(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】ターボ冷凍機
(51)【国際特許分類】
F25B 1/053 20060101AFI20220530BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
F25B1/053 M
F25B1/00 361L
F25B1/00 361P
F25B1/00 371M
F25B1/053 A
F25B1/053 B
(21)【出願番号】P 2018213718
(22)【出願日】2018-11-14
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】503164502
【氏名又は名称】荏原冷熱システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】福住 幸大
(72)【発明者】
【氏名】金 哲
(72)【発明者】
【氏名】中村 知亮
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-285351(JP,A)
【文献】国際公開第2017/129518(WO,A1)
【文献】特開2011-002186(JP,A)
【文献】特開平11-051502(JP,A)
【文献】特開昭63-025458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/053
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒液を蒸発させて冷媒ガスを生成する蒸発器と、
前記冷媒ガスを圧縮する第1圧縮機および第2圧縮機と、
前記圧縮された冷媒ガスを凝縮させて前記冷媒液を生成する凝縮器と、
前記第1圧縮機および前記第2圧縮機をそれぞれ可変速駆動する第1インバータおよび第2インバータと、
前記第1圧縮機、前記第2圧縮機、前記第1インバータ、および前記第2インバータの動作を制御する制御装置を備え、
前記第1圧縮機および前記第2圧縮機は、前記蒸発器に並列に連結されており、
前記制御装置は、
前記第1圧縮機の吸込口および前記第2圧縮機の吸込口にそれぞれ配置された第1ガイドベーンおよび第2ガイドベーンを閉じた状態で、前記第1圧縮機および前記第2圧縮機を同時に起動し、
前記第1圧縮機の速度と前記第2圧縮機の速度を互いに同じに保ちながら、所定の速度に到達するまで前記第1圧縮機の速度および前記第2圧縮機の速度を上昇させ、
前記所定の速度に到達した後に、前記第1ガイドベーンおよび前記第2ガイドベーンを開き、
前記第1ガイドベーンおよび前記第2ガイドベーンが開いた後に、前記第1圧縮機および前記第2圧縮機を同じ速度で運転させ
るように構成され、
前記制御装置は、前記第1ガイドベーンの開度と前記第2ガイドベーンの開度の相関関係を規定するベーン開度テーブルを予め記憶しており、
前記制御装置は、前記第1ガイドベーンおよび前記第2ガイドベーンを開いた後に、冷凍負荷に応じて前記第1ガイドベーンの開度と前記第2ガイドベーンの開度を、前記相関関係を保ちながら制御するように構成され、
前記ベーン開度テーブル上の前記第2ガイドベーンの開度下限と開度上限との間の開度は、前記第1ガイドベーンの対応する開度よりも大きい、ターボ冷凍機。
【請求項2】
前記制御装置は、複数のベーン開度テーブルを予め記憶しており、前記ターボ冷凍機の冷凍負荷に基づいて前記複数のベーン開度テーブルのうちの1つを選択し、前記選択されたベーン開度テーブルに従って、前記第1ガイドベーンの開度と前記第2ガイドベーンの開度を制御する、請求項
1に記載のターボ冷凍機。
【請求項3】
前記第1圧縮機および前記第2圧縮機のヘッドを検出するヘッド検出器と、
前記凝縮器から前記蒸発器まで延びるホットガスバイパスラインと、
前記ホットガスバイパスラインに取り付けられたホットガスバイパス弁をさらに備え、
前記制御装置は、前記所定の速度に到達した後に前記ヘッドが所定のしきい値よりも高い場合は、前記ホットガスバイパス弁を開く、請求項1
または2に記載のターボ冷凍機。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1ガイドベーンおよび前記第2ガイドベーンを開いた後に、前記第1ガイドベーンの開度と前記第2ガイドベーンの開度を互いに同じに保ちながら、冷凍負荷に応じて前記第1ガイドベーンの開度と前記第2ガイドベーンの開度を制御する、請求項1
乃至3のいずれか一項に記載のターボ冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の圧縮機を備えたターボ冷凍機に関し、特に複雑な制御を必要とせず、複数の圧縮機を速やかに立ち上げることができるターボ冷凍機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍空調装置などに利用されるターボ冷凍機は、冷媒を封入したクローズドシステムとして構成される。ターボ冷凍機は、一般に、被冷却流体から熱を奪って冷媒が蒸発して冷凍効果を発揮する蒸発器と、前記蒸発器で蒸発した冷媒ガスを圧縮して高圧の冷媒ガスを生成する圧縮機と、高圧の冷媒ガスを冷却流体で冷却して凝縮させる凝縮器と、前記凝縮した冷媒を減圧して膨張させる膨張弁(膨張機構)とを、冷媒配管によって連結して構成されている。
【0003】
特許文献1には、2台の圧縮機を備えたターボ冷凍機が開示されている。このタイプのターボ冷凍機では、安定した起動を実現するためには、各圧縮機への冷媒ガスの流量を均等に分配する必要がある。そこで、流量を均等にするために、各圧縮機の運転状態を監視し、各圧縮機の運転を独立に制御することが実施されている。例えば、各圧縮機の電流値に基づいて、各圧縮機の吸込口に設けられているガイドベーンの開度を制御することで、各圧縮機への流量を均等に分配している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような圧縮機ごと運転制御は、多くの計測機器を必要とし、装置コストが上昇してしまう。また、各圧縮機の運転を独立して制御することは一般に難しく、かつ制御方法が複雑となる。特に、圧縮機の起動時には、冷媒ガスの流量が少ないために、圧縮機においてサージングが起きやすい。サージングは、冷媒ガスの流れの失速により圧縮機の振動・騒音が徐々に激しくなる事象である。このようなサージングが発生すると、多大な騒音、過大なスラスト荷重等による軸受の寿命低下や損傷、被冷却流体温度の急激な乱高下等、さまざまな不具合を生じる。
【0006】
上記問題に加え、従来のターボ冷凍機では、圧縮機を1台ずつ起動するため、ターボ冷凍機が安定して運転するまでに長い時間が必要であった。
【0007】
そこで、本発明は、サージングを防止しつつ、簡単な制御方法で複数の圧縮機を速やかに立ち上げることができるターボ冷凍機の運転方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、冷媒液を蒸発させて冷媒ガスを生成する蒸発器と、前記冷媒ガスを圧縮する第1圧縮機および第2圧縮機と、前記圧縮された冷媒ガスを凝縮させて前記冷媒液を生成する凝縮器と、前記第1圧縮機および前記第2圧縮機をそれぞれ可変速駆動する第1インバータおよび第2インバータと、前記第1圧縮機、前記第2圧縮機、前記第1インバータ、および前記第2インバータの動作を制御する制御装置を備え、前記第1圧縮機および前記第2圧縮機は、前記蒸発器に並列に連結されており、前記制御装置は、前記第1圧縮機の吸込口および前記第2圧縮機の吸込口にそれぞれ配置された第1ガイドベーンおよび第2ガイドベーンを閉じた状態で、前記第1圧縮機および前記第2圧縮機を同時に起動し、前記第1圧縮機の速度と前記第2圧縮機の速度を互いに同じに保ちながら、所定の速度に到達するまで前記第1圧縮機の速度および前記第2圧縮機の速度を上昇させ、前記所定の速度に到達した後に、前記第1ガイドベーンおよび前記第2ガイドベーンを開き、前記第1ガイドベーンおよび前記第2ガイドベーンが開いた後に、前記第1圧縮機および前記第2圧縮機を同じ速度で運転させるように構成され、前記制御装置は、前記第1ガイドベーンの開度と前記第2ガイドベーンの開度の相関関係を規定するベーン開度テーブルを予め記憶しており、前記制御装置は、前記第1ガイドベーンおよび前記第2ガイドベーンを開いた後に、冷凍負荷に応じて前記第1ガイドベーンの開度と前記第2ガイドベーンの開度を、前記相関関係を保ちながら制御するように構成され、前記ベーン開度テーブル上の前記第2ガイドベーンの開度下限と開度上限との間の開度は、前記第1ガイドベーンの対応する開度よりも大きい、ターボ冷凍機が提供される。
【0009】
サージングは、一般に、圧縮機の速度が低いときに発生しやすい。本発明によれば、第1ガイドベーンおよび第2ガイドベーンを閉じた状態で、第1圧縮機および第2圧縮機が起動されるので、第1圧縮機および第2圧縮機の速度が低いときは、これら圧縮機には冷媒ガスは実質的に流入しない。結果として、サージングの発生を防止することができ、安定した圧縮機の起動運転が実現できる。
また、本発明によれば、第1圧縮機および第2圧縮機を同時に起動するので、ターボ冷凍機が定常運転に達するまでに要する時間を短縮することができる。さらに、本発明によれば、第1圧縮機の速度と第2圧縮機の速度を互いに同じに保ちながら、第1圧縮機および第2圧縮機を増速するので、これら圧縮機の独立制御は不要であり、運転制御を簡素化することができる。
【0010】
一態様では、前記ターボ冷凍機は、前記第1圧縮機および前記第2圧縮機のヘッドを検出するヘッド検出器と、前記凝縮器から前記蒸発器まで延びるホットガスバイパスラインと、前記ホットガスバイパスラインに取り付けられたホットガスバイパス弁をさらに備え、前記制御装置は、前記所定の速度に到達した後に前記ヘッドが所定のしきい値よりも高い場合は、前記ホットガスバイパス弁を開く。
【0011】
サージングは、一般に、圧縮機のヘッドが高く、かつ圧縮機に流入する冷媒ガスの流量が低いときに発生しやすい。本発明によれば、第1圧縮機および第2圧縮機のヘッドが所定のしきい値よりも高い場合に、ホットガスバイパス弁が開かれる。冷媒ガスは凝縮器からホットガスバイパスラインを通って蒸発器に導かれ、さらに蒸発器から第1圧縮機および第2圧縮機に導かれる。このように、第1圧縮機および第2圧縮機のヘッドが高いときに、第1圧縮機および第2圧縮機に流入する冷媒ガスの流量が増加するので、サージングを防止することができる。
【0012】
一態様では、前記制御装置は、前記第1ガイドベーンおよび前記第2ガイドベーンを開いた後に、前記第1ガイドベーンの開度と前記第2ガイドベーンの開度を互いに同じに保ちながら、冷凍負荷に応じて前記第1ガイドベーンの開度と前記第2ガイドベーンの開度を制御する。
【0013】
ターボ冷凍機の定常運転時では、冷凍負荷に応じてガイドベーンの開度を調節する負荷追従ベーン制御が行われる。第1の圧縮機および第2圧縮機が同一速度で運転されているとき、第1ガイドベーンと第2ガイドベーンの開度が同じであれば、これら2つの圧縮機に流入する冷媒ガスの流量は同じである。しかしながら、実際には、第1の圧縮機および第2圧縮機に流入する冷媒ガスの流量は、これら圧縮機と蒸発器とを繋ぐ冷媒配管の長さや形状、冷媒配管と蒸発器との接続点の位置などに依存して変わりうる。このような因子に起因して、第1圧縮機に流入する冷媒ガスの流量と、第2圧縮機に流入する冷媒ガスの流量が異なることがある。第2圧縮機に流入する冷媒ガスの流量が、第1圧縮機に流入する冷媒ガスの流量よりも低い場合、第2圧縮機においてサージングが起こりやすい。本発明によれば、第2ガイドベーンの開度は、第1ガイドベーンの開度よりも大きいので、第2ガイドベーンの開度が低下したときに第2圧縮機でのサージングを防止することができる。
【0014】
一態様では、前記制御装置は、複数のベーン開度テーブルを予め記憶しており、前記ターボ冷凍機の冷凍負荷に基づいて前記複数のベーン開度テーブルのうちの1つを選択し、前記選択されたベーン開度テーブルに従って、前記第1ガイドベーンの開度と前記第2ガイドベーンの開度を制御する。
本発明によれば、冷凍負荷に基づいて最適なベーン開度テーブルが選択されるので、サージングを防止しつつ、冷凍負荷に応じた最適な運転制御が実行できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、サージングを防止しつつ、簡単な制御方法で複数の圧縮機を速やかに立ち上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】ターボ冷凍機の一実施形態を示す模式図である。
【
図2】ターボ冷凍機の運転方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【
図3】第1ガイドベーンの開度と第2ガイドベーンの開度の相関関係を規定するベーン開度テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、ターボ冷凍機の一実施形態を示す模式図である。
図1に示すように、ターボ冷凍機は、冷媒液を蒸発させて冷媒ガスを生成する蒸発器2と、冷媒ガスを圧縮する第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bと、圧縮された冷媒ガスを凝縮させて冷媒液を生成する凝縮器3と、第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bをそれぞれ可変速駆動する第1インバータ5Aおよび第2インバータ5Bと、第1圧縮機1A、第2圧縮機1B、第1インバータ5A、および第2インバータ5Bの動作を制御する制御装置10を備えている。
【0018】
第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bは、蒸発器2に並列に連結されている。蒸発器2は、第1冷媒ガス出口2Aおよび第2冷媒ガス出口2Bを有している。第1圧縮機1Aの吸込口は、冷媒配管4Aによって第1冷媒ガス出口2Aに連結され、第2圧縮機1Bの吸込口は、冷媒配管4Bによって第2冷媒ガス出口2Bに連結されている。第1冷媒ガス出口2Aおよび第2冷媒ガス出口2Bの配置は
図1に示す実施形態に限定されない。
【0019】
ターボ冷凍機は、凝縮器3と蒸発器2との間に配置されたエコノマイザ20をさらに備えている。第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bの排出口は、冷媒配管4C,4Dによって凝縮器3に連結されている。凝縮器3は冷媒配管4Eによってエコノマイザ20に連結され、エコノマイザ20は冷媒配管4Fによって蒸発器2に連結されている。さらに、エコノマイザ20は、冷媒配管4Gによって第1圧縮機1Aに連結され、冷媒配管4Hによって第2圧縮機1Bに連結されている。エコノマイザ20は、凝縮器3と蒸発器2との間に配置された中間冷却器である。凝縮器3からエコノマイザ20に延びる冷媒配管4Eには一次側膨張弁21が取り付けられ、エコノマイザ20から蒸発器2に延びる冷媒配管4Fには二次側膨張弁22が取り付けられている。
【0020】
ターボ冷凍機は、冷媒ガスを凝縮器3から蒸発器2に導くホットガスバイパスライン25と、このホットガスバイパスライン25を開閉するためのホットガスバイパス弁27とを備えている。ホットガスバイパスライン25は、エコノマイザ20をバイパスして凝縮器3から蒸発器2まで延びている。ホットガスバイパス弁27は、その開度が調整可能に構成されており、例えば開度可変な電動弁から構成されている。
【0021】
ホットガスバイパス弁27は、制御装置10に電気的に接続されており、ホットガスバイパス弁27の動作は制御装置10によって制御される。定常運転では、ホットガスバイパス弁27は閉じられている。制御装置10がホットガスバイパス弁27を開くと、第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bによって圧縮された冷媒ガスは、エコノマイザ20をバイパスしてホットガスバイパスライン25を通って凝縮器3から蒸発器2に送られる。
【0022】
本実施形態では、第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bは、多段ターボ圧縮機から構成されている。より具体的には、第1圧縮機1Aは、二段ターボ圧縮機からなり、一段目羽根車11Aと、二段目羽根車12Aと、これらの羽根車11A,12Aを回転させる電動機13Aとを備えている。第1インバータ5Aは電動機13Aに接続されており、第1インバータ5Aは商用電源30に接続されている。第1インバータ5Aは制御装置10に接続されている。羽根車11A,12Aは、電動機13Aに連結されている。電動機13Aは誘導電動機からなり、電動機13Aの回転速度は、第1インバータ5Aを介して制御装置10により制御される。
【0023】
第1圧縮機1Aの吸込口には、冷媒ガスの羽根車11A,12Aへの吸込流量を調整する第1ガイドベーン16Aが配置されている。第1ガイドベーン16Aは一段目羽根車11Aの吸込側に位置している。第1ガイドベーン16Aは放射状に配置されており、各第1ガイドベーン16Aが自身の軸心を中心として互いに同期して所定の角度だけ回転することにより、第1ガイドベーン16Aの開度が変更される。第1ガイドベーン16Aの開度は、制御装置10によって制御される。蒸発器2から送られた冷媒ガスは、第1ガイドベーン16Aを通過し、その後、回転する羽根車11A,12Aによって順次昇圧される。昇圧された冷媒ガスは、凝縮器3に送られる。
【0024】
第1圧縮機1Aと同様に、第2圧縮機1Bは、二段ターボ圧縮機からなり、一段目羽根車11Bと、二段目羽根車12Bと、これらの羽根車11B,12Bを回転させる電動機13Bと、第2圧縮機1Bの吸込口に配置された第2ガイドベーン16Bを備えている。第2インバータ5Bは電動機13Bに接続されており、第2インバータ5Bは商用電源30に接続されている。第2インバータ5Bは制御装置10に接続されている。第2圧縮機1Bの特に説明しない構成および動作は、第1圧縮機1Aの構成および動作と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0025】
蒸発器2は、被冷却流体(例えば冷水)から熱を奪って冷媒液が蒸発して冷凍効果を発揮する。第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bは、蒸発器2で蒸発した冷媒ガスを圧縮して高圧の冷媒ガスを生成し、凝縮器3は、高圧の冷媒ガスを冷却流体(例えば冷却水)で冷却して凝縮させることで、冷媒液を生成する。冷媒液は、一次側膨張弁21を通過することによって減圧される。減圧された冷媒液中に存在する冷媒ガスはエコノマイザ20によって分離され、第1圧縮機1Aの一段目羽根車11Aと二段目羽根車12Aとの間に設けた中間吸込み口17A、および第2圧縮機1Bの一段目羽根車11Bと二段目羽根車12Bとの間に設けた中間吸込み口17Bに送られる。エコノマイザ20を通過した冷媒液は、二次側膨張弁22を通過することによって減圧され、さらに冷媒配管4Fを通って蒸発器2に送られる。このように、ターボ冷凍機は、冷媒を封入したクローズドシステムとして構成される。
【0026】
ターボ冷凍機は、蒸発器2に流入する被冷却流体の入口温度を測定する温度測定器としての温度センサS1と、蒸発器2から流出する被冷却流体の出口温度を測定する温度測定器としての温度センサS2と、蒸発器2を流れる被冷却流体の流量を測定する流量計32と、凝縮器3に流入する冷却流体の入口温度を測定する温度測定器としての温度センサS3と、凝縮器3から流出する冷却流体の出口温度を測定する温度測定器としての温度センサS4をさらに備えている。温度センサS1,S2,S3,S4および流量計32は制御装置10に電気的に接続されており、温度センサS1,S2,S3,S4および流量計32の出力値は制御装置10に送られるようになっている。
【0027】
制御装置10は、温度センサS1,S2によって測定された被冷却流体の入口温度T1および被冷却流体の出口温度T2の差ΔTと、流量計32によって測定された被冷却流体の流量とに基づいて、ターボ冷凍機の現在の冷凍負荷(冷凍容量)を算出する。より具体的には、制御装置10は、温度差ΔTと被冷却流体の流量との積から現在の冷凍負荷を求めることができる。あるいは、制御装置10は、単に入口温度T1からターボ冷凍機の現在の冷凍負荷を算出してもよい。この場合、流量計32は省略してもよい。
【0028】
ターボ冷凍機は、被冷却流体の出口温度T2と、冷却流体の出口温度T4との比率(T2/T4)から、第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bのヘッドを換算するためのヘッド換算部33を備えている。ヘッド換算部33は、ヘッドを換算するための換算式を予め記憶している。ヘッド換算部33は、被冷却流体の出口温度T2を温度センサS2から取得し、冷却流体の出口温度T4を温度センサS4から取得し、出口温度T2と出口温度T4との比率(T2/T4)を算出し、得られた比率を換算式を用いてヘッドに換算する。ヘッド換算部33は、制御装置10に接続されている。本実施形態では、ヘッド換算部33は制御装置10と一体に構成されている。得られたヘッドは制御装置10に送られる。温度センサS2,S4およびヘッド換算部33は、第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bのヘッドを検出するヘッド検出器として機能する。
【0029】
一実施形態では、ヘッド換算部33は、被冷却流体の入口温度T1を温度センサS1から取得し、冷却流体の入口温度T3を温度センサS3から取得し、入口温度T1と入口温度T3との比率(T1/T3)を算出し、得られた比率を換算式を用いてヘッドに換算してもよい。この場合は、温度センサS1,S3およびヘッド換算部33は、第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bのヘッドを検出するヘッド検出器として機能する。
【0030】
さらに、一実施形態では、ターボ冷凍機は、第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bのヘッドを検出するヘッド検出器として圧力センサ35を備えてもよい。
図1では、圧力センサ35は蒸発器2に接続されているが、圧力センサ35は凝縮器3に接続されてもよい。圧力センサ35は蒸発器2と凝縮器3の両方に接続されてもよい。圧力センサ35は制御装置10に電気的に接続されており、圧力センサ35の出力値は制御装置10に送られるようになっている。
【0031】
第1インバータ5Aおよび第2インバータ5Bの動作は、制御装置10によって制御される。制御装置10は、第1インバータ5Aおよび第2インバータ5Bに同一の制御信号を送信し、第1インバータ5Aおよび第2インバータ5Bを同じように動作させる。具体的には、制御装置10は、第1インバータ5Aおよび第2インバータ5Bを同じように動作させることで、第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bを互いに同じ速度で回転させる。
【0032】
次に、ターボ冷凍機の運転方法の一実施形態について、
図2のフローチャートを参照して説明する。制御装置10は、第1ガイドベーン16Aおよび第2ガイドベーン16Bの開度が0となるまで、第1ガイドベーン16Aおよび第2ガイドベーン16Bを閉じる(ステップ1)。制御装置10は、第1ガイドベーン16Aおよび第2ガイドベーン16Bを閉じた状態で、第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bを同時に起動する(ステップ2)。制御装置10は、第1圧縮機1Aの速度と第2圧縮機1Bの速度を互いに同じに保ちながら、所定の速度(例えば定格速度)に到達するまで第1圧縮機1Aの速度および第2圧縮機1Bの速度を上昇させる(ステップ3)。
【0033】
第1圧縮機1Aの速度および第2圧縮機1Bの速度が所定の速度に到達した後に、制御装置10は、第1ガイドベーン16Aおよび第2ガイドベーン16Bを開く(ステップ4)。第1ガイドベーン16Aおよび第2ガイドベーン16Bが開いた後は、制御装置10は、第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bを同じ速度で運転させる(ステップ5)。
【0034】
サージングは、一般に、圧縮機の速度が低いときに発生しやすい。本実施形態によれば、第1ガイドベーン16Aおよび第2ガイドベーン16Bを閉じた状態で、第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bが起動されるので、第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bの速度が低いときは、これら圧縮機1A,1Bには冷媒ガスは実質的に流入しない。結果として、サージングの発生を防止することができ、安定した第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bの起動運転が実現できる。
【0035】
また、本実施形態によれば、第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bを同時に起動するので、ターボ冷凍機が定常運転に達するまでに要する時間を短縮することができる。さらに、本実施形態によれば、第1圧縮機1Aの速度と第2圧縮機1Bの速度を互いに同じに保ちながら、第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bを増速するので、これら圧縮機1A,1Bの独立制御は不要であり、運転制御を簡素化することができる。
【0036】
制御装置10は、第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bを起動してから所定の監視時間が経過した否か判定する(ステップ6)。第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bを起動してから所定の監視時間が経過すると、制御装置10は、冷凍負荷に基づいて第1ガイドベーン16Aおよび第2ガイドベーン16Bの開度を制御する負荷追従制御モードを実行する(ステップ7)。すなわち、制御装置10は、冷凍負荷が低いときは、第1ガイドベーン16Aおよび第2ガイドベーン16Bの開度を下げ、冷凍負荷が高いときは、第1ガイドベーン16Aおよび第2ガイドベーン16Bの開度を上げる。
【0037】
一実施形態では、制御装置10は、第1ガイドベーン16Aおよび第2ガイドベーン16Bを開いた後に、第1ガイドベーン16Aの開度と第2ガイドベーン16Bの開度を互いに同じに保ちながら、冷凍負荷に応じて第1ガイドベーン16Aの開度と第2ガイドベーン16Bの開度を制御する。
【0038】
ターボ冷凍機の定常運転時では、冷凍負荷に応じて第1ガイドベーン16Aおよび第2ガイドベーン16Bの開度を調節する負荷追従ベーン制御が行われる。第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bが同一速度で運転されているとき、第1ガイドベーン16Aと第2ガイドベーン16Bの開度が同じであれば、これら2つの圧縮機1A,1Bに流入する冷媒ガスの流量は同じである。しかしながら、実際には、第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bに流入する冷媒ガスの流量は、これら圧縮機1A,1Bと蒸発器2とを繋ぐ冷媒配管4A,4Bの長さや形状、冷媒配管4A,4Bと蒸発器2との接続点の位置などに依存して変わりうる。このような因子に起因して、第1圧縮機1Aに流入する冷媒ガスの流量と、第2圧縮機1Bに流入する冷媒ガスの流量が異なることがある。例えば、第2圧縮機1Bに流入する冷媒ガスの流量が、第1圧縮機1Aに流入する冷媒ガスの流量よりも低い場合、第2圧縮機1Bにおいてサージングが起こりやすい。
【0039】
そこで、一実施形態では、制御装置10は、第1ガイドベーン16Aおよび第2ガイドベーン16Bを開いた後に、第1ガイドベーン16Aの開度と第2ガイドベーン16Bの開度を、予め用意されたベーン開度テーブルに従って制御するように構成されてもよい。ベーン開度テーブルは、第1ガイドベーン16Aの開度と第2ガイドベーン16Bの開度の相関関係を規定するテーブルであり、制御装置10の図示しない記憶装置内に格納されている。
【0040】
図3は、第1ガイドベーン16Aの開度と第2ガイドベーン16Bの開度の相関関係を規定するベーン開度テーブルの一例を示す図である。
図3において、横軸は、第1ガイドベーン16Aの開度(%)を表し、縦軸は、第2ガイドベーン16Bの開度(%)を表している。第1ガイドベーン16Aおよび第2ガイドベーン16Bの開度が0%であることは、第1ガイドベーン16Aおよび第2ガイドベーン16Bの開度が全閉状態であることを意味し、第1ガイドベーン16Aおよび第2ガイドベーン16Bの開度が100%であることは、第1ガイドベーン16Aおよび第2ガイドベーン16Bの開度が全開状態であることを意味する。
【0041】
制御装置10は、第1ガイドベーン16Aおよび第2ガイドベーン16Bを開いた後に、冷凍負荷に応じて第1ガイドベーン16Aの開度と第2ガイドベーン16Bの開度を、
図3に示す相関関係を保ちながら制御するように構成されている。
【0042】
図3に示すように、ベーン開度テーブルは、起動時用のベーン開度テーブルR1と、定常運転用のベーン開度テーブルR2とから構成されている。起動時用のベーン開度テーブルR1は、第1ガイドベーン16Aの開度と第2ガイドベーン16Bの開度が所定の切替えポイントPに達するまで使用され、定常運転用のベーン開度テーブルR2は、第1ガイドベーン16Aの開度と第2ガイドベーン16Bの開度が所定の切替えポイントPに達した後に使用される。すなわち、起動時用のベーン開度テーブルR1は第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bの起動時にのみ使用され、定常運転時には使用されない。第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bの定常運転では、定常運転用のベーン開度テーブルR2が使用される。
【0043】
ベーン開度テーブルの開度下限である0%と、開度上限である100%では、第1ガイドベーン16Aの開度と第2ガイドベーン16Bの開度は同じであるが、ベーン開度テーブル上の第2ガイドベーン16Bの開度下限0%と開度上限100%との間の開度は、第1ガイドベーン16Aの対応する開度よりも大きい。したがって、運転中は、開度上限(
図3では100%)に達しない限り、第2ガイドベーン16Bの開度は、第1ガイドベーン16Aの開度よりも大きい。本実施形態によれば、第2ガイドベーン16Bの開度は、第1ガイドベーン16Aの開度よりも大きいので、第2ガイドベーン16Bの開度が低下したときに第2圧縮機1Bでのサージングを防止することができる。
【0044】
一実施形態では、制御装置10は、
図4に示すような複数のベーン開度テーブルを予め記憶してもよい。より具体的には、制御装置10は、ターボ冷凍機の冷凍負荷に基づいて複数のベーン開度テーブルのうちの1つを選択し、選択されたベーン開度テーブルに従って、第1ガイドベーン16Aの開度と第2ガイドベーン16Bの開度を制御してもよい。このような実施形態によれば、冷凍負荷に基づいて最適なベーン開度テーブルが選択されるので、サージングを防止しつつ、冷凍負荷に応じた最適な運転制御が実行できる。
【0045】
図2に戻り、制御装置10は、冷凍負荷に基づいて第1ガイドベーン16Aおよび第2ガイドベーン16Bの開度を制御する上述した負荷追従制御モードを実行しながら、以下に説明するホットガスバイパス弁27の制御を実行する。制御装置10は、ヘッド検出器を構成する温度センサS2,S4およびヘッド換算部33は、第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bのヘッドを検出する(ステップ8)。上述したように、ヘッド検出器は、温度センサS1,S3およびヘッド換算部33から構成されてもよく、あるいは圧力センサ35から構成されてもよい。
【0046】
制御装置10は、検出したヘッドを所定のしきい値と比較し(ステップ9)、ヘッドがしきい値よりも高い場合は、ホットガスバイパス弁27を開く(ステップ10)。ヘッドがしきい値以下であれば、制御装置10はホットガスバイパス弁27を閉じる(ステップ11)。制御装置10は、ステップ10およびステップ11を実行した後、上記ステップ8を再び実行する。ここで、「しきい値」は、サージングが発生しないヘッドに対応する値とされる。例えば、各種ターボ冷凍機の仕様及び冷凍能力(負荷率)等においてサージングが発生しないヘッドを適宜実験等により決定し、この決定されたヘッドに基づいて「しきい値」を決定すればよい。
【0047】
サージングは、一般に、圧縮機のヘッドが高く、かつ圧縮機に流入する冷媒ガスの流量が低いときに発生しやすい。上記実施形態によれば、第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bのヘッドが所定のしきい値よりも高い場合に、ホットガスバイパス弁27が開かれる。冷媒ガスは凝縮器3からホットガスバイパスライン25を通って蒸発器2に導かれ、さらに蒸発器2から第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bに導かれる。このように、第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bのヘッドが高いときに、第1圧縮機1Aおよび第2圧縮機1Bに流入する冷媒ガスの流量が増加するので、サージングを防止することができる。
【0048】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0049】
1A 第1圧縮機
1B 第2圧縮機
2 蒸発器
2A 第1冷媒ガス出口
2B 第2冷媒ガス出口
3 凝縮器
4A,4B,4C,4D,4E,4F,4G,4H 冷媒配管
5A 第1インバータ
5B 第2インバータ
10 制御装置
11A,11B 一段目羽根車
12A,12B 二段目羽根車
13A,13B 電動機
16A 第1ガイドベーン
16B 第2ガイドベーン
17A,17B 中間吸込み口
20 エコノマイザ
21 一次側膨張弁
22 二次側膨張弁
25 ホットガスバイパスライン
27 ホットガスバイパス弁
30 商用電源
32 流量計
33 ヘッド換算部
35 圧力センサ(ヘッド検出器)
S1,S2,S3,S4 温度センサ