IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小松製作所の特許一覧

<>
  • 特許-作業車両および作業車両の制御システム 図1
  • 特許-作業車両および作業車両の制御システム 図2
  • 特許-作業車両および作業車両の制御システム 図3
  • 特許-作業車両および作業車両の制御システム 図4
  • 特許-作業車両および作業車両の制御システム 図5
  • 特許-作業車両および作業車両の制御システム 図6
  • 特許-作業車両および作業車両の制御システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】作業車両および作業車両の制御システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20220530BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20220530BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
E02F9/26 B
E02F9/20 Q
H04N7/18 J
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021064850
(22)【出願日】2021-04-06
(62)【分割の表示】P 2016254810の分割
【原出願日】2016-12-28
(65)【公開番号】P2021105334
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 浩之
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/163382(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0021769(US,A1)
【文献】国際公開第2015/163381(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0028919(US,A1)
【文献】特開2009-184542(JP,A)
【文献】特開2005-163370(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0151845(US,A1)
【文献】特開2001-140286(JP,A)
【文献】特開2007-278025(JP,A)
【文献】特開2012-072617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
E02F 9/20
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両であって、
前記作業車両の動作のために操作される操作装置と、
前記作業車両の周辺画像を生成する手段と、
前記周辺画像を選択的に表示する表示部と、
前記作業車両の動作を制御するコントローラと、
前記操作装置の操作によって作動する比例制御弁とを備え、
前記コントローラは、前記表示部が前記周辺画像を表示している場合、前記比例制御弁の動作を介して前記操作装置の操作による前記作業車両の動作を許可し、前記表示部が前記周辺画像を表示していない場合、前記比例制御弁の動作を介して前記操作装置の操作による前記作業車両の動作を禁止する、作業車両。
【請求項2】
作業車両の制御システムであって、
前記作業車両の動作のために操作される操作装置と、
前記作業車両の周辺画像を取得または生成する手段と、
前記周辺画像を選択的に表示する表示部と、
前記操作装置の操作によって作動する比例制御弁とを備え、
前記表示部が前記周辺画像を表示している場合、前記比例制御弁の動作を介して前記操作装置の操作による前記作業車両の動作を許可し、前記表示部が前記周辺画像を表示していない場合、前記比例制御弁の動作を介して前記操作装置の操作による前記作業車両の動作を禁止する、作業車両の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両および作業車両の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベルの旋回体の後部に2台のカメラを設け、2台のカメラの映像の一方を選択してモニタ部に表示させるコントローラを設け、旋回体の旋回時に旋回方向の上流側の映像を自動的にモニタ部に映し出す技術が提案されている(たとえば、特開2001-295321号公報(特許文献1)参照)。
【0003】
また従来、油圧ショベルの旋回体の後方側に、油圧ショベルに対して一定エリア内に存在する物体を検出する複数の近接センサと、近接センサの検出エリア内の画像を撮像する複数のカメラとを設け、近接センサによって物体が検出された場合に、物体を検出した近接センサに対応するカメラで撮像される画像を自動的にモニタパネルに表示する技術が提案されている(たとえば、特開2002-327470号公報(特許文献2)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-295321号公報
【文献】特開2002-327470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業車両を動作させるときには、オペレータが周囲の状況を確認した上で動作させるのが望ましい。
【0006】
本発明の目的は、動作時に周囲の状況を確認できるようにする、作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の作業車両は、作業車両の動作のために操作される操作装置と、作業車両の周辺画像を生成する手段と、周辺画像を選択的に表示する表示部と、作業車両の動作を制御するコントローラとを備えている。コントローラは、表示部が周辺画像を表示している場合、操作装置の操作による作業車両の動作を許可し、表示部が周辺画像を表示していない場合、操作装置の操作による作業車両の動作を禁止する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、作業車両の動作時に、モニタに周辺画像を表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に基づく油圧ショベルの外観を説明する図である。
図2】油圧ショベルのシステム構成を表したブロック図である。
図3】表示部の表示内容に基づく油圧ショベルの動作の流れを示すフローチャートである。
図4】表示部に表示された周辺画像の一例を示す模式図である。
図5】表示部に表示された車体情報の一例を示す模式図である。
図6】第二実施形態の油圧ショベルの動作の流れを示すフローチャートである。
図7】制御システムの構成の概略を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0011】
実施形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0012】
<第一実施形態>
[作業車両の全体構成]
まず、作業車両の一例として、油圧ショベル100の構成について説明する。図1は、実施形態に基づく油圧ショベル100の外観を説明する図である。
【0013】
図1に示されるように、油圧ショベル100は、走行体1と、旋回体3と、作業機4とを主に有している。油圧ショベル本体は、走行体1と旋回体3とにより構成されている。走行体1は、左右1対の履帯を有している。旋回体3は、走行体1の上部の旋回機構を介して、旋回可能に走行体1に装着されている。旋回体3は、運転室8を有している。
【0014】
作業機4は、旋回体3において、上下方向に作動可能に軸支されており、土砂の掘削などの作業を行う。作業機4は、油圧ポンプ(図2参照)から供給される作動油によって動作する。作業機4は、ブーム5と、アーム6と、バケット7とを含んでいる。ブーム5の基端部は、旋回体3に連結されている。アーム6は、ブーム5の先端部に連結されている。バケット7は、アーム6の先端部に連結されている。ブーム5、アーム6およびバケット7の各々が油圧シリンダによって駆動されることにより、作業機4は駆動可能である。
【0015】
油圧ショベル100は、カメラ10を備えている。カメラ10は、油圧ショベル100の周辺を撮像して、油圧ショベル100の周辺の画像を取得するための撮像装置である。カメラ10は、油圧ショベル100の周辺の現況地形を取得可能であり、また油圧ショベル100の周辺の障害物の存在を認識可能なように、構成されている。
【0016】
カメラ10は、右前方カメラ11と、右後方カメラ12と、後方カメラ13と、左方カメラ14とを含んでいる。右前方カメラ11と右後方カメラ12とは、旋回体3の上面の右側縁部に配置されている。右前方カメラ11は、右後方カメラ12よりも前方に配置されている。右前方カメラ11は、前後方向における旋回体3の中央部付近に配置されている。右後方カメラ12は、前後方向における旋回体3の後端部付近に配置されている。
【0017】
なお本実施形態においては、作業機4を基準として、油圧ショベル100の各部の位置関係について説明する。
【0018】
作業機4のブーム5は、旋回体3に対して、ブーム5の基端部に設けられたブームピンを中心に回動する。旋回体3に対して回動するブーム5の特定の部分、たとえばブーム5の先端部が移動する軌跡は円弧状であり、その円弧を含む平面が特定される。油圧ショベル100を平面視した場合に、当該平面は直線として表される。この直線の延びる方向が、油圧ショベル本体の前後方向、または旋回体3の前後方向であり、以下では単に前後方向ともいう。油圧ショベル本体の左右方向(車幅方向)、または旋回体3の左右方向とは、平面視において前後方向と直交する方向であり、以下では単に左右方向ともいう。
【0019】
前後方向において、油圧ショベル本体から作業機4が突き出している側が前方向であり、前方向と反対方向が後方向である。前方向を視て左右方向の右側、左側がそれぞれ右方向、左方向である。
【0020】
前後方向とは、運転室8内の運転席に着座したオペレータの前後方向である。運転席に着座したオペレータに正対する方向が前方向であり、運転席に着座したオペレータの背後方向が後方向である。左右方向とは、運転席に着座したオペレータの左右方向である。運転席に着座したオペレータが正面に正対したときの右側、左側がそれぞれ右方向、左方向である。
【0021】
後方カメラ13は、前後方向において旋回体3の後端部に配置されており、左右方向において旋回体3の中央部に配置されている。旋回体3の後端部には、採掘時などにおいて車体のバランスをとるためのカウンタウェイトが設置されている。後方カメラ13は、カウンタウェイトの上面に配置されている。左方カメラ14は、運転室8の上面に配置されている。運転室8は、旋回体3の前方左側に配置されている。
【0022】
[システム構成]
図2は、油圧ショベル100のシステム構成を表したブロック図である。図2に示されるように、油圧ショベル100は、モニタ装置20と、車体コントローラ30と、操作装置40と、油圧ポンプ51からアクチュエータ56に至る油圧回路とを備えている。図2中の実線矢印は油圧回路を示す。
【0023】
モニタ装置20は、モニタコントローラ21と、表示部22とを含んで構成されている。表示部22は、カメラ10を用いて生成された油圧ショベル100の周辺画像を表示する。油圧ショベル100の周辺画像は、右前方カメラ11、右後方カメラ12、後方カメラ13または左方カメラ14のいずれか1つのカメラによって撮像された画像から生成された、単画像を含む。また油圧ショベル100の周辺画像は、右前方カメラ11、右後方カメラ12、後方カメラ13および左方カメラ14の各々によって撮像された複数の画像を合成して生成された、俯瞰画像を含む。
【0024】
表示部22はまた、油圧ショベル100の車体情報を表示する。油圧ショベル100の車体情報は、たとえば、油圧ショベル100の作業モード、燃料計により示される燃料残量、温度計により示される冷却水の温度または作動油の温度、エアコンの稼働状況などを含む。表示部22は、生成された周辺画像と車体情報との少なくともいずれか一方を、選択的に表示可能である。
【0025】
モニタコントローラ21は、表示部22の表示内容を制御する。モニタコントローラ21が表示部22に指令することにより、表示部22は、周辺画像を表示したり、車体情報を表示したり、周辺画像と車体情報とを同時に表示したりする。表示部22はタッチパネルであってもよく、この場合、オペレータが表示部22の一部に触れることにより、モニタコントローラ21が操作される。
【0026】
車体コントローラ30は、油圧ショベル100全体の動作を制御するコントローラであり、CPU(Central Processing Unit)、不揮発性メモリ、タイマなどにより構成されている。モニタ装置20は、車体コントローラ30と通信可能に構成されている。図2中の破線矢印は電気回路を示す。なお図2には、実施形態の油圧ショベル100を構成する電気回路の一部のみを図示している。
【0027】
実施形態における「コントローラ」とは、モニタコントローラ21と車体コントローラ30との両方を含む概念である。複数の単画像を合成した俯瞰画像は、モニタコントローラ21が生成してもよく、車体コントローラ30が生成してもよい。実施形態の、単画像を撮像する撮像装置(カメラ)と、俯瞰画像を生成するモニタコントローラ21および/または車体コントローラ30とは、油圧ショベル100の周辺画像を生成する手段としての機能を有している。
【0028】
操作装置40は、油圧ショベル100の動作のために操作される。操作装置40は、たとえば、作業機4を操作するための操作レバー、走行体1を操作するためのペダルなどを含んで構成されている。
【0029】
油圧ポンプ51は、エンジンの動力が伝達されて駆動し、圧油を吐出する。油圧ポンプ51は、作動油圧源と、パイロット油圧源とを含んでいる。油圧ポンプ51から吐出される圧油は、アクチュエータ56に供給される作動油と、メインバルブ55のスプールを移動するためのパイロット油とを含んでいる。油圧ポンプ51は、アクチュエータ56の駆動に用いる油圧を発生させる。アクチュエータ56は、油圧ポンプ51から供給された作動油によって作動する。
【0030】
図2に示す油圧回路は、油圧遮断バルブ52、比例制御弁53、圧力センサ54およびメインバルブ55を含んでいる。油圧ポンプ51から吐出されるパイロット油は、油圧遮断バルブ52、比例制御弁53および圧力センサ54を順に経由して、メインバルブ55へ供給される。油圧ポンプ51からメインバルブ55へ向かうパイロット油の流れの上流から下流へ、油圧遮断バルブ52、比例制御弁53および圧力センサ54が、この順に接続されている。
【0031】
油圧遮断バルブ52は、車体コントローラ30からの指令信号を受けて、開状態と閉状態とに切り換えられる。油圧遮断バルブ52が開状態に切り換えられると、比例制御弁53に油圧ポンプ51からのパイロット油が供給され、操作装置40の操作が有効になって、油圧ポンプ51からアクチュエータ56へ作動油が供給される。油圧遮断バルブ52が閉状態に切り換えられると、油圧回路が遮断されて、油圧ポンプ51からアクチュエータ56へ作動油が供給されなくなる。油圧遮断バルブ52は、閉状態において、油圧ポンプ51からのパイロット油の供給を遮断する。
【0032】
比例制御弁53は、操作装置40の操作により、機械的に動く。操作装置40の機械的動きが、比例制御弁53の動作を介して、パイロット油の油圧の変動に変換される。操作装置40の操作に対応して、比例制御弁53の開度が変動する。図2中に示す白抜き矢印は、操作装置40と比例制御弁53との間の機械的な連結を示す。比例制御弁53は、操作装置40の操作に従って動作するが、操作装置40の操作が油圧または電気によって比例制御弁53に伝わるのではなく、操作装置40と比例制御弁53との間に上述した油圧回路または電気回路は介在していない。
【0033】
圧力センサ54は、比例制御弁53の下流に配置されており、比例制御弁53を通過した後のパイロット油の圧力を検出する。圧力センサ54は、操作装置40の操作によるパイロット油の圧力変動を検出する。圧力センサ54は、パイロット油に圧力が発生したことを検出して操作装置40が操作されたことを検知する圧力スイッチであってもよい。
【0034】
メインバルブ55は、スプールを有している。メインバルブ55は、パイロット油の圧力に従ってスプールを移動させることにより、油圧ポンプ51からアクチュエータ56へ供給される作動油の量を調整する。
【0035】
アクチュエータ56はたとえば、ブーム5、アーム6もしくはバケット7を駆動する油圧シリンダであってもよく、または旋回体3を旋回させる旋回モータであってもよい。
【0036】
ロックスイッチ59は、操作装置40を操作したときに油圧ショベル100の動作を許可するか許可しないかを切り替えるためのスイッチである。ロックスイッチ59は、車体コントローラ30と電気的に接続されている。車体コントローラ30は、ロックスイッチ59から、油圧ショベル100の動作を許可するかしないかを示す信号を受ける。ロックスイッチ59から油圧ショベル100の動作を許可しないことを示す信号を受けた車体コントローラ30は、油圧遮断バルブ52に対し、油圧遮断バルブ52を閉状態にする指令信号を送信する。
【0037】
[動作]
図3は、表示部22の表示内容に基づく油圧ショベル100の動作の流れを示すフローチャートである。図3に示すように、油圧ショベル100を動作させていないときには、油圧ショベル100の動作のために操作される操作装置40が操作されていない中立位置の状態である(ステップS10)。「中立位置」とは、操作装置40が操作されていない位置(ニュートラル位置)であることを意味する。このときモニタコントローラ21は、表示部22に、油圧ショベル100の周辺画像を表示する(ステップS20)。
【0038】
図4は、表示部22に表示された周辺画像の一例を示す模式図である。上述した通り、油圧ショベル100の周辺画像は、右前方カメラ11、右後方カメラ12、後方カメラ13または左方カメラ14のいずれかによって撮像された単画像と、単画像を合成して生成された俯瞰画像とを含む。図4中に示す、表示部22内の一部領域である領域22Aには、後方カメラ13で撮像された画像から生成された単画像が表示されている。図4中に示す、表示部22内の一部領域である領域22Bには、車体情報が表示されている。具体的には、領域22Bには、燃料残量を示す燃料計、冷却水の温度および作動油の温度を示す温度計が表示されている。図4に示す表示部22には、周辺画像と車体情報との両方が表示されている。
【0039】
図3に戻って、次にステップS30において、油圧遮断バルブ52を開状態にする。車体コントローラ30は、油圧遮断バルブ52に対し、油圧遮断バルブ52を開状態にする指令信号を送信する。
【0040】
次にステップS40において、表示部22の表示内容を手動で切り替えるか否かを判断する。実施形態の油圧ショベル100は、表示部22の表示内容をオペレータが手動で切り替え可能に構成されている。操作装置40を操作していない間は、表示部22の表示内容を、周辺画像を含む表示と、周辺画像を含まない表示(車体情報のみを含む表示)とに、切り替え可能である。タッチパネルである表示部22に、表示内容を切り替えるための画面切替ボタンが設けられていてもよく、または、画面切替用のスイッチが設けられていてもよい。
【0041】
表示部22の表示内容を切り替えない場合(ステップS40においてNO)、表示部22の表示内容は、ステップS20において表示された通り、周辺画像を含む表示である。このとき、油圧遮断バルブ52は開状態のままで維持されている。これにより車体コントローラ30は、操作装置40の操作による油圧ショベル100の動作を許可している。
【0042】
このとき、オペレータが操作装置40の操作を開始すると(ステップS50)、車体コントローラ30は、操作装置40の操作に従った油圧ショベル100の動作を開始する(ステップS60)。その後、操作装置40を中立位置の状態にすると(ステップS70)、油圧ショベル100は動作を停止する(ステップS80)。
【0043】
ステップS40の判断において、表示部22の表示内容を車体情報を含むものに切り替える場合(ステップS40においてYES)、ステップS110に進み、モニタコントローラ21は、表示部22に車体情報を表示する。これにより、表示部22の現在の表示内容が、周辺画像を含まなくなる。
【0044】
表示部22の現在の表示内容が何であるかを示す信号をモニタコントローラ21が車体コントローラ30に送信することで、車体コントローラ30が表示部22の現在の表示内容を認識してもよい。または、車体コントローラ30が表示部22に直接アクセスすることにより、表示部22の現在の表示内容を確認してもよい。表示部22に表示可能な複数の画面の各々にシリアル番号を付加しておき、表示部22に現在表示されている画面のシリアル番号を参照することによって、車体コントローラ30は、表示部22の現在の表示内容に周辺画像が含まれるか否かを、認識することができる。
【0045】
図5は、表示部22に表示された車体情報の一例を示す模式図である。図5には、車体情報の一例として、油圧ショベル100の複数の作業モードのうち、現在選択されている作業モードを示す画面が図示されている。
【0046】
図3に戻って、次にステップS120において、油圧遮断バルブ52を閉状態にする。車体コントローラ30は、油圧遮断バルブ52に対し、油圧遮断バルブ52を閉状態にする指令信号を送信する。
【0047】
油圧遮断バルブ52が閉状態であることにより、油圧ポンプ51からパイロット油がメインバルブ55に供給されることがなく、従ってメインバルブ55のスプールは移動しない。その結果、次のステップS150においてオペレータが操作装置40を操作しても、油圧ショベル100は操作装置40の操作に従った動作をしない。車体コントローラ30は、表示部22の現在の表示内容が周辺画像を含まない場合、常時、油圧遮断バルブ52を閉状態にしている。これにより車体コントローラ30は、操作装置40の操作による油圧ショベル100の動作を禁止している。
【0048】
オペレータは、操作装置40を操作しても油圧ショベル100が動作しないことを認識して、操作装置40を中立位置に戻す(ステップS170)。そして、処理を終了する(エンド)。
【0049】
[作用効果]
上述した油圧ショベル100の特徴的な構成および作用効果についてまとめて記載すると、以下の通りである。
【0050】
油圧ショベル100は、図2に示すように、表示部22を備えている。表示部22は、モニタコントローラ21または車体コントローラ30により生成された、油圧ショベル100の周辺画像を、選択的に表示する。油圧ショベル100はさらに、油圧ショベル100の動作を制御する車体コントローラ30を備えている。図3に示すように、表示部22が周辺画像を表示している場合、操作装置40の操作による油圧ショベル100の動作が許可される。表示部22が周辺画像を表示していない場合、操作装置40の操作による油圧ショベル100の動作が禁止される。
【0051】
油圧ショベル100では、車体情報と、周辺監視のためカメラで撮影した周辺画像との両方を、表示部22に表示させる必要がある。車体情報を表示するモニタと周辺画像を表示するモニタとを別々に設置すると、モニタ2台分のスペースが必要になる。省スペース化のため、1つの表示部22に車体情報と周辺画像とを切り替えて表示している。
【0052】
油圧ショベル100を動作させるときには、周囲監視のため、周辺画像の表示が必要である。油圧ショベル100の動作のために操作装置40を操作するときに、表示部22に周辺画像が表示されていれば、操作装置40の操作に従って油圧ショベル100を動作させ、表示部22に周辺画像が表示されていなければ、操作装置40を操作しても油圧ショベル100が動作しないようにする。油圧ショベル100は、表示部22に周辺画像が表示されているときに限り、動作するように構成される。油圧ショベル100の動作時に表示部22に周辺画像が表示されているので、表示部22に表示された周辺画像を確認することで、オペレータは油圧ショベル100の周囲の状況を確認することができる。
【0053】
また図2に示すように、油圧ショベルは、油圧ポンプ51と、油圧ポンプ51からのパイロット油の供給を遮断する油圧遮断バルブ52とを備えている。油圧遮断バルブ52は、表示部22の現在の表示内容が周辺画像を含まない場合、常時、閉状態にされる。このようにすれば、表示部22に周辺画像が表示されていない信号が、パイロット圧を遮断する条件となり、簡単な構成で油圧ショベル100の動作を禁止することができる。
【0054】
<第二実施形態>
[動作]
第二実施形態の油圧ショベル100は、第一実施形態と同様の構成を備えているため、第二実施形態の油圧ショベル100の特徴的な動作について、以下説明する。図6は、第二実施形態の油圧ショベル100の動作の流れを示すフローチャートである。
【0055】
図6に示されるように、第一実施形態と同様に、油圧ショベル100を動作させていないときには、油圧ショベル100の動作のために操作される操作装置40が操作されていない中立位置の状態である(ステップS10)。このときモニタコントローラ21は、表示部22に、油圧ショベル100の周辺画像を表示する(ステップS20)。次にステップS30において、油圧遮断バルブ52を開状態にする。
【0056】
次にステップS40において、表示部22の表示内容を手動で切り替えるか否かを判断する。表示部22の表示内容を切り替えない場合(ステップS40においてNO)、表示部22の表示内容は、ステップS20において表示された通り、周辺画像を含む表示である。このとき、油圧遮断バルブ52は開状態のままで維持されている。これにより車体コントローラ30は、操作装置40の操作による油圧ショベル100の動作を許可している。
【0057】
このとき、オペレータが操作装置40の操作を開始すると(ステップS50)、車体コントローラ30は、操作装置40の操作に従った油圧ショベル100の動作を開始する(ステップS60)。その後、操作装置40を中立位置の状態にすると(ステップS70)、油圧ショベル100は動作を停止する(ステップS80)。
【0058】
ステップS40の判断において、表示部22の表示内容を車体情報を含むものに切り替える場合(ステップS40においてYES)、ステップS110に進み、モニタコントローラ21は、表示部22に車体情報を表示する。これにより、表示部22の現在の表示内容が、周辺画像を含まなくなる。
【0059】
この状態で、オペレータが操作装置40の操作を開始すると(ステップS150)、操作装置40の動作に伴って比例制御弁53が動作して、パイロット圧が上昇する(ステップS151)。パイロット圧の上昇は、圧力センサ54によって検出される(ステップS152)。圧力センサ54は、パイロット油の圧力が上昇したことを示す信号を、車体コントローラ30に送信する。車体コントローラ30は、圧力センサ54により検出されるパイロット油の圧力上昇を、操作装置40の操作を示す信号として検知する。
【0060】
次にステップS153において、油圧遮断バルブ52を閉状態にする。操作装置40を操作したことを示す信号を検知した車体コントローラ30は、油圧遮断バルブ52に対し、油圧遮断バルブ52を開状態にする指令信号を送信する。
【0061】
油圧遮断バルブ52が閉状態にされることにより、油圧ポンプ51からパイロット油がメインバルブ55に供給されることがなく、従ってメインバルブ55のスプールは移動しない。その結果、オペレータが操作装置40を操作しても、油圧ショベル100は操作装置40の操作に従った動作をしない。車体コントローラ30は、表示部22の現在の表示内容が周辺画像を含まない場合、オペレータが操作装置40を操作したことを示す信号を検知して、油圧遮断バルブ52を閉状態にしている。これにより車体コントローラ30は、操作装置40の操作による油圧ショベル100の動作を禁止している。
【0062】
オペレータは、操作装置40を操作しても油圧ショベル100が動作しないことを認識して、操作装置40を中立位置に戻す(ステップS170)。そして、処理を終了する(エンド)。
【0063】
[作用効果]
以上説明した第二実施形態の油圧ショベル100では、図6に示すように、表示部22の現在の表示内容が周辺画像を含まない場合、車体コントローラ30が操作装置40を操作したことを検出して、油圧遮断バルブ52が閉状態にされる。このようにすれば、表示部22に周辺画像が表示されていない信号と、操作装置40を操作したことを示す信号との2つが、パイロット圧を遮断する条件となり、信頼性を向上することができる。
【0064】
また図6に示すように、車体コントローラ30は、圧力センサ54により検出されるパイロット油の圧力上昇を、操作装置40の操作を示す信号として検知する。このようにすれば、車体コントローラ30は、パイロット油の圧力上昇の信号を受けることにより、操作装置40の操作を検知することができる。
【0065】
上述した操作装置40は、機械的に比例制御弁53に連結されて、比例制御弁53を通過した後のパイロット油の圧力変動を検出することで操作装置40の操作を検出可能な仕様であるが、この構成に限られず、操作装置40は電子式の装置であってもよい。たとえば操作装置40は、操作レバーと、操作レバーの操作量を検出する操作検出器とを含み、操作レバーが操作されるとき、操作レバーの操作方向および操作量に応じた電気信号を操作検出器が車体コントローラ30に出力するように、構成されてもよい。
【0066】
実施形態では、図2に示す油圧回路において、ロックスイッチ59の切り替えにより油圧回路を遮断するバルブと、表示部22の現在の表示内容が周辺画像を含まない場合に油圧回路を遮断するバルブとが、同じ油圧遮断バルブ52である例について説明した。この構成に限られず、ロックスイッチ59の切り替えにより油圧回路を遮断する第一のバルブと、表示部22の現在の表示内容が周辺画像を含まない場合に油圧回路を遮断する第二のバルブとを、別々に設けてもよい。
【0067】
この場合、第一のバルブと第二のバルブとは、油圧回路において直列に接続される。油圧回路において、第二のバルブを第一のバルブよりも下流に配置するのが望ましく、このようにすれば、ロックスイッチ59の切り替えによる油圧回路の遮断を優先させた構成とすることができる。
【0068】
<制御システム>
図7は、制御システムの構成の概略を表した図である。これまでの実施形態においては、図2に示すように、油圧ショベル100が操作装置40、表示部22、モニタコントローラ21および車体コントローラ30を備えている例について説明した。油圧ショベル100は、運転室8にオペレータが搭乗して操作する仕様に限られず、遠隔操作される仕様であってもよい。
【0069】
図7に示すように、制御システムは、リモートコントローラ200を備えている。リモートコントローラ200は、油圧ショベル100の外部に設置されており、油圧ショベル100に搭載されたコントローラとの間で信号の送受信が可能とされている。
【0070】
リモートコントローラ200には、油圧ショベル100の動作のために操作される操作装置と、油圧ショベル100の周辺の俯瞰画像を表示可能な表示部とが接続されている。リモートコントローラ200は、オペレータによる操作装置の操作に応じた電気信号の入力を受ける。リモートコントローラ200は、表示部の表示内容を制御する。
【0071】
油圧ショベル100に設けられた複数の撮像装置が各々撮像した画像から、単画像が生成される。単画像を合成することにより、油圧ショベル100の俯瞰画像が生成される。油圧ショベル100に搭載されたコントローラが俯瞰画像を生成してリモートコントローラ200に俯瞰画像を送信してもよい。または、撮像装置が撮像した画像もしくは単画像を受信したリモートコントローラ200が、俯瞰画像を生成してもよい。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 走行体、3 旋回体、4 作業機、5 ブーム、6 アーム、7 バケット、8 運転室、10 カメラ、11 右前方カメラ、12 右後方カメラ、13 後方カメラ、14 左方カメラ、20 モニタ装置、21 コントローラ、22 表示部、22A,22B 領域、30 車体コントローラ、40 操作装置、51 油圧ポンプ、52 油圧遮断バルブ、53 比例制御弁、54 圧力センサ、55 メインバルブ、56 アクチュエータ、59 ロックスイッチ、100 油圧ショベル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7