(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】面内の線形電極部分を有する閉じたループアレイを有するカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20220530BHJP
A61M 25/06 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
A61B18/14
A61M25/06 556
(21)【出願番号】P 2020168985
(22)【出願日】2020-10-06
(62)【分割の表示】P 2016127351の分割
【原出願日】2016-06-28
【審査請求日】2020-10-06
(32)【優先日】2015-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ウ
(72)【発明者】
【氏名】サンウー・ミン
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/113612(WO,A1)
【文献】特開2011-147802(JP,A)
【文献】特開2015-100706(JP,A)
【文献】特開2014-004368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マッピングシステムであって、
カテーテルと、
制御ハンドルと、を備え、
前記カテーテルは、遠位端を有する細長いカテーテル本体と、前記カテーテル本体の前記遠位端における遠位電極アレイと、を備え、
前記遠位電極アレイは、第1のスパインループと、前記第1のスパインループ上の複数の電極と、第2のスパインループと、前記第2のスパインループ上の複数の電極と、を備え、
前記第1のスパインループは、前記遠位端から延在し、前記第1のスパインループは、遠位非線形接続部分と、一対の線形の主要な電極保持部分と、一対の線形近位支持部分と、を備え、前記一対の線形の主要な電極保持部分は、互いに平行であり、1つの共通の面内に配置され、前記一対の線形の主要な電極保持部分の各々は、長さを有し、
前記第1のスパインループ上の前記複数の電極は、前記第1のスパインループの前記一対の線形の主要な電極保持部分上に置かれており、
前記一対の線形の主要な電極保持部分は、互いに、1mm~20mmの空間をおいて配置されており、前記複数の電極は、互いに、前記一対の線形の主要な電極保持部分の各々の前記長さに沿って、0.5mm~12mmの間隔をおいて配置されており、
前記第2のスパインループは、前記遠位端から延在し、前記第2のスパインループは、遠位非線形接続部分と、一対の線形の主要な電極保持部分と、一対の線形近位支持部分と、を備え、前記一対の線形の主要な電極保持部分は、互いに平行であり、前記1つの共通の面内に配置され、前記一対の線形の主要な電極保持部分の各々は、長さを有し、
前記第2のスパインループ上の前記複数の電極は、前記第2のスパインループの前記一対の線形の主要な電極保持部分上に置かれており、
前記
制御ハンドルは、前記第1のスパインループおよび前記第2のスパインループ上の前記複数の電極
と電気的に接続されており、
前記マッピングシステムは、前記遠位電極アレイを視覚化することができ
、
前記第1のスパインループの前記一対の線形の主要な電極保持部分の間に、前記第2のスパインループの前記一対の線形の主要な電極保持部分のうちの1つが位置づけられ、隣接する前記第1のスパインループの前記一対の線形の主要な電極保持部分のうちの1つと、前記第2のスパインループの前記一対の線形の主要な電極保持部分のうちの1つとの間の距離が均一である、マッピングシステム。
【請求項2】
前記第1のスパインループおよび前記第2のスパインループの各々の上の前記複数の電極は、前記第1のスパインループおよび前記第2のスパインループの前記一対の線形の主要な電極保持部分の各々の前記長さに沿って、前記第1のスパインループおよび前記第2のスパインループの前記一対の線形の主要な電極保持部分の各々に渡って、均一な間隔を置いて配置されている、請求項1に記載のマッピングシステム。
【請求項3】
前記第1のスパインループの前記一対の線形の主要な電極保持部分は、前記第2のスパインループの前記一対の線形の主要な電極保持部分と平行である、請求項1に記載のマッピングシステム。
【請求項4】
前記第1のスパインループにおける遠位非線形接続部分と、前記第2のスパインループにおける遠位非線形接続部分とが前記共通の面外に互いに反対方向に角度がついている、請求項1に記載のマッピングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関し、具体的には、組織診断およびアブレーションのための血管内カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動などの心不整脈は、心組織の特定の領域から隣接組織に電気信号が異常に伝わることにより、正常な心周期が乱されて非同期的リズムを生ずる場合に発生する。望ましくない信号の重要な発信源は、例えば、心房の片方又は心室の片方などの組織領域内に位置している。発信源に関わらず、望ましくない信号は、心臓組織を通って他の場所に伝わり、不整脈を引き起こすか、又は不整脈を継続させる場合がある。
【0003】
不整脈を治療するための手技としては、不整脈を発生させている信号の発生源を外科的に破壊することと、そのような信号の伝導路を破壊することが挙げられる。さらに最近では、心内膜の電気特性と心容積をマッピングし、エネルギーの印加により心組織を選択的にアブレーションすることによって、心臓のある部分から別の部分への望ましくない電気信号の伝播を中断又は修正することが可能であると判明している。アブレーションプロセスは、非伝導性の損傷部位を形成することによって望ましくない電気経路を破壊するものである。
【0004】
マッピングの後にアブレーションを行うこの2工程の主義において、通常、1つ又は2つ以上の電気センサを備えるカテーテルを心臓の中に前進させ、多数の点でデータを取得することによって、心臓内の各点における電気活動を検知し、測定している。次いで、これらのデータを利用し、アブレーションが実施される標的エリアが選択される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マッピング解像度を高めるために、例えば、約1平方センチメートルなどの小さい面積内の電気活動を検知する多数の電極を使用することによって、マッピングカテーテルが非常に高密度の信号マップを提供することが望ましい。心房又は心室(例えば、心室の心尖部)内でマッピングするために、カテーテルがより短い時間内により多くのデータ信号を収集することが望ましい。また、かかるカテーテルは、様々な組織表面、例えば、平坦な表面組織、湾曲した表面組織、不規則な表面組織又は平らではない表面組織に適合可能でありながら、検知およびマッピングの間に、電極の空間的な関係が全体的に維持される所定の構造を維持していることも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカテーテルは、組織表面の高密度マッピングおよび/又はアブレーションを可能にすることを意図しており、遠位電極アレイは、互いに横方向に相殺される複数の閉じたスパインループを有する。有利には、スパインループは、電極を保持する主要部分と、遠位接続部分とを有し、電極を保持する主要部分は、共通の面に並び(「面内」)、面外の遠位接続部分によって一般的に維持される所定の構造を有し、電極を保持する部分の面内の配置と干渉しない。スパインループの面内での配置は、高密度マッピングシグナルのための電極と組織の接触を最大にし、一方、所定の構造は、組織表面に対する電極の位置において、大きな規則性、一貫性および予測性を与える。
【0007】
所定の構造は、隣接するスパインループおよび/又は隣接するスパインループの上の隣接する電極の間の1つ又は2つ以上の空間的な関係を含む。例えば、スパインループの電極を保持する主要部分は、ペーシング、ECGリーディングなどを含め、電気生理学的な手順のためのカテーテルの使用中、一貫した空間が与えられ、隣接する電極間に維持されるように、線形であり、互いに平行であってもよい。
【0008】
ある実施形態において、カテーテルは、細長いカテーテル本体と、複数のオフセットしたスパインループを備える遠位電極アレイとを備え、それぞれのスパインループが、少なくとも一対の電極保持部分と、前記一対の電極保持部分を接続する遠位部分とを有し、複数のオフセットしたスパインループの電極保持部分が、1つの共通の面の面内に並び、複数のオフセットしたスパインループの遠位部分は、前記1つの共通の面から面外に並ぶ。
【0009】
ある実施形態において、オフセットしたスパインループの電極保持部分は、線形である。オフセットしたスパインループの電極保持部分は、互いに平行であってもよい。遠位部分は、非線形であってもよく、例えば、湾曲しているか、又は、角を有する角度のついた形状であってもよい。
【0010】
ある実施形態において、スパインループのオフセット構造は、1つ又は2つ以上の異なるスパインループの電極保持部分の間に配置されるそれぞれのスパインループの少なくとも1つの電極保持部分を含む。
【0011】
ある実施形態において、スパインループのオフセット構造は、異なるスパインループの少なくとも電極保持部分によって分離されるそれぞれのスパインループの一対の電極保持部分を含む。
【0012】
ある実施形態において、隣接するスパインループの遠位部分は、電極保持部分の面内の配置と干渉しないままであるように、互いに反対側に面から面外に角度をつけられている。
【0013】
さらなる実施形態において、カテーテルは、細長いカテーテル本体と、複数のオフセットしたスパインループを備える遠位電極アレイとを備え、それぞれのスパインループが、少なくとも一対の線形部分と、この一対の線形部分を接続する遠位部分とを有し、オフセットしたスパインループの線形部分が、1つの共通の面の面内に並び、複数のオフセットしたスパインループの遠位部分は、前記1つの共通の面から面外に並ぶ。
【0014】
ある実施形態において、オフセットしたスパインループの線形部分は、互いに平行であり、遠位部分は、非線形である。
【0015】
ある実施形態において、スパインループのオフセット配置は、1つ又は2つ以上の異なるスパインループの線形部分の間に配置されるそれぞれのスパインループの少なくとも1つの線形部分を含む。
【0016】
ある実施形態において、スパインループのオフセット配置は、異なるスパインループの少なくとも線形部分によって分離されるそれぞれのスパインループの一対の線形部分を含む。
【0017】
ある実施形態において、隣接するスパインループの遠位部分は、互いに反対側に面外に角度がつけられている。
【0018】
本発明のカテーテルは、少なくとも2つの隣接する線形部分の間に延びる1つ又は2つ以上の空間部材も含み、所定の構造および/又は空間的な関係を維持するのに役立つだろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明のこれらの特徴および利点、および他の特徴および利点は、添付の図面とともに考慮するとき、以下の詳細な説明を参照することによってさらに理解されるだろう。
【
図1】
図1は、いくつかの実施形態にかかる本発明のカテーテルの斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、第1の直径に沿って切断された、カテーテル本体と変形部分の接合部を含む、
図1のカテーテルの側面の断面図である。
【
図2B】
図2Bは、第1の直径にほぼ垂直な第2の直径に沿って切断された、
図2Aの接合部を含む、
図1のカテーテルの側面の断面図である。
【
図2C】
図2Cは、線C-Cに沿って切断された、
図2Aおよび2Bの変形部分の末端の断面図である。
【
図3A】
図3Aは、第1の直径に沿って切断された、変形部分と遠位電極アセンブリの接合部を含む、
図1のカテーテルの側面の断面図である。
【
図3B】
図3Bは、第1の直径にほぼ垂直な第2の直径に沿って切断された、
図3Aの接合部の側面の断面図である。
【
図3C】
図3Cは、線C-Cに沿って切断された、
図3Aおよび3Bの変形部分の末端の断面図である。
【
図4】
図4は、一部が分離した
図1のカテーテルの変形部分と遠位電極アセンブリの接合部の斜視図である。
【
図5B】
図5Bは、線B-Bに沿って切断された、
図5Aの遠位電極アセンブリの端面図である。
【
図6】
図6は、ある実施形態にかかるスパインループの上の灌注された環状電極の詳細な斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、線A-Aに沿って切断された、
図6の灌注された環状電極の側面の断面図である。
【
図6B】
図6Bは、線B-Bに沿って切断された、
図6Aの灌注された環状電極の末端の断面図である。
【
図7】
図7は、別の実施形態にかかる遠位電極アセンブリの部分斜視図である。
【
図8】
図8は、別の実施形態にかかるスパインループの部分斜視図である。
【
図9】
図8は、別の実施形態にかかるスパインループの部分斜視図である。
【
図10】
図10は、一実施形態にかかる本発明のカテーテルを用いる方法を示す模式図である。
【
図11】
図11は、別の実施形態にかかる本発明のカテーテルを用いる方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、カテーテル10は、細長いカテーテル本体12と、中間変形部分14と、遠位電極アセンブリ又はアレイ15と、カテーテル本体12の近位端に取り付けられた変形制御ハンドル16とを備える。本発明の特徴によれば、遠位電極アレイ15は、電極を保持する部分が共通の面内にある複数の閉じたオフセットしたスパインループ17を有する。
【0021】
図2Aおよび
図2Bを参照すると、カテーテル本体12は、単一の軸方向又は中央の内腔18を有する細長い管状構造を含む。カテーテル本体12は、可撓性(すなわち、屈曲可能)であるが、その長さに沿って実質的に非圧縮性である。カテーテル本体12は、任意の好適な構造を有していてもよく、任意の好適な材料で作製することができる。ある実施形態において、カテーテル本体12は、ポリウレタン又はPEBAXで製造された外壁20を有する。外壁20は、ステンレス鋼などの編組メッシュが埋め込まれていることによって、カテーテル本体12のねじり剛性が高められているため、制御ハンドル16が回転すると、カテーテル10の中間部分14がこれに対応する様式で回転する。
【0022】
カテーテル本体12の外径は、重要ではない。同様に、外壁20の厚さも重要ではないが、外壁20は、中央の内腔18が、引張りワイヤ、1つ又は2つ以上のリードワイヤおよび他の任意の所望のワイヤ、ケーブル又は管を収容することができるほど十分に薄い。所望の場合、外壁20の内表面は、ねじり安定性を向上させるために補強管22で裏打ちされている。
【0023】
図2A、
図2B、および
図2Cに示すように、中間部分14は、軸からはずれた4個の内腔31、32、33および34などの複数の内腔を有する、もっと短い管材部分19を含む。第1の内腔31は、スパインループ17の上に保持される環状電極37のための複数のリードワイヤ40Sを保持している。第2の内腔32は、第1の引張りワイヤ24を保持している。第3の内腔33は、電磁位置センサ42のためのケーブル36と、遠位電極アレイ15の近位にあるカテーテルの上に保持される近位の環状電極38Dおよび遠位の環状電極38Pのための複数のリードワイヤ40Dおよび40Pを保持している。第4の内腔34(例えば、図示された実施形態において、第2の内腔32と直径方向に反対にある)は、第2の引張りワイヤ26を保持している。管材19は、好ましくはカテーテル本体12よりも可撓性である、適切な非毒性材料で製造される。管材19に好適な材料の1つは、編組ポリウレタン、すなわち、編組ステンレス鋼などの埋込みメッシュを有するポリウレタンである。それぞれの内腔の寸法は重要ではないが、リードワイヤ、引張りワイヤ、ケーブル、および任意の他の部品を収納するのに十分な大きさである。
【0024】
カテーテルの有用な長さ、すなわち、身体内に挿入することができる、遠位電極アレイ15を除く部分は、所望に応じて変化させることができる。好ましくは、有用な長さは、約110cm~約120cmの範囲に及ぶ。中間部分14の長さは、有用な長さを有する比較的より小さい部分であり、好ましくは約3.5cm~約10cm、より好ましくは約5cm~約6.5cmの範囲に及ぶ。
【0025】
カテーテル本体12を中間部分14に取り付ける手段が、
図2Aおよび
図2Bに示されている。中間部分14の近位端は、カテーテル本体12の内表面を受け入れる外周ノッチ27を含む。中間部分14およびカテーテル本体12は、接着剤などにより取り付けられる。
【0026】
所望の場合、スペーサー(図示せず)を、カテーテル本体内の、(提供される場合)補強管の遠位端と中間部分の近位端との間に配置してもよい。スペーサーは、カテーテル本体と中間部分の接合部で可撓性の変化部分を与え、これによりこの接合部が折り畳まれるか、又はよじれることなく、滑らかに曲がることが可能になる。かかるスペーサーを有するカテーテルは、米国特許第5,964,757号に記載されており、その開示は、参考として本明細書に組み込まれる。
【0027】
図3Aおよび
図3Bに示すように、遠位電極アレイ15は、中間変形部分14の管材19の遠位端に取り付けられた短い管材の形態で取付ステム46を有する。(これに関し、カテーテル10が変形部分14を有していない場合、取付ステム46が、カテーテル本体12の遠位端に取り付けられることを理解されたい。)ステム46は、様々な部品を収納する中央の内腔48を有する。中間部分14とステム46は、接着剤などにより取り付けられる。ステム46は、ニチノールを含め、任意の好適な材料から構成されてよい。
【0028】
図4に示すように、ステム46は、電磁位置センサ42と、引張りワイヤ24および26のための遠位固定具を含む、様々な部品を収納する。開示された実施形態において、遠位固定具は、1つ又は2つ以上のワッシャ(例えば、遠位ワッシャ50Dおよび近位ワッシャ50P)を備え、それぞれのワッシャが、複数の適合する軸方向の貫通孔を有し、この貫通孔は、変形部分14とステム46の間の部品の経路となりつつ、カテーテル10の長手方向の軸95に対するこれらの部品の軸方向の整列を維持する。
図3Dにも示されるように、貫通孔は、それぞれ管材19の第2の内腔32および第4の内腔34と軸方向に整列した孔54および56を含み、それぞれ、引張りワイヤ24および26の遠位端を受け入れる。引張りワイヤ24および26は、孔54および56を通過する遠位のU字型の湾曲部分とともに単一の引張部材を形成してもよいことが理解される。引張りワイヤ24および26のU字型の湾曲部分によって及ぼされるワッシャ50Dおよび50Pの張力によって、ワッシャは、変形部分14の管材19の遠位端に対して固く接し、固定され、U字型の湾曲部分を遠位に固定する。
【0029】
図3Dにも示されるように、それぞれのワッシャも、第1の内腔31と軸方向に整列した貫通孔58を有し、リードワイヤ40Sを変形部分14からステム46の内腔48へと通すことができる。それぞれのワッシャは、さらに、管材19の第3の内腔33と軸方向に整列した貫通孔57も有しており、センサケーブル36を変形部分14からステム46の内腔48へと通すことができ、ステム46の内腔48に電磁位置センサ42が収納されている。リードワイヤ40Dも孔57を通り、ステム46の側壁に作られる開口部(図示せず)を介し、ステム46の外側表面に保持される遠位環状電極38Dに取り付けるための内腔48に入り、これによって、リードワイヤ40Dの遠位端が、当該技術分野で知られているように遠位環状電極38Dに溶接されるか、又は他の方法で取り付けられる。中間変形部分14の遠位端付近の管材19の外側表面に保持されると、近位の環状電極38Pは、管材19の側壁に作られる開口部87(
図3B)を介し、リードワイヤ40Pに接続し、第3の内腔33と管材19の外側がつながる。リードワイヤの遠位端は、当該技術分野で知られているように近位環状電極38Pに溶接されるか、又は他の方法で取り付けられる。
【0030】
図5に示されるように、遠位電極アレイ15の閉じたスパインループ17は、ステム46の遠位端から延びている。それぞれのスパインループは、それぞれのスパインループの露出した長さ分延びる非導電性被覆64を有する。遠位電極マトリックス15とステム46との接合部において、それぞれのスパインの非伝導性被覆64は、ポリウレタン67などによってその近位端でステム46に密封されていてもよい。
【0031】
ある実施形態において、それぞれのスパインループ17は、遠位非線形接続部分17D、一対の線形の主要な電極保持部分17Lおよび一対の線形近位支持部分17Pを有し、ステム46に集中している。
図7に示されるように、アレイ15の中のすべての線形の主要な部分(例えば、17L1、17L2、17L3および17L4)は、電極と組織の接触が最大になるように、共通の面P内にある(「面内」)。さらに、線形の主要な部分17Lは、共通の面Pの中で所定の構造で整列し、互いに遠位端で主要部分17Lの対応する対に接続する、ループの遠位部分17Dによって維持されるような1つ又は2つ以上の所定の空間的な関係によって規定される。この観点で、遠位部分17Dは、遠位部分17Dが互いに接触しないため、面内に残る線形の主要な部分17Lと干渉しないように、共通の面Pから所定の角度ずれている(「面外」)。遠位部分17Dは非線形であり、任意の湾曲した形状又は角度のついた形状(例えば、三角形(
図8)又は長方形(
図9))をしていてもよい。
【0032】
図7に示されている実施形態において、第1の遠位部分17D1は、ある方向に(例えば、上側に)面から面外に角度がついており、第2の遠位部分17D2は、反対方向に(例えば、下側に)面から面外に角度がついている。さらに、第3のスパインループ17D3は、ある方向に(例えば、上側に)面から面外に角度がついており、第4の遠位部分17D4は、反対方向に(例えば、下側に)面から面外に角度がついている。このように、隣接する遠位部分17D1および17D2の対、および隣接する遠位部分17D2および17D3の対、同様に、遠位部分17D3および17D4の対は、互いに反対方向に角度がついている。面からずれた角度θは、共通の面から約1~約45°、好ましくは、約5~20°、さらに好ましくは、約10°の範囲であってもよい。
【0033】
さらに、アレイ15の電極密度および電極保持部分としてのそれぞれの線形の主要な部分17Lの効率を最大限にするために、スパインループ17は、横方向に相殺された配置であり、それぞれのスパインループの少なくとも1つの線形の主要な部分17Lは、1つ又は2つ以上の異なるスパインループの線形の主要な部分17Lの間に配置される。又は、言い換えると、スパインループの線形のそれぞれの一対の主要な部分17Lは、異なるスパインループの少なくとも線形の主要な部分17Lによって隔てられている。そのように、アレイ15は、もっと単純な構成を維持しつつ、もっと大きな電極密度を与えることができ、それぞれのスパインループの電極を保持する線形の主要な部分17Lが、干渉しない遠位部分17Dによって支持されるように面内に延びる。
【0034】
図7に示される実施形態において、スパインループは、横方向に相殺させている。例えば、少なくとも1つの線形部分17L1は、線形部分17L2の間に配置される。さらに、例えば、一対の線形部分17L3は、線形部分17L4によって隔てられている。
【0035】
共通の面Pの中の所定の構造は、スパインループ又はその一部との間の1つ又は2つ以上の所定の空間的な関係を有していてもよい。1つ又は2つ以上の空間的な関係は、
図5に示されるように、アレイの長さに沿った隣接する線形の主要な部分17Lの間の空間S(例えば、近位の空間SPおよび遠位の空間SD)によって規定されてもよい。所定の空間的な関係は、線形の主要な部分17Lに保持される環状電極37の間に所定の空間dを含んでいてもよい。
図5に示される実施形態において、線形の主要な部分17Lは、近位の空間SPiと遠位の空間SDiが、隣接する線形の一対の主要な部分17Lの間と等しくなるように、互いに平行である。例えば、空間SPi、SDiが互いに、アレイ15全体に均一である場合、空間dは、アレイ15全体で均一であり、アレイ15は、
図5に示されるように、格子状のパターンで電極を支持するように構成される。所望な場合、又は適切な場合に、異なる構造を与えるために、空間SPiおよびSDiがアレイ全体で変動していてもよいことが理解される。
【0036】
ステム46中のアレイ15の近位端を固定するために、スパインループの近位部分17Pが、所望な場合、又は適切な場合に、線形の主要な部分17Lが面内に(例えば、ステム中央周囲に同じ角度分布で)支持されるように構成されてもよい。
図5に示される実施形態において、4つの近位部分17Pは、ステム46の中央の長手方向の軸46Aの周囲に4分の1ずつ入れられる。
【0037】
複数のループは、約2~4の範囲であってもよい。それぞれのスパインループは、露出した線形長さが約5~50mm、好ましくは、約10~35mm、さらに好ましくは、約28mmであってもよい。アレイは、寸法が約1.5cm×1.0cmであってもよい。それぞれの隣接する線形の主要な部分17Lの間の空間SPおよびSDは、約1mm~20mm、好ましくは、約2~10mm、さらに好ましくは、約4mmの範囲であってもよい。電極間の空間dは、約0.5mm~12mmの範囲である。アレイ15の表面積は、約1.5cm2~3.0cm2、好ましくは、約1.9cm2~2.5cm2、さらに好ましくは、約2.2cm2の範囲であってもよい。
【0038】
図4に示されるように、それぞれのスパインループ17は、ループの長さ全体に延びる長細い形状記憶支持部材62を有する。それぞれの部材62の近位部分は、ステム46の遠位端部分に延び、ステム46の内腔48に固定される。それぞれのスパインループ17は、形状記憶部材62を覆う非導電性管材又は被覆64を有し、それぞれの線形の主要な部分17Lに保持される複数の環状電極37は、約6~12個、好ましくは、約6~9個、さらに好ましくは、約8個の範囲であってもよい。したがって、遠位電極アレイ15は、約20~72個、好ましくは約28~36個の範囲の電極、より好ましくは約32個の複数の電極を携行する。ある実施形態において、電極密度は、1平方センチメートルあたり約15個の電極であり、約12mm×18mmの寸法である。
【0039】
形状支持部材62は、形状記憶を有する材料、すなわち、力がかかると、その本来の形状から離れて一時的に直線状に伸びるか、又は屈曲させることができ、かつ、力がかからないか、又は取り除かれると、実質的に本来の形状に戻ることができる材料で製造される。支持部材に好適な材料は、ニッケル/チタン合金である。そのような合金は、典型的には、約55%のニッケルおよび約45%のチタンを含むが、約54%~約57%のニッケルを含み、残部をチタンとすることができる。ニッケル/チタン合金は、ニチノールであり、耐久性、強度、耐食性、電気抵抗および温度安定性とともに、優れた形状記憶性を有する。非導電性被覆64は、任意の好適な材料で製造することが可能であり、好ましくは、ポリウレタン又はPEBAXなどの生体適合性プラスチックから製造される。所望の場合、支持部材62は、除外されてもよく、非導電性被覆64の遠位端は、所望の湾曲又は形状を有するように事前に形成されてもよい。
【0040】
そのそれぞれの非導電性被覆64を通って延びるそれぞれの形状記憶支持部材62は、ポリウレタン67などによって、ステム46に受け入れられ、固定される近位端を有する。スパイン電極37のリードワイヤ40Sは、
図4に示されるように、保護ポリチューブ68を通って延びる。リードワイヤ40Sは、ポリチューブ68の遠位端で分岐し、それぞれの形状記憶支持部材62に向かい、それぞれのスパインのそれぞれの非導電性被覆64に延びる。
図5Cに示されるように、それぞれのリードワイヤ40Sは、被覆64の側壁に作られるそれぞれの開口部69を介し、スパインループ17の上のそれぞれの環状電極37に接続し、これによって、リードワイヤの遠位端は、被覆64の外側に達し、環状電極37に溶接されるか、又は他の方法で取り付けられる。
【0041】
他の実施形態において、灌注された環状電極37Iは、
図6、6Aおよび6Bに示されるように、スパインループ17に保持される。スパインを形成するループ17は、複数の内腔の管材80(例えば、複数の内腔を有する)を有し、複数の内腔は、形状記憶部材62のための第1の内腔81と、リードワイヤ40Sのための第2の内腔82と、管材80の側壁に作られる経路88を介し、灌注液を、管材80の外側壁と、流体入口85とともに作られる環状電極37Iの側壁との間の環状の空間ギャップGに通過させるための第3の内腔83とを有する。第4の内腔84は、遠位電磁位置センサ42D(図示せず)のためのケーブル36Dを通すように与えられてもよい。
【0042】
スパインループ環状電極37、遠位の環状電極38Dおよび近位の環状電極38Pのためのリードワイヤ40S、40Dおよび40Pの近位端は、それぞれ、制御ハンドル16の遠位端にある適切なコネクタ(図示せず)に電気接続し、当該技術分野で知られているように、アブレーションエネルギー(例えば、RFエネルギー)源に接続する。リードワイヤ40S、40Dおよび40Pは、カテーテル本体12の中央の内腔18を通って延びる(
図2B)。リードワイヤ40Sは、中間部分14の管材19の第1の内腔31を通って延び、リードワイヤ40Dおよび40Pは、管材19の第3の内腔33を通って延びる(
図2Cおよび3C)。孔58を通ってワッシャ50Dおよび50P内を通り、リードワイヤ40Sは、ポリチューブ68を通って延び、孔58によって損傷を受けるのを防ぐ(
図3Dおよび4)。
【0043】
示された実施形態において、カテーテル本体12の中央の内腔18を通って延びるリードワイヤ40Sおよび変形部分14の第1の内腔31は、保護鞘部94に取り囲まれ、カテーテル内の他の部品との接触を防いでもよい。保護鞘部は、任意の好適な材料、好ましくはポリイミドから製造されてもよい。当業者により認識されるように、保護鞘部は、所望の場合、除外されてもよい。
【0044】
環状電極37、37Iおよび38Dおよび38Pは、任意の適切な固体導電性材料(例えば、白金又は金、好ましくは、白金とイリジウムの組み合わせ)で製造することが可能であり、接着剤などを用いて非導電性被覆64、ステム46および/又は管材19に取り付けられる。あるいは、環状電極は、非導電性カバー64、ステム46および/又は管材19を、プラチナ、金および/又はイリジウムなどの導電性材料でコーティングすることによって作成することができる。コーティングは、スパッタリング、イオンビーム蒸着又は同等の手法を使用して塗布することができる。
【0045】
ある実施形態において、それぞれの環状電極は、比較的短く、長さは約0.4mm~約0.75mmの範囲である。電極は、対に並んでいてもよく、対の2つの電極は、他の電極対よりも互いに接近して空間があけられている。接近して配置された電極対により、心房細動の治療を試みる際に非常に有用である、遠距離場の心房信号に対する近距離場の肺静脈電位の検出の精度を向上させることができる。具体的には、近距離場の肺静脈電位は極めて小さい信号であり、一方で心房は、肺静脈に極めて近接する場所にあり、遙かに大きい信号を提供する。したがって、マッピングアレイが肺静脈の領域内に配置される場合であっても、信号が、小さく、(肺静脈から)近い電位、又はより大きく、(心房から)より遠い電位のいずれであるかを、医師が判定することは、困難である場合がある。近接配置される双極子電極により、医師は、近接する信号を検査しているのか、又は遠方の信号を検査しているか、を、より正確に判定することが可能になる。したがって、近接配置される電極を有することによって、肺動脈電位を有する心筋組織の場所を、正確に標的とすることが可能であるため、臨床医は、特定の組織に治療を施すことが可能になる。さらには、近接配置される電極により、医師は、電気信号によって、心門/複数の心門の正確な解剖学的場所を判定することが可能になる。
【0046】
ある実施形態において、近位の電磁位置センサ42Pは、ステムの内腔に収納される(
図4)。センサケーブル36Pは、位置センサ42Pの近位端から、ワッシャ50の孔57を通って延び(
図3D)、変形部分14の管材19の第3の内腔33を通って延び(
図2C)、カテーテル本体12の中央の内腔18を通って延びる(
図2B)。ケーブル36Pは、当該技術分野で知られているように、制御ハンドル16のPCボードへ取り付けられる。ある実施形態において、1つ又は2つ以上の遠位電磁位置センサは、アレイ(例えば、アレイの1つ又は2つ以上の遠位部分)に収容されてもよい。センサケーブル36Dは、スパイン被覆64(
図5C)又は管材80の内腔84(
図6B)を通って延びてもよい。
【0047】
図2Aおよび2Cに示されるように、引張りワイヤ24および26は(2つの別個の引張部材であるか、又は単一の引張部材の一部であるかにかかわらず)、中間部分14の二方向変形のために与えられる。引張りワイヤ24および26は、サム制御ノブ又は変形制御ノブ11に応答する制御ハンドル16内の機構によって動かされる。適切な制御ハンドルは、米国特許第6,123,699号;第6,171,277号;第6,183,435号;第6,183,463号;第6,198,974号;第6,210,407号および第6,267,746号に開示され、その開示全体は、本明細書に参考として組み込まれる。
【0048】
引張りワイヤ24および26は、カテーテル本体12の中央の内腔18を通って延び(
図2A)、変更部分14の管材19のそれぞれ第2の内腔32および第4の内腔34を通って延びる(
図2C)。
図3Aおよび
図3Cに示すように、それらは、ワッシャ50のそれぞれ孔54および56を通って延びる。引張りワイヤが単一の引張部材の一部である場合、単一の引張部材は、引張りワイヤの遠位端を固定する遠位ワッシャ50Dの遠位面にU字型の湾曲部24/26U(
図3A)を有する。この観点で、U字型の湾曲部は、短い保護管材70を通って延び、引張りワイヤを孔54および56から保護する。あるいは、引張りワイヤが別個の引張部材である場合、それらの遠位端は、当該技術分野で知られており、その内容全体が本明細書に参考として組み込まれている、例えば、米国特許第8,603,069号に記載されているように、T型の棒状物を介して固定されてもよい。いずれにせよ、引張りワイヤ24および26は、ステンレス鋼又はニチノールといった任意の好適な金属で製造され、それぞれは、好ましくは、TEFLONなどでコーティングされる。コーティングによって引張りワイヤに潤滑性が付与される。引張りワイヤは、好ましくは直径が約0.02~約0.025センチメートル(約0.006~約0.010インチ)の範囲である。
【0049】
図2Bに示されるように、圧縮コイル66は、それぞれの引張りワイヤ24を包む関係でカテーテル本体12の中央の内腔18内に据えられる。それぞれの圧縮コイル66は、カテーテル本体12の近位端から中間部分14の近位端まで延びる。圧縮コイル66は、任意の好適な金属、好ましくはステンレス鋼で製造される。それぞれの圧縮コイル66は、可撓性、すなわち、屈曲性をもたらすが、圧縮に耐えるように、それ自体に密に巻かれる。圧縮コイル66の内径は、好ましくはその引張りワイヤの直径よりも僅かに大きい。それぞれの引張りワイヤ上のTeflonコーティングは、引張りワイヤがその圧縮コイル内で自由に摺動することを可能にする。
【0050】
圧縮コイル66は、その近位端で、近位接着部(図示しない)によってカテーテル本体12の外壁20に固定され、その遠位端で、遠位接着部92によって中間部分14に固定される。両方の接着部は、ポリウレタン接着剤などを含んでもよい。接着剤は、カテーテル本体12の側壁と中央の内腔19との間に作製された孔を通って注射器などによって塗布されてもよい。かかる孔は、例えば、永続的な孔を形成するために十分に加熱された、側壁を穿孔する針などにより形成されてよい。次いで、接着剤は、孔を通って圧縮コイル66の外表面へ導入され、外側の周囲に毛管現象で広がり、圧縮コイルの全周に接着部が形成される。
【0051】
中間部分14の第2の内腔32および第4の内腔34内では、それぞれの引張りワイヤ24および26は、プラスチック、好ましくはTeflon製の引張りワイヤ鞘部39を通って延び(
図2Aおよび2C)、変形部分14が変形するとき、引張りワイヤが、変形部分14の管材19の側壁を切断することを防止する。
【0052】
使用する際、好適な誘導鞘部(図示しない)が患者内に挿入され、マッピングおよび/又はアブレーションなどの処置などの診断のための所望の組織の場所で、又はその付近に遠位端が配置される。本発明に関連した使用のための好適な誘導鞘部の一例は、Biosense Webster,Inc.(ダイヤモンドバー、カリフォルニア)より市販されるPreface Braided Guiding Sheathである。カテーテル10は、誘導鞘部を通過し、これを通って所望の組織の場所に前進する。特に、遠位電極アレイ15のスパインループ17は、誘導鞘部の近位端に供給される。遠位電極アレイ15が所望の組織の場所へ到達した後、誘導鞘部は、近位に引かれ、アレイが少なくとも露出する。誘導鞘部36の外側に、スパインループの線形の主要な部分17Lは、
図5に示されるように、干渉しない角度のついた遠位部分17Dによって支持されるように、ほぼ共通の面に延びる。線形の主要な部分17Lに接続する遠位部分17Dは、線形の主要な部分17Lが広がり、分岐し、および/又は面から面外になるのを防ぐ。
【0053】
アレイ15は、第1の側と第2の側を有する。
図10に示すように、ユーザは、第1の側を組織表面に対して置き、少なくとも中間部分14は(カテーテル本体12の遠位部分ではない場合でも)、一般的に組織表面に対して垂直であり、制御ハンドルを動かし、第1の側がカテーテルの方に変形するように中間変形部分14を変形させ(矢印D)、部分14が変形するにつれて、線形の主要部分17Lの第1の側が組織表面を横切って引っ張られる。線形の主要部分17Lは、一般的に線形で平行であり、変形方向Dと同じ方向の軌跡Tに沿って、(遠位部分17Dによって維持されるように)互いにほぼ平行な状態を維持しつつ、組織表面を横切って引っ張られる。
【0054】
又は、
図11に示されるように、ユーザが、制御ハンドルを動かし、部分14を方向Dに沿って変形させ、アレイ15の第1の表面がカテーテルに向かって変形する。次いで、ユーザは、組織表面とほぼ平行にカテーテル本体12の少なくとも遠位部分を配置し、組織表面に対してアレイ15の第2の表面を配置する。次いで、ユーザは、(反対側の方向Rに沿って)変形を開放し、変形部分14がまっすぐになるにつれて、線形の主要部分17Lの第2の表面が組織表面を横切って引っ張られる。線形の主要部分17Lは、一般的に線形で平行であり、変形方向Dと反対側の方向Rの軌跡Tに沿って、(遠位部分17Dによって維持されるように)互いにほぼ平行な状態を維持しつつ、組織表面を横切って引っ張られる。
【0055】
いずれかの様式で、スパイン電極37は、組織表面との接触を最大限にするために、線形の主要な部分17Lの面内に保持され、一方、線形の主要な部分17Lは、高密度の電極検知および均一で予測可能なマッピングのためにスパインループが組織表面を横切って引っ張られるときに、一般的に、互いに一貫した分離空間を維持する。線形の主要な部分17Lが分離された状態に維持されることによって、これらが重なり合う傾向はほとんどなく、電極37は、2つの電極が角に密接しているか、又は接触しているときに生じ得る「クロストーク」又は電磁干渉をほとんど受けない。本発明の特徴に従って、アレイは、例えば、それぞれのスパインの上に8つの電極を有する4つのスパイン、すなわち、マッピングのために近接配置された合計32個の環状電極37である、「n×m」個の電極レイアウト又は配置を有する。
【0056】
ある実施形態において、遠位電極アレイ15は、少なくとも2つのスパインの間に延びるスペーサー部材86(例えば、棒状物またはブラケット)を含み、スパインを機械的に制限し、所定の空間的な関係に保持する。スペーサー部材は、他の方向に移動しつつ、1つ又は2つ以上の方向への移動を制限するように構成されてもよい。
図5に示される実施形態において、スペーサー部材86は、線形部分17Lの間に延び、その末端を接着剤(例えば、ポリウレタン)によって線形部分17Lに固定するが、スペーサー部材は、所望な場合、又は適切な場合、スパインループ17の同じ部分および/又は異なる部分の任意の2つ又は3つ以上の間に延びてもよい。スパインループの領域は、所望な場合、又は適切な場合、一緒に熱結合されてもよく、又は一緒に溶融されてもよい。
【0057】
ある実施形態において、アレイ15の近位の環状電極38Dおよび38Pは、Biosense Webster,Inc.から入手可能なCARTO.RTM 3 SYSTEMなどの3Dマッピングシステムでカテーテルを視覚化するための参照電極として働き、EMセンサ42の位置を自動的に示し、EMセンサからの位置が一定である電極38Dおよび38Pからの参照位置の値を処理し、電極37および37Iの位置を決定し、電極アレイ15の残りを視覚化する。
【0058】
上記の説明は、現時点における本発明の好ましい実施形態を参照して示したものである。本発明が関係する分野および技術の当業者であれば、本発明の原理、趣旨および範囲を著しく逸脱することなく、説明した構造の改変および変更を実施できることを理解するであろう。当業者に理解されるように、図面は必ずしも一定の縮尺ではない。また、必要に応じて、又は適切であれば、異なる実施形態の異なる特徴が組み合わされてもよい。さらに、本明細書に記載したカテーテルは、マイクロ波、レーザー、RF、および/又は凍結材を含む、様々なエネルギー形態を適用するように構成されてもよい。したがって、上記の説明文は、添付図面に記載されかつ例示される厳密な構造のみに関連したものとして読み取るべきではなく、むしろ、以下の最も完全で公正な範囲を有するとされる「特許請求の範囲」と符合し、かつそれらを補助するものとして読み取るべきである。
【0059】
〔実施の態様〕
(1) カテーテルであって、
細長いカテーテル本体と、
複数のオフセットしたスパインループを備える遠位電極アレイとを備え、それぞれのスパインループが、少なくとも一対の電極保持部分と、前記一対の電極保持部分を接続する遠位部分とを有し、前記複数のオフセットしたスパインループの前記電極保持部分が、1つの共通の面の面内に並び、前記複数のオフセットしたスパインループの前記遠位部分は、前記1つの共通の面から面外に並ぶ、カテーテル。
(2) 前記複数のオフセットしたスパインループの前記電極保持部分が線形である、実施態様1に記載のカテーテル。
(3) 前記複数のオフセットしたスパインループの前記電極保持部分は、互いに平行である、実施態様2に記載のカテーテル。
(4) 前記遠位部分が非線形である、実施態様1に記載のカテーテル。
(5) それぞれのスパインループの少なくとも1つの電極保持部分は、1つ又は2つ以上の異なるスパインループの電極保持部分の間に配置されている、実施態様1に記載のカテーテル。
【0060】
(6) それぞれのスパインループの前記一対の電極保持部分は、異なるスパインループの少なくとも電極保持部分によって隔てられている、実施態様1に記載のカテーテル。
(7) 隣接するスパインループの遠位部分は、互いに反対側に面外に角度がつけられている、実施態様1に記載のカテーテル。
(8) それぞれの電極保持部分は、1つ又は2つ以上の環状電極を有する、実施態様1に記載のカテーテル。
(9) 前記環状電極は、灌注された環状電極を含む、実施態様8に記載のカテーテル。
(10) カテーテルであって、
細長いカテーテル本体と、
複数のオフセットしたスパインループを備える遠位電極アレイであって、それぞれのスパインループが、少なくとも一対の線形部分と、この一対の線形部分を接続する遠位部分とを有する、遠位電極アレイと、
それぞれの線形部分の上にある1つ又は2つ以上の電極とを備え、
前記複数のオフセットしたスパインループの前記線形部分は、1つの共通の面の面内に並び、前記複数のオフセットしたスパインループの前記遠位部分が、前記1つの共通の面から面外に並ぶ、カテーテル。
【0061】
(11) 前記複数のオフセットしたスパインループの前記線形部分が、互いに平行である、実施態様10に記載のカテーテル。
(12) 前記遠位部分が非線形である、実施態様10に記載のカテーテル。
(13) それぞれのスパインループの少なくとも1つの線形部分は、1つ又は2つ以上の異なるスパインループの線形部分の間に配置されている、実施態様10に記載のカテーテル。
(14) それぞれのスパインループの前記一対の線形部分は、異なるスパインループの少なくとも線形部分によって隔てられている、実施態様10に記載のカテーテル。
(15) 隣接するスパインループの遠位部分は、互いに反対側に面外に角度がつけられている、実施態様10に記載のカテーテル。
【0062】
(16) 1つ又は2つ以上の環状電極が、灌注された環状電極を含む、実施態様10に記載のカテーテル。
(17) 少なくとも2つの隣接する線形部分の間に延びる1つ又は2つ以上の空間部材をさらに含む、実施態様10に記載のカテーテル。
(18) 前記複数のオフセットしたスパインループが、約2~4個の範囲である、実施態様10に記載のカテーテル。
(19) それぞれのスパインループは、細長い形状記憶部材を含む、実施態様10に記載のカテーテル。
(20) カテーテルであって、
細長いカテーテル本体と、
複数のオフセットしたスパインループを含む遠位電極アレイであって、それぞれのスパインループが少なくとも一対の線形部分を有する、遠位電極アレイと、
それぞれの線形部分の上にある1つ又は2つ以上の電極と、
少なくとも2つの隣接する線形部分の間に延びる1つ又は2つ以上の空間部材とを備え、
前記複数のオフセットしたスパインループの前記線形部分は、1つの共通の面の面内に並び、前記複数のオフセットしたスパインループの遠位部分が、前記1つの共通の面から面外に並ぶ、カテーテル。