(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】流体回路用、特に閉回路、とりわけランキンサイクル型閉回路用のターボポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 13/04 20060101AFI20220530BHJP
F04D 1/02 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
F04D13/04
F04D1/02
(21)【出願番号】P 2019548620
(86)(22)【出願日】2018-02-12
(86)【国際出願番号】 EP2018053453
(87)【国際公開番号】W WO2018162175
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2020-12-15
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(73)【特許権者】
【識別番号】518120496
【氏名又は名称】エノジア
【氏名又は名称原語表記】ENOGIA
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】パニエ、 フィリップ
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07828511(US,B1)
【文献】独国特許発明第00466165(DE,C2)
【文献】米国特許第04230564(US,A)
【文献】特開2011-106302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 13/04
F04D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ハウジング(12)を有し、前記固定ハウジング(12)は、ポンプ羽根(28)を有するポンプロータ(14)を備えるポンプ(16)と、タービン羽根(44)を支持するタービンロータ(18)を収容するタービン(20)と、を備えるターボポンプ(10)において、
前記タービンロータ(18)は前記
ポンプロータ
(14)の軸と垂直な一つの平面内に、前記ポンプ(16)の前記
ポンプロータ
(14)の周りに同軸配置され、
前記ポンプロータ(14)は半径方向に延びる複数の
前記ポンプ羽根(28)を有し、前記半径方向に延びる複数の
前記ポンプ羽根(28)はそれらの半径方向先端部で、外周シュラウド(36)を支持し、
前記
外周シュラウド(36)の各端部に
、溝(64,66)を貫通する薄片(62)が形成さ
れ、一方の溝(66)は前記タービン(20)の入口(54)と前記ポンプ(16)の出口(42)との間に配置され、他方の溝(64)は前記ポンプ(16)の入口(40)と前記タービン(20)の出口(56)との間に位置していることを特徴とするターボポンプ。
【請求項2】
前記外周シュラウド(36)は、前記タービンロータ(18)の半径方向に延びる前記
タービン羽根(44)を支持し、前記
タービン羽根(44)は前記ポンプロータ(
14)の前記
ポンプ羽根(28)の上方に、前記
ポンプ羽根(28)と同軸で配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のターボポンプ(10)。
【請求項3】
前記タービンロータ(18)の
前記タービン羽根(44)の半径方向先端部が、前記
外周シュラウド(36)と実質的に同軸の閉じた外周帯状部(52)を支持することを特徴とする、請求項1または2に記載のターボポンプ(10)。
【請求項4】
前記
外周シュラウド(36)が、前記固定ハウジングとともに、シール手段(58,60)を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のターボポンプ(10)。
【請求項5】
前記シール手段が、前記
外周シュラウドの各端部に位置するラビリンスシール(58,60)の組を有することを特徴とする、請求項4に記載のターボポンプ(10)。
【請求項6】
前記ラビリンスシール(58,60)の組は、前記
外周シュラウド(36)の各端部に形成され
て前記溝(64,66)を貫通する
前記薄片(62)を備えることを特徴とする、請求項5に記載のターボポンプ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のターボポンプを適用した閉回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体回路、特に閉回路、とりわけランキンサイクル型閉回路で用いられるターボポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ターボポンプはタービンとポンプ(またはコンプレッサ)を有する機械であり、タービンによって回収されたエネルギーの一部がポンプ(またはコンプレッサ)を駆動する。これを行うため、タービンとポンプ(またはコンプレッサ)は一つの回転シャフトの両端に搭載される。この機械は、通常回転シャフトの中央部に位置する複数の潤滑軸受を備えている。タービンとポンプ(またはコンプレッサ)は、この回転シャフトの両端に取り付けられている。このことは、比較的長いシャフトを必要とするとともに、排出水から潤滑装置を分離することを可能にするシール装置を必要とする。以降の説明を簡単にするため、「ターボポンプ」という用語は、タービンとポンプを有する機械だけでなく、タービンとコンプレッサを有する機械にも用いられ、「ポンプ」という用語は、ポンプはもちろんコンプレッサも含む。
【0003】
米国特許第7044718号明細書に詳しく記載されているように、シャフトの長さを短縮すること、従って、ターボポンプの軸方向寸法を短縮することは公知である。同文献においては、タービンとポンプは一方が他方の内部に入り込み重なり合うように配置され、それによって、タービンのダクトとポンプのダクトもまた、回転シャフトの周りで重なり合う。この構成により、機械の軸方向長さを相当程度短縮することが可能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、回転シャフトの長さを短縮して、ターボポンプの寸法をさらに低減することを提案するものである。これによって、軸受の数を低減し、潤滑回路を簡素化することも可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のため、本発明は、固定ハウジングを有し、固定ハウジングは、ポンプ羽根を有するポンプロータを備えるポンプと、タービン羽根を支持するタービンロータを収容するタービンと、を備えるターボポンプにおいて、タービンロータはポンプロータの軸と垂直な一つの平面内に、ポンプのポンプロータの周りに同軸配置され、ポンプロータは半径方向に延びる複数のポンプ羽根を有し、半径方向に延びる複数のポンプ羽根はそれらの半径方向先端部で、外周シュラウドを支持し、外周シュラウドの各端部に、溝を貫通する薄片が形成され、一方の溝はタービンの入口とポンプの出口との間に配置され、他方の溝はポンプの入口とタービンの出口との間に位置していることを特徴とするターボポンプに関する。
【0006】
外周シュラウドは、タービンロータの半径方向に延びるタービン羽根を支持し、タービン羽根はポンプロータのポンプ羽根の上方に、ポンプ羽根と同軸で配置されていてもよい。
【0007】
タービンロータのタービン羽根の半径方向先端部が、外周シュラウドと実質的に同軸の閉じた外周帯状部を支持していてもよい。
【0008】
外周シュラウドが、固定ハウジングとともに、シール手段を有していてもよい。
【0009】
シール手段が、外周シュラウドの各端部に位置するラビリンスシールの組を有していてもよい。
【0010】
ラビリンスシールの組は、外周シュラウドの各端部に形成されて溝を貫通する薄片を備えていてもよい。
【0011】
本発明の他の特徴及び利点は、単に非限定的な説明として与えられる以下の説明と、本発明によるターボポンプとその関連回路を示す唯一の添付された図面と、を読むことで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
この図において、ターボポンプは、ポンプの周囲に位置するタービンを備えるという特徴を有する。タービンとポンプ、従ってタービンロータとポンプロータは、機械の回転シャフトと垂直な一つの平面に位置するため同一平面内にあり、同一の回転軸の周りを回転するため同軸である。特に、図における正規直交座標系(X,Y,Z)のX軸は同時に、タービンロータの軸でもあり、ポンプロータの軸でもある。タービンロータとポンプロータは、正規直交座標系(X,Y,Z)のX軸と直交する、YZ面と平行な一つの同一平面内にある。
【0014】
ターボポンプ10は、ポンプ16(またはポンプロータ)の回転部14とタービン20(またはタービンロータ)の回転部18とを収容する固定ハウジング12を有する。
【0015】
ポンプロータは円筒状のシャフト22を有し、シャフト22の一端は、凹状の周縁壁26を備えた実質的に円錐台形状(頭部を切り取った円錐形状)のハブ24に接続されている。この壁は、壁の外周に沿って壁から等間隔で放射状に突き出す多数の羽根28を支持している。羽根は、ハブ24の自由端から離れた前縁30と、実質的に円錐台形状(頭部を切り取った円錐形状)のハブ24の基部から離れた後縁32と、凹状壁26と実質的に等しく湾曲した半径方向外側先端部34と、を有する。図に最もよく示されているように、特に流れの損失を低減するために、湾曲した外周シュラウド36が、羽根の半径方向先端部34の全体に渡って、焼き嵌めで取り付けられているのが有利である。
【0016】
このポンプロータは固定ハウジング12に設置されている。固定ハウジング12は、ポンプロータのシャフト22を受け入れるアキシャル軸受38と、軸受38と組み合わされたシール装置39と、羽根の上流に位置し、軸受と同軸であり、ハブ24と対向し、軸方向に延びる流体入口40と、羽根の下流側部分と連通する、径方向に延びる流体出口42と、を有する。出口42は、出口42から供給される流体が機器に向かって案内されるように、渦巻き形状であることが有利である。このようにポンプは、シャフト22と、凹状壁26を備えたハブ24と、羽根28と、シュラウド36と、軸受38と流体入口40と流体出口42とを含む固定ハウジングの一部と、を有する。
【0017】
シュラウド36は、ポンプの羽根28を支持する面の反対面で、シュラウドの外周から放射状に突き出し、シュラウドの外周に一定間隔で配置された多数の羽根44を支持している。これらの羽根はタービンの羽根を構成し、ポンプの羽根と実質的に同軸であり、且つポンプの羽根と実質的に同じ一つの径方向平面にある。タービンの羽根は、前縁46と、後縁48と、シュラウドと実質的に等しい湾曲を持つ半径方向外側先端部50と、を有する。
【0018】
ポンプの羽根のシュラウドと同様、湾曲し閉じた外周帯状部52を、ポンプの羽根のシュラウドと同軸で、タービン羽根44の半径方向外側先端部50の全体に渡って、好ましくは焼き嵌めで配置することができる。タービンロータはこのようにして、シュラウド36と、タービン羽根と、場合によってはタービン羽根の帯状部52と、によって形成され、ポンプのロータの周囲に搭載され、このようにしてポンプロータの一部を形成する。
【0019】
このタービンロータは固定ハウジング12の内部に配置され、固定ハウジング12は、前縁46に面し好ましくは渦巻き形状である流体入口54と、タービン羽根44と、タービン羽根の後縁48に面する流体出口56と、を有する。
【0020】
この構成は、タービンの羽根とシュラウドとを介し、コンプレッサがタービンで直接駆動されることを可能にする。ポンプのロータの周囲に配置され大きな径を持つタービンの羽根に流体から掛かる力は、コンプレッサを駆動するのに必要な仕事よりも大きな仕事をなすことに寄与する。一実施形態によれば、タービンは、電源が無くても、特に電気モータが無くても動作することができる。つまり、タービンは流体だけで駆動される。同様に、本実施形態では、ポンプを電源で駆動しないことが可能となる。つまり、ポンプは電気モータを必要とせず、タービンだけで駆動される。従って、例えば交流発電機/発電装置などの機械的または電気的装置を駆動するための他の仕事は機械のシャフトから得られる。そのため、システムは動作のために電源を使用せず、むしろ多くのエネルギーを電気エネルギーとして回収することが可能となる。
【0021】
シュラウドとハウジングとの間のシールを確保することも必要である。これは、シュラウドの自由端に配置され、タービンをポンプから分離するシール手段を用いることで行われる。これを行うため、シール手段はラビリンスシール58,60の組とすることができる。ラビリンスシール58,60の組は、一例として図示されているように、シュラウドの各端部に形成され溝64,66を貫通する薄片62を備えている。一方の溝66はタービンの入口54とポンプの出口42との間に配置され、他方の溝64はポンプの入口40とタービンの出口56との間に位置している。ポンプ42の出口とタービン54の入口の圧力(高圧側)が等しくなるようにし、且つポンプ40の入口とタービン56の出口の圧力(低圧側)が等しくなるようにすることでシール性が改善される。
【0022】
上述のターボポンプは、石油、航空、自動車などの多くの分野で利用することができる。このターボポンプは閉回路を含む用途に特に適しており、唯一の図に示されているように、ランキンサイクル型の回路68に特に適している。この閉ランキンサイクル回路は、好ましくはORC(有機ランキンサイクル)型であり、有機物作動流体、または例えばブタン、エタノール、ハイドロフルオロカーボンなどの有機物流体の混合物を使用する。もちろん、閉回路は、例えばアンモニア、水、二酸化炭素などの流体で作動してもよい。
【0023】
そして、ポンプの出口42は熱交換器70、いわゆる蒸発器と接続される。ポンプによって圧縮された作動流体は蒸発器を通り、それによって、作動流体が圧縮蒸気として蒸発器から排出される。蒸発器にはまた、液体または気体状の熱源72が通され、熱源72は作動流体に放熱する。熱源は流体を蒸発させることができ、例えば、燃焼機関、産業プロセス、溶鉱炉から排出される冷却材、燃焼に由来する高温ガス(産業プロセスの煤煙、ボイラからの煤煙、タービンから排出される排気ガスなど)、太陽熱吸収装置から生じる熱流に由来する高温ガスなど、様々な熱源を用いることができる。蒸発器の出口はタービン20の入口54と接続され、それによって、高圧の圧縮蒸気である作動流体がタービン20に流入し、タービンの出口56から低圧の膨張蒸気として排出されることが可能となる。タービンの出口56は冷却熱交換器74または復水器と接続され、冷却熱交換器74は、流入した低圧の膨張蒸気を低圧の液体に変換する。復水器は、通常は周囲の大気または冷却水の流れである冷却源が流通し、膨張した蒸気を冷却し、凝縮させ液化させる。もちろん、回路の様々な要素は、それらを連続的に接続する流体循環管路によって互いに接続されている。