(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】エアセルの内圧制御方法
(51)【国際特許分類】
A47C 27/08 20060101AFI20220530BHJP
A47C 27/10 20060101ALI20220530BHJP
A61G 7/057 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
A47C27/08 A
A47C27/10 A
A61G7/057
(21)【出願番号】P 2020117259
(22)【出願日】2020-07-07
(62)【分割の表示】P 2019070176の分割
【原出願日】2015-09-30
【審査請求日】2020-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390039985
【氏名又は名称】パラマウントベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】大野 健太
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02068133(EP,A1)
【文献】特開平02-275320(JP,A)
【文献】特開2013-116189(JP,A)
【文献】実開平04-080522(JP,U)
【文献】特開平05-068629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/08
A47C 27/10
A61G 7/057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数備えられたエアセルへの給排気を停止させ、使用
者を前記エアセルで一旦支えた後、前記
複数のエアセルの
うちの一部
のエアセルを排気し、
前記一部のエアセルの内圧の変動を検出し、その後、
前記一部のエアセルに給気し、前記一部のエアセルの内圧を前記内圧の変動に応じ
た圧力に設定するエアセルの内圧制御方法。
【請求項2】
前記一部のエアセルの前記内圧の変動により、前記使用者の体重を推定し、
前記給気のときに、
前記一部のエアセルの内圧を前記使用者の体重に応じた内圧とすることを特徴とする請求項1に記載のエアセルの内圧制御方法。
【請求項3】
前記排気のときに、前記
一部のエアセルの状態が第1の状態から前記第1の状態とは異なる第2の状態に至るまでの状態変動時間を求め、前記状態変動時間に基づいて
前記一部のエアセルの内圧を設定することを特徴とする請求項
1または2に記載のエアセルの内圧制御方法。
【請求項4】
前記第1の状態は、前記
一部のエアセルの内圧が第1の内圧である状態であり、
前記第2の状態は、前記
一部のエアセルの内圧が前記第1の内圧よりも低い第2の内圧である状態であることを特徴とする請求項3に記載のエアセルの内圧制御方法。
【請求項5】
前記第1の内圧から前記第2の内圧に至る時間は、前記一部のエアセルに作用する荷重が重いほど長くなる請求項4に記載のエアセルの内圧制御方法。
【請求項6】
前記第1の状態は、前記
一部のエアセルの上面が第1の高さである状態であり、
前記第2の状態は、前記
一部のエアセルの上面が前記第1の高さよりも低い第2の高さである状態であることを特徴とする請求項3に記載のエアセルの内圧制御方法。
【請求項7】
前記第1の状態は、前記
一部のエアセルから排気される空気の流量が第1の流量である状態であり、
前記第2の状態は、前記
一部のエアセルから排気される空気の流量が前記第1の流量よりも小さい第2の流量である状態であることを特徴とする請求項3に記載のエアセルの内圧制御方法。
【請求項8】
前記エアセルの内圧の変動を予め求めた対応関係に照らし合わせることにより、前記使用者の体重を求めることを特徴とする請求項
2~
7のいずれか1つに記載のエアセルの内圧制御方法。
【請求項9】
複数備えられたエアセルへの給排気を停止させ、使用者を前記エアセルで一旦支えた後、前記複数のエアセルのうちの一部のエアセルを排気し、前記一部のエアセルの内圧が第1の内圧から前記第1の内圧よりも低い第2の内圧に至る間に、前記
一部のエアセルを除く
残りのエアセルのうちの少なくとも
1つのエアセルの内圧変動を求め、前記
残りのエアセルのうちの少なくとも1つの前記内圧変動に基づいて
、前記一部のエアセルの内圧を設定することを特徴とす
るエアセルの内圧制御方法。
【請求項10】
前記残りのエアセルのうちの少なくとも1つの前記内圧変動を予め求めた対応関係に照らし合わせることにより、前記使用者の体重を求めることを特徴とする請求項
9に記載のエアセルの内圧制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアセルの内圧制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に記載の構成を有するエアマット装置が知られている。エアマット装置は、エアセルを有するマット部と、エアセルへの給気及びエアセルからの排気を行う給排気部と、を備えている。
この種のエアマット装置では、一般に、給排気部による給気及び排気が停止されてかつマット部に使用者が体重をかけた使用状態におけるエアセルの内圧を、使用者の体重に応じて設定することが好ましいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年、エアマット装置の利用の拡大に伴って、エアマット装置における多様なエアセルの内圧の制御方法が求められている。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、エアセルの内圧を使用者の体重に応じて制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るエアセルの内圧制御方法は、複数備えられたエアセルへの給排気を停止させ、使用者の体重を前記エアセルで一旦支えた後、前記エアセルの一部を排気し、その後、排気した当該エアセルに給気することを特徴とし、体重に応じたエアセルの内圧を設定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エアセルの内圧を使用者の体重に応じて制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態に係るエアマット装 置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示すエアマット装置のマット部上に使用者が横臥した使用状態を示す 側面図である。
【
図3】
図2に示す使用状態のエアマット装置に対して、マット部を構成する第1グ ループのエアセルから排気した状態を示す側面図である。
【
図4】
図2に示す使用状態のエアマット装置に対して、マット部を構成する第2グ ループのエアセルから排気した状態を示す側面図である。
【
図5】
図2に示す使用状態のエアマット装置に対して、マット部を構成する第3グ ループのエアセルから排気した状態を示す側面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るエアマット装置におけるエアセルの内圧設定方 法についてのフローチャートである。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るエアマット装置におけるエアセルの内圧設定方 法についてのフローチャートである。
【
図8】本発明の第3実施形態に係るエアマット装置におけるエアセルの内圧設定方 法についてのフローチャートである。
【
図9】本発明の作用効果を検証する第1検証試験の結果を示すグラフであって、エ アセルに作用する荷重と排気時間との関係とを示すグラフである。
【
図10】本発明の作用効果を検証する第2検証試験の結果を示すグラフであって、 エアセルに作用する荷重と排気時間との関係とを示すグラフである。
【
図11】本発明の作用効果を検証する第3検証試験の結果を示すグラフであって、 エアセルに作用する荷重と給気時間との関係とを示すグラフである。
【
図12】本発明の作用効果を検証する第4検証試験の結果を示すグラフであって、 エアセルに作用する荷重と給気時間との関係とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の第1実施形態に係るエアマット装置10を説明する。
エアマット装置10としては、使用者Pが横臥するベッド装置や使用者Pが着座するクッション装置が挙げられ、本実施形態では、エアマット装置10の一例として、ベッド装置を採用している。ベッド装置としては、背上げ又は背下げ動作が可能な背上げ機能を有するベッド装置や、背上げ機能を有しないベッド装置などがある。この種のベッド装置には、背上げ又は背下げ動作を電動で行うベッド装置(いわゆる電動ベッド)や、電力を使用せずに手動で行うベッド装置がある。
【0010】
図1に示すように、エアマット装置10は、マット部11(マットレス)と、給排気部12と、内圧測定部(検出手段)13と、制御部14と、を備えている。
マット部11は、複数のエアセル15を有していて、これらエアセル15の内部に空気を充填することにより、マット部11上に横臥する使用者Pの荷重を支える。エアセル15の内圧は、マット部11の硬さに対応しており、エアセル15の内圧を使用者Pの体重に応じて設定することで、マット部11の硬さを使用者Pにとって最適な硬さにすることができる。
【0011】
体重に応じて最適な内圧に設定されたエアセル15を有するマット部11では、使用者Pの体圧分散を効果的に図り使用者Pの体重をマット部11上に均一に分散させ、例えば使用者Pの身体に対して局所的に大きな圧力が負荷されたり、使用者Pが異物感等の不快感を覚えたりしないようにすることが可能である。このようなエアセル15の内圧は、例えば実験等により経験値として求められる。なお、マット部11の硬さを、使用者Pの体重によらずに使用者Pが直接、設定する従来のエアマット装置では、使用者Pが不適切な硬さを設定してしまい、十分な体圧分散が得られないおそれがある。
【0012】
エアセル15は、複数備えられている。エアセル15は、マット部11の幅方向に延びる棒状のセルであり、図示の例では、複数個のエアセル15が、マット部11の長手方向に並置されることによりマット部11を構成している。エアセル15には、例えば塩ビフィルムまたはウレタンフィルムの溶着により袋状に形成された構成などを採用することが可能である。互いに隣接して配置されたエアセル15同士は、互いに固定されていても固定されていなくてもよい。エアセル15は、複数のエアセル15を一体に覆う図示しないカバーに、ボタンや紐などを介して固定すること等もできる。
【0013】
複数のエアセル15は、複数のグループG1~G3に区分けされている。すなわち、複数のエアセル15は、第1グループG1から第3グループG3の3つのグループG1~G3に区分けされていて、図示の例では、同一グループに属するエアセル15が、マット部11の長手方向に沿って2つおきに配置されている。つまり、マット部11の長手方向に沿って見た場合に、第1グループG1に属するエアセル15、続いて第2グループG2に属するエアセル15、さらに続いて第3グループG3に属するエアセル15、の並び順を繰り返すように、各エアセル15が配列されている。
同一グループに属するエアセル15の内部は、連通路16を介して互いに連通されていて、同一グループに属するエアセル15では、互いの内圧が同期して変動する。なお連通路16には、例えば塩化ビニール等の樹脂製のエアチューブを好適に使用することができる。
【0014】
このように複数のエアセル15を複数のグループG1~G3に区分けすることで、各グループG1~G3のエアセル15を一定周期毎に交互に膨張又は収縮(交互膨縮)させることができる。これにより、使用者Pを支持するエアセル15の選択を、一定周期毎に切り替えることができる。その結果、例えば、マット部11からの反発力が使用者Pの身体の同一部分に長時間負荷され続けるのを防いで、使用者Pの身体の特定部分に長時間同一の圧力が負荷されて褥瘡(床ずれ)が発生することを防止したり、使用者Pに対するマッサージ効果を得たりすること等ができる。
【0015】
給排気部12は、エアセル15への給気及びエアセル15からの排気を行う。給排気部12は、エアセル15への給気を行うポンプ17と、エアセル15からの排気を行う排気
弁18と、エアセル15とポンプ17及び排気弁18とを各別に接続する接続路19と、接続路19を開閉する複数の開閉弁20と、を備えている。
【0016】
接続路19は、エアセル15のグループG1~G3に対応して複数(図示の例では3つ)設けられた分岐路21と、分岐路21が共通して接続される共通路22と、を備えている。各分岐路21は、それぞれ1つのエアセル15に直接、接続されていて、このエアセル15を介して、このエアセル15が属するグループG1~G3の他のエアセル15に間接的に接続されている。共通路22は、複数の分岐路21とポンプ17及び排気弁18との間を各別に接続している。
【0017】
開閉弁20は、分岐路21に対応して複数(図示の例では3つ)設けられていて、自らが設けられている分岐路21を開閉する。
以下では、3つの分岐路21のうち、エアセル15の第1グループG1に対応する分岐路21を第1分岐路21aとし、第2グループG2に対応する分岐路21を第2分岐路21bとし、第3グループG3に対応する分岐路21を第3分岐路21cとする。また、3つの開閉弁20のうち、第1分岐路21aに対応する開閉弁20を第1開閉弁20aとし、第2分岐路21bに対応する開閉弁20を第2開閉弁20bとし、第3分岐路21cに対応する開閉弁20を第3開閉弁20cとする。
【0018】
このような給排気部12によれば、例えば第1グループG1のエアセル15に給気を行う場合には、第2開閉弁20b、第3開閉弁20c及び排気弁18をいずれも閉じた状態で、第1開閉弁20aを開放し、ポンプ17から共通路22及び第1分岐路21aを通してエアセル15に給気する。第1グループG1のエアセル15から排気を行う場合には、第2開閉弁20b及び第3開閉弁20cを閉じた状態で、第1開閉弁20a及び排気弁18を開放し、エアセル15内の空気を、第1分岐路21a及び共通路22を通して排気弁18から排気する。第2グループG2のエアセル15、第3グループG3のエアセル15についても同様に給排気することができる。
なお、給排気部12における空気の流路径(接続路19の流路径)は、例えば直径2mm程度となっている。
【0019】
内圧測定部13は、エアセル15の内圧を測定し、エアセル15の状態を検出する。内圧測定部13は、全てのエアセル15に共通して1つ設けられている。本実施形態では、内圧測定部13は、接続路19を通してエアセル15の内圧をグループG1~G3毎に測定する。例えば、内圧測定部13が第1グループG1のエアセル15の内圧を測定するときには、第2開閉弁20b、第3開閉弁20c及び排気弁18をいずれも閉じた状態で、第1開閉弁20aのみを開放し、エアセル15の内圧を測定する。なお、内圧測定部13は、例えばエアセル15のグループG1~G3に対応して複数設けられていてもよく、この場合、内圧測定部13を、複数の分岐路21に1つずつ設けること等が可能である。ただし、内圧測定部13の個数を単一とした場合には、複数とした場合に比べて圧力センサ間のばらつきを生じることが無く、またキャリブレーション作業も短時間に行えるため、より好ましい。
制御部14は、内圧測定部13からのエアセル15の内圧(検出手段の検出結果)の取得及び給排気部12の制御を行う。制御部14は、給排気部12のうち、ポンプ17、排気弁18及び開閉弁20の制御を行う。
【0020】
次に、前記エアマット装置10におけるエアセル15の内圧設定方法(内圧制御方法)について説明する(
図6参照)。
【0021】
エアマット装置10は、図示しない電源を入れることで起動される。前記電源を入れた後、マット部11上に使用者Pが横臥する(体重をかける)前の初期状態において、制御部14は、エアセル15の内圧を比較的高圧(例えば、4~5kPa)に制御する。これにより、例えば、このエアマット装置10の最大使用体重の使用者Pがマット部11に乗った(横臥した)ときであっても、使用者Pの底付きを抑えることができる。
図2に示すように、使用者Pがマット部11に横臥して体重をかけた後、制御部14は、エアセル15を、グループG1~G3毎に交互膨縮させる。制御部14は、各エアセル15から排気する際、複数のグループG1~G3のうちの少なくとも一つを加圧状態に残したまま、その他を排気し、その後、排気したグループG1~G3に給気する。
【0022】
本実施形態では、制御部14は、まず
図3に示すように、第2グループG2、第3グループG3のエアセル15を排気せずに、第1グループG1のエアセル15のみを排気し、その後、第1グループG1のエアセル15に給気する。次いで、制御部14は、
図4に示すように、第1グループG1、第3グループG3のエアセル15を排気せずに、第2グループG2のエアセル15のみを排気し、その後、第2グループG2のエアセル15に給気する。そして、制御部14は、
図5に示すように、第1グループG1、第2グループG2のエアセル15を排気せずに、第3グループG3のエアセル15のみを排気し、その後、第3グループG3のエアセル15に給気する。
【0023】
なお、
図3から
図5では、エアセル15が排気したか否かをわかり易く示すため、排気したエアセル15が、使用者Pから完全に離れた状態を示している。しかしながら実際は、エアセル15が排気した状態であっても、例えば排気していないエアセル15が変形して使用者Pが沈み込む等して、排気したエアセル15に使用者Pの身体が接触して使用者Pからの荷重が加えられた状態が維持される。
各グループG1~G3のエアセル15の給排気は、例えば5分ずつ程度で実施することが可能であり、この場合、エアセル15全体の給排気を、15分程度で実施することができる。
【0024】
ここで、このエアマット装置10では、マット部11に使用者Pが体重をかけた状態で、制御部14が、給排気部12に排気を行わせることで、エアセル15を減圧させながら、エアセル15の内圧が第1の内圧(第1の状態)から、同第1の内圧と異なり第1の内圧よりも低い第2の内圧(第2の状態)に至るまでの圧変動時間を求め、制御基準値として取得する。本実施形態では、制御部14は、前述のようにエアセル15をグループG1~G3毎に交互膨縮させながら、圧変動時間を求める。なお第1の内圧及び第2の内圧は、予め設定しておくことができる。
【0025】
すなわち、制御部14は、第1グループG1のエアセル15を膨縮させるときには、第1グループG1に属するエアセル15について圧変動時間を求め、第2グループG2のエアセル15を膨縮させるときには、第2グループG2に属するエアセル15について圧変動時間を求め、第3グループG3のエアセル15を膨縮させるときには、第3グループG3に属するエアセル15について圧変動時間を求める。このように、制御部14は、各エアセル15を給排気する際、給排気を行う実施グループと給排気を行わない維持グループとの組み合わせを変えて圧変動時間を複数回(図示の例では3回)求める。
【0026】
そして、給排気部12による給気及び排気が停止されてかつマット部11に使用者Pが体重をかけた使用状態に適したエアセル15の内圧を、制御部14が、圧変動時間に基づいて設定する。本実施形態では、制御部14は、複数回求めた圧変動時間に基づいて、使用状態に適した各エアセル15の内圧を設定する。制御基準値である圧変動時間、つまりエアセル15が第1の状態から第2の状態に至るまでに要した時間は、エアセル15に作用する荷重に応じて変化することから、圧変動時間を求めることで、使用者Pの体重を推定することができる。したがって、使用状態のエアセル15の内圧を圧変動時間に基づいて設定することで、使用者Pの体重に応じて設定することができる。
【0027】
制御部14が、圧変動時間に基づいて使用状態に適したエアセル15の内圧を求めるに際しては、一例として以下の手順を採用することができる。すなわち、まず制御部14は、圧変動時間を、同圧変動時間とエアセル15への負荷荷重とについて予め求めた対応関係(例えば、数式や表など)と照らし合わせて、使用者Pの体重を求める。そして、制御部14は、このようにして求めた使用者Pの体重に基づいて、使用状態に適したエアセル15の内圧を設定する。本実施形態のように、圧変動時間を複数回求めた場合には、各圧変動時間から使用者Pの体重をそれぞれ計算し、これらの計算結果の平均値や中央値、最頻値を代表値として求めて使用者Pの体重とすることができる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態に係るエアマット装置10によれば、圧変動時間を求めるに際しては、一般のエアマット装置10に用いられる給排気部12及び内圧測定部13をそのまま利用することができる。したがって、使用者Pの体重を推定するために専用のセンサを新たに設ける必要がなく、コストの増加を抑えることができる。
また、圧変動時間は、一般のエアマット装置10で通常、実施されるエアセル15の給排気、例えば、使用者Pの姿勢を意図的に変化させるために実施するエアセル15の給排気時にあわせて測定することもできる。この場合、使用者Pの体重を推定するために必要となる人間の操作や機械の動作を最小限に抑えること等もできる。
【0029】
また、このエアマット装置10では、使用者Pの体重を求めるために、使用者Pの体重を直接、測定するのではなく、エアセル15の内圧変動を測定する。したがって、使用者Pが、マット部11上において、エアセル15の内圧を同程度、変動させうる一定の範囲内に体重をかけていれば、その位置によらず、使用者Pの体重を精度良く推定することができる。
さらにこのエアマット装置10では、エアセル15の給排気時の内圧を測定して使用者Pの体重を推定する。したがって、エアセル15の内圧を測定する内圧測定部13に長時間にわたって連続して荷重がかかるのを抑えることが可能になり、内圧測定部13がキャリブレーションされたままの状態に維持し易くすることができる。
以上より、使用者の体重をエアセル15の内圧に精度良く反映させることができる。
【0030】
また、このエアマット装置10では、エアセル15の給排気時の内圧を測定して使用者Pの体重を推定するので、使用者Pが体重をかけた状態を維持したまま、使用者Pの体重を推定することができる。したがって、例えば、使用者Pの体重を推定するために、マット部11上に横臥又は着座している使用者Pが、一旦マット部11から離れて再度、マット部11上に横臥又は着座するような場合に比べて、使用者Pの負担を低減することができる上、例えば、使用者Pが介護や看護を必要とする場合には、介護者や看護者の負担も低減することができる。
さらに、使用者Pが体重をかけた状態を維持したまま、使用者Pの体重を推定するので、例えば、介護や看護が必要であり、長期間にわたって横臥又は着座した状態で居ざるを得ない使用者Pであっても、その時々の体重に応じてエアセル15の内圧を適切に調整することができる。
【0031】
また、本実施形態のように、制御部14が、制御基準値として、エアセル15が第1の内圧(第1の状態)から第2の内圧(第2の状態)に至るまでに要した時間を取得した場合には、エアセル15が状態変化を開始した後、その状態変化が完了するまでの途中の段階で、例えば、エアセル15が交互膨縮を開始した後、完了するまでの途中の段階で、使用者Pの体重を推定することができる。したがって、例えば、使用者Pの体重を推定するために要する時間を短縮すること等ができる。
【0032】
また、制御部14が、制御基準値を取得するときに、給排気部12に給排気を行わせ、エアセル15から排気させる際、複数のグループG1~G3のうちの少なくとも一つを残したまま、その他のグループG1~G3を排気し、その後、排気したグループG1~G3に給気するので、交互膨縮にあわせて制御基準値を取得することができる。これにより、使用者Pの寝心地に与える影響を抑えるとともに、使用者Pによる特別な操作や作業を極力抑えることが可能になり、利便性を向上させることができる。
また前述のように、制御部14が、少なくとも一部のグループG1~G3を残したままエアセル15を排気するので、排気しないグループG1~G3のエアセル15により使用者Pを支持することが可能になり、使用者Pの底付きを防ぐことができる。
さらに、制御部14が、複数回求めた圧変動時間に基づいて、使用状態におけるエアセル15の内圧を設定するので、例えば、外乱による誤差を小さくすること等が可能になり、使用者Pの体重を精度良く推定した上でエアセル15の内圧を設定することができる。
【0033】
(第1実施形態の変形例)
本発明は、制御部14が、エアセル15が第1の状態から第2の状態に至るまでに要した時間を制御基準値として取得し、制御基準値に応じて給排気部12を制御する他の形態に適宜変更することが可能である。
【0034】
(第1変形例)
前記第1実施形態では、マット部11に使用者Pが体重をかけた状態で、制御部14が、給排気部12に排気を行わせることで、エアセル15を減圧させながら、エアセル15の内圧が第1の内圧から第2の内圧に至るまでの圧変動時間を求めているが、本発明はこの態様のみに限られない。
マット部11に使用者Pが体重をかけた状態で、制御部14が、給排気部12に給気を行わせることで、エアセル15を加圧させながら、エアセル15の内圧が第1の内圧から、同第1の内圧と異なり第1の内圧よりも高い第2の内圧に至るまでの圧変動時間を求め、この圧変動時間に基づいて、使用状態に適したエアセル15の内圧を設定することも可能である。なおこのときのポンプ17は、継続して一定の駆動力で作動することが好ましい。
【0035】
(第2変形例)
前記第1実施形態及び前記第1変形例では、制御部14が、エアセル15の内圧が第1の内圧から第2の内圧に至るまでに要する時間を取得したが、本発明はこの態様のみに限られない。制御部14が、エアセル15が第1の状態から第2の状態に至るまでに要した時間を制御基準値として取得する形態を採用することが可能である。
例えば、エアセル15の上面(使用者が接触する面)の高さを検出する変位計を検出手段として設け、エアセル15の上面の高さが第1の高さ(第1の状態)から第2の高さ(第2の状態)に至るまでに要する時間を、制御基準値として取得することも可能である。 また、エアセル15から給排気される空気の流量(流速)を検出する流量計(流速計)を検出手段として設け、空気の流量が第1の流量(第1の状態)から第2の流量(第2の状態)に至るまでに要した時間を、制御基準値として取得することも可能である。
さらに、エアセル15にかかる負荷の大きさを検出する荷重センサを検出手段として設け、エアセル15にかかる負荷が第1の負荷から第2の負荷に至るまでに要する時間を、制御基準値として取得することも可能である。
【0036】
(第3変形例)
前記第1実施形態、前記第1変形例及び前記第2変形例では、マット部11に使用者Pが予め体重をかけた状態で、制御部14が、エアセル15を積極的に状態変化させることで制御基準値を取得したが、本発明はこの態様のみに限られない。
例えば、マット部11上に使用者Pが乗っていない状態から乗った状態に移行したときにエアセル15が状態変化することを利用して、制御部14が、制御基準値を取得することも可能である。この場合、使用者Pが乗ったときにエアセル15に作用する、使用者Pの荷重とは独立した衝撃力(位置エネルギーや速度エネルギー)による影響(ノイズ)を排除することが好ましい。この排除に際しては、例えば、状態変化が始まってから一定の時間(ノイズが乗っている時間)を計測範囲から除外する方法や、予め実験から求めたノイズが乗った場合の純粋な変化量をプログラムに記録しておき、それらを参照して推定する方法、平均化するサンプル数を十分に多く取り、ノイズを除去する方法などを採用することが考えられる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態のエアマット装置30を説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。本実施形態のエアマット装置30では、制御部14以外の構成については、
図1に示す第1実施形態に係るエアマット装置10と同様である。
【0038】
このエアマット装置30におけるエアセル15の内圧設定方法について説明する(
図7参照)。
【0039】
エアマット装置30の前記電源を入れ、使用者Pがマット部11に横臥して体重をかけた後、エアセル15に対して使用者Pの体重の少なくとも一部を預けることによって負荷をかけた状態で、制御部14は、エアセル15を、グループG1~G3毎に交互膨縮させ、エアセル15を状態変化させる。
ここで、このエアマット装置30では、マット部11に使用者Pが体重をかけた状態で、制御部14が、給排気を行う実施グループの各エアセル15における内圧が第1の内圧から、同第1の内圧と異なり第1の内圧よりも低い第2の内圧に至るまでの、給排気を行わない維持グループの各エアセル15における内圧変動(エアセル15の状態変化量)を求め、制御基準値として取得する。本実施形態では、制御部14は、前述のようにエアセル15をグループG1~G3毎に交互膨縮させながら、内圧変動を求める。
【0040】
すなわち、制御部14は、第1グループG1(実施グループ)のエアセル15を膨縮させるときには、まず、第1グループG1のエアセル15が第1の内圧であるときの、第2グループG2及び第3グループG3(維持グループ)のエアセル15の内圧を測定する。この時、制御部14は、第1開閉弁20a及び排気弁18を閉じた状態で、第2開閉弁20b及び第3開閉弁20cを開放することで、第2グループG2及び第3グループG3のエアセル15の内圧を内圧測定部13により測定することができる。次いで、第1グループG1の内圧を第2の内圧に至るまで減圧させ、この時の第2グループG2及び第3グループG3のエアセル15の内圧を測定し、維持グループの各エアセル15における内圧変動を求める。同様に、制御部14は、第2グループG2(実施グループ)のエアセル15を膨縮させるときには、第1グループG1及び第3グループG3(維持グループ)の各エアセル15における内圧変動を求め、第3グループG3(実施グループ)のエアセル15を膨縮させるときには、第1グループG1及び第2グループG2(維持グループ)の各エアセル15における内圧変動を求める。
【0041】
なお、制御部14は、第1グループG1(実施グループ)のエアセル15を膨縮させるときには、第2グループG2又は第3グループG3(維持グループ)いずれか一方の各エアセル15における内圧変動を求めることも可能である。同様に、第2グループG2(実施グループ)のエアセル15を膨縮させるときには、第1グループG1又は第3グループG3(維持グループ)いずれか一方の各エアセル15における内圧変動を求め、第3グループG3(実施グループ)のエアセル15を膨縮させるときには、第1グループG1又は第2グループG2(維持グループ)いずれか一方の各エアセル15における内圧変動を求めることも可能である。
【0042】
このように、制御部14は、各エアセル15を給排気する際、給排気を行う実施グループG1~G3と給排気を行わない維持グループG1~G3との組み合わせを変えて内圧変動を複数回(図示の例では3回)求める。
そして、使用状態におけるエアセル15の内圧を、制御部14が、内圧変動に基づいて設定する。本実施形態では、制御部14は、複数回求めた内圧変動に基づいて、使用状態における各エアセル15の内圧を設定する。制御基準値である内圧変動、つまりエアセル15の状態変化量は、エアセル15に作用する荷重に応じて変化することから、内圧変動を求めることで、使用者Pの体重を推定することができる。したがって、使用状態のエアセル15の内圧を内圧変動に基づいて設定することで、使用者Pの体重に応じて設定することができる。
【0043】
制御部14が、内圧変動に基づいて使用状態におけるエアセル15の内圧を求めるに際しては、例えば、まず制御部14が、内圧変動を、同内圧変動とエアセル15への負荷荷重とについて予め求めた対応関係と照らし合わせて、使用者Pの体重を求める。そして制御部14は、このようにして求めた使用者Pの体重に基づいて、使用状態におけるエアセル15の内圧を設定する。本実施形態のように、内圧変動を複数回求めた場合には、各内圧変動から使用者Pの体重をそれぞれ計算し、これらの計算結果の平均値や中央値、最頻値を代表値として求めて使用者Pの体重とすることができる。
【0044】
(第2実施形態の変形例)
本発明は、エアセル15に対して使用者Pの体重の少なくとも一部を預けることによって負荷をかけた状態で、制御部14が、エアセル15を状態変化させながらエアセル15の状態変化量を制御基準値として取得し、制御基準値に応じて給排気部12を制御する他の形態に適宜変更することが可能である。
【0045】
(第1変形例)
前記第2実施形態では、マット部11に使用者Pが体重をかけた状態で、制御部14が、実施グループのエアセル15を減圧させながら、実施グループのエアセル15の内圧が第1の内圧から第2の内圧に至るまでの、維持グループの内圧変動を求めているが、本発明はこの態様のみに限られない。
マット部11に使用者Pが体重をかけた状態で、制御部14が、実施グループのエアセル15を加圧させながら、実施グループのエアセル15の内圧が第1の内圧から、同第1の内圧と異なり第1の内圧よりも高い第2の内圧に至るまでの、維持グループの内圧変動を求め、この内圧変動に基づいて、使用状態におけるエアセル15の内圧を設定することも可能である。なおこのときのポンプ17は、継続して一定の駆動力で作動することが好ましい。
【0046】
(第2変形例)
前記第1実施形態及び前記第1変形例では、マット部11に使用者Pが体重をかけた状態で、制御部14が、実施グループの各エアセル15における内圧が第1の内圧から第2の内圧に至るまでの、維持グループの各エアセル15における内圧変動(エアセル15の状態変化量)を求め、制御基準値として取得したが、本発明はこの態様のみに限られない。エアセル15に対して使用者Pの体重の少なくとも一部を預けることによって負荷をかけた状態で、制御部14が、エアセル15を能動的に状態変化させながらエアセル15の状態変化量を制御基準値として取得する形態を採用することが可能である。
【0047】
例えば、負荷がかけられたエアセル15の範囲を検出するセンサを検出手段として設け、制御部14が、負荷がかけられるエアセル15の範囲を第1の範囲から第2の範囲に切り替えたときに、エアセル15における内圧変動を求めて、制御基準値として取得することも可能である。エアセル15が複数設けられている場合には、エアセル15の1つ1つをエアセル15の1単位として、負荷がかけられたエアセル15の範囲を、エアセル15の数に基づいて検出することができる。この場合、例えば、負荷がかけられたエアセル15の範囲を狭めるためには、給排気部12によって一部のエアセル15の内圧を下げて、そのエアセル15に負荷がかからないようにさせる方法を採用することができる。
【0048】
また、マット部11の形状に関連するエアセル15の位置を検出するセンサを検出手段として設け、制御部14が、マット部11の形状を第1の形状から第2の形状に切り替えたときに、エアセル15における内圧変動を求めて、制御基準値として取得することも可能である。なお、マット部11の形状としては、標準状態における形状である平坦形状や、背上げ状態や足上げ状態、ローテーション状態における各形状などが挙げられる。背上げ状態におけるマット部11では、マット部11において使用者の腰に対応する腰部よりも頭側が、腰部を起点として上昇して傾斜している。足上げ状態におけるマット部11では、マット部11において使用者の膝に対応する膝裏部が上側に向けて突となるように、腰部から足側が屈曲している。ローテーション状態におけるマット部11では、マット部11上で使用者が左右方向に半身になるよう、マット部11における左右方向の片側が隆起している。
【0049】
また、マット部11の傾斜角度に関連するエアセル15の位置を検出するセンサを検出手段として設け、制御部14が、マット部11の傾斜角度を第1の傾斜角度から第2の傾斜角度に切り替えたときに、エアセル15における内圧変動を求めて、制御基準値として取得することも可能である。なお、マット部11は、トレンデンバーグ状態(伸展状態)やリバーストレンデンバーグ状態において、水平面に対して傾斜する。トレンデンバーグ状態のマット部11では、マット部11において頭側が足側よりも低くなるように、マット部11における長手方向に傾斜されている。リバーストレンデンバーグ状態のマット部11では、マット部11において足側が頭側よりも低くなるように、マット部11における長手方向に傾斜されている。
【0050】
また、エアセル15の上面の高さを検出するセンサを検出手段として設け、制御部14が、エアセル15の上面の高さを第1の高さから第2の高さに切り替えたときに、エアセル15における内圧変動を求めて、制御基準値として取得することも可能である。
【0051】
(第3変形例)
前記第1実施形態、前記第1変形例及び前記第2変形例では、制御部14が、エアセル15における内圧変動を求めて制御基準値を取得したが、本発明はこの態様のみに限られない。例えば、複数のエアセル15のうち、一部のエアセル15にかかる荷重を測定する荷重センサを検出手段として備え、この荷重センサに作用する荷重変動を求めて制御基準値として取得することも可能である。
【0052】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態のエアマット装置40を説明する。
なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。本実施形態のエアマット装置40では、制御部14以外の構成については、
図1に示す第1実施形態に係るエアマット装置10と同様である。
【0053】
このエアマット装置40におけるエアセル15の内圧設定方法について説明する(
図8参照)。
【0054】
エアマット装置40の前記電源を入れ、使用者Pがマット部11に横臥して体重をかけた後、エアセル15に対して使用者Pの体重の少なくとも一部を預けることによって負荷をかけた状態で、制御部14は、エアセル15を、グループG1~G3毎に交互膨縮させ、エアセル15を状態変化させる。
【0055】
ここで、このエアマット装置40では、エアセル15についての単位時間当たりの状態変化量である内圧変動を、制御基準値として取得する。本実施形態では、複数のエアセル15のうち、膨縮させているグループG1~G3のエアセル15について、単位時間当たりの内圧変動を求める。
なお、単位時間は、任意に設定することが可能である。また、単位時間当たりの内圧変動は、1つのグループG1~G3のエアセル15を膨縮させるときに、複数回求めることが可能である。例えば、エアセル15を収縮させ始めた直後に、単位時間当たりの内圧変動を求め、また、エアセル15を収縮から膨張に切り替える前後に、単位時間当たりの内圧変動を求め、さらには、エアセル15を膨張し終える直前に、単位時間当たりの内圧変動を求める等をすることができる。すなわち、エアセル15の単位時間当たりの内圧変動として、給気時及び排気時のいずれも採用することができる。例えば、エアセル15に対する給気の開始又は排気の開始をトリガーとして、この開始時刻(第1の時刻)から所定の単位時間経過時(第2の時刻)までの内圧変動を求めることができる。
【0056】
制御部14は、給排気を行う実施グループG1~G3と給排気を行わない維持グループG1~G3との組み合わせを変えて単位時間当たりの内圧変動を複数回(図示の例では3回)求める。
そして、使用状態におけるエアセル15の内圧を、制御部14が、単位時間当たりの内圧変動に基づいて設定する。本実施形態では、制御部14は、複数回求めた単位時間当たりの内圧変動に基づいて、使用状態における各エアセル15の内圧を設定する。制御基準値である単位時間当たりの内圧変動、つまりエアセル15の状態変化量は、エアセル15に作用する荷重に応じて変化することから、単位時間当たりの内圧変動を求めることで、使用者Pの体重を推定することができる。したがって、使用状態のエアセル15の内圧を単位時間当たりの内圧変動に基づいて設定することで、使用者Pの体重に応じて設定することができる。
【0057】
制御部14が、単位時間当たりの内圧変動に基づいて使用状態におけるエアセル15の内圧を求めるに際しては、例えば、まず制御部14が、単位時間当たりの内圧変動を、単位時間当たりの内圧変動とエアセル15への負荷荷重とについて予め求めた対応関係と照らし合わせて、使用者Pの体重を求める。そして制御部14は、このようにして求めた使用者Pの体重に基づいて、使用状態におけるエアセル15の内圧を設定する。
【0058】
(第3実施形態の変形例)
本発明は、制御部14が、単位時間当たりのエアセル15の状態変化量を制御基準値として取得し、制御基準値に応じて給排気部12を制御する他の形態に適宜変更することが可能である。
【0059】
(第1変形例)
前記第3実施形態では、エアセル15の状態変化量として、エアセル15の内圧変動を採用したが、本発明はこの態様のみに限られない。
例えば、エアセル15の状態変化量として、単位時間当たりにエアセル15に対して吸排気される空気の流量や、単位時間当たりに変位するエアセル15の上面の高さの変位量、単位時間あたりに変化するエアセル15にかかる負荷の変動量を、制御基準値として取得することも可能である。
【0060】
(第2変形例)
前記第3実施形態及び前記第1変形例では、マット部11に使用者Pが予め体重をかけた状態で、制御部14が、エアセル15を積極的に状態変化させることで制御基準値を取得したが、本発明はこの態様のみに限られない。例えば、マット部11上に使用者Pが乗っていない状態から乗った状態に移行したときにエアセル15が状態変化することを利用して、制御部14が、制御基準値を取得することも可能である。
【0061】
本発明の技術的範囲は前記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0062】
前記実施形態では、制御基準値を、エアセル15の交互膨縮にあわせて取得する等したが、本発明はこれに限られない。例えば、人間の操作(エアセル15の内圧を設定したいタイミングで体重自動設定ボタンを押す等)時に制御基準値を取得してエアセル15の内圧を設定することも可能である。
また、エアセル15は、マット部11上に横臥する使用者Pの頭部、肩部、臀部、大腿部、膝部及び踵部に対応して夫々複数個ずつ配置することが可能である。この場合、エアセル15の内圧を体の各部分に応じて調整することにより、例えば背部及び大腿部のエアセル15の内圧を臀部のエアセル15の内圧より大きくすることにより、体圧分散を更に効果的に図ることができる。
また、マット部11として、エアセル15を1つのみ備える構成を採用することも可能である。
【0063】
前記実施形態では、制御部14が、取得した制御基準値に応じて給排気部12を制御するが、取得した制御基準値に基づいて使用者の体重を推定し、体重計のように利用することも可能である。この場合、使用者の体重を別途、入力しておき、入力された体重と、推定された体重と、を比較することで、故障検出機能として利用することもできる。また、使用者の体重が0と推定された場合、使用者が乗っていないと判断する離床センサとして利用することもできる。この場合、制御部14による交互膨縮を停止する節電モードにすることも可能である。また、例えば、離床センサとしての機能などを利用し、使用者が乗っていると判断した後、制御部14が、エアセル15の内圧の制御を開始することも可能である。すなわち、制御部14が、マット部11上に使用者が乗っていること(エアセル15に荷重がかかっていること)を検出した後、前記制御基準値を取得するように構成することが可能である。
【0064】
また、制御基準値から使用者Pの体重を推定できることを利用して、使用者Pの体重が既知である場合、制御基準値からマット部11の形状や傾斜角度を推定することも可能である。すなわち、例えば、背上げ状態におけるエアセル15において、使用者Pの体重とエアセル15の内圧とマット部11の形状や傾斜角度との関係について、及び使用者Pの体重を予め取得しておけば、エアセル15の内圧を測定することで、マット部11の形状や傾斜角度を把握することができる。
【0065】
前記実施形態では、給排気されるエアセル15を有するエアマット装置10を例示したが、いわゆるウォーターベッド等、流体が収容された流体セルを有する流体マット装置にも適用することが可能である。
【0066】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0067】
次に、本発明の作用効果を検証するために行った検証試験について説明する。
【0068】
検証試験として、第1検証試験から第5検証試験の5つの検証試験を実施した。
第1検証試験及び第2検証試験では、エアセル15に作用する荷重と、エアセル15の減圧に要する時間と、の関係について検証した。
第3検証試験及び第4検証試験では、エアセル15に作用する荷重と、エアセル15の加圧に要する時間と、の関係について検証した。
第5検証試験では、実施グループのエアセル15を排気したときにおける維持グループの圧力変動について検証した。
【0069】
第1検証試験では、
図1に示すエアマット装置10、30におけるマット部11上に、平面視人体型のベースプレートを載置し、このベースプレート上に板状のウェイトを所定枚数、積層させることで、エアセル15に荷重を加えた。エアセル15には、30kg、59kg、78kgの3種類の荷重を各別に加えた。そして、第1グループG1のエアセル15の内圧を減圧させ、このエアセル15の内圧と時間との関係を計測した。
【0070】
結果を
図9に示す。
図9のグラフでは、横軸が排気時間(分:秒)を示し、縦軸が第1グループG1のエアセル15の内圧(kPa)を示す。グラフ中のグラフ線L11が、荷重30kgの場合を示し、グラフ線L12が、荷重59kgの場合を示し、グラフ線L13が、荷重78kgの場合を示している。
図9に示すように、エアセル15に作用する荷重が高いほど、エアセル15の内圧が低くなるのに時間がかかることが確かめられた。
【0071】
第2検証試験では、
図1に示すエアマット装置10に代えて、エアセルとしての1気室セルを採用した。このエアセルに、JIS T9256-3で定められる圧標準器を用いて荷重を加えた。エアセルには、7kg、17kg、28kgの3種類の荷重を加えた。そして、エアセルの内圧を減圧させ、このエアセルの内圧と時間との関係を計測した。
【0072】
結果を
図10に示す。
図10のグラフでは、横軸が排気時間(分:秒)を示し、縦軸がエアセルの内圧(kPa)を示す。グラフ中のグラフ線L21が、荷重7kgの場合を示し、グラフ線L22が、荷重17kgの場合を示し、グラフ線L23が、荷重28kgの場合を示している。
図10に示すように、エアセルに作用する荷重が高いほど、エアセルの内圧が低くなるのに時間がかかることが確かめられた。
【0073】
第3検証試験では、第1検証試験と同様の試験環境を準備した上で、第1グループG1のエアセル15の内圧を加圧させ、このエアセル15の内圧と時間との関係を計測した。 結果を
図11に示す。
図11のグラフでは、横軸が給気時間(分:秒)を示している。
図11に示す縦軸の項目名、及びグラフ線を指す符号は、いずれも
図9のグラフと共通している。
図11に示すように、エアセル15に作用する荷重が高いほど、エアセル15の内圧が高くなるのに時間がかかることが確かめられた。
【0074】
第4検証試験では、第2検証試験と同様の試験環境を準備した上で、エアセルの内圧を加圧させ、このエアセルの内圧と時間との関係を計測した。
結果を
図12に示す。
図12のグラフでは、横軸が給気時間(分:秒)を示している。
図12に示す縦軸の項目名、及びグラフ線を指す符号は、いずれも
図10のグラフと共通している。
図12に示すように、エアセルに作用する荷重が高いほど、エアセルの内圧が高くなるのに時間がかかることが確かめられた。
【0075】
第5検証試験では、第1検証試験と同様の試験環境を準備した上で、第1グループG1(実施グループ)のエアセル15の内圧を、1.9kPa程度(第1の内圧)から0.6kPa程度(第2の内圧)まで減圧させ、このときの第2グループG2及び第3グループG3(維持グループ)のエアセル15の内圧を計測した。
結果を表1に示す。
【0076】
【0077】
上記表1より、エアセル15に作用する荷重が高いほど、維持グループの内圧変動が大きくなることが確かめられた。
【0078】
本発明は、以下の態様も含む。
(1)本態様に係るエアマット装置は、エアセルを有するマット部と;前記エアセルへの給気及び前記エアセルからの排気を行う給排気部と;前記エアセルが第1の状態から第2の状態に至るまでに要した時間を制御基準値として取得し、前記制御基準値に応じて前記給排気部を制御する制御部と;を備えることを特徴とする。
(2)本態様に係るエアマット装置は、エアセルを有するマット部と;前記エアセルへの給気及び前記エアセルからの排気を行う給排気部と;前記エアセルに対して使用者の体重の少なくとも一部を預けることによって負荷をかけた状態で、前記エアセルを状態変化させながら前記エアセルの状態変化量を制御基準値として取得し、前記制御基準値に応じて前記給排気部を制御する制御部と;備えることを特徴とする。
(3)本態様に係るエアマット装置は、エアセルを有するマット部と;前記エアセルへの給気及び前記エアセルからの排気を行う給排気部と;前記エアセルについての単位時間当たりの状態変化量を制御基準値として取得し、前記制御基準値に応じて前記給排気部を制御する制御部と;
を備えることを特徴とする。
【0079】
これらの態様において、制御基準値である、エアセルが第1の状態から第2の状態に至るまでに要した時間やエアセルの状態変化量は、エアセルに作用する荷重に応じて変化することから、制御基準値を取得することで、エアセル上の使用者の体重を推定することができる。したがって、給排気部による給気及び排気が停止されてかつマット部に使用者が体重をかけた使用状態におけるエアセルの内圧を設定する際に、制御基準値に応じて給排気部を制御することで、使用状態におけるエアセルの内圧を、使用者の体重に応じて設定することができる。
【0080】
ここで、制御部が、エアセルに対して使用者の体重の少なくとも一部を預けることによって負荷をかけた状態で、エアセルを状態変化させながら制御基準値を取得して使用者の体重を推定する場合には、使用者が体重をかけた状態を維持したまま、使用者の体重を推定することができる。したがって、例えば、使用者の体重を推定するために、マット部上に横臥又は着座している使用者が、一旦マット部から離れて再度、マット部上に横臥又は着座するような場合に比べて、使用者への負担を低減することができる上、例えば、使用者が介護や看護を必要とする場合には、介護者や看護者の負担も低減することができる。 さらに、使用者が体重をかけた状態を維持したまま、使用者の体重を推定する場合、例えば、介護や看護が必要であり、長期間にわたって横臥又は着座した状態で居ざるを得ない使用者であっても、その時々の体重に応じてエアセルの内圧を適切に調整することができる。
【0081】
また、制御部が、制御基準値として、エアセルが第1の状態から第2の状態に至るまでに要した時間や、単位時間当たりのエアセルの状態変化量を取得した場合には、エアセルが状態変化を開始した後、その状態変化が完了するまでの途中の段階で、使用者の体重を推定することができる。したがって、例えば、使用者の体重を推定するために要する時間を短縮すること等ができる。
【0082】
(4)(1)から(3)のうちのいずれか一つに記載のエアマット装置であって、前記エアセルの状態を検出する検出手段を更に備え;前記検出手段は、前記エアセルの状態として、前記エアセルの内圧と、負荷がかけられた前記エアセルの範囲と、前記マット部の形状及び傾斜角度のうちの少なくとも一方に関連する前記エアセルの位置と、前記エアセルの上面の高さと、前記エアセルにかかる負荷の大きさと、前記エアセルからの給排気量と、のうちの少なくとも1つを検出し;前記制御部が、前記検出手段の検出結果に基づいて前記制御基準値を取得してもよい。
【0083】
この場合、制御部が、検出手段の検出結果に基づいて制御基準値を取得するので、エアセル上の使用者の体重を確実に推定することができる。
【0084】
(5)(1)に記載のエアマット装置であって、前記エアセルの状態として前記エアセルの内圧を検出する検出手段を更に備え;前記検出手段は、前記第1の状態として、前記エアセルの前記内圧が第1の内圧であることを検出するとともに、前記第2の状態として、前記エアセルの前記内圧が第2の内圧であることを検出し;前記マット部に使用者が体重をかけた状態で、前記制御部が、前記給排気部に前記排気又は前記給気を行わせることで、前記エアセルを減圧又は加圧させながら、前記エアセルの前記内圧が前記第1の内圧から前記第2の内圧に至るまでの圧変動時間を、前記検出手段の検出結果に基づいて前記制御基準値として取得してもよい。
(6)(1)から(5)のいずれか一つに記載のエアマット装置であって、前記エアセルが、複数備えられるとともに複数のグループに区分けされ;前記制御部が、前記制御基準値を取得するときに、前記給排気部に前記給気又は前記排気を行わせ、前記各エアセルから排気する際、前記複数のグループのうちの少なくとも一つを残したまま、その他のグループを排気し、その後、排気したグループに給気してもよい。
(7)(2)に記載のエアマット装置であって、前記エアセルの状態として前記エアセルの内圧を検出する検出手段を更に備え;前記エアセルが、複数備えられるとともに複数のグループに区分けされ;前記制御部が、前記各エアセルから排気する際、前記複数のグループのうちの少なくとも一つを残したまま、その他のグループを排気し、その後、排気したグループに給気し;前記マット部に使用者が体重をかけた状態で、前記制御部が、前記給排気を行う実施グループの前記各エアセルにおける前記内圧が第1の内圧から同第1の内圧と異なる第2の内圧に至るまでの、前記給排気を行わない維持グループの前記各エアセルにおける内圧変動を、前記検出手段の検出結果に基づいて前記制御基準値として取得してもよい。
【0085】
これらの場合、制御部が、前述の圧変動時間や内圧変動を、検出手段の検出結果に基づいて制御基準値として取得する。この種の制御基準値を求めるに際しては、一般のエアマット装置に用いられる給排気部及び内圧測定部(検出手段)をそのまま利用することができる。したがって、使用者の体重を推定するために専用のセンサを新たに設ける必要がなく、コストの増加を抑えることができる。
また、前述の圧変動時間や内圧変動は、一般のエアマット装置で通常、実施されるエアセルの給排気、例えば、使用者の姿勢を意図的に変化させるために実施するエアセルの給排気時に併せて測定することもできる。この場合、使用者の体重を推定するために必要となる人間の操作や機械の動作を最小限に抑えること等もできる。
【0086】
また、このエアマット装置では、使用者の体重を求めるために、使用者の体重を直接、測定するのではなく、エアセルの内圧変動を測定する。したがって、使用者が、マット部上において、エアセルの内圧を同程度、変動させうる一定の範囲内に体重をかけていれば、その位置によらず、使用者の体重を精度良く推定することができる。
さらに、このエアマット装置では、エアセルの給排気時の内圧を測定して使用者の体重を推定する。したがって、エアセルの内圧を測定する内圧測定部に長時間にわたって連続して荷重がかかるのを抑えることが可能になり、内圧測定部がキャリブレーションされたままの状態に維持し易くすることができる。
以上より、使用者の体重をエアセルの内圧に精度良く反映させることができる。
【0087】
なお、上記各エアマット装置において、制御部が、制御基準値を取得するときに、給排気部に給排気を行わせ、エアセルから排気する際、複数のグループのうちの少なくとも一つを残したまま、その他のグループを排気し、その後、排気したグループに給気する場合、例えば、褥瘡(床ずれ)等を目的とした交互膨縮にあわせて、制御基準値を取得することができる。この場合、使用者の寝心地に与える影響を抑えるとともに、使用者による特別な操作や作業を極力抑えることが可能になり、利便性を向上させることができる。
また前述のように、制御部が、少なくとも一部のグループを残したままエアセルを排気する場合、排気しないグループのエアセルにより使用者を支持することが可能になり、使用者の底付きを抑えることができる。
【0088】
(8)(6)または(7)に記載のエアマット装置であって、前記制御部が、前記各エアセルを給排気する際、前記給排気を行う実施グループと前記給排気を行わない維持グループとの組み合わせを変えて前記制御基準値を複数回求め、前記複数回求めた前記制御基準値に応じて前記給排気部を制御してもよい。
【0089】
この場合、制御部が、複数回求めた制御基準値に応じて給排気部を制御するので、例えば、外乱による誤差を小さくすること等が可能になり、使用者の体重を精度良く推定した上でエアセルの内圧を設定することができる。
【0090】
(9)本発明に係るエアセルの内圧制御方法は、給排気されるエアセルへの前記給排気を停止させた上で使用者の体重を前記エアセルで支える使用状態における、前記エアセルの内圧を設定するエアセルの内圧制御方法であって;前記エアセルが第1の状態から第2の状態に至るまでに要した時間を制御基準値として取得する工程と;前記制御基準値に応じて、前記使用状態における前記エアセルの前記内圧を設定する工程と;を備えることを特徴とする。
(10)本態様に係るエアセルの内圧制御方法は、給排気されるエアセルへの前記給排気を停止させた上で使用者の体重を前記エアセルで支える使用状態における、前記エアセルの内圧を設定するエアセルの内圧制御方法であって;前記エアセルに対して前記使用者の前記体重の少なくとも一部を預けることによって負荷をかけた状態で、前記エアセルを状態変化させながら前記エアセルの状態変化量を制御基準値として取得する工程と;前記制御基準値に応じて、前記使用状態における前記エアセルの前記内圧を設定する工程と;備えることを特徴とする。
(11)本態様に係るエアセルの内圧制御方法は、給排気されるエアセルへの前記給排気を停止させた上で使用者の体重を前記エアセルで支える使用状態における、前記エアセルの内圧を設定するエアセルの内圧制御方法であって;前記エアセルについての単位時間当たりの状態変化量を制御基準値として取得する工程と;前記制御基準値に応じて、前記使用状態における前記エアセルの前記内圧を設定する工程と;を備えることを特徴とする。(12)(9)から(11)のうちのいずれか一つに記載のエアセルの内圧制御方法であって、前記エアセルの状態として、前記エアセルの内圧と、負荷がかけられた前記エアセルの範囲と、前記エアセルによって少なくとも一部が形成されたマット部の形状及び傾斜角度のうちの少なくとも一方に関連する前記エアセルの位置と、前記エアセルの上面の高さと、前記エアセルにかかる負荷の大きさと、前記エアセルからの給排気量と、のうちの少なくとも1つを検出する工程を更に備え;前記取得する工程では、前記検出する工程での検出結果に基づいて前記制御基準値を取得してもよい。
(13)(9)に記載のエアセルの内圧制御方法であって、前記エアセルの状態として前記エアセルの内圧を検出する工程を更に備え;前記検出する工程では、前記第1の状態として、前記エアセルの前記内圧が第1の内圧であることを検出するとともに、前記第2の状態として、前記エアセルの前記内圧が第2の内圧であることを検出し;前記取得する工程では、前記エアセルに前記使用者が前記体重をかけた状態で、前記エアセルを減圧又は加圧させながら、前記エアセルの前記内圧が前記第1の内圧から前記第2の内圧に至るまでの圧変動時間を、前記検出する工程での検出結果に基づいて前記制御基準値として取得してもよい。
(14)(9)から(13)のうちのいずれか一つに記載のエアセルの内圧制御方法であって、前記取得する工程では、複数備えられた前記エアセルを複数のグループに区分けし、前記複数のグループのうちの少なくとも一つを残したまま、その他のグループを排気し、その後、排気したグループに給気してもよい。
(15)(10)に記載のエアセルの内圧制御方法であって、前記エアセルの状態として前記エアセルの内圧を検出する工程を更に備え;前記取得する工程では、複数の前記エアセルに前記使用者が前記体重をかけた状態で、前記各エアセルのうちの一部である実施グループの前記エアセルを給排気し、前記実施グループの前記各エアセルにおける前記内圧が第1の内圧から同第1の内圧と異なる第2の内圧に至るまでの、前記各エアセルのうちの残りである維持グループの前記各エアセルにおける内圧変動を、前記検出する工程での検出結果に基づいて前記制御基準値として取得してもよい。
(16)(10)又は(11)に記載のエアセルの内圧制御方法であって、前記取得する工程では、前記各エアセルを給排気する際、前記給排気を行う実施グループと前記給排気を行わない維持グループとの組み合わせを変えて前記制御基準値を複数回求め;前記設定する工程では、前記複数回求めた前記制御基準値に応じて前記内圧を設定してもよい。
【0091】
これらの発明において、制御基準値である、エアセルが第1の状態から第2の状態に至るまでに要した時間やエアセルの状態変化量は、エアセルに作用する荷重に応じて変化することから、制御基準値を取得することで、エアセル上の使用者の体重を推定することができる。したがって、使用状態のエアセルの内圧を制御基準値に基づいて設定することで、前記内圧を使用者の体重に応じて設定することができる。
【符号の説明】
【0092】
10、30、40 エアマット装置
11 マット部
12 給排気部
13 内圧測定部
14 制御部
15 エアセル
P 使用者