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  • 特許-成型目地材およびこれを用いた止水方法 図1
  • 特許-成型目地材およびこれを用いた止水方法 図2
  • 特許-成型目地材およびこれを用いた止水方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】成型目地材およびこれを用いた止水方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 11/06 20060101AFI20220530BHJP
【FI】
E01C11/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018020694
(22)【出願日】2018-02-08
(65)【公開番号】P2019138018
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】591191240
【氏名又は名称】綾羽株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123021
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 元幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 学
(72)【発明者】
【氏名】中井 貴暁
(72)【発明者】
【氏名】佐山 公秀
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-044998(JP,U)
【文献】特開平03-292384(JP,A)
【文献】特開平05-001275(JP,A)
【文献】特公昭50-007853(JP,B1)
【文献】登録実用新案第3189337(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成ゴムと水膨張性樹脂とを混練した粘着物質で構成され
24h水浸させた後の透水係数が、2.87E-05cm/sec~9.79E-05cm/secの範囲である
ことを特徴とする成型目地材。
【請求項2】
前記合成ゴムはブチルゴム又はクロロプレンゴムであり、50-85wt%の濃度範囲で含まれ、
前記水膨張性樹脂は、1-20wt%の濃度範囲で含まれている
ことを特徴とする請求項1記載の成型目地材。
【請求項3】
さらに、長さ方向および幅方向の膨張を抑制する芯材を備えている
ことを特徴とする請求項1または2記載の成型目地材。
【請求項4】
前記芯材は、ガラス製の基材である
ことを特徴とする請求項3記載の成型目地材。
【請求項5】
前記成型目地材の水浸1ケ月後における厚みが水浸前における厚みの1.4倍である
ことを特徴とする請求項3または4に記載の成型目地材。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の成型目地材を、
舗装の継ぎ目、舗装端部または橋梁舗装端部の目地に設置する
ことを特徴とする止水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装路面等のジョイント部や目地から水の浸入を防止する成型目地材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
舗装道路では、路盤の上にアスファルト等の舗装体が敷設されることが多い。道路表面の舗装の継ぎ目(ジョイント部)や舗装端部から舗装体の下へ雨水等が浸入すると、路盤が軟弱化し道路の耐久性が低下してしまう。そのため、舗装継ぎ目に乳剤を塗布して止水することや、成型目地材を設置して止水することが行われており、止水部材としての成型目地材についてこれまでに種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1では、路面の舗装体から剥離し難く、作業に加熱が不要で、夏期の温度上昇に耐え、施工が簡易な目地材として、合成ゴムと充填剤と粘着付与剤とを混練した粘着物質で、軟化点が150℃以上で凝集破壊強度よりも界面剥離強度が大きい物質をテープ状に伸延した目地防水テープが開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、舗装のジョイント部や、縁石、舗装止め、橋梁端部構造物などの立ち上がり部に安定して密着し、ジョイント部や舗装端部からの雨水の浸入を効果的に防止することができる成型目地材として、想定される折曲げ線に沿った折曲げ用凹みを片面又は両面に有し、テープ状に成型した成型目地材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-285571号公報
【文献】実用新案登録第3189337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
成型目地材を使用した舗装道路が供用されると、車両の走行量や降雨水量などの天候条件にも依るが、経年により目地の幅は広がり、ジョイント部等における目開きは避けられない。上記特許文献1の成型目地防水テープも上記特許文献2の成型目地材も一定の防水効果は得られるものの、ジョイント部等の目開きが生じてしまうと、その防水効果が失われてしまうという問題がある。
【0007】
この他、従来の成型目地材としては、合成ゴムや瀝青材を用いた成型目地材もあるが、経年により剥離、やせ、切断などが生じ、耐久性と止水性に問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、耐久性および止水性に優れ、舗装道路等のジョイント部や舗装端部における目開きにも有効な成型目地材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る成型目地材は、合成ゴムと水膨張性樹脂とを混練した粘着物質で構成されることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記合成ゴムはブチルゴム又はクロロプレンゴムであり、50-85wt%の濃度範囲で含まれ、前記水膨張性樹脂は、1-20wt%の濃度範囲で含まれているのが好ましい。
【0011】
これにより、ブチルゴム又はクロロプレンゴムと水膨張性樹脂とを成分として有しているので、舗装道路等のジョイント部や舗装端部における目開きが発生しても、雨水等に反応して膨張し目地を塞ぎ、舗装体の下層への水の浸入を防ぐことが可能な成型目地材が実現される。
【0012】
さらに、長さ方向および幅方向の膨張を抑制する芯材を備えているのが好ましく、前記芯材は、ガラス製の基材であるのがより好ましい。
【0013】
これにより、芯材が成型目地材の長さ方向と幅方向に対する膨張を抑制し、止水効果をもたらす厚さ方向への膨張のみを許容するので、より止水効果の高い成型目地材が実現される。
【0014】
また、本発明は、上記の成型目地材を、舗装の継ぎ目、舗装端部または橋梁舗装端部の目地に設置することを特徴とする止水方法としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明に係る成型目地材によれば、舗装道路等のジョイント部や舗装端部における目開きに対して優れた耐久性と止水性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】成型目地材の設置例を示す図である。
図2】成型目地材の設置例を示す図である。
図3】成型目地材の設置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る成型目地材について説明する。
【0018】
本実施形態に係る成型目地材は、舗装道路の継ぎ目であるジョイント部や舗装道路の端部、橋梁舗装端部などの目地に設置される目地材であり、長尺のテープ状に成型され、保存時はロール状に巻いた状態となっている。そして、使用時には、ロールを解き、離型紙を剥がし目地に沿って貼り合わせることで、目地を塞ぎ、浸水を防ぐものである。
【0019】
成型目地材は、合成ゴムと水膨張性樹脂とを混練した粘着物質で構成されている。主剤となる合成ゴムは、ブチルゴム又はクロロプレンゴム(CRゴム)であり、50-85wt%の濃度範囲で含まれており、CRゴムの場合は特に50-60 wt%の濃度範囲で含まれているのが好ましい。また、水膨張性樹脂は、例えば親水性ポリウレタン樹脂又はポリアクリル酸ナトリウム樹脂であり、1-20wt%の濃度範囲で含まれている。これに加えて、配合される充填剤として炭酸カルシウム、粘着剤として石油系樹脂、粘着性液体として油、その他カーボンブラックをそれぞれ0-10wt%の濃度範囲で含むものである。これらを混練した粘着物質を厚さ10mm程度、幅30mm程度、長さ5m程度のテープ状に成型して、離型紙を貼り合わせて成型目地材が製造される。
【0020】
このように構成された成型目地材は、水膨張性を有する合成ゴムを成分として有しており、経年により継ぎ目箇所に目開きが発生しても、水膨張性を有しているため雨水等に反応して膨張し目地を塞ぐので、舗装体の下層への水の浸入を防ぐことができる。
【0021】
また、成型目地材は、水膨張性を有する合成ゴムをより気中近くで使用するために、芯材にガラス製の基材を備えている。芯材にガラス製の基材を用いることで、長さ方向と幅方向に対する膨張性が抑制され、止水効果をもたらす厚さ方向に対する膨張性のみを許容しているため、より止水効果を高めることができる。
【0022】
図1は、成型目地材の設置例を示す図である。
【0023】
成型目地材1は、例えば、舗装道路の路盤2の上に形成される舗装体に設置される。図1では、舗装体を構成する基層3と路面表層4のうち、路面表層4の目地に成型目地材1が設置される例を示している。また、図2に示すように、舗装体を構成する基層3と路面表層4のうち、基層3の目地に成型目地材1が設置されるとしてもよい。
【0024】
成型目地材1は、橋梁舗装端部に設置するとしてもよい。図3に示すように、橋梁端部8において、コンクリート床版5の上に形成されるレベリング層6の目地と、レベリング層6の上に形成される表層7の目地とに成型目地材1を設置することで、当該部分が経年により目開きが発生しても止水性を損なわないようにすることができる。
【0025】
このように構成された成型目地材は、合成ゴムと水膨張性樹脂とを混練した粘着物質で構成されているので、経年により継ぎ目箇所に目開きが発生しても膨張して目地を塞ぐので、舗装体の下へ水が浸入することを防ぐことができる。
【0026】
以下の表に本発明に係る成型目地材の試験結果を示す。
【0027】
【表1】
【0028】
表1の試験結果は、施工対象となるジョイント部の目開きを模して密粒度アスファルトで形成した対象物に、本発明の実施例の製品と、比較例として従来品との2種類の防水シートを敷設し、そのシートの吸水膨張性が防水性に効果があるか見極めるために、24h水浸させた後、加圧透水試験を行って評価をしたものである。
【0029】
水浸前は、実施例と比較例の双方とも水の通りがあり、一定水量が流下する秒数で確認したところ、実施例/比較例=68.96/45.20≒1.5と、若干ながら実施例の水の通りが悪かった程度で双方に大きな差は認められなかった。
【0030】
一方、水浸後は、24h水浸させることにより、透水係数が6.33×10-5/3.60×10-3≒1/57と、実施例と比較例との差が大きく開き、実施例の値は極めて小さな値を示した。
【0031】
この試験結果より、実施例は比較例に比べて、目開きに対する止水に有用であることが証明されたといえる。
【0032】
【表2】
【0033】
表2に示すのは、芯材にガラスの基材を用いて拘束性を調査した結果である。ガラス基材の拘束材を入れた成型目地材と、ガラス基材の拘束材を入れていない拘束材とを1ケ月水漬させた後の変化を比較したものである。
【0034】
拘束材を入れた成型目地材の方は、長さ方向および幅方向の膨張が拘束され、厚さ方向にのみ膨張(t=10mm→14mm)している。一方、拘束材の入っていない成型目地材の方は、厚さ方向の膨張(t=10mm→12mm)が少なく、長さ方向および幅方向への膨張があるため正面視形状が蛇行状に変化している。
【0035】
この試験結果より、芯材にガラスの基材を用いることで厚さ方向への膨張性が高まり、止水効果の向上が図られることがわかる。
【0036】
以上、本発明に係る成型目地材について、実施形態に基づいて説明したが本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々設計変更が可能であり、それらも全て本発明の範囲内に包含されるものである。
【0037】
例えば、上記実施の形態では、芯材としてガラス基材を用いているが、CRゴムやステンレスを拘束材として用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、舗装路面や橋梁等のジョイント部や端部の目地から水の浸入を防止する成型目地材として有用である。
【符号の説明】
【0039】
1 成型目地材
2 路盤
3 基層
4 路面表層
5 コンクリート床版
6 レベリング層
7 表層
8 橋梁端部
図1
図2
図3