(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】乗客コンベアに用いる情報処理システム、情報処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B66B 31/00 20060101AFI20220530BHJP
【FI】
B66B31/00 Z
B66B31/00 C
(21)【出願番号】P 2019217118
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2019-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幹
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-203496(JP,A)
【文献】特開2005-130410(JP,A)
【文献】特開2017-218237(JP,A)
【文献】特開2017-088381(JP,A)
【文献】特開2017-137191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末を識別する識別情報
と、前記携帯端末を携帯する乗客が利用する施設の地図から指定された乗客コンベアを特定するコンベア情報
と、を関連付けて記憶する関連記憶部と、
前記携帯端末を携帯した乗客による前記乗客コンベアの1回の利用時間に基づいて、前記利用時間が前記乗客コンベアの駆動状態に対応した適正範囲内に含まれるか否かを判断する適正判断部と、
前記適正判断部が、前記利用時間が前記適正範囲内に含まれると判断した際に、前記乗客が携帯している前記携帯端末を識別する識別情報が、前記関連記憶部において、前記乗客が適正に利用した前記乗客コンベアを特定する前記コンベア情報と関連付けられている場合に、前記乗客が携帯している前記携帯端末に対して特典を付与し、前記乗客が携帯している前記携帯端末を識別する識別情報が、前記関連記憶部において、前記乗客が適正に利用した前記乗客コンベアのうち特別な乗客コンベアを特定する前記コンベア情報と関連付けられている場合に、前記乗客が携帯している前記携帯端末に対して前記特典より増大させた特典を付与する特典付与部と、
を備えた乗客コンベアに用いる情報処理システム。
【請求項2】
前記適正判断部は、前記携帯端末が前記乗客コンベアの乗り口と降り口を通過した時刻から算出された前記利用時間に基づいて前記乗客が当該乗客コンベアを適正に利用しているかを判断する、
請求項1に記載の乗客コンベアに用いる情報処理システム。
【請求項3】
前記利用時間を前記携帯端末から受信する受信部をさらに備え、
前記適正判断部は、受信した前記利用時間に基づいて前記乗客が当該乗客コンベアを適正に利用しているかを判断する、
請求項2に記載の乗客コンベアに用いる情報処理システム。
【請求項4】
前記関連記憶部に、前記携帯端末と前記コンベア情報が関連付けられて記憶されていない場合は、前記適正判断部は、前記利用時間に基づいて前記乗客が当該乗客コンベアを適正に利用しているかを判断しない、
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の乗客コンベアに用いる情報処理システム。
【請求項5】
携帯端末を識別する識別情報
と、前記携帯端末を携帯する乗客が利用する施設の地図から指定された乗客コンベアを特定するコンベア情報
と、を関連付けて記憶する関連記憶部と、
前記携帯端末を携帯した乗客による前記乗客コンベアの1回の利用時間に基づいて、前記利用時間が前記乗客コンベアの駆動状態に対応した適正範囲内に含まれており、かつ前記乗客が携帯している前記携帯端末を識別する識別情報が、前記関連記憶部において、前記乗客が適正に利用した前記乗客コンベアを特定する前記コンベア情報と関連付けられている場合に、前記乗客が携帯している前記携帯端末に対して特典を付与し、前記乗客が携帯している前記携帯端末を識別する識別情報が、前記関連記憶部において、前記乗客が適正に利用した前記乗客コンベアのうち特別な乗客コンベアを特定する前記コンベア情報と関連付けられている場合に、前記乗客が携帯している前記携帯端末に対して前記特典より増大させた特典を付与する特典付与部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項6】
乗客コンベアを利用する乗客が携帯する携帯端末であって、
前記乗客が利用する施設の地図から指定された乗客コンベアを特定するコンベア情報を関連付けて記憶する関連記憶部、を備えた携帯端末としてのコンピュータを、
前記携帯端末を携帯した乗客による前記乗客コンベアの1回の利用時間に基づいて、前記利用時間が前記乗客コンベアの駆動状態に対応した適正範囲内に含まれるか否かを判断する適正判断部と、
前記適正判断部が、前記利用時間が前記適正範囲内に含まれると判断した際に、前記乗客が携帯している前記携帯端末を識別する識別情報が、前記関連記憶部において、前記乗客が適正に利用した前記乗客コンベアを特定する前記コンベア情報と関連付けられている場合に、特典情報を生成し、前記乗客が携帯している前記携帯端末を識別する識別情報が、前記関連記憶部において、前記乗客が適正に利用した前記乗客コンベアのうち特別な乗客コンベアを特定する前記コンベア情報と関連付けられている場合に、前記乗客が携帯している前記携帯端末に対して前記特典情報より増大させた特典情報を生成する特典生成部と、
して機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアに用いる情報処理システム、情報処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
駅やショッピングセンター等の商業施設等の建造物には、エスカレーターが設置されている。また、建造物には動く歩道が設置されていることがある。このようなエスカレーターや動く歩道等(以降総称して「乗客コンベア」という)では、複数の踏段が移動することで、踏段に乗った乗客が歩行しなくても移動できるようになっている。しかしながら最近は、移動している乗客コンベア上を歩行する人が多い。
【0003】
そのため、特許文献1に記載された発明では、乗客コンベア上を歩行せずに移動した人に対しクーポンを発行し、乗客コンベア上を歩行せずに利用させることが記載されている。
【0004】
しかしながら公知文献1に記載された発明では、乗客コンベアを利用する乗客は、どの乗客コンベアがクーポンを発行できる乗客コンベアであるかを予め認識することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、乗客コンベアを利用する乗客が、どの乗客コンベアが特典を付与する乗客コンベアであるかを予め認識して利用することが可能な乗客コンベアに用いる情報処理システム、情報処理装置およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の乗客コンベアに用いる情報処理システムは、携帯端末を識別する識別情報と、前記携帯端末を携帯する乗客が利用する施設の地図から指定された乗客コンベアを特定するコンベア情報と、を関連付けて記憶する関連記憶部と、前記携帯端末を携帯した乗客による前記乗客コンベアの1回の利用時間に基づいて、前記利用時間が前記乗客コンベアの駆動状態に対応した適正範囲内に含まれるか否かを判断する適正判断部と、前記適正判断部が、前記利用時間が前記適正範囲内に含まれると判断した際に、前記乗客が携帯している前記携帯端末を識別する識別情報が、前記関連記憶部において、前記乗客が適正に利用した前記乗客コンベアを特定する前記コンベア情報と関連付けられている場合に、前記乗客が携帯している前記携帯端末に対して特典を付与し、前記乗客が携帯している前記携帯端末を識別する識別情報が、前記関連記憶部において、前記乗客が適正に利用した前記乗客コンベアのうち特別な乗客コンベアを特定する前記コンベア情報と関連付けられている場合に、前記乗客が携帯している前記携帯端末に対して前記特典より増大させた特典を付与する特典付与部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態における乗客コンベアの構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、乗客コンベアの構成及び登りの動作を示す断面図である。
【
図3】
図3は、乗客コンベアの構成及び下りの動作を示す断面図である。
【
図4】
図4は、情報処理装置の構成を含む乗客コンベアシステム100のブロック図である。
【
図5】
図5は、関連記憶部の構成を示すメモリマップである。
【
図6】
図6は、利用者管理部の構成を示すメモリマップである。
【
図7】
図7は、情報処理装置を含むシーケンスを示すチャートである。
【
図8】
図8は、情報処理装置の制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2実施形態における乗客コンベアの構成を示す断面図である。
【
図10】
図10は、情報処理装置の構成を含む乗客コンベアシステム100のブロック図である。
【
図11】
図11は、情報処理装置を含むシーケンスを示すチャートである。
【
図12】
図12は、第2実施形態の携帯端末の構成を含む乗客コンベアシステム100ブロック図である。
【
図13】
図13は、携帯端末を含むシーケンスを示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
(第1実施形態)
第1実施形態にかかる乗客コンベアについて説明する。乗客コンベアは、駅や商業施設等の建造物(建築物ともいう)に設置されて、建造物における2つの地点の間で乗客(乗客コンベアを利用する人を以降「乗客」という)を搬送する機器である。乗客コンベアは、例えば、建造物における上階と下階との間に渡って傾斜して設置されるエスカレーターであってもよいし、建造物における同じ階に平坦に設置される動く歩道でもよい。
【0011】
乗客コンベアがエスカレーターである場合、乗客コンベアは、例えば
図1に示す構成を有する。
図1は、乗客コンベア1の構成を示す斜視図である。乗客コンベア1は、トラス(構造フレーム)2、複数の踏段3、及び欄干4を有している。
【0012】
トラス2は、一端が下階に配され、他端が上階に配され、乗客コンベア1(エスカレーター)の傾斜角を規定している。トラス2は、
図2(a)~
図2(c)、
図3(a)~
図3(c)に示すように、駆動輪10、従動輪11、減速機9、駆動チェーン12、踏段チェーン13、及び電動機8を有する。
図2(a)~
図2(c)、
図3(a)~
図3(c)は、乗客コンベア1の構成及び動作を示す図である。駆動輪10、従動輪11、減速機9、駆動チェーン12、踏段チェーン13、及び電動機8は、トラス2の内部に配されている。踏段チェーン13は、駆動輪10と従動輪11との間で無端状に連結されている。
【0013】
複数の踏段3(
図1参照)は、踏段チェーン13に取り付けられている。電動機8から減速機9のスプロケット14と駆動チェーン12とを介して駆動輪10に供給される動力により、踏段チェーン13が駆動輪10と従動輪11との間を周回移動することに伴い、複数の踏段3が駆動輪10と従動輪11とに渡って循環走行(移動)する。
【0014】
欄干4は、複数連結された踏段3の幅方向の両側方から立設している。欄干4は、2つ設けられ、複数連結された踏段3の直ぐ隣に設けられている。欄干4は、それぞれ、複数連結された踏段3の長手方向即ちトラス2の長手方向に沿って直線状に延在している。欄干4は、スカートガード17、側板18、及び手すりベルト19を有している。側板18は、スカートガード17から立設しかつ下階と上階とに亘って設けられている。手すりベルト19は、側板18の外縁を踏段3と同方向に循環走行する。
【0015】
スカートガード17は、踏段3の直ぐ隣でかつ下階と上階とに亘って設けられている。スカートガード17は、踏段3の両側方に一対で配されている。スカートガード17は、本体17b及び正面スカートカバー17aを有する。本体17bは、トラス2に沿って上階と下階との間に渡って傾斜している。正面スカートカバー17aは、本体17bの一端又は他端に配されている。スカートガード17における正面スカートカバー17aの内側には、メンテナンスのための空間(メンテナンス空間)が設けられている。
【0016】
図2(a)~
図2(c)に示すように、乗客コンベア1が上昇方向に稼動する場合、複数の踏段3(
図1参照)は、下方の乗り口(下階側乗降口16)において進行方向に向けて隣接する踏段3同士が水平状でトラス2内から進出される。複数の踏段3は、下部遷移カーブにおいて隣接する踏段3間の段差を拡大してゆき階段状に遷移される。また、複数の踏段3は、中間傾斜部において階段状に上昇され、上部遷移カーブにおいて隣接する踏段3間の段差を縮小してゆき水平状に遷移される。そして、複数の踏段3は、上方の降り口(上階側乗降口15)において再び水平状となってトラス2内に進入する。複数の踏段3は、トラス2内に進入された後に上方に反転される。複数の踏段3は、帰路側を水平状に上昇され、再度反転されて下階側乗降口16においてトラス2内から進出される。これにより、乗り口において踏段3に乗った乗客Pを下階から上階の降り口に移動させる。
【0017】
図3(a)~
図3(c)に示すように、乗客コンベア1が下降方向に稼動する場合、複数の踏段3(
図1参照)は、上方の乗り口(上階側乗降口15)において進行方向に向けて隣接する踏段3同士が水平状でトラス2内から進出される。複数の踏段3は、上部遷移カーブにおいて隣接する踏段3間の段差を拡大してゆき階段状に遷移される。また、複数の踏段3は、中間傾斜部において階段状に下降され、下部遷移カーブにおいて隣接する踏段3間の段差を縮小してゆき水平状に遷移される。そして、複数の踏段3は、下方の降り口(下階側乗降口16)において再び水平状となってトラス2内に進入する。複数の踏段3は、トラス2内に進入された後に上方に反転される。複数の踏段3は、帰路側を水平状に上昇され、再度反転されて下階側乗降口16においてトラス2内から進出される。これにより、乗り口において踏段3に乗った乗客Pを上階から下階の降り口に移動させる。
【0018】
図1~
図3に示すように、乗客コンベア1(エスカレータ)では、複数の踏段3が移動することで、踏段3に乗った乗客が歩行せずに移動できるようになっている。乗客コンベア1(エスカレータ)の移動する踏段3上を歩行することは、その乗客自身が転倒したり、その乗客が他の乗客と衝突したりする原因となり得る。また昨今では鉄道事業者で「みんなで手すりにつかまろう」キャンペーンを実施するなど、乗客コンベア1の管理者が歩行抑止の取り組みを積極的に行っている。すなわち、乗客コンベア1では、乗客が踏段3上に留まり踏段3上を歩行しない、という乗客コンベア1の適正な利用が望まれている。
【0019】
そこで、本実施形態では、乗客コンベア1の乗客コンベアシステム100により、乗客の携帯端末201を介して計測された時間に基づいて乗客が乗客コンベア1を適正に利用しているか否かを判定し、適正に利用している乗客に特典を付与することで、乗客による乗客コンベア1の適正な利用を促す(すなわち、乗客が踏段3上を歩行する不適正な利用の抑制を図る)。特典とは、例えば乗客が駅や商業施設等で使用できるポイントである。
【0020】
具体的には、乗客コンベアシステム100は、
図4に示すように、ビーコン端末101、ビーコン端末102、アクセスポイント103、アクセスポイント104、及び情報処理装置105を有する。
図4は、乗客コンベアシステム100の構成を示すブロック図である。乗客コンベアシステム100は、携帯端末201と連携して動作する。
【0021】
ビーコン端末101は、下階側乗降口16付近に配され、例えば、下階側における正面スカートカバー17aの内側のメンテナンス空間内に配され得る。ビーコン端末101は、発信部101aを有する。発信部101aは、無線通信技術を用いて、ビーコン信号(電波)を定常的に(例えば、周期的に)発信する。ビーコン信号は、ビーコン端末101を他のビーコン端末102から識別するための識別情報(例えば、SSID又はMACアドレスなど)を含む。無線通信技術は、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、IrDAなどを用いることができる。
【0022】
ビーコン端末102は、上階側乗降口15付近に配され、例えば、上階側における正面スカートカバー17aの内側のメンテナンス空間内に配され得る。ビーコン端末102は、発信部102aを有する。発信部102aは、無線通信技術を用いて、ビーコン信号(電波)を定常的に(例えば、周期的に)発信する。ビーコン信号は、ビーコン端末102を他のビーコン端末101から識別するための識別情報(例えば、SSID又はMACアドレスなど)を含む。無線通信技術は、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、IrDAなどを用いることができる。
【0023】
なお、下階側の正面スカートカバー17aと上階側の正面スカートカバー17aとは、それぞれ、ビーコン信号の電波を透過しやすいように、樹脂製とすることができる。ビーコン端末101,102で無線通信技術としてIrDAが用いられる場合、ビーコン信号の電波(赤外線)を透過しやすいように、透明樹脂製とすることができる。
【0024】
携帯端末201は、乗客コンベアシステム100に対応した専用アプリケーション(プログラム)が予めインストールされており、乗客コンベアシステム100と連携して動作可能である。携帯端末201は、乗客Pにより携帯され得る。携帯端末201は、専用アプリケーションに従い、ビーコン端末101,102と連動して、乗客Pが乗客コンベア1を利用している利用時間ΔTを算出する。
【0025】
例えば、携帯端末201は、受信部201a、計算部201b、送信部201c、表示部201d、およびポイント記憶部201hを有する。具体的には、携帯端末201は、いずれも図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等から成る制御部(図示せず)を有し、制御部が専用アプリケーションに従うことで、受信部201a、計算部201b、送信部201c、及び表示部201dとして機能する。
【0026】
受信部201aは、ビーコン信号をビーコン端末101及びビーコン端末102から受信する。
【0027】
計算部201bは、ビーコン端末101からビーコン信号を受信した時刻とビーコン端末102からビーコン信号を受信した時刻とに基づいて、乗客が乗客コンベア1を利用している利用時間ΔTを算出する。計算部201bは、乗り口側のビーコン端末101(又は102)からビーコン信号が受信された時刻を開始時刻とし、降り口側のビーコン端末102(又は101)からビーコン信号が受信された時刻を終了時刻とし、開始時刻から終了時刻までの利用時間ΔTを算出することができる。計算部201bは、算出した利用時間ΔTを含む時間情報を生成して送信部201cに供給する。
【0028】
送信部201cは、無線通信技術を用いて、時間情報を含む電波を降り口側のアクセスポイント104(又は103)に送信する。すなわち、携帯端末201は、専用アプリケーションに従い、乗客が乗客コンベア1を利用している利用時間ΔTを算出し、この利用時間ΔTを含む時間情報をアクセスポイント104(又は103)に送信する。時間情報は、利用時間ΔTを示す情報の他に、携帯端末201を識別する識別情報(例えば、MACアドレスなど)と、乗客コンベア1を特定するコンベア情報を含む。
【0029】
ポイント記憶部201hは、乗客コンベア1を適正に利用した際に付与される特典としてのポイントを含む、当該携帯端末201の所有者に付与されたポイント(後述する管理サーバ301から受信したポイント)を記憶する。ポイント記憶部201hに記憶されているポイントは、例えば駅構内、商業施設等で買物等に使用することができる。ポイントを使用するとポイント記憶部201hに記憶されているポイントが減少し、管理サーバ301からポイントを受信すると当該ポイントがポイント記憶部201hに記憶されているポイントに加算される。
【0030】
アクセスポイント103は、下階側乗降口16付近に配され、例えば、下階側における正面スカートカバー17aの内側のメンテナンス空間内に配され得る。アクセスポイント103は、転送部103aを有する。転送部103aは、時間情報を含む電波を携帯端末201から受信すると、当該時間情報を情報処理装置105へ送信(転送)する。
【0031】
アクセスポイント104は、上階側乗降口15付近に配され、例えば、上階側における正面スカートカバー17aの内側のメンテナンス空間内に配され得る。アクセスポイント104は、転送部104aを有する。転送部104aは、時間情報を含む電波を携帯端末201から受信すると、当該時間情報を情報処理装置105へ送信(転送)する。
【0032】
情報処理装置105は、例えば乗客コンベアシステム100を運営する企業の本部に設置される。情報処理装置105は、一または複数の建造物に設けられた一または複数の乗客コンベア1に設けられたアクセスポイント103,104と、例えばWAN(Wide Area Network)や専用回線によってそれぞれ通信可能に接続される。情報処理装置105は、受信部105a、適正判断部105b、特典付与部105dを有する。具体的には、情報処理装置105は、いずれも図示しないCPU、ROM、RAM等から成る制御部(図示せず)を有し、制御部が記憶部105cに記憶された制御プログラムに従うことで、受信部105a、適正判断部105b、特典付与部105d、送信部105eとして機能する。
【0033】
なお、情報処理装置105に備えられた記憶部105cは、HDDや不揮発性半導体メモリなどで実現され得る。
【0034】
記憶部105cは、適正範囲部105c1、関連記憶部105c2、利用者管理部105c3を格納する。適正範囲部105c1は、現在の乗客コンベア1の駆動状態に対応した適正範囲を記憶する。適正範囲は、乗客コンベア1における踏段3の移動速度Vと乗り口から降り口までの長さLとに基づいて予め決められている。L/V=tとすると、t近傍の範囲を適正範囲とすることができ、例えば、(t-α)以上(t+α)以下の範囲R1を適正範囲とすることができる。αは、乗客による乗客コンベア1の利用時間の誤差を加味した値である。関連記憶部105c2は、携帯端末の識別情報と、事前に登録された一または複数の乗客コンベア1のコンベア情報を関連付けて記憶する。関連記憶部105c2については
図5で後述する。利用者管理部105c3は、携帯端末201の識別情報に関連付けて、携帯端末201を登録した乗客の諸情報を記憶する。利用者管理部105c3については
図6で後述する。
【0035】
受信部105aは、有線または無線の通信回線を経由して、アクセスポイント104(又は103)から時間情報を受信する。この時間情報には、送信部201cが送信した、利用時間ΔT、識別情報、コンベア情報が含まれる。受信部105aは、受信した時間情報を適正判断部105bへ供給する。
【0036】
適正判断部105bは、携帯端末201を携帯した乗客によるコンベア情報が関連づけられた乗客コンベア1の1回の利用時間に基づいて、乗客が当該乗客コンベア1を適正に利用しているかを判断する。具体的には、適正判断部105bは、携帯端末201が乗客コンベア1の乗り口と降り口を通過した時刻から算出された利用時間ΔTと識別情報とコンベア情報に基づいて、乗客が当該乗客コンベア1を適正に利用しているかを判断する。さらに具体的には、情報処理装置105は、まず関連記憶部105c2を参照し、受信した識別情報とコンベア情報に基づいて、コンベア情報が識別情報に関連付けて予め登録されているかを判断する。コンベア情報が予め登録されていると判断した場合に、次に適正判断部105bは、記憶部105cの適正範囲部105c1を参照して適正範囲を取得し、利用時間ΔTが適正範囲内に含まれるか否か判断する。適正判断部105bは、利用時間ΔTが適正範囲内に含まれれば、その乗客が踏段3上に停止していた(踏段3上を移動していない)と推測できるため、その乗客が乗客コンベア1を適正に利用していたと判断する。適正判断部105bは、利用時間ΔTが適正範囲内に含まれていなければ、その乗客が複数の踏段3に渡って歩行していたと推測できるため、その乗客が乗客コンベア1を適正に利用していないと判断する。
【0037】
特典付与部105dは、適正判断部105bが適正に利用していると判断した際に、乗客が携帯している携帯端末201を識別する識別情報が、関連記憶部105c2において、乗客が適正に利用した乗客コンベア1を特定するコンベア情報と関連付けられている場合に、乗客が携帯している携帯端末201に対して、特典を付与する。具体的には、特典付与部105dは、関連記憶部105c2を参照し、受信した識別情報とコンベア情報に基づいて、コンベア情報が予め登録されていると判断し、かつ適正判断部105bが乗客が乗客コンベア1を適正に利用していると判断した場合に、利用者管理部105c3の特典情報部105c34(
図6を参照)に、付与するポイントを特典情報部105c34に累積的に加算する。
【0038】
送信部105eは、ポイントを特典情報部105c34に記憶されている特典(例えばポイント)の情報を後述する管理サーバ301に送信する。管理サーバ301にポイント情報送信すると、特典情報部105c34に記憶されている情報はクリアされる。
【0039】
管理サーバ301は、ユーザ毎のポイントを管理するサーバとする。管理サーバ301は、乗客を含むユーザに付与されるポイントを含む情報を管理する。例えば、管理サーバ301は、ユーザポイント記憶部301aを有する。ユーザポイント記憶部301aは、携帯端末201又はユーザが有する決済用の記憶媒体の識別情報毎に、当該ユーザが保有する総ポイント(ユーザの現金に基づいてチャージしたポイントの他に、乗客コンベア1を適正に利用したことで付与されるポイントや、それ以外で付与されたポイントの合計ポイント)を記憶するエリアである。
【0040】
例えば、管理サーバ301は、所定のタイミングで、あるいは携帯端末201から要求があると、識別情報で特定される携帯端末201に対し、ユーザポイント記憶部301aに記憶されているポイントを送信する。ポイントが使用されると、ポイント記憶部201hに記憶されているポイントの減少に伴いユーザポイント記憶部301aに記憶されているポイントも同じだけ減少する。これにより、携帯端末201のポイント記憶部201hには、乗客コンベア1を適正に利用したことで付与されたポイントを含んだ合計ポイントが格納される。乗客は、携帯端末201のポイント記憶部201hに格納されたポイントを、駅構内、商業施設等で買物等に利用することができる。
【0041】
このように、乗客は、踏段3上に停止した状態で乗客コンベア1を利用することで、特典が付与されるため、乗客は、乗客コンベア1を適正に使用しようとするインセンティブが働く。この結果、乗客による乗客コンベア1の不適正な利用を抑制できる。
【0042】
次に、関連記憶部105c2について説明する。
図5は、関連記憶部105c2の構成を示すメモリマップである。
図5に示すように、関連記憶部105c2は、識別情報部105c21と複数のコンベア情報部105c22を有する。識別情報部105c21は、乗客コンベア1を利用する乗客が携帯する携帯端末を識別する(特定する)識別情報を登録して記憶する。コンベア情報部105c22は、識別情報部105c21に記憶された識別情報に関連付けて、乗客コンベア1を特定するコンベア情報を一または複数種類記憶する。
【0043】
乗客コンベア1を利用する乗客は、予め自身の携帯端末201に係る識別情報を登録し、一または複数の乗客コンベア1に係るコンベア情報を、当該識別情報に関連付けて記憶させておく。乗客は、例えば自身の通勤通学で使用する駅の地図を参照し、当該地図に記載されている一または複数の乗客コンベア1を、識別情報に関連付けて予め登録しておく。通勤通学やよく利用する商業施設があれば、当該商業施設の地図を参照し、当該地図に記載されている一または複数の乗客コンベア1を識別情報に関連付けて予め登録しておく。このようにコンベア情報を事前登録することで、識別情報に関連付けてコンベア情報が登録された乗客コンベア1を適正に利用した場合に、特典が付与される。また、乗客は、どの乗客コンベア1が事前に登録された乗客コンベア1(特典が付与される乗客コンベア1)であるかを事前に認識して利用することができる。例えば、自身の通勤経路中において、比較的空いている乗客コンベア1について登録することで、空いているからつい歩行しがちな乗客コンベア1であっても適正に利用する意識づけを乗客に持たせることができる。また、例えば駅のプラットホームに通じる乗客コンベア1を登録することで、駅に電車が到着していても、急ぐことなく適正に利用する意識づけとすることができる。なお、駅のプラットホームに通じる乗客コンベア1等の特別な乗客コンベア1を適正に利用した場合に、他の乗客コンベア1を適正に利用した場合より付与する特典を増大させることで、つい歩きがちな乗客コンベア1であっても適正利用に繋がることが期待できる。
【0044】
次に、利用者管理部105c3について説明する。
図6は、利用者管理部105c3の構成を示すメモリマップである。利用者管理部105c3は、識別情報部105c31、個人情報部105c32、携帯アドレス部105c33、特典情報部105c34を有する。識別情報部105c31は、乗客コンベア1を利用する乗客が携帯する携帯端末を識別する(特定する)識別情報を登録して記憶する。個人情報部105c32は、識別情報を登録した乗客に係る諸情報(住所、氏名、電話番号、等)を記憶する。携帯アドレス部105c33は、識別情報で識別される携帯端末201に対してメール(例えば、特典が付与されたことを知らせるメールや、現在保有している特典の値を知らせるメール)等を送付するためのメールアドレスを記憶する。特典情報部105c34は、識別情報で識別される携帯端末201を携帯した乗客が乗客コンベア1を適正に利用した場合に付与される特典を累積的に記憶する。
【0045】
ここからは、情報処理装置105、携帯端末201、乗客コンベア1の相互間のシーケンスについて説明する。
図7は、情報処理装置105を含む乗客コンベアシステム100のシーケンスを示すチャートである。
図7に示すように、乗客コンベア1の乗客は、事前に、自身が携帯する携帯端末201を情報処理装置105に登録する(S11)。すなわち、乗客は、例えば携帯端末201やPC(Personal Computer)から乗客コンベアシステム100を運営する企業のホームページにアクセスする(S11)。そして、乗客は、乗客が携帯する携帯端末201を識別する識別情報と、乗客が特典を付して利用したい乗客コンベア1を特定するコンベア情報を例えば地図上で指定して、予め登録する。なお、コンベア情報は後から追加登録や削減することができる。乗客による事前の登録が終了すると、情報処理装置105は、記憶部105c内に、登録された識別情報とコンベア情報を関連付けた、当該乗客に係る利用者管理部105c3を新たに作成する(S21)。
【0046】
次に乗客が識別情報を事前登録した携帯端末201を携帯して、事前登録した乗客コンベア1に乗車すると、携帯端末201は、乗客コンベア1の入口に位置するビーコン端末101(またはビーコン端末102)から発信されているビーコン信号を受信する(S12)。そして携帯端末201は、ビーコン信号を受信した時刻を計時して記憶する(S13)。続いて当該乗客が乗客コンベア1に降車すると、乗客コンベア1の出口に位置するビーコン端末102(またはビーコン端末101)から発信されているビーコン信号を受信する(S14)。そして携帯端末201は、ビーコン信号を受信した時刻を計時して記憶する(S15)。次に携帯端末201の計算部201bは、S13で計時した時刻とS15で計時した時刻に基づいて、当該乗客の乗客コンベア1の利用時間ΔTを算出する(S16)。そして送信部201cは、計算部201bが算出した利用時間ΔT、当該携帯端末201の識別情報、利用した乗車コンベアを特定するコンベア情報を含む時間情報を、アクセスポイント104(または103)経由で情報処理装置105に送信する(S17)。
【0047】
情報処理装置105の受信部105aは、アクセスポイント104(または103)から時間情報を受信する。そして適正判断部105bは、時間情報に含まれる利用時間ΔT、識別情報、コンベア情報に基づいて、乗客コンベア1が適正に利用されたかを判断する(S22)。
【0048】
適正判断部105bの判断を含む処理を
図8に示す。
図8は、情報処理装置105の制御処理の流れを示すフローチャートである。
図8に示すように、情報処理装置105は、まず関連記憶部105c2を参照し、受信した識別情報とコンベア情報に基づいて関連記憶部105c2を検索し、当該コンベア情報が予め当該識別情報と関連付けられて登録されているかを判断する(S1)。コンベア情報が予め登録されていると判断した場合には(S1のYes)、次に適正判断部105bは、記憶部105cの適正範囲部105c1を参照して適正範囲を取得し、S16で算出した利用時間ΔTが適正範囲内に含まれるか否か判断する(S2)。なお、S1の処理とS2の判断は、いずれが先に判断されてもよい。適正判断部105bが、利用時間ΔTが適正範囲内に含まれていると判断した場合には(S2のYes)、特典付与部105dは特典を付与する(S3)。利用時間ΔTが適正範囲内に含まれないと判断した場合には(S2のNo)、特典付与部105dは特典を付与しない。また、受信したコンベア情報が予め識別情報と関連付けられているコンベア情報ではないと判断した場合には(S1のNo)、情報処理装置105は、利用時間に基づいて乗客が当該乗客コンベア1を適正に利用しているかを判断せず、特典付与部105dは特典を付与しない。
【0049】
図7の説明に戻る。次に情報処理装置105は、特典付与部105dが付与した特典の情報を携帯端末201に送信する(S23)。特典の情報を受信した携帯端末201において、表示部201dは、受信した特典の情報(例えば、今回取得したポイント数および今までの累計ポイント数に係る情報)を表示する。
【0050】
このような第1実施形態によれば、情報処理装置105は、乗客が予め登録した乗客コンベア1を適正に利用した場合に、特典を付与する。そのため、乗客コンベア1を利用する乗客は、どの乗客コンベア1が特典を付与する乗客コンベア1であるかを予め認識して利用することが可能となる。
【0051】
(第2実施形態)
ここからは、
図9~
図11を用いて、第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同等の構成については、同じ参照符号を付し、説明を省略する。第1実施形態では、情報処理装置105が適正範囲部105c1、関連記憶部105c2、適正判断部105b、特典付与部105dを有し、情報処理装置105が、乗客が当該乗客コンベア1を適正に利用しているかを判断するようにしたが、第2実施形態では、乗客コンベア1の動作を制御する乗客コンベア制御部106を各乗客コンベア1に設けた。また、第2実施形態では、
図9に示すように、乗客コンベア1は、近距離無線通信部107、108を有する。乗客コンベア1がのぼりのエスカレーターの場合、ビーコン端末101に代わる近距離無線通信部107は、近距離無線通信機能を用いて、乗り口を通過した携帯端末201から当該携帯端末201を識別する識別情報を受信する。近距離無線通信部107は、送信部107bを有し、送信部107bは、受信した識別情報をアクセスポイント103経由で乗客コンベア制御部106に送信する。ビーコン端末102に代わる近距離無線通信部108は、近距離無線通信機能を用いて、降り口を通過した携帯端末201から当該携帯端末201を識別する識別情報を受信する。近距離無線通信部108は、送信部108bを有し、送信部108bは、受信した識別情報をアクセスポイント104経由で乗客コンベア制御部106に送信する。
【0052】
図9および
図10に示すように、乗客コンベア制御部106は、アクセスポイント104(および103)と接続される。また、乗客コンベア制御部106は、情報処理装置105と接続される。乗客コンベア制御部106は、受信部106a、計算部106b、適正判断部106c、送信部106dを有する。また、乗客コンベア制御部106は、記憶部106eを有する。具体的には、乗客コンベア制御部106は、いずれも図示しないCPU、ROM、RAM等から成る制御部(図示せず)を有し、制御部が記憶部106eに記憶されたプログラムに従うことで、受信部106a、計算部106b、適正判断部106c、送信部106dとして機能する。
【0053】
受信部106aは、近距離無線通信部107から送信された識別情報を受信し、近距離無線通信部108から送信された識別情報を受信する。計算部106bは、近距離無線通信部107が識別情報を受信した時刻と、近距離無線通信部108が識別情報を受信した時刻に基づいて、乗客が乗客コンベア1を利用している利用時間ΔTを算出する。
【0054】
適正判断部106cは、携帯端末201を携帯した乗客によるコンベア情報が関連づけられた乗客コンベア1の1回の利用時間に基づいて、乗客が当該乗客コンベア1を適正に利用しているかを判断する。具体的には、適正判断部106cは、携帯端末201が乗客コンベア1の乗り口と降り口を通過した時刻から算出された利用時間ΔTに基づいて、乗客が当該乗客コンベア1を適正に利用しているかを判断する。さらに具体的には、適正判断部106cは、乗客コンベア1の乗り口と降り口を通過した時刻を受信して計算部106bが算出した利用時間ΔTに基づいて、利用時間ΔTが適正範囲内に含まれるか否か判断する。適正判断部106cは、利用時間ΔTが適正範囲内に含まれれば、その乗客が踏段3上に停止していた(踏段3上を移動していない)と推測できるため、その乗客が乗客コンベア1を適正に利用していたと判断する。適正判断部106cは、利用時間ΔTが適正範囲内に含まれていなければ、その乗客が複数の踏段3に渡って歩行していたと推測できるため、その乗客が乗客コンベア1を適正に利用していないと判断する。
【0055】
送信部106dは、適正判断部106cが適正な利用であると判断した場合に、受信した識別情報と当該乗客コンベア1を特定するコンベア情報とを関連付けて、情報処理装置105に送信する。
【0056】
情報処理装置105の特典付与部105dは、適正判断部106cが適正に利用していると判断した際に、乗客が携帯している携帯端末201を識別する識別情報が、関連記憶部において、乗客が適正に利用した乗客コンベア1を特定するコンベア情報と関連付けられている場合に、乗客が携帯している前記携帯端末に対して、特典を付与する。具体的には、特典付与部105dは、送信部106dから受信した識別情報およびコンベア情報に基づいて関連記憶部105c2を検索し、当該識別情報に当該コンベア情報が関連づけられているかを判断し、当該識別情報に当該コンベア情報が関連づけられているかを判断した場合には、利用者管理部105c3に記憶されている、当該識別情報に対応した特典情報部105c34に記憶されている特典に新たな特典を加算する。
【0057】
ここからは、乗客コンベアシステム100のシーケンスについて説明する。
図11は、乗客コンベアシステム100のシーケンスを示すチャートである。
図11に示すように、乗客コンベア1(近距離無線通信部107)は、乗り口を通過した携帯端末201から、当該携帯端末201の識別情報を受信する(S41)。送信部107bは、当該識別情報を乗客コンベア制御部106に送信する(S42)。乗客コンベア制御部106の受信部106aは、送信部107bが送信した、当該携帯端末201の識別情報を受信する(S31)。乗客コンベア制御部106は、識別情報を受信した時刻を記憶する(S32)。また、近距離無線通信部108は、降り口を通過した携帯端末201から、当該携帯端末201の識別情報を受信する(S43)。送信部108bは、当該識別情報を乗客コンベア制御部106に送信する(S44)。乗客コンベア制御部106の受信部106aは、送信部108bが送信した、当該携帯端末201の識別情報を受信する(S33)。乗客コンベア制御部106は、識別情報を受信した時刻を記憶する(S34)。
【0058】
計算部106bは、S32で記憶した時刻とS34で受信した時刻とに基づいて、乗客が乗客コンベア1を利用した利用時間ΔTを算出する(S35)。そして適正判断部106cは、算出した利用時間ΔTと適正範囲部106e1に記憶されている適正時間とに基づいて、当該乗客が乗客コンベア1を適正に利用したかを判断する(S35)。適正判断部106cが当該乗客が乗客コンベア1を適正に利用したと判断した場合には、乗客コンベア制御部106は、当該識別情報とコンベア情報を情報処理装置105に送信する(S36)。
【0059】
情報処理装置105の特典付与部105dは、受信した識別情報とコンベア情報に基づいて関連記憶部105c2を検索し、受信したコンベア情報が識別情報に関連付けられているかを判断する(S22)。そして、特典付与部105dは、受信したコンベア情報が識別情報に関連付けられていると判断した場合には、特典情報部105c34に特典を加算する(S22)。すなわち、第2実施形態における情報処理装置105は、S22の処理において、第1実施形態におけるS2の判断は行わない。
【0060】
このような第2実施形態によれば、情報処理装置105は、乗客が予め登録した乗客コンベア1を適正に利用した場合に、特典を付与する。そのため、乗客コンベア1を利用する乗客は、どの乗客コンベア1が特典を付与する乗客コンベア1であるかを予め認識して利用することが可能となる。
【0061】
(第3実施形態)
ここからは第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態において、第1実施形態と同等の構成については、同じ参照符号を付し、説明を省略する。第1実施形態では、情報処理装置105が適正範囲部105c1、関連記憶部105c2、適正判断部105b、特典付与部105dを有し、情報処理装置105が、乗客が当該乗客コンベア1を適正に利用しているかを判断するようにしたが、第3実施形態では、専用アプリケーション(プログラム)をインストールした携帯端末201が、乗客が当該乗客コンベア1を適正に利用しているかを判断するようにしたものである。
【0062】
図12は、第3実施形態の携帯端末201の構成を含むブロック図である。
図12は、第1実施形態の
図4に対応した図である。第3実施形態の携帯端末201は、第1実施形態の携帯端末201の構成に加え、適正判断部201e、特典生成部201g、記憶部201fを備える。具体的には、携帯端末201は、いずれも図示しないCPU、ROM、RAM等から成る制御部(図示せず)を有し、制御部がインストールされた専用アプリケーションに従うことで、受信部201a、計算部201b、送信部201c、表示部201d、適正判断部201e、特典生成部201gとして機能する。また、携帯端末201は、専用アプリケーションがインストールされることで、記憶部201fを構成する。
【0063】
専用アプリケーションは、携帯端末201にインストールされることで、携帯端末201を、受信部201a、計算部201b、送信部201c、表示部201d、適正判断部201e、特典生成部201gとして機能させ、記憶部201fを構成する。なお、記憶部201fは、適正範囲部201f1と関連記憶部201f2を有する。適正範囲部201f1は、適正範囲部105c1が記憶している情報と同じ情報である、現在の乗客コンベア1の駆動状態に対応した適正範囲を記憶する。適正範囲部201f1は、適正範囲部105c1と同じ情報(現在の乗客コンベア1の駆動状態に対応した適正範囲を記憶する。)を記憶する。関連記憶部201f2は、事前に登録された一または複数の乗客コンベア1のコンベア情報を記憶する。
【0064】
適正判断部201eは、携帯端末201を携帯した乗客によるコンベア情報が関連づけられた乗客コンベア1の1回の利用時間に基づいて、乗客が当該乗客コンベア1を適正に利用しているかを判断する。具体的には、適正判断部201eは、携帯端末201が乗客コンベア1の乗り口と降り口を通過した時刻から算出された利用時間ΔTとコンベア情報に基づいて、乗客が当該乗客コンベア1を適正に利用しているかを判断する。さらに具体的には、まず携帯端末201は、関連記憶部201f2を参照し、受信したコンベア情報が関連記憶部201f2に登録(記憶)されているかを判断する。コンベア情報が登録されていると判断した場合に、次に適正判断部201eは、記憶部201fの適正範囲部201f1を参照して適正範囲を取得し、利用時間ΔTが適正範囲内に含まれるか否か判断する。適正判断部201eは、利用時間ΔTが適正範囲内に含まれれば、その乗客が踏段3上に停止していた(踏段3上を移動していない)と推測できるため、その乗客が乗客コンベア1を適正に利用していたと判断する。適正判断部201eは、利用時間ΔTが適正範囲内に含まれていなければ、その乗客が複数の踏段3に渡って歩行していたと推測できるため、その乗客が乗客コンベア1を適正に利用していないと判断する。
【0065】
特典生成部201gは、受信したコンベア情報が関連記憶部201f2に登録されており、かつ適正判断部201eが適正な利用であると判断した場合に、当該適正な利用に対する特典(例えばポイント)を生成する。送信部201cは、特典生成部201gが生成した特典および当該携帯端末201を識別する識別情報をアクセスポイント104(または103)経由で情報処理装置105に送信する。
【0066】
情報処理装置105は、利用者管理部105c3を有する。情報処理装置105の特典付与部105dは、受信した特典を、識別情報で識別される特典情報部105c34に加算して累積的に記憶する。
【0067】
ここからは、第3実施形態に係る情報処理装置105、携帯端末201、乗客コンベア1の相互間のシーケンスについて説明する。
図13は、携帯端末201を含む乗客コンベアシステム100のシーケンスを示すチャートである。
図13は、第1実施形態の
図7に対応した図であり、特段の説明がない限り
図7と同等の構成については
図7と同じ符号を付し、説明を省略する。
図13に示すように、まず、乗客は、乗客コンベアシステム100を運営する企業のホームページにアクセスし、利用する乗客コンベア1を地図上で指定して関連記憶部201f2に事前登録する(S18)。その後、携帯端末201は、S12~S16の処理を実行し、さらに、乗客コンベア1が適正に利用されたかの判断および乗客コンベア1が適正に利用されたと判断した場合に、特典を生成する(S19)。そして携帯端末201は、生成した特典を情報処理装置105に送信する(S20)。
【0068】
情報処理装置105は、携帯端末201から受信した特典を特典情報部105c34に累積的に記憶する(S24)。
【0069】
このような第3実施形態によれば、専用アプリケーションをインストールした携帯端末201は、乗客が予め登録した乗客コンベア1を適正に利用した場合に、特典を生成する。そのため、乗客コンベア1を利用する乗客は、どの乗客コンベア1が特典を生成する乗客コンベア1であるかを予め認識して利用することが可能となる。
【0070】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0071】
例えば、第3実施形態では、携帯端末201が特典を発生させ、情報処理装置105が特典を付与するようにした。しかしながらこれに限らず、例えば、携帯端末201が発生した特典を自らに付与するようにしてもよい(すなわち、携帯端末201が特典付与部105dを有していてもよい)。この場合、利用者管理部105c3は、各携帯端末201が有する。
【0072】
また、第3実施形態において、携帯端末201は、必ずしも特典生成部201gを備えていなくてもよい。例えば、適正判断部201eが乗客コンベア1の適正利用を判断し、コンベア情報が識別情報と関連付けられている場合に、携帯端末201は、乗客コンベア1の適正利用の情報を識別情報とともに情報処理装置105に送信する適正情報送信部を備え、適正情報送信部が送信した乗客コンベア1の適正利用の情報を識別情報を受信した情報処理装置105が特典を生成して、当該識別情報に対応づけて付与するようにしてもよい。
【0073】
また、実施形態では、ポイントを特典の一例として説明した。しかしながらこれに限らず、例えば、クーポンの配布やサービスの提供を特典としてもよい。
【0074】
なお、実施形態の携帯端末201で実行可能なプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0075】
また、実施形態の携帯端末201で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、実施形態の携帯端末201で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0076】
また、実施形態の携帯端末201で実行されるプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 乗客コンベア
3 踏段
15 上階側乗降口
16 下階側乗降口
100 乗客コンベアシステム
101 ビーコン端末
102 ビーコン端末
105 情報処理装置
105a 受信部
105b 適正判断部
105c 記憶部
105c1 適正範囲部
105c2 関連記憶部
105c21 識別情報部
105c22 コンベア情報部
105c31 識別情報部
105c33 携帯アドレス部
105c34 特典情報部
105c3 利用者管理部
105d 特典付与部
105e 送信部
106 乗客コンベア制御部
106a 受信部
106b 計算部
106c 適正判断部
106d 送信部
106e 記憶部
106e1 適正範囲部
107 近距離無線通信部
108 近距離無線通信部
201 携帯端末
201a 受信部
201b 計算部
201c 送信部
201d 表示部
201e 適正判断部
201f 記憶部
201f1 適正範囲部
201f2 関連記憶部
201g 特典生成部
201h ポイント記憶部
301 管理サーバ
301a ユーザポイント記憶部
ΔT 利用時間