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特許7080941PI3K阻害剤の塩及びその調製のためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】PI3K阻害剤の塩及びその調製のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20220530BHJP
   C07D 207/26 20060101ALI20220530BHJP
   C07D 403/10 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
C07D487/04 143
C07D207/26 CSP
C07D403/10
【請求項の数】 50
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020151255
(22)【出願日】2020-09-09
(62)【分割の表示】P 2017544953の分割
【原出願日】2016-02-26
(65)【公開番号】P2021006532
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2020-10-07
(31)【優先権主張番号】62/121,697
(32)【優先日】2015-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505193450
【氏名又は名称】インサイト・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】INCYTE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】レイ・チャオ
(72)【発明者】
【氏名】リンカイ・ウェン
(72)【発明者】
【氏名】チョンション・エリック・シー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・メローニ
(72)【発明者】
【氏名】リン・チーヤン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・シア
(72)【発明者】
【氏名】バカー・シャリーフ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・フリーツェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンジアン・ジア
(72)【発明者】
【氏名】ヨンチュン・パン
(72)【発明者】
【氏名】ピンリー・リウ
(72)【発明者】
【氏名】タイ-ユエン・ユエ
(72)【発明者】
【氏名】ジアチェン・チョウ
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-527959(JP,A)
【文献】国際公開第2014/134426(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/139970(WO,A1)
【文献】XIAO,L. et al,Stereoselective synthesis and biological activities of diethyl (E)-{[4-cyano-5-[[(disubstitutedamino)methylene]amino]-3-(methylthio)-1H- pyrazol-1-yl]substituted phenylmethyl}phosphonates,Journal of Heterocyclic Chemistry,2009年,Vol.46, No.3,p.555-559
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 487/04
C07D 207/26
C07D 403/10
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式XVIの化合物:
【化1】
を酢酸ホルムアミジンと反応させて式Iの化合物を形成すること:
【化2】
を含むプロセス。
【請求項2】
前記式XVIの化合物と酢酸ホルムアミジンとの前記反応が、1,2-エタンジオールを含む溶媒成分中で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記式XVIの化合物と酢酸ホルムアミジンとの前記反応が、約100℃~約105℃の温度で実施される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
1当量の前記式XVIの化合物を基準にして約8~約10当量の酢酸ホルムアミジンが使用される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記式XVIの化合物を、式XVの化合物:
【化3】
を第3級アミンの存在下で(1-エトキシエチリデン)マロノニトリルと反応させることを含むプロセスによって調製することをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第3級アミンが、N-メチルピロリジノンである、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記式XVの化合物と(1-エトキシエチリデン)マロノニトリルとの前記反応が、室温で実施される、請求項5または6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記式XVの化合物を、式XIV-aの化合物:
【化4】
を第3級アミンの存在下でヒドラジンと反応させることを含むプロセスによって調製することをさらに含み、Pが、C1~6アルキルスルホニルである、請求項5~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第3級アミンが、N-メチルピロリジノンである、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記式XIV-aの化合物とヒドラジンとの前記反応が、約35℃~約60℃の温度で実施される、請求項8または9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記式XIV-aの化合物とヒドラジンとの前記反応が、ジクロロメタンを含む溶媒成分中で行われる、請求項8~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
が、メタンスルホニル基である、請求項8~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記式XIV-aの化合物を、式XIIIの化合物:
【化5】
を第3級アミンの存在下でC1~6アルキルスルホニルハライドと反応させることを含むプロセスによって調製することをさらに含む、請求項8~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記C1~6アルキルスルホニルハライドが、塩化メタンスルホニルである、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記第3級アミンが、N,N-ジイソプロピルエチルアミンである、請求項13または14に記載のプロセス。
【請求項16】
1当量の前記式XIIIの化合物を基準にして約1.1~約1.5当量のアルキルスルホニルハライドが使用される、請求項13~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記式XIIIの化合物とC1~6アルキルスルホニルハライドとの前記反応が、約-10℃~約5℃の温度で実施される、請求項13~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記式XIIIの化合物とC1~6アルキルスルホニルハライドとの前記反応が、ジクロロメタンを含む溶媒成分中で実施される、請求項13~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
(i)前記式XIIIの化合物をC1~6アルキルスルホニルハライドと反応させるステップ;(ii)前記式XIV-aの化合物を第3級アミンの存在下でヒドラジンと反応させて式XVの化合物を形成するステップ;及び(iii)前記式XVの化合物を酢酸ホルムアミジンと反応させて式XVIの化合物を形成するステップが、前記式XIV-aの化合物または前記式XVの化合物を単離することなく同じポットにおいて行われる、請求項1~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記式XVIの化合物を、式XV-aの塩:
【化6】
を第3級アミンの存在下で(1-エトキシエチリデン)マロノニトリルと反応させることを含むプロセスによって調製することをさらに含み、TsOHがp-トルエンスルホン酸である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記第3級アミンが、N,N-ジイソプロピルエチルアミンである、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
式XV-aの塩と(1-エトキシエチリデン)マロノニトリルとの前記反応が、室温で実施される、請求項20または21に記載のプロセス。
【請求項23】
1当量の前記式XV-aの塩を基準にして約1.3~約1.6当量の(1-エトキシエチリデン)マロノニトリルが使用される、請求項20~22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記式XV-aの塩と(1-エトキシエチリデン)マロノニトリルとの前記反応が、エタノールを含む溶媒成分中で行われる、請求項20~23のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
前記式XV-aの塩を、式XXIの化合物:
【化7】
をp-トルエンスルホン酸と反応させることを含むプロセスによって調製することをさらに含み、Bocがtert-ブトキシカルボニルである、請求項20~24のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項26】
前記p-トルエンスルホン酸が、p-トルエンスルホン酸一水和物である、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
1当量の前記式XXIの化合物を基準にして約1.3~約1.6当量のp-トルエンスルホン酸が使用される、請求項25または26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記式XXIの化合物とp-トルエンスルホン酸との前記反応が、約45℃~約65℃の温度で実施される、請求項25~27のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項29】
前記式XXIの化合物とp-トルエンスルホン酸との前記反応が、エタノールを含む溶媒成分中で行われる、請求項25~28のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項30】
(i)前記式XXIの化合物をp-トルエンスルホン酸と反応させて式XV-aの塩を形成するステップ;及び(ii)前記式XV-aの塩を(1-エトキシエチリデン)マロノニトリルと反応させるステップが、前記式XV-aの塩を単離することなく同じポットにおいて行われる、請求項25~29のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項31】
前記式XXIの化合物を、式XXの化合物:
【化8】
を独立して選択される1種以上の水素化触媒の存在下で水素ガスと反応させることを含むプロセスによって調製することをさらに含み、Bocがtert-ブトキシカルボニルである、請求項25~30のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項32】
前記式XXの化合物と水素ガスとの前記反応が、独立して選択される2種の水素化触媒の存在下で実施される、請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
一方の水素化触媒が、テトラフルオロホウ酸ビス(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)であり、他方が、(R)-(-)-1-{(S)-2-[ビス(4-トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン]フェロセニル}エチル-ジ-t-ブチルホスフィンである、請求項32に記載のプロセス。
【請求項34】
1当量のテトラフルオロホウ酸ビス(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)を基準にして約13.5~約14.5当量の前記式XXの化合物が使用される、請求項33に記載のプロセス。
【請求項35】
1当量の(R)-(-)-1-{(S)-2-[ビス(4-トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン]フェロセニル}エチル-ジ-t-ブチルホスフィンを基準にして約12~約13当量の前記式XXの化合物が使用される、請求項33または34に記載のプロセス。
【請求項36】
前記式XXの化合物と水素ガスとの前記反応が、室温で実施される、請求項31~35のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項37】
前記式XXの化合物と水素ガスとの前記反応が、メタノールを含む溶媒成分中で行われる、請求項31~36のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項38】
前記式XXの化合物を、式XIXの化合物:
【化9】
をカルバジン酸t-ブチルと反応させることを含むプロセスによって調製することをさらに含む、請求項31~37のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項39】
前記式XIXの化合物とカルバジン酸t-ブチルとの前記反応が、約60℃~約70℃の温度で実施される、請求項38に記載のプロセス。
【請求項40】
前記式XIXの化合物とカルバジン酸t-ブチルとの前記反応が、メタノールを含む溶媒成分中で行われる、請求項38または39に記載のプロセス。
【請求項41】
前記式XIXの化合物を、式XIII-aの化合物:
【化10】
を酸化剤の存在下で酸化することを含むプロセスによって調製することをさらに含む、請求項38~40のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項42】
前記酸化剤がデス-マーチンペルヨージナンである、請求項41に記載のプロセス。
【請求項43】
1当量の前記式XIII-aの化合物を基準にして約1.2~約1.7当量の前記酸化剤が使用される、請求項41または42に記載のプロセス。
【請求項44】
前記式XIII-aの化合物の前記酸化が、室温で実施される、請求項41~43のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項45】
前記式XIII-aの化合物の前記酸化が、ジクロロメタンを含む溶媒成分中で行われる、請求項41~44のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項46】
式XIVの化合物:
【化11】
またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項47】
式XVの化合物:
【化12】
またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項48】
式XVIの化合物:
【化13】
またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項49】
式XXの化合物:
【化14】
またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項50】
式XXIの化合物:
【化15】
またはその薬学的に許容可能な塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、全体が参照により本明細書に組み込まれる、2015年2月27日に提出された米国特許出願第62/121,697号の利益を主張する。
【0002】
本願は、ホスホイノシチド3-キナーゼ-デルタ(PI3Kδ)の阻害剤として有用である(R)-4-(3-((S)-1-(4-アミノ-3-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)ピロリジン-2-オンを調製するためのプロセス、ならびにそれに関連する塩形態及び中間体を提供する。
【背景技術】
【0003】
ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)は、イノシトール環のD3位でホスホイノシチドをリン酸化する脂質シグナル伝達キナーゼの大きなファミリーに属する(Cantley,Science,2002,296(5573):1655-7)。PI3Kは、構造、調節及び基質特異性にしたがって3つのクラス(クラスI、II、及びIII)に分けられる。PI3Kα、PI3Kβ、PI3Kγ、及びPI3Kδを含むクラスIのPI3Kは、ホスファチジルイノシト-4,5-ビスホスファート(PIP)のリン酸化を触媒してホスファチジルイノシト-3,4,5-トリスホスファート(PIP)を生じさせる二重特異性脂質及びプロテインキナーゼのファミリーである。PIPは、成長、生存、接着及び移動を含めた多数の細胞プロセスを制御するセカンドメッセンジャーとして機能する。4つのクラスI PI3Kアイソフォームは、全て、触媒サブユニット(p110)と、その発現、活性化及び細胞内局在性を制御する緊密に会合した調節サブユニットとで構成されたヘテロダイマーとして存在する。PI3Kα、PI3Kβ及びPI3Kδは、p85として公知の調節サブユニットと会合しており、チロシンキナーゼ依存性メカニズムを通して成長因子及びサイトカインによって活性化されるが(Jimenez,et al.,J Biol Chem.,2002,277(44):41556-62)、一方で、PI3Kγは、調節サブユニット(p101及びp84)と会合しており、その活性化は、G-タンパク質共役受容体の活性化によって駆動される(Brock,et al.,J Cell Biol.,2003,160(1):89-99)。PI3Kα及びPI3Kβは、遍在的に発現される。対照的に、PI3Kγ及びPI3Kδは、大部分が白血球において発現される(Vanhaesebroeck,et al.,Trends Biochem Sci.,2005,30(4):194-204)。
【0004】
PI3Kアイソフォームの差次的な組織分布は、それらの明白に異なる生物学的機能の要因となる。PI3KαまたはPI3Kβのいずれかの遺伝子除去は、胚致死を結果として生じさせ、このことは、PI3Kα及びPI3Kβが、少なくとも発達の際に、必須かつ非重複的な機能を有することを示している(Vanhaesebroeck,et al.,2005)。対照的に、PI3Kγ及びPI3Kδが欠失したマウスは、生存可能で繁殖力があり、正常な寿命を有するが、改変された免疫系を示す。PI3Kγの欠損は、炎症の部位へのマクロファージ及び好中球の動員障害、ならびにT細胞活性化障害をもたらす(Sasaki,et al.,Science,2000,287(5455):1040-6)。PI3Kδ-変異マウスは、B細胞の発達の障害及び抗原刺激後の抗体反応の低下をもたらすB細胞シグナル伝達において特異的欠陥を有する(Clayton,et al.,J Exp Med.2002,196(6):753-63;Jou,et al.,Mol Cell Biol.2002,22(24):8580-91;Okkenhaug,et al.,Science,2002,297(5583):1031-4)。
【0005】
PI3Kγ及びPI3Kδ-変異マウスの表現型は、これらの酵素が、炎症及び他の免疫に基づく疾患において役割を担う場合があることを示唆しており、このことは、前臨床モデルにおいて裏付けられている。PI3Kγ-変異マウスは、関節リウマチ(RA)及び喘息のマウスモデルにおいて疾患から大いに保護される(Camps,et al.,Nat Med.2005,11(9):936-43;Thomas,et al.,Eur.J.Immunol.2005,35(4):1283-91)。また、PI3Kγの選択的阻害剤による野生型マウスの処置は、全身性のループス腎炎(SLE)のMRL-lprモデルにおいて糸球体腎炎を低減して生存を延長すること、ならびに、RAのモデルにおいて関節の炎症及び損傷を抑制することが示された(Barber,et al.,Nat Med.2005,11(9):933-5;Camps,et al.,2005)。同様に、PI3Kδの選択的阻害剤で処置されたPI3Kδ-変異マウス及び野生型マウスの両方が、喘息のマウスモデルにおいてアレルギー性の気道炎症及び過敏性を軽減し(Ali,et al.,Nature.2004,431(7011):1007-11;Lee,et al.,FASEB J.2006,20(3):455-65)、RAのモデルにおいて疾患を軽減すること(Randis,et al.,Eur.J.Immunol.,2008,38(5):1215-24)が示されている。
【0006】
B細胞増殖は、炎症性自己免疫疾患の発症において主要な役割を担うことが示されている(Puri,Frontiers in Immunology(2012),3(256),1-16;Walsh,Kidney International(2007)72,676-682)。例えば、B細胞は、炎症性自己免疫疾患の重要な構成要素であるT細胞自己反応性をサポートする。B細胞は、一旦活性化及び成熟されると、炎症の部位に移動して、炎症細胞を動員させまたは形質芽球に分化し得る。このように、B細胞の活性は、B細胞刺激性サイトカイン、B細胞表面受容体を標的化することによって、またはB細胞枯渇を介して影響され得る。リツキシマブ-B細胞表面受容体CD20を対象としたIgG1κマウス/ヒトキメラ化モノクローナル抗体-は、CD20+B細胞を枯渇させることが示されている。リツキシマブの使用は、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血または血管炎を処置するのに効果があることが示されている。例えば、リツキシマブによる処置は、末梢B細胞枯渇が実証されている抗好中球細胞質抗体関連(ANCA)全身性血管炎(AASV)に罹患している患者における疾患の緩和を結果として生じさせた(Walsh,2007;Lovric,Nephrol Dial Transplant(2009)24:179-185)。同様に、他の処置に耐性があるまたは耐えられない重篤な血管炎形態を示す患者を含めた、リツキシマブによる処置後の混合型クリオグロブリン血症血管炎を有する患者の3分の1~3分の2において、完全寛解が報告された(Cacoub,Ann Rheum Dis 2008;67:283-287)。同様に、リツキシマブは、特発性血小板減少性紫斑病(または免疫性血小板減少性紫斑病)(Garvey,British Journal of Haematology,(2008)141,149-169;Godeau,Blood(2008),112(4),999-1004;Medeo,European Journal of Haematology,(2008)81,165-169)及び自己免疫性溶血性貧血(Garvey,British Journal of Haematology,(2008)141,149-169)を有する患者の処置において効果があることが示されている。
【0007】
PI3Kδシグナル伝達は、B細胞の生存、移動及び活性化に関係している(Puri,Frontiers in Immunology,2012,3(256),1-16,1~5頁;及びClayton,J Exp Med,2002,196(6):753-63)。例えば、PI3Kδは、B細胞受容体によって駆動される抗原依存性B細胞活性化を必要とする。B細胞の接着、生存、活性化及び増殖を遮断することによって、PI3Kδ阻害が、B細胞がT細胞を活性化する能力を付与することで、活性化を防止し、かつ、自己抗体及び炎症性サイトカインの分泌を低減することができる。そのため、B細胞の活性化を阻害する能力により、PI3Kδ阻害剤が、リツキシマブによるB細胞枯渇などの同様の方法によって処置可能であるB細胞媒介疾患を処置することが期待された。実際、PI3Kδ阻害剤は、関節炎などの、リツキシマブによって処置可能でもある種々の自己免疫疾患の有用なマウスモデルであることが示されている(Puri(2012))。さらに、自己免疫に関連する生来のB細胞は、MZ及びB-1細胞がp110δ遺伝子を欠失するマウスにおいてほとんど存在しないため、PI3Kδ活性に感受性である(Puri(2012)。PI3Kδ阻害剤は、自己免疫疾患に関わるMZ及びB-1細胞の輸送及び活性化を低減することができる。
【0008】
免疫疾患におけるこれらの潜在的な役割に加えて、4つのクラスI PI3Kアイソフォームは、全て、がんにおいて役割を担う場合がある。p110αをコードする遺伝子は、乳、前立腺、結腸及び子宮内膜がんを含めた一般的ながんにおいて頻繁に突然変異する(Samuels,et al.,Science,2004,304(5670):554;Samuels,et al.,Curr Opin Oncol.2006,18(1):77-82)。これらの突然変異の80%が、酵素のヘリックスまたはキナーゼドメインにおける3つのアミノ酸置換のうち1つによって表され、キナーゼ活性の有意な上方調節をもたらし、細胞培養及び動物モデルにおいて発がん性形質転換を結果として生じさせる(Kang,et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2005,102(3):802-7;Bader,et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2006,103(5):1475-9)。かかる突然変異は、他のPI3Kアイソフォームにおいて同定されていないが、悪性腫瘍の発達及び進行に寄与し得るという証拠がある。PI3Kδの一貫した過剰発現は、急性骨髄芽球性白血病において観察され(Sujobert,et al.,Blood,2005,106(3):1063-6)、PI3Kδの阻害剤は、白血病細胞の成長を防止し得る(Billottet,et al.,Oncogene.2006,25(50):6648-59)。PI3Kγの高度発現は、慢性骨髄性白血病において見られる(Hickey,et al.,J Biol.Chem.2006,281(5):2441-50)。PI3Kβ,PI3Kγ及びPI3Kδの発現の改変はまた、脳、結腸及び膀胱のがんにおいても観察されている(Benistant,et al.,Oncogene,2000,19(44):5083-90;Mizoguchi,et al.,Brain Pathol.2004,14(4):372-7;Knobbe,et al.,Neuropathol Appl Neurobiol.2005,31(5):486-90)。さらに、これらのアイソフォームは、全て、細胞培養において発がん性であることが示されている(Kang,et al.,2006)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの理由から、炎症性障害、自己免疫疾患及びがんに使用され得る新規のPI3K阻害剤を開発する必要性がある。この発明は、この必要性などを対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願は、PI3Kδの阻害剤として有用である、式Iの化合物
【化1】
またはその薬学的に許容可能な塩を調製するプロセスを提供する。
【0011】
本願は、式Iの化合物の塩酸塩をさらに提供する。
【0012】
本願はまた、本明細書に記載されている塩酸塩と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物も提供する。
【0013】
本願は、PI3Kキナーゼの活性を阻害する方法であって、キナーゼを式Iの化合物の塩酸塩と接触させることを含む、上記方法をさらに提供する。
【0014】
本願はまた、患者における疾患を処置する方法であって、上記疾患が、PI3Kキナーゼの異常発現または活性に関連しており、上記患者に、治療有効量の式Iの化合物の塩酸塩を投与することを含む、上記方法も提供する。
【0015】
本願は、本明細書に記載されている方法のいずれかにおいて使用される式Iの化合物の塩酸塩を加えて提供する。
【0016】
本願は、本明細書に記載されている方法のいずれかにおいて使用される薬剤の製造のための式Iの化合物の塩酸塩の使用をさらに提供する。
【0017】
本願はまた、式Iの化合物の塩酸塩を調製するプロセスであって、式Iの化合物:
【化2】
を塩酸と反応させて、上記塩を形成することを含む、上記プロセスも提供する。
【0018】
本願は、式Iの化合物を調製するプロセスであって、式XVIの化合物:
【化3】
を酢酸ホルムアミジンと反応させて、上記式Iの化合物:
【化4】
を形成することを含む、上記プロセスを加えて提供する。
【0019】
本願は、式XIVの化合物:
【化5】
またはその薬学的に許容可能な塩をさらに提供する。
【0020】
本願はまた、式XVの化合物:
【化6】
またはその薬学的に許容可能な塩も提供する。
【0021】
本願は、式XVIの化合物:
【化7】
またはその薬学的に許容可能な塩を加えて提供する。
【0022】
本願は、式XIXの化合物:
【化8】
またはその薬学的に許容可能な塩をさらに提供する。
【0023】
本願はまた、式XXの化合物:
【化9】
またはその薬学的に許容可能な塩も提供する。
【0024】
本願は、式XXIの化合物:
【化10】
またはその薬学的に許容可能な塩を加えて提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施例3の塩に代表的なDSCサーモグラムを示す。
図2図2は、実施例3の塩に代表的なTGAデータを示す。
図3図3は、実施例3の塩に代表的なXRPDパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
化合物及び塩
本願は、PI3Kδの阻害剤として有用である、式Iの化合物:
【化11】
またはその薬学的に許容可能な塩を調製するプロセスであって、Etがエチルである、上記プロセスを提供する。
【0027】
本願は、式Iの化合物の塩をさらに提供する。
【0028】
したがって、いくつかの実施形態において、本願は、4-(3-(1-(4-アミノ-3-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)ピロリジン-2-オン塩酸塩を提供する。いくつかの実施形態において、本願は、(R)-4-(3-((S)-1-(4-アミノ-3-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)ピロリジン-2-オン塩酸塩を提供する。いくつかの実施形態において、塩は、(R)-4-(3-((S)-1-(4-アミノ-3-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)ピロリジン-2-オン対塩酸の化学量論比が1:1である。
【0029】
同じ物質の異なる形態は、例えば、吸湿性、溶解性、安定性などに関する異なるバルク特性を有する。高融点を有する形態は、多くの場合、固体形態を含有する薬物製剤の寿命を延長するのに有利である良好な熱力学的安定性を有する。より低融点を有する形態は、多くの場合、熱力学的にあまり安定でないが、増大した水溶性を有して、薬物バイオアベイラビリティの増大につながるという点において有利である。弱吸湿性である形態は、熱及び湿気に対する安定性に関して望ましく、長期保存の際の劣化に耐性である。
【0030】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供される式Iの化合物の塩酸塩は、結晶である。本明細書において使用されているとき、「結晶」または「結晶形態」は、結晶物質のある特定の格子構成を称することが意図される。同じ物質の異なる結晶形態は、結晶形態の各々に特徴的である異なる物性に起因する異なる結晶格子(例えば、単位セル)を典型的には有する。いくつかの場合において、異なる格子構成は、異なる水または溶媒含有率を有する。
【0031】
異なる塩形態は、固体状態の特性決定方法によって、例えば、X線粉末回折(XRPD)によって同定され得る。他の特性決定方法、例えば、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、動的水蒸気吸着(DVS)などは、形態の同定をさらに助け、また、安定性及び溶媒/水含有率の決定をさらに助ける。
【0032】
反射(ピーク)のXRPDパターンは、典型的には、特定の結晶形態の明確な特徴であるとされる。XRPDピークの相対強度は、とりわけ、サンプル調製技術、結晶サイズ分布、使用される種々のフィルタ、サンプル取り付け手順、及び用いられる具体的な機器に応じて広範に変動し得ることが周知である。いくつかの場合において、機器の種類または設定に応じて、新しいピークが観察される場合があり、または既存のピークが現れる場合がある。本明細書において使用されているとき、用語「ピーク」は、最大ピーク高さ/強度の少なくとも約4%の相対高さ/強度を有する反射を称する。また、機器の変更及び他の因子が2θ値に影響し得る。このように、ピーク指定、例えば、本明細書において報告されているものは、±約0.2°(2θ)変動する可能性があり、用語「実質的」及び「約」は、本明細書におけるXRPDの文脈において使用されているとき、上記の変動を包含することが意図される。
【0033】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物の塩酸塩は、2θで、約11.3°、約16.4°、約21.0°、約23.0°、約28.1°、約31.2°、及び約32.8°から選択される少なくとも1つのXRPDピークを有する。いくつかの実施形態において、式Iの化合物の塩酸塩は、2θで、約11.3°、約16.4°、約21.0°、約23.0°、約28.1°、約31.2°、及び約32.8°から選択される少なくとも2つのXRPDピークを有する。いくつかの実施形態において、式Iの化合物の塩酸塩は、2θで、約11.3°、約16.4°、約21.0°、約23.0°、約28.1°、約31.2°、及び約32.8°から選択される少なくとも3つのXRPDピークを有する。いくつかの実施形態において、式Iの化合物の塩酸塩は、2θで、約11.3°、約16.4°、約21.0°、約23.0°、約28.1°、約31.2°、及び約32.8°から選択される少なくとも4つのXRPDピークを有する。いくつかの実施形態において、式Iの化合物の塩酸塩は、2θで、約11.3°、約16.4°、約21.0°、約23.0°、約28.1°、約31.2°、及び約32.8°から選択される少なくとも5つのXRPDピークを有する。いくつかの実施形態において、式Iの化合物の塩酸塩は、図3に示されるXRPDプロファイルを実質的に有する。
【0034】
同じように、DSC、TGAまたは他の熱的実験に関連する温度の読み取りは、機器、具体的な設定、サンプル調製などに応じて約±3℃変動し得る。したがって、結晶形態は、図のいずれかに「実質的に」示されるDSCサーモグラムを有すると本明細書において報告されており、または、用語「約」は、かかる変動を受容すると理解される。いくつかの実施形態において、式Iの化合物の塩酸塩は、約207℃に吸熱ピークを有するDSCサーモグラムを有する。いくつかの実施形態において、式Iの化合物の塩酸塩は、図1に実質的に示されるDSCサーモグラムを有する。いくつかの実施形態において、式Iの化合物の塩酸塩は、図2に実質的に示されるTGAサーモグラムを有する。
【0035】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている塩及び化合物(例えば、式Iの化合物または式Iの化合物の塩酸塩)は、実質的に単離されている。「実質的に単離されている」は、塩または化合物が、形成または検出される環境から少なくとも部分的または実質的に分離されていることを意味している。部分的な分離は、例えば、本明細書に記載されている塩が富化された組成物を含むことができる。実質的な分離は、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%、もしくは少なくとも約99重量%の本明細書に記載されている塩を含有する組成物、またはその塩を含むことができる。化合物及びこれらの塩を単離するための方法は、当該分野において常套的である。
【0036】
中間体
本願は、式Iの化合物の調製に有用である中間体をさらに提供する。
【0037】
したがって、いくつかの実施形態において、本願は、式XIVの化合物:
【化12】
またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0038】
本願は、式XVの化合物:
【化13】
またはその薬学的に許容可能な塩をさらに提供する。
【0039】
本願は、式XVIの化合物:
【化14】
またはその薬学的に許容可能な塩をさらに提供する。
【0040】
本願は、式XIXの化合物:
【化15】
またはその薬学的に許容可能な塩をさらに提供する。
【0041】
本願は、式XXの化合物:
【化16】
またはその薬学的に許容可能な塩をさらに提供する。
【0042】
本願は、式XXIの化合物:
【化17】
またはその薬学的に許容可能な塩をさらに提供する。
【0043】
プロセス
本願は、式Iの塩:
【化18】
を調製するプロセスをさらに提供する。
【0044】
いくつかの実施形態において、上記プロセスは、式Iの化合物:
【化19】
を塩酸と反応させて、上記塩を形成することを含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、上記塩酸は、1M塩酸水溶液である。
【0046】
いくつかの実施形態において、1当量の式Iの化合物を基準にして約3.3~約3.7当量の塩酸が使用される。
【0047】
いくつかの実施形態において、上記反応は、約45℃~約55℃の温度で実施される。
【0048】
いくつかの実施形態において、上記プロセスは:
塩酸を式Iの化合物に室温で添加してスラリーを形成することと;
上記スラリーを約45℃~約55℃の温度に加熱して溶液を形成することと;
溶液を約0℃~約5℃の温度に冷却して上記塩を結晶化することと
を含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、上記プロセスは、式XVIの化合物:
【化20】
を酢酸ホルムアミジンと反応させて式Iの化合物:
【化21】
を形成することを含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、式XVIの化合物と酢酸ホルムアミジンとの上記反応は、1,2-エタンジオールを含む溶媒成分中で行われる。
【0051】
いくつかの実施形態において、式XVIの化合物と酢酸ホルムアミジンとの上記反応は、約100℃~約105℃の温度で実施される。
【0052】
いくつかの実施形態において、1当量の式XVIの化合物を基準にして約8~約10当量の酢酸ホルムアミジンが使用される。
【0053】
いくつかの実施形態において、上記プロセスは、式XVIの化合物を、式XVの化合物:
【化22】
を第3級アミンの存在下で(1-エトキシエチリデン)マロノニトリルと反応させることを含むプロセスによって調製することをさらに含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、上記第3級アミンは、N-メチルピロリジノンである。
【0055】
いくつかの実施形態において、式XVの化合物と(1-エトキシエチリデン)マロノニトリルとの上記反応は、約室温で実施される。
【0056】
いくつかの実施形態において、上記プロセスは、式XVの化合物を、式XIV-aの化合物:
【化23】
を第3級アミンの存在下でヒドラジンと反応させることを含むプロセスによって調製することをさらに含み、Pが、C1~6アルキルスルホニルである。
【0057】
いくつかの実施形態において、上記第3級アミンは、N-メチルピロリジノンである。
【0058】
いくつかの実施形態において、式XIV-aの化合物とヒドラジンとの上記反応は、約35℃~約60℃の温度で実施される。
【0059】
いくつかの実施形態において、式XIV-aの化合物とヒドラジンとの上記反応は、ジクロロメタンを含む溶媒成分中で行われる。
【0060】
いくつかの実施形態において、Pは、メタンスルホニル基である。
【0061】
いくつかの実施形態において、上記プロセスは、式XIVの化合物を、式XIIIの化合物:
【化24】
を第3級アミンの存在下でC1~6アルキルスルホニルハライドと反応させることを含むプロセスによって調製することをさらに含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、上記C1~6アルキルスルホニルハライドは、塩化メタンスルホニルである。
【0063】
いくつかの実施形態において、上記第3級アミンは、N,N-ジイソプロピルエチルアミンである。
【0064】
いくつかの実施形態において、1当量の式XIIIの化合物を基準にして約1.1~約1.5当量のアルキルスルホニルハライドが使用される。
【0065】
いくつかの実施形態において、式XIIIの上記化合物とC1~6アルキルスルホニルハライドとの上記反応は、約-10℃~約5℃の温度で実施される。
【0066】
いくつかの実施形態において、式XIIIの上記化合物とC1~6アルキルスルホニルハライドとの上記反応は、ジクロロメタンを含む溶媒成分中で実施される。
【0067】
いくつかの実施形態において、(i)上記式XIIIの化合物をC1~6アルキルスルホニルハライドと反応させるステップ;(ii)上記式XIV-aの化合物を第3級アミンの存在下でヒドラジンと反応させて式XVの化合物を形成するステップ;及び(iii)上記式XVの化合物を酢酸ホルムアミジンと反応させて式XVIの化合物を形成するステップは、式XIV-aの化合物または式XVの化合物を単離することなく同じポットにおいて行われる。
【0068】
いくつかの実施形態において、上記プロセスは、式XVIの化合物を、式XV-aの塩:
【化25】
を第3級アミンの存在下で(1-エトキシエチリデン)マロノニトリルと反応させることを含むプロセスによって調製することをさらに含み、TsOHがp-トルエンスルホン酸である。
【0069】
いくつかの実施形態において、上記第3級アミンは、N,N-ジイソプロピルエチルアミンである。
【0070】
いくつかの実施形態において、式XV-aの塩と(1-エトキシエチリデン)マロノニトリルとの上記反応は、約室温で実施される。
【0071】
いくつかの実施形態において、1当量の式XV-aの塩を基準にして約1.3~約1.6当量の(1-エトキシエチリデン)マロノニトリルが使用される。
【0072】
いくつかの実施形態において、式XV-aの塩と(1-エトキシエチリデン)マロノニトリルとの上記反応は、エタノールを含む溶媒成分中で行われる。
【0073】
いくつかの実施形態において、上記プロセスは、式XV-aの塩を、式XXIの化合物:
【化26】
をp-トルエンスルホン酸と反応させることを含むプロセスによって調製することをさらに含み、Bocがtert-ブトキシカルボニルである。
【0074】
いくつかの実施形態において、上記p-トルエンスルホン酸は、p-トルエンスルホン酸一水和物である。
【0075】
いくつかの実施形態において、1当量の式XXIの化合物を基準にして約1.3~約1.6当量のp-トルエンスルホン酸が使用される。
【0076】
いくつかの実施形態において、上記式XXIの化合物とp-トルエンスルホン酸との上記反応は、約45℃~約65℃の温度で実施される。
【0077】
いくつかの実施形態において、上記式XXIの化合物とp-トルエンスルホン酸との上記反応は、エタノールを含む溶媒成分中で行われる。
【0078】
いくつかの実施形態において、(i)上記式XXIの化合物をp-トルエンスルホン酸と反応させて式XV-aの塩を形成するステップ;及び(ii)上記式XV-aの塩を(1-エトキシエチリデン)マロノニトリルと反応させるステップは、式XV-aの塩を単離することなく同じポットにおいて行われる。
【0079】
いくつかの実施形態において、上記プロセスは、式XXIの化合物を、式XXの化合物:
【化27】
を独立して選択される1種以上の水素化触媒の存在下で水素ガスと反応させることを含むプロセスによって調製することをさらに含み、Bocがtert-ブトキシカルボニルである。
【0080】
いくつかの実施形態において、式XXの化合物と水素ガスとの上記反応は、独立して選択される2種の水素化触媒の存在下で実施される。
【0081】
いくつかの実施形態において、一方の水素化触媒が、テトラフルオロホウ酸ビス(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)であり、他方が、(R)-(-)-1-{(S)-2-[ビス(4-トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン]フェロセニル}エチル-ジ-t-ブチルホスフィンである。
【0082】
いくつかの実施形態において、1当量の式XXの化合物を基準にして約13.5~約14.5当量のテトラフルオロホウ酸ビス(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)が使用される。
【0083】
いくつかの実施形態において、1当量の式XXの化合物を基準にして約12~約13当量の(R)-(-)-1-{(S)-2-[ビス(4-トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン]フェロセニル}エチル-ジ-t-ブチルホスフィンが使用される。
【0084】
いくつかの実施形態において、式XXの化合物と水素ガスとの上記反応は、約室温で実施される。
【0085】
いくつかの実施形態において、式XXの化合物と水素ガスとの上記反応は、メタノールを含む溶媒成分中で行われる。
【0086】
いくつかの実施形態において、上記プロセスは、式XXの化合物を、式XIXの化合物:
【化28】
をカルバジン酸t-ブチルと反応させることを含むプロセスによって調製することをさらに含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、式XIXの化合物とカルバジン酸t-ブチルとの上記反応は、約60℃~約70℃の温度で実施される。
【0088】
いくつかの実施形態において、式XIXの化合物とカルバジン酸t-ブチルとの上記反応は、メタノールを含む溶媒成分中で行われる。
【0089】
いくつかの実施形態において、上記プロセスは、式XIXの化合物を、式XIII-aの化合物:
【化29】
を酸化剤の存在下で酸化することを含むプロセスによって調製することをさらに含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、上記酸化剤は、デス-マーチンペルヨージナンである。
【0091】
いくつかの実施形態において、1当量の式XIII-aの化合物を基準にして約1.2~約1.7当量の上記酸化剤が使用される。
【0092】
いくつかの実施形態において、式XIII-aの化合物の上記酸化は、約室温で実施される。
【0093】
いくつかの実施形態において、式XIII-aの化合物の上記酸化は、ジクロロメタンを含む溶媒成分中で行われる。
【0094】
いくつかの実施形態において、上記式XIIIの化合物は、式XIIの化合物:
【化30】
を溶媒成分の存在下で加熱することを含むプロセスによって調製される。
【0095】
いくつかの実施形態において、上記加熱は、約95℃~約105℃の温度で実施される。
【0096】
いくつかの実施形態において、上記溶媒成分は、1,4-ジオキサンを含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、上記溶媒成分は、トルエンを含む。
【0098】
いくつかの実施形態において、上記溶媒成分は、1,4-ジオキサン及びトルエンを含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、上記式XIIの化合物は、式XIの化合物:
【化31】
を強塩基の存在下で反応させることを含むプロセスによって調製される。
【0100】
いくつかの実施形態において、上記強塩基は、水酸化ナトリウムである。
【0101】
いくつかの実施形態において、上記強塩基は、1M水酸化ナトリウム水溶液である。
【0102】
いくつかの実施形態において、上記反応は、約室温で実施される。
【0103】
いくつかの実施形態において、上記式XIの化合物は、式Xの化合物:
【化32】
をラネーニッケルの存在下で水素ガスと反応させることを含むプロセスによって調製される。
【0104】
いくつかの実施形態において、上記反応は、約50℃~約70℃の温度で実施される。
【0105】
いくつかの実施形態において、上記式Xの化合物は、式IXの化合物:
【化33】
を三フッ化ホウ素エーテラート、(3aS)-1-メチル-3,3-ジフェニルテトラヒドロ-3H-ピロロ[1,2-c][1,3,2]オキサザボロール((S)-MeCBS)触媒及びボラン錯体の存在下で反応させるプロセスによって調製される。
【0106】
いくつかの実施形態において、1当量の式IXの化合物を基準にして約0.03~約0.07当量の三フッ化ホウ素エーテラートが使用される。
【0107】
いくつかの実施形態において、1当量の式IXの化合物を基準にして約0.05~約0.15当量の(3aS)-1-メチル-3,3-ジフェニルテトラヒドロ-3H-ピロロ[1,2-c][1,3,2]オキサザボロール((S)-MeCBS)触媒が使用される。
【0108】
いくつかの実施形態において、上記ボラン錯体は、THF中1.0Mのボラン-THF錯体である。
【0109】
いくつかの実施形態において、1当量の式IXの化合物を基準にして約0.9~約1.1当量のボラン錯体が使用される。
【0110】
いくつかの実施形態において、上記反応は、約室温で実施される。
【0111】
いくつかの実施形態において、上記式IXの化合物は、式VIIIの化合物:
【化34】
を溶媒成分の存在下でヨウ素と反応させることを含むプロセスによって調製される。
【0112】
いくつかの実施形態において、上記溶媒成分は、アセトンを含む。
【0113】
いくつかの実施形態において、1当量の式VIIIの化合物を基準にして約0.75~約1.25当量のヨウ素が使用される。
【0114】
いくつかの実施形態において、上記式VIIIの化合物は、式VIIの化合物:
【化35】
を触媒の存在下でマロン酸ジメチルと反応させることを含むプロセスによって調製される。
【0115】
いくつかの実施形態において、上記触媒は、(1S,2S)-N,N’-ジベンジルシクロヘキサン-1,2-ジアミン-ジブロモニッケル(Evansの触媒)である。
【0116】
いくつかの実施形態において、1当量の式VIIの化合物を基準にして約1.1~約1.3当量のマロン酸ジメチルが使用される。
【0117】
いくつかの実施形態において、1当量の式VIIの化合物を基準にして約0.02~約0.03当量の遷移金属触媒が使用される。
【0118】
いくつかの実施形態において、上記式VIIの化合物は、式VIの化合物:
【化36】
を有機酸の存在下でニトロメタンと反応させて第1混合物を形成することを含むプロセスによって調製される。
【0119】
いくつかの実施形態において、上記有機酸は氷酢酸である。
【0120】
いくつかの実施形態において、1当量の式VIの化合物を基準にして約9.5~約10.5当量のニトロメタンが使用される。
【0121】
いくつかの実施形態において、上記反応は、アミン塩基を上記第1混合物に添加して第2混合物を形成することをさらに含む。
【0122】
いくつかの実施形態において、上記アミン塩基は、ベンジルアミンである。
【0123】
いくつかの実施形態において、1当量の式VIの化合物を基準にして約0.2~約0.3当量のアミンが使用される。
【0124】
いくつかの実施形態において、上記第2混合物は、約55℃~約65℃で加熱される。
【0125】
いくつかの実施形態において、上記式VIの化合物は、式Vの化合物:
【化37】
を(C1~4アルキル)マグネシウムハライド錯体と反応させて第1混合物を形成することを含むプロセスによって調製される。
【0126】
いくつかの実施形態において、上記(C1~4アルキル)マグネシウムハライド錯体は、1.3M塩化イソプロピルマグネシウム塩化リチウム錯体である。
【0127】
いくつかの実施形態において、1当量の式Vの化合物を基準にして約1.1~約1.3当量の上記(C1~4アルキル)マグネシウムハライド錯体が使用される。
【0128】
いくつかの実施形態において、上記反応は、N-ホルミルモルホリンを上記第1混合物に添加して第2混合物を形成することをさらに含む。
【0129】
いくつかの実施形態において、1当量の式Vの化合物を基準にして約1.8~約2.2当量のN-ホルミルモルホリンが使用される。
【0130】
いくつかの実施形態において、上記反応は、約-5℃~約10℃の温度で実施される。
【0131】
いくつかの実施形態において、上記式Vの化合物は、米国特許出願公開第2013-0059835Al号に記載されている手順にしたがって調製される。
【0132】
いくつかの実施形態において、上記式VIの化合物は、式V-aの化合物:
【化38】
をリチウムジイソプロピルアミドの存在下でN,N-ジメチルホルムアミドと反応させることを含むプロセスによって調製される。
【0133】
いくつかの実施形態において、上記リチウムジイソプロピルアミドは、N,N-ジイソプロピルアミンをn-ブチルリチウムの存在下で反応させることによって調製される。
【0134】
いくつかの実施形態において、上記リチウムジイソプロピルアミドは、約-75℃~約5℃の温度で調製される。
【0135】
いくつかの実施形態において:
(ii)上記式V-aの化合物は、リチウムジイソプロピルアミドと反応して第1混合物を形成し;
(ii)N,N-ジメチルホルムアミドは、上記第1混合物に添加されて第2混合物を形成する。
【0136】
いくつかの実施形態において、1当量の式V-aの化合物を基準にして約1.2~約1.3当量のアミン塩基が使用される。
【0137】
いくつかの実施形態において、1当量の式V-aの化合物を基準にして約1.4~約1.6当量のN,N-ジメチルホルムアミドが使用される。
【0138】
いくつかの実施形態において、上記式V-aの化合物は、式IV-aの化合物:
【化39】
をp-トルエンスルホン酸の存在下で1,2-エタンジオールと反応させることを含むプロセスによって調製される。
【0139】
いくつかの実施形態において、上記p-トルエンスルホン酸は、p-トルエンスルホン酸一水和物である。
【0140】
いくつかの実施形態において、1当量の式IV-aの化合物を基準にして約2.2~約2.7当量の1,2-エタンジオールが使用される。
【0141】
いくつかの実施形態において、1当量の式IV-aの化合物を基準にして約0.05~約0.1当量のp-トルエンスルホン酸が使用される。
【0142】
いくつかの実施形態において、上記反応は、およそ還流で実施される。
【0143】
いくつかの実施形態において、上記式IV-aの化合物は、式IIの化合物:
【化40】
をアルカリ金属カーボネート塩基の存在下でCHCH-Xと反応させることを含むプロセスによって調製され:
がハライドである。
【0144】
いくつかの実施形態において、Xはヨージドである。
【0145】
いくつかの実施形態において、上記アルカリ金属カーボネート塩基は、炭酸カリウムである。
【0146】
いくつかの実施形態において、1当量の式IIの化合物を基準にして約1.1~約1.3当量のCHCH-Xが使用される。
【0147】
いくつかの実施形態において、1当量の式IIの化合物を基準にして約1.8~約2.2当量のアルカリ金属カーボネート塩基が使用される。
【0148】
いくつかの実施形態において、上記反応は、約55℃~約65℃の温度で実施される。
【0149】
いくつかの実施形態において、上記式IIの化合物は、米国特許出願公開第2013-0059835Al号に記載されている手順にしたがって調製される。
【0150】
明確のために別個の実施形態の文脈に記載されている本発明のある一定の特徴は、(これらの実施形態は、あたかも、複数の従属形式で書かれているかのように、組み合わされることが意図されるが)単一の実施形態で組み合わせて提供されてもよいことが認識される。逆に、簡潔のために単一の実施形態の文脈において記載されている本発明の種々の特徴は、別個にまたはいずれの好適なサブ組み合わせで提供されてもよい。
【0151】
本明細書に記載されている塩及び化合物は、非対称であることができる(例えば、1以上の立体中心を有する)。立体化学が示されていないときには、構造または名称によって別途示されていない限り、全ての立体異性体、例えば、エナンチオマー及びジアステレオマーが意図される。非対称置換炭素原子を含有する本願の塩及び化合物は、光学活性またはラセミ体で分離され得る。光学不活性な出発物質から光学活性形態をどのように調製するかについての方法は、当該分野において公知であり、例えば、ラセミ混合物の分割による、または立体選択的合成によるものである。オレフィン、C=N二重結合などの多くの幾何学的異性体もまた、本明細書に記載されている塩及び化合物に存在する可能性があり、全てのかかる安定な異性体が本願において企図される。本願の塩及び化合物のシス及びトランス幾何学的異性体が記載されており、異性体の混合物として、または別個の異性体形態として単離されてよい。
【0152】
塩及び化合物のラセミ混合物の分割は、当該分野において公知の多数の方法のいずれかによって実施され得る。例となる方法として、光学活性な塩形成性有機酸であるキラル分割酸を使用した分画再結晶が挙げられる。分画再結晶方法に好適な分割剤は、例えば、光学活性酸、例えば、酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデリン酸、リンゴ酸、乳酸または種々の光学活性カンファースルホン酸、例えば、β-カンファースルホン酸のD及びL形態である。分画結晶化方法に好適な他の分割剤として、α-メチルベンジルアミン(例えば、S及びR形態またはジアステレオマー的に純粋な形態)、2-フェニルグリシノール、ノルエフェドリン、エフェドリン、N-メチルエフェドリン、シクロヘキシルエチルアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサンなどの立体異性的に純粋な形態が挙げられる。
【0153】
ラセミ混合物の分割はまた、光学活性分割剤(例えば、ジニトロベンゾイルフェニルグリシン)が充填されたカラムにおいて溶離によっても実施され得る。好適な溶離溶媒組成は、当業者によって決定され得る。
【0154】
本発明の塩及び化合物はまた、中間体または最終塩もしくは化合物において生じる原子の全ての同位体を含むこともできる。同位体として、同じ原子番号であるが異なる質量数を有する原子を含む。例えば、水素の同位体として、三重水素及び重水素が挙げられる。
【0155】
いくつかの実施形態において、塩及び化合物は、他の物質、例えば、水及び溶媒(例えば水和物及び溶媒和物)と一緒に見出され得、または単離され得る。
【0156】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている化合物、またはその塩(例えば、式Iの化合物の塩酸塩)は、実質的に単離されている。「実質的に単離されている」は、化合物が、形成または検出された環境から少なくとも部分的または実質的に分離されていることを意味する。部分的な分離は、本発明の化合物が富化された組成物を例えば含むことができる。実質的な分離は、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%、または少なくとも約99重量%の本発明の化合物またはその塩を含有する組成物を含むことができる。化合物及びこれらの塩を単離するための方法は、当該分野において常套的である。
【0157】
句「薬学的に許容可能な」は、妥当なリスクベネフィット比に見合っている、適切な医学的判断の範囲内で過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずにヒト及び動物の組織と接触して使用するのに好適である化合物、材料、組成物、及び/または投薬形態を称するのに本明細書において用いられる。
【0158】
本明細書において提供される化合物は、その塩を含めて、認識されるように、公知の有機合成技術を使用して調製され得、多数の可能な合成経路のいずれかによって合成され得る。本明細書に記載されているプロセスは、当該分野において公知のいずれかの好適なによってモニタリングされ得る。例えば、生成物の形成は、分光学的手段、例えば、核磁気共鳴分光学(例えば、1Hまたは13C)、赤外線分光学、もしくは分光測光法(例えば、UV-可視)によって;またはクロマトグラフィ、例えば、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)もしくは薄層クロマトグラフィ(TLC)または他の関連技術によってモニタリングされ得る。
【0159】
本明細書において使用されているとき、用語「反応させる」は、当該分野において公知であるように使用され、分子レベルでの相互作用により化学的または物理的変換を達成させるような方法で化学試薬を共に合わせることを一般に称する。いくつかの実施形態において、反応には2つの試薬が関与しており、第1試薬に対して1以上の当量の第2試薬が使用される。本明細書に記載されているプロセスの反応ステップは、同定される生成物を調製するのに好適な時間及び条件で行われ得る。
【0160】
本明細書に記載されているプロセスの反応は、有機合成の分野の当業者によって容易に選択され得る好適な溶媒中で実施され得る。好適な溶媒は、反応が実施される温度、例えば、溶媒の凍結温度から溶媒の沸騰温度までの範囲であり得る温度において、出発物質(反応体)、中間体、または生成物と実質的に非反応性であり得る。所与の反応が、1種の溶媒または1種を超える溶媒の混合物において実施され得る。具体的な反応ステップに応じて、具体的な反応ステップに好適な溶媒が選択され得る。
【0161】
好適な溶媒として、ハロゲン化溶媒、例えば、四塩化炭素、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモホルム、クロロホルム、ブロモクロロメタン、ジブロモメタン、塩化ブチル、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、1,1-ジクロロエタン、2-クロロプロパン、1,2-ジクロロエタン、1,2-ジブロモエタン、ヘキサフルオロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、これらの混合物などを挙げることができる。
【0162】
好適なエーテル溶媒として:ジメトキシメタン、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、フラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、t-ブチルメチルエーテル、これらの混合物などが挙げられる。
【0163】
好適なプロトン性溶媒として、例として、限定することなく、水、メタノール、エタノール、2-ニトロエタノール、2-フルオロエタノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、エチレングリコール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-メトキシエタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、i-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、2-エトキシエタノール、ジエチレングリコール、1-、2-、もしくは3-ペンタノール、ネオ-ペンチルアルコール、t-ペンチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェノール、またはグリセロールを挙げることができる。
【0164】
好適な非プロトン性溶媒として、例として、限定することなく、テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(DMPU)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、Nメチルピロリジノン(NMP)、ホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、プロピオニトリル、ギ酸エチル、酢酸メチル、ヘキサクロロアセトン、アセトン、エチルメチルケトン、酢酸エチル、スルホラン、N,N-ジメチルプロピオンアミド、テトラメチルウレア、ニトロメタン、ニトロベンゼン、またはヘキサメチルホスホルアミドを挙げることができる。
【0165】
好適な炭化水素溶媒として、ベンゼン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、トルエン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、エチルベンゼン、m-、o-、もしくはp-キシレン、オクタン、インダン、ノナン、またはナフタレンが挙げられる。
【0166】
本明細書に記載されているプロセスの反応は、当業者によって容易に決定され得る適切な温度で実施され得る。反応温度は、例えば、存在する場合、試薬及び溶媒の融点及び沸点;反応の熱力学(例えば、激しい発熱反応は、低温で実施される必要がある場合がある);ならびに反応の速度論(例えば、高い活性化エネルギー障壁は、高温を必要とする場合がある)に依る。
【0167】
発現「周囲温度」及び「室温」または「室温(rt)」は、本明細書において使用されているとき、当該分野において理解されており、例えば、反応が実施される室内のおおよその温度である反応温度である温度、例えば、約20℃~約30℃の温度を一般に称する。
【0168】
本明細書に記載されているプロセスの反応は、空気中または不活性雰囲気下で実施され得る。典型的には、空気と実質的に反応性である試薬または生成物を含む反応は、当業者に周知である空気感受性の合成技術を使用して実施され得る。
【0169】
使用の方法
本発明の塩及び化合物は、例えば、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)を含めた種々のキナーゼの1以上の活性を調節することができる。用語「調節する」は、PI3Kファミリーの1以上のメンバーの活性を増加または減少させる能力を称することが意図される。したがって、本発明の塩及び化合物は、PI3Kを、本明細書に記載されている塩、化合物または組成物のいずれか1以上と接触させることによって、PI3Kを調節する方法において使用され得る。いくつかの実施形態において、本願の塩及び化合物は、1以上のPI3Kの阻害剤として作用し得る。さらなる実施形態において、本発明の塩及び化合物は、調節量の本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を投与することによって、受容体の調節を必要とする個体においてPI3Kの活性を調節するのに使用され得る。いくつかの実施形態において、調節は、阻害である。
【0170】
がん細胞の成長及び生存が、複数のシグナル伝達経路によって影響されることを前提として、本願は、薬物抵抗性のキナーゼ突然変異体によって特徴付けられる疾患状態を処置するのに有用である。また、活性を調節するキナーゼにおいて異なる優先傾向を示す異なるキナーゼ阻害剤が併用されてよい。このアプローチは、複数のシグナル伝達経路を標的化することによって疾患状態を処置するのに高効率であることを証明し、細胞における薬物抵抗性の生じやすさを低減し、疾患の処置の毒性を低減し得る。
【0171】
本発明の塩及び化合物が結合及び/または調節(例えば、阻害)するキナーゼとして、PI3Kファミリーのあらゆるメンバーが挙げられる。いくつかの実施形態において、PI3Kは、PI3Kα、PI3Kβ、PI3KδまたはPI3Kγである。いくつかの実施形態において、PI3Kは、PI3KδまたはPI3Kγである。いくつかの実施形態において、PI3Kは、PI3Kδである。いくつかの実施形態において、PI3Kは、PI3Kγである。いくつかの実施形態において、PI3Kは、突然変異を含む。突然変異は、1つのアミノ酸の別のものへの置き換え、または1以上のアミノ酸の欠失であり得る。かかる実施形態において、突然変異は、PI3Kのキナーゼドメインに存在し得る。
【0172】
いくつかの実施形態において、本発明の1を超える塩または化合物は、1のキナーゼ(例えば、PI3KδまたはPI3Kγ)の活性を阻害するのに使用される。
【0173】
いくつかの実施形態において、本発明の1を超える塩または化合物は、1を超えるキナーゼ、例えば、少なくとも2つのキナーゼ(例えば、PI3Kδ及びPI3Kγ)を阻害するのに使用される。
【0174】
いくつかの実施形態において、塩または化合物の1以上が、1のキナーゼ(例えば、PI3KδまたはPI3Kγ)の活性を阻害するのに別のキナーゼ阻害剤と併用される。
【0175】
いくつかの実施形態において、塩または化合物の1以上が、1を超えるキナーゼ(例えば、PI3KδまたはPI3Kγ)、例えば、少なくとも2つのキナーゼの活性を阻害するのに別のキナーゼ阻害剤と併用される。
【0176】
本発明の塩及び化合物は、選択的であり得る。「選択的」は、化合物が、少なくとも1の他のキナーゼと比較して、それぞれ、より大きな親和性または有効性を有するキナーゼに結合またはこれを阻害することを意味する。いくつかの実施形態において、本発明の塩及び化合物は、PI3Kα及び/またはPI3KβよりもPI3KδまたはPI3Kγの選択的阻害剤である。いくつかの実施形態において、本発明の塩及び化合物は、(例えば、PI3Kα、PI3Kβ及びPI3Kγよりも)PI3Kδの選択的阻害剤である。いくつかの実施形態において、本発明の塩及び化合物は、(例えば、PI3Kα、PI3Kβ及びPI3Kγよりも)PI3Kδの選択的阻害剤である。いくつかの実施形態において、選択性は、少なくとも約2倍、5倍、10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約500倍または少なくとも約1000倍であり得る。選択性は、当該分野において常套的である方法によって測定され得る。いくつかの実施形態において、選択性は、各酵素のKATP濃度で試験され得る。いくつかの実施形態において、本発明の塩及び化合物の選択性は、特定のPI3Kキナーゼ活性と関連する細胞アッセイによって決定され得る。
【0177】
本願の別の態様は、個体(例えば、患者)におけるキナーゼ(例えばPI3K)関連疾患または障害を、処置を必要とする個体に治療有効量または用量の本願の1以上の塩もしくは化合物またはその医薬組成物を投与することによって処置する方法に関する。PI3K関連疾患として、過剰発現及び/または異常活性レベルを含めたPI3Kの発現または活性に直接または間接的に関係するいずれの疾患、障害または状態も挙げることができる。いくつかの実施形態において、疾患は、Akt(プロテインキナーゼB)、ラパマイシン(mTOR)の哺乳類標的、またはホスホイノシチド依存性キナーゼ1(PDK1)に関係し得る。いくつかの実施形態において、mTOR関係疾患は、炎症、アテローム性動脈硬化症、乾癬、再狭窄、前立腺肥大症、骨障害、膵炎、血管形成、糖尿病性網膜症、アテローム性動脈硬化症、関節炎、免疫障害、腎疾患、またはがんであり得る。PI3K関連疾患として、PI3K活性を調節することによって予防、寛解、または治癒され得るいずれの疾患、障害または状態も挙げることができる。いくつかの実施形態において、疾患は、PI3Kの異常活性を特徴とする。いくつかの実施形態において、疾患は、突然変異体PI3Kを特徴とする。かかる実施形態において、突然変異は、PI3Kのキナーゼドメインに存在し得る。
【0178】
PI3K関連疾患の例として、例えば、関節リウマチ、アレルギー、喘息、糸球体腎炎、ループス、または上記のいずれかに関係する炎症を含めた系に関与する免疫に基づく疾患が挙げられる。
【0179】
PI3K関連疾患のさらなる例として、がん、例えば、乳、前立腺、結腸、子宮内膜、脳、膀胱、皮膚、子宮、卵巣、肺、膵臓、腎臓、胃、または血液がんが挙げられる。
【0180】
PI3K関連疾患のさらなる例として、肺疾患、例えば、急性肺損傷(ALI)及び成人呼吸窮迫症候群(ARDS)が挙げられる。
【0181】
PI3K関連疾患のさらなる例として、骨関節炎、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、骨障害、関節炎、糖尿病性網膜症、乾癬、前立腺肥大症、炎症、血管形成、膵炎、腎疾患、炎症性腸疾患、重症筋無力症、多発性硬化症、またはシェーグレン症候群などが挙げられる。
【0182】
PI3K関連疾患のさらなる例として、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、血管炎、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、天疱瘡、膜性腎症、慢性リンパ性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、有毛細胞白血病、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、節外辺縁帯リンパ腫、活性化B細胞型(ABC)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫または胚中心B細胞(GCB)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫が挙げられる。
【0183】
いくつかの実施形態において、疾患は、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、自己免疫性溶血性貧血、血管炎、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、天疱瘡、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、膜性腎症、慢性リンパ性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、有毛細胞白血病、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、節外辺縁帯リンパ腫、ホジキンリンパ腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、前リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、骨髄線維症、粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、脾性辺縁帯リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、形質細胞白血病、髄外性形質細胞腫、くすぶり型骨髄腫(無症状型骨髄腫として知られている)、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)及びB細胞リンパ腫から選択される。
【0184】
いくつかの実施形態において、上記方法は、再発性ITP及び難治性ITPから選択される特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を処置する方法である。
【0185】
いくつかの実施形態において、上記方法は、ベーチェット病、コーガン症候群、巨細胞性動脈炎、リウマチ性多発筋痛(PMR)、高安動脈炎、バージャー病(閉塞性血栓血管炎)、中枢神経系血管炎、川崎病、結節性多発動脈炎、チャーグ・ストラウス症候群、混合型クリオグロブリン血症血管炎(本態性またはC型肝炎ウイルス(HCV)誘発性)、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)、過敏性血管炎、顕微鏡的多発性血管炎、ウェゲナー肉芽腫症、及び抗好中球細胞質抗体関連(ANCA)全身性血管炎(AASV)から選択される血管炎を処置する方法である。
【0186】
いくつかの実施形態において、上記方法は、再発性NHL、難治性NHL、及び再発濾胞性NHLから選択される非ホジキンリンパ腫(NHL)を処置する方法である。
【0187】
いくつかの実施形態において、上記方法は、B細胞リンパ腫を処置する方法であって、上記B細胞リンパ腫が、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。
【0188】
いくつかの実施形態において、上記方法は、B細胞リンパ腫を処置する方法であって、上記B細胞リンパ腫が、活性化B細胞型(ABC)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、または胚中心B細胞(GCB)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0189】
いくつかの実施形態において、上記疾患は、骨関節炎、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、骨障害、関節炎、糖尿病性網膜症、乾癬、前立腺肥大症、炎症、血管形成、膵炎、腎疾患、炎症性腸疾患、重症筋無力症、多発性硬化症、またはシェーグレン症候群である。
【0190】
いくつかの実施形態において、上記疾患は、関節リウマチ、アレルギー、喘息、糸球体腎炎、ループス、または上記のいずれかに関係する炎症である。
【0191】
いくつかの実施形態において、上記ループスは、全身性エリテマトーデスまたはループス腎炎である。
【0192】
いくつかの実施形態において、上記疾患は、乳がん、前立腺がん、結腸がん、子宮内膜がん、脳がん、膀胱がん、皮膚がん、子宮のがん、卵巣のがん、肺がん、膵臓がん、腎臓がん、胃がん、または血液がんである。
【0193】
いくつかの実施形態において、上記血液がんは、急性骨髄芽球性白血病または慢性骨髄性白血病である。
【0194】
いくつかの実施形態において、上記血液がんは、緩慢性/侵攻性B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、及びホジキンリンパ腫(HL)を含めたB細胞起源のリンパ性悪性腫瘍である。
【0195】
いくつかの実施形態において、上記疾患は、急性肺損傷(ALI)または成人呼吸窮迫症候群(ARDS)である。
【0196】
本明細書において使用されているとき、用語「接触させる」は、インビトロ系またはインビボ系において示された部位を共に合わせることを称する。例えば、PI3Kを本発明の化合物と「接触させる」ことは、個体または患者、例えば、ヒトに、PI3Kを有する本願の化合物を投与すること、ならびに、例えば、本発明の化合物を、PI3Kを含有する細胞または精製調製物を含有するサンプルに導入することを含む。
【0197】
本明細書において使用されているとき、互換的に使用される用語「個体」または「患者」は、哺乳動物を含めたあらゆる動物、好ましくはマウス、ラット、他の齧歯動物、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、または霊長類、最も好ましくはヒトを称する。
【0198】
本明細書において使用されているとき、句「治療有効量」は、研究者、獣医、医師、または他の臨床医によって、組織、系、動物、個体またはヒトにおいて求められる生物学的または薬効的応答を生じさせる活性な化合物または医薬品の量を称する。いくつかの実施形態において、患者または個体に投与される化合物またはその薬学的に許容可能な塩の用量は、約1mg~約2g、約1mg~約1000mg、約1mg~約500mg、約1mg~約100mg、約1mg~50mg、または約50mg~約500mgである。
【0199】
本明細書において使用されているとき、用語「処置する」または「処置」は、(1)疾患を予防する;例えば、疾患、状態または障害に罹りやすい場合があるが疾患の病状または症状を未だ経ていないまたは示していない個体において疾患、状態または障害を予防する;(2)疾患を阻害する;例えば、疾患の病状または症状、状態または障害を経ているまたは示している個体において疾患、状態または障害を阻害する(すなわち、病状及び/または症状のさらなる発症を停止させる);及び(3)疾患を寛解する;例えば、疾患の病状または症状、状態または障害を経ているまたは示している個体において疾患、状態または障害を寛解する(すなわち、病状及び/または症状を回復させる)、例えば、疾患の重篤度を減少させる;のうち1以上を称する。
【0200】
併用療法
1以上の付加的な医薬品、例えば、化学療法薬、抗炎症剤、ステロイド、免疫抑制剤など、ならびにBcr-Abl、Flt-3、EGFR、HER2、JAK(例えば、JAK1もしくはJAK2)、c-MET、VEGFR、PDGFR、cKit、IGF-1R、RAF、FAK、Akt mTOR、PIM、及びAKT(例えば、AKT1、AKT2、もしくはAKT3)キナーゼ阻害剤、例えば、WO2006/056399に記載されているものなど、または他の剤、例えば、治療抗体は、PI3K関連疾患、障害または状態の処置のために、本願の塩または化合物と併用され得る。1以上の付加的な医薬品は、患者に同時にまたは逐次的に投与され得る。
【0201】
いくつかの実施形態において、付加的な医薬品は、JAK1及び/またはJAK2阻害剤である。いくつかの実施形態において、本願は、患者において本明細書に記載されている疾患(例えば、B細胞悪性腫瘍、例えば、びまん性B細胞リンパ腫)を処置する方法であって、患者に、本明細書に記載されている化合物またはその薬学的に許容可能な塩、ならびにJAK1及び/またはJAK2阻害剤を投与することを含む、上記方法を提供する。B細胞悪性腫瘍として、本明細書及び2014年8月8日に提出された米国特許出願第61/976,815号に記載されているものを挙げることができる。
【0202】
いくつかの実施形態において、JAK1及び/またはJAK2の阻害剤は、表1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩である。表1における化合物は、選択的JAK1阻害剤である(JAK2、JAK3及びTYK2よりも選択的)。1mMのATPにおいてアッセイAの方法によって得られたIC50を表1に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
+は、<10nMを意味する
++は、≦100nMを意味する
+++は、≦300nMを意味する
エナンチオマー1のデータ
エナンチオマー2のデータ
【0203】
いくつかの実施形態において、JAK1及び/またはJAK2の阻害剤は、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0204】
いくつかの実施形態において、JAK1及び/またはJAK2の阻害剤は、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルアジピン酸塩である。
【0205】
いくつかの実施形態において、JAK1及び/またはJAK2の阻害剤は、4-{3-(シアノメチル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-1-イル}-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0206】
いくつかの実施形態において、JAK1及び/またはJAK2の阻害剤は、(R)-3-[1-(6-クロロピリジン-2-イル)ピロリジン-3-イル]-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンニトリル、(R)-3-(1-[1,3]オキサゾロ[5,4-b]ピリジン-2-イルピロリジン-3-イル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンニトリル、(R)-4-[(4-{3-シアノ-2-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロピル}ピペラジン-1-イル)カルボニル]-3-フルオロベンゾニトリル、(R)-4-[(4-{3-シアノ-2-[3-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピロール-1-イル]プロピル}ピペラジン-1-イル)カルボニル]-3-フルオロベンゾニトリル、または(R)-4-(4-{3-[(ジメチルアミノ)メチル]-5-フルオロフェノキシ}ピペリジン-1-イル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]ブタンニトリル、(S)-3-[1-(6-クロロピリジン-2-イル)ピロリジン-3-イル]-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンニトリル、(S)-3-(1-[1,3]オキサゾロ[5,4-b]ピリジン-2-イルピロリジン-3-イル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンニトリル、(S)-4-[(4-{3-シアノ-2-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロピル}ピペラジン-1-イル)カルボニル]-3-フルオロベンゾニトリル、(S)-4-[(4-{3-シアノ-2-[3-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピロール-1-イル]プロピル}ピペラジン-1-イル)カルボニル]-3-フルオロベンゾニトリル、(S)-4-(4-{3-[(ジメチルアミノ)メチル]-5-フルオロフェノキシ}ピペリジン-1-イル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]ブタンニトリル;及び上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩から選択される。
【0207】
いくつかの実施形態において、JAK1及び/またはJAK2の阻害剤は、それぞれ、全体が参照により本明細書に組み込まれる、2010年5月21日に提出された米国特許出願公開第2010/0298334号、2010年8月31日に提出された米国特許出願公開第2011/0059951号、2011年3月9日に提出された米国特許出願公開第2011/0224190号、2011年11月18日に提出された米国特許出願公開第2012/0149681号、2011年11月18日に提出された米国特許出願公開第2012/0149682号、2012年6月19日に提出された米国特許出願公開第2013/0018034号、2012年8月17日に提出された米国特許出願公開第2013/0045963号、及び2013年5月17日に提出された米国特許出願公開第2014/0005166号の化合物から選択される。
【0208】
併用療法で使用される例となる抗体として、限定されないが、トラスツズマブ(例えば、抗-HER2)、ラニビズマブ(例えば、抗-VEGF-A)、ベバシズマブ(アバスチン(商標)、例えば、抗-VEGF)、パニツムマブ(例えば、抗-EGFR)、セツキシマブ(例えば、抗-EGFR)、リツキシマブ(リツキサン(商標)、抗-CD20)及びc-METを対象とする抗体が挙げられる。
【0209】
以下の剤の1以上が本願の塩または化合物と併用されてよく、非限定的リストとして提示される:細胞増殖抑制剤、シスプラチン、ドキソルビシン、タキソテール、タキソール、エトポシド、イリノテカン、カンプトスター(camptostar)、トポテカン、パクリタキセル、ドセタキセル、エポチロン、タモキシフェン、5-フルオロウラシル、メトクストレキサート(methoxtrexate)、テモゾロミド、シクロホスファミド、SCH66336、R115777、L778,123、BMS214662、イレッサ、タルセバ、EGFRに対する抗体、グリーベック(商標)、イントロン、ara-C、アドリアマイシン、シトキサン、ゲムシタビン、ウラシルマスタード、クロルメチン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホラミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、フルダラビンリン酸エステル、オキサリプラチン、ロイコビリン(leucovirin)、エロキサチン(商標)、ペントスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、デオキシコホルマイシン、マイトマイシン-C、L-アスパラギナーゼ、テニポシド17.α.-エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、テストラクトン、メゲストロールアセテート、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニソロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、メドロキシプロゲステロンアセテート、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェン、ゴセレリン、シスプラチン、カルボプラチン、ヒドロキシウレア、アムサクリン、プロカルバジン、ミトタン、ミトキサントロン、レバミソール、ナベルベン(Navelbene)、アナストラゾール(Anastrazole)、レトラゾール(Letrazole)、カペシタビン、レロキサフィン(Reloxafine)、ドロロキサフィン(Droloxafine)、ヘキサメチルメラミン、アバスチン、ハーセプチン、ベクザー、ベルケイド、ゼバリン、トリセノックス、ゼローダ、ビノレルビン、ポルフィマー、エルビタックス、リポソーマル、チオテパ、アルトレタミン、メルファラン、トラスツズマブ、レロゾール(Lerozole)、フルベストラント、エキセメスタン、フルベストラント、イホスフォミド(Ifosfomide)、リツキシマブ、C225、キャンパス、クロファラビン、クラドリビン、アフィジコロン(aphidicolon)、リツキサン、スニチニブ、ダサチニブ、テザシタビン、Sml1、フルダラビン、ペントスタチン、トリアピン、ジドックス、トリミドックス、アミドックス、3-AP、MDL-101,731、ベンダムスチン(トレアンダ)、オファツムマブ、及びGS-1101(CAL-101としても公知である)。
【0210】
例となる化学療法薬として、プロテオソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、サリドマイド、レブリミド、及びDNA損傷剤、例えば、メルファラン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、エトポシド、カルムスチンなどが挙げられる。
【0211】
例となるステロイドとして、副腎皮質ステロイド、例えば、デキサメタゾンまたはプレドニゾンが挙げられる。
【0212】
例となるBcr-Abl阻害剤として、米国特許第5,521,184号、WO04/005281、及び米国特許出願60/578,491号に記載されている属及び種の化合物及びその薬学的に許容可能な塩が挙げられる。
【0213】
例となる好適なFlt-3阻害剤として、WO03/037347、WO03/099771、及びWO04/046120に開示されている化合物及びその薬学的に許容可能な塩が挙げられる。
【0214】
例となる好適なRAF阻害剤として、WO00/09495及びWO05/028444に開示されている化合物及びその薬学的に許容可能な塩が挙げられる。
【0215】
例となる好適なFAK阻害剤として、WO04/080980、WO04/056786、WO03/024967、WO01/064655、WO00/053595、及びWO01/014402に開示されている化合物及びその薬学的に許容可能な塩が挙げられる。
【0216】
例となる好適なmTOR阻害剤として、WO2011/025889に開示されている化合物及びその薬学的に許容可能な塩が挙げられる。
【0217】
いくつかの実施形態において、本発明の塩及び化合物は、イマチニブを含めた1以上の他のキナーゼ阻害剤と併用されて、特に、イマチニブまたは他のキナーゼ阻害剤に耐性のある患者を処置することができる。
【0218】
いくつかの実施形態において、本発明の塩及び化合物は、がん、例えば、多発性骨髄腫の処置における化学療法薬と併用され得、その毒性作用の憎悪なしに、化学療法薬単独に対する応答と比較して処置応答を改善し得る。多発性骨髄腫の処置に使用される付加的な医薬品の例として、例えば、限定されることなく、メルファラン、メルファラン+プレドニゾン[MP]、ドキソルビシン、デキサメタゾン、及びベルケイド(ボルテゾミブ)を挙げることができる。多発性骨髄腫の処置に使用されるさらなる付加的な剤として、Bcr-Abl、Flt-3、RAF及びFAKキナーゼ阻害剤が挙げられる。相加または相乗効果は、本願のPI3K阻害剤を、付加的な剤と合わせることの望ましい結果である。さらに、デキサメタゾンなどの剤に対する多発性骨髄腫細胞の耐性は、本願のPI3K阻害剤による処置において可逆的であり得る。該剤は、単一または連続的な投薬形態で本発明化合物と併用され得、または、該剤は、別個の投薬形態として同時もしくは逐次的に投与され得る。
【0219】
いくつかの実施形態において、副腎皮質ステロイド、例えば、デキサメタゾンは、デキサメタゾンが連続的とは対照的に間欠的に投与される場合、本発明の化合物と組み合わせて患者に投与される。
【0220】
いくつかのさらなる実施形態において、本発明の塩及び化合物と他の治療剤との組み合わせは、骨髄移植または幹細胞移植の前、間、及び/または後に患者に投与され得る。
【0221】
医薬製剤及び投薬形態
本発明の化合物及び塩は、医薬品として用いられるとき、医薬組成物の形態で投与され得る。これらの組成物は、医薬分野で周知の方法で調製され得、局在的または全身的処置が望ましいか否か、及び処置される領域に応じて、種々の経路によって投与され得る。投与は、局所的(経皮、上皮、眼、ならびに、鼻腔内、膣内及び直腸送達を含めた粘膜を含む)、肺(例えば、噴霧器によるものを含めた散剤もしくはエアロゾルの吸入もしくは吹送による;気管内もしくは鼻腔内)、または経口もしくは非経口であってよい。非経口投与として、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内筋肉内または注射もしくは点滴;または頭蓋内、例えば、くも膜下もしくは脳室内投与が挙げられる。非経口投与は、単回ボーラス投与の形態であり得、または、例えば、連続注入ポンプによるものであってよい。局所投与用の医薬組成物及び製剤として、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ジェル、点滴剤、坐薬、スプレー、液体及び散剤が挙げられ得る。従来の医薬担体、水性の散剤または油性基剤、増粘剤などが必要であるまたは望ましい場合がある。
【0222】
この発明はまた、有効成分として本発明の化合物または塩(例えば、化合物式Iの塩酸塩)を1以上の薬学的に許容可能な担体(賦形剤)と組み合わせて含有する医薬組成物も含む。いくつかの実施形態において、組成物は、局所投与に好適である。本発明の組成物の作製において、有効成分は、典型的には、賦形剤と混合され、賦形剤によって希釈されまたはこのような担体内に、例えば、カプセル、サチェ、紙もしくは他の容器の形態で封入される。賦形剤は、希釈剤として機能するとき、有効成分のためのビヒクル、担体または媒体として作用し得る固体、半固体、または液体材料であり得る。このように、組成物は、例えば、最大で10重量%の活性化合物を含有する、錠剤、ピル、散剤、ロゼンジ、サチェ、カシェ、エリキシル、懸濁液、乳剤、液剤、シロップ、エアロゾル(固体としてもしくは液体媒体において)、軟膏の形態、軟及び硬ゼラチンカプセル、坐薬、無菌注入溶液、及び無菌のパッケージ化された散剤の形態であり得る。
【0223】
製剤の調製において、活性化合物または塩は、他の成分と合わせる前に、適切な粒径を付与するように粉砕され得る。活性化合物または塩が実質的に不溶性であるとき、200メッシュ未満の粒径に粉砕され得る。活性化合物または塩が実質的に水溶性であるとき、粒径は、製剤において実質的に均一な分布、例えば約40メッシュを付与する粉砕によって調整され得る。
【0224】
本発明の化合物及び塩は、公知の粉砕手順、例えば、湿潤粉砕を使用して粉砕されて、錠剤の形成及び他の製剤のタイプに適切な粒径を得てよい。本発明の塩及び化合物の微細に分割された(ナノ粒子状)調製物は、当業者に公知のプロセスによって調製され得る、例えば、国際出願第WO2002/000196号を参照されたい。
【0225】
好適な賦形剤のいくつかの例として、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、及びメチルセルロースが挙げられる。製剤として:潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱物油;湿潤剤;乳化及び懸濁剤;保存剤、例えば、メチル-及びプロピルヒドロキシ-ベンゾエート;甘味剤;ならびに香味剤を付加的に挙げることができる。本発明の組成物は、当業者に公知の手順を用いることによって、患者に投与した後、有効成分の迅速な、持続性の、または遅延性の放出を付与するように製剤化され得る。
【0226】
組成物は、約5~約1000mg(1g)、より通常では約100~約500mgの有効成分を含有する単一投与形態で製剤化され得る。用語「単一投与形態」は、好適な医薬賦形剤に関連して、所望の治療効果を生じるように算出された所定量の活性材料を含有する、ヒト対象及び他の哺乳動物のための単一の投薬として好適な物理的に別々の単位を称する。
【0227】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、約5~約50mgの有効成分を含有する。当業者は、これにより、約5~約10、約10~約15、約15~約20、約20~約25、約25~約30、約30~約35、約35~約40、約40~約45または約45~約50mgの有効成分を含有する組成物が具現化されることを認識する。
【0228】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、約2.5、約5、約7.5、約10、約12.5、約15、約17.5、約20、約22.5または約25mgの有効成分を含有する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、約5mgの有効成分を含有する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、約10mgの有効成分を含有する。
【0229】
同様の投薬量の本明細書に記載されている化合物及び塩が、本発明の方法及び使用において使用されてよい。
【0230】
活性化合物または塩は、広い投薬量範囲にわたって有効であり得、薬学的に有効な量で一般に投与される。しかし、実際に投与される化合物または塩の量は、処置される状態、選択された投与経路、投与される実際の化合物または塩、個体患者の年齢、体重及び応答、患者の症状の重篤度などを含めた、関係する状況にしたがって、医師によって通常決定されることが理解される。
【0231】
固体組成物、例えば、錠剤を調製するために、主な有効成分が医薬賦形剤と混合されて、本願の化合物または塩の均一な混合物を含有する固体の予備処方組成物を形成する。これらの予備処方組成物を均一と称するとき、有効成分は、組成物が、等価に有効な単一投与形態、例えば、錠剤、ピル及びカプセルに容易にさらに分割され得るように、典型的には、組成物全体にわたって均等に分散されている。この固体の予備処方物は、次いで、例えば、約0.1~約1000mgの本願の有効成分を含有する上記のタイプの単一投与形態にさらに分割される。
【0232】
本願の錠剤またはピルは、持続性作用の利益を与える投薬形態を付与するようにコーティングまたは他の場合には配合され得る。例えば、錠剤またはピルは、内部投薬及び外部投薬構成要素を含むことができ、後者は、前者の上のエンベロープの形態である。2つの構成要素は、胃内での崩壊に耐え、内部構成要素が無傷で十二指腸内に通されるまたはその放出が遅延されることを可能にする役割を果たす、腸溶層によって離され得る。種々の材料が、かかる腸溶層またはコーティングに使用され得、かかる材料は、いくつかのポリマー酸ならびにポリマー酸と、例えば、シェラック、セチルアルコール、及び酢酸セルロースとの混合物を含んでいる。
【0233】
本願の化合物、塩、及び組成物が経口投与のためにまたは注射によって組み込まれ得る液体形態として、水溶液、好適に風味付けされたシロップ、水性または油性懸濁液、及び食用油、例えば、綿実油、ゴマ油、ココナッツ油またはピーナッツ油によって風味付けされた乳剤、ならびにエリキシル及び同様の医薬ビヒクルが挙げられる。
【0234】
吸入または吹送用の組成物として、薬学的に許容可能な水性もしくは有機溶媒、またはこれらの混合物中の溶液及び懸濁液、ならびに散剤が挙げられる。液体または固体組成物は、上記のような好適な薬学的に許容可能な賦形剤を含有していてよい。いくつかの実施形態において、組成物は、局所または全身効果のための経口または鼻呼吸経路によって投与される。組成物は、不活性ガスの使用によって噴霧化され得る。噴霧化された溶液は、噴霧デバイスから直接吸い込まれてよく、噴霧デバイスは、フェイスマスク、テント、または間欠的陽圧呼吸機に取り付けられ得る。溶液、懸濁液、または散剤組成物は、製剤を適切な方式で送達するデバイスから経口でまたは経鼻的に投与され得る。
【0235】
局所製剤は、1以上の従来の担体を含有することができる。いくつかの実施形態において、軟膏は、水と、例えば、液体パラフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、プロピレングリコール、白色ワセリンなどから選択される1以上の疎水性担体とを含有することができる。クリームの担体組成物は、グリセロールと1以上の他の成分、例えばモノステアリン酸グリセリン、PEG-モノステアリン酸グリセリン及びセチルステアリルアルコールとを組み合わせた、水ベースであり得る。ジェルは、イソプロピルアルコール及び水を、他の成分、例えば、グリセロール、ヒドロキシエチルセルロースなどと好適には併用して製剤化され得る。いくつかの実施形態において、局所製剤は、少なくとも約0.1、少なくとも約0.25、少なくとも約0.5、少なくとも約1、少なくとも約2、または少なくとも約5重量%の本発明の化合物または塩を含有する。局所製剤は、例えば、選択的な兆候、例えば、乾癬または他の皮膚状態の処置のための指示に場合により関連する100gのチューブに好適にはパッケージ化され得る。
【0236】
患者に投与される化合物、塩または組成物の量は、何が投与されているか、投与の目的、例えば、予防または治療、患者の状態、投与の方式などに応じて変動する。治療用途において、組成物は、疾患及びその合併症の症状を治癒するまたは少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で、疾患に既に罹患している患者に投与され得る。有効用量は、処置されている疾患状態に、ならびに、因子、例えば、疾患の重篤度、患者の年齢、体重、及び全身状態などに応じて担当の臨床医の判断によって左右される。
【0237】
患者に投与される組成物は、上記の医薬組成物の形態であり得る。これらの組成物は、従来の滅菌技術によって滅菌され得、または滅菌濾過されてよい。水溶液は、そのまま使用のためにパッケージ化されても、凍結乾燥されてもよく、凍結乾燥された調製物は、投与の前に滅菌水性担体と合わされる。化合物調製物のpHは、典型的には、3と11との間、より好ましくは5~9、最も好ましくは7~8である。上記の賦形剤、担体、または安定剤のある特定のものの使用は、医薬塩の形成を結果として生じさせることが理解される。
【0238】
本願の化合物または塩の治療投薬量は、例えば、処置がなされる具体的な用途、化合物または塩の投与の方式、患者の健康及び状態、ならびに処方医師の判断にしたがって変動し得る。医薬組成物中の本発明の化合物または塩の割合または濃度は、投薬量、化学的特徴(例えば、疎水性)、及び投与の経路を含めたいくつかの因子に応じて変動し得る。例えば、本発明の化合物及び塩は、非経口投与のための約0.1~約10%w/vの化合物を含有する生理緩衝水溶液において付与され得る。いくつかの典型的な用量範囲は、約1μg/kg~約1g/kg体重/日である。いくつかの実施形態において、用量範囲は、約0.01mg/kg~約100mg/kg体重/日である。投薬量は、疾患または障害の進行のタイプ及び程度、特定の患者の全体の健康状態、選択される化合物の相対的な生物学的効率、賦形剤の製剤化、ならびにその投与の経路などの可変するものに左右されやすい。有効用量は、インビトロまたは動物モデル試験系から誘導される用量応答曲線から外挿され得る。
【0239】
本発明の組成物は、1以上の付加的な医薬品、例えば、化学療法薬、ステロイド、抗炎症化合物、または免疫抑制剤をさらに含むことができ、その例は、本明細書において提供される。
【0240】
キット
本願はまた、PI3K関連疾患または障害、例えばがんの例えば処置または予防において有用な医薬キットも含み、治療有効量の本発明の化合物を含む医薬組成物を含有する1以上の容器を含む。かかるキットは、当業者に容易に明らかであるように、所望により、1以上の種々の従来の医薬キット構成要素、例えば、1以上の薬学的に許容可能な担体を含む容器、付加的な容器などをさらに含むことができる。投与される成分の量を指示している、挿入物としてもしくはラベルとしてのいずれかでの指示書、投与のためのガイドライン、及び/または成分を混合するためのガイドラインもまた、該キットに含まれ得る。
【0241】
本発明を具体的な例によってより詳細に説明する。以下の例は、説明目的で付与されるものであり、本発明をいずれの方式にも限定することは意図されていない。当業者は、同じ結果を本質的に生じさせるように変化または変更され得る種々の重要性の低いパラメータを容易に認識する。式Iの化合物の塩酸塩及び式Iの化合物は、本明細書に記載されている少なくとも1つのアッセイにしたがってPI3K阻害剤であることが見出された。
【実施例
【0242】
本発明を以下の具体例によってより詳細に説明する。以下の例は、説明目的で付与されるものであり、本発明をいずれの方式にも限定することは意図されていない。1以上のキラル中心を含有する例としての化合物またはその塩を、別途特定しない限り、ラセミ形態でまたは異性体混合物として得た。
【0243】
一般的方法
調製した化合物のいくつかの分取LC-MS精製をWaters質量指向分画システムにおいて実施した。該システムの操作のための基本的な装置セットアップ、プロトコル、及び制御ソフトは文献に詳細に記載されている。例えば「Two-Pump At Column Dilution Configuration for Preparative LC-MS」,K.Blom,J.Combi.Chem.,4,295(2002);「Optimizing Preparative LC-MS Configurations and Methods for Parallel Synthesis Purification」,K.Blom,R.Sparks,J.Doughty,G.Everlof,T.Haque,A.Combs,J.Combi.Chem.,5,670(2003);及び「Preparative LC-MS Purification:Improved Compound Specific Method Optimization」,K.Blom,B.Glass,R.Sparks,A.Combs,J.Combi.Chem.,6,874-883(2004)を参照されたい。分離した化合物を、典型的には、純度分析のための分析用液体クロマトグラフィ質量分析(LCMS)に以下の条件で供した:機器;Agilent1100シリーズ、LC/MSD,カラム:Waters Sunfire(商標)C18 5μm、2.1×50mm、緩衝液:移動相A:水中0.025%TFA、及び移動相B:アセトニトリル;流量2.0mL/分において3分で勾配2%~80%のB。
【0244】
調製した化合物のいくつかをまた、実施例において示されているようにMS検出器またはフラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル)による逆相高速液体クロマトグラフィ(RP-HPLC)によって分取スケールで分離した。典型的な分取逆相高速液体クロマトグラフィ(RP-HPLC)カラム条件は以下の通りである:
pH=2精製:Waters Sunfire(商標)C18 5μm、19×100mmカラム、移動相A:水中0.1%TFA(トリフルオロ酢酸)、及び移動相B:アセトニトリルで溶離;流量は30mL/分であり、分離勾配を、文献[「Preparative LCMS Purification:Improved Compound Specific Method Optimization」、K.Blom,B.Glass,R.Sparks,A.Combs,J.Comb.Chem.,6,874-883(2004)を参照されたい]に記載されている化合物特異的方法最適化プロトコルを使用して各化合物について最適化した。典型的には、30×100mmカラムで使用した流量は、60mL/分であった。
pH=10精製:Waters XBridge C18 5μm、19×100mmカラム、移動相A:水中0.15%NHOH、及び移動相B:アセトニトリルで溶離;流量は30mL/分であり、分離勾配を、文献[「Preparative LCMS Purification:Improved Compound Specific Method Optimization」,K.Blom,B.Glass,R.Sparks,A.Combs,J.Comb.Chem.,6,874-883(2004)を参照されたい]に記載されている化合物特異的方法最適化プロトコルを使用して各化合物について最適化した。典型的には、30×100mmカラムで使用した流量は、60mL/分であった。
【0245】
調製した化合物のいくつかをまた、示差走査熱量測定(DSC)を介して分析した。典型的なDSC機器条件は以下の通りである:
オートサンプラによるTA Instrument示差走査熱量測定、モデルQ200:10℃/分で30~350℃;T-ゼロアルミニウムサンプルパン及び蓋;窒素ガス流:50mL/分。
Mettler Toledo示差走査熱量測定(DSC)822機器:10℃/分の加熱速度で40~340℃。
【0246】
調製した化合物のいくつかをまた、熱重量分析(TGA)を介して分析した。典型的なTGA機器条件は以下の通りである:
TA Instrument熱重量分析器、モデルPyris:温度ランプ:10℃/分で25℃~300℃;窒素パージガス流60mL/分;TGAセラミック坩堝サンプルホルダー。
TA Instrument Q500:温度ランプ:10℃/分で20℃~300℃。
【0247】
調製した化合物のいくつかをまた、X線粉末回折(XRPD)を介して分析した。典型的なXRPD機器条件は以下の通りである:
Bruker D2 PHASER X線粉末回折機器:X線放射波長:1.05406Å CuKAI;x線出力:30KV、10mA;サンプル散剤:ゼロバックグラウンドサンプルホルダーにおいて分散;一般測定条件:開始角度:5度、停止角度:60度、サンプリング:0.015度、走査速度:2度/分。
Rigaku Miniflex粉末回折計:Cu:Kβフィルタで1.054056Å;一般測定条件:開始角度:3度、停止角度:45度、サンプリング:0.02度、走査速度:2度/分。
【0248】
実施例1.(R)-4-(3-クロロ-6-エトキシ-2-フルオロ-5-((R)-1-ヒドロキシエチル)フェニル)ピロリジン-2-オンの合成
【化41】
ステップ1.1-(5-クロロ-4-フルオロ-2-ヒドロキシフェニル)エタノン(ii)
【化42】
4-クロロ-3-フルオロフェノール(i、166g、1.11mol)及び塩化アセチル(107mL、1.50mol)を室温で5-Lフラスコに仕込んだ。反応混合物を、バッチ温度を記録して6℃に低減させながら撹拌して透明な溶液にした。反応混合物を次いで60℃に2時間加熱した。反応混合物にニトロベンゼン(187.5mL、1.82mol)を仕込み、続いて室温に冷却した。三塩化アルミニウム(160g、1.2mmol)を次いで混合物に3回に分けて添加した(5分間隔で50g、50g及び60g)。バッチ温度は、添加の完了時に78℃に増加した。反応混合物を次いで100~120℃において3時間加熱し、このとき、HPLC分析は、反応が完了したことを示した。反応混合物を、次いで0℃に冷却し、ヘキサン(0.45L)、酢酸エチル(0.55L)を仕込み、次いで、1.0N塩酸水溶液(1.0L)を室温でゆっくりと仕込んだ。塩酸水溶液の添加は発熱であり、バッチ温度は、26℃から60℃に増加した。得られた混合物を室温で20分間撹拌した。層を分離し、有機層を1.0N塩酸水溶液(2×600mL)及び水(400mL)で順次洗浄した。有機層を、次いで、1.0N水酸化ナトリウム水溶液(2×1.4L)で抽出した。合わせた塩基性溶液を、さらなる析出物が分離されなくなるまで、12N塩酸水溶液の添加によってpH2に酸性化した。得られた固体を濾過によって収集し、水で洗浄し、フィルタ漏斗において吸引下で乾燥し、化合物iiを黄色固体として与えた(187.4g、89.5%)。H NMR (400 MHz, CDCl) δ 12.44 (d, J = 1.4 Hz, 1H), 7.78 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.77 (d, J = 10.2 Hz, 1H), 2.61 (s, 3H)。
【0249】
ステップ2.1-(5-クロロ-4-フルオロ-2-ヒドロキシ-3-ヨードフェニル)エタノン(iii)
【化43】
1-(5-クロロ-4-フルオロ-2-ヒドロキシフェニル)エタノン(ii、100.0g、530.3mmol)を酢酸(302mL)に溶解し、N-ヨードスクシンイミド(179.2g、796.5mmol)を溶液に添加した。反応混合物を、約61℃~約71℃で2時間撹拌し、このとき、HPLC分析が、反応が完了したことを示した。反応混合物を、次いで、室温に冷却し、水(613mL)を添加し、得られたスラリーを室温で30分間撹拌した。生成物を濾過によって収集し、水でリンスして褐色固体を付与した。湿潤生成物を酢酸(400mL)に60℃で溶解した。水(800mL)を(15分かけて)溶液に添加し、純粋な生成物を析出させた。生成物を濾過によって収集し、水(100mL)で洗浄した。生成物をフィルタ漏斗において吸引下で18時間乾燥し、化合物iiiを褐色固体として与えた(164.8g、95.0%の収率)。H NMR (300 MHz, DMSO-d) δ13.34 (s, 1H), 8.26 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 2.68 (s, 3H)。
【0250】
ステップ3.1-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロ-3-ヨードフェニル)エタノン(iv)
【化44】
冷却器及び温度計を備えた5-Lの三ツ口丸底フラスコにおいて、1-(5-クロロ-4-フルオロ-2-ヒドロキシ-3-ヨードフェニル)エタノン(iii、280g、840mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(600mL)に溶解した。溶解の際、内部温度が19.3℃から17.0℃まで降下した。ヨードエタン(81.2mL、1020mmol)を得られた混合物に添加した。炭酸カリウム(234g、1690mmol)を次いで2分かけて反応混合物に添加し、バッチ温度の変化が無いことを観察した。反応混合物を60℃に3時間加熱し、このとき、HPLC分析が、反応が完了したことを示した。反応混合物を室温に冷却させ、生成物を濾過によって収集した。固体をDCM(1.0L)、ヘキサン(500ml)及び水(2.1L)の混合物に溶解した。二相系を20℃で20分間撹拌した。層を分離し、水層をDCM(1.0L)で抽出した。合わせた有機層を水(2×250mL)及び塩水(60mL)で洗浄した。有機相を分離し、無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して乾固させて、化合物ivを黄色固体として与えた(292g、94%の収率)。H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ7.69 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 3.95 (q, J = 7.0 Hz, 2H), 2.62 (s, 3H), 1.49 (t, J = 7.0 Hz, 3H)。C1010ClFIOのLCMS(M+H):m/z=342.9。
【0251】
ステップ4.2-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロ-3-ヨードフェニル)-2-メチル-1,3-ジオキソラン(v)
【化45】
1-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロ-3-ヨードフェニル)エタノン(iv、250.0g、693.4mmol)及び1,2-エタンジオール(58.0mL、1040mmol)のトルエン(1.5L)溶液をp-トルエンスルホン酸一水和物(10.6g、55.5mmol)で処理した。反応フラスコをディーンスタークトラップに適合させ、混合物を還流で7時間加熱した。LCMS分析は、反応混合物が8.3%の出発物質及び91.7%の生成物を含有したことを示した。反応混合物を106℃に冷却し、追加量の1,2-エタンジオール(11.6mL、208mmol)を、シリンジを介して導入した。反応混合物を、次いで、還流でさらに8時間加熱した。LCMS分析は、反応混合物が3.6%の出発物質及び96.4%の生成物を含有したことを示した。反応混合物を106℃に冷却し、追加の1,2-エタンジオール(7.73mL、139mmol)を、シリンジを介して導入した。反応混合物を還流下でさらに15.5時間加熱した。LCMS分析は、反応混合物が2.2%の出発物質及び97.8%の生成物を含有したことを示した。
【0252】
反応混合物を次いで0℃に冷却し、水(200ml)及び飽和NaHCO溶液(300ml)を添加して、混合物をpH9に調整した。DCM(200ml)を添加し、バッチを10分間撹拌した。層を分離し、水層をトルエン(300mL)で抽出した。合わせた有機層を、水(200ml)及び飽和NaHCO溶液(200ml)の混合物、水(300ml)、塩水(300ml)で順次洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して乾固させて、粗化合物vを淡褐色固体(268g、100%の収率)として付与した。H NMR (400 MHz, CDCl) δ 7.59 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 4.26-3.96 (m, 4H), 3.92-3.72 (m, 2H), 1.74 (s, 3H), 1.50 (t, J = 7.0 Hz, 3 H)。C1214ClFIOのLCMS(M+H):m/z=387.0。
【0253】
ステップ5.3-クロロ-6-エトキシ-2-フルオロ-5-(2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)ベンズアルデヒド(vi)
【化46】
約0℃~約3℃において、2-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロ-3-ヨードフェニル)-2-メチル-1,3-ジオキソラン(v、135.0g、349.2mmol)(5.5%のケトンによるHPLCによって86.8%の純度)の無水テトラヒドロフラン(300mL)撹拌溶液に、THF(322.3mL、419.0mmol)中の1.3M塩化イソプロピルマグネシウム塩化リチウム錯体を1時間かけてゆっくりと添加した。反応混合物を約0℃~約5℃で30分間撹拌し、このとき、LCMS分析が、ヨード-マグネシウム交換反応が完了したことを示した。N-ホルミルモルホリン(71.1mL、700mmol)を、次いで、反応混合物に1時間かけて約0℃~約8℃で添加した。反応混合物を約0℃~約8℃でさらに1時間撹拌し、このとき、LCMS及びHPLC分析は、出発物質が消費され、有意量の脱ヨード化副生成物、2-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロフェニル)-2-メチル-1,3-ジオキソランが観察されたことを示した。反応をクエン酸(120.8g、628.6mmol)の水(1.20L)溶液によって0℃でクエンチした。クエンチした反応混合物を、次いで、EtOAc(2×600mL)によって抽出した。相は容易に分離された。合わせた有機層を水(300ml)及び塩水(500mL)で順次洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残渣を、0~10%EtOAc/ヘキサンによる、シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィによって精製して、粗生成物の化合物viを薄黄色固体として与え、これは、NMR分析によって示されるように、36mol%の脱ヨード化副生成物、2-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロフェニル)-2-メチル-1,3-ジオキソランを含有する所望の生成物3-クロロ-6-エトキシ-2-フルオロ-5-(2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)ベンズアルデヒド(vi、80g、80%)の混合物であった。粗生成物の化合物viを、対応する重亜硫酸ナトリウム付加物の形成によってさらに精製した。
【0254】
重亜硫酸ナトリウム(36.91g、354.7mmol)を水(74.3mL、4121mmol)に溶解した。粗製3-クロロ-6-エトキシ-2-フルオロ-5-(2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)ベンズアルデヒド(vi、80.00g、177.3mmol)の酢酸エチル(256.0mL)撹拌溶液に、新たに調製した重亜硫酸ナトリウム溶液を一回で添加した。溶液を約10分間撹拌し、析出物が観察された。スラリーを次いでさらに1時間撹拌した。アルデヒド-重亜硫酸塩付加物を濾過によって収集し、EtOAcで洗浄し、真空及び窒素雰囲気下で20時間乾燥して、白色固体(58.2g、83.6%の収率)を与えた。1.0M水酸化ナトリウム水溶液(296mL、296mmol)中で混合したアルデヒド-重亜硫酸塩付加物(58.2g、148mmol)にメチルt-ブチルエーテル(600mL)(MTBE)を添加した。反応混合物を室温で6分間撹拌して透明な二相混合物を与え、撹拌をさらに5分間継続した。有機相を収集し、水層をMTBE(2×300mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水(300mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、純粋な化合物viを白色結晶固体(31.4g、73.4%の収率)として与えた。H NMR (400 MHz, CDCl) δ 10.27 (s, 1H), 7.78 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 4.10-3.96 (m, 4H), 3.87-3.76 (m, 2H), 1.72 (s, 3H), 1.44 (t, J = 7.0 Hz, 3 H)。C1315ClFOのLCMS(M+H):m/z=289.0。
【0255】
ステップ6.(E)-2-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロ-3-(2-ニトロビニル)フェニル)-2-メチル-1,3-ジオキソラン(vii)
【化47】
オーバーヘッドスターラ、隔壁、熱電対、窒素入口及び冷却器を備えた5Lの4ッ口丸底フラスコに、3-クロロ-6-エトキシ-2-フルオロ-5-(2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)ベンズアルデヒド(vi、566.2g、1961mmol)、ニトロメタン(1060mL、19600mmol)、及び氷酢酸(1120mL)を仕込んだ。次に、反応混合物にベンジルアミン(53.6mL、490mmol)を仕込み、得られた混合物を60℃に加熱し、反応をLCMSによって5.5時間モニタリングした。最初の基本分析をt=0で採取した。反応を2時間及び5時間後に確認した。2時間後、未反応の出発物質アルデヒドが約20%存在した。5時間後、反応プロファイルは以下の通りであった:出発物質化合物vi(<2%)、中間体イミン(<4%)、生成物化合物vii(>93%)及びベンジルアミンマイケル付加物(検出されず)。5.5時間の反応時間で、反応が完了したようであった。反応混合物を室温に冷却し、酢酸エチル(3.0L)で希釈した。混合物を、含まれている体積が大きいため半分に分けてワークアップした。
【0256】
各半分を以下の手順にしたがって処理した:反応混合物を、まず、1.5M NaCl水溶液(2×1500mL;各洗浄後、仕込み量と比較して水性分の体積生産量が増大し、これは、酢酸及び/またはニトロメタンが除去されていたことを示唆した)で洗浄した。混合物を次いで約15℃に冷却し、4M NaOH水溶液(4×300mL)で水性抽出物のpHが8~9に達するまで洗浄した。最初の洗浄の際、水層は酸性のままであったが、水層が後の洗浄の際に僅かに塩基性になるにつれ、混合物が加熱され、抽出物が暗色になった。層を分離した。pH調整後の有機層を次いで1.5M塩化ナトリウム水溶液(1000mL)及び水(500mL)で洗浄した。これらの最終洗浄の際に乳化及び遅れての分割が観察された。有機相を無水MgSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた琥珀色シロップを高真空下で一晩置いた。シロップは固化し、740gの粗生成物が得られた。
【0257】
ヘプタン(1.3L)を粗生成物に添加してスラリーを形成し、これを、全ての固体が溶解されるまで60℃の水浴において加熱した。得られた溶液を、オーバーヘッドスターラ及び窒素入口を備えたクリーンな3Lの4ッ口丸底フラスコにおいて研磨濾過した。フィルタをヘプタン(40mL)でリンスした。濾過した溶液を室温に冷却し、5時間撹拌した。固体析出物が観察され、スラリーを氷浴において1時間で0℃に冷却した。生成物を濾過によって収集し、得られた湿潤ケーキを500mLの氷冷ヘプタンで洗浄した。生成物を真空吸引下でフィルタにおいて部分的に乾燥し、高真空下で一晩さらに乾燥した。濾液及び洗浄溶液を減圧下で濃縮し、得られた残渣を保持してカラム精製した。
【0258】
ヘプタン結晶化からの固体を小容量のDCM及び20%EtOAc/ヘキサンに溶解し、約1kgのシリカゲルを含有するカラムに投入した。カラムを20%EtOAc/ヘキサンで溶離した。所望の画分を合わせ、減圧下で濃縮して黄色固体を与えた。固体を高真空下で一晩乾燥し、497gの生成物、化合物viiを薄黄色結晶固体として与えた。
【0259】
濃縮した濾液及びヘプタン結晶化からの洗浄液を、20%EtOAc/ヘキサンを使用して、上記と同じカラムに投入した。カラムを上記と同じ溶媒系を使用して溶離し、ベースライン不純物及び残存酢酸を除去した。所望の画分を合わせ、減圧下で濃縮して、赤色がかった琥珀色油を与えた。油を高真空下に置き、約220gの粗生成物を得た。この粗生成物をヘプタン(500mL)に溶解し、少量の第1の産出物である固体生成物を蒔いた。スラリーを室温で16時間撹拌し、次いで氷浴において3時間冷却した。第2の産出物である生成物を濾過によって収集した。生成物を高真空下で乾燥し、110gの生成物を黄色固体として得た。得られた生成物である化合物viiの合計量は607g(93.3%の収率)であった。H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 7.94 (s, 2H), 7.68 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 4.07-3.95 (m, 4H), 3.82-3.73 (m, 2H), 1.65 (s, 3H), 1.39 (t, J = 7.0 Hz, 3H)。C1416ClFNOのLCMS(M+H):m/z=332.0。
【0260】
ステップ7.(R)-ジメチル-2-(1-(3-クロロ-6-エトキシ-2-フルオロ-5-(2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)フェニル)-2-ニトロエチル)マロネート(viii)
【化48】
(E)-2-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロ-3-(2-ニトロビニル)フェニル)-2-メチル-1,3-ジオキソラン(vii、352.8g、1064mmol)を含有する、磁気撹拌棒及び窒素入口を備えた2L丸底フラスコに、無水テトラヒドロフラン(1.06L)及びマロン酸ジメチル(146mL、1280mmol)を添加した。(1S,2S)-N,N’-ジベンジルシクロヘキサン-1,2-ジアミン-ジブロモニッケル(Evansの触媒、21.4g、26.6mmol)を反応混合物に仕込んだ。反応混合物は色が褐色であり、均一な溶液が観察された。反応混合物を室温で18.5時間撹拌した。18.5時間後、HPLCによって反応を分析した。未反応の出発物質、化合物viiは2%で存在した。反応混合物を減圧下で濃縮してTHFを除去し、得られた残渣を、フラッシュクロマトグラフィによって精製した(DCM/ヘキサンを投入に使用し、1422gのシリカゲルをこのカラムに使用し、カラムを10%~20%EtOAc/ヘキサンで溶離し;カラム画分を、溶離液として30%EtOAc/ヘキサンを使用してTLCによってモニタリングし、UVによって可視化した)。所望の画分を合わせ、減圧下で濃縮した。残渣を高真空下で乾燥した。時間とともに、シロップが固化して淡黄色固体(503.3g)となり、サンプルをキラルHPLC分析で採取した。キラル純度は、95.7%が所望の(R)-エナンチオマーであり、4.3%が望ましくない(S)-エナンチオマーであった。エタノール(1.0L)を固体に添加し、混合物を60℃の水浴で、固体が溶解するまで加熱した。溶液を、クリーンな3Lの4ッ口丸底において#1Whatmanフィルタ紙を通して研磨濾過した。濾過した溶液を撹拌しながら室温に冷却した。結晶化が撹拌の30分後に観察され、スラリーを室温で16時間撹拌した。スラリーを氷浴で1時間冷却した。生成物を濾過によって収集し、得られたフィルタケーキを氷冷エタノール(500mL)で洗浄し、フィルタにおいて部分的に乾燥した。固体を高真空下で乾燥し、所望の生成物viii(377.5g)を白色結晶固体として与えた。キラル純度をキラルHPLCによって求め、100%が所望の(R)-エナンチオマーであり、0%が望ましくない(S)-エナンチオマーであった。
【0261】
濾液及び洗浄液を合わせ、減圧下で濃縮して油(118.9g)とした。油をエタノール(475.0mL)(4mL/g)に溶解し、第1の産出物である結晶を蒔いた。得られたスラリーを16時間室温で撹拌し、次いで、氷浴において5.5時間冷却した。第2の産出物である生成物を濾過によって単離し、フィルタにおいて部分的に乾燥した。これを高真空下で乾燥して第2の産出物である生成物(31.0g)を与えた。キラル純度をキラルHPLCによって求め、98.3%が所望の(R)-エナンチオマーであり、1.7%が望ましくない(S)-エナンチオマーであった。第1及び第2の産出物の生成物の収量を合わせると408.5gであり、82.8%の収率であった。H NMR (500 MHz, DMSO-d) δ 7.51 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 5.20-4.81 (m, 2H), 4.62 (m, 1H), 4.14-4.03 (m, 2H), 4.03-3.97 (m, 2H), 3.95-3.88 (m, 1H), 3.84-3.72 (m, 2H), 3.70 (s, 3H), 3.38 (s, 3H), 1.61 (s, 3H), 1.39 (t, J = 6.9 Hz, 3H)。C1924ClFOのLCMS(M+H):m/z=463.9。
【0262】
ステップ8.2-(1-(3-アセチル-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)-2-ニトロエチル)マロン酸(R)-ジメチル(ix)
【化49】
機械撹拌機を備えた3ッ口の5L丸底フラスコにおける(R)-ジメチル-2-(1-(3-クロロ-6-エトキシ-2-フルオロ-5-(2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)フェニル)-2-ニトロエチル)マロネート(viii、244.0g、526.0mmol)のアセトン(1.2L)撹拌溶液に、ヨウ素(13.4g、52.6mmol)を室温で添加した。得られた褐色溶液を水浴において50℃で30分間加熱し、このとき、LCMS分析は、反応が完了したことを示した。反応混合物を、室温に冷却し、次いで、チオ硫酸ナトリウム(17.0g、108mmol)の水(160mL)溶液でクエンチして、薄黄色透明溶液を与えた。このとき、追加量の水(1.2L)をクエンチした溶液に仕込み、得られた白色スラリーを室温で1時間撹拌した。固体を次いで濾過によって収集し、アセトン(1.4L)に40℃で再溶解した。溶液を室温に冷却し、次いで、追加の水(1.4L)を添加した。得られた白色スラリーを室温で1時間撹拌した。固体を濾過によって収集し、水(3×100ml)で洗浄した。固体生成物をフィルタ漏斗において吸引下で窒素流によって46時間乾燥し、化合物ixを白色固体(212g、96%の収率)として与えた。H NMR (300 MHz, CDCl) δ 7.54 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 5.09-4.67 (m, 3H), 4.10-3.83 (m, 3H), 3.90 (s, 3H), 3.57 (s, 3H), 2.57 (s, 3H), 1.46 (t, J = 7.0 Hz, 3H)。C1720ClFNOのLCMS(M+H):m/z=420.1。
【0263】
ステップ9.2-((R)-1-(3-クロロ-6-エトキシ-2-フルオロ-5-((R)-1-ヒドロキシエチル)フェニル)-2-ニトロエチル)マロン酸ジメチル(x)
【化50】
室温で、5L丸底フラスコ中の(3aS)-1-メチル-3,3-ジフェニルテトラヒドロ-3H-ピロロ[1,2-c][1,3,2]オキサザボロール((S)-MeCBS、16.39g、59.12mmol、0.1当量)の無水THF(100mL)撹拌溶液に、1.0Mのボラン-THF錯体のTHF(591mL、591mmol、1当量)溶液、続いて、三フッ化ホウ素エーテラート(3.75mL、29.6mmol、0.05当量)を添加した。得られた溶液を室温で30分間撹拌した。[(1R)-1-(3-アセチル-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)-2-ニトロエチル]マロン酸ジメチル(ix、253.0g、591.2mmol)の無水THF(1.7L)溶液を、次いで、添加漏斗を介して60分かけて滴加した。ケトンixを含有するフラスコを無水THF(135mL)でリンスし、溶液を、添加漏斗を介して反応混合物に滴加した。得られた溶液を室温でさらに10分間撹拌し、このとき、LCMS分析は、ケトンからアルコールへの転換が完了したことを示した。反応を0℃でのメタノール(71.8mL、1770mmol)の滴加によってクエンチした。クエンチした反応混合物を室温で15分間撹拌し、その後、真空中で濃縮して粗生成物を与えた。このバッチ及び同様のバッチ(200gの出発物質を使用)の粗生成物を合わせ、0~5%のMeOH/DCMを溶離液として使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製して、化合物xを白色固体(437g、97.9%の収率)として与えた。H NMR (300 MHz, CDCl) δ 7.50 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 5.13 (q, J = 6.3 Hz, 1H), 5.01-4.65 (m, 3H), 4.14-3.89 (m, 3H), 3.79 (s, 3H), 3.57 (s, 3H), 1.57-1.42 (m, 6H)。C1721ClFNNaOのLCMS(M+Na):m/z=444.0。
【0264】
ステップ10.4-(3-クロロ-6-エトキシ-2-フルオロ-5-((R)-1-ヒドロキシエチル)フェニル)-2-オキソピロリジン-3-カルボン酸(4R)-メチル(xi)
【化51】
テトラヒドロフラン(800.0mL)及びラネーニッケル(120g、ピペットによる水の除去後)中に((1R)-1-{3-クロロ-6-エトキシ-2-フルオロ-5-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]フェニル}-2-ニトロエチル)マロン酸ジメチル(x、100.0g、237.1mmol)を含有する3ッ口モルトン丸底フラスコに、冷却器、機械撹拌機(ガラス撹拌棒及びテフロンベアリング)ならびに2つの水素ガスバルーン(真空パージ後)を適合させた。フラスコを65℃の油浴に入れた。バッチを16時間激しく撹拌し、バルーンを周期的に除去し、水素を再充填した。サンプルを採取し、HPLCによって分析した。生成物である化合物xiは、83%で存在した。反応混合物中には7.8%の非環状化アミン及び5.5%のヒドロキシルアミン副生成物が存在した。触媒を濾去した(ラネーニッケルが乾燥して空気に暴露しないように注意されなければならない)。濾液を蒸発乾固して、91gの粗生成物を白色泡状物として与えた。粗生成物(91g、82.6%の面積純度)を別の同様のバッチの粗生成物(93g、72.8%の純度)と合わせ、精製した。合わせた粗生成物(184g)をシリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィによって精製し(溶離液としてEtOAc/ヘキサン)、化合物xi(101.1g、93%のHPLC純度、59.3%の粗収率)を与えた。粗製材料をさらに精製することなく次のステップに使用した。C1620ClFNOのLCMS(M+H):m/z=360.0。
【0265】
ステップ11.(4R)-4-(3-クロロ-6-エトキシ-2-フルオロ-5-((R)-1-ヒドロキシエチル)フェニル)-2-オキソピロリジン-3-カルボン酸(xii)
【化52】
オーバーヘッドスターラ及び窒素入口を備えた5Lの4ッ口丸底フラスコ内に4-(3-クロロ-6-エトキシ-2-フルオロ-5-((R)-1-ヒドロキシエチル)フェニル)-2-オキソピロリジン-3-カルボン酸(4R)-メチル(xi、268g、581mmol)のテトラヒドロフラン(2150mL、26500mmol)溶液を仕込んだ。該溶液に、1.0Mの水酸化ナトリウムの水(1420mL、1420mmol)溶液を仕込んだ。得られた混濁溶液が1分以内に透明になった。反応混合物を室温で一晩撹拌した。15時間後に反応をLCMSによって分析し、出発物質が観察されなかったときに完了したとみなした。反応混合物を氷浴において9.5℃の内温まで冷却し、混合物を、30分かけて滴下漏斗を介して6.0M塩酸水溶液(237.0mL、1422mmol)を添加することによって、pH1~2に酸性化した。反応混合物を半分に分け、各半分を酢酸エチル(2×1L)で抽出した。合わせた水層を酢酸エチル(500mL)でさらに抽出した。2つの有機層を塩水(20%w/wNaCl/水、2×1000mL)で洗浄し、無水MgSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗製中間体である酸xiiを黄色がかった泡状物として与え、これを次の反応において直接使用した。H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ12.68 (br s, 1H), 8.26 (s, 1H), 7.52 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 5.27 (br s, 1H), 4.90 (q, J = 6.3 Hz, 1H), 4.28 (q, J = 8.8 Hz, 1H), 3.92-3.81 (m, 1H), 3.76-3.65 (m, 1H), 3.57 (t, J = 9.6 Hz, 1H), 3.46 (d, J = 9.4 Hz, 1H), 3.23 (q, J = 9.5 Hz, 1H), 1.33 (t, J = 6.9 Hz, 3H), 1.28 (d, J = 6.4 Hz, 3H).C1517ClFNNaOのLCMS(M+Na):m/z=368.0。
【0266】
ステップ12.(R)-4-(3-クロロ-6-エトキシ-2-フルオロ-5-((R)-1-ヒドロキシエチル)フェニル)ピロリジン-2-オン(xiii)
【化53】
粗化合物xiiを1,4-ジオキサン(976mL)及びトルエン(976mL)に溶解し、得られた黄色溶液を100℃で加熱した。反応が進行するにつれ、溶液の色が褐色になった。サンプルを1時間、2時間及び2.5時間の時点で取り出した。2.5時間では、HPLC分析が、酸である化合物12が0.38%であり、所望の生成物である化合物xiiiが78.8%であったことを示した。反応混合物を、室温に冷却し、クリーンな3Lの丸底フラスコ内で研磨濾過した。溶液を次いで減圧下で濃縮し、得られた残渣を高真空下に置いて、褐色泡状物(254g)を与えた。
【0267】
アセトニトリル(350mL)を褐色シロップに仕込み、65℃の水浴において、溶解が観察されるまで加熱した。溶液を室温に冷却し、16時間撹拌した。固体を溶液から分離した。得られたスラリーを氷浴において1時間冷却した。生成物を濾過によって収集し、フィルタケーキを400mLの氷冷アセトニトリルでリンスした。固体は吸湿性であるとみなした。固体をDCM(2.0L)に溶解し、シロップに濃縮し、これを高真空下に置いて、化合物xiiiを白色泡状物(106.4g)として生成した。
【0268】
濾液を暗色シロップ(約120g)に濃縮し、これをフラッシュクロマトグラフィによって精製した(4×330gシリカゲルカラム、DCMを投入し、50%~100%EtOAc/ヘキサンで溶離し、100%EtOAcを溶離液として使用してTLCによってモニタリングした)。クロマトグラフィからの画分を減圧下で濃縮し、高真空下に置いて、淡褐色泡状物(54.4g)を生成した。泡状物にMTBE(400mL)及びMeOH(10mL)を仕込み、56℃の水浴で15分間加熱すると、いくらかの固体が残存した。スラリーを撹拌しながら室温に冷却した。スラリーを濾過して不溶性物質を除去した。濾液をシロップに濃縮し、高真空下に置いて、泡状物を生成した。泡状物にアセトニトリル(72mL、1.5mL/g)を仕込み、溶液が均一になるまで60℃の水浴において加熱した。溶液を撹拌しながら室温に冷却し、固体が溶液から析出し、非常に粘性となった。追加のアセトニトリル(24mL)を仕込み、2mL/gへの希釈を調整した。スラリーを室温で16時間撹拌し、次いで、氷浴において1時間冷却した。生成物を濾過によって収集し、アセトニトリルでリンスした。化合物xiii(25g)を第2の産出物として与えた。合計131.4gの化合物xiiiを化合物xiから74.9%の収率で得た。H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 7.83 (s, 1H), 7.47 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 5.24 (d, J = 4.5 Hz, 1H), 4.96-4.85 (m, 1H), 4.08-3.92 (m, 1H), 3.80 (qt, J = 6.9, 3.5 Hz, 2H), 3.61-3.51 (m, 1H), 3.25 (t, J = 9.1 Hz, 1H), 2.61-2.50 (m, 1H), 2.35-2.26 (m, 1H), 1.33 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 1.27 (d, J = 6.4 Hz, 3H)。C1418ClFNOのLCMS(M+H):m/z=302.0。
【0269】
実施例2.(R)-4-(3-クロロ-6-エトキシ-2-フルオロ-5-((R)-1-ヒドロキシエチル)フェニル)ピロリジン-2-オンの代替合成
【化54】
【0270】
ステップ1.1-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロフェニル)エタノン(iv-a)
【化55】
1-(5-クロロ-4-フルオロ-2-ヒドロキシフェニル)エタノン(実施例1、ステップ1からの化合物ii、1350g、7160mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(3.32L)、ヨードエタン(1340g、8590mmol)、及び炭酸カリウム(1980g、14300mmol)を一緒に混合し、室温で45分間撹拌した。バッチ温度を22℃から55℃まで上げた。反応混合物を60℃に1時間加熱した(バッチ温度が30分で67℃に達し、次いで、60℃に降下した)。HPLC分析は、全ての出発物質が消費されたことを示した。水(10L)を一回で添加した(水を分割して添加するときには振とうは止める)。得られたスラリーを室温で30分間撹拌した。生成物を濾過によって収集し、水(3L)でリンスした。生成物をフィルタにおいて真空下で5日間乾燥し、化合物iv-aを黄褐色固体(1418g)として与えた。H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 7.69 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.30 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 4.15 (q, J = 7.0 Hz, 2H), 2.51 (s, 3H), 1.37 (t, J = 7.0 Hz, 3H)。
【0271】
ステップ2.2-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロフェニル)-2-メチル-1,3-ジオキソラン(v-a)
【化56】
1-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロフェニル)エタノン(iv-a、1481.0g、6836.3mmol)の溶液をトルエン(6L)に溶解した。1,2-エタンジオール(953mL、17100mmol)及びp-トルエンスルホン酸一水和物(104g、547mmol)を溶液に添加した。反応混合物を、ディーンスタークトラップを使用して104~110℃で還流まで加熱し、17.4時間で水を除去した。HPLC分析は、37%の出発物質が未反応で残存したことを示した。約600mLの蒸留物を除去し、反応混合物を還流下でさらに5時間(合計22時間)加熱した。HPLC分析は、さらなる反応が無いことを示した。
【0272】
出発物質化合物iv-a中の残存KCOが反応を中断させ得ることが推測された。そのため、反応混合物を室温に冷却し、1N塩酸水溶液(3×6.66L)で洗浄した。水性酸で洗浄後、有機層を反応ベッセルに戻した。1,2-エタンジオール(381mL、6840mmol)及びp-トルエンスルホン酸一水和物(104g、547mmol)を添加し、反応混合物を還流下で16時間加熱した。HPLC分析は、約20%の出発物質が未反応で残存したことを示した。約100mLの蒸留物を除去した。1,2-エタンジオール(380mL、6800mmol)を添加し、6時間(合計22時間)還流した。HPLCは、7%の出発物質が未反応で残存したことを示した。約125mLの蒸留物を除去した。反応混合物を還流まで6時間(合計28時間)加熱した。HPLCは、5.4%の出発物質が未反応で残存したことを示した。約125mLの蒸留物を除去した。反応混合物を、還流までさらに7時間加熱した。HPLC分析は、3.5%の出発物質が未反応で残存したことを示した。約80mLの蒸留物を除去した。反応は、この時点で完了したとみなした。
【0273】
反応混合物を1N水酸化ナトリウム水溶液(2×5.5L)で洗浄した。第1塩基性洗浄液をトルエン(2.1L)で抽出した。合わせたトルエン溶液を水(7L)で洗浄し、濃縮して2153gの暗色油を与えた。HPLC分析は、1.90%が出発物質、0.79%が脱ヨード生成物で、生成物純度が93.8%であったことを示した。H NMR分析は、約0.5当量のトルエン(約256g)が生成物に残存したことを示した。化合物v-aの補正収率は88.0%であった。H NMR (300 MHz, CDCl) δ 7.51 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 6.70 (d, J = 11.0 Hz, 1H), 4.17-3.92 (m, 4H), 3.91-3.80 (m, 2H), 1.75 (s, 3H), 1.46 (t, J = 7.0 Hz, 3H)。
【0274】
ステップ3.3-クロロ-6-エトキシ-2-フルオロ-5-(2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)ベンズアルデヒド(vi)
【化57】
オーバーヘッドスターラ、500mLの添加漏斗、窒素入口、隔壁、及び熱電対を備えた、オーブン乾燥した3Lの4ッ口丸底フラスコに、N,N-ジイソプロピルアミン(87.8mL、626mmol)及び無水テトラヒドロフラン(1090mL、13500mmol)を仕込んだ。この溶液を-72℃に冷却し、ヘキサン(261mL、652mmol)中2.5Mのn-ブチルリチウムを仕込んだ。n-ブチルリチウム溶液を18分かけて添加した。添加の際の最高内部温度は-65°であった。乾燥氷-アセトン浴を氷-水浴で置き換え、反応混合物を約-5℃~約0℃に加温し、15分間保持した。反応混合物を、次いで、-74.5℃に冷却した。
【0275】
2-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロフェニル)-2-メチル-1,3-ジオキソラン(v-a、136.1g、522.1mmol)を含有する別個の1Lの丸底フラスコに無水テトラヒドロフラン(456mL)を添加して、固体を溶解した。得られた溶液を氷浴において約0℃に冷却した。化合物v-aを含有する溶液を、反応温度を-70℃と-72.5℃との間に維持しながら、カニューラを介して40分かけてLDA溶液に移した。反応混合物が黄色スラリーになり、これを-74℃で37分間撹拌した。N,N-ジメチルホルムアミド(60.6mL、783mmol)を、シリンジを介して1回で仕込み、この添加は、-74.5℃から-66.5℃への発熱を生じた。添加後、反応をHPLCで90分間モニタリングした。出発物質は2.9%で存在した。冷浴を除去し、反応混合物を周囲温度において加温した。反応混合物をサンプリングし、3時間後に分析し、未反応の出発物質が1.5%で存在した。反応は完了したと見なし、これを、氷水(1.4L)への反応溶液の添加によってクエンチし、酢酸エチル(1.5L)で抽出した。水層を酢酸エチル(1.5L)で抽出し、有機層を合わせ、塩水(20%w/wNaCl水溶液、2×600mL)で洗浄し、無水MgSO上で乾燥させた。MgSOを濾過によって除去し、濾液を濃縮して、いくらか固体が存在する油とした。この残渣を塩化メチレンに溶解し、シリカゲルのパッド(586g)上に投入した。シリカパッドを2%EtOAc/DCMで溶離した(溶離液として100%DCMを使用してTLCによってモニタリングした)。所望の画分を収集し、減圧下で濃縮して、淡琥珀色油を与えた。油を高真空下に置いて、化合物viを黄色固体(146.5g、95.1%の収率)として与えた。H NMR (400 MHz, CDCl) δ 10.27 (s, 1H), 7.78 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 4.10-3.96 (m, 4H), 3.87-3.76 (m, 2H), 1.72 (s, 3H), 1.44 (t, J = 7.0 Hz, 3 H)。C1315ClFOのLCMS(M+H):m/z=289.1。
【0276】
ステップ4-10.(R)-4-(3-クロロ-6-エトキシ-2-フルオロ-5-((R)-1-ヒドロキシエチル)フェニル)ピロリジン-2-オン(xiii)
表題化合物を、実施例1、ステップ6~12に記載されている手順と類似する手順を使用して調製した。
【0277】
実施例3.(R)-4-(3-((S)-1-(4-アミノ-3-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)ピロリジン-2-オン塩酸塩
【化58】
ステップ1.(R)-1-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロ-3-((R)-5-オキソピロリジン-3-イル)フェニル)エチルメタンスルホネート(xiv)
【化59】
(R)-4-(3-クロロ-6-エトキシ-2-フルオロ-5-((R)-1-ヒドロキシエチル)フェニル)ピロリジン-2-オン(xiii、172.0g、570.0mmol)(99.83%で、147gからなった:0.09%のキラル純度、99.33%の化学純度;及び25g、87.46%:12.54%のキラル純度、86.74%の化学純度)を塩化メチレン(860mL)に溶解した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(149mL、855mmol)を約-7℃~約2℃で溶液に添加した。塩化メタンスルホニル(57.4mL、741mmol)を反応混合物に25分かけて滴加した。懸濁液が透明溶液になった。30分の反応時点で、HPLCが、反応が完了したことを示した。化合物xivを含有するこの反応混合物を次の反応において直接使用した。
【0278】
ステップ2.(R)-4-(3-クロロ-6-エトキシ-2-フルオロ-5-((S)-1-ヒドラジニルエチル)フェニル)ピロリジン-2-オン(xv)
【化60】
0℃で、ヒドラジン(178.9mL、5.7mol)を1回で添加し、続いて、N-メチルピロリジノン(860mL)を、ステップ1からの化合物xivを含有する反応混合物に添加した。反応混合物が混濁し、いくらかの析出物が形成した。混合物を40~57℃において窒素下で90分間加熱した。HPLCは、全てのメシレートが消費されたことを示した。
【0279】
反応混合物を室温に冷却し、重炭酸ナトリウム(28.3g)の飽和水溶液(300mL)を添加した。混合物を20分間撹拌し、このとき、ジクロロメタン(300mL)を添加した。有機層を分離し、重炭酸ナトリウム(14.2g)の水(150mL)溶液で撹拌した。水層をジクロロメタン(200mL×2)で抽出した。合わせた有機層を塩水(80mL)で洗浄し、無水NaSO(311g)上で乾燥させ、濃縮し、トルエン(250mL)と共沸混合して、化合物xvを含有する無色のN-メチルピロリジノン溶液を与え、これを次の反応において直接使用した。サンプルをNMR分析用に精製した。H NMR (400 MHz, DMSO-d), δ 7.88 (s, 1H), 7.66 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 4.42 (q, J = 6.7 Hz, 1H), 4.06-3.88 (m, 2H), 3.79-3.66 (m, 1H), 3.65-3.51 (m, 1H), 3.24 (t, J = 8.8 Hz, 1H), 2.60-2.46 (m, 1H), 2.36-2.25 (m, 1H), 1.37 (t, J = 6.9 Hz, 3H), 1.26 (d, J = 6.8 Hz, 3H)。C1419ClFNのLCMS(M+H):m/z=316.1。
【0280】
ステップ3.5-アミノ-1-((S)-1-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロ-3-((R)-5-オキソピロリジン-3-イル)フェニル)エチル)-3-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボニトリル(xvi)
【化61】
撹拌しながら、(1-エトキシエチリデン)マロノニトリル(101g、741mmol)を、ステップ2からの化合物xvのN-メチルピロリジノン溶液に分割して添加し、混合物を窒素下、室温で撹拌した。15分後、HPLC分析は、生成物である化合物xviに対して、11%が出発物質のヒドラジン、化合物xvであることを示した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(15mL、86mmol)を添加し、反応混合物を室温で15時間撹拌した。HPLC分析は、5.6%の出発物質が残存したことを示した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(5mL、30mmol)を添加し、反応混合物を室温で5時間撹拌した。HPLCは、5.6%の出発物質が残存したことを示した。反応混合物を2.5日間撹拌し、2つの同様のバッチと合わせ、一緒にワークアップした。
【0281】
化合物xviの3つのバッチの反応混合物を合わせた。0.5M水酸化ナトリウム水溶液(3.8L)を10~20℃で添加し、5分間撹拌した。HPLCは、全ての出発物質(1-エトキシエチリデン)マロノニトリルが消費されたことを示した。酢酸エチル(4.0L)を添加し、混合物を、15分間撹拌した。層を分離した。有機層を0.5M水酸化ナトリウム水溶液(2.38L)で洗浄した。層を分離した。合わせた水層を酢酸エチル(2×2L)で抽出した。合わせた有機層を1.0M塩酸水溶液(3.56L)で洗浄し、得られた水層のpHは2~3であった。有機層を塩水(5L)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濃縮させ、高真空下で40時間乾燥して、化合物xviを淡褐色泡状固体(702.7g)として与えた。H NMR (500 MHz, DMSO-d) δ 7.78 (s, 1H), 7.44 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.53 (s, 2H), 5.64 (q, J = 6.7 Hz, 1H), 3.96 (m, 1H), 3.74 (m, 1H), 3.34 (m, 1H), 3.58 (m, 2H), 2.59-2.50 (m, 1H), 2.29 (m, 1H), 2.04 (s, 3H), 1.57 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.37 (t, J = 6.9 Hz, 3H)。C1922ClFNのLCMS(M+H):m/z=406.1。
【0282】
化合物xviの3つのステップ(メシル化、ヒドラジン分解及びピラゾール形成)の全体収率は、化合物xiiiの合計仕込み量から72.8%であると算出された。純度は、約80%であることがHPLCによって求められた。HPLC分析は、塩基性水層にいくらかの生成物が既存していることを示し、これを、続いて、EtOAc(2L)で抽出し、1.0M塩酸水溶液及び塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮し、高真空ポンプにおいて40時間乾燥し、化合物xviを褐色油(134g、13.9%)として付与した。
【0283】
ステップ4.(R)-4-(3-((S)-1-(4-アミノ-3-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)ピロリジン-2-オン(xvii)
【化62】
5-アミノ-1-((S)-1-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロ-3-((R)-5-オキソピロリジン-3-イル)フェニル)エチル)-3-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボニトリル(xvi、702.7g、1731mmol)を、酢酸ホルムアミジン(1802g、17.31mol)及び1,2-エタンジオール(3.51L)を含む反応ベッセルに添加した。反応混合物を102~103℃で撹拌しながら18時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、酢酸エチル(7L)及び水(6L)を添加し、二相混合物を15分間撹拌した。有機層を分離し、水層を追加の水(4.5L)及び酢酸エチル(3L)で希釈し、10分間撹拌した。有機層を分離した。水層を酢酸エチル(2L)でさらに抽出した。有機層を合わせ、水(4.5L)で撹拌した。水層を分離し、有機層を、セライトのパッド(約1kg)を通して濾過した。有機層を、混合物を10分間撹拌することによって1.0M塩酸水溶液(7L)で抽出した。水層を分離した。透明な褐色有機層を追加の1.0M塩酸水溶液(3L)で10分間撹拌した。水層を分離した。水性酸性層を合わせ、トルエン(500mL)で洗浄した。水性酸性溶液を氷-水浴で冷却し、塩化メチレン(4L)を添加した。5~15℃で、水酸化ナトリウム(530g)の水溶液(530mL)(50%NaOH溶液)を、11~12の溶液pHまで、ゆっくりと添加した。固体析出物を観察した。追加の塩化メチレン(3.5L)及びメタノール(300mL)を添加し、混合物を10~15分間撹拌した。固体生成物を濾過によって収集し、フィルタにおいて吸引下で16時間乾燥して、化合物xvii(289.7g)を褐色固体として与えた。H NMR (400MHz, DMSO-d) δ 8.11 (s, 1H), 7.82 (s, 1H), 7.52 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.30 (br s, 2H), 6.23 (q, J = 7.0 Hz, 1H), 3.97 (p, J = 9.2 Hz, 1H), 3.90-3.73 (m, 2H), 3.57 (t, J = 9.9 Hz, 1H), 3.25 (dd, J = 9.2, 8.7 Hz, 1H), 2.48 (s, 3H), 2.60-2.50 (m, 1H), 2.36-2.20 (m, 1H), 1.69 (d, J = 7.1 Hz, 3 H), 1.39 (t, J = 6.9 Hz, 3H)。C2023ClFNのLCMS(M+H):m/z=433.3。
【0284】
濾液を分離漏斗に移し、有機層を分離した。水層を塩化メチレン(5L)及びメタノール(200mL)で撹拌した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮し、高真空ポンプにおいて16時間乾燥して、追加量259.3gを褐色固体として与えた。xviiの合計収量は548.3gであり、73.2%の収率であった。
【0285】
ステップ5.(R)-4-(3-((S)-1-(4-アミノ-3-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)ピロリジン-2-オン塩酸塩(xviii)
【化63】
1.0M塩酸水(HCl、5.0L、5.0mol)溶液を(R)-4-(3-((S)-1-(4-アミノ-3-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)ピロリジン-2-オン(xvii、609.8g、1.409mol)に室温で添加した。得られた粘性スラリーを、次いで、50℃に加熱し、透明溶液を付与した。追加の1.82Lの1.0M塩酸水溶液(HCl、1.82L、1.82mol;合計6.82L、6.82mol、4.84当量)を透明溶液に50℃で添加し、溶液を、次いで、研磨フィルタを通しておよそ50℃で濾過した。研磨濾過した反応混合物を2時間かけて徐々に室温まで冷却し、その後、0~5℃にさらに冷却した。反応混合物を0~5℃で少なくとも20分間撹拌して析出を開始した。得られた固体を濾過によって収集し、冷母液の部分、続いて、1.0M塩酸水(HCl、200mL)でリンスし、フィルタ漏斗において室温にて吸引下で一定重量まで(約39時間)乾燥して、式Iの化合物の塩酸塩:(R)-4-(3-((S)-1-(4-アミノ-3-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)ピロリジン-2-オン塩酸塩(xviii、348.7g、661.2g、理論、52.7%)を白色結晶粉末として付与した。H NMR (400MHz, DMSO-d) δ 9.39 (br s, 1H), 9.05 (br s, 1H), 8.50 (s, 1H), 7.84 (s, 1H), 7.59 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.28 (q, J = 6.9 Hz, 1H), 3.95 (m, 1H), 3.79 (m, 2H), 3.55 (m, 1H), 3.22 (m, 1H), 2.59 (s, 3H), 2.55 (ddd, J = 16.8, 10.3, 2.3 Hz, 1H), 2.28 (ddd, J = 16.8, 8.6, 1.5 Hz, 1H), 1.73 (d, J = 7.0 Hz, 3H), 1.38 (t, J = 6.9 Hz, 3H) ppm。13C NMR (100MHz, DMSO-d) δ 175.3, 156.4 (JCF = 249.8 Hz), 153.8 (JCF = 7.0 Hz), 152.4, 150.8, 147.3, 144.3, 131.4 (JCF = 3.5 Hz), 127.3, 126.4 (JCF = 12.6 Hz), 116.1 (JCF = 18.4 Hz), 98.0, 72.1, 49.1, 46.6, 36.0, 29.4, 21.0, 15.4, 14.6 ppm. 19F NMR (376 MHz, DMSO-d) δ - 113.6 (d, JFH = 7.7 Hz)ppm。C2023l2FN(MW469.34);LCMS(EI)m/e433.2(M+H;xviiの正確な質量:432.15)。KFによる含水率:3.63重量%;滴定による塩化物(Cl)含有率:7.56重量%(理論で7.56%)。
【0286】
(R)-4-(3-((S)-1-(4-アミノ-3-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)ピロリジン-2-オン塩酸塩結晶形態の溶融/分解範囲を、10℃/分の加熱速度を使用して30℃の開始温度から350℃の最終温度までDSCによって求めた。DSCサーモグラムにより、図1に示すような194.37℃での開始及び206.55℃でのピークを有する1つの吸熱事象が明らかになった。
【0287】
TGAサーモグラムは、210℃までで4.3%の合計重量損失を示した。図2に示すように、210℃を超えると塩が分解し始める。
【0288】
代表的なX線粉末回折(XRPD)パターンを図3に示し、表2は、相当するピーク及び強度を示す。
【表2】
【0289】
実施例4.(R)-4-(3-((S)-1-(4-アミノ-3-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)ピロリジン-2-オン塩酸塩の代替合成
【化64】
ステップ1.(R)-4-(3-アセチル-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)ピロリジン-2-オン(xix)
【化65】
(4R)-4-[3-クロロ-6-エトキシ-2-フルオロ-5-(1-ヒドロキシエチル)フェニル]ピロリジン-2-オン(ピロリジノンにおいてR配置、及び第2級アルコールにおいてR-またはS配置を有する2つのジアステレオマーの混合物として)(xiii、16.7g、55.3mmol)をジクロロメタン(167mL)に溶解した。溶液を氷-水浴において冷却し、デス-マーチンペルヨージナン(35.2g、83.0mmol)を少量ずつ添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、このとき、HPLC分析が反応完了を示した。亜硫酸ナトリウム(28g、220mmol)の水(70mL)溶液を反応混合物に添加し、混合物を20分間撹拌した。1.0Mの水酸化ナトリウム溶液を混合物に添加し、10分間撹拌した。層を沈殿させ、有機層を分離し、1M水酸化ナトリウム水溶液(66mL)及び水(60mL)で順次洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤を濾過によって除去し、濾液を濃縮して、(R)-4-[3-アセチル-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル]ピロリジン-2-オンを油として与え、これを、さらに精製することなく次の反応において使用した。
【0290】
ステップ2.2-(1-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロ-3-(5-オキソピロリジン-3-イル)フェニル)エチリデン)ヒドラジンカルボン酸(R,E)-tert-ブチル(xx)
【化66】
粗製(R)-4-[3-アセチル-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル]ピロリジン-2-オン(ステップ1からの化合物xix)をメタノール(60mL)に溶解し、カルバジン酸t-ブチル(8.04g、60.8mmol)を溶液に添加した。反応混合物を65℃で3.5日間撹拌し、このとき、HPLC分析が反応完了を示した。混合物を減圧下で濃縮し、残渣を酢酸エチル中0~5%のメタノールの混合物で溶離するシリカゲルクロマトグラフィによって精製して、2-(1-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロ-3-(5-オキソピロリジン-3-イル)フェニル)エチリデン)ヒドラジンカルボン酸(R,E)-tert-ブチル(xx、19.5g、85%)を与えた。H NMR (500MHz, DMSO-d) δ 9.83 (s, 1H), 7.78 (s, 1H), 7.36 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 4.07 (p, J = 9.1 Hz, 1H), 3.84-3.69 (m, 2H), 3.59 (t, J = 9.5 Hz, 1H), 3.28 (t, J = 9.5 Hz, 1H), 2.54 (m, 1H), 2.33 (m, 1H), 2.14 (s, 3H), 1.46 (s, 9H), 1.25 (t, J = 7.0 Hz, 3H)。C1925ClFNNaOのLCMS(M+Na):m/z=436.1。
【0291】
ステップ3.2-((S)-1-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロ-3-((R)-5-オキソピロリジン-3-イル)フェニル)エチル)ヒドラジンカルボン酸tert-ブチル(xxi)
【化67】
2-(1-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロ-3-(5-オキソピロリジン-3-イル)フェニル)エチリデン)ヒドラジンカルボン酸(R,E)-tert-ブチル(xx、0.5g、1.2mmol)をメタノール(25mL)に溶解し、溶液を窒素ガスで5分間バブリングした。テトラフルオロホウ酸ビス(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)(35mg、0.086mmol)及び(R)-(-)-1-{(S)-2-[ビス(4-トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン]フェロセニル}エチル-ジ-t-ブチルホスフィン(64mg、0.094mmol)を溶液に添加し、得られた反応混合物を窒素ガスで30分間バブリングした。反応混合物を、次いで、水素ガス(56psi)圧下で2.5日間振とうした。反応混合物を減圧下で濃縮し、得られた残渣を、酢酸エチル中メタノール(0~10%)の混合物で溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製した。所望の画分を濃縮し、2-((S)-1-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロ-3-((R)-5-オキソピロリジン-3-イル)フェニル)エチル)ヒドラジンカルボン酸tert-ブチル(xxi、428mg、85%の収率)を与えた。H NMR (500MHz, DMSO-d) δ 8.18 (s, 1H), 7.78 (s, 1H), 7.53 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 4.73 (s, 1H), 4.41 (br s, 1H), 3.98 (m, 1H), 3.75 (m, 2H), 3.61 (m, 1H), 3.26 (m, 1H), 2.53 (m, 1H), 2.29 (dd, J = 17.6, 8.6 Hz, 1H), 1.32 (s, 12H), 1.10 (d, J = 6.5 Hz, 1H)。C1927ClFNNaOのLCMS(M+Na):m/z=437.9。キラルHPLC分析は、生成物が、所望のジアステレオマー2-((S)-1-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロ-3-((R)-5-オキソピロリジン-3-イル)フェニル)エチル)ヒドラジンカルボン酸tert-ブチル(xxi)を85.6%で、望ましくないジアステレオマー2-((R)-1-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロ-3-((R)-5-オキソピロリジン-3-イル)フェニル)エチル)ヒドラジンカルボン酸tert-ブチルを14.3%で含有したことを示した。
【0292】
ステップ4.5-アミノ-1-((S)-1-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロ-3-((R)-5-オキソピロリジン-3-イル)フェニル)エチル)-3-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボニトリル(xvi)
【化68】
2-((S)-1-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロ-3-((R)-5-オキソピロリジン-3-イル)フェニル)エチル)ヒドラジンカルボン酸tert-ブチル(xxi、130mg、0.31mmol)及びp-トルエンスルホン酸一水和物(86mg、0.45mmol)をエタノール(3mL)に添加し、反応混合物を50℃で20時間加熱した。HPLC分析は、約88%の未反応の出発物質が存在したことを示した。追加量のp-トルエンスルホン酸(86mg、0.45mmol)を仕込み、反応混合物を60℃で24時間加熱した。HPLC分析は、完全なBoc-脱保護を示した。この反応混合物に(1-エトキシエチリデン)マロノニトリル(61mg、0.45mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(260μL、1.5mmol)を添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌した。HPLCは、ピラゾール環形成の完了を示した。1.0M水酸化ナトリウム水溶液を反応混合物に添加し、20分間撹拌した。酢酸エチル(20mL)を混合物に添加し、撹拌した。二相混合物を沈殿させた。酢酸エチル層を収集し、水層を酢酸エチル(10mL)で抽出した。合わせた酢酸エチル溶液に1M塩酸水(5mL)を添加し、15分間撹拌した。二相混合物を沈殿させ、有機層を収集し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過によって除去し、濾液を濃縮して、5-アミノ-1-((S)-1-(5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロ-3-((R)-5-オキソピロリジン-3-イル)フェニル)エチル)-3-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボニトリル(xvi、126mg、粗生成物の定量的収量)を与え、さらに精製することなく次のステップにおいて使用した。
【0293】
ステップ5.(R)-4-(3-((S)-1-(4-アミノ-3-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)ピロリジン-2-オン(xvii)
【化69】
5-アミノ-1-{(1S)-1-[5-クロロ-2-エトキシ-4-フルオロ-3-(5-オキソピロリジン-3-イル)フェニル]エチル}-3-メチル-1Hピラゾール-4-カルボニトリル(xvi、126mg、0.31mmol)に酢酸ホルムアミジン(323mg、3.1mmol)及び1,2-エタンジオール(2mL)を添加した。反応混合物を104~105℃で撹拌しながら加熱した。18時間後、HPLC分析は、約44%の出発物質化合物xviが残存していることを示した。反応混合物を115℃で24時間加熱した。HPLC分析は、反応が完了したことを示した。反応混合物を室温に冷却し、酢酸エチル(10mL)及び水(5ml)を添加した。二相混合物を撹拌した。層を分離させた。有機層を収集し、水層を酢酸エチル(5mL)で抽出した。合わせた酢酸エチル溶液を水(5mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過によって除去し、濾液を濃縮して、残渣とした。残渣をシリカゲルクロマトグラフィによって精製した。カラムを塩化メチレン中のメタノール(0~5%)の混合物で溶離した。所望の画分を合わせ、蒸発させて、(R)-4-(3-((S)-1-(4-アミノ-3-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)ピロリジン-2-オン(xvii、94mg、69.9%の収率)を与えた。H NMR (400MHz, DMSO-d) δ 8.11 (s, 1H), 7.82 (s, 1H), 7.52 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.30 (br s, 2H), 6.23 (q, J = 7.0 Hz, 1H), 3.97 (p, J = 9.2 Hz, 1H), 3.90-3.73 (m, 2H), 3.57 (t, J = 9.9 Hz, 1H), 3.25 (dd, J = 9.2, 8.7 Hz, 1H), 2.48 (s, 3H), 2.60-2.50 (m, 1H), 2.36-2.20 (m, 1H), 1.69 (d, J = 7.1 Hz, 3 H), 1.39 (t, J = 6.9 Hz, 3H)。C2023ClFNのLCMS(M+H):m/z=433.3。
【0294】
生成物キラルHPLC分析は、所望のジアステレオマー(R)-4-(3-((S)-1-(4-アミノ-3-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)ピロリジン-2-オン(xvii)を87%で、望ましくないジアステレオマー(R)-4-(3-((R)-1-(4-アミノ-3-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)ピロリジン-2-オンを13%で含有したことを示した。
【0295】
ステップ6.(R)-4-(3-((S)-1-(4-アミノ-3-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)ピロリジン-2-オン塩酸塩
表題生成物を、実施例3、ステップ5に記載されている手順にしたがって調製した。得られた塩酸塩は、化学純度、キラル純度、及び固体状態の特性を含めて、あらゆる比較可能な態様において、実施例3に記載されている合成プロセスから作製される材料とよく一致している。
【0296】
実施例A1:PI3K酵素アッセイ
液体キナーゼ基質、D-myo-ホスファチジルイノシトール4,5-ビスホスファート(PtdIns(4,5)P2)D(+)-sn-1,2-ジ-O-オクタノイルグリセリル、3-O-ホスホ結合(PIP2)、ビオチン化I(1,3,4,5)P4、PI(3,4,5)P3検出器タンパク質を含むPI3-キナーゼ発光アッセイキットをEchelon Biosciences(ソルトレークシティ、ユタ州)から購入する。ドナー及びアクセプタービーズを含むAlphaScreen(商標)GST検出キットを、PerkinElmer Life Sciences(ウォルサム,マサチューセッツ州)から購入する。PI3Kδ(p110δ/p85α)を、Millipore(ベッドフォード、マサチューセッツ州)から購入する。ATP、MgCl、DTT、EDTA、HEPES及びCHAPSをSigma-Aldrich(セントルイス、ミズーリ州)から購入する。
【0297】
PI3KδのためのAlphaScreen(商標)アッセイ
キナーゼ反応をThermo Fisher Scientific製の384ウェルREMPプレートにおいて40μLの最終容積で行う。阻害剤をまずDMSOにおいて段階希釈し、プレートウェルに添加し、その後、他の反応成分を添加する。アッセイにおけるDMSOの最終濃度は2%である。PI3Kアッセイを、室温で、50mM HEPES、pH7.4、5mM MgCl、50mM NaCl、5mM DTT及びCHAPS0.04%において実施する。反応をATPの添加によって開始し、20μM PIP2、20μM ATP、1.2nM PI3Kδからなる最終反応混合物を、20分間インキュベートする。10μLの反応混合物を、次いで、クエンチ緩衝液中5μLの50nMビオチン化I(1,3,4,5)P4:50mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、10mM EDTA、5mM DTT、0.1%Tween-20に移し、その後、25nM PI(3,4,5)P3検出器タンパク質を含有するクエンチ緩衝液に懸濁した10μLのAlphaScreen(商標)ドナー及びアクセプタービーズを添加する。ドナー及びアクセプタービーズの両方の最終濃度は20mg/mlである。プレートをシールした後、プレートを暗所において室温で2時間インキュベートする。生成物の活性をFusion-αマイクロプレートリーダ(Perkin-Elmer)において決定する。IC50の決定を、GraphPad Prism 3.0ソフトウエアを使用して、%制御活性対阻害剤濃度の対数の曲線を適合させることによって実施する。
【0298】
実施例A2:PI3K酵素アッセイ
材料:脂質キナーゼ基質、ホスホイノシトール-4,5-ビスホスファート(PIP2)をEchelon Biosciences(ソルトレークシティ、ユタ州)から購入する。PI3Kアイソフォームα、β、δ及びγをMillipore(ベッドフォード、マサチューセッツ州)から購入する。ATP、MgCl、DTT、EDTA、MOPS及びCHAPSをSigma-Aldrich(セントルイス、ミズーリ州)から購入する。
【0299】
キナーゼ反応をThermo Fisher Scientific製のクリアボトム96ウェルプレートにおいて24μLの最終容積で行う。阻害剤をまずDMSOにおいて段階希釈し、プレートウェルに添加し、その後、他の反応成分を添加する。アッセイにおけるDMSOの最終濃度は0.5%である。PI3Kアッセイを、室温で、20mM MOPS、pH6.7、10mM MgCl、5mM DTT及びCHAPS0.03%において実施する。50μM PIP2、キナーゼ及び変動濃度の阻害剤を含有する反応混合物を調製する。反応を、2.2μCi[γ-33P]ATPを含有するATPを最終濃度の1000μMまで添加することによって開始する。アッセイにおけるPI3Kアイソフォームα、β、δ及びγの最終濃度は、それぞれ、1.3、9.4、2.9及び10.8nMであった。反応を180分間インキュベートし、100μLの1Mリン酸カリウム(pH8.0)、30mM EDTAクエンチ緩衝液の添加によって終了させる。反応溶液の100μLアリコートを、次いで、96ウェルMillipore MultiScreen IP 0.45μm PVDFフィルタプレートに移す(フィルタプレートを、200μLの100%エタノール、蒸留水、及び1Mリン酸カリウム(pH8.0)、でそれぞれ予め湿潤させる)。フィルタプレートを真空下でMillipore Manifoldにおいてアスピレートし、1Mリン酸カリウム(pH8.0)及び1mM ATPを含有する18×200μLの洗浄緩衝液で洗浄した。アスピレーション及びブロッティングによる乾燥の後、プレートをインキュベータにおいて37℃で一晩乾燥した。Packard TopCountアダプタ(Millipore)を次いでプレートに取り付け、続いて、各ウェルにおいて120μLのMicroscint20シンチレーションカクテル(Perkin Elmer)を添加した。プレートをシールした後、生成物の放射能をTopcount(Perkin-Elmer)においてシンチレーションカウントによって求めた。IC50の決定を、GraphPad Prism 3.0ソフトウエアを使用した、%制御活性対阻害剤濃度の対数の曲線を適合させることによって実施する。
【0300】
(R)-4-(3-((S)-1-(4-アミノ-3-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)ピロリジン-2-オン塩酸塩を実施例A2のアッセイにおいて試験し、PI3Kδに選択的な阻害剤であると決定した。
【0301】
(R)-4-(3-((S)-1-(4-アミノ-3-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)ピロリジン-2-オン塩酸塩を実施例A2のアッセイにおいて試験し、PI3Kα、PI3Kβ及びPI3Kγの各々よりもPI3Kδに>100倍選択的な阻害剤であると決定した。
【0302】
実施例A3:PI3Kδシンチレーション近接アッセイ
材料
[γ-33P]ATP(10mCi/mL)をPerkin-Elmer(ウォルサム、マサチューセッツ州)から購入した。液体キナーゼ基質、D-myo-ホスファチジルイノシトール4,5-ビスホスファート(PtdIns(4,5)P2)D(+)-sn-1,2-ジ-O-オクタノイルグリセリル、3-O-ホスホ結合(PIP2)、CAS204858-53-7をEchelon Biosciences(ソルトレークシティ、ユタ州)から購入した。PI3Kδ(p110δ/p85α)をMillipore(ベッドフォード、マサチューセッツ州)から購入した。ATP、MgCl、DTT、EDTA、MOPS及びCHAPSをSigma-Aldrich(セントルイス、ミズーリ州)から購入した。Wheat Germ Agglutinin(WGA) YSi SPAシンチレーションビーズをGEヘルスケアライフサイエンス(ピスカタウェイ、ニュージャージー州)から購入した。
【0303】
キナーゼ反応をThermo Fisher Scientific製のポリスチレン384ウェルマトリクスホワイトプレートにおいて25μLの最終容積で行った。阻害剤をまずDMSOにおいて段階希釈し、プレートウェルに添加し、その後、他の反応成分を添加した。アッセイにおけるDMSOの最終濃度は0.5%であった。PI3Kアッセイを、室温で、20mM MOPS、pH6.7、10mM MgCl、5mM DTT及びCHAPS 0.03%において実施した。反応をATPの添加によって開始し、最終反応混合物は20μM PIP2、20μM ATP、0.2μCi[γ-33P]ATP、4nM PI3Kδからなった。反応を210分間インキュベートし、クエンチ緩衝液中に懸濁した40μLのSPAビーズ:150mMリン酸カリウム(pH8.0)、20%のグリセロール、25mM EDTA、400μM ATPの添加によって終了させた。SPAビーズの最終濃度は1.0mg/mLであった。プレートをシールした後、プレートを室温で一晩振り、1800rpmで10分間遠心分離し、生成物の放射能をTopcount(Perkin-Elmer)においてシンチレーションカウントによって求めた。IC50の決定を、GraphPad Prism 3.0ソフトウエアを使用して、%制御活性対阻害剤濃度の対数の曲線を適合させることによって実施した。式Iの化合物は、実施例A3のアッセイにおいてIC50≦10nMを有することが見出された。
【0304】
実施例B1:B細胞増殖アッセイ
B細胞を取得するために、ヒトPBMを、正常な薬物非投与ドナーの末梢血から、Ficoll-Hypague(GE Healthcare、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)での標準密度勾配遠心分離により単離して、抗-CD19マイクロビーズ(Miltenyi Biotech、オーバーン、カリフォルニア州)と共にインキュベートする。B細胞を、次いで、製造者の指示にしたがってautoMacs(Miltenyi Biotech)を使用して陽性免疫選別によりによって精製する。
【0305】
精製されたB細胞(2×10/ウェル/200μL)を96ウェル超低接着プレート(Corning、コーニング、ニューヨーク州)において、異なる量の試験化合物の存在下、RPMI1640、10%FBS及びヤギF(ab’)2抗-ヒトIgM(10μg/ml)(Invitrogen、カールスバッド、カリフォルニア州)において3日間培養する。PBS中の[H]-チミジン(1μCi/ウェル)(PerkinElmer、ボストン,マサチューセッツ州)を次いでB細胞培養物にさらに12時間添加した後、取り込まれた放射能をGF/Bフィルタ(Packard Bioscience、メリデン、コネティカット州)を通して水で濾過することによって分離し、TopCount(Packard Bioscience)での液体シンチレーションカウントによって測定する。
【0306】
実施例B2:ファイファー細胞増殖アッセイ
ファイファー細胞系(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)をATCC(マナッサス、バージニア州)から購入し、推奨された培地(RPMI及び10%FBS)に維持した。化合物の抗増殖活性を測定するために、ファイファー細胞を、培地(2×10細胞/ウェル/200μlあたり)と共に、96ウェル超低接着プレート(Corning、コーニング、ニューヨーク州)に、ある濃度範囲の試験化合物の存在下または非存在下で播種した。3~4日後、PBS中[H]-チミジン(1μCi/ウェル)(PerkinElmer、ボストン,マサチューセッツ州)を次いで細胞培養にさらに12時間添加した後、取り込まれた放射能をGF/Bフィルタ(Packard Bioscience、メリデン、コネティカット州)を通して水で濾過することによって分離し、TopCount(Packard Bioscience)での液体シンチレーションカウントによって測定する。
【0307】
実施例B3:SUDHL-6細胞増殖アッセイ
SUDHL-6細胞系(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)をATCC(マナッサス、バージニア州)から購入し、推奨された培地(RPMI及び10%FBS)に維持した。ATP定量を通して化合物の抗増殖活性を測定するために、SUDHL-6細胞を、培地(5000細胞/ウェル/200μlあたり)と共に、96ウェルポリスチレン製クリアブラック組織培養プレート(VWRによるGreiner-bio-one、ニュージャージー州)に、ある濃度範囲の試験化合物の存在下または非存在下で播種した。3日後、Cell Titer-GLO Luminescent(Promega、マディソン,ウィスコンシン州)細胞培養剤を各ウェルに室温で10分間添加し、発光シグナルを安定化させた。これにより、存在するATPの定量に基づいた培養での生存細胞の数が求められ、これは、代謝的に活性な細胞の存在をシグナリングする。発光をTopCount384(Perkin ElmerによるPackard Bioscience、ボストン,マサチューセッツ州)によって測定した。
【0308】
実施例C:Aktリン酸化アッセイ
Ramos細胞(バーキットリンパ腫からのBリンパ球)をATCC(マナッサス、バージニア州)から得、RPMI1640及び10%FBSにおいて維持する。細胞(3×0細胞/チューブ/3mL(RPMI中))を異なる量の試験化合物で37℃において2時間インキュベートし、次いで、ヤギF(ab’)2抗-ヒトIgM(5μg/mL)(Invitrogen)で17分間、37℃の水浴において刺激する。刺激細胞を遠心分離によって4℃で沈降させ、全細胞抽出物を、300μLの溶解緩衝液(Cell Signaling Technology、ダンバーズ,マサチューセッツ州)を使用して調製する。得られた溶解物を超音波処理し、上清を収集する。上清におけるAktのリン酸化レベルを、製造者の指示にしたがってPathScan phospho-Akt1(Ser473)サンドイッチELISAキット(Cell Signaling Technology)を使用することによって分析する。
【0309】
本発明の種々の変更は、本明細書に記載されているものに加えて、上記の詳細な説明から当業者に明らかである。かかる変更は、添付の特許請求の範囲内にあることも意図される。本願に列挙されている全ての特許、特許出願、及び公開公報を含めた各参照文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
また、本発明は以下の態様を包含することもできる。
[態様1]
(R)-4-(3-((S)-1-(4-アミノ-3-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)ピロリジン-2-オン塩酸塩である塩。
[態様2]
(R)-4-(3-((S)-1-(4-アミノ-3-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-5-クロロ-2-エトキシ-6-フルオロフェニル)ピロリジン-2-オン対塩酸の化学量論比が1:1である、態様1に記載の塩。
[態様3]
結晶である、態様1または2に記載の塩。
[態様4]
実質的に単離されている、態様1~3のいずれか一つに記載の塩。
[態様5]
約207℃で吸熱ピークを有するDSCサーモグラムを特徴とする、態様1~4のいずれか一つに記載の塩。
[態様6]
図1に実質的に示されるDSCサーモグラムを有する、態様1~4のいずれか一つに記載の塩。
[態様7]
図2に実質的に示されるTGAサーモグラムを有する、態様1~6のいずれか一つに記載の塩。
[態様8]
2θで、約11.3°、約16.4°、約21.0°、約23.0°、約28.1°、約31.2°、及び約32.8°から選択される少なくとも1つのXRPDピークを有する、態様1~7のいずれか一つに記載の塩。
[態様9]
2θで、約11.3°、約16.4°、約21.0°、約23.0°、約28.1°、約31.2°、及び約32.8°から選択される少なくとも2つのXRPDピークを有する、態様1~7のいずれか一つに記載の塩。
[態様10]
2θで、約11.3°、約16.4°、約21.0°、約23.0°、約28.1°、約31.2°、及び約32.8°から選択される少なくとも3つのXRPDピークを有する、態様1~7のいずれか一つに記載の塩。
[態様11]
2θで、約11.3°、約16.4°、約21.0°、約23.0°、約28.1°、約31.2°、及び約32.8°から選択される少なくとも4つのXRPDピークを有する、態様1~7のいずれか一つに記載の塩。
[態様12]
2θで、約11.3°、約16.4°、約21.0°、約23.0°、約28.1°、約31.2°、及び約32.8°から選択される少なくとも5つのXRPDピークを有する、態様1~7のいずれか一つに記載の塩。
[態様13]
図3に実質的に示されるXRPDプロファイルを有する、態様1~7のいずれか一つに記載の塩。
[態様14]
態様1~13のいずれか一つに記載の塩と、薬学的に許容可能な担体とを含む薬剤組成物。
[態様15]
PI3Kキナーゼの活性を阻害する方法であって、前記キナーゼを、態様1~13のいずれか一つに記載の塩と接触させることを含む、前記方法。
[態様16]
前記PI3KがPI3Kδである、態様15に記載の方法。
[態様17]
前記塩が、PI3Kα、PI3KβまたはPI3Kγの1以上よりもPI3Kδに選択的な阻害剤である、態様16に記載の方法。
[態様18]
患者における疾患を処置する方法であって、前記疾患が、PI3Kキナーゼの異常発現または活性に関連しており、前記患者に、治療有効量の態様1~13のいずれか一つに記載の塩を投与することを含む、前記方法。
[態様19]
前記疾患が、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、自己免疫性溶血性貧血、血管炎、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、天疱瘡、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、膜性腎症、慢性リンパ性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、有毛細胞白血病、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、節外辺縁帯リンパ腫、ホジキンリンパ腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、前リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、骨髄線維症、粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、脾性辺縁帯リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、形質細胞白血病、髄外性形質細胞腫、くすぶり型骨髄腫(無症状型骨髄腫として知られている)、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)及びB細胞リンパ腫から選択される、態様18に記載の方法。
[態様20]
再発性ITP及び難治性ITPから選択される特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を処置する方法である、態様19に記載の方法。
[態様21]
ベーチェット病、コーガン症候群、巨細胞性動脈炎、リウマチ性多発筋痛(PMR)、高安動脈炎、バージャー病(閉塞性血栓血管炎)、中枢神経系血管炎、川崎病、結節性多発動脈炎、チャーグ・ストラウス症候群、混合型クリオグロブリン血症血管炎(本態性またはC型肝炎ウイルス(HCV)誘発性)、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)、過敏性血管炎、顕微鏡的多発性血管炎、ウェゲナー肉芽腫症、及び抗好中球細胞質抗体関連(ANCA)全身性血管炎(AASV)から選択される血管炎を処置する方法である、態様19に記載の方法。
[態様22]
再発性NHL、難治性NHL、及び再発濾胞性NHLから選択される非ホジキンリンパ腫(NHL)を処置する方法である、態様19に記載の方法。
[態様23]
B細胞リンパ腫を処置する方法であって、前記B細胞リンパ腫が、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である、態様19に記載の方法。
[態様24]
B細胞リンパ腫を処置する方法であって、前記B細胞リンパ腫が、活性化B細胞型(ABC)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、または胚中心B細胞(GCB)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫である、態様19に記載の方法。
[態様25]
前記疾患が、骨関節炎、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、骨障害、関節炎、糖尿病性網膜症、乾癬、前立腺肥大症、炎症、血管形成、膵炎、腎疾患、炎症性腸疾患、重症筋無力症、多発性硬化症、またはシェーグレン症候群である、態様18に記載の方法。
[態様26]
前記疾患が、関節リウマチ、アレルギー、喘息、糸球体腎炎、ループス、または前記のいずれかに関係する炎症である、態様18に記載の方法。
[態様27]
ループスが、全身性エリテマトーデスまたはループス腎炎である、態様26に記載の方法。
[態様28]
前記疾患が、乳がん、前立腺がん、結腸がん、子宮内膜がん、脳がん、膀胱がん、皮膚がん、子宮のがん、卵巣のがん、肺がん、膵臓がん、腎臓がん、胃がん、または血液がんである、態様18に記載の方法。
[態様29]
前記血液がんが、急性骨髄芽球性白血病または慢性骨髄性白血病である、態様28に記載の方法。
[態様30]
前記疾患が、急性肺損傷(ALI)または成人呼吸窮迫症候群(ARDS)である、態様18に記載の方法。
[態様31]
態様1~13のいずれか一つに記載の塩を調製するプロセスであって、式Iの化合物:
【化70】
を塩酸と反応させて、前記塩を形成することを含む、前記プロセス。
[態様32]
前記塩酸が1M塩酸水である、態様31に記載のプロセス。
[態様33]
1当量の前記式Iの化合物を基準にして約3.3~約3.7当量の塩酸が使用される、態様31または32に記載のプロセス。
[態様34]
前記反応が、約45℃~約55℃の温度で行われる、態様31~33のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様35]
塩酸を式Iの化合物に室温で添加してスラリーを形成することと;
前記スラリーを約45℃~約55℃の温度に加熱して溶液を形成することと;
前記溶液を約0℃~約5℃の温度に冷却して前記塩を結晶化することと
を含む、態様31~33のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様36]
式XVIの化合物:
【化71】
を酢酸ホルムアミジンと反応させて式Iの化合物を形成すること:
【化72】
を含むプロセス。
[態様37]
前記式XVIの化合物と酢酸ホルムアミジンとの前記反応が、1,2-エタンジオールを含む溶媒成分中で行われる、態様36に記載のプロセス。
[態様38]
前記式XVIの化合物と酢酸ホルムアミジンとの前記反応が、約100℃~約105℃の温度で実施される、態様36または37に記載のプロセス。
[態様39]
1当量の前記式XVIの化合物を基準にして約8~約10当量の酢酸ホルムアミジンが使用される、態様36~38のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様40]
前記式XVIの化合物を、式XVの化合物:
【化73】
を第3級アミンの存在下で(1-エトキシエチリデン)マロノニトリルと反応させることを含むプロセスによって調製することをさらに含む、態様36~39のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様41]
前記第3級アミンが、N-メチルピロリジノンである、態様40に記載のプロセス。
[態様42]
前記式XVの化合物と(1-エトキシエチリデン)マロノニトリルとの前記反応が、約室温で実施される、態様40または41に記載のプロセス。
[態様43]
前記式XVの化合物を、式XIV-aの化合物:
【化74】
を第3級アミンの存在下でヒドラジンと反応させることを含むプロセスによって調製することをさらに含み、P が、C 1~6 アルキルスルホニルである、態様40~42のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様44]
前記第3級アミンが、N-メチルピロリジノンである、態様43に記載のプロセス。
[態様45]
前記式XIV-aの化合物とヒドラジンとの前記反応が、約35℃~約60℃の温度で実施される、態様43または44に記載のプロセス。
[態様46]
前記式XIV-aの化合物とヒドラジンとの前記反応が、ジクロロメタンを含む溶媒成分中で行われる、態様43~45のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様47]
が、メタンスルホニル基である、態様43~46のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様48]
前記式XIVの化合物を、式XIIIの化合物:
【化75】
を第3級アミンの存在下でC 1~6 アルキルスルホニルハライドと反応させることを含むプロセスによって調製することをさらに含む、態様43~47のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様49]
前記C 1~6 アルキルスルホニルハライドが、塩化メタンスルホニルである、態様48に記載のプロセス。
[態様50]
前記第3級アミンが、N,N-ジイソプロピルエチルアミンである、態様48または49に記載のプロセス。
[態様51]
1当量の前記式XIIIの化合物を基準にして約1.1~約1.5当量のアルキルスルホニルハライドが使用される、態様48~50のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様52]
前記式XIIIの化合物とC 1~6 アルキルスルホニルハライドとの前記反応が、約-10℃~約5℃の温度で実施される、態様48~51のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様53]
前記式XIIIの化合物とC 1~6 アルキルスルホニルハライドとの前記反応が、ジクロロメタンを含む溶媒成分中で実施される、態様48~52のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様54]
(i)前記式XIIIの化合物をC 1~6 アルキルスルホニルハライドと反応させるステップ;(ii)前記式XIV-aの化合物を第3級アミンの存在下でヒドラジンと反応させて式XVの化合物を形成するステップ;及び(iii)前記式XVの化合物を酢酸ホルムアミジンと反応させて式XVIの化合物を形成するステップが、前記式XIV-aの化合物または前記式XVの化合物を単離することなく同じポットにおいて行われる、態様36~53のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様55]
前記式XVIの化合物を、式XV-aの塩:
【化76】
を第3級アミンの存在下で(1-エトキシエチリデン)マロノニトリルと反応させることを含むプロセスによって調製することをさらに含み、TsOHがp-トルエンスルホン酸である、態様36~39のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様56]
前記第3級アミンが、N,N-ジイソプロピルエチルアミンである、態様55に記載のプロセス。
[態様57]
式XV-aの塩と(1-エトキシエチリデン)マロノニトリルとの前記反応が、約室温で実施される、態様55または56に記載のプロセス。
[態様58]
1当量の前記式XV-aの塩を基準にして約1.3~約1.6当量の(1-エトキシエチリデン)マロノニトリルが使用される、態様55~57のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様59]
前記式XV-aの塩と(1-エトキシエチリデン)マロノニトリルとの前記反応が、エタノールを含む溶媒成分中で行われる、態様55~58のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様60]
前記式XV-aの塩を、式XXIの化合物:
【化77】
をp-トルエンスルホン酸と反応させることを含むプロセスによって調製することをさらに含み、Bocがtert-ブトキシカルボニルである、態様55~59のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様61]
前記p-トルエンスルホン酸が、p-トルエンスルホン酸一水和物である、態様60に記載のプロセス。
[態様62]
1当量の前記式XXIの化合物を基準にして約1.3~約1.6当量のp-トルエンスルホン酸が使用される、態様60または61に記載のプロセス。
[態様63]
前記式XXIの化合物とp-トルエンスルホン酸との前記反応が、約45℃~約65℃の温度で実施される、態様60~62のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様64]
前記式XXIの化合物とp-トルエンスルホン酸との前記反応が、エタノールを含む溶媒成分中で行われる、態様60~63のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様65]
(i)前記式XXIの化合物をp-トルエンスルホン酸と反応させて式XV-aの塩を形成するステップ;及び(ii)前記式XV-aの塩を(1-エトキシエチリデン)マロノニトリルと反応させるステップが、前記式XV-aの塩を単離することなく同じポットにおいて行われる、態様60~64のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様66]
前記式XXIの化合物を、式XXの化合物:
【化78】
を独立して選択される1種以上の水素化触媒の存在下で水素ガスと反応させることを含むプロセスによって調製することをさらに含み、Bocがtert-ブトキシカルボニルである、態様60~65のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様67]
前記式XXの化合物と水素ガスとの前記反応が、独立して選択される2種の水素化触媒の存在下で実施される、態様66に記載のプロセス。
[態様68]
一方の水素化触媒が、テトラフルオロホウ酸ビス(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)であり、他方が、(R)-(-)-1-{(S)-2-[ビス(4-トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン]フェロセニル}エチル-ジ-t-ブチルホスフィンである、態様67に記載のプロセス。
[態様69]
1当量の前記式XXの化合物を基準にして約13.5~約14.5当量のテトラフルオロホウ酸ビス(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)が使用される、態様68に記載のプロセス。
[態様70]
1当量の前記式XXの化合物を基準にして約12~約13当量の(R)-(-)-1-{(S)-2-[ビス(4-トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン]フェロセニル}エチル-ジ-t-ブチルホスフィンが使用される、態様68または69に記載のプロセス。
[態様71]
前記式XXの化合物と水素ガスとの前記反応が、約室温で実施される、態様66~70のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様72]
前記式XXの化合物と水素ガスとの前記反応が、メタノールを含む溶媒成分中で行われる、態様66~71のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様73]
前記式XXの化合物を、式XIXの化合物:
【化79】
をカルバジン酸t-ブチルと反応させることを含むプロセスによって調製することをさらに含む、態様66~72のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様74]
前記式XIXの化合物とカルバジン酸t-ブチルとの前記反応が、約60℃~約70℃の温度で実施される、態様73に記載のプロセス。
[態様75]
前記式XIXの化合物とカルバジン酸t-ブチルとの前記反応が、メタノールを含む溶媒成分中で行われる、態様73または74に記載のプロセス。
[態様76]
前記式XIXの化合物を、式XIII-aの化合物:
【化80】
を酸化剤の存在下で酸化することを含むプロセスによって調製することをさらに含む、態様73~75のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様77]
前記酸化剤がデス-マーチンペルヨージナンである、態様76に記載のプロセス。
[態様78]
1当量の前記式XIII-aの化合物を基準にして約1.2~約1.7当量の前記酸化剤が使用される、態様76または77に記載のプロセス。
[態様79]
前記式XIII-aの化合物の前記酸化が、約室温で実施される、態様76~78のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様80]
前記式XIII-aの化合物の前記酸化が、ジクロロメタンを含む溶媒成分中で行われる、態様76~79のいずれか一つに記載のプロセス。
[態様81]
式XIVの化合物:
【化81】
またはその薬学的に許容可能な塩。
[態様82]
式XVの化合物:
【化82】
またはその薬学的に許容可能な塩。
[態様83]
式XVIの化合物:
【化83】
またはその薬学的に許容可能な塩。
[態様84]
式XIXの化合物:
【化84】
またはその薬学的に許容可能な塩。
[態様85]
式XXの化合物:
【化85】
またはその薬学的に許容可能な塩。
[態様86]
式XXIの化合物:
【化86】
またはその薬学的に許容可能な塩。

図1
図2
図3