(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】プレフィルドシリンジ用包装用ケース
(51)【国際特許分類】
A61M 5/00 20060101AFI20220530BHJP
A61M 5/28 20060101ALI20220530BHJP
A61J 1/00 20060101ALI20220530BHJP
B65D 77/00 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
A61M5/00 516
A61M5/28
A61J1/00 430
B65D77/00 C
B65D77/00 A
(21)【出願番号】P 2018205436
(22)【出願日】2018-10-31
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100179796
【氏名又は名称】安井 義博
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 雄二
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/169038(WO,A1)
【文献】特開平08-057046(JP,A)
【文献】特開2008-104645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00
A61J 1/00
B65D 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性材料(X)が充填されているシリンジ本体(Ya)と、該シリンジ本体(Ya)の一端に形成された発泡性材料(X)が吐出される吐出口(Yb)に装着されるキャップ(Yc)と、外周にフランジ(Yd)が形成された該シリンジ本体(Ya)の他端側から内部へと押し込まれるプランジャ(Ye)とから成るプレフィルドシリンジ(Y)を、収納するためのプレフィルドシリンジ用包装用ケースであって、
該シリンジ本体(Ya)を収納するためのシリンジ本体収納凹部(1)と、該シリンジ本体収納凹部(1)に連続して形成されていてフランジ(Yd)のシリンジ本体(Ya)側に位置する面(Yda)を当接させるためのフランジ当接部(2)と、該フランジ当接部(2)に連続して形成されていて該プランジャ(Ye)を収納するためのプランジャ収納凹部(3)とから構成されていると共に、
該プレフィルドシリンジ(Y)が収納された際に、該プランジャ(Ye)の端部を当接させて位置固定するための変形自在なプランジャ用突起部(4)が、該プランジャ収納凹部(3)の該フランジ当接部(2)と反対側の端部に形成されていることを特徴とするプレフィルドシリンジ用包装用ケース。
【請求項2】
前記プランジャ用突起部(4)は、前記プレフィルドシリンジ(Y)の長手方向に沿って延在し、前記プランジャ(Ye)の端部の側面と当接するよう形成され、
前記プレフィルドシリンジ(Y)が収納される際に、前記プランジャ用突起部(4)の延在方向の一部に前記側面が当接して、前記側面によって押し込まれることによって前記プランジャ用突起部(4)が変形して、前記プランジャ(Ye)の前記端部を位置固定する、
請求項1に記載のプレフィルドシリンジ用包装用ケース。
【請求項3】
シリンジ本体収納凹部(1)の上部に爪部(5)が形成されている請求項1
または2に記載のプレフィルドシリンジ用包装用ケース。
【請求項4】
プランジャ用突起部(4)がプランジャ収納凹部(3)の上方から下方に向けて、フランジ当接部(2)側に傾斜している請求項1
~3のいずれか1項に記載のプレフィルドシリンジ用包装用ケース。
【請求項5】
前記シリンジ本体収納凹部(1)の上部に対向して設けられる少なくとも一対の爪部(5)を有し、
プランジャ用突起部(4)が
、前記一対の爪部(5)の間隔より幅の狭い突条をなしている請求項1~
4のいずれか1項に記載のプレフィルドシリンジ用包装用ケース。
【請求項6】
透明な樹脂から成形されている請求項1~
5のいずれか1項に記載のプレフィルドシリンジ用包装用ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレフィルドシリンジを収納するためのプレフィルドシリンジ用包装用ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
シリンジに充填され使用される薬剤の中には、発泡性を有する材料がある。このような発泡性材料としては、過酸化水素又は過酸化水素誘導体を含むことで歯牙の漂白効果が高められた歯牙漂白用組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。この歯牙漂白用組成物は、使用時の簡便性や汚染防止等といった観点から、例えば予めシリンジ内に充填された状態で供給される。
【0003】
上記した歯牙漂白用組成物のような発泡性材料(薬剤)が予め充填されたシリンジは、プレフィルドシリンジと呼ばれ、包装用ケースに収容された状態で流通される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、例えば上記した過酸化水素又は過酸化水素誘導体により過酸化水素分解物の気泡が生じると、シリンジ本体の内圧が高まり、プランジャがシリンジ本体から外れる方向に変位する場合がある。このようにプランジャが変位した際に、プランジャがシリンジ本体から外れて薬剤が漏れ出したり、プレフィルドシリンジそのものが包装用ケースから浮き上がるように外れて破損したりする可能性がある。
【0006】
そのため、プレフィルドシリンジは、包装用ケースにしっかりと固定し、プランジャが外れるのを防止したり、プレフィルドシリンジそのものが包装用ケースから浮き上がって外れたりすることを防止する必要がある。
【0007】
しかしながら、発泡性材料を定量充填した場合であっても、発生した細かい気泡がシリンジ本体内部で分散している場合や、気泡が集まって大きな気泡を形成している場合では、プレフィルドシリンジ毎にその全長に差が生じることがあり、プレフィルドシリンジの全長が一定しないため、従来の定型の包装用ケースを使用すると不良品の発生の原因となることがある。
【0008】
そこで多少全長の異なるプレフィルドシリンジであっても破損することなく、安定した状態で固定収納できるプレフィルドシリンジ用包装用ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、発泡性材料が充填されているシリンジ本体と、該シリンジ本体の一端に形成された発泡性材料が吐出される吐出口に装着されるキャップと、外周にフランジが形成された該シリンジ本体の他端側から内部へと押し込まれるプランジャとから成るプレフィルドシリンジを、収納するためのプレフィルドシリンジ用包装用ケースであって、該シリンジ本体を収納するためのシリンジ本体収納凹部と、該シリンジ本体収納凹部に連続して形成されていて該シリンジ本体のフランジの該プランジャと反対側に位置する面を当接させるためのフランジ当接部と、該フランジ当接部に連続して形成されていて該プランジャを収納するためのプランジャ収納凹部とから構成されていると共に、該プランジャ収納凹部の該フランジ当接部と反対側の端部に、プレフィルドシリンジが収納された際に、該プランジャの端部を当接させて位置固定するための変形自在なプランジャ用突起部が形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、個々の全長が多少異なるプレフィルドシリンジであっても、破損させることなく容易に固定収納できるプレフィルドシリンジ用包装用ケースが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るプレフィルドシリンジ用包装用ケースを例示する平面図である。
【
図2】
図1のプレフィルドシリンジ用包装用ケースを平面側から見た斜視図である。
【
図3】
図1のプレフィルドシリンジ用包装用ケースにプレフィルドシリンジを収納して、平面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明に係るプレフィルドシリンジ用包装用ケースについて詳細に説明する。
【0013】
Xは後述するプレフィルドシリンジYに予め充填されている発泡性材料である。発泡性材料Xとしては、例えば歯牙漂白用組成物がある。歯牙漂白用組成物は、歯牙に塗布されて付着し、色素が沈着した歯牙を漂白する。この歯牙漂白用組成物は、過酸化水素又は過酸化水素誘導体を含むことで、過酸化水素分解物の気泡が生じる発泡性を有するのである。なお発泡性材料Xは、歯牙漂白用組成物に限られない。
【0014】
Yは発泡性材料Xが充填されているシリンジ本体Yaと、シリンジ本体Yaの一端に形成された発泡性材料Xが吐出される吐出口Ybに装着されるキャップYcと、外周にフランジYdが形成されたシリンジ本体Yaの他端側から内部へと押し込まれるプランジャYeとから成るプレフィルドシリンジである。
【0015】
本発明に係るプレフィルドシリンジ用包装用ケースに収納されるプレフィルドシリンジとしては、一般的なものが使用でき、シリンジ本体Yaの一端に吐出口Ybが形成されていて充填されている発泡性材料Xが漏れないようにキャップYcが装着されていたり、シリンジ本体Yaの他端側に指を引っかけるフランジYdが形成されていたりする点も一般的であり、特殊な形状にする必要はない。またプランジャYeも一般的な形状のものが使用でき、例えばプランジャYeのシリンジ本体Yaと反対側の端部には、プランジャYeをシリンジ本体Ya内に押し込む際に、指をあてることができるように円板状に形成されている一般的なものが使用できる。
【0016】
1は、シリンジ本体Yaを収納するためのシリンジ本体収納凹部である。このシリンジ本体収納凹部1には、キャップYcが装着された状態でシリンジ本体Yaが収納できる大きさであればよく、多少余裕のある大きさで形成されているとよい。
【0017】
2は、シリンジ本体収納凹部1に連続して形成されていてフランジYdのシリンジ本体Ya側に位置する面Ydaを当接させるためのフランジ当接部である。
【0018】
発泡性材料Xから気泡が生じると、シリンジ本体Yaの内圧が高まり、プランジャYeがシリンジ本体Yaから外れる方向に変位する。他方、シリンジ本体Yaもその内圧の影響によりプランジャYeと反対側に変位しようとする。このシリンジ本体Yaの動きに対して、フランジYdのシリンジ本体Ya側に位置する面Ydaを、フランジ当接部2に当接させることによって、シリンジ本体Yaを確実に位置固定することができるのである。
【0019】
3は、フランジ当接部2に連続して形成されていてプランジャYeを収納するためのプランジャ収納凹部である。
【0020】
4は、プレフィルドシリンジYが収納された際に、プランジャYeの端部を当接させてプランジャYeの位置固定をするための変形自在なプランジャ用突起部であり、プランジャ収納凹部3のフランジ当接部2と反対側の端部に形成されている。
【0021】
プレフィルドシリンジYの全長は、シリンジ本体Ya内部の気泡の状態によって多少の差異が生じる。この多少全長の異なる各プレフィルドシリンジYを、プランジャ用突起部4を変形させながら押し込むようにして収納すれば、プランジャ用突起部4の変形量に差異が生じて、全長が必ずしも一定しないプレフィルドシリンジYを容易且つ確実に収納することができるのである。
【0022】
またプランジャ用突起部4がプランジャ収納凹部3の上方から下方に向けて、フランジ当接部2側に傾斜していれば、プレフィルドシリンジYを収納する際にプランジャYeの端部を滑り込ませるようにして押し込むことができるので、収納しやすくて好ましいのである。
【0023】
さらにプランジャ用突起部4が幅の狭い突条をなしていれば、プランジャ用突起部4を変形させやすく、プレフィルドシリンジYの収納が容易になり好ましいのである。
【0024】
5は、シリンジ本体収納凹部1の上部に形成されている爪部である。
図1から
図3の態様では、1本のプレフィルドシリンジYに対して2対(計4つの爪部5)が形成されている。シリンジ本体Yaの浮き上がり、すなわちプレフィルドシリンジYが本発明に係るプレフィルドシリンジ用包装用ケースから上方へと外れることを防止している。この爪部5は、1本のプレフィルドシリンジYに対して、1対でも複数対形成させてもよい。
【0025】
なおこの爪部5で、プランジャYeを挟持させることも可能ではあるが、プランジャYeは搬送中等にシリンジ本体Ya内部の気泡の変化により変位する可能性があるので、収納位置がほとんど変化しないシリンジ本体Yaを挟持した方が、プレフィルドシリンジYを破損させることなく、より確実にプレフィルドシリンジYの浮き上がりを防止することができるのである。
【0026】
本発明に係るプレフィルドシリンジ用包装用ケースは、透明な樹脂性のシート、例えばプラスチックシートをプレス加工等により
図2のように成形すれば、透明なのでプレフィルドシリンジYの状態が外部から目視しやすくて好ましいのである。
【0027】
またプラスチックシートのような樹脂を使用しプレス加工することで、プランジャ用突起部4を含むプレフィルドシリンジ用包装用ケース全体を一体成形することができるので、十分な強度を確保することができる。すなわち、このように一体成形することでプレフィルドシリンジYを収納するために、プランジャYeの端部でプランジャ用突起部4をつぶすように変形させた際に、型崩れすることなく、しっかりとプレフィルドシリンジYを収納固定できて好ましいのである。
【0028】
なお厚さが一様で入手が容易なプラスチックシートを使用してプレフィルドシリンジ用包装用ケース全体を一体成形する場合、プランジャ用突起部4が大きければ、プランジャ用突起部4部分の厚みが薄くて柔らかくなり、他方、プランジャ用突起部4がやや小さければ、プランジャ用突起部4部分の厚みが厚くなりやや硬くなる。
【0029】
このようにプランジャ用突起部4の大きさを設計変更することで、収納されるプレフィルドシリンジYによってつぶされるプランジャ用突起部4の大きさや硬さを変更できるので、収納されるプレフィルドシリンジや充填される発泡性材料Xの種類に応じて容易に調整できる。
【0030】
また図示していないが、本発明に係るプレフィルドシリンジ用包装用ケースには、収納されたプレフィルドシリンジYの上方を覆うようなカバーを別途又は一体で形成させてもよい。
【0031】
さらに本発明に係る実施形態では、2本のプレフィルドシリンジYを収納できる態様となっているが、収納できるプレフィルドシリンジYの本数については、特に限定されない。
【0032】
以上詳述したように、本発明に係るプレフィルドシリンジ用包装用ケースは、シリンジ本体Yaに充填されている発泡性材料Xから発生した気泡によって、変位するプランジャYeを抑制し、プランジャYeの変位に起因する不具合の発生を低減することができるのである。
【0033】
また本発明に係るプレフィルドシリンジ用包装用ケースは上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 シリンジ本体収納凹部
2 フランジ当接部
3 プランジャ収納凹部
4 プランジャ用突起部
5 爪部
X 発泡性材料
Y プレフィルドシリンジ
Ya シリンジ本体
Yb 吐出口
Yc キャップ
Yd フランジ
Yda フランジのシリンジ本体側に位置する面
Ye プランジャ