもよい。操作者30は、1つ又は2つ以上の入力デバイス59を使用して表示情報52を操作することができてもよい。代替的に、医療システム800は、操作者30が用具22を操作している間に制御コンソール24を操作する、第2の操作者を含んでもよい。
図8に示される構成は例示的なものであることを理解されたい。医療システム800の任意の好適な構成を使用し、実装することができる。
【0059】
図9は、本明細書に記載される特徴が実装され得る医療システム900の例示の構成要素を示すブロック図である。
図9に示されるように、システム900は、カテーテル902と、処理デバイス904と、表示デバイス906と、メモリ912と、を含む。
図9に示されるように、処理デバイス904、表示デバイス906、及びメモリ912は、計算デバイス914の一部である。いくつかの実施形態では、表示デバイス906は計算デバイス914から分離されていてもよい。計算デバイス914は、
図9のI/Oインタフェイス42のようなI/Oインタフェイスを更に含んでもよい。
【0060】
カテーテル902は、心臓の電気活動を経時的に検出するための複数のカテーテル電極908を含む。カテーテル902はまた、センサ(1つ又は複数)916を含んでもよく、このセンサとしては、例えば、3D空間内のカテーテル902の位置を示す位置信号を提供するためのセンサ(例えば、磁場位置センサ)、並びに、心臓組織のアブレーション中にアブレーションパラメータ信号を提供するためのセンサ(例えば、位置センサ、圧力又は力センサ、温度センサ、インピーダンスセンサ)が挙げられる。例示のシステム900は、3D空間内のカテーテル902の位置を示す位置信号を提供するために使用される、カテーテル902とは別体の1つ又は2つ以上の追加のセンサ910を更に含む。
【0061】
また、例示のシステム900に示されるシステム902はRF生成器918を含み、このRF生成器918は、カテーテル902が係合した位置で組織をアブレーションするために、カテーテル902を介して高周波電気エネルギーを供給する。したがって、カテーテル902を使用して、心臓のマッピングを生成するために電気活動を取得し、更には心組織をアブレーションすることができる。しかしながら、上述したように、実施形態は、電気活動を取得して心臓のマッピングを生成するために使用されるが心組織をアブレーションするためには使用されないカテーテルを含み得る。
【0062】
処理デバイス904は、それぞれが、ECG信号を処理する、ECG信号を経時的に記録する、ECG信号をフィルタリングする、ECG信号を単一成分(例えば、傾斜、波、複合体)に分割する、及びECG信号情報を生成し、結合して、複数の電気信号を表示デバイス906に表示する、ように構成された、1つ又は2つ以上のプロセッサを含み得る。また、処理デバイス904は、心臓のマップを表示デバイス906に表示するために、マッピング情報を生成し、補間することができる。処理デバイス904は、位置及び向きの座標を決定するために、センサ(例えば、追加のセンサ(1つ又は複数)910及びカテーテルセンサ(1つ又は複数)916)から取得した位置情報を処理するように構成された1つ又は2つ以上のプロセッサ(例えば、信号プロセッサ40)を含み得る。
【0063】
処理デバイス904はまた、マッピング情報及びECGデータを使用して心臓の動的マップ(すなわち、時空間マップ)及び心臓の電気活動を表示するための表示デバイス906を駆動するように構成されている。表示デバイス906は、心臓の電気活動の経時的な時空間的発現を示す心臓のマップを表示し、かつ心臓から得たECG信号を経時的に表示するようにそれぞれが構成されている、1つ又は2つ以上のディスプレイを含み得る。
【0064】
カテーテル電極908、カテーテルセンサ(1つ又は複数)916、及び追加のセンサ(1つ又は複数)910は、処理デバイス904と有線又は無線通信することができる。表示デバイス906もまた、処理デバイス904と有線又は無線通信することができる。
【0065】
本方法は、汎用コンピュータ、プロセッサ、又はプロセッサコアにおいて実装することができる。好適なプロセッサとしては、例として、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、従来型プロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと関連する1つ又は2つ以上のマイクロプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、書替え可能ゲートアレイ(FPGA)回路、任意のその他の種類の集積回路(IC)、及び/又は状態機械が挙げられる。このようなプロセッサは、処理されたハードウェア記述言語(HDL)命令及びネットリスト等その他の中間データ(このような命令は、コンピュータ可読媒体に記憶することが可能である)の結果を用いて製造プロセスを構成することにより、製造することが可能である。このような処理の結果はマスクワークであり得、このマスクワークをその後半導体製造プロセスにおいて用いて、本開示の特徴を実装するプロセッサを製造する。
【0066】
本明細書に提供される方法又はフローチャートは、汎用コンピュータ又はプロセッサによる実行のために持続性コンピュータ可読記憶媒体に組み込まれるコンピュータプログラム、ソフトウェア、又はファームウェアにおいて実装することができる。持続性コンピュータ可読記憶媒体の例としては、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、レジスタ、キャッシュメモリ、半導体メモリデバイス、磁気媒体、例えば内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスク、磁気光学媒体、並びに光学媒体、例えば、CD-ROMディスク及びデジタル多用途ディスク(DVD)が挙げられる。
【0067】
本方法を用いる例示の研究が提示される。この例示の研究では、自発的に又はアジマリン投与後に1型BrS-ECGパターンと診断された、治療継続中に選択された症候性患者を含む患者集団が得られ、また各患者にはICDが埋め込まれていた。典型的なcoved型ECGパターンが複数の右胸部導出(V1-V3)に出現した場合、アジマリン投与(5分で1mg/Kg)は陽性とみなされた。
【0068】
患者は、組み合わせた心外膜-心内膜マッピング処置(以下に記載される
図10~15に示されるマッピングの例)を受けた。全身麻酔下で、橈骨動脈アクセスを通して観血的動脈圧ラインを得た。処置中にECGを連続的に記録した。大腿静脈アクセスの後、多極診断用カテーテルを右室心尖部に配置した。心外膜アクセスは、当技術分野において既知であるように、心膜腔への経皮剣状突起下アクセスによって得られた。安定した洞調律中で、かつ1型BrS-ECGパターンの存在下で、全ての患者においてCARTO(登録商標)3を用いた3次元RV心内膜及び心外膜マッピングを行った。心外膜をマッピングする際にRV境界の適切な範囲設定を有するように、心外膜マッピングを、心内膜マッピング後に体系的に実施した。心外膜RVマッピング及びアブレーションカテーテル操作は、Agilis EPI(St.Jude Medical、St.Paul,Minnesota)等の操舵可能なシースによって補助された。BrS心外膜基質の同定は、ベースライン条件下及びアジマリン注入後(5分で1mp/Kg)のRV心外膜表面全体をマッピングすることから構成された。3グループのRV心外膜電位図特性は、CARTO(登録商標)3マッピングシステムを用いて得られ、これらは、1)双極性/単極性電圧マップ、2)局所的活動時間マップ(LAT)、及び3)異常に長い持続時間の双極性電位図が、QRS複合群の終わりを越えて延びる遅延活動を有する、低周波(最大100Hz)遅延性持続時間(>200ミリ秒)の双極性信号として定義される、電位持続時間マップ(PDM)である。以下に記載される
図10~12はこれを例示している。双極性電位図を16Hz~500Hzでフィルタリングし、200ミリ秒の速度で表示し、遠位電極対の間に記録した。電位図は、その技術的品質が不十分である場合、又はカテーテル誘発性期外収縮が生じた場合には除外した。
【0069】
この例示の研究における電圧マッピングは、以下のように説明される。色分けされた電気解剖学的電圧(図示されず)、活動化(図示されず)及び持続時間マップ(種々の色を示すために様々なハッシュパターンを用いて
図10A、10B、10Cに示される)を実施し、心臓の解剖学的構造に重ね合わせた。赤色1003は、<0.5mVの双極性信号振幅として任意に定義された低電圧の緻密な瘢痕を示し、紫色1001は、>1.5mVの電圧領域を示す。低電圧の領域は、緻密な瘢痕(<0.5mV)及び境界領域(BZ)(<1.5mV)に対して標準電圧カットオフ値を使用して特定された。0.05mVの閾値未満の電位図は考慮されなかった。
【0070】
この例示の研究におけるLATマッピングは、以下のように説明される。活動化を研究するために、誘導IIのQRSのピークから、双極性電位図における固有偏向の経時的な電圧の急激な負の変化(dV/dt)までの間隔(ミリ秒)として定義される、局所的な活動化時間を評価した。活動化持続時間は、任意の電位図の最早期活動化時間(活動化開始)と、任意の電位図の最も遅い活動化時間(活動化終了)との間の間隔(ミリ秒)として定義された。
【0071】
この例示の研究における電位持続時間マッピング(PDM)は、以下のように説明される。最大の電位図持続時間は、0.45秒の関心ウインドウ(WOI)で記録されたように、介在する等電位線無しで連続偏向を有する最長の電位図であった。電位図の細分化は、2つを超える固有の偏向の存在として定義され、電位図当たりの固有の偏向の数として表された。電位図持続時間は、電位図の第1の構成要素のオンセットと電位図の最後の構成要素のオフセットとの間の間隔として双極性信号におけるアジマリンの前後で測定され、200mm/秒の時間スケールで測定されて、平均双極性電位図持続時間(ミリ秒)として表した。色分けされた持続時間マップを定義するために、100ミリ秒~200ミリ秒、250ミリ秒、及び280ミリ秒のカットオフ範囲を使用した。その結果、それぞれ最短(<110ミリ秒のカットオフ、赤色1003)及び最長持続時間(>200ミリ秒のカットオフ、紫色1001)を示す領域を示す色分けマップが得られた。電位持続時間の程度は、異なる持続時間カットオフ値(
図10~14に示される)を用いて最長電位(紫色1001)から最短電位(赤色1003)まで表示された。選択されたカットオフに従って、
図11に示されるように3つの異なる同心円が紫色の領域の周りに描かれた。PDMは、CARTO(登録商標)3システムを用いて、各双極性電位図の持続時間を収集することによって実施した。
【0072】
この例示の研究における基質ベースのアブレーションは、以下のように説明される。心外膜アブレーションは、マップ上に表示され、最長の電位から開始する異常な電位持続時間の降順で、段階的な方法を用いて、洞調律中に行った。電圧及びLATのマッピング中に同時に作成されるように、3次元の持続時間マップの色バーの上限(300ミリ秒)を設定することで、最長電位持続時間領域が紫色で表示された。その後、RFアブレーションは、段階的な方法に従って、より少ない延長された遅延(250ミリ秒及び200ミリ秒)電位を有する領域に向かって基質部位で徐々に移動することにより、順次実行された。外部潅流された3.5mmの先端部アブレーションカテーテルを用いてRFを送達した。35Wから最大45Wを有する電力制御モードが使用された。灌流速度は、RFアブレーションでは17mL/分であって、これは、全ての長期持続時間の遅延活動を完全に排除するまで、ドラッギング方法によって送達された。
【0073】
図15は、連続的なECGモニタリングによって解析された、心外膜RFアブレーション中のBrS-ECGパターンの変化を示す。ST部の変更は、CARTO(登録商標)3のPASO等の相関ソフトウェアを使用して評価した。即値のアブレーション終点は、
図15に示されるように、BrS-ECGパターンの正常化を伴う全ての異常に延長した遅延活動の排除であった。
【0074】
BrS-ECGパターンの排除を確認しながら、全ての異常な心室電位の廃絶を確実にするために、アジマリンをRFアブレーション後に全身に再注入した。注入中にBrS-ECGパターンが再出現した患者では、ECGパターンを最終的に正常化するために、心外膜の持続時間マップを繰り返して、更なるRF適用のための残留又は追加の異常信号を特定した。一旦安定したBrS-ECGパターンの排除が得られると、VT/VF誘発性を評価した。心膜内液は、血清の蓄積を避けるために処置中に屈折可能なシートを通して永続的に引き出された。
【0075】
例示の研究の終点は、ECGの正常化及び心室細動(VF)に対する心室性頻脈(VT)の非誘導性、例えばVT/VFにつながる、アジマリンの前後の全て異常な電気的心室電位の排除であった。
【0076】
BrSは、第2、第3、又は第4の肋間腔に位置するV1からV3までの複数の誘導で実証されているように、>2mmのcoved型ST上昇の存在下で診断された。BrS-ECGパターンの可変性のために、BrS患者は、発現時にそれらのECGに従って分類され、自発的なECGパターンとして定義された。3つのBrS患者群(BrS-1~BrS-3)を、coved型(BrS-1)、サドルバックST構成(BrS-2)、及び型1又は型2のいずれかであるが、<2mmのST部上昇(BrS-3)として定義した。典型的なBrS関連症状を有するBrS患者には、症状発現時にVF又は多型VTを実証した患者が含まれていた。典型的なBrS関連症状がないBrS患者は、事象発生時点でECGの証拠はないが、誘発可能なVT/VFによる全てを有する、異なる症状(めまいから動悸まで)を有する患者とみなされた。最悪の臨床症状を有する患者は、心室細動を記録したために心停止又は失神を経験した患者と定義された。発端者は、1型ブルガダECGパターンに基づいて家族内のブルガダ症候群と診断された最初の患者と定義された。主な合併症は、入院期間の延長が必要なものとして定義された。
【0077】
例示の研究における処置データには以下のものが含まれる。中央値法、蛍光透視法及びRF適用時間は、それぞれ169分(四分位数(IQR)160~214、最小-最大105~266)、8分(IQR7~9、最小-最大6~14)及び18分(IQR17~21、最小-最大12~31)であった。処置の際に、洞調律中、及び全ての患者においてアジマリン誘発1型BrS-ECGパターンの後に、活性化、電圧及び持続時間のマップを首尾よく獲得した。ベースライン時に、心外膜活動化は下部隔膜/尖部で開始し、続いて三尖弁環及びRVOTに向かって発散した。例えば、
図10~14に示されるように、赤色領域は短い活動化時間を示し、一方、青色領域はより長い活動化時間を示す。いずれの患者においても明らかな伝導ブロックは見られなかった。アジマリン注入後の心外膜活動化時間は、続発活動化パターンの変化なく、僅かに長かったが、
図16の表に示されるように、この差は統計的に有意ではなかった。全体として、電気解剖学的電圧マップは、RVOTにおいて非常に小さな低電圧領域を示し、特に最悪の臨床症状を示す患者は、2群よりも1群でより多かった(
図16に示されるように、P<0.001)。アジマリンの前後で、3D心外膜の持続時間マップは、RVOTにおける異常に延長された電位を伴う可変サイズの広い領域を表示し、これは周辺の正常な信号とは対照的であった。
【0078】
この例示の研究における自発的ECGパターンによる電気生理学的基質の特徴は以下の通りである。最悪の臨床症状を有する患者を含む2つのグループ間で、ベースライン臨床及びECG特性は異ならず、自発性1型BrS-ECGパターンは、
図17の表に示されるように、臨床症状に関係なく、より少ない頻度で見られた。CARTO(登録商標)3マップは、アジマリンからRVのない壁まで延在したRVOT(>75%)の上の異常な延長された電気信号の心外膜領域を特定した(
図10~14参照)。電気基質の領域は、
図16の表に示されるように、両方のグループのアジマリン後でサイズが有意に増加した。アジマリンの前後で、群1は、群2よりも広い領域及び延長されかつ異常な電位を示したが、群2における増加は、
図16の表に示されるベースライン値と比べて3倍高かった。臨床症候とは無関係に、アジマリンの前後に、心外膜電気基質は、女性よりも男性で大きかったことに留意されたい。異なるRV領域における最長異常電位を有する領域(>280ミリ秒)は、色分けされたマップ上で、より小さな、最も広い電位図を有する領域の中心に示される同心円の特徴的なタマネギ様基質を示して出現した(
図11参照)。
【0079】
この例示の研究における自発的ECGパターンによる電気生理学的基質の特徴は以下の通りに説明される。45歳未満の患者の年齢、性別、又は突然死亡の家族歴を含む自発性1型ECGパターンの有無の患者間の臨床的特徴に差はなかった。1型ECGパターンを有する患者では、これを有しない患者よりも大きい異常領域及びより広い異常な電位図が見られた。異常領域の局在化は、1型ECGパターンを有する患者と有しない患者との間で異ならなかった。ベースラインST部の上昇は、群1と群2では異ならなかったが、アジマリン後では、群1では有意に高かった。全体的に、アジマリン後に、1型ST部の上昇の程度は、より広い領域の大きさと相関した(r=0.682、p<0.001)。
【0080】
この例示の研究における基質ベースの心外膜アブレーションは、以下のように説明され得る。一旦アブレーションの標的となる領域が電位図持続時間のマップ上に確立されると、RFは、アブレーション中はRFをオフにした後に電圧振幅の大きな変化なく消失した、最も広い電位を有する領域から始まった。異常な信号の排除は、再マッピング及びアジマリン再注入によって確認された。アジマリン再注入後の78人の患者は、任意の残存する異常な電位を排除するために更なるRFアブレーションを必要とする疑わしいcoved型ECGパターンの再出現を示した。これらの部位でのアブレーションは、1型ECGパターンを排除するとともに、VT/VFを良好に抑制した。特徴的には、最長電位持続時間上のRFエネルギーの初期送達中に、1型ECGパターンは数秒間増加し、ST部の勾配を次第に降順から昇順に逆転させ(
図12参照)、この増加は群1でより高かった。その直後に、典型的な平坦なST部の上昇が、V1及びV2において漸進的に優勢になり、これはアジマリン及びイソプロテレノール注入によっても更には改善されなかった。
【0081】
図10~17は、例示の研究を例示している。
図10~15では、異なる色、例えば色分けを示すために異なるハッチングパターンが使用されることに留意されたい。
図10及び11は、ICD植え込みを有するBrS及び失神の家族歴を提示する、39歳のブルガダ症候群(BrS)患者を例示している。この患者は、アジマリン試験陽性及び電気生理学的研究中のVT/VF誘発性を有した。
【0082】
図10Aは、ベースラインBrS-ECGパターン及び心外膜の色分けされた持続時間CARTO(登録商標)マップを示す。異常に延長された電位(この実施例では210ミリ秒)の対応する小さい(2.2cm
2)紫色領域1001を有するV2(II肋間腔)で馬鞍様(saddle back)パターンが明白である。境界ゾーン領域(緑色/青色領域1002は110ミリ秒超かつ200ミリ秒未満)は、比較的短い持続時間(136ミリ秒)を有する電位を示す。
【0083】
図10Bは、アジマリン後のBrS-ECGパターン及び色分けされた持続時間マップを示す。1型アジマリン誘発ECGパターンの後、異常な紫色領域1001は、21.5cm
2に有意に増加した。アジマリン試験後の紫色領域1001で見られる異常かつ延長された電位図(EGM)の例が、マップ(289ミリ秒及び219ミリ秒)の横に示される。
【0084】
図10Cは、心外膜基質のRFアブレーション後のBrS-ECGパターン及び色分けされた持続時間マップを示す。処置終了時のアジマリン再負荷後に、ECGは、I及びII誘導におけるより顕著なS波、及びVRにおけるqR形態を伴う僅かなQRSブロード化によって特徴付けられる、最小の心室内伝導遅延を伴って、水平かつ優勢なST部の上昇を示した。異常に延長され分裂かつ遅延したEGMは消失した(87ミリ秒及び96ミリ秒、淡青色1004)。
【0085】
図10A、
図10B及び
図10C(上下)の右側に示される心室EGMの2つの例は、以前の異常領域から記録され、赤のアスタリスクは遅延構成要素の消失を示す。
図10A、10B及び10Cのそれぞれの2つのEGMパネルは、CARTO(登録商標)3システムからのものであり、各ECGパネルは、200ミリ秒の速度での、V2 ECG誘導(上)、遠位双極性信号(上から2番目)、近位双極性信号(上から3番目)及び単極性信号(下)を示す。
図10Bにおいて、V2誘導は、アブレーション後に水平で平坦なST部の高さに修正された典型的なcoved型パターンを示すことに留意されたい。
【0086】
図11は、電位持続時間マップ及び同心性の「タマネギ様」基質を示す。これは、
図10の患者と同じ患者である。心外膜マップは、アジマリン後に同心性の「タマネギ様」基質分布を示す。白線は、異なる持続時間(≧300のパネルA、≧250のパネルB、≧200ミリ秒のパネルC)を有する電位図(EGM)を示す複数の領域の範囲を定める。電位持続時間が最も長い領域(≧300ミリ秒)は内円(パネルA)にあり、一方、相対的に短い領域(≧250及び≧200ミリ秒)は外円にある(パネルB及びC)。
図11において、赤色領域1101は、≦110ミリ秒のEGM電位持続時間の領域を表す。各マップの下に、紫色領域1102(それぞれ、パネルAでは持続時間320ミリ秒、Bでは264、Cでは225)で記録されたEGMの例である。CARTO(登録商標)システムの各EGMパネルには、200ミリ秒の速度でのV2 ECG誘導(上)、遠位双極性信号(上から2番目)、近位双極性信号(上から3番目)、単極性信号(下)を示している。
【0087】
図12は、自発性1型ブルガダパターンを示す。この図は、前駆症状のないフランク失神の病歴と、VT/VF誘発陽性の電気生理学的研究(EPS)により、ICDを埋め込まれた自発性1型ブルガダパターンを有する32歳の患者を指す。左パネルでは、高い肋間腔でのV1及びV2(II、III及びIV ICS)に配置された胸部導出を有する12誘導ECGが、V1及びV2 II ICS及びV1 III ICSにおいて特に明白な典型的な1型ブルガダパターンを示す。
図12の中央のパネルは、紫色領域1201が長い電位持続時間(≧200ミリ秒、寸法21.5cm
2)を呈する心外膜PDMを示す。2つの右のパネルは、最も分裂かつ延長された領域(紫色領域1201)で見られる電位図(EGM)の2つの例を示す。低電圧及び分裂された遅延構成要素を伴う広い持続時間の典型的なEGMが遠位双極性(上から2番目のライン)信号、それぞれ320及び280ミリ秒の持続時間で示されることに留意されたい。各EGMパネルにおいて、200ミリ秒の速度での、V1及びV2 II ICS ECG誘導(上)、遠位双極性信号(上から2番目)、近位双極性信号(上から3番目)、単極性信号(下)を示している。
【0088】
図13は、
図12と同じ患者での、自発性1型ブルガダパターンにおけるRFアブレーションを示す。左上のパネルは、≧300ミリ秒の電位持続時間(内円)及び≧200ミリ秒(外円)を示す領域の範囲を設定する白丸1301を有するPDMを示す。内円内のRFアブレーション(赤色ドット1302)は、ボックス1303の右側の上部パネルに示される、右上前胸部導出における初期上昇及び水平ST-セグメント上昇を決定した。左下のパネルでは、アブレーションの終了時にブルガダ1型パターンを示さない、右胸部導出における水平及び平坦なST上昇の持続をもたらす、完全な病変部のセットが、≧200ミリ秒の全領域に送達されている(右下パネル、赤色ボックス1303)。
【0089】
図14は、
図12と同じ患者での、RFアブレーション前後のPDMを示す。左上のパネルはアブレーション前のPDMを示す。左下のパネルは、紫色領域1401(遠位双極EGM 320ミリ秒持続時間)で発見された幅広く分裂された電位の例を示す。アブレーション後、右上のパネルのPDMは異常に延長したEGMの消失を示し、遅延構成要素がアブレーションにより消滅したことを強調している(EGM持続時間69ミリ秒、右下パネル、赤色のアスタリスク)。右下のパネルに示されたEGMは、左下のパネルに示されるように、以前に延長及び分裂された電位を示していたものと同じ領域に記録されている。両方のCARTO(登録商標)マップのアブレーションカテーテルの陰影は、そのような電位が記録されている場所を示している。各EGMパネルにおいて、200ミリ秒の速度での、(左下及び右)V2 II ICS ECG誘導(上)、遠位双極性信号(上から2番目)、近位双極性信号(上から3番目)、単極性信号(下)を示している。左下のパネルでは、V2誘導が典型的なcoved型パターンを示しており、一方で右下のパネルでは、同じECG誘導は、アブレーション後に、ブルガダパターンが修正されて、水平で平坦なSTセグメントの上昇を示すことを実証していることに留意されたい。
【0090】
図15は、
図12と同じ患者を用いた、アブレーション直後及び処置後13ヶ月のECG変化を示す。上のパネルは、分裂及び延長された電位を示す領域のRFアブレーション後の1型パターンの即時的消失を示す。左には、最終的なアジマリン負荷により証明される、ベースラインのブルガダECGに続く、アブレーション直後の1型パターンの消失(上部中間のパネル)である(右上のパネル)。右上胸部導出フォローアップ中に消失する水平及び平坦なST部分の上昇を示す(下のパネル)。下のパネルは、アブレーションの13ヶ月後のアジマリン負荷によって証明される、ブルガダ1型パターンの持続的な消失を示す。アジマリン注入は、QRSブロード化及びcoved型ECGの形態学的特徴を伴わない僅かなST部の水平上昇を伴うPR間隔の延長を決定する。左から右へ、ベースライン12誘導ECG、ベースライン時及びアジマリン投与後の右上前胸部導を伴うECGが示される。
【0091】
当業者であれば、本教示が本明細書で具体的に図示及び記載されたものに限定されない点を理解するであろう。むしろ、本教示の範囲は、本明細書で記載された様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせ、並びに上記の説明を読むことで当業者には想到されるであろう、先行技術にはない変形例及び改変例をも含むものである。
【0092】
〔実施の態様〕
(1) 心臓におけるブルガダ症候群の心外膜アブレーションのための方法であって、
心内膜持続時間マップを作成することと、
少なくとも1つ又は2つ以上の範囲設定領域(areas of delimination)を含むベースライン心外膜持続時間マップを作成することと、
前記範囲設定領域のうちの1つ又は2つ以上が200ミリ秒を超える場合、200ミリ秒を超える前記範囲設定領域の心外膜アブレーションを実行することと、を含む、方法。
(2) 心外膜アブレーションの実行後に、更新された心外膜持続時間マップを作成し、BrSパターンが前記更新された心外膜持続時間マップ内に出現するかどうかを判定することと、
前記BrSパターンが出現する場合、心外膜アブレーションを実行することと、を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 心外膜アブレーションの実行後に、更新された心外膜持続時間マップを作成し、異常なEGMが前記更新された心外膜持続時間マップ内に存在するかどうかを判定することと、
前記異常なEGMが存在する場合、心外膜アブレーションを実行することと、を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(4) アジマリンを前記心臓内に注入することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 心外膜アブレーションの実行後に、解剖学的体積データを維持することと、電気解剖学的データを追加することとを含む更新された心外膜マップを作成することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
【0093】
(6) 前記ベースライン心外膜持続時間マップ、前記更新された心外膜マップが、カットオフ間隔を有する同心領域を表示する、実施態様1に記載の方法。
(7) ベースライン心外膜持続時間マップを作成する前記工程が、
少なくとも1つのサイクル長を含む関心ウィンドウ(WOI)を定義することと、
前記サイクル長及び参照注釈に基づいて以前の心拍を算出することと、
前記WOIの前記サイクル長内の前記心拍を前記WOIに割り当てることと、
開始電位持続時間及び終了電位持続時間を見つけ出すことと、
前記WOIに割り当てられた前記心拍からの最小標準偏差を有する心拍に基づいて、アブレーション点を選択することと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 心臓におけるブルガダ症候群の心外膜アブレーションのためのシステムであって、
ECG信号を測定するためのカテーテルと、
コンピュータであって、
心内膜持続時間マップを作成することと、
少なくとも1つ又は2つ以上の範囲設定領域を含むベースライン心外膜持続時間マップを作成することと、
前記範囲設定領域のうちの1つ又は2つ以上が200ミリ秒を超える場合、200ミリ秒を超える前記範囲設定領域の心外膜アブレーションを実行することと、を行うように適合されている、コンピュータと、
前記心内膜持続時間マップ及び前記ベースライン心外膜マップを表示するための表示デバイスと、を備える、システム。
(9) 前記コンピュータが、
心外膜アブレーションの実行後に、更新された心外膜持続時間マップを作成し、BrSパターンが前記更新された心外膜持続時間マップ内に出現するかどうかを判定することと、
前記BrSパターンが出現する場合、心外膜アブレーションを実行することと、を行うように更に適合されている、実施態様8に記載のシステム。
(10) 前記コンピュータが、
心外膜アブレーションの実行後に、更新された心外膜持続時間マップを作成し、異常なEGMが前記更新された心外膜持続時間マップ内に存在するかどうかを判定することと、
前記異常なEGMが存在する場合、心外膜アブレーションを実行することと、を行うように更に適合されている、実施態様8に記載のシステム。
【0094】
(11) アジマリンを前記心臓内に注入するための用具を更に備える、実施態様8に記載のシステム。
(12) 前記コンピュータが、心外膜アブレーションの実行後に、解剖学的体積データを維持することと、電気解剖学的データを追加することとを含む更新された心外膜マップを作成するように更に適合されている、実施態様8に記載のシステム。
(13) 前記コンピュータが、前記ベースライン心外膜持続時間マップ及び前記更新された心外膜マップの一方又は両方の上に、カットオフ間隔を有する同心領域を表示するように更に適合されている、実施態様8に記載のシステム。
(14) 前記コンピュータが、
少なくとも1つのサイクル長を含む関心ウィンドウ(WOI)を定義する工程と、
前記サイクル長及び参照注釈に基づいて以前の心拍を算出する工程と、
前記WOIの前記サイクル長内の前記心拍を前記WOIに割り当てる工程と、
開始電位持続時間及び終了電位持続時間を見つけ出す工程と、
前記WOIに割り当てられた前記心拍からの最小標準偏差を有する心拍に基づいて、アブレーション点を選択する工程と、を実行することによって、前記ベースライン心外膜持続時間マップを作成するように更に適合されている、実施態様8に記載のシステム。
(15) アブレーション処置を改善するためのコンピュータソフトウェア製品であって、コンピュータプログラム命令が記憶された非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含み、前記命令が、コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、
心内膜持続時間マップを作成する工程と、
少なくとも1つ又は2つ以上の範囲設定領域を含むベースライン心外膜持続時間マップを作成する工程と、
前記範囲設定領域のうちの1つ又は2つ以上が200ミリ秒を超える場合、200ミリ秒を超える前記範囲設定領域の心外膜アブレーションを実行する工程と、を行わせる、コンピュータソフトウェア製品。
【0095】
(16) 心外膜アブレーションの実行後に、更新された心外膜持続時間マップを作成し、BrSパターンが前記更新された心外膜持続時間マップ内に出現するかどうかを判定することと、
前記BrSパターンが出現する場合、心外膜アブレーションを実行することと、を更に含む、実施態様15に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(17) 心外膜アブレーションの実行後に、更新された心外膜持続時間マップを作成し、異常なEGMが前記更新された心外膜持続時間マップ内に存在するかどうかを判定することと、
前記異常なEGMが存在する場合、心外膜アブレーションを実行することと、を更に含む、実施態様15に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(18) 心外膜アブレーションの実行後に、解剖学的体積データを維持することと、電気解剖学的データを追加することとを含む更新された心外膜マップを作成することを更に含む、実施態様15に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(19) 前記ベースライン心外膜持続時間マップ、前記更新された心外膜マップが、カットオフ間隔を有する同心領域を表示する、実施態様15に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(20) 前記ベースライン心外膜持続時間マップを作成する前記工程が、
少なくとも1つのサイクル長を含む関心ウィンドウ(WOI)を定義することと、
前記サイクル長及び参照注釈に基づいて以前の心拍を算出することと、
前記WOIの前記サイクル長内の前記心拍を前記WOIに割り当てることと、
開始電位持続時間及び終了電位持続時間を見つけ出すことと、
前記WOIに割り当てられた前記心拍からの最小標準偏差を有する心拍に基づいて、アブレーション点を選択することと、を含む、実施態様15に記載のコンピュータソフトウェア製品。