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  • 特許-アングル駆動装置付きパワーレンチ 図1
  • 特許-アングル駆動装置付きパワーレンチ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】アングル駆動装置付きパワーレンチ
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/00 20060101AFI20220530BHJP
【FI】
B25B21/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018530562
(86)(22)【出願日】2016-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2016080364
(87)【国際公開番号】W WO2017097951
(87)【国際公開日】2017-06-15
【審査請求日】2019-09-18
(31)【優先権主張番号】1551622-2
(32)【優先日】2015-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ マティアス イルハン
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-507360(JP,A)
【文献】実開平03-053663(JP,U)
【文献】実開昭49-001745(JP,U)
【文献】実開昭58-135519(JP,U)
【文献】特開2009-174663(JP,A)
【文献】国際公開第2005/032769(WO,A1)
【文献】実開昭48-107727(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0269618(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0010158(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アングル型パワーレンチであって、ハウジング(10)、モータ、出力シャフト(12)、および前記モータを前記出力シャフト(12)に連結しているアングル駆動装置(14)を有し、前記アングル駆動装置(14)が前方歯車ヘッド(23)を備えた駆動ピニオン(13)および前記出力シャフト(12)に設けられていて駆動ピニオン歯車ヘッド(23)と係合するかさ歯車(20)を有する、パワーレンチにおいて、前記駆動ピニオン(13)は、前方駆動ピニオン軸受(28)および前記前方駆動ピニオン軸受(28)から軸方向に離間して位置する後方駆動ピニオン軸受(31)を支持した軸受支持スリーブ(25)によって包囲され、前記前方駆動ピニオン軸受(28)は、前記歯車ヘッド23のところまたはそのすぐ近くのところで前記駆動ピニオン13の前方端部の玉内レース29および前記軸受支持スリーブ25の前方端部の玉外レース30を有し、前記軸受支持スリーブ(25)は、前記駆動ピニオン(13)の軸方向位置の調節を可能にするようになった調節連結部(26)を介して前記ハウジング(10)に連結されている、パワーレンチ。
【請求項2】
環状案内面(33,34,36,37)が前記ハウジング(10)に対する前記軸受支持スリーブ(25)の半径方向位置を定めるよう前記軸受支持スリーブ(25)および前記ハウジング(10)に設けられている、請求項1記載のパワーレンチ。
【請求項3】
前記軸受支持スリーブ(25)を前記駆動ピニオン(13)の所望の設定値に対応した位置にロックするようになったロックを有する、請求項1記載のパワーレンチ。
【請求項4】
前記調節連結部(26)は、ねじ連結部(26)である、請求項記載のパワーレンチ。
【請求項5】
前記ねじ連結部(26)は、前記軸受支持スリーブ(25)のねじ山付き後方端部分(27)および前記ハウジング(10)のねじ山付き部分(32)を含み、前記軸受支持スリーブ(25)の前記ねじ山付き後方端部分(27)は、前記ハウジング(10)の前記ねじ山付き部分(32)に対する回転を止める摩擦ロックを形成するよう弾性的に拡張可能である、請求項記載のパワーレンチ。
【請求項6】
前記軸受支持スリーブ(25)の前記ねじ山付き後方端部分(27)は、薄肉であり、前記ねじ山付き後方端部分は、前記軸受支持スリーブ(25)の前記ねじ山付き後方端部分(27)を弾性的に拡張可能にするよう長手方向スロット(40)を備えている、請求項記載のパワーレンチ。
【請求項7】
前記前方駆動ピニオン軸受(28)は、アングル接触型玉軸受である、請求項1~のうちいずれか一に記載のパワーレンチ。
【請求項8】
前記アングル接触型玉軸受(28)は、半径方向に対して鋭角(α)をなす第1の線上に位置する2つの反対側に位置する第1の側方接点(42,44)、及び、当該第1の線に垂直な第2の線上に位置する2つの反対側に位置する第2の側方接点(43,45)を有する、4点接触型のものである、請求項記載のパワーレンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良型アングル駆動装置を有するアングル型パワーレンチに関する。本発明は、特に、改良型駆動ピニオン軸受支持体を有するアングル型パワーレンチに関する。
【背景技術】
【0002】
パワーレンチにおいて正確かつ信頼性のあるトルク測定を得る際に遭遇する問題は、出力トルクにばらつきが生じることである。これは、特に出力トルクのばらつきがアングル駆動装置によって生じるアングル型パワーレンチにおける問題であり、駆動ピニオンと出力シャフトかさ歯車との不正確な歯車の歯の噛み合いに起因している。大抵の場合、これは、駆動ピニオンの軸方向位置の不正確な設定値ならびに剛性の低い駆動ピニオン軸受支持体の結果である。また、駆動ピニオンと出力シャフトかさ歯車との不正確な噛み合いの結果として、望ましくないほど高いひずみが歯車の歯に加わるとともにアングル駆動装置の機械的摩耗が増大する場合がある。
【0003】
駆動ピニオンと出力シャフトかさ歯車との望ましい噛み合いおよびかくしてアングル駆動装置の作動の向上を達成するためには、駆動ピニオンが出力シャフトをかさ歯車に対して正確な軸方向位置を取るとともに駆動ピニオン軸受がトルク伝達中に駆動ピニオンに作用する力を望ましい仕方で、すなわち、結果的に駆動ピニオンの歯車の歯とかさ歯車との不正確な噛み合いをもたらす駆動ピニオンの傾動または軸方向変位を生じさせない仕方で打ち消すように配置されることが重要であることが判明した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、出力トルクのばらつきを軽減するための改良型アングル駆動装置を備えたアングル型パワーレンチを提供することにある。
【0005】
本発明の別の目的は、アングル駆動装置の作動の精度の向上および生じる出力トルクのばらつきの軽減を達成するための改良型駆動ピニオン軸受構造を有するアングル型パワーレンチを提供することにある。
【0006】
本発明の更に別の目的は、駆動ピニオンの正確な軸方向位置の調節および設定を可能にするための改良型アングル駆動装置ピニオン軸受支持体を有するアングル駆動装置を備えたアングル型パワーレンチを提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的および他の利点は、以下の説明および特許請求の範囲の記載から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的は、少なくとも部分的には、添付の特許請求の範囲に記載されたアングル型パワーレンチによって達成される。
【0009】
一実施形態によれば、ハウジング、モータ、出力シャフト、およびモータを出力シャフトに連結しているアングル駆動装置を有するアングル型パワーレンチが提供され、アングル駆動装置は、前方歯車ヘッドを備えた駆動ピニオンおよび出力シャフトに設けられていて駆動ピニオン歯車ヘッドと係合するかさ歯車を有する。駆動ピニオンは、前方駆動ピニオン軸受および前方駆動ピニオン軸受から軸方向に間隔を置いて位置する後方駆動ピニオン軸受を支持した軸受支持スリーブによって包囲されている。それにより、駆動ピニオンの支持具合の向上を達成することができる。
【0010】
一実施形態によれば、環状案内面がハウジングに対する軸受支持スリーブの半径方向位置を定めるよう軸受支持スリーブおよびハウジングに設けられる。それにより、軸受支持スリーブを正確に半径方向に位置決めすることができる。
【0011】
一実施形態によれば、軸受支持スリーブは、駆動ピニオンの軸方向位置の調節を可能にするようになった調節連結部を介してハウジングに連結される。それにより、ピニオンを軸方向に調節することができる。
【0012】
一実施形態によれば、軸受支持スリーブを駆動ピニオンの所望の設定値に対応した位置にロックするようになったロックが設けられる。それにより、軸受支持スリーブを所望の位置にロックすることができる。
【0013】
一実施形態によれば、調節連結部は、ねじ連結部である。それにより、調節連結部の作動のしやすさを達成することができる。
【0014】
一実施形態によれば、ねじ連結部は、軸受支持スリーブのねじ山付き後方端部分およびハウジングのねじ山付き部分を含み、軸受支持スリーブのねじ山付き後方端部分は、ハウジングのねじ山付き部分に対する回転を止める摩擦ロックを形成するよう弾性的に拡張可能である。一実施形態によれば、軸受支持スリーブのねじ山付き後方端部分は、薄肉であり、ねじ山付き後方端部分は、軸受支持スリーブのねじ山付き後方端部分を弾性的に拡張可能にするよう長手方向スロットを備える。
【0015】
一実施形態によれば、前方駆動ピニオン軸受は、アングル接触型玉軸受である。一実施形態によれば、アングル接触型玉軸受は、半径方向に対して鋭角をなす線上に位置する2つの反対側に位置する側方接点を有する4点接触型のものである。
【0016】
次に、添付の図面を参照して本発明について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】アングル型パワーレンチの前端部の縦断面図である。
図2】駆動ピニオンアングル接触型玉軸受を概略的に示す図である。
図3】軸受支持スリーブの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1には、パワーレンチが示されている。図1では、パワーレンチの前方端部だけが示されている。パワーレンチは、アングル駆動装置14を収容したハウジング10を有する。アングル駆動装置14は、駆動ピニオン13および出力シャフト12を有する。出力シャフト12は、前方接触型玉軸受16および後方ニードル軸受18で支承されている。出力シャフト12は、ナット受け口を支持するための正方形出力端部15および他端部に位置するかさ歯車20を更に備えている。駆動ピニオン13は、その後方端部のところに、減速歯車装置を介して図示されていないモータに連結可能な受け口部分17を備えている。図1と関連して上述した伝動装置(パワートランスミッション)は、先行技術のパワーレンチの共通形式の伝動装置であり、したがって、これについてはこれ以上詳細には説明しない。
【0019】
さらに、図1では、駆動ピニオン13は、その前方端部のところに、歯車ヘッド23を備え、この歯車ヘッド23は、出力シャフト12に設けられたかさ歯車20に係合し、それにより回転運動を駆動ピニオン13から出力シャフト12に伝達するよう配置されている。一実施形態によれば、駆動ピニオン13は、軸受支持スリーブ25を介してハウジング10内に支持されている。
【0020】
一実施形態によれば、軸受支持スリーブ25は、ハウジング10内に調節可能に設けられるのが良い。軸受支持スリーブ25を調節する調節手段は、一実施形態によれば、ねじ連結部26または類似の連結部によって提供されるのが良い。図1に示されている例示の実施形態では、軸受支持スリーブ25は、ハウジング10内に設けられたねじ山付き部分32と協働するようになった雄ねじ付き後方端部分27を有する。図3では、端部分27のねじ山は、詳細には示されていない。
【0021】
一実施形態によれば、軸受支持スリーブ25は、その前方端部のところで駆動ピニオン13を支持するようになっている。この支持は、アングル接触型玉軸受28によって提供できる。アングル接触型玉軸受は、歯車ヘッド23のところまたはすぐ近くのところで駆動ピニオン13の前方端部のところに位置する玉軸受内レース29および軸受支持スリーブ25の前方端部のところに位置する玉軸受外レース30によって形成されるのが良い。さらに、軸受支持スリーブ25は、前方軸受28から軸方向に間隔を置いた位置で駆動ピニオン13の後方端部の半径方向支持を可能にする後方軸受31を支持するようになっているのが良い。
【0022】
軸受支持スリーブ25は、幾つかの実施形態によれば、その外側のところに、ハウジング10内の対応の接触面36,37と密嵌め関係をなす軸方向に間隔を置いた環状接触面33,34を備えるのが良く、それによりハウジング10に対する軸受支持スリーブ25の正確に定められた半径方向位置を提供することができる。図1に示されている実施形態では、支持スリーブには、ハウジング内の2つの接触面36,37と嵌合する2つの接触面33,34が設けられている。表面の数は、3以上であるのが良い。軸受支持スリーブ25をハウジング10に対する回転を止めるようロックし、それにより所望の軸方向位置への駆動ピニオン13の設定を可能にするロック機構体が設けられている。このロック機構体は、図1に示されている実施形態によれば、軸受支持スリーブ25のねじ山付き後方端部分27が薄肉であり、そして軸受支持スリーブ25の後方端部分27を半径方向に弾性的に変形可能であるようにする長手方向スロット40を備えている点で、ねじ連結部26それ自体によって形成できる。軸受支持スリーブ25のロックは、後方端部分27がハウジング10のねじ山付き部分32中にねじ込まれているときに軸受支持スリーブ後方端部分27の弾性変形を行うという特徴によって得られる半径方向拡張力に起因してねじ連結部26で生じる摩擦力によって得られる。ハウジング10と軸受支持スリーブ25との摩擦係合を促進するため、後者のねじ山付き端部分27は、形状が僅かに円錐形であるのが良く、このことは、摩擦力が軸受支持スリーブ25をハウジング10のねじ山付き部分32中に更にねじ込んでいるときに連続的に増大するということを意味している。このことは、支持スリーブ25および駆動ピニオン13をロックし、そして所望の位置に正確に設定することができるということを意味している。この種のロック機構体は、これが駆動ピニオン13の軸方向位置の簡単な調節および正確な無段設定を提供するという点で有利であるが、他のロックを提供することができる。
【0023】
図2には、アングル接触型玉軸受28の例示の設計例が示されている。図2では、アングル接触型玉軸受28は、4点接触型のものであり、この玉軸受は、玉軸受内レース29上に2つの接点42,43および玉軸受外レース30上の2つの互いに反対側の接点44,45を有している。これについては図2を参照されたい。玉軸受内レースおよび外レース上のそれぞれの2つの互いに反対側の側方に差し向けられた接点42,44は、半径方向線R‐Rから鋭角α、例えば5~10°だけずれた線A‐A上に配置されている。2つの長手方向に差し向けられた接点43,45を通る直線B‐Bは、線A‐Aに垂直であり、駆動スピンドル22の中心線C‐Cから同一の角度αだけずれている。前方アングル接触型玉軸受28と後方ラジアル軸受31との間の軸方向距離は、真の軸方向から駆動ピニオン13からずれ傾向を抑制するよう働くことができる。
【0024】
ずれ角度αは、アングル駆動装置を介するトルク伝達中に歯車ヘッド23および駆動ピニオン13に及ぼされる力の打ち消し具合の向上を達成するよう採用され、それにより、駆動ピニオン13の軸受および出力シャフト12に加わるひずみが軽減される。
【0025】
駆動ピニオン歯車ヘッド23の歯と出力シャフトかさ歯車20の歯との最適噛み合い状態を達成するためには、駆動ピニオン13の正確な軸方向位置を得るよう軸方向支持スリーブ25を調節するとともに設定するのが良い。ねじ連結部が用いられる場合、これは、軸受支持スリーブ25を回転させることによって達成でき、それによりねじ連結部26は、駆動ピニオン13をアングル接触型玉軸受28を介する軸受支持スリーブ25とのその接触関係を介して軸方向に動かす。駆動ピニオン13の最も望ましい軸方向位置は、駆動ピニオン歯車ヘッド23の歯車の歯と出力シャフト12のかさ歯車20との噛み合いが機械的ひずみおよび摩耗を考慮して最適である位置である。駆動ピニオン13の正確な軸方向設定値は、軸受支持スリーブ25の調節によって容易に得られ、かかる最適軸方向設定値は、ばらつきの小さな出力シャフトおよびアングル駆動装置の長い有効寿命をもたらす。
【0026】
ハウジング10および軸方向に間隔を置いて位置する駆動ピニオン支持軸受28,31内における正確な支持を得るための軸方向に間隔を置いた接触面33,34を備えている一体形の調節可能な軸受支持スリーブ25は、アングル駆動装置の作動中およびその組み立て時における僅かな許容誤差の広がりおよび高い精度の実現を可能にする単純かつ堅牢な設計となる。
【0027】
理解されるべきこととして、本発明の実施形態は、上述の実施例には限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で自由に変更可能である。かくして、本明細書において説明したパワーレンチの互いに異なる要素の省略、補足または置換が可能である。例えば、軸受支持スリーブ25を駆動ピニオン13の所望の設定値に対応した回転角度位置にロックするために設けられる手段は異なる設計のものであって良い。上述したように、摩擦力を利用したロック機構体を用いる代わりに、他形式のロック手段を用いることができる。
図1
図2
図3