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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】高所作業車の安全装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20220530BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
B66F9/24 F
B66F11/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018131490
(22)【出願日】2018-07-11
(65)【公開番号】P2020007128
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】山口 直人
(72)【発明者】
【氏名】加賀田 美里
(72)【発明者】
【氏名】山田 和也
(72)【発明者】
【氏名】田中 旭
(72)【発明者】
【氏名】須田 元昭
(72)【発明者】
【氏名】田野 稔
(72)【発明者】
【氏名】八重樫 耕
(72)【発明者】
【氏名】森 仁志
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-169037(JP,A)
【文献】特開2000-281295(JP,A)
【文献】実開平05-069090(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0224290(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後輪を有して走行可能な車体と、
前記車体上に設けられた昇降装置と、
前記昇降装置により昇降される作業装置と、を有する高所作業車において、
前記前後輪間の前記車体の下部に、前後に延びる軸線回りに揺動可能に連結され、内側に揺動されて前記車体の下面に沿って位置する格納位置および外側下方に向けて揺動されて下端が地面に近づく展開位置に揺動移動可能な転倒防止板を有する高所作業車の安全装置であって、
前記転倒防止板は、前記展開位置に位置した状態で前記車体に対して上方に所定量だけ移動可能に構成され、
前記転倒防止板が前記展開位置において上方に移動したことを検出する移動検出手段と、
前記移動検出手段により前記転倒防止板の上方への移動が検出されたときに、前記車体の走行を規制する走行規制手段と、を備えたことを特徴とする高所作業車の安全装置。
【請求項2】
前記転倒防止板は、
前記車体および前記転倒防止板の一方に設けられ、前記転倒防止板が前記展開位置に位置した状態で上下に長く延びて貫通する長孔と、
前記車体および前記転倒防止板の他方に設けられ、前記長孔に対し上下に相対移動可能に前記長孔内に挿通される軸部材とにより、前記車体に対して上方に所定量だけ移動可能に連結されることを特徴とする請求項1に記載の高所作業車の安全装置。
【請求項3】
前記走行規制手段は、前記移動検出手段により前記転倒防止板の上方への移動が所定時間以上継続して検出されたときに、前記車体の走行を規制することを特徴とする請求項1もしくは2に記載の高所作業車の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転倒防止板を備えた高所作業車の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業台を垂直昇降可能な高所作業車は、昇降装置を伸長させて作業台を高所に移動させた状態で走行可能に構成されており、例えば、体育館の天井に取り付けられた照明の保守作業や、倉庫に設けられた棚への資材の出し入れに用いられる。このような高所作業車は、昇降装置を上昇させた状態で、窪みや段差等の周囲よりも低くなった部分(以下「凹部」と称する)に車輪が進入すると、車体が大きく傾いて安定性が悪化する虞がある。そのため、昇降装置を伸長させているときに、車体下部の前後輪の間に板状の転倒防止板を配置し、車輪が凹部内に進入したとしてもこの転倒防止板が地面(床面)と当接して車体を支持することにより、車体が大きく傾かないようにする転倒防止装置(「ポットホールプロテクタ」とも呼ばれる)を備えた高所作業車が知られている。このような転倒防止装置は、例えば、昇降装置の昇降作動に応じて転倒防止板を展開・格納するように構成される(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
昇降装置を伸長させた状態で車体が大きく傾いたまま走行を続けることを防止するため、車体が一定以上傾くと走行を停止させるなどの走行規制を実行する安全装置を備えた高所作業車も知られている。このような安全装置は、例えば、車体に取り付けた傾斜角検出器により車体の傾斜角を検出するとともに、この傾斜角が予め定めた基準角を上回ったときに走行規制を行うように構成される(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2005/0224290号明細書
【文献】特開2000-281295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような転倒防止装置と安全装置を共に備えた高所作業車も知られている。両装置を装備することによって、例えば、車輪が凹部内に進入して車体が傾いたときに、転倒防止板が地面と当接して車体の転倒を防止するとともに、安全装置が車体の走行を規制することにより転倒防止板が地面と当接したまま車体が走行を続けることを防止する効果が期待される。しかし、車輪が凹部内に進入して車体が傾き転倒防止板が地面と当接する状況に至っても、そのときの車体の傾斜角が小さく、安全装置による走行規制が行われる際の基準角を上回らないため、速やかに走行規制が行われないこともある。その場合、転倒防止板が地面と当接したまま車体が走行して車輪が凹部内に更に進入してしまい、車体の傾きが大きくなり、転倒する虞がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、転倒防止板が地面と当接した際に車体の走行規制を速やかに行うことが可能な高所作業車の安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る高所作業車の安全装置は、前後輪を有して走行可能な車体と、前記車体上に設けられた昇降装置と、前記昇降装置により昇降される作業装置(例えば、実施形態における作業台5)と、を有する高所作業車において、前記前後輪間の前記車体の下部に、
前後に延びる軸線回りに揺動可能に連結され、内側に揺動されて前記車体の下面に沿って位置する格納位置および外側下方に向けて揺動されて下端が地面に近づく展開位置に揺動移動可能な転倒防止板を有する高所作業車の安全装置であって、前記転倒防止板は、前記展開位置に位置した状態で前記車体に対して上方に所定量だけ移動可能に構成され、前記転倒防止板が前記展開位置において上方に移動したことを検出する移動検出手段(例えば、実施形態におけるリミットスイッチ150A)と、前記移動検出手段により前記転倒防止板の上方への移動が検出されたときに、前記車体の走行を規制する走行規制手段(例えば、実施形態における走行規制制装置210)と、を備えて構成される。
【0008】
本発明に係る高所作業車の安全装置において、前記転倒防止板は、前記車体および前記転倒防止板の一方に設けられ、前記転倒防止板が前記展開位置に位置した状態で上下に長く延びて貫通する長孔(例えば、実施形態における枢結孔2e)と、前記車体および前記転倒防止板の他方に設けられ、前記長孔に対し上下に相対移動可能に前記長孔内に挿通される軸部材(例えば、実施形態における枢結ピン116)とにより、前記車体に対して上方に所定量だけ移動可能に連結されることが好ましい。
【0009】
本発明に係る高所作業車の安全装置において、前記走行規制手段は、前記移動検出手段により前記転倒防止板の上方への移動が所定時間以上継続して検出されたときに、前記車体の走行を規制する構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る高所作業車の安全装置によれば、転倒防止板が、展開位置に位置した状態で車体に対して上方に移動可能に構成されるので、転倒防止板が展開位置に位置した状態で車輪が凹部内に進入するなどして転倒防止板が地面に当接すると、転倒防止板が上方に移動し、この移動を検出する移動検出手段を備えるので、転倒防止板が上方に移動したことを検出することによって転倒防止板が地面と当接したことを判別することができる。さらに、移動検出手段により転倒防止板の上方への移動が検出されたときに車体の走行を規制する走行規制手段を備えるので、凹部内に車輪が進入したことにより転倒防止板が地面と当接した際に、車体の傾斜角によらず車体の走行規制を速やかに行うことが可能となる。
【0011】
本発明に係る高所作業車の安全装置において、転倒防止板が、車体および転倒防止板の一方に設けられた長孔と、車体および転倒防止板の他方に設けられた軸部材とにより、車体に対して上方に所定量だけ移動可能に連結される構成とすることで、転倒防止板を上方に移動可能とするための機構を簡易に構成することが可能となる。また、構成簡易化により製造コストを抑制することが可能となる。
【0012】
本発明に係る高所作業車の安全装置において、走行規制手段が、移動検出手段により転倒防止板の上方への移動が所定時間以上継続して検出されたときに、車体の走行を規制するように構成されることで、転倒防止板が瞬間的に上方に移動してすぐに元に戻ったような場合、例えば、車輪が凹部内に進入したが直後に凹部内から脱出したような場合には、車体の走行規制を行わないようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る高所作業車の安全装置を備えた高所作業車の側面図であって、作業台を格納した状態を示す図である。
図2】上記高所作業車の側面図であって、作業台を上方に移動させた状態を示す図である。
図3】上記高所作業車の車体を示す斜視図である。
図4】上記高所作業車に装備される転倒防止装置の構成を、車両前方側から見た状態で示す斜視図である。
図5】上記転倒防止装置の構成を、車両後方側から見た状態で示す斜視図である。
図6】上記転倒防止装置の構成を示す側面図である。
図7】上記転倒防止装置を図6のA-A線の位置で切断して示す断面図であって、転倒防止板を格納位置に揺動移動させた状態を示す図である。
図8】上記転倒防止装置を図6のA-A線の位置で切断して示す断面図であって、転倒防止板を展開位置に揺動移動させた状態を示す図である。
図9】上記車体の下部の構成を示す斜視図である。
図10図9の要部を拡大して示す斜視図であって、転倒防止板を車体から取り外した状態を示す図である。
図11】上記高所作業車に装備される走行規制装置と関連機器との関係を示すブロック図である。
図12】上記走行規制装置により実行される走行規制処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について上記図面を参照して説明する。図1図3は、本発明に係る高所作業車の安全装置(後述の転倒防止装置100及び走行規制装置210を有して構成される)を備えた高所作業車1を示しており、まず、これらの図を参照して高所作業車1の全体構成について概要説明する。なお、以降の説明において、図1における矢印Fの方向を前方とする。高所作業車1は、車体2の前後の左右両側部に前後輪3a,3bを有し、前輪3aを左右方向に操舵し、また、図示しない走行用モータにより後輪3bを駆動して走行可能に構成されている。この車体2上には、伸縮マスト式の昇降装置4が取り付けられており、さらにこの昇降装置4上には、作業者搭乗用の作業台5が取り付けられている。
【0015】
昇降装置4は、複数のマスト部材6a~6eを伸縮自在に入れ子式に組み合わせて構成された伸縮マスト6と、伸縮マスト6内に配置された伸縮機構(図示略)とを有して構成される。伸縮マスト6は、1段目のマスト部材6aの下端部が車体2に固定され、5段目のマスト部材6eに作業台5が固定されている。また、マスト部材6eおよび作業台5の床面には、平面視で略U 字形の形状をなした手摺7が、作業台5に搭乗した作業者を囲
むように取り付けられている。
【0016】
作業台5には、操作装置8が設けられており、この作業台5に搭乗した作業者が操作装置8を操作することにより、昇降装置4の伸縮機構を作動させて伸縮マスト6を伸縮させることにより、作業台5を任意の高所に垂直昇降させて高所作業を行うことができる。また、操作装置8を操作することにより、後輪3bを駆動させるとともに前輪3aを操舵することができ、作業台5を高所に移動させた状態でもこの高所作業車1を走行させることができる。車体2の内部には、制御基板等を収納したコントロールボックス9(図1を参照)が設置されている。
【0017】
車体2の左右両側部には、前後輪3a,3bの間であって、車体2と地面との間に転倒防止装置100の一部を構成する転倒防止板110が展開・格納可能に配置されている。以下、図4図10を追加参照して、この転倒防止装置100について説明する。転倒防止装置100は、図4に示すように、左右一対の転倒防止板110と、左右一対の駆動アーム120と、連結リンク部材130と、格納作動部140と、リミットスイッチ150A,150Bとを有して構成される。
【0018】
転倒防止板110は、車両前後方向に延びる細長い板状の部材で構成されている。この転倒防止板110は、その前端部に、1枚の板状部材で構成される枢結部111を有する
とともに、その後端部に、前後一対の板状部材112a,112b(図9を参照)で構成される枢結部112を有している。枢結部111は、車体2の前部に形成された板取付部2a(図7を参照)に揺動自在に取り付けられている。具体的には、枢結部111は、車両前後方向に貫通する枢結孔113(図5を参照)を有しており、板取付部2aには、この枢結孔113と対向する枢結孔(図示略)が形成されている。枢結部111は、枢結孔113と板取付部2aの枢結孔とに挿通される円柱状の枢結ピン115(図4を参照)を介して、板取付部2aに揺動自在に取り付けられる。
【0019】
枢結部112は、車体2の左右両側部の下部に形成された板取付部2bに揺動自在に取り付けられている。具体的には、枢結部112(板状部材112a,112b)は、前後に貫通する枢結孔114(図5を参照)を有しており、板取付部2bには、この枢結孔114と対向する枢結孔2e(図10を参照)が形成されている。枢結部112は、一対の板状部材112a,112bが板取付部2bを挟むように配置され、枢結孔114と枢結孔2eとに挿通される円柱状の枢結ピン116(図9を参照)を介して、板取付部2bに揺動自在に取り付けられる。枢結部112の枢結孔114は、枢結ピン116の外径と略同径の内径を有する丸孔として形成されているのに対し、板取付部2bの枢結孔2eは、図10に示すように、上下方向に長く延びた長孔として形成されている。そのため、枢結ピン116は、枢結孔2eの上下方向の長さと枢結ピン116の外径寸法との差に相当する距離(以下「所定量」と称する)の範囲内において、枢結孔2eおよび板取付部2b(車体2)に対し上下方向に相対移動可能となっている。
【0020】
転倒防止板110は、図3に示すように、前後輪3a,3bの間に位置するように配置されており、また、枢結ピン115,116の中心線を車両前後方向に延びる揺動軸線として、短手方向が地面に略垂直下方に延びる展開位置(図8を参照)と、短手方向が地面と略平行な略水平に延びる格納位置(図7を参照)とに揺動される。転倒防止板110は、展開位置にあるときに、転倒防止板110の最下端面と地面との間隔が所定の範囲内になるように配置される。また、転倒防止板110は、展開位置に位置した状態で、枢結部112が設けられた部分が、上述の所定量だけ上方に移動可能となっている。
【0021】
左右一対の駆動アーム120は、正面視においてハの字状に配置される。駆動アーム120は、屈曲した板状に形成されており、その長手方向略中央部より内側の位置に枢結ピン121が設けられている。駆動アーム120は、車体2(板取付部2a)に固定された駆動アーム取付部2cに形成された枢結孔(図示略)内に枢結ピン121が挿通されることで、駆動アーム取付部2cに対し揺動可能に取り付けられている。これにより、左右一対の駆動アーム120は、それぞれの内側下端部同士が左右方向に離れる開脚位置(図7を参照)と、それぞれの内側下端部同士が左右方向に接近する閉脚位置(図8を参照)との間を、揺動移動可能に構成されている。また、駆動アーム120と駆動アーム取付部2cとの枢結部には、駆動アーム120を開脚位置に揺動移動するように付勢するねじりコイルばね123(図6を参照)が取り付けられている。
【0022】
連結リンク部材130は、細長い板状に形成されており、その両端部に枢結孔131,132(図4,5を参照)を有している。この連結リンク部材130は、枢結孔131に挿通される枢結ピン133(図5を参照)を介して、駆動アーム120の内側下端部に揺動可能に取り付けられるとともに、枢結孔132に挿通される枢結ピン134(図4を参照)を介して、転倒防止板110の枢結部111に揺動可能に取り付けられている。
【0023】
格納作動部140は、図7に示すように、車体2の管取付部2dに固定された円筒状の保持管141と、保持管141の上端側に挿入されて保持管141内を上下方向に移動可能な円筒状の上側移動部材142と、保持管141の下端側に挿入されて保持管141内を上下方向に移動可能な円筒状の下側移動部材143と、下側移動部材143の下端に固
定された押圧板144と、上側移動部材142と下側移動部材143との間または上側移動部材142と押圧板144との間に配されたコイルばね(図示略)とを有して構成される。
【0024】
リミットスイッチ150Aは、図10に示すように、封入ケース151と、封入ケース151に対し直動可能に取り付けられたローラ付きヘッド152と、封入ケース151内に収納されてローラ付きヘッド152の動きに応じて接点を開閉するマイクロスイッチ(図示略)とを有して構成される。このリミットスイッチ150Aは、展開位置に位置した転倒防止板110の上方への移動を検出する板移動検出器として、板取付部2bに取り付けられている。すなわち、リミットスイッチ150Aは、転倒防止板110の枢結部112における枢結ピン116が、板取付部2bの枢結孔2eの上端側に移動したときはローラ付きヘッド152が枢結部112(板状部材112b)と当接し、枢結ピン116が枢結孔114の下端側に移動したときはローラ付きヘッド152が枢結部112から離れるようになっている。また、ローラ付きヘッド152が枢結部112と当接した状態のときはマイクロスイッチから検出信号が出力され、ローラ付きヘッド152が枢結部112から離れた状態のときはマイクロスイッチから検出信号が出力されないようになっている。
【0025】
リミットスイッチ150Bは、リミットスイッチ150Aと同様の構成を有しており、転倒防止板110が展開位置に位置するか否かを検出する板展開格納検出器として、駆動アーム120に取り付けられている(図7,8を参照)。すなわち、リミットスイッチ150Bは、転倒防止板110が展開位置に移動したときは、ローラ付きヘッド152が駆動アーム120の枢結ピン121の側面と当接し(図8を参照)、転倒防止板110が格納位置に移動したときは、ローラ付きヘッド152が駆動アーム120の枢結ピン121の側面から離れるようになっている(図7を参照)。また、ローラ付きヘッド152が枢結ピン121の側面と当接した状態のときはマイクロスイッチから検出信号が出力され、ローラ付きヘッド152が枢結ピン121の側面から離れた状態のときはマイクロスイッチから検出信号が出力されないようになっている。
【0026】
次に、転倒防止装置100における転倒防止板110の格納展開動作について説明する。まず、伸縮マスト6が縮退して作業台5が車体2に最も接近した格納状態(図1を参照)では、作業台5の下面が格納作動部140の上側移動部材142の上端に当接して、上側移動部材142を下方に押し下げる(図7を参照)。上側移動部材142が下方に押し下げられると、コイルばね(不図示)を介して、下側移動部材143および押圧板144が押し下げられる。押し下げられた押圧板144は、駆動アーム120の内側上端部124に上方から当接し、内側上端部124を下方に押圧する。
【0027】
押圧板144により内側上端部124が下方に押圧された駆動アーム120は、ねじりコイルばね123の付勢力に抗して枢結ピン121の中心線回りに揺動し、開脚位置に移動する。この駆動アーム120の開脚位置への揺動移動に連動して、連結リンク部材130により駆動アーム120に連結されている枢結部111が転倒防止板110と共に枢結ピン115の中心線回りに揺動する。その結果、転倒防止板110は、その短手方向が地面に対し略水平に延びる格納位置に揺動移動する。この格納位置において転倒防止板110は、車体2の下面に沿うように格納されるため、車体2の下面と地面との間のクリアランスを確保することができ、高所作業車1の通常の走行を妨げることがない。
【0028】
次に、作業台5に設けられた操作装置8が操作されて昇降装置4の伸縮機構が伸長作動を始めると、伸縮マスト6が伸長して作業台5が上方へ移動する(図2を参照)。この作業台5の上方への移動によって、格納作動部140の上側移動部材142が作業台5により下向きに押圧されていた状態が解消される。これにより、上側移動部材142、コイルばね(不図示)、下側移動部材143および押圧板144を介して駆動アーム120の内
側上端部124に作用していた下向きの押圧力が無くなり、それに伴い、駆動アーム120がねじりコイルばね123の付勢力により枢結ピン121の中心線回りに揺動し、閉脚位置に移動する。
【0029】
この駆動アーム120の閉脚位置への揺動移動に連動して、連結リンク部材130により駆動アーム120に連結されている枢結部111が転倒防止板110と共に枢結ピン115の中心線回りに揺動する。その結果、転倒防止板110は、その短手方向が地面に対し略垂直下方に延びる展開位置に揺動移動する。このように、昇降装置4の伸縮機構を伸長作動させて伸縮マスト6を伸長させると、自動的に転倒防止板110が展開位置に展開される。そのため、転倒防止板110が展開位置に位置した状態で高所作業車1が走行し、車輪3a,3bのいずれかが凹部内に進入して車体2が傾き始めると、転倒防止板110が地面と当接して車体2を支持するので、車体2がそれ以上に大きく傾くことを防止することができる。
【0030】
また、展開位置に位置した転倒防止板110が地面と当接すると、転倒防止版110(枢結部112が設けられた部分)が所定量だけ上方に移動する。転倒防止版110が上方へ移動すると、そのことがリミットスイッチ150Aにより検出され、それに基づき、車体2の走行を禁止する走行規制が実行される。この走行規制は、図11に示す走行規制装置210によって行われる。以下、図11を追加参照して、この走行規制装置210について説明する。
【0031】
図11に示す走行規制装置210は、コントロールボックス9(図1を参照)内に設置された制御基板上に実装されたCPU(中央演算装置)や制御回路等により構成される。この走行規制装置210は、リミットスイッチ150Aからの検出信号に基づき、転倒防止板110が上方に移動しているか否かを判定するとともに、リミットスイッチ150Bからの検出信号に基づき、転倒防止板110が格納位置にあるか否かを判定するように構成されている。また、傾斜角センサ220からの検出信号に基づき、車体2の傾斜状態を判定するように構成されている。なお、傾斜角センサ220は、車体2の傾斜角に応じた検出信号を出力するように構成されており、例えば、コントロールボックス9内の制御基板上に配置される。
【0032】
また、走行規制装置210は、高所作業車1が伸縮マスト6を伸長させ作業台5を高所に移動させた状態で走行しているときに、車体2が一定以上傾いていると判定した場合や、展開位置に位置する転倒防止板110が上方へ移動したと判定した場合に、車体2の走行を禁止して車体2を停止させる走行規制を実行するように構成されている。この走行規制は、例えば、走行用モータへの電源供給を停止したり、走行用モータへの指令信号を停止したりすることにより行われる。さらに、走行規制装置210は、走行規制を実行するときに、走行規制を実行していることやその原因等を示す文字や記号等を表示器230に表示させたり、警告音を警告音発生器240から出力させたりするように構成されている。なお、表示器230および警告音発生器240は、例えば、操作装置8(図1図2を参照)に設けられる。
【0033】
図12は、走行規制装置210により実行される走行規制処理の一例を示している。以下、図12を追加参照して、その走行規制処理の内容について説明する。この走行規制処理では、作業台5を高所に移動させた状態での車体2の走行を許可している状態(ステップS1)において、展開位置に位置する転倒防止板110が上方に移動したか否かを判定する(ステップS2)。この判定は、リミットスイッチ150Aから検出信号が出力されているか否かに基づき行われる。ここで、転倒防止板110が上方に移動していないと判定した場合は、走行を許可する状態を維持する。
【0034】
一方、転倒防止板110が上方に移動したと判定した場合は、リミットスイッチ150Aによる検出時間が所定時間(例えば、0.3秒)以上であるか否かを判定する(ステップS3)。この判定は、リミットスイッチ150Aからの検出信号が所定時間以上継続して出力されたか否かに基づき行われる。ここで、検出時間が所定時間以上でないと判定した場合は、走行を許可する状態を維持し、検出時間が所定時間以上であると判定した場合は、車体2の傾斜角が所定角θ1以上であるか否かを判定する(ステップS4)。この判定は、傾斜角センサ220からの検出信号に基づき行われる。ここで、車体2の傾斜角が所定角θ1に達していないと判定した場合は、走行を許可する状態を維持し、車体2の傾斜角が所定角θ1以上であると判定した場合は、走行規制を実行する(ステップS5)。なお、所定角θ1は、車体2の傾斜角がその所定角θ1に達していないときは、作業台5を高所に移動させた状態で車体2が走行しても走行に支障が生じない角度(例えば、0~1.5度の範囲内の任意の角度)に設定される。
【0035】
走行規制の実行開始後は、転倒防止板110が格納されたか否かを判定する(ステップS6)。この判定は、リミットスイッチ150Bから検出信号が出力されているか否かに基づき行われる。ここで、転倒防止板110が格納されていないと判定した場合は、走行規制を継続して実行し、転倒防止板110が格納されたと判定した場合は、走行規制を解除する(ステップS7)。なお、転倒防止板110は、伸縮マスト6を縮退させて格納し作業台5を低所に移動させたときに格納されるので、転倒防止板110が格納されている状態のとき作業台5は低所に移動していることになる。
【0036】
この走行規制処理では、転倒防止板110が上方に移動した状態となり、同時に、車体2の傾斜角が所定角θ1に達した状態となっている場合は、走行規制が実行されて車体2が停止される。このため、車輪3a,3bのいずれかが凹部内に進入して車体2が傾き始め、転倒防止板110が地面と当接したような場合には車体2が停止される。したがって、転倒防止板110が地面と当接したまま車体2が走行して車輪が凹部内に更に進入してしまい、車体2の傾きが大きくなることを防止することができる。ただし、転倒防止板110が上方に移動した状態となっても、そのときに、車体2の傾斜角が所定角θ1に達していない場合は、走行規制は行われない。そのため、例えば、車体2の走行中に地面と転倒防止板110との間に物が挟まったために、転倒防止板110は上方に移動したが、車体2の傾斜角は小さいため走行には支障が生じないような場合に、走行規制が実行されることを防止することができる。
【0037】
また、この走行規制処理では、転倒防止板110が上方に移動した状態が、所定時間以上継続しない場合は、走行規制が行われない。そのため、走行する地面の凹凸等により、転倒防止板110が一瞬だけ上方に移動したような場合に、いちいち走行規制を実行して、車体2が頻繁に停止してしまい作業に支障がでることを防止することができる。なお、転倒防止板110が上方に移動した状態で、かつ車体2の傾斜角が所定角θ1以上となる状態が、所定時間以上継続した場合のみ、走行規制を実行するようにしてもよい。これにより、転倒防止板110が一瞬だけ上方に移動したり車体2が一瞬だけ小さく傾いたりしたような場合に、走行規制が実行されることを防止することができる。
【0038】
また、この走行規制処理では、走行規制を実行すると、その後、転倒防止板110が格納される(作業台5が低所に移動する)まで、走行規制が解除されない。例えば、走行規制の実行後に、電源がオンオフされたり車体2の傾斜角がθ1未満となったりしても、走行規制は解除されない。このように、走行規制の解除条件を厳しくすることにより、走行規制解除後の安全性を確保することができる。
【0039】
なお、走行規制装置210は、車体2の傾斜角が別の所定角θ2以上となった場合は、転倒防止板110が上方に移動したか否かに関係なく走行規制を行うようになっている。
この所定角θ2は、車体2の傾斜角がその所定角θ2に達したときは、作業台5を高所に移動させた状態での走行に支障が生じると考えられる角度(例えば、2.0度)に設定される。
【0040】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、上述の実施形態では、展開位置に位置する転倒防止板110を上方に移動可能とするために、車体2側に長孔(枢結孔2e)を設け、転倒防止板110側に軸部材(枢結ピン116)を設けているが、これに限定されるものではなく、車体2側に軸部材を設け、転倒防止板110側に長孔を設けてもよい。
【0041】
また、上述の実施形態では、転倒防止板110が、枢結部112が設けられた部分において上方に移動可能に構成されているが、これに限定されるものではなく、枢結部111が設けられた部分において、あるいは枢結部111が設けられた部分と枢結部112が設けられた部分との両方において、上方に移動可能に構成してもよい。転倒防止板を上方に移動可能とするための構成としては、長孔と軸部材との組合せに限定されるものではなく、例えば、複数のリンク部材を介して転倒防止板と車体とを連結することによって、展開位置に位置する転倒防止板が上方に移動できるように構成してもよい。
【0042】
また、上述の実施形態における走行規制処理では、車体2の傾斜角が所定角θ1に達していなければ、転倒防止板110が上方に移動した状態となっても走行規制を行わないが、これに限定されるものではなく、転倒防止板110が上方に移動したと判定した場合は、車体2の傾斜角が所定角θ1に達しているか否かに関係なく、走行規制を実行するようにしてもよい。その場合でも、転倒防止板110が上方に移動した状態が所定時間以上継続したときは走行規制を行うが、継続しないときは走行規制を行わないようにしてもよい。また、走行規制の他に、操舵作動の規制を行うようにしてもよい。
【0043】
また、上述の実施形態では、本発明に係る高所作業車として、伸縮マスト式の高所作業車を例示して説明したが、高所作業車としてはこれに限定されるものではなく、例えば、シザースリンク式の自走式高所作業車やブーム式の自走式高所作業車であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 高所作業車
2 車体
2e 枢結孔(長孔)
4 伸縮装置
5 作業台
6 伸縮マスト
8 操作装置
9 コントロールボックス
100 転倒防止装置
110 転倒防止板
111,112 枢結部
116 枢結ピン(軸部材)
120 駆動アーム
140 格納作動部
150A,150B リミットスイッチ
210 走行規制装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12