(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】湯戻し用油揚げ即席麺の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/113 20160101AFI20220530BHJP
【FI】
A23L7/113
(21)【出願番号】P 2018015217
(22)【出願日】2018-01-31
【審査請求日】2020-11-13
(31)【優先権主張番号】P 2017016306
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222783
【氏名又は名称】東洋水産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 健
(72)【発明者】
【氏名】下條 学
(72)【発明者】
【氏名】河原 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】大原 良太
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-031654(JP,A)
【文献】特開2003-189808(JP,A)
【文献】特開2004-147576(JP,A)
【文献】特開昭52-099248(JP,A)
【文献】特開2000-333629(JP,A)
【文献】特開2015-192645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉および澱粉
(前記小麦粉に含有される澱粉を除く)、ならびに増粘多糖類を含む原料に水を加え、混練して麺生地を得て、生麺線を切り出す工程と、
α化する工程を行うことなく前記生麺線を油で揚げる工程と
を有する、
湯戻し用油揚げ即席麺の製造方法。
【請求項2】
前記原料は、さらに、米粉またはそば粉を含む、請求項1に記載の
湯戻し用油揚げ即席麺の製造方法。
【請求項3】
油で揚げる前の前記生麺線のα化度が30以下および水分含有率が40質量%以下であり、油で揚げた後の油揚げ即席麺のα化度が60以上75以下である、請求項1または2に記載の
湯戻し用油揚げ即席麺の製造方法。
【請求項4】
前記増粘多糖類が、ペクチンおよび/またはアルギン酸類である、請求項1~3のいずれか1項に記載の
湯戻し用油揚げ即席麺の製造方法。
【請求項5】
前記原料に含まれる前記澱粉の割合が主原料に対して10質量%以上30質量%以下であり、且つ、前記増粘多糖類がペクチンおよび/またはアルギン酸類である請求項1~3のいずれか1項に記載の湯戻し用油揚げ即席麺の製造方法。ここで前記主原料は、前記小麦粉および前記澱粉からなるが、前記原料が米粉またはそば粉を含む場合には、前記米粉又は前記そば粉も前記主原料に含まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油揚げ即席麺の製造方法および油揚げ即席麺に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油揚げ即席麺は、小麦粉などを含む主原料と、食塩などの副原料と、水とを混練して麺生地とし、これをロール圧延し、これを切り出して生麺線を得た後、蒸したり茹でたりしてα化し、さらに油揚げすることによって製造されている。
【0003】
このようにして製造される油揚げ即席麺は、一般的に水分含有率が10質量%以下で長期保存が可能であり、熱湯を注ぐだけでまたは数分間煮込んで調理するだけで、喫食することができる簡便性の高い食品である。
【0004】
しかし、従来の油揚げ即席麺の製造方法では、生麺線をα化するために蒸したり茹でたりする熱エネルギーと、α化した麺を油で揚げる熱エネルギーが必要であるため、熱エネルギーのロスが大きいという問題があった。
【0005】
そこで、蒸機内にバッフル板を入れ、蒸気が効率良く麺にあたる様に工夫したり、フライヤーにジャケットを巻いて放熱を防いだり、油揚げの際油シャワーをかけて揚げ効率を上げるなどの熱エネルギーのロスを少なくするために色々な工夫がなされてきたが十分ではなく、更なる改良が望まれていた。
【0006】
なお、ワンタンの製造では、ワンタン生皮に乾燥した実を充填した後、油揚げ処理を施す方法が知られている(特許文献1)。この方法では、ワンタン生皮をα化する処理を行わないので、そのための熱エネルギーが不要になる。
【0007】
ただし、ワンタンの厚みは0.4~0.6mmと薄いのに対し、即席麺の生麺線は0.8~1.5mmの厚さを有するので、ワンタンの製造技術をそのまま油揚げ即席麺の製造技術に適用できるわけではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、低エネルギーで油揚げ即席麺を製造することができ、省エネルギーを達成できるとともに、製造される油揚げ即席麺の食感を良好にできる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る油揚げ即席麺の製造方法は、小麦粉および澱粉、増粘多糖類を含む原料に水を加え、混練して麺生地を得て、生麺線を切り出す工程と、α化する工程を行うことなく前記生麺線を油で揚げる工程とを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の油揚げ即席麺の製造方法は、生麺線を蒸したり茹でたりしてα化する工程を含まないので、低エネルギーで油揚げ即席麺製品を製造することができ、省エネルギーを達成でき、製造のためのランニングコストを抑えることができ、設備投資コストも低く抑えられる。また、主原料として小麦粉に加えて澱粉、ならびに副原料として増粘多糖類を添加することによって、なめらかで弾力のある食感を有する油揚げ即席麺を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例1の油揚げ即席麺表面を示す写真。
【
図2】
図2は、比較例1の油揚げ即席麺表面を示す写真。
【
図3】
図3は、実施例1の油揚げ即席麺表面の2値化処理後の画像データ。
【
図4】
図4は、比較例1の油揚げ即席麺表面の2値化処理後の画像データ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明に係る油揚げ即席麺の主原料は、小麦粉および澱粉を含む。小麦粉としては、たとえば、強力粉、準強力粉、薄力粉およびデュラムセモリナ粉が挙げられる。また、小麦粉の一部を米粉またはそば粉で代替してもよい。澱粉としては、たとえば、トウモロコシ粉、ならびにジャガイモ(馬鈴薯など)、サトウキビおよびタピオカなどの澱粉が挙げられる。また、これらの澱粉を公知の手法を用いて加工した加工澱粉を用いてもよい。
【0014】
主原料として澱粉を添加すると、油揚げ即席麺の湯戻りを早くでき、なめらかさや弾力に関する食感を改良できる。
【0015】
本発明に係る油揚げ即席麺が、湯戻ししたときに良好な食感を示すためには、小麦粉の割合は主原料の70~90質量%、澱粉の割合は主原料の30~10質量%であることが好ましく、小麦粉の割合は主原料の70~80質量%、澱粉の割合は主原料の30~20質量%であることがより好ましい。澱粉の割合が主原料の20質量%未満、さらに10質量%未満であると、油揚げ即席麺の弾力が出にくく、良好な食感を期待できない。澱粉の割合が主原料の30質量%を超えると、製麺性が悪くなる。
【0016】
小麦粉の一部を米粉またはそば粉で代替する場合、米粉またはそば粉の割合は主原料の50~10質量%とすることが好ましい。言い換えれば、主原料として、小麦粉、米粉またはそば粉、および澱粉を用いる場合には、小麦粉の割合は主原料の30~70質量%、米粉またはそば粉の割合は主原料の50~10質量%、澱粉の割合は主原料の30~10質量%であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る油揚げ即席麺の副原料としては、食塩、かん水、色素などの他に、増粘多糖類が用いられる。
【0018】
増粘多糖類としては、たとえばペクチンおよび/またはアルギン酸類が挙げられる。ここで、本発明で用いるペクチンはその起源などは制限されない。例えば、リンゴ、レモンなどを起源とするものを用いることができる。また、本発明で用いるアルギン酸類とは、アルギン酸の他、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム等のアルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸エステル、またはこれらの混合物をいう。なお、アルギン酸エステルはそのエステル化度などには制限されない。
【0019】
ペクチンの割合は主原料100質量部に対して0.1~1.0質量部、アルギン酸類の割合は主原料100質量部に対して0.1~0.5質量部であることが好ましい。これらの副原料を水に溶解して主原料に投入し、これらを混練して麺生地を作製する。
【0020】
副原料として増粘多糖類、たとえばペクチンおよび/またはアルギン酸類を用いると、硬さや弾力に関する食感を改良できる。
【0021】
本発明に係る油揚げ即席麺は、蒸し工程のない製造方法で製造するので、主に弾力に関する食感を改良することが難しいが、澱粉ならびに増粘多糖類を添加することによって、食感を補うことができる。
【0022】
得られた麺生地をロール圧延して0.8~1.5mmの所定の厚さとし、切刃で切り出して所定の幅の生麺線を得る。生麺線の幅は、1.2~3.0mmに設定される。得られた生麺線は、α化度が30以下である。生麺線を製品形態に応じて適宜カットする。麺生地または生麺線の全質量を基準とする水分含有率は40質量%以下、さらに36質量%以下、好ましくは30質量%以上であることが好ましい。
【0023】
本発明の方法は、生麺線を蒸したり茹でたりしてα化する工程を含まず、上記のようにα化度が30以下、水分含有率が40質量%以下である生麺線を油で揚げて油揚げ即席麺を製造する。
【0024】
生麺線のα化度が30を超えるには、蒸したり、茹でたりする工程が必要になる。
生麺線の水分含有率が40質量%を超えると、製麺性が悪くなる。
【0025】
油揚げ工程に用いる油は、植物性でも動物性でもよい。油の温度を110~150℃とし、油揚げ時間を1分10秒~2分30秒として油揚げすることが好ましい。また、油揚げの方法は均一な温度で揚げてもよく、温度勾配をつけたり、二度揚げする等いずれの方法でもよい。こうした油揚げ工程により、α化度が60以上75以下、水分含有率が10質量%以下、好ましくは2~7質量%の油揚げ即席麺を製造することができる。
【0026】
前述の方法で油揚げ麺のα化度が75を超えるためには、麺線の水分が蒸発しないように長時間の油揚げが必要で生産効率が極端に下がる。また長時間の油揚げには大量の油が必要となり、低エネルギー、低コストの生産目的に反する。
油揚げ即席麺の水分含有率が10質量%を超えると、長期保存の点で不利になる。
【0027】
上記のように、本発明の油揚げ即席麺の製造方法は、生麺線を蒸したり茹でたりしてα化する工程を含まないので、低エネルギーで油揚げ即席麺製品を製造することができ、省エネルギーを達成でき、製造のためのランニングコストを抑えることができ、設備投資コストも低く抑えられる。
【0028】
なお、本発明において、麺のα化度は、たとえばグルコアミラーゼ法に従って測定することができる。
【0029】
また、本発明において、麺の水分含有率は、常圧加熱乾燥法に従って測定することができる。
【0030】
ここで、特公昭51-12705号公報に開示されているワンタンの製造方法では、小麦粉、副原料、水を混合してワンタン生皮を調製し、ワンタン生皮をα化することなしに、ワンタン生皮に乾燥した実を充填した後、105~120℃の低温油揚げおよび125~140℃の高温油揚げを行って即席実入りワンタンを製造している。
【0031】
ワンタン生皮は0.4~0.6mmと薄く、油揚げ時に水分が揮発しやすいため、105~120℃の低温油揚げでも揚げやすく、低温油揚げを行うことによって表面の火ぶくれを抑えている。
【0032】
しかし、上記のワンタンの製造方法を、0.8~1.5mmの厚さを有する即席麺の生麺線に適用して油揚げ即席麺を製造しようとしても、水分を十分に除くことができないので、適用することはできない。
【実施例】
【0033】
以下、実施例に基づいて本発明を更に説明する。
以下の実施例および比較例で製造した油揚げ即席麺について、湯戻しした後にその食感の官能試験を行った。官能試験では、専門パネラー10名が、各々の麺のなめらかさ、弾力性、硬さ、およびのびの遅さを10点法で評価した。また、総合評価は、なめらかさ、弾力、硬さのトータルバランスで麺の食感を評価しており、個々の評価項目とは独立した評価項目である。評点は次の通りである。10=非常によい、8=やや良い、6=良い、4=やや悪い、2=悪い。以下の各表においては、専門パネラー10名の評点の平均値を示す。
【0034】
以下の実施例および比較例において、麺のα化度はグルコアミラーゼ法に従って測定した。
【0035】
以下の実施例および比較例において、麺の水分含有率は、常圧加熱乾燥法により、105℃、2時間の乾燥条件で測定した。
【0036】
(実施例1)
小麦粉800gおよび澱粉200gからなる麺の主原料1kgをミキサーに投入し、水350ml(主原料100質量部に対して35質量部)に食塩14g、かんすい3.0g、アルギン酸プロピレングリコールエステル2.0gおよびクチナシ色素0.4gを加えて撹拌溶解して調製した副原料の水溶液を前記ミキサー内の主原料に加え、混練して麺生地を得た。得られた麺生地をロール圧延して0.9mmの厚さとし、20番角刃で切り出して幅1.5mmの生麺線を得た。この生麺線を、カップ麺製品の定量にカットして、フライリテーナーに型詰した。生麺線を型詰したフライリテーナーを、パーム油を溜めて120~150℃の範囲で温度勾配をつけたフライ槽に2分間浸漬して生麺線を油揚げし、実施例1の油揚げ即席麺を得た。
【0037】
この方法では、油揚げ前の生麺線はα化度が26、水分含有率が34質量%であり、油揚げ後の油揚げ即席麺はα化度が67、水分含有率が3.6質量%であった。
【0038】
(比較例1)
実施例1と同じ主原料、水および副原料を用い、実施例1と同様な方法により、麺生地を得た後、麺生地をロール圧延して0.9mmの厚さとし、20番角刃で切り出して幅1.5mmの生麺線を得た。得られた生麺線を、従来の方法に従って、100℃の蒸気で2分間蒸煮してα化し、調味液シャワーをかけた。その後、実施例1と同様な方法により、α化した麺線を油揚げし、比較例1の油揚げ即席麺を得た。
【0039】
この方法では、油揚げ前のα化した麺線はα化度が64、水分含有率が49質量%であり、油揚げ後の油揚げ即席麺はα化度が85、水分含有率が3.4質量%であった。
【0040】
得られた実施例1および比較例1の油揚げ即席麺をそれぞれ、スープとともにカップ容器に包装しカップ麺製品を得た。実施例1および比較例1のカップ麺製品を開封した後、カップに熱湯を注ぎ、3分間湯戻しした油揚げ即席麺の食感の官能試験を行った。その結果を表1に示す。
【0041】
【0042】
表1のように、実施例1の生麺線を蒸煮せずに油揚げした油揚げ即席麺は、比較例1の生麺線を蒸煮した後に油揚げした油揚げ即席麺と同等以上の優れた食感を示した。
【0043】
次に、実施例1の油揚げ即席麺および比較例1の油揚げ即席麺について、表面の凹凸を画像処理して、凸部の占める割合を数値化した。具体的な方法は以下のとおりである。
【0044】
デジタルマイクロスコープ(キーエンス製、DIGITAL MICROSCOPE VHX-1000)を用いて、各油揚げ即席麺の表面を撮影し、100倍の拡大写真を取得して、JPEG形式の画像データとして保存した。
図1に実施例1の油揚げ即席麺表面の写真を示す。
図2に比較例1の油揚げ即席麺表面の写真を示す。
【0045】
得られた画像データを、Photoshop CS3(Adobe社)により、RGBカラーモードからグレースケールに変換し、次いで2値化処理を行った。これにより、凸部は白色、それ以外の部分を黒色で描画される。
図3に実施例1の油揚げ即席麺表面の2値化処理後の画像データを示す。
図4に比較例1の油揚げ即席麺表面の2値化処理後の画像データを示す。
【0046】
図3および
図4において、対象となる油揚げ即席麺表面の全面積をA
a、油揚げ即席麺表面のうち白く表示されたピクセルの面積の合計をA
wとし、下記の式に従って凸部率(%)を求めた。
【0047】
凸部率(%)=(Aw/Aa)×100
その結果、実施例1の凸部率は29.9%、比較例1の凸部率は51.6%であった。このように、実施例1の油揚げ即席麺は、比較例1の油揚げ即席麺に比べて、表面の凸部率の値が有意に小さく、滑らかな状態であることが確認できた。このことが、表1のように、実施例1の油揚げ即席麺が比較例1の油揚げ即席麺に比べてなめらかな食感を示したことに寄与したと考えられる。
【0048】
(実施例2~4)
[実施例2]
小麦粉700gおよび澱粉300gからなる麺の主原料1kgをミキサーに投入し、水370ml(主原料100質量部に対して37質量部)に食塩10g、かんすい4.0g、ペクチン5.0g、アルギン酸2.0g、クチナシ色素0.5gを加えて撹拌溶解して調製した副原料の水溶液を前記ミキサー内の主原料に加え、混練して麺生地を得た。得られた麺生地をロール圧延して0.95mmの厚さとし、20番角刃で切り出して幅1.5mmの生麺線を得た。この生麺線を、カップ麺製品の定量にカットして、フライリテーナーに型詰した。生麺線を型詰したフライリテーナーを、パーム油を溜めて120~140℃の範囲で温度勾配をつけたフライ槽に2分間浸漬して生麺線を油揚げし、実施例2の油揚げ即席麺を得た。
【0049】
[実施例3~4]
用いた水の量をそれぞれ340mlまたは400ml(主原料100質量部に対して、それぞれ34質量部または40質量部)としたこと以外は、実施例2と同様な方法により、実施例3および実施例4の油揚げ即席麺を得た。
【0050】
得られた実施例2~4の油揚げ即席麺をそれぞれ、スープとともにカップ容器に包装しカップ麺製品を得た。実施例2~4のカップ麺製品を開封した後、カップに熱湯を注ぎ、3分間湯戻しした油揚げ即席麺の食感の官能試験を行った。その結果を表2に示す。
【0051】
【0052】
実施例2~4の油揚げ即席麺は、加水量に依存せず、いずれも優れた食感を示した。なお、実施例3の油揚げ即席麺は、製麺性の点でややもろかった。また、実施例4の油揚げ即席麺は、油揚がりがやや悪い傾向がみられ、油揚げ時間を20秒長くする必要があった。
【0053】
(実施例2および比較例2)
主原料に澱粉を添加せずに主原料を小麦粉1kgとし、副原料としてペクチンもアルギン酸類も用いなかった以外は、実施例2と同様な材料を用いて同様な方法により比較例2の油揚げ即席麺を作製した。
【0054】
比較例2の油揚げ即席麺をそれぞれ、スープとともにカップ容器に包装しカップ麺製品を得た。比較例2のカップ麺製品を開封した後、カップに熱湯を注ぎ、3分間湯戻しした油揚げ即席麺の食感の官能試験を行った。その結果を、実施例2の結果とともに、表3に示す。
【0055】
【0056】
主原料に澱粉を用いていない比較例2の油揚げ即席麺は、実施例2の油揚げ即席麺に比べて、特になめらかさおよび弾力の点で劣り、やわらかい食感を示した。
【0057】
(実施例2、5~7)
油揚げ条件をそれぞれ表4のように変更した以外は、実施例2と同様な材料を用いて同様な方法により実施例5~7の油揚げ即席麺を作製した。表4には、実施例2の油揚げ条件も示す。
【0058】
【0059】
得られた実施例5~7の油揚げ即席麺をそれぞれ、スープとともにカップ容器に包装しカップ麺製品を得た。実施例5~7のカップ麺製品を開封した後、カップに熱湯を注ぎ、3分間湯戻しした油揚げ即席麺の食感の官能試験を行った。その結果を、実施例2の結果とともに、表5に示す。
【0060】
【0061】
実施例5~7の油揚げ即席麺はなめらかさ、弾力の点でやや劣り、のびが早い傾向であったが、いずれも概ね良好な食感を示した。
【0062】
(実施例8および比較例3)
[実施例8]
小麦粉800gおよび澱粉200gからなる麺の主原料1kgをミキサーに投入し、水360ml(主原料100質量部に対して36質量部)に食塩14g、かんすい3.0g、ペクチン2.0g、アルギン酸2.0gおよびクチナシ色素0.4gを加えて撹拌溶解して調製した副原料の水溶液を前記ミキサー内の主原料に加え、混練して麺生地を得た。得られた麺生地をロール圧延して1.2mmの厚さとし、20番丸刃で切り出して幅1.5mmの生麺線を得た。この生麺線を、袋麺製品の定量にカットして、フライリテーナーに型詰した。生麺線を型詰したフライリテーナーを、パーム油を溜めて120~150℃の範囲で温度勾配をつけたフライ槽に2分間浸漬して生麺線を油揚げし、実施例8の油揚げ即席麺を得た。
【0063】
[比較例3]
実施例8と同じ主原料、水および副原料を用い、実施例8と同様な方法により、麺生地を得た後、麺生地をロール圧延して1.2mmの厚さとし、20番丸刃で切り出して幅1.5mmの生麺線を得た。得られた生麺線を、従来の方法に従って、100℃の蒸気で2分間蒸煮してα化した。その後、実施例8と同様な方法により、α化した麺線を油揚げし、比較例3の油揚げ即席麺を得た。
【0064】
得られた実施例8および比較例3の油揚げ即席麺をそれぞれ、鍋で沸騰させた500mlのお湯に投入して3分間煮込んだ後、粉末スープを投入しよく混ぜてからどんぶりに移し、食感の官能試験を行った。その結果を表6に示す。
【0065】
【0066】
表6のように、鍋で煮込むタイプの袋麺製品の場合、実施例8の生麺線を蒸煮せずに油揚げした油揚げ即席麺は、比較例3の生麺線を蒸煮した後に油揚げした油揚げ即席麺よりも優れた食感を示した。
【0067】
表7に、上記の実施例2~8および比較例2,3に関して、油揚げ前の生麺線(比較例3ではα化した麺線)のα化度および水分含有率、ならびに油揚げ後の油揚げ即席麺のα化度および水分含有率をまとめて示す。
【0068】
【0069】
(実施例9および10)
油揚げ条件をそれぞれ表8のように変更した以外は、実施例1と同様な材料を用いて同様な方法により、実施例9および10の油揚げ麺を作製した。
【0070】
得られた実施例9および10の油揚げ即席麺をそれぞれ、スープとともにカップ容器に包装しカップ麺製品を得た。実施例9および10のカップ麺製品を開封した後、カップに熱湯を注ぎ、3分間湯戻しした油揚げ即席麺の食感の官能試験を行った。その結果を、実施例1の結果とともに、表9に示す。
【0071】
表10に、上記の実施例9および10に関して、油揚げ前の生麺線のα化度および水分含有率、ならびに油揚げ後の油揚げ即席麺のα化度および水分含有率をまとめて示す。
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
実施例9および10の油揚げ即席麺は弾力、硬さの点でやや劣り、のびが早い傾向であったが、いずれも概ね良好な食感を示した。
【0076】
(実施例2、11~15)
[実施例2(再掲)]
小麦粉700gおよび澱粉300gからなる麺の主原料1kgをミキサーに投入し、水370ml(主原料100質量部に対して37質量部)に食塩10g、かんすい4.0g、ペクチン5.0g、アルギン酸2.0g、クチナシ色素0.5gを加えて撹拌溶解して調製した副原料の水溶液を前記ミキサー内の主原料に加え、混練して麺生地を得た。得られた麺生地をロール圧延して0.95mmの厚さとし、20番角刃で切り出して幅1.5mmの生麺線を得た。この生麺線を、カップ麺製品の定量にカットして、フライリテーナーに型詰した。生麺線を型詰したフライリテーナーを、パーム油を溜めて120~140℃の範囲で温度勾配をつけたフライ槽に2分間浸漬して生麺線を油揚げし、実施例2の油揚げ即席麺を得た。
【0077】
[実施例11~15]
実施例11~15では小麦粉の一部を米粉で代替した。主原料の配合および用いた水の量をそれぞれ表11のように変更した以外は、実施例2と同様な材料を用いて同様な方法により実施例11~15の油揚げ即席麺を作製した。表11には、実施例2の配合条件も示す。
【0078】
【0079】
得られた実施例11~15の油揚げ即席麺をそれぞれ、スープとともにカップ容器に包装しカップ麺製品を得た。実施例11~15のカップ麺製品を開封した後、カップに熱湯を注ぎ、3分間湯戻しした油揚げ即席麺の官能試験を行った。その結果を、実施例2の評価結果とともに表12に示す。
【0080】
【0081】
実施例11~15の油揚げ即席麺は、米粉量が増えるにしたがって食感が硬くなる傾向であったが、いずれも概ね良好な食感を示した。実施例15では製麺性がかなり悪くなり、これ以上米粉を増やすことは難しいと判断した。
【0082】
表13に、上記の実施例11~15に関して、油揚げ前の生麺線のα化度および水分含有率、ならびに油揚げ後の油揚げ即席麺のα化度および水分含有率をまとめて示す。表13には、実施例2の測定結果も示す。
【0083】
【0084】
(実施例16~21)
[実施例16]
小麦粉800gおよび澱粉200gからなる麺の主原料1kgをミキサーに投入し、水350ml(主原料100質量部に対して35質量部)に食塩15g、かんすい4.0g、ペクチン5.0g、アルギン酸2.0g、クチナシ色素0.5gを加えて撹拌溶解して調整した副原料の水溶液を前記ミキサー内の主原料に加え、混練して麺生地を得た。得られた麺生地をロール圧延して0.90mmの厚さとし、20番角刃で切り出して幅1.5mmの生麺線を得た。この生麺線を、カップ麺製品の定量にカットして、フライリテーナーに型詰した。生麺線を型詰したフライリテーナーを、パーム油を溜めて120℃~140℃の範囲で温度勾配をつけたフライ槽に1分50秒間浸漬して生麺線を油揚げし、実施例16の油揚げ即席麺を得た。
【0085】
[実施例17~21]
主原料の配合および用いた水の量をそれぞれ表14のように変更した以外は、実施例16と同様な材料を用いて同様な方法により実施例17~21の油揚げ即席麺を作製した。表14には、実施例16の配合条件も示す。
【0086】
【0087】
得られた実施例16~21の油揚げ即席麺をそれぞれ、スープとともにカップ容器に包装しカップ麺製品を得た。実施例16~21のカップ麺製品を開封した後、カップに熱湯を注ぎ、3分間湯戻しした油揚げ即席麺の官能試験を行った。その結果を表15に示す。
【0088】
【0089】
実施例16~21の油揚げ即席麺は、米粉量が増えるに従い弾力が増す傾向であり、いずれも概ね良好な食感を示した。なお、実施例16の油揚げ即席麺は、やや戻りが悪く、弾力に劣る感じであった。実施例21の油揚げ即席麺は、製麺性の点でもろかった。
【0090】
表16に、実施例16~21に関して、油揚げ前の生麺線のα化度および水分含有率、ならびに油揚げ後の油揚げ即席麺のα化度および水分含有率をまとめて示す。
【0091】
【0092】
(実施例22)
小麦粉600g、澱粉100gおよびそば粉300gからなる麺の主原料1kgをミキサーに投入し、水340ml(主原料100質量部に対して34質量部)に食塩10g、リン酸塩8.0g、ペクチン5.0g、アルギン酸2.0gを加えて撹拌溶解して調整した副原料の水溶液を前記ミキサー内の主原料に加え、混練して麺生地を得た。得られた麺生地をロール圧延して0.95mmの厚さとし、20番角刃で切り出して幅1.5mmの生麺線を得た。この生麺線を、カップ麺製品の定量にカットして、フライリテーナーに型詰した。生麺線を型詰したフライリテーナーを、パーム油を溜めた140℃のフライ槽に1分10秒間浸漬して生麺線を油揚げし、実施例22の油揚げ即席麺を得た。
【0093】
(比較例4)
実施例22と同じ主原料、水および副原料を用い、実施例22と同様な方法により、麺生地を得た後、麺生地をロール圧延して0.95mmの厚さとし、20番角刃で切り出して幅1.5mmの生麺線を得た。得られた生麺線を、従来の方法に従って、100℃の蒸気で2分間蒸煮してα化し、調味液シャワーをかけた。その後、実施例22と同様な方法により、α化した麺線を油揚げし、比較例4の油揚げ即席麺を得た。
【0094】
得られた実施例22および比較例4の油揚げ即席麺をそれぞれ、スープとともにカップ容器に包装しカップ麺製品を得た。実施例22および比較例4のカップ麺製品を開封した後、カップに熱湯を注ぎ、3分間湯戻しした油揚げ即席麺の官能試験を行った。その結果を表17に示す。
【0095】
【0096】
表17のように、実施例22の小麦粉の一部をそば粉で代替して作製した生麺線を蒸煮せずに油揚げした油揚げ即席麺は、比較例4の小麦粉の一部をそば粉で代替して作製した生麺線を蒸煮した後に油揚げした油揚げ即席麺と同等以上の優れた食感を示した。また、評価項目として示してはいないが、実施例22は、比較例4と対比して、そばの風味が優れていた。これは、比較例4では生麺線を蒸煮したのに対し、実施例22では生麺線を蒸煮しないため、そば粉の加熱の度合いが少ないことによると考えられる。
【0097】
(実施例23~24)
主原料の配合および用いた水の量をそれぞれ表18のように変更した以外は、実施例22と同様な材料を用いて同様な方法により実施例23~24の油揚げ即席麺を作製した。表18には、実施例22の配合条件も示す。
【0098】
【0099】
得られた実施例23~24の油揚げ即席麺をそれぞれ、スープとともにカップ容器に包装しカップ麺製品を得た。実施例23~24のカップ麺製品を開封した後、カップに熱湯を注ぎ、3分間湯戻しした油揚げ即席麺の官能試験を行った。その結果を、実施例22の評価結果とともに表19に示す。
【0100】
【0101】
実施例23~24の油揚げ即席麺は、実施例22の油揚げ即席麺と対比して、そば粉量が増えるに従い、なめらかさ、弾力が劣る傾向であったが、概ね良好な食感を示した。評価項目として示してはいないが、実施例23~24の油揚げ即席麺は、実施例22の油揚げ即席麺と対比して、そば粉量が増えるに従い、そばの風味が増す傾向が見られた。
【0102】
表20に、実施例22~24および比較例4に関して、油揚げ前の生麺線(比較例4ではα化した麺線)のα化度および水分含有率、ならびに油揚げ後の油揚げ即席麺のα化度および水分含有率をまとめて示す。
【0103】
【0104】
以上説明した実施例の油揚げ即席麺は、生麺線を蒸したり茹でたりしてα化することなしに製造でき、熱湯を注ぐだけであるいは数分間煮込んで調理するだけで優れた食感を示す。
【0105】
このように、本発明では、油揚げ前に生麺線をα化する工程がないので、低エネルギーで油揚げ即席麺を製造することができ、省エネルギーを達成でき、製造のためのランニングコストを抑えることができ、設備投資コストも低く抑えられる。また、主原料として小麦粉に加えて澱粉、ならびに副原料として増粘多糖類を添加することによって、なめらかで弾力のある食感を有する油揚げ即席麺を提供できる。
【0106】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
小麦粉および澱粉、ならびに増粘多糖類を含む原料に水を加え、混練して麺生地を得て、生麺線を切り出す工程と、
α化する工程を行うことなく前記生麺線を油で揚げる工程と
を有する、油揚げ即席麺の製造方法。
[2]
前記原料は、さらに、米粉またはそば粉を含む、付記[1]に記載の油揚げ即席麺の製造方法。
[3]
油で揚げる前の前記生麺線のα化度が30以下および水分含有率が40質量%以下であり、油で揚げた後の油揚げ即席麺のα化度が60以上75以下である、付記[1]または[2]に記載の油揚げ即席麺の製造方法。
[4]
前記増粘多糖類が、ペクチンおよび/またはアルギン酸類である、付記[1]~[3]のいずれかに記載の油揚げ即席麺の製造方法。
[5]
小麦粉および澱粉、ならびに増粘多糖類を含み、α化度が60以上75以下である、油揚げ即席麺。
[6]
さらに、米粉またはそば粉を含む、付記[5]に記載の油揚げ即席麺。
[7]
前記増粘多糖類が、ペクチンおよび/またはアルギン酸類である、付記[5]または[6]に記載の油揚げ即席麺。