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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】半導体メモリ
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/11568 20170101AFI20220530BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20220530BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20220530BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20220530BHJP
   H01L 27/11582 20170101ALI20220530BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220530BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20220530BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
H01L27/11568
H01L29/78 613B
H01L29/78 618B
H01L29/78 626A
H01L29/78 622
H01L27/088 H
H01L27/088 E
H01L27/11582
H01L29/78 371
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018047198
(22)【出願日】2018-03-14
(65)【公開番号】P2018157208
(43)【公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2017051388
(32)【優先日】2017-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】手塚 勉
(72)【発明者】
【氏名】荒井 史隆
(72)【発明者】
【氏名】池田 圭司
(72)【発明者】
【氏名】上田 知正
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 信美
(72)【発明者】
【氏名】田中 千加
(72)【発明者】
【氏名】三浦 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】澤部 智明
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-048806(JP,A)
【文献】特開2012-039101(JP,A)
【文献】特開2017-041646(JP,A)
【文献】特開2000-222895(JP,A)
【文献】特開2015-018594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/11568
H01L 29/786
H01L 21/8234
H01L 27/11582
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層と、
前記半導体層上のゲート絶縁膜上に配置された第1のゲート電極を有する第1のセレクトトランジスタと、
前記ゲート絶縁膜上に配置された第2のゲート電極を有する第2のセレクトトランジスタと、
前記ゲート絶縁膜を介して前記第1及び第2のセレクトトランジスタの間の前記半導体層上方に配置され、前記半導体層の表面に対して平行な第1の方向に延びる酸化物半導体層と、
第1の絶縁層を介して前記酸化物半導体層上方に配置された第1のメモリセルの第1の制御ゲート電極及び第2のメモリセルの第2の制御ゲート電極と、
前記第1の制御ゲート電極と前記第2の制御ゲート電極との間において、前記第1の絶縁層を介して前記酸化物半導体層上方に配置された第1のトランジスタの第3のゲート電極と、
前記酸化物半導体層の前記第1の方向における第1の端部と前記第2の制御ゲート電極との間において、前記第1の絶縁層を介して前記酸化物半導体層上方に配置された第2のトランジスタの第4のゲート電極と、
前記酸化物半導体層の前記第1の端部に接続された第1の配線と、
前記第1のセレクトトランジスタの第1の端子に接続されたソース線と、
前記第2のセレクトトランジスタの第2の端子に接続されたビット線と、
を具備し、
前記第1のメモリセルは、前記酸化物半導体層内に、第1の電荷格納層を含み、
前記第2のメモリセルは、前記酸化物半導体層内に、第2の電荷格納層を含み、
前記酸化物半導体層は、前記第1の端部と前記酸化物半導体層の前記第1の方向における第2の端部との間にわたって前記ゲート絶縁膜に接し、
前記第1の制御ゲート電極、前記第2の制御ゲート電極、前記第3のゲート電極及び前記第4のゲート電極は、互いに分離されている、
半導体メモリ。
【請求項2】
前記第1のトランジスタのチャネル領域、及び、前記第2のトランジスタのチャネル領域は、前記酸化物半導体層内に配置されている、
請求項1に記載の半導体メモリ。
【請求項3】
前記第1のメモリセルの第1のソース/ドレイン領域、及び、前記第2のメモリセルの第2のソース/ドレイン領域は、前記半導体層内に配置され、
前記第3のゲート電極は、前記第1のソース/ドレイン領域の上方に配置され、
前記第4のゲート電極は、前記第2のソース/ドレイン領域の上方に配置されている、
請求項1又は2に記載の半導体メモリ。
【請求項4】
前記酸化物半導体層の前記第2の端部と前記第1の制御ゲート電極との間に配置された第3のトランジスタの第5のゲート電極と、
前記酸化物半導体層の前記第2の端部に接続された第2の配線と、
をさらに具備する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体メモリ。
【請求項5】
前記第3のゲート電極は、p型半導体を含み、
前記第1及び第2の制御ゲート電極は、前記p型半導体と異なる材料を含む、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体メモリ。
【請求項6】
前記第3のゲート電極と前記第1の絶縁層との間に設けられた酸化物層
をさらに具備し、
前記酸化物層の酸素原子の数密度は、前記第1の絶縁層の酸素原子の数密度より大きい、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体メモリ。
【請求項7】
前記第3のゲート電極と前記第1の絶縁層との間に設けられた第2の絶縁層と、
前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層との間設けられた電荷トラップ層と、
をさらに具備する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体メモリ。
【請求項8】
半導体層と、
前記半導体層上のゲート絶縁膜上に配置された第1のゲート電極を有する第1のセレクトトランジスタと、
前記ゲート絶縁膜上に配置された第2のゲート電極を有する第2のセレクトトランジスタと、
前記ゲート絶縁膜を介して前記第1及び第2のセレクトトランジスタの間の前記半導体層上方に配置された酸化物半導体層と、
第1の絶縁層を介して前記酸化物半導体層上方に配置された第1のメモリセルの第1の制御ゲート電極及び第2のメモリセルの第2の制御ゲート電極と、
前記第1の制御ゲート電極と前記第2の制御ゲート電極との間において、前記第1の絶縁層を介して前記酸化物半導体層上方に配置された第1のトランジスタの第3のゲート電極と、
前記酸化物半導体層の第1の端部と前記第2の制御ゲート電極との間において、前記第1の絶縁層を介して前記酸化物半導体層上方に配置された第2のトランジスタの第4のゲート電極と、
前記酸化物半導体層の第2の端部と前記第1の制御ゲート電極との間に配置された第3のトランジスタの第5のゲート電極と、
前記酸化物半導体層の前記第1の端部に接続された第1の配線と、
前記酸化物半導体層の前記第2の端部に接続された第2の配線と、
前記第1のセレクトトランジスタの第1の端子に接続されたソース線と、
前記第2のセレクトトランジスタの第2の端子に接続されたビット線と、
を具備し、
前記第1のメモリセルは、前記酸化物半導体層内に、第1の電荷格納層を含み、
前記第2のメモリセルは、前記酸化物半導体層内に、第2の電荷格納層を含む、
半導体メモリ。
【請求項9】
半導体層と、
前記半導体層上のゲート絶縁膜上に配置された第1のゲート電極を有する第1のセレクトトランジスタと、
前記ゲート絶縁膜上に配置された第2のゲート電極を有する第2のセレクトトランジスタと、
前記ゲート絶縁膜を介して前記第1及び第2のセレクトトランジスタの間の前記半導体層上方に配置された酸化物半導体層と、
第1の絶縁層を介して前記酸化物半導体層上方に配置された第1のメモリセルの第1の制御ゲート電極及び第2のメモリセルの第2の制御ゲート電極と、
前記第1の制御ゲート電極と前記第2の制御ゲート電極との間において、前記第1の絶縁層を介して前記酸化物半導体層上方に配置された第1のトランジスタの第3のゲート電極と、
前記酸化物半導体層の第1の端部と前記第2の制御ゲート電極との間において、前記第1の絶縁層を介して前記酸化物半導体層上方に配置された第2のトランジスタの第4のゲート電極と、
前記酸化物半導体層の前記第1の端部に接続された第1の配線と、
前記第1のセレクトトランジスタの第1の端子に接続されたソース線と、
前記第2のセレクトトランジスタの第2の端子に接続されたビット線と、
を具備し、
前記第1のメモリセルは、前記酸化物半導体層内に、第1の電荷格納層を含み、
前記第2のメモリセルは、前記酸化物半導体層内に、第2の電荷格納層を含み、
前記第3のゲート電極は、p型半導体を含み、
前記第1及び第2の制御ゲート電極は、前記p型半導体と異なる材料を含む、
半導体メモリ。
【請求項10】
前記第1のトランジスタのチャネル領域、及び、前記第2のトランジスタのチャネル領域は、前記酸化物半導体層内に配置されている、
請求項8又は9に記載の半導体メモリ。
【請求項11】
前記第1のメモリセルの第1のソース/ドレイン領域、及び、前記第2のメモリセルの第2のソース/ドレイン領域は、前記半導体層内に配置され、
前記第3のゲート電極は、前記第1のソース/ドレイン領域の上方に配置され、
前記第4のゲート電極は、前記第2のソース/ドレイン領域の上方に配置されている、 請求項8乃至10のいずれか1項に記載の半導体メモリ。
【請求項12】
前記第3のゲート電極は、p型半導体を含み、
前記第1及び第2の制御ゲート電極は、前記p型半導体と異なる材料を含む、
請求項8に記載の半導体メモリ。
【請求項13】
前記第3のゲート電極と前記第1の絶縁層との間に設けられた酸化物層、
をさらに具備し、
前記酸化物層の酸素原子の数密度は、前記第1の絶縁層の酸素原子の数密度より大きい、
請求項8に記載の半導体メモリ。
【請求項14】
前記第3のゲート電極と前記第1の絶縁層との間に設けられた第2の絶縁層と、
前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層との間に設けられた電荷トラップ層と、
をさらに具備する請求項8に記載の半導体メモリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報端末やインターネット、クラウドなどで取り扱われるデータ量が爆発的に増
加している。それに伴いメモリデバイスの大容量化、ビットコストの低減が求められてい
る。
【0003】
理想的なメモリデバイスは、高速性、高記憶密度及び低ビットコストの不揮発性半導体
メモリである。現状では、全ての要求を満たすメモリデバイスは存在せず、用途によって
適したメモリデバイスが、ユーザーに提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-073969号公報
【文献】特開2011-258303号公報
【文献】特開2013-251533号公報
【文献】特開2015-128192号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Hiroki Inoue et al., IEEE JOURNAL OF SOLID-STATE CIRCUITS, VOL. 47, NO. 9, pp.2258-2265, SEPTEMBER 2012.
【文献】Takanori Matsuzaki et al., ECS Transactions, 64 (14) 101-111 (2014).
【文献】Yoshimitsu Yamauchi et al., Japanese Journal of Applied Physics 52 (2013) 094101.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体メモリの特性を向上する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の半導体メモリは、半導体層と、前記半導体層上のゲート絶縁膜上に配置された第1のゲート電極を有する第1のセレクトトランジスタと、前記ゲート絶縁膜上に配置された第2のゲート電極を有する第2のセレクトトランジスタと、前記ゲート絶縁膜を介して前記第1及び第2のセレクトトランジスタの間の前記半導体層上方に配置され、前記半導体層の表面に対して平行な第1の方向に延びる酸化物半導体層と、絶縁層を介して前記酸化物半導体層上方に配置された第1のメモリセルの第1の制御ゲート電極及び第2のメモリセルの第2の制御ゲート電極と、前記第1の制御ゲート電極と前記第2の制御ゲート電極との間において、前記絶縁層を介して前記酸化物半導体層上方に配置された第1のトランジスタの第3のゲート電極と、前記酸化物半導体層の前記第1の方向における第1の端部と前記第2の制御ゲート電極との間において、前記絶縁層を介して前記酸化物半導体層上方に配置された第2のトランジスタの第4のゲート電極と、前記酸化物半導体層の前記第1の端部に接続された第1の配線と、前記第1のセレクトトランジスタの第1の端子に接続されたソース線と、前記第2のセレクトトランジスタの第2の端子に接続されたビット線と、を含み、前記第1のメモリセルは、前記酸化物半導体層内に、第1の電荷格納層を含み、前記第2のメモリセルは、前記酸化物半導体層内に、第2の電荷格納層を含み、前記酸化物半導体層は、前記第1の端部と前記酸化物半導体層の前記第1の方向における第2の端部との間にわたって前記ゲート絶縁膜に接し、前記第1の制御ゲート電極、前記第2の制御ゲート電極、前記第3のゲート電極及び前記第4のゲート電極は、互いに分離されている
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態の半導体メモリの基本例を説明するための断面図。
図2】第1の実施形態の半導体メモリの基本例を説明するための回路図。
図3】第1の実施形態の半導体メモリの動作原理を説明するための図。
図4】第1の実施形態の半導体メモリの動作原理を説明するための図。
図5A】第1の実施形態の半導体メモリの動作例を説明するための図。
図5B】第1の実施形態の半導体メモリの動作例を説明するための図。
図5C】第1の実施形態の半導体メモリの動作例を説明するための図。
図5D】第1の実施形態の半導体メモリの動作例を説明するための図。
図5E】第1の実施形態の半導体メモリの動作例を説明するための図。
図5F】第1の実施形態の半導体メモリの動作例を説明するための図。
図6A】第1の実施形態の半導体メモリの動作例を説明するための図。
図6B】第1の実施形態の半導体メモリの動作例を説明するための図。
図6C】第1の実施形態の半導体メモリの動作例を説明するための図。
図6D】第1の実施形態の半導体メモリの動作例を説明するための図。
図6E】第1の実施形態の半導体メモリの動作例を説明するための図。
図6F】第1の実施形態の半導体メモリの動作例を説明するための図。
図7】第1の実施形態の半導体メモリの具体例を説明するためのブロック図。
図8】第1の実施形態の半導体メモリの具体例を説明するための回路図。
図9】第1の実施形態の半導体メモリの具体例を説明するための上面図。
図10】第1の実施形態の半導体メモリの具体例を説明するための断面図。
図11】第2の実施形態の半導体メモリを説明するための断面図。
図12】第2の実施形態の半導体メモリを説明するための回路図。
図13A】第2の実施形態の半導体メモリの動作例を説明するための図。
図13B】第2の実施形態の半導体メモリの動作例を説明するための図。
図13C】第2の実施形態の半導体メモリの動作例を説明するための図。
図13D】第2の実施形態の半導体メモリの動作例を説明するための図。
図13E】第2の実施形態の半導体メモリの動作例を説明するための図。
図14A】第2の実施形態の半導体メモリの動作例を説明するための図。
図14B】第2の実施形態の半導体メモリの動作例を説明するための図。
図14C】第2の実施形態の半導体メモリの動作例を説明するための図。
図14D】第2の実施形態の半導体メモリの動作例を説明するための図。
図14E】第2の実施形態の半導体メモリの動作例を説明するための図。
図15】第3の実施形態の半導体メモリを説明するための断面図。
図16】第3の実施形態の半導体メモリを説明するための上面図。
図17】第3の実施形態の半導体メモリを説明するための回路図。
図18】第3の実施形態の半導体メモリの変形例を説明するための断面図。
図19】第4の実施形態の半導体メモリを説明するための断面図。
図20】第5の実施形態の半導体メモリを説明するための断面図。
図21】第6の実施形態の半導体メモリを説明するための断面図。
図22】第6の実施形態の半導体メモリを説明するための断面図。
図23】第6の実施形態の半導体メモリを説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態]
図1乃至図23を参照して、実施形態の半導体メモリについて、説明する。以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については、同一符号を付す。また、以下の実施形態において、区別化のために数字/英字が参照符号の末尾に付された構成要素(例えば、ワード線WLやビット線BL、各種の電圧及び信号など)が相互に区別されない場合、末尾の数字/英字が省略された表記が用いられる。
【0010】
[1]第1の実施形態
図1乃至図10を参照して、第1の実施形態の半導体メモリについて、説明する。
【0011】
(1) 基本例
図1乃至図6Fを参照して、本実施形態の半導体メモリの基本例について、説明する。
【0012】
<構成>
図1及び図2を用いて、本実施形態の半導体メモリの基本例の構造について、説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の半導体メモリの構成を説明するための断面図である。
図1に示されるように、本実施形態の半導体メモリは、複数のメモリセルを含む。ある個数のメモリセルMCが、制御単位(選択単位)としてのメモリセルストリングMS内に、設けられている。
【0014】
本実施形態において、メモリセルストリングMSは、メモリセルMCに加え、複数のセレクトゲートトランジスタと、複数のカットオフトランジスタXGとを、含む。
【0015】
メモリセルストリングMS内において、メモリセルMCは、Y方向に沿って、半導体基板90(半導体領域AA)上に配列されている。半導体基板90は、例えば、シリコン(Si)基板である。
【0016】
メモリセルMCは、電荷格納層CSを含む積層ゲート構造の電界効果トランジスタである。電荷格納層CS内の電荷量(メモリセルの閾値電圧)とデータとの関連づけによって、メモリセルは、1ビット以上のデータを記憶する。
【0017】
電荷格納層CSは、半導体基板90上のゲート絶縁膜60上に設けられている。
【0018】
例えば、ゲート絶縁膜60の材料は、酸化シリコン、酸窒化シリコン、高誘電率材料(例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、又は、酸化ジルコニウム)などから選択される。ゲート絶縁膜60は、これらの材料の混合物膜、又は、積層膜でもよい。ゲート絶縁膜60の膜厚は、1nmから10nm程度の範囲に設定される。例えば、ゲート絶縁膜60の膜厚は、3nmから7nmの範囲内の厚さであることが好ましい。
【0019】
電荷格納層CSは、例えば、酸化物半導体層61を用いて形成されている。
【0020】
酸化物半導体層61の材料は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)などの酸化物、又は、それらの混合物(化合物)である。例えば、酸化物半導体層61の材料は、InGnZnOなどである。酸化物半導体層61の膜厚は、1nmから15nm程度の範囲に設定される。例えば、酸化物半導体層61の膜厚は、3nmから10nmの範囲内の厚さであることが好ましい。
【0021】
制御ゲート電極80は、電荷格納層CSの上方に、設けられている。制御ゲート電極として導電層80は、ワード線WLとして用いられる。例えば、ワード線WLは、制御ゲート線ともよばれる。メモリセルストリングMSにおいて、メモリセルMCは、互いに異なるワード線WLに接続されている。
【0022】
制御ゲート電極80は、例えば、ポリシリコン、金属及び導電性化合物(例えば、シリサイド)のうち少なくとも1つを含む単層膜又は積層膜である。
【0023】
絶縁層62は、制御ゲート電極80と電荷格納層CSとの間に、設けられている。絶縁層62は、制御ゲート電極80を電荷格納層CSから電気的に分離している。
【0024】
絶縁層62は、Y方向に延在し、酸化物半導体層61上において、連続している。
【0025】
絶縁層62の材料は、例えば、ゲート絶縁膜60に用いられる材料のうち少なくとも1つを含む。例えば、絶縁層62の膜厚は、ゲート絶縁膜60の膜厚と同程度に設定される。但し、絶縁層62の材料は、ゲート絶縁膜60の材料と異なる材料でもよい。また、絶縁層62の膜厚は、ゲート絶縁膜60の膜厚と異なる厚さでもよい。
【0026】
メモリセルMCのソース/ドレイン領域64が、半導体基板90内に設けられている。ソース/ドレイン領域64は、例えば、リンやヒ素などn型ドーパントが高濃度に添加されたn型シリコン拡散層である。
【0027】
2つのソース/ドレイン領域64間の半導体領域が、メモリセルMCのチャネル領域となる。メモリセルMCのチャネル領域は、p型半導体層である。チャネル領域の上方に、制御ゲート電極80が、配置されている。ソース/ドレイン領域64によって、複数のメモリセルMCの電流経路が直列に接続されている。
【0028】
尚、以下において、ソース/ドレイン領域64間のチャネル領域を含む部分(素子)を着目する場合、メモリセルMCのことを、センストランジスタ(又は、リードトランジスタ)とよぶ場合もある。
【0029】
複数のカットオフトランジスタXGが、半導体基板90の上方に配置されている。
カットオフトランジスタXGは、2つのメモリセルMC間に設けられている。半導体基板90上方において、カットオフトランジスタXGとメモリセルMCとが、Y方向において交互に並んでいる。
【0030】
カットオフトランジスタXGのゲート電極81は、酸化物半導体層61上の絶縁層62上に、設けられている。カットオフトランジスタXGにおいて、絶縁層62は、ゲート絶縁膜として用いられる。
【0031】
カットオフトランジスタXGは、酸化物半導体層61をチャネル領域に用いる。酸化物半導体層61は、メモリセルMCの電荷格納層CS及びトランジスタXGのチャネル領域に用いられる連続した膜である。
【0032】
カットオフトランジスタXGのゲート電極81は、メモリセルMCのソース/ドレイン領域64の上方に設けられている。これによって、カットオフトランジスタXGのゲート電極81の下方において、カットオフトランジスタXGの半導体基板90内におけるチャネル領域(寄生チャネル領域)は、半導体基板90内に、形成されない。
【0033】
導電層81は、トランジスタSXのゲート電極として用いられるとともに、カットオフゲート線XLとして用いられる。メモリセルストリングMS内における複数のカットオフトランジスタXGは、互いに異なるカットオフゲート線XLに、接続されている。
【0034】
例えば、ゲート電極(導電層)81は、制御ゲート電極80の材料及び/又は構造を有する。
【0035】
カットオフトランジスタXGは、メモリセルMCに対する電荷の注入、メモリセルMCからの電荷の放出、及び、メモリセルMCのデータ保持を制御するための素子である。
【0036】
例えば、カットオフトランジスタXGは、書き込み動作時に、オン状態に設定される。例えば、カットオフトランジスタXGは、データ保持動作及び読み出し動作時に、オフ状態に設定される。
【0037】
本実施形態において、メモリセルストリングMS内におけるカットオフトランジスタXGの個数は、メモリセルの個数と同じである。例えば、メモリセルストリングMSにおいて、1つのカットオフトランジスタXGと1つのメモリセルMCとが、ペアを形成する。
【0038】
図1において、4つのメモリセルMCが、設けられている例が示されている。メモリセルストリングMS内のメモリセルの個数は、5以上でもよいし、3以下でもよい。
【0039】
尚、カットオフトランジスタXGは、セルトランジスタ、転送ゲートトランジスタ又はセレクトトランジスタとよばれる場合もある。これに伴って、カットオフゲート線XLは、ワード線、転送ゲート線又はセレクトゲート線とよばれる場合もある。
【0040】
セレクトトランジスタSG1,SG2は、直列接続された複数のメモリセルMCの一端及び他端に、配置されている。2つのセレクトトランジスタSG1,SG2間に、メモリセルMC及びカットオフトランジスタXGが配列されている。
【0041】
セレクトトランジスタSG1,SG2は、半導体基板90上に設けられている。2つのセレクトトランジスタSG1,SG2間の領域上に、Y方向に延在する酸化物半導体層61が設けられている。
【0042】
セレクトトランジスタSG1,SG2において、ゲート電極82,83は、半導体基板90上のゲート絶縁膜60上に、設けられている。セレクトトランジスタSG1,SG2のゲート電極82,83は、メモリセルストリングMSのセレクトゲート線SGS,SGDとして、それぞれ機能する。
【0043】
セレクトトランジスタSG1,SG2のソース/ドレイン領域64,69A,69Bは、半導体基板90内に設けられている。セレクトゲートトランジスタSG1,SG2のチャネル領域は、半導体基板90内に設けられている。
セレクトトランジスタSG1,SG2は、メモリセルストリングMSの選択素子として用いられる。
【0044】
尚、ソース側のセレクトトランジスタSG1及びセレクトゲート線SGSは、受けられなくとも良い。
【0045】
ソース線SLは、メモリセルストリングMSのソース線側のセレクトトランジスタSG1のソース/ドレイン領域69Aに、ソース線コンタクト89Aを介して接続されている。
ビット線BLは、メモリセルストリングMSのビット線側のセレクトトランジスタSG2のソース/ドレイン領域69Bに、ビット線コンタクト89Bを介して、接続されている。
【0046】
ソース線SLとしての導電層84、及び、ビット線BLとしての導電層85は、層間絶縁膜(図示せず)内に設けられている。例えば、銅(Cu)及びアルミニウム(Al)のうち少なくとも一方を含む金属層である。
【0047】
本実施形態の半導体メモリにおいて、導電層86が、コンタクト89Cを介して、酸化物半導体層61の一端に接続されている。導電層86は、例えば、導電層84,86の材料と同じ材料を用いて形成される。
【0048】
導電層86は、注入線ILである。
注入線ILは、メモリセルMCの電荷格納層CSに対する電荷の注入、及び、メモリセルMCの電荷格納層CSからの電荷の放出の制御のために用いられる配線(制御線)である。
【0049】
尚、半導体基板90は、絶縁性基板(絶縁層)上に設けられた半導体層でもよい。半導体基板90に、ゲルマニウム(Ge),シリコンゲルマニウム(SiGe)、炭化シリコン(SiC)、III-V族半導体、酸化物半導体が、用いられてもよい。III-V族半導体として、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)等が、用いられる。酸化物半導体として、Ga、InGaZnO、InGaSnO、SnO等が、用いられる。更に、硫化モリブデン(MoS)やセレン化タングステン(WSe)等の遷移金属硫化物半導体が、半導体基板20に用いられてもよい。
【0050】
図2は、本実施形態の半導体メモリにおけるメモリセルストリングMSの構成を回路的に示した図である。
図2に示されるように、ソース線SLは、メモリセルストリングの一端のセレクトトランジスタSG1の端子(ソース/ドレイン)に、接続されている。ビット線BLは、メモリセルストリングMSの他端のセレクトトランジスタSG2の端子(ソース/ドレイン)に、接続されている。
【0051】
セレクトトランジスタSG1,SG2のゲートは、セレクトゲート線SGS,SGDにそれぞれ接続されている。
【0052】
メモリセルMCのゲートは、対応するワード線WLに接続されている。
カットオフトランジスタXGのゲートは、対応するカットオフゲート線XLに接続されている。
【0053】
各メモリセルMCのソース/ドレインは、2つのセレクトトランジスタ間で、直列に接続されている。
メモリセルMCの電荷格納層CSは、カットオフトランジスタXGのソース/ドレインに接続されている。電荷格納層CSは、カットオフトランジスタXGのソース/ドレイン(及びチャネル領域)を介して、注入線ILに接続されている。
【0054】
カットオフトランジスタXGのチャネル領域は、ゲート電極81に対向する酸化物半導体層61の部分に対応する。カットオフトランジスタXGのソース/ドレインは、酸化物半導体層61内におけるチャネル領域の両端の部分に対応する。
【0055】
複数のカットオフトランジスタXGのうち、注入線ILのコンタクト89Cに隣り合うカットオフトランジスタXGのゲート長は、他のカットオフトランジスタXGのゲート長よりも長くてもよい。これによって、電荷格納層CSからコンタクト89Cへの電荷のリークを抑制できる。
【0056】
尚、本実施形態の半導体メモリにおける上述のメモリセルストリングMSは、周知の膜堆積技術、リソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、形成できる。
【0057】
<原理及び動作>
図3及び図4を用いて、本実施形態の半導体メモリの動作の原理について説明する。
【0058】
図3は、本実施形態の半導体メモリにおけるメモリセルストリング(メモリセル)の特性を説明するための図である。
図3において、グラフの横軸は、メモリセル(トランジスタ)のゲート電圧に対応し、グラフの縦軸は、メモリセルのドレイン電流に対応している。
【0059】
図3において、特性線(実線)B1は、メモリセルの電荷格納層内に電荷(電子)が格納されている状態(蓄積状態)におけるトランジスタの特性を示している。特性線(破線)B2は、メモリセルの電荷格納層内に電荷が格納されていない状態(空乏状態)におけるトランジスタの特性を示している。
【0060】
メモリセルMCは、電荷格納層(酸化物半導体層)CS内に電荷が格納されていない状態(空乏状態)において、ノーマリオフ型のトランジスタである。
【0061】
特性線B2に示されるように、空乏状態の電荷格納層CSを有するメモリセルMCの制御ゲート電圧が0Vである場合において、メモリセルMCはオフしている。この場合において、メモリセルMCのドレイン電流は、実質的にゼロである。
【0062】
空乏状態の電荷格納層CSを有するメモリセルMCの制御ゲート電圧が電圧値Va以上に設定された場合において、メモリセルMCはオン状態に設定される。この場合において、メモリセルMCは、ゲート電圧に応じた電流値のドレイン電流を出力する。
【0063】
特性線B1に示されるように、電荷格納層CS内に電荷が格納された状態(蓄積状態)のメモリセルMCは、閾値電圧の値が上昇する。
ゲート電圧が電圧値Vaである場合、蓄積状態の電荷格納層を有するメモリセルMCは、オフしている。この場合におけるドレイン電流の電流値は、実質的にゼロである。
【0064】
蓄積状態の電荷格納層CSを有するメモリセルに、電圧値Vb(>Va)以上のゲート電圧が印加された場合、メモリセルMCは、オン状態に設定される。この場合において、メモリセルMCは、ゲート電圧に応じた電流値のドレイン電流を出力する。
【0065】
このように、ゲート電圧に対する空乏状態の電荷格納層CSを有するメモリセルのドレイン電流の出力特性は、デート電圧に対する蓄積状態の電荷格納層CSを有するメモリセルMCのドレイン電流の出力特性は異なる。
【0066】
ドレイン電流の大きさ(又はメモリセルのオン/オフ状態)とデータとが関連づけられることによって、メモリセルMCが、“1”データを保持しているか、“0”データを保持しているか、判別できる。
【0067】
例えば、電荷格納層CSが空乏状態に設定されたメモリセルに対して、“0”データが割り付けられ、電荷格納層CSが蓄積状態に設定されたメモリセルに対して、“1”データが割り付けられる。
【0068】
例えば、電圧値Vaと電圧値Vbの間の電圧値Vcを有する電圧が読み出し電圧として、メモリセルMCの制御ゲート電極(ワード線WL)に印加されることによって、メモリセルMC内のデータを判定できる。
【0069】
例えば、図1のメモリセルストリングを含む半導体メモリにおいて、読み出し動作は、以下のように、実行される。
【0070】
読み出し動作において、メモリセルストリングの両端のセレクトトランジスタSG1,SG2がオン状態に設定される。
【0071】
ある電圧値の電圧(以下では、ビット線電圧とよぶ)VBLが、ビット線BLに、印加される。例えば、ソース線SLの電位は、0Vに設定される。尚、ソース線SLに、電圧VBLより低い電圧が印加されてもよい。
【0072】
カットオフトランジスタXGのゲート電極に、0Vの電圧が印加される。これによって、カットオフトランジスタXGは、オフ状態に設定される。酸化物半導体層61内の複数の電荷格納層CSは、電気的に分離された状態を維持する。
【0073】
非選択セルのゲート電極に、読み出し電圧より高い電圧が印加される。これによって、非選択セルは、オン状態に設定される。非選択セルのゲート電極の下方において、半導体基板90内に、チャネルが形成される。
【0074】
読み出し電圧が選択セルMCのゲート電極(ワード線WL)に印加される。ソース線SLに流れる電流(以下では、ソース線電流とよぶ)が、センスアンプ回路によって、セン
スされる。選択セルMCのオン/オフに応じた電流の発生の有無、又は、ソース線電流の電流値と参照値との比較結果に基づいて、選択セル内のデータが、判別される。
これによって、選択セルからデータが読み出される。
【0075】
図4を用いて、本実施形態の半導体メモリにおけるメモリセルのデータ保持状態について説明する。
図4は、本実施形態の半導体メモリにおけるメモリセルMCのデータ保持状態におけるバンドギャップ状態を示す模式図である。図4において、メモリセルMCとカットオフトランジスタXGとの位置関係に基づいて電荷格納層CSに用いられる酸化物半導体の伝導帯下端のエネルギーEcと価電子帯上端のエネルギーEvのバンドエネルギーの状態が示される。
【0076】
図4に示されるように、メモリセルMC及びカットオフトランジスタXGが、連続した酸化物半導体層OS上に設けられている。
【0077】
電子(e-)が、電荷格納層CSに蓄積されている場合、蓄積状態の電荷格納層を有するメモリセルMCにおける酸化物半導体層OSのエネルギーEcは、フェルミレベルEfより低下する。
【0078】
電荷格納層CSに用いられた酸化物半導体のバンドギャップ(エネルギーEcとエネルギーEvとの差)は、シリコンのバンドギャップの3倍程度の大きさを有する。例えば、InGaZnOのバンドギャップは、3.5eV程度である。
【0079】
このため、メモリセルの電荷格納層CS内に電子(e-)が格納されていたとしても、酸化物半導体における伝導帯及び価電子帯との間におけるバンド間トンネルによる電子のリークは、無視できるほど小さい。
【0080】
それゆえ、カットオフトランジスタXGがオンされない限り、メモリセルMCの電荷格納層CS内の電子は、酸化物半導体層OS内に保持される。
【0081】
そのため、本実施形態の半導体メモリにおいて、メモリセルMCの電荷格納層CSが、他の部材から孤立したフローティングゲート電極でなくとも、メモリセルMCは、実質的に不揮発にデータを保持できる。
【0082】
図5A乃至図5Fを用いて、本実施形態の半導体メモリの書き込み動作について説明する。図5A乃至図5Fは、本実施形態の半導体メモリにおけるメモリセルストリング(メモリセル)に対する書き込み動作を説明するための模式図である。
【0083】
図5A乃至図5Fに示されるように、書き込み動作時において、メモリセルMCの電荷格納層CSに対する電荷の蓄積又は電荷の放出のための動作が実行される。
【0084】
本実施形態の半導体メモリにおいて、電荷の注入又は放出は、オン状態のカットオフトランジスタXGにおける酸化物半導体層61内に形成された蓄積層(チャネル)を経由して、注入線ILと電荷格納層CSとの間で行われる。
【0085】
本実施形態において、メモリセルMCの電荷格納層CSにおける電荷の供給/放出は、電荷格納層CSの層面(酸化物半導体膜63の膜面)に対して平行な方向から実行される。尚、本実施形態において、電荷格納層CSの層面は、X-Y平面(基板90の表面)に対して実質的に平行な面である。
【0086】
図5Aに示されるように、メモリセルストリングMS内のメモリセルMCに対するデータの書き込み時において、電圧値Vonの電圧が、メモリセルMCの制御ゲート電極(ワード線)80及びカットオフトランジスタXGのゲート電極(カットオフゲート線)81に、印加される。
例えば、注入線ILに、0Vが印加されている。
【0087】
本実施形態の半導体メモリにおいて、書き込み動作時において、メモリセルストリングMS内のセレクトトランジスタSG1,SG2は、オフ状態に設定される。例えば、ビット線BL及びソース線SLに、0Vが印加される。
【0088】
電圧値Vonは、カットオフトランジスタXGのオン電圧である。電圧値Vonは、酸化物半導体層61においてチャネル(蓄積層)が形成される電圧値を有する。ゲート電極80,81下方において、チャネルが、酸化物半導体層61内に形成される。
これによって、酸化物半導体層61内の全体に、電子が誘起される。
【0089】
このように、本実施形態の半導体メモリ1の書き込み動作の開始時において、酸化物半導体層61の電気的な初期化(初期化動作)が行われる。尚、この初期化動作は、メモリの消去動作として用いられてもよい。
【0090】
例えば、図5A乃至5Fに示される書き込み動作の例において、データの書き込みは、メモリセルストリングMS内の複数のメモリセルMC1,MC2,MC3,MC4のうち、酸化物半導体層61の注入線IL側とは反対側に位置するメモリセルMC1から実行される。
【0091】
図5Bに示されるように、データの書き込みを制御するための電圧(書き込み電圧とよぶ)が、メモリセルMC1の制御ゲート電極WL1に印加される。
【0092】
メモリセルMC1に対するデータの書き込み時において、オン電圧Vonが、他のメモリセルMC2,MC3,MC4及びカットオフゲートトランジスタXGのゲート電極に、印加される。これによって、メモリセルMC1の電荷格納層CSは、注入線ILに電気的に接続される。
【0093】
例えば、書き込み電圧は、書き込むべきデータに応じた電圧値を有する。
電荷格納層CSが空乏状態に設定される場合、電荷格納層CS内の電荷を排出するために、電圧値Voffの書き込み電圧が、メモリセルMC1の制御ゲート電極に、印加される。例えば、電圧値Voffは、0Vである。0Vの電圧が、メモリセルMC1の制御ゲート電極に印加された場合、電荷格納層CS内の電荷(電子)は、排除される。
これによって、メモリセルMC1の電荷格納層CSは、空乏状態999に設定される。
【0094】
図5Cに示されるように、メモリセルMC1に書き込み電圧が印加された状態で、メモリセルMC1に隣り合うカットオフトランジスタXG1のゲート電極XL1に、カットオフトランジスタXG1のオフ電圧(電圧値Voff)が、印加される。カットオフトランジスタXG1は、オフ状態に設定される。
【0095】
オフ状態のカットオフトランジスタXG1によって、メモリセルMC1の電荷格納層CSが空乏状態999に設定された状態で、メモリセルMC1は、他のメモリセルMC2~MC4及び注入線ILから電気的に分離される。
【0096】
この後、メモリセルMC1の制御ゲート電極WL1は、電気的にフローティングな状態に設定される。
【0097】
図5Dに示されるように、メモリセルMC2に対するデータの書き込みが実行される。
【0098】
メモリセルMC1に対するデータの書き込みと同様に、メモリセルMC2に書き込むべきデータに応じて、制御ゲート電極(ワード線)WL2に印加される書き込み電圧の電圧値が、制御される。
【0099】
メモリセルMC2の電荷格納層CS内に、電荷が蓄積される場合、電圧値Von(>Voff)の書き込み電圧が、メモリセルMC2の制御ゲート電極WL2に、印加される。メモリセルMC2は、電荷格納層CS内に、電子が誘起された状態を維持する。
【0100】
電圧値Vonの書き込み電圧がメモリセルMC2に印加された状態で、オフ電圧Voffが、カットオフトランジスタXG2のゲート電極XL2に、印加される。
【0101】
これによって、メモリセルMC2は、注入線IL及び他のメモリセルMC3,4から電気的に分離される。メモリセルMC2の電荷格納層CSは、蓄積状態995に設定される。
【0102】
図5Eに示されるように、メモリセルMC3に対するデータの書き込みが実行される。
【0103】
例えば、メモリセルMC3の電荷格納層CSが、空乏状態に設定される場合、電圧値Voffの書き込み電圧が、メモリセルMC3の制御ゲート電極WL3に、印加される。
【0104】
書き込み電圧が印加された状態で、オフ電圧Voffが、カットオフトランジスタXG3のゲート電極XL3に、印加される。
【0105】
これによって、メモリセルMC3の電荷格納層CSは、空乏状態999に設定される。
【0106】
図5Fに示されるように、メモリセルMC4に対するデータの書き込みが実行される。
【0107】
例えば、メモリセルMC4の電荷格納層CSが、蓄積状態に設定される場合、電圧値Vonの書き込み電圧が、メモリセルMC4の制御ゲート電極WL4に、印加される。
【0108】
書き込み電圧が印加された状態で、オフ電圧Voffが、カットオフトランジスタXG4のゲート電極XL4に、印加される。
【0109】
これによって、メモリセルMC4の電荷格納層CSは、蓄積状態995に設定される。
【0110】
注入線ILの電位は、1以上のメモリセルMCに対するデータの書き込みが完了したタイミングで、ある電位(例えば、0V)に設定される。
【0111】
図5A乃至図5Fのように、1つの酸化物半導体層61を共有する複数のメモリセルMCに対して、各メモリセルMCに、所定のデータを書き込むことができる。
【0112】
図6A乃至図6Fを用いて、本実施形態の半導体メモリにおける図5A乃至図5Fと異なるモードの書き込み動作を説明する。
【0113】
図6A乃至図6Fにおいて、本実施形態の半導体メモリは、書き込み動作時における酸化物半導体層61の初期状態が、空乏状態に設定されてから、各メモリセルMC1~MC4の電荷格納層CSが、空乏状態又は蓄積状態に設定される。
【0114】
図6Aに示されるように、メモリセルMCに対するデータの書き込み時において、電圧値(オフ電圧)Voffが、メモリセルMCの制御ゲート電極(ワード線)WL及びカットオフトランジスタXGのゲート電極(カットオフゲート線)XLに、印加される。例えば、注入線ILに、正電圧が、印加される。酸化物半導体層61内の電子が、注入線ILに排出される。これによって、酸化物半導体層61の全体が、空乏化する。
【0115】
酸化物半導体層61が空乏状態に設定されてから各メモリセルMCの電荷格納層が空乏状態/蓄積状態に設定される場合、注入線側のメモリセルMC4からメモリセルMC1へ向かって電荷を転送することによって、データの書き込みが実行される。
【0116】
図6Bに示されるように、オン電圧Vonが、カットオフトランジスタXG4のゲート電極XL4に、印加される。他のカットオフトランジスタXG1,XG2,XG3のゲート電極XL1,XL2,XL3に対して、オフ電圧Voffが、印加される。
【0117】
オン状態のトランジスタXG4を介して、メモリセルMC4の電荷格納層CSは、注入線ILに電気的に接続される。他のメモリセルMC1,MC2,MC3の電荷格納層CSは、オフ状態のカットオフトランジスタXG1,XG2,XG3によって、注入線ILから電気的に分離される。
【0118】
カットオフトランジスタXG4がオン状態に設定された状態で、書き込み電圧が、メモリセルMC4の制御ゲート電極WL4に、印加される。
【0119】
例えば、メモリセルMC4の電荷格納層CSが、蓄積状態に設定される場合、正の電圧(例えば、電圧値Von)が、制御ゲート電極WL4に印加される。
【0120】
これによって、メモリセルMC4のゲート電極WL4の下方に、電子が誘起される。
【0121】
図6Cに示されるように、メモリセルMC4の電荷格納層CS内に、電子が誘起された状態で、オフ電圧Voffが、ゲート電極XL4に印加される。これによって、カットオフトランジスタXG4が、オフ状態に設定される。メモリセルMC4の電荷格納層CSは、蓄積状態995に、設定される。
【0122】
図6Dに示されるように、メモリセルMC4の電荷格納層CSの電気的状態(蓄積状態又は空乏状態)が設定された後、メモリセルMC4に対して注入線IL側の反対側に位置するメモリセルMC3に対して、電荷格納層の電気的状態が、設定される。
【0123】
メモリセルMC4とメモリセルMC3との間のカットオフトランジスタXG3が、オン状態に設定される。この時において、注入線ILとメモリセルMC4との間のカットオフトランジスタXG4は、オフ状態に設定される。また、カットオフトランジスタXG1,XG2は、オフ状態に設定されている。
【0124】
ゲート電圧が、メモリセルMC3の制御ゲート電極WL3に印加される。
メモリセルMC3の電荷格納層CSが、蓄積状態に設定される場合、電圧値Vonが、制御ゲート電極WL3に印加される。
【0125】
メモリセルMC3の電荷格納層CSは、オン状態のトランジスタXG3を介して、メモリセルMC4の電荷格納層CSに電気的に接続される。
【0126】
図6Eに示されるように、メモリセルMC4のゲート電極WL4にオフ電圧Voffが、印加される。この後、メモリセルMC3の制御ゲート電極WL3に電圧値Vonが印加された状態で、オフ電圧Voffが、カットオフトランジスタXG3のゲート電極XL3に、印加される。
【0127】
このように、メモリセルMC4の電荷格納層CS内の電荷が、メモリセルMC3の電荷格納層CS内に、転送される。
メモリセルMC3の電荷格納層CSは、蓄積状態になる。メモリセルMC4の電荷格納層CSは、空乏状態になる。
【0128】
図6Fに示されるように、図6B及び図6Cに示される動作と同様の動作によって、メモリセルMC4が、蓄積状態に設定される。
【0129】
例えば、メモリセルMC2の電荷格納層CSが、蓄積状態に設定される場合、図6B及び図6Cに示される動作と同様の動作によって、カットオフトランジスタXG2がオン状態に設定された後、メモリセルMC2のゲート電極WL2に、電圧値Vonの電圧が印加される。これによって、電子が、メモリセルMC3の電荷格納層からメモリセルMC2の電荷格納層に転送される。
【0130】
図6A乃至図6Fと同様の動作によって、メモリセルMC1の電荷格納層の状態が、記憶すべきデータに応じて、蓄積状態又は空乏状態に設定される。
【0131】
各メモリセルMCの電荷格納層CSの電気的状態が設定された後、ワード線WLは、電気的にフローティングな状態に設定される。
【0132】
以上のように、酸化物半導体層61内における電荷転送によって、各メモリセルMCに対して、所定のデータを書き込むことができる。
【0133】
尚、トランジスタのオン/オフ(チャネル領域における蓄積状態/空乏状態の制御)は、トランジスタのソースとゲートとの電位差に基づくため、ワード線WLの電位の制御に加えて、注入線ILの電位を制御することによって、メモリセルMCに対するデータの書き込みを制御することができる。
例えば、本実施形態の半導体メモリにおいて、ワード線WLの電位がある電位に固定された状態で、注入線ILの電位が書き込むべきデータに応じて変化されることで、メモリセルMCに所定のデータを書きこむことができる。
【0134】
(2) 具体例
図7乃至図10を参照して、本実施形態の半導体メモリの具体例について、説明する。
【0135】
<回路構成>
図7は、本実施形態の半導体メモリの構成例を示すブロック図である。
図7に示されるように、本実施形態の半導体メモリ1は、ホストデバイス9に電気的に接続されている。ホストデバイス9は、例えば、メモリコントローラ又はプロセッサ(例えば、CPU)などである。
【0136】
半導体メモリ1は、ホストデバイス9からの要求又は命令によって、動作する。ホストデバイス9は、半導体メモリ1の外部に設けられている。尚、半導体メモリ1が、ホストデバイス9の内部に設けられていてもよい。
【0137】
ホストデバイス9は、半導体メモリ1を動作させる際に、コマンド、アドレス及び各種の制御信号を半導体メモリ1に送信する。
【0138】
ホストデバイス9は、半導体メモリ1の書き込み動作時において、書き込みコマンドと共に、書き込むべきデータ(記憶すべきデータ)を、半導体メモリ1に送信する。
ホストデバイス9は、半導体メモリ1の読み出し動作時において、読み出しコマンドに対するレスポンスとして、半導体メモリ1から読み出されたデータを、受信する。
【0139】
本実施形態の半導体メモリ1は、例えば、シーケンシャルアクセスメモリである。
【0140】
本実施形態の半導体メモリ1は、メモリセルアレイ10、ロウ制御回路12、カラム制御回路13、書き込み/読み出し回路14、入出力回路15、電圧生成回路16及びシーケンサ17を含む。
【0141】
メモリセルアレイ10は、複数のメモリセルストリングMSを含む。
メモリセルアレイ10は、複数のビット線BL、複数のソース線SL、複数のワード線WL及び複数のカットオフゲート線XLを含む。これらの配線に、メモリセルストリングMSが接続されている。
【0142】
デコーダ11は、ホストデバイス9から供給されたアドレスをデコードする。デコーダ11によって、メモリセルアレイ10のロウアドレス、及び、メモリセルアレイ10のカラムアドレスが、デコードされる。
【0143】
ロウ制御回路12は、デコーダ11によるアドレスのデコード結果に基づいて、メモリセルアレイ10のロウを制御する。ロウ制御回路12によって、メモリセルアレイ10内のX方向に関して、デコードされたロウアドレスに対応するメモリセルストリングMSが、選択される。ロウ制御回路12は、ワード線WLの電位、セレクトゲート線SGS,SGDの電位及びカットオフゲート線XLの電位を制御する。例えば、ロウ制御回路12は、ワード線ドライバ(ワード線選択回路)、カットオフゲート線ドライバなどを含む。
【0144】
カラム制御回路13は、デコーダ11によるアドレスのデコード結果に基づいて、メモリセルアレイ10のカラムを、制御する。カラム制御回路13によって、メモリセルアレイ10内のY方向に関して、デコードされたカラムアドレスに対応するメモリセルストリングMSが選択される。カラム制御回路13は、ビット線BLの電位を制御する。例えば、カラム制御回路13は、センスアンプ回路、及び、ビット線ドライバ(ビット線選択回路)などを含む。
【0145】
カラム制御回路13は、例えば、注入線ILの電位を制御するための回路(以下は、注入線制御回路とよぶ)130を含む。注入線制御回路130によって、複数の注入線ILの活性化/非活性化が制御される。注入線制御回路130は、書き込み動作時に、書き込むべきデータに応じた電圧を、注入線ILに供給できる。
【0146】
データ保持回路14は、メモリセルストリングMSに対するデータの書き込み時及び読み出し時において、ホストデバイス9からのデータ又はメモリセルアレイ10からのデータを一時的に保持する。データ保持回路14は、少なくとも1ページ分のデータを保持できる。ページとは、メモリセルアレイ10に対するデータのアクセス単位である。データ保持回路14のことを、ページバッファ回路ともよぶ。
【0147】
入出力回路15は、半導体メモリ1の内部インターフェイスとして、機能する。入出力回路15は、ホストデバイス9からのデータ、コマンド、制御信号及びアドレスを受ける。入出力回路15は、メモリセルアレイ10からのデータを、ホストデバイス9へ送る。
例えば、入出力回路15は、データ、コマンド、信号及びアドレスを一時的に保持可能なラッチ回路を含んでいる。
【0148】
電圧生成回路16は、書き込み動作及び読み出し動作に用いられる各種の電圧を生成する。電圧生成回路16は、生成した電圧を、ロウ制御回路12及びカラム制御回路13に、供給する。例えば、電圧生成回路16は、書き込み動作時に、書き込み電圧を生成する。電圧生成回路16は、読み出し動作時に、読み出し電圧を生成する。電圧生成回路16は、カットオフゲート線XLに印加される電圧、非選択ワード線WLに印加される電圧、及び、セレクトゲート線SGS,SGDに印加される電圧を生成する。
【0149】
シーケンサ17は、コマンド及び制御信号に基づいて、ホストデバイス9から要求/命令された動作を実行するように、半導体メモリ1内の各回路10~16の動作を制御する。
【0150】
尚、注入線ILを制御するための回路が、ロウ制御回路12及びカラム制御回路13とは別途に設けられてもよい。
【0151】
本実施形態の半導体メモリ1は、酸化物半導体を電荷格納層(メモリ膜)に用いたシーケンシャルアクセスメモリである。
【0152】
図8は、本実施形態のシーケンシャルアクセスのメモリセルアレイの等価回路図である。
図8において、図示の簡略化のため、メモリセルアレイ内のm個のメモリセルストリングのうち、3個のメモリセルストリングが、図示されている。mは、2以上の自然数である。
【0153】
図8に示されるように、メモリセルアレイ10内において、複数(ここでは、3個)のメモリセルストリングは、X方向に沿って、配列されている。
【0154】
複数のメモリセルストリングMSに共有されるように、1本のソース線SLが、メモリセルアレイ10内に設けられている。ソース線SLに、X方向に配列された複数(ここでは、3つ)のメモリセルストリングMSの一端が接続されている。
【0155】
メモリセルストリングMSの個数に対応するように、複数(ここでは、3本)のビット線BLが、メモリセルアレイ10内に設けられている。各ビット線BLに、対応するメモリセルストリングMSの他端が、接続されている。
【0156】
メモリセルストリングMS内のカットオフトランジスタXGの個数に対応するように、複数(ここでは、4本)のカットオフゲート線XLが、メモリセルアレイ10内に設けられている。各カットオフゲート線XLは、X方向に配列された複数のカットオフトランジスタXGのゲートに、共通に接続されている。
【0157】
メモリセルストリングMS内のメモリセルMCの個数に対応するように、複数(ここでは、4本)のワード線WLが、メモリセルアレイ10内に設けられている。各ワード線WLは、Y方向に配列された複数のメモリセルMCのゲートに、接続されている。
【0158】
上述のように、メモリセルMCの電荷格納層(酸化物半導体層)CSは、トランジスタXGの酸化物半導体層61のチャネル領域を経由して、注入線ILに接続されている。
【0159】
各メモリセルストリングMSに対して1つの注入線ILが、接続されている。例えば、注入線ILの電位は、例えば、カラム制御回路13によって、互いに独立に制御される。尚、注入線ILの電位の制御は、ロウ制御回路12によって実行されてもよい。
【0160】
<構造例>
図9及び図10を用いて、本実施形態の半導体メモリ(シーケンシャルアクセスメモリ)におけるメモリセルアレイの構造例について、説明する。
【0161】
図9は、本実施形態の半導体メモリのメモリセルアレイの構造例を示す上面図である。
【0162】
図10は、本実施形態の半導体メモリのメモリセルアレイの構造例を示す断面図である。図10は、メモリセルアレイのX方向に沿う断面構造を示している。
【0163】
尚、図9及び図10のメモリセルアレイのY方向に沿う断面構造は、図1に示される例と実質的に同じである。ここでは、メモリセルアレイのY方向に沿う断面構造について説明する場合には、図1を用いる。
【0164】
図9及び図10に示されるように、メモリセルストリングMSは、Y方向に延在する半導体領域AA内に設けられている。
【0165】
X方向に隣り合う半導体領域AAは、半導体基板90内の素子分離絶縁層99によって、電気的に分離されている。例えば、素子分離絶縁層99は、Y方向に延在する。
【0166】
セレクトゲート線SGD,SGSは、X方向に延在する。セレクトゲート線SGD,SGSは、絶縁層60を介して複数の半導体領域AAにまたがる。
【0167】
ワード線WLとしての導電層80は、X方向に延在する。ワード線WLは、X方向に配列された複数の酸化物半導体層61に、またがる。
【0168】
図10の例において、酸化物半導体層61の側面は、絶縁層62を介して、導電層80に覆われている。但し、酸化物半導体層の側面は、導電層80に覆われずに、素子分離絶縁層99に覆われていてもよい。
【0169】
カットオフゲート線XLとしての導電層は、ワード線WLと平行にX方向に延在する。カットオフゲート線XLは、X方向に配列された複数の酸化物半導体層61に、またがる。
【0170】
酸化物半導体層61とカットオフゲート線XLとしての導電層との構造に関して、カットオフゲート線XLは、ワード線WLと実質的に同じ構造を有する。
【0171】
注入線IL及びビット線BLは、Y方向に延在する。注入線ILとしての導電層85及びビット線BLとしての導電層83は、導電層80上の絶縁層(層間絶縁膜)95上に設けられている。導電層83,85は、同じ配線レベルに位置する。本実施形態において、配線レベルとは、半導体基板の表面を基準とした位置(高さ)を示している。
【0172】
例えば、ビット線BLは、半導体領域AAの上方に配置されている。注入線ILは、素子分離絶縁層99上方に配置されている。注入線ILは、酸化物半導体層61の上方から素子分離絶縁層99の上方へ引き出される部分を有している。尚、ビット線BLと注入線ILとのレイアウトの関係は、互いに反対でもよい。
【0173】
例えば、ソース線SLは、ビット線BLの配線レベルより下方の配線レベルに設けられている。例えば、ソース線SLは、X方向に延在する。
【0174】
<動作例>
ここで、本実施形態の半導体メモリ(例えば、シーケンシャルアクセスメモリ)の動作例について、説明する。
【0175】
以下では、動作の対象として選択されたメモリセルストリング及びメモリセルは、選択ストリング及び選択セルとそれぞれよばれる。これに対して、選択されないメモリセルストリング及びメモリセルは、非選択ストリング及び非選択セルとそれぞれよばれる。
【0176】
(a) 書き込み動作
本実施形態のシーケンシャルアクセスメモリの書き込み動作時において、ホストデバイス9は、書き込みコマンド、各種の制御信号、データの書き込み対象を示すアドレス、及び、メモリセルに書き込むべきデータ(以下では、書き込みデータとよぶ)が、シーケンシャルアクセスメモリ1に転送する。例えば、1ページ分のデータが、メモリ1に供給される。
【0177】
シーケンシャルアクセスメモリ1は、コマンド及び制御信号に基づいて、アドレスに示されるメモリセルストリング(メモリセル)に対して、データの書き込みを実行する。
【0178】
シーケンサ17は、コマンド及び制御信号に基づいて、シーケンシャルアクセスメモリ1内の各回路の動作を制御する。ロウ制御回路12及びカラム制御回路13は、デコーダ11におけるアドレスのデコード結果に基づいて、メモリセルアレイ10内の各配線の活性化及び非活性化を行う。1ページ分のデータが、入出力回路15からページバッファ回路14に供給される。
【0179】
カラム制御回路13の注入線制御回路130は、書き込みデータに基づいて、メモリセルアレイ10内の配線(例えば、注入線IL)に印加する電圧を、決定する。尚、ロウ制御回路12によって、注入線ILに印加される電圧が決定されてもよい。
【0180】
メモリセルアレイ10内の各配線に、書き込み動作のための各種の電圧が、印加される。
【0181】
例えば、書き込み動作時において、セレクトトランジスタSG1,SG2はオフ状態に設定され、ビット線BL及びソース線SLは、メモリセルストリングMSから電気的に分離されている。
【0182】
シーケンサ17は、選択されたページに属する複数のメモリセルに対して、図5A乃至図5Fに示される書き込み動作(又は図6A乃至図6Fに示される書き込み動作)を実行するように、本実施形態のシーケンシャルアクセスメモリ1内の各回路の動作を実行する。
【0183】
例えば、データの書き込みは、共通の選択ワード線に接続された複数のメモリセルMCに対して、同時に実行される。注入線ILの電位が、メモリセルストリングMS毎に制御されることによって、共通の選択ワード線に接続された複数のメモリセルMCに対して、所定のデータをメモリセルMC毎に書き込むことができる。
【0184】
尚、注入線ILの電位の制御によって、複数の選択セルのうち少なくとも1つのセルが、データの書き込み禁止状態に設定されてもよい。
【0185】
これによって、メモリセルMC内の電荷格納層CSの電気的状態(蓄積状態又は空乏状態)が制御される。
【0186】
以上のように、本実施形態のシーケンシャルアクセスメモリにおいて、選択セルに対する書き込み動作が完了する。
【0187】
例えば、シーケンサ17は、書き込み動作の完了を、ホストデバイス9に通知できる。
【0188】
(b) データ保持動作
本実施形態のシーケンシャルアクセスメモリにおいて、書き込み動作が完了した後、選択ストリングの動作は、データ保持動作となる。
【0189】
データ保持動作において、カットオフゲート線XLの電位は、0Vに設定される。カットオフトランジスタXGは、オフ状態に設定される。ワード線WLは、電気的にフローティング状態に設定される。
【0190】
これによって、メモリセルMC内の電荷格納層CS内の電子の発散(リーク)、又は、電荷格納層CSに対する電子の侵入が、防止される。
このように、本実施形態のシーケンシャルメモリにおいて、メモリセルMCのデータの保持状態が、継続される。
【0191】
(c) 読み出し動作
本実施形態のシーケンシャルアクセスメモリの読み出し動作時において、ホストデバイス9は、読み出しコマンド、各種の制御信号、及び、データの読み出し対象を示すアドレスを、シーケンシャルアクセスメモリ1に転送する。
【0192】
シーケンシャルアクセスメモリ1は、コマンド及び制御信号に基づいて、アドレスに示されるページに対して、データの読み出しを実行する。
【0193】
シーケンサ17は、コマンド及び制御信号に基づいて、シーケンシャルアクセスメモリ1内の各回路の動作を制御する。ロウ制御回路12及びカラム制御回路13は、アドレスのデコード結果に基づいて、メモリセルアレイ10内の各配線の活性化及び非活性化を行う。センスアンプ回路及びドライバ回路などが、活性化される。
【0194】
これによって、メモリセルアレイ10内の各配線に、読み出し動作のための各種の電圧が、印加される。
【0195】
例えば、データの読み出しは、選択ワード線に接続された複数のメモリセル(選択されたページに属する複数のメモリセル)に対して、共通に実行される。
【0196】
ロウ制御回路12は、セレクトゲート線SGS,SGDに、セレクトトランジスタSG1,SG2のオン電圧を印加する。これによって、セレクトトランジスタSG1,SG2がオンする。ロウ制御回路12は、カットオフゲート線XLにカットオフトランジスタのオフ電圧(例えば、0V)を印加する。非選択ワード線WLに、非選択電圧が印加される。
【0197】
カラム制御回路13は、複数のビット線BLを充電する。ビット線電圧が、各ビット線BLに印加される。また、カラム制御回路13の注入線制御回路130は、複数の注入線ILに、0Vを印加する。
【0198】
図3を用いて説明したように、読み出し電圧が、選択ワード線WLに、印加される。カラム制御回路13のセンスアンプ回路は、メモリセルMCのオン/オフに伴う各ビット線BLの電位の変動、又は、ビット線-ソース線間の電流の発生の有無を、センスする。
【0199】
センス結果に基づいて、選択ワード線WLに接続されたメモリセルMCのデータが、判別される。
【0200】
各メモリセルMCのデータが、ページバッファ回路14に出力される。ページバッファ回路14内の1ページ分のデータが、入出力回路15を介して、ホストデバイス9に転送される。
【0201】
以上のように、本実施形態のシーケンシャルアクセスメモリにおいて、選択セルに対する読み出し動作が完了する。
【0202】
(3) 変形例
酸化物半導体層の電荷格納層を有するメモリセルを含む半導体メモリにおいて、書き込み動作時におけるワード線WLの印加電圧、又は、注入線ILの電位を制御することによって、メモリセルMCは、2ビット以上のデータを記憶できる。
【0203】
メモリセルMCが2ビットのデータ(“00”、“01”、“10”及び“11”)を記憶する場合、電荷格納層CSの電荷量に応じた4つの状態(電荷格納状態)が、2ビットのデータに関連付けられる。
【0204】
ワード線WL(又は注入線IL)に印加される書き込み電圧に4つ電圧値が用いられることによって、メモリセルMC内に、2ビットのデータが、書き込まれる。メモリセルMCは、書き込み電圧の大きさに応じて、4つの状態のうちいずれか1つに設定できる。
【0205】
書き込み電圧の大きさに応じて、電荷格納層CS内に誘起される電子量が、変わる。書き込み電圧が0Vである場合において、電荷格納層CS内の電子量は、“11”データの記憶状態に対応する値(範囲)に設定される。
【0206】
書き込み電圧VWRの大きさが、電圧値V1である場合において、電荷格納層CS内の電子量は、“00”データの記憶状態に対応する値に設定される。
【0207】
書き込み電圧の電圧値が、“00”データを書き込むための電圧値V1より小さくされることによって、電荷格納層CS内に蓄積される電子量は、“11”データに対応する値より多く、且つ、“00”データより少ない値に、設定できる。
【0208】
例えば、書き込み電圧の大きさが、“00”データの書き込みのための電圧値V1の3分の1に設定されることによって、電荷格納層CS内の電子量は、“10”データの記憶状態に対応する値に設定される。
【0209】
また、書き込み電圧の大きさが、“00”データの書き込みのための電圧値V1の3分の2に設定されることによって、電荷格納層CS内の電子量は、“01”データの記憶状態に対応する値に設定される。
【0210】
このようなデータの書き込みに対して、読み出し動作時における読み出し電圧の印加に対して、メモリセルMCがオンするか否かに応じて、又は、読み出し電流の電流値の比較結果に基づいて、メモリセルMCのデータが、判別される。
【0211】
尚、ワード線WL(及び注入線)の電位制御によって、メモリセルMCは、3ビット以上のデータを記憶できる。例えば、メモリセルMCに3ビットのデータが書き込まれる場合、書き込み電圧に8つの電圧値が用いられる。
【0212】
このように、書き込み電圧の電圧値が細分化されることによって、メモリセルMCは、2ビット以上のデータを記憶できる。
【0213】
(4) まとめ
第1の実施形態の半導体メモリは、酸化物半導体層が電荷格納層に用いられたメモリセルを含むメモリ(例えば、シーケンシャルアクセスメモリ)である。
【0214】
例えば、シーケンシャルアクセスメモリとしてのNAND型フラッシュメモリは、書き込み動作時に、複数のページの集合であるブロック単位での消去動作が実行される。このため、フラッシュメモリは、ブロック内のデータを他のメモリに一度に退避させてから、ブロックに対する消去動作及び更新したデータの書き込みが実行される。そのため、フラッシュメモリは、書込み動作の速度が非常に遅い。
【0215】
また、フラッシュメモリは、トンネル効果を用いた電荷格納層に対する電子の注入及び電荷格納層からの電荷の放出によって、データの書き込み及び消去が実行されるため、比較的高い電圧が、ゲート電極とゲート絶縁膜との間に印加される。このため、フラッシュメモリは、電圧に起因するストレスによってメモリセルのゲート絶縁膜が徐々に劣化する。この結果として、フラッシュメモリは、メモリセルのデータリテンション特性が劣化し、データの損失が生じる可能性がある。
【0216】
本実施形態の半導体メモリは、1つのメモリセルストリング換算で、数ナノ秒から数十ナノ秒程度の時間で、酸化物半導体層内を充電できるため、NAND型フラッシュメモリに比べて高速に消去動作及び書き込み動作を実行できる。
【0217】
それゆえ、本実施形態の半導体メモリは、比較的早い速度で、データを書きこむことができる。
【0218】
本実施形態の半導体メモリは、書き込み動作時において、酸化物半導体層61内における電荷の蓄積及び空乏化が制御可能な電圧を、制御ゲート電極(ワード線)に印加する。
本実施形態の半導体メモリは、酸化物半導体層の層面に沿った電荷の移動によって、電荷格納層内に電荷が格納される。
【0219】
これによって、本実施形態の半導体メモリは、電子のトンネル現象を引き起こす高い電圧を用いること無しに、酸化物半導体層61内の電荷格納層CSに対する電子の格納/放出を、実行できる。
【0220】
それゆえ、本実施形態の半導体メモリは、書き込み動作/消去動作の回数に起因するメモリセルの劣化は、ほとんど生じない。この結果として、本実施形態の半導体メモリは、書き換え回数の制限を受けずに、使用することができる。したがって、本実施形態の半導体メモリは、データの信頼性を維持できる。
【0221】
また、本実施形態の半導体メモリは、バンドギャップの大きい酸化物半導体層内に電荷を蓄積することによって、データを記憶する。これによって、本実施形態の半導体メモリは、低い消費電力で、メモリセルからの電子のリークを抑制でき、メモリセルのデータリテンション特性を向上できる
以上のように、本実施形態の半導体メモリは、高い性能を有する半導体メモリを提供できる。
【0222】
[2]第2の実施形態
図11乃至図14Eを参照して、第2の実施形態の半導体メモリについて、説明する。
【0223】
図11は、本実施形態の半導体メモリの構造例を説明するための断面図である。
図11に示されるように、酸化物半導体層61の両端に、注入線ILA,ILBが設けられてもよい。2つの注入線ILA,ILBの電位は、互いに独立に制御される。
【0224】
注入線ILAとしての導電層86Aは、コンタクト89CAを介して、酸化物半導体層61の一端に接続されている。注入線ILBとしての導電層86Bは、コンタクト89CBを介して、酸化物半導体層61の他端に接続されている。
【0225】
2つのコンタクト89CA,89CB間に、メモリセルMC及びカットオフトランジスタXGが、交互に配列されている。
【0226】
本実施形態の半導体メモリのように、2つの注入線ILA,ILBが1つの酸化物半導体層61に接続されている場合、カットオフトランジスタXGの個数は、メモリセルMCの個数より1つ多い。
【0227】
図12は、図11のメモリセルストリングMSの等価回路図である。
図12に示されるように、第1の注入線ILAは、電荷格納層CSを介して直列接続された複数のカットオフトランジスタXGの一端に、接続されている。第2の注入線ILBは、電荷格納層CSを介して直列接続された複数のカットオフトランジスタXGの他端に、接続されている。
【0228】
Y方向に隣り合うメモリセルMCの電荷格納層CS間に、カットオフトランジスタXGの電流経路が接続されている。
注入線ILA,ILBとメモリセルMCの電荷格納層との電気的な接続は、カットオフトランジスタXGによって、制御される。
【0229】
図13A乃至図13Eを用いて、図11及び図12の半導体メモリ(例えば、シーケンシャルアクセスメモリ)の書き込み動作の一例を説明する。
図13A乃至図13Eの書き込み動作は、図5A乃至図5Fで説明された書き込み動作のように、図11及び図12の半導体メモリにおける酸化物半導体層61の初期状態が蓄積状態に設定された場合における動作例を示している。
【0230】
図13Aに示されるように、カットオフトランジスタXG及びメモリセルMCのゲート電極に、オン電圧Vonが印加される。例えば、注入線ILA,ILBに、正の電圧が印加されている。
【0231】
これによって、電子が酸化物半導体層61内に誘起され、酸化物半導体層61は、蓄積状態に設定される。
【0232】
図13Bに示されるように、複数のカットオフトランジスタXGのうち、中央のカットオフトランジスタXG1が、オフ状態に設定される。カットオフトランジスタXG1のゲート電極XL1の下方の部分において、酸化物半導体層61は、空乏化する。
【0233】
これによって、カットオフトランジスタXG1を挟む2つのメモリセルMC1,MC2において、メモリセルMC1の電荷格納層は、オフ状態のカットオフトランジスタXG1によって、メモリセルMC2の電荷格納層から電気的に分離される。
【0234】
図13Cに示されるように、例えば、カットオフトランジスタXG1に隣り合う2つのメモリセルMC1,MC2のうち、メモリセルMC1の電荷格納層が空乏状態999に設定され、メモリセルMC2の電荷格納層が蓄積状態995に設定される。
【0235】
この場合において、注入線ILA,ILBに正の電圧が印加された状態で、0Vの書き込み電圧が、メモリセルMC1のゲート電極WL1に印加され、電圧値Vonの書き込み電圧が、メモリセルMC2のゲート電極WL2に印加される。
これによって、メモリセルMC1の電荷格納層は、空乏化し、メモリセルMC2の電荷格納層は、蓄積状態を維持する。
【0236】
尚、他のカットオフトランジスタXG2,XG3,XG4,XG5は、オン状態に設定されている。また、メモリセルMC3,MC4の電荷格納層CSは、充電されている。
【0237】
図13Dに示されるように、メモリセルMC1に隣り合うカットオフトランジスタXG2は、オフ状態に設定される。また、メモリセルMC2に隣り合うカットオフトランジスタXG3は、オフ状態に設定される。
これによって、メモリセルMC1,MC2は、注入線IL1,IL2から電気的に分離される。
【0238】
図13Eに示されるように、メモリセルMC3,MC4に対するデータの書き込みが実行される。
【0239】
例えば、電圧値Vonの書き込み電圧が、メモリセルMC3のゲート電極WL3に、印加され、0Vの書き込み電圧が、メモリセルMC4のゲート電極WL4に、印加される。
【0240】
ゲート電極WL3,WL4に書き込み電圧が印加された状態で、カットオフトランジスタXG4及びカットオフトランジスタXG5が、オフ状態に設定される。
【0241】
これによって、メモリセルMC3,MC4は、注入線IL1,IL2から電気的に分離される。メモリセルMC3の電荷格納層CSは、蓄積状態995に設定され、メモリセルMC4の電荷格納層CSは、空乏状態に設定される。
【0242】
尚、各制御ゲート電極WL1,WL2,WL3,WL4の電位は、電気的にフローティングな状態に設定される。これによって、メモリセルMC1,MC2,MC3,MC4は、データ保持状態に設定される。
【0243】
図14A乃至図14Eを用いて、図13A乃至図13Eと異なる書き込み動作の一例を説明する。
図14A乃至図14Eの書き込み動作は、図6A乃至図6Fで説明された書き込み動作のように、図11及び図12のシーケンシャルアクセスメモリにおける酸化物半導体層61の初期状態が空乏状態に設定された場合における動作例を示している。
【0244】
図14Aに示されるように、カットオフトランジスタXG及びメモリセルMCのゲート電極に、オフ電圧が印加される。例えば、注入線ILA,ILBに、正の電圧が印加されている。
【0245】
これによって、電子が、酸化物半導体層61内から注入線ILA,ILBに排出される。酸化物半導体層61は、空乏状態に設定される。
【0246】
図14Bに示されるように、データの書き込みのための電荷転送を実行するために、注入線ILA,ILB側のカットオフトランジスタXG4,XG5のオン/オフが、制御される。
【0247】
メモリセルストリングMSのソース側(ソース線SL側)の注入線ILAに接続されたカットオフトランジスタXG4は、オフ状態に設定される。ゲート電極XL4の下方において、酸化物半導体層61が空乏化し、カットオフトランジスタXG4のチャネル領域は、空乏状態999になる。
【0248】
メモリセルストリングMSのドレイン側(ビット線BL側)の注入線ILBに接続され
たカットオフトランジスタXG5が、オン状態に設定される。ゲート電極XL5の下方に、チャネルが形成され、カットオフトランジスタXG5のチャネル領域は、蓄積状態995になる。
【0249】
図14Cに示されるように、オフ電圧Voffが、メモリセルMC3のゲート電極WL3に印加され、オン電圧Vonが、メモリセルMC4のゲート電極WL4に印加される。この後、カットオフトランジスタXG4,XG5がオフ状態に設定される。
【0250】
カットオフトランジスタXGとメモリセルMCとの間の電荷の転送によって、メモリセルMC3の電荷格納層CSは、空乏状態999に設定され、メモリセルMC4の電荷格納層CSは、蓄積状態995に設定される。
【0251】
尚、図14Cの時点において、メモリセルMC3,MC4の電荷格納層CSに対応するデータは、メモリセルMC1,MC2にそれぞれ書き込まれるデータである。
【0252】
図14Dに示されるように、カットオフトランジスタXG2,XG3,XG4,XG5において、ゲート電極XL2,XL3,XL4,XL5の電位が、制御される。
【0253】
例えば、カットオフトランジスタXG2のゲート電極XL2に、オフ電圧Voffが印加され、カットオフトランジスタXG3のゲート電極XL3に、オン電圧Vonが印加される。
【0254】
オフ状態のカットオフトランジスタXG2のチャネル領域は、空乏状態999に維持される。
オン状態のカットオフトランジスタXG3のチャネル領域は、メモリセルMC3の電荷格納層CSに電気的に接続される。トランジスタXG3がオンされた状態で、電圧値VoffがメモリセルMC4のゲート電極WL4に、印加される。これによって、電子が、メモリセルMC4の電荷格納層CSからカットオフトランジスタXG3のチャネル領域へ、転送される。
【0255】
また、カットオフトランジスタXG4のゲート電極XL4に、オン電圧Vonが印加される。これによって、カットオフトランジスタXG4のチャネル領域は、蓄積状態995に設定される。
【0256】
カットオフトランジスタXG5のゲート電極XL5に、オフ電圧Voffが印加される。これによって、カットオフトランジスタXG5のチャネル領域は、空乏状態を維持する。
【0257】
図14Eに示されるように、メモリセルMC1,MC2,MC3,MC4のゲート電極WL1,WL2,WL3,WL4の電位が、それぞれ制御される。
【0258】
ゲート電極WL1に対して、オフ電圧Voffが、印加される。これによって、メモリセルMC1の電荷格納層CSは、空乏状態999に設定される。
【0259】
ゲート電極WL2に対して、オン電圧Vonが、印加される。これによって、メモリセルMC2の電荷格納層CSは、カットオフトランジスタXG3の蓄積状態のチャネル領域に電気的に接続される。メモリセルMC2の電荷格納層CSは、蓄積状態995に設定される。
【0260】
ゲート電極WL3に対して、オン電圧Vonが、印加される。これによって、メモリセルMC3の電荷格納層CSは、カットオフトランジスタXG4の蓄積状態のチャネル領域に電気的に接続される。メモリセルMC3の電荷格納層CSは、蓄積状態995に設定される。
【0261】
ゲート電極WL4に対して、電圧値Voffが、印加される。これによって、メモリセルMC1の電荷格納層CSは、空乏状態に設定される。
【0262】
この後、オフ電圧Voffが、カットオフトランジスタのゲート電極XL1,XL2,XL3,XL4,XL5に印加される。
オフ状態のカットオフトランジスタXG1~XG5によって、各メモリセルMC1~MC4の電荷格納層CSは、メモリセルMC1~MC4毎に電気的に分離される。
【0263】
これによって、メモリセルMC1~MC4のそれぞれにおいて、電荷格納層の状態は、書き込むべきデータに応じた状態995,999に設定される。
【0264】
この後、各制御ゲート電極WL1,WL2,WL3の電位は、電気的にフローティングな状態に設定される。
これによって、メモリセルMC1,MC2,MC3,MC4は、データ保持状態に設定される。
【0265】
このように、本実施形態の半導体メモリは、メモリセルストリングMS内の酸化物半導体層61の両端に注入線が接続されることによって、酸化物半導体層61の一端側及び他端側からデータを書き込むことができる。また、本実施形態の半導体メモリは、酸化物半導体層61の一端側及び他端側から電荷の供給/放出によって、2つのメモリセルMCに対して同時にデータを書き込むことができる。
【0266】
この結果として、本実施形態の半導体メモリは、書き込み動作のための期間を削減でき、書き込み動作を高速化できる。
【0267】
以上のように、本実施形態の半導体メモリは、動作特性を向上できる。
【0268】
[3]第3の実施形態
図15乃至図18を参照して、第3の実施形態の半導体メモリについて、説明する。
【0269】
<基本例>
図15は、本実施形態の半導体メモリのメモリセルストリングの構造を示す断面図である。図16は、本実施形態の半導体メモリのメモリセルストリングの構造を示す上面図である。
図15に示されるように、メモリセルストリングMSは、基板表面に対してほぼ垂直方向に積層された複数のメモリセルMCを、含んでいてもよい。この場合において、メモリセルアレイは、3次元構造を有する。
【0270】
3次元構造のメモリセルアレイにおいて、メモリセルストリングMSは、酸化物半導体層を含むピラーPLR及び積層された複数の導電層(配線)80A,81Aから構成される。
【0271】
複数の導電層80A,81Aは、基板90の表面(X-Y平面)に対して垂直なZ方向に積層されている。Z方向に隣り合う導電層80A,81A間に、絶縁層98が設けられている。絶縁層98によって、各導電層80A,81Aは、電気的に分離されている。
【0272】
ワード線WLとしての導電層80Aとカットオフゲート線XLとしての導電層81Aが、Z方向において、交互に積層されている。
【0273】
セレクトゲート線SGDとしての導電層83Aは、導電層(ビット線BL)85A上の絶縁層96上に設けられている。
【0274】
最下層のワード線WLとセレクトゲート線SGDとの間に、絶縁層95,98,98Aが設けられている。
【0275】
ソース線SLとしての導電層84Aは、最上層のワード線WLの上方に設けられている。ビット線BLとしての導電層85Aは、基板90上の絶縁層91上に設けられている。注入線ILとしての導電層86Aは、最上層の絶縁層98と絶縁層92との間に設けられている。
【0276】
メモリセルMCは、ピラーPLRと導電層80Aとの交差位置に設けられている。
カットオフトランジスタXGは、ピラーPLRと導電層81Aとの交差位置に設けられている。
【0277】
セレクトトランジスタSG2Zは、ピラーPLRと導電層85Aとの交差位置に設けられている。
例えば、導電層80A,81Aは、X方向に延在する。導電層85A,86Aは、Y方向に延在する。
【0278】
ピラーPLRは、導電層80A,81A及び絶縁層91,95,96,98内に形成されたホール(貫通孔)内に、形成される。例えば、ピラーPLRは、円柱状の構造を有している。
この場合において、図16に示されるように、ピラーPLRは、Z方向を中心軸として同心円状に配置された複数の層(膜)を含む。この場合、導電層WL(及び導電層XG)とピラーPLRの中心部(軸部)70との間に、複数の層71,60A,61A,62Aが設けられている。
【0279】
層70は、円柱状の構造を有する。層70は、絶縁体からなる。例えば、層70は、酸化シリコン層である。
【0280】
層71は、層70の側面(X-Y平面に平行な方向の面)上に設けられている。層71は、層70と層60Aとの間に設けられている。層71は、円筒状の構造を有する。
【0281】
層71の材料は、半導体である。以下では、層71を、半導体層71とよぶ。
半導体層71の材料は、多結晶シリコン(Si)、多結晶ゲルマニウム(Ge)、多結晶シリコンゲルマニウム(SiGe)、及び、2次元半導体材料(例えば、MoS又はWSe)、酸化物半導体(例えば、InGaZnO、InZnO、ZnO等)などから選択される。尚、シリコンとゲルマニウムとの積層膜が、半導体層71に用いられてもよい。
【0282】
層60Aは、半導体層71の側面(外周面)上に設けられている。層60Aは、層71と層61Aとの間に設けられている。層60Aは、円筒状の構造を有する。
【0283】
層60Aは、絶縁体からなる。以下では、層60Aは、絶縁層ともよばれる。
例えば、絶縁層60Aの材料は、酸化シリコン、酸窒化シリコン、高誘電率材料(例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、又は、酸化ジルコニウム)などから選択される。絶縁層60Aは、これらの材料の混合物膜、又は、積層膜でもよい。
【0284】
絶縁層60Aの膜厚は、1nmから10nm程度の範囲に設定される。例えば、絶縁層60Aの膜厚は、3nmから7nmの範囲内の厚さであることが好ましい。
【0285】
層61Aは、層60Aの側面(外周面)上に設けられている。層61Aは、層60Aと層62Aとの間に設けられている。層61Aは、円筒状の構造を有する。
【0286】
層61Aは、酸化物半導体層である。酸化物半導体層61Aの材料は、In、Ga、Zn、Snなどの酸化物、又は、それらの混合物(化合物)である。例えば、酸化物半導体層61Aの材料は、InGnZnOなどである。尚、酸化物半導体層61Aに用いられる材料が、半導体層71に用いられてもよい。
【0287】
酸化物半導体層61Aの膜厚は、1nmから15nm程度の範囲に設定される。例えば、酸化物半導体層61Aの膜厚は、3nmから10nmの範囲内の厚さであることが好ましい。
【0288】
層62Aは、層61Aの側面(外周面)上に設けられている。層62Aは、酸化物半導体層61Aと導電層80A,81A及び絶縁層89との間に設けられている。層62Aは、円筒状の構造を有する。
【0289】
層62Aは、絶縁体からなる。以下では、層62Aのことを、絶縁層ともよぶ。
絶縁層62Aの材料は、絶縁層60Aの材料と同じでもよい。絶縁層62Aの膜厚は、絶縁層60Aの膜厚と同程度に設定される。但し、絶縁層62Aの材料は、絶縁層60Aの材料と異なる材料でもよい。また、絶縁層62Aの膜厚は、絶縁層60Aの膜厚と異なる材料でもよい。
【0290】
尚、層71,60A,61A,62Aの膜厚は、X-Y平面に対して平行な方向に関する厚さである。
【0291】
ピラーPLRの底部側において、半導体層71が、導電層85Aの上面上に設けられている。半導体層71が、絶縁層70の底部と導電層83の上面との間に挟まれている。
半導体層71は、ソース線コンタクト89Aを介して、ソース線SLに接続されている。
【0292】
酸化物半導体層61AのZ方向における底部は、絶縁層62Aを介して、絶縁層95の上面上に設けられている。酸化物半導体層61Zは、絶縁層95によってビット線BLから分離されている。
酸化物半導体層61AのZ方向における上部は、注入線ILに接触する。
【0293】
尚、ソース線SLが、注入線ILに電気的に接続されてもよい。
また、ソース線SLが、注入線ILとしての機能を有していてもよい。ソース線SLが、注入線ILとしての機能する場合、注入線ILは、形成されない。ソース線SLが、酸化物半導体層61Aに直接接触する。
【0294】
メモリセルMCZは、電荷格納層CSを含む電界効果トランジスタである。
酸化物半導体層61Aは、電荷格納層CSとして用いられる。
半導体層71は、メモリセルMCのチャネル領域として用いられる。絶縁層60Aは、トランジスタMCのゲート絶縁膜として用いられる。絶縁層62Aは、導電層(ゲート電極)81Aと酸化物半導体層(電荷格納層)61Aとを分離するためのブロック絶縁膜として用いられる。
【0295】
カットオフトランジスタXGZは、導電層81AとピラーPLRとの交差部分の近傍の部材から構成される。
【0296】
トランジスタXGZにおいて、酸化物半導体層61Aがチャネル領域として用いられている。トランジスタXGZにおいて、絶縁層62Aは、酸化物半導体層61Aに対するゲート絶縁膜として用いられる。
【0297】
例えば、複数のカットオフトランジスタXGZのうち最上層の配線レベルに設けられたカットオフトランジスタXGZは、ソース側のセレクトトランジスタとしても用いられてもよい。この場合において、ソース側のセレクトトランジスタが、削減される。尚、ソース側のセレクトトランジスタが、最上層のカットオフトランジスタXGZとソース線SLとの間に、設けられていてもよい。
【0298】
尚、トランジスタXGZにおいて、半導体層71は、トランジスタXGZの動作に応じ
て、寄生的なチャネル領域として機能する可能性がある。トランジスタXGZの寄生チャ
ネルを抑制する場合、トランジスタXGZのゲート電極81Aに、負電圧が印加される。
【0299】
セレクトトランジスタSG2Zは、ピラーPLRの底部側において、導電層85AとピラーPLRとの交差部分の近傍の部材から構成される。
【0300】
セレクトトランジスタSG2Zにおいて、ゲート電極(セレクトゲート線SGD)としての導電層83Aと半導体層71との間には、セレクトトランジスタSG2Zのゲート絶縁膜としての絶縁層60Aと絶縁層79が設けられている。但し、絶縁層60A及び絶縁層79のうちいずれか一方は、導電層85Aと半導体層71との間に設けられなくともよい。
【0301】
導電層83Aと半導体層71との間に、酸化物半導体層61Aは、設けられていない。
【0302】
酸化物半導体層61A及び絶縁層62Aは、絶縁層95の上面より下方のピラーPLRの部分内に設けられていない。
絶縁層95の開口部から導電層(ビット線)85Aの上面までの領域において、ピラーPLRの構成部材のうち、絶縁層70,60A及び半導体層71が、設けられている。
【0303】
絶縁層95の開口部の開口寸法D2は、積層体の上部における貫通孔の開口寸法D1より小さい。
【0304】
本実施形態の半導体メモリは、周知の技術を用いて、形成される。
尚、酸化物半導体層61Aを含まないセレクトトランジスタSG2は、以下のように、形成される。
【0305】
絶縁層95は、積層体内に形成されるべき貫通孔に開口寸法D1,D2の違いを生じさせるためのエッチングストッパに用いられる。
【0306】
積層体内に形成された貫通孔内に対する層60A,61A,62Aの形成の後、層70,71の形成の前に、層60A,61A,62Aに対する異方性エッチングが、実行される。開口寸法D1,D2の違いに起因する絶縁層98と絶縁層95との段差によって、層60A,61A,62Aが絶縁層89の下方の領域から選択的に除去される。
この結果として、セレクトトランジスタSG2Zにおいて、導電層83Aと半導体層71との間に、酸化物半導体層61A及び絶縁層62Aは、形成されない。
【0307】
本実施形態の半導体メモリ(例えば、シーケンシャルランダムアクセスメモリ)において、例えば、メモリセルMCZは、酸化物半導体層61A内に電荷が蓄積されていない状態(空乏状態)である場合に、ノーマリオン型トランジスタの特性を示すように、構成されている。このため、半導体層71は、例えば、n型多結晶シリコン層である。
【0308】
この場合において、カットオフトランジスタXGZ及びセレクトトランジスタSG2Dの位置において、n型半導体層71をチャネル領域とするノーマリオン型トランジスタが形成される。
【0309】
例えば、カットオフトランジスタXGZ及びセレクトトランジスタSG2Zにおけるn型半導体層71内のチャネルを消失させる(オフ状態に設定する)ために、負バイアス回路が、本実施形態の半導体メモリ1内に設けられる。
【0310】
カットオフトランジスタXGZ及びセレクトトランジスタSG2Zおけるn型半導体層71内のチャネルが、オフ状態に設定される場合において、ゲート電極81A,83Aに、負電圧が印加される。
【0311】
これによって、非選択ストリングにおけるビット線BLとソース線SLとの接続を、防止できる。
【0312】
尚、酸化物半導体層61A内に電荷が蓄積されている状態(蓄積状態)である場合に、メモリセルMCZは、ノーマリオフ型トランジスタの特性を示すように、構成される。
【0313】
<回路例>
図17を用いて、本実施形態の半導体メモリのメモリセルアレイの回路構成について説明する。
図17は、3次元構造のメモリセルアレイの回路構成を示す等価回路図である。図17において、図示の簡略化のために、メモリセルアレイ内のm×nのメモリセルストリングのうち、2×2のメモリセルストリングが示されている。
【0314】
図17に示されるように、X方向に配列された複数のメモリセルストリングMSは、共通のセレクトゲート線SGDに接続されている。Y方向に配列された複数のメモリセルストリングMSは、互いに異なるセレクトゲート線SGDに接続されている。
【0315】
X方向に配列された複数のメモリセルストリングMSにおいて、同じ配線レベル内のメモリセルMCは、共通のワード線WLに接続されている。
例えば、Y方向に配列されたメモリセルMCZは、互いに異なるワード線に接続されている。
【0316】
Y方向に配列された複数のメモリセルストリングMSは、共通のビット線BLに接続されている。X方向に配列された複数のメモリセルストリングMSは、互いに異なるビット線BLに接続されている。
【0317】
Y方向に配列された複数のメモリセルストリングMSは、共通のソース線SLに接続されている。X方向に配列された複数のメモリセルストリングMSは、互いに異なるソース
線SLに接続されている。
【0318】
Y方向に配列された複数のメモリセルストリングMSは、共通の注入線ILに接続されている。X方向に配列された複数のメモリセルストリングMSは、互いに異なる注入線ILに接続されている。
【0319】
X方向に配列された複数のメモリセルストリングMSに対して共通線ILが互いに独立していることで、ワード線WLを共有する複数のメモリセルMCZに対して、メモリセル毎に所定のデータを書き込むことができる。
【0320】
尚、3次元構造のメモリセルアレイ内のメモリセルMCZに対する書き込み動作及び読
み出し動作は、2次元構造のメモリセルアレイ内にメモリセルに対する動作と実質的に同
じ動作によって、実行される。
【0321】
<変形例>
図18を用いて、本実施形態の半導体メモリの変形例について、説明する。
【0322】
図18は、図15のメモリセルストリングの変形例を示す断面図である。
図18に示されるように、酸化物半導体層61Aは、セレクトトランジスタSG2Xのゲート電極83Aと半導体層71との間に設けられていてもよい。
【0323】
但し、酸化物半導体層61Aは、ビット線BLに接触しない。
【0324】
セレクトトランジスタSG2Xは、カットオフトランジスタXGZと実質的に同じ構造を有する。
【0325】
例えば、セレクトトランジスタSG2XとメモリセルMCZとの間に、カットオフトランジスタXGZが、設けられている。
【0326】
セレクトトランジスタSG2Xは、ノーマリオフ型のトランジスタであることが好ましい。
【0327】
それゆえ、図18のメモリセルストリングMSにおいて、セレクトトランジスタSG2XZに対向する酸化物半導体層61Aの部分が、常に電子が蓄積された状態となるように、セレクトトランジスタSG2Xの酸化物半導体層61Aに対する書き込み動作によって、セレクトトランジスタSG2Xの酸化物半導体層61A内が、蓄積状態に設定される。
【0328】
セレクトトランジスタSG2XとメモリセルMCZとの間のカットオフトランジスタXGZが、オフ状態に設定されることによって、セレクトトランジスタSG2Xの酸化物半導体層61Aは、蓄積状態を維持する。
【0329】
<まとめ>
第3の実施形態の半導体メモリは、3次元構造のメモリセルアレイを有する。
【0330】
本実施形態の半導体メモリは、上述の他の実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、本実施形態の半導体メモリは、メモリセルアレイの3次元構造化によって、メモリの記憶密度を向上できる。
【0331】
この結果として、本実施形態の半導体メモリは、ビットコストを低減できる。
【0332】
[4]第4の実施形態
図19を参照して、第4の実施形態の半導体メモリについて、説明する。
【0333】
図19は、本実施形態の半導体メモリのメモリセルストリングの構造を示す断面図である。
【0334】
カットオフトランジスタXGのゲート電極(カットオフゲート線)81aの材料は、メモリセルの制御ゲート電極(ワード線)80の材料と異なってもよい。
【0335】
図19において、カットオフトランジスタXGのゲート電極81aの材料は、p型半導体(例えば、p型ポリシリコン)である。
【0336】
メモリセルMCの制御ゲート電極80の材料は、n型半導体(例えば、n型ポリシリコン)である。尚、制御ゲート電極80の材料は、金属(例えば、タングステン)、又は、導電性化合物(例えば、シリサイド)でもよい。
【0337】
酸化物半導体層(例えば、n型酸化物半導体層)61とp型シリコン層81aとの間の仕事関数の差は、酸化物半導体層61とn型シリコン層との間の仕事関数の差より大きい。
【0338】
それゆえ、カットオフトランジスタXGのゲート電極81aがp型シリコンから形成されることによって、カットオフトランジスタXGのしきい値電圧(トランジスタXGのオン電圧)は、n型シリコンのゲート電極を有するカットオフトランジスタのしきい値電圧に比較して、上昇する。
【0339】
例えば、カットオフトランジスタXGがp型シリコンのゲート電極81aを有する場合、カットオフトランジスタXGのしきい値電圧は、1Vより大きくなる。
【0340】
これによって、本実施形態において、カットオフトランジスタXGのオフリークが低減される。
この結果として、本実施形態の半導体メモリにおいて、メモリセルMCのデータリテンション特性は、向上する。
【0341】
尚、第2及び第3の実施形態の半導体メモリにおいて、カットオフトランジスタXG,XGZのゲート電極に、p型半導体層が用いられてもよい。
【0342】
以上のように、第4の実施形態の半導体メモリは、メモリの信頼性を向上できる。
【0343】
[5]第5の実施形態
図20を参照して、第5の実施形態の半導体メモリについて、説明する。
【0344】
図20は、本実施形態の半導体メモリのメモリセルストリングの構造を示す断面図である。
【0345】
本実施形態において、図20に示されるように、カットオフトランジスタXGの酸化物半導体層61に対するゲート絶縁膜699は、第1の酸素密度を有する層(例えば、酸化物層)62と、第1の酸素密度と異なる第2の酸素密度を有する層(例えば、酸化物層)68とを含む。例えば、ゲート絶縁膜699は、酸化シリコン層62と高誘電率絶縁層68との積層構造を有する。
【0346】
カットオフトランジスタXGにおいて、高誘電率絶縁層(例えば、高誘電率酸化物層)68は、酸化シリコン層62とゲート電極81との間に設けられている。
【0347】
高誘電率絶縁層68に用いられる材料の酸素原子の数密度(酸素密度)が、酸化シリコンの酸素原子の数密度より高いことが、望ましい。
例えば、高誘電率絶縁層68の材料は、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、及び、酸化タンタルなどの中から選択される少なくとも1つの材料である。高誘電率絶縁層68の材料は、ハフニウム、アルミニウム及びタンタルなどのうち少なくとも2つの元素を含む酸化物(二元又は三元酸化物)でもよい。
【0348】
例えば、メモリセルMCのゲート電極80と酸化物半導体層61との間の絶縁層62は、酸化シリコン層の単層構造を有する。尚、メモリセルMCのゲート電極80と絶縁層62との間に、高誘電率絶縁層68が設けられてもよい。
【0349】
酸化シリコン層62と高誘電率絶縁層68との積層構造において、ダイポールが、酸化シリコン層62と高誘電率絶縁層68との界面(境界近傍の領域)に、形成される。例えば、界面における高誘電率体絶縁層68の側の部分が正に帯電し、界面における酸化シリコン層62の側の部分が負に帯電するように、高誘電率絶縁層68の材料が選択される。選択された高誘電率絶縁層68が、酸化シリコン層62上に配置される。
【0350】
これによって、本実施形態において、カットオフトランジスタXGのしきい値電圧(オン電圧)が、上昇する。
この結果として、本実施形態の半導体メモリにおいて、カットオフトランジスタXGのオフリークの低減によって、メモリセルMCのデータリテンション特性は、向上する。
【0351】
尚、第2及び第3の実施形態の半導体メモリにおいて、カットオフトランジスタXG,XGZにおける酸化物半導体層とゲート電極との間の絶縁層に、図20に相当する積層構造の絶縁層が設けられてもよい。
【0352】
以上のように、第5の実施形態の半導体メモリは、メモリの信頼性を向上できる。
【0353】
[6]第6の実施形態
図21乃至図23を参照して、第6の実施形態の半導体メモリについて、説明する。
【0354】
図21は、本実施形態の半導体メモリのメモリセルストリングの構造を示す断面図である。
【0355】
本実施形態の半導体メモリにおいて、カットオフトランジスタXGは、MONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Semiconductor)構造を有する。
【0356】
図21に示されるように、電荷トラップ層66が、ゲート電極80,81と酸化物半導体層61との間に設けられている。電荷トラップ層66は、例えば、窒化シリコン層である。
【0357】
絶縁層67が、電荷トラップ層66とゲート電極80,81との間に設けられている。絶縁層67は、酸化シリコン層である。電荷トラップ層66は、2つ絶縁層(例えば、2つの酸化シリコン層)62,67の間に設けられている。
【0358】
電荷トラップ層66は、酸化物半導体層61の延在方向に沿って、延在する。電荷トラップ層66は、酸化物半導体層61上方において、トランジスタXGとメモリセルMCとの間で連続している。電荷トラップ層66は、複数のトランジスタXG及びメモリセルMCで、共通化されている。
【0359】
例えば、本実施形態の半導体メモリの製造後のテスト工程、又は、半導体メモリの出荷時(又は半導体メモリの出荷後)において、カットオフトランジスタXGのゲート電極81に対向する位置における電荷トラップ層66に、電荷が注入される。
【0360】
所定の制御電圧が、電荷トラップ層66に対する電荷注入のために、ゲート電極81に印加される。
【0361】
制御電圧の印加によるトンネル効果によって、酸化物半導体層61内の電荷が、電荷トラップ層66内に注入される。
電荷トラップ層66は、注入された電荷を、トラップ準位内に保持する。
【0362】
これによって、カットオフトランジスタXGのしきい値電圧(オン電圧)は、上昇する。尚、半導体メモリの動作時におけるカットオフトランジスタXGのオン電圧は、電荷トラップ層66に対する電荷の注入するための制御電圧より低い。
電荷トラップ層66は、所定の電圧がカットオフトランジスタXGに印加されるまで、電荷の保持を継続できる。
【0363】
カットオフトランジスタXGに対する電荷トラップ層に対する電荷の注入時(所定の制御電圧の印加時)において、電荷トラップ層66に対する電荷の注入が生じる電圧は、メモリセルMCの制御ゲート電極80に、印加されない。それゆえ、カットオフトランジスタXGのしきい値電圧の制御(調整)時において、メモリセルMCの電荷トラップ層66に対する電荷の注入は生じない。それゆえ、電荷トラップ層66に対する電荷の注入に起因するメモリセルMCのしきい値電圧の上昇は、生じない。
【0364】
図22は、図21の変形例の半導体メモリの断面図である。
【0365】
図22に示されるように、各カットオフトランジスタXG及び各メモリセルMCが、互いに独立した電荷トラップ層66aを、有していてもよい。
【0366】
図23は、図21及び図22の変形例の半導体メモリの断面図である。
【0367】
図23に示されるように、電荷トラップ層66aは、カットオフトランジスタXGに対してのみ設けられてもよい。カットオフトランジスタXGのゲート電極81と酸化物半導体層61との間に、電荷トラップ層66aを含む積層膜62,66a,67が、設けられている。
【0368】
メモリセルMCにおいて、制御ゲート電極80は、絶縁層62に直接接触する。
【0369】
図22及び図23の構造によって、メモリセルMCにおいて、電荷トラップ層による電荷のトラップに起因した意図しないしきい値電圧の上昇は、抑制できる。
【0370】
尚、第2及び第3の実施形態の半導体メモリにおいて、カットオフトランジスタXG及びメモリセルMCが、図21乃至図23のうちいずれか1つに相当するゲート構造を有していてもよい。
【0371】
以上のように、第6の実施形態の半導体メモリは、メモリの信頼性を向上できる。
【0372】
[7]その他
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0373】
1:半導体メモリ、MC,MCZ:メモリセル、61,61A:酸化物半導体層、CS:電荷格納層、XG,XGZ:カットオフトランジスタ、71:半導体層。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7
図8
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図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
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図18
図19
図20
図21
図22
図23