IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジェンサーム インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許-車両ミクロ気候システムと制御方法 図1
  • 特許-車両ミクロ気候システムと制御方法 図2
  • 特許-車両ミクロ気候システムと制御方法 図3
  • 特許-車両ミクロ気候システムと制御方法 図4
  • 特許-車両ミクロ気候システムと制御方法 図5
  • 特許-車両ミクロ気候システムと制御方法 図6
  • 特許-車両ミクロ気候システムと制御方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】車両ミクロ気候システムと制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20220530BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20220530BHJP
   B60H 1/34 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
B60H1/00 101Z
B60H1/00 101J
B60H1/00 102V
B60H1/22 671
B60H1/34 651A
B60H1/34 651Z
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021070631
(22)【出願日】2021-04-19
(62)【分割の表示】P 2017523225の分割
【原出願日】2015-10-30
(65)【公開番号】P2021107224
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/073,589
(32)【優先日】2014-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511014862
【氏名又は名称】ジェンサーム インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Gentherm Incorporated
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シューマッカー,ダレン アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ジバーソン,ポール キャメロン
(72)【発明者】
【氏名】スタイナル,グレゴリー リオ
(72)【発明者】
【氏名】カウフマン ザ サード,ウェイン スォイヤー
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアーノ,ヴィンセンゾ
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-273715(JP,A)
【文献】特開2002-144849(JP,A)
【文献】特開2004-291680(JP,A)
【文献】特開2005-306075(JP,A)
【文献】特開2006-082641(JP,A)
【文献】特開2007-283932(JP,A)
【文献】特開2010-036751(JP,A)
【文献】特開2012-239797(JP,A)
【文献】特許第6914832(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2012/0312520(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ミクロ気候システムであって、
マクロ気候環境を提供するように構成されているHVAC熱調節システムと、
複数のミクロ気候装置を有する補助的熱調節システムであって、前記ミクロ気候装置が、乗員にマクロ気候環境を提供する内部空間に配置されるように構成され、前記ミクロ気候装置が、前記マクロ気候環境と異なるミクロ気候環境を前記乗員に提供するように構成され、前記ミクロ気候装置が、前記乗員の部位に近接するように構成されている補助的熱調節システムと、
前記ミクロ気候装置と通信する制御装置であって、複数の熱エネルギー源から前記乗員が受ける熱エネルギーに基づいて計算される乗員個人快適性を判断するように構成される制御装置と、を包含し、
前記制御装置は、前記乗員個人快適性を判断し、前記複数の熱エネルギー源の少なくとも1つの入力に基づく所望の乗員個人快適性を達成するように、前記乗員個人快適性に応じて自動的に前記ミクロ気候装置に命令するように構成され、
前記制御装置が、前記内部空間に対する太陽負荷を判断し、
前記制御装置が、乗員個人快適性を達成するように、前記内部空間内の少なくとも1つのミクロ気候装置を調整することによって前記太陽負荷を補正し、前記制御装置によって調整されるミクロ気候装置はシート及びステアリングホイールの少なくとも1つを含み、
前記制御装置が、前記乗員に対応するユーザプロファイルを提供する乗員特性を有するメモリを含み、
前記乗員個人快適性の判断に前記ユーザプロファイルを使用するように前記制御装置が構成されている、車両ミクロ気候システム。
【請求項2】
前記乗員特性が、乗員提供による快適性データを含む、請求項1に記載の車両ミクロ気候システム。
【請求項3】
前記乗員特性が、性別と身長と体重のうち少なくとも一つを含む、請求項2に記載の車両ミクロ気候システム。
【請求項4】
前記制御装置が、少なくとも1つのユーザ入力デバイスに基づいて前記メモリを修正するように構成されている、請求項1に記載の車両ミクロ気候システム。
【請求項5】
少なくとも1つのミクロ気候装置を調整するように構成されたユーザ入力装置を備え、前記ユーザ入力装置の操作は、前記所望の乗員個人快適性が未達成であることを示し、前記ユーザプロファイルは、前記ユーザ入力装置を介した調整に応じて修正される、請求項4に記載の車両ミクロ気候システム。
【請求項6】
異なるユーザプロファイルが記憶されており、それに対応して異なるミクロ気候プロファイルが提供されており、
前記制御装置が、前記ユーザプロファイルおよび前記ユーザプロファイルに対応するミクロ気候プロファイルに応じて、前記ミクロ気候装置への命令を調整するように構成されている、請求項5に記載の車両ミクロ気候システム。
【請求項7】
前記ユーザ入力装置は、スイッチ、スマートフォン、キーフォブ、またはタッチスクリーンの少なくとも1つを含む、請求項5に記載の車両ミクロ気候システム。
【請求項8】
前記制御装置との通信状態にある乗員快適性センサを包含し、前記乗員快適性センサが、前記乗員特性を検出するように構成され、前記検出された乗員特性を前記乗員個人快適性の判断に使用するように前記制御装置が構成されている、請求項6に記載の車両ミクロ気候システム。
【請求項9】
前記乗員特性が、乗員深部温度と乗員皮膚温度と乗員皮膚水分量とマクロ気候湿度とマクロ気候温度のうち少なくとも一つを含む、請求項8に記載の車両ミクロ気候システム。
【請求項10】
前記ユーザプロファイルと、前記ユーザプロファイルに関連するミクロ気候プロファイルとに応じて前記HVAC熱調節システムへ命令し、前記マクロ気候環境を提供するように前記制御装置が構成されている、請求項8に記載の車両ミクロ気候システム。
【請求項11】
前記複数のミクロ気候装置が、前記ステアリングホイールと前記シートとドアパネルとアームレストとウィンドウデフォッガとダッシュパネルとルーフパネルのうちの少なくとも1つによって構成される、請求項1に記載の車両ミクロ気候システム。
【請求項12】
前記乗員の部位が、手と足と首と顔と脚と腕と頭と胴体のうち少なくとも一つを含む、請求項1に記載の車両ミクロ気候システム。
【請求項13】
前記内部空間の外側の車両外部環境を評価して、前記乗員個人快適性を判断するように前記制御装置が構成されている、請求項1に記載の車両ミクロ気候システム。
【請求項14】
前記車両外部環境が、車両位置と時刻と気候条件のうち少なくとも一つを含む外側パラメータに対応する、請求項13に記載の車両ミクロ気候システム。
【請求項15】
前記制御装置が、気候調節推移パラメータに基づいて所望の気候調節推移を検出するように構成されている気候調節推移モジュールを含み、前記ミクロ気候装置のうち少なくとも1つが前記気候調節推移パラメータに応じて命令される、請求項1に記載の車両ミクロ気候システム。
【請求項16】
前記気候調節推移が。暖房モードと冷房モードと中間モードを含み、前記暖房モードが、前記乗員により多くの熱が所望される条件に対応し、前記冷房モードが、前記乗員により多くの冷房が所望される別の条件に対応し、前記中間モードが、現在熱的環境が前記乗員にとって快適であるまた別の条件に対応し、前記中間モードにおいて、前記ミクロ気候装置とマクロ気候装置の少なくとも一方に自動的に命令して所望の乗員個人快適性を達成するように前記制御装置が構成されている、請求項15に記載の車両ミクロ気候システム。
【請求項17】
前記複数の熱エネルギー源が、TE OCC =Σq +Σq cv +Σq cd で表される式に基づいており、TE OCC は乗員が受ける熱エネルギーであり、q は熱放射源が提供する熱エネルギーであり、q cv は熱対流源が提供する熱エネルギーであり、q cd は熱伝導源が提供する熱エネルギーである、請求項1に記載の車両ミクロ気候システム。
【請求項18】
前記熱伝導源はシートバックからの冷房である、請求項17に記載の車両ミクロ気候システム。
【請求項19】
前記熱対流源はベントからの気流である、請求項17に記載の車両ミクロ気候システム。
【請求項20】
前記制御装置が、表面温度感受性パラメータに基づいて乗員表面温度感受性を検出するように構成されている表面温度感受性モジュールを含み、
前記ミクロ気候装置の少なくとも1つが、前記表面温度感受性パラメータに応じて命令される、請求項1に記載の車両ミクロ気候システム。
【請求項21】
前記制御装置が、太陽負荷パラメータに基づいて熱放射源q に関する車両への前記太陽負荷を検出するように構成され、
前記ミクロ気候装置の少なくとも1つが、前記太陽負荷パラメータに応じて命令され、
前記制御装置が、車両位置と、車両走行方向と、検出された光度および太陽位置のうち少なくとも一つに基づいて前記太陽負荷を判断するように構成されている、請求項1に記載の車両ミクロ気候システム。
【請求項22】
前記乗員個人快適性が、複数の乗員のそれぞれについて判断される、請求項1に記載の車両ミクロ気候システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2014年10月31日に出願されて参照により援用される米国仮出願第62/073,589号の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、自動車の中など、車両内部環境の温度制御に関する。詳しく記すと、本開示は、車両ミクロ気候システムと、乗員の個人快適性を高めるためこのシステムを制御する方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
暖房・換気・冷房(HVAC)システムは、車内の温度を制御して乗員快適性を高めるのに自動車業界で広く使用されている。暖房および冷房シートや暖房ステアリングホイールなど、付加的および補助的な熱調節装置がますます車両に取り入れられている。これらの補助的熱調節装置は、乗員快適性をさらに向上させることを意図したものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HVACシステムと補助的熱調節装置の動作には調和が見られない。車内の各装置は一般的に、スイッチやダイヤルを操作することなどによる乗員からの入力に基づいて単独で制御される。加えて、異なる乗員の間で大きく変化しうる、「乗員個人快適性」と呼ばれる熱的快適性についての個人的認知に対処する熱調節システムは存在していない。また、熱的快適性が最終的に達成されたことを乗員が確信したため乗員が調整入力を停止した時でも、車両への熱負荷の変化により乗員の熱的快適性を乱して乗員からの入力をさらに必要とすることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、車両ミクロ気候システムは、乗員にマクロ気候環境を提供する内部空間に配置されるように構成されているミクロ気候装置を含む。ミクロ気候装置は、乗員にミクロ気候環境を提供するように構成されている。ミクロ気候装置は、マクロ気候環境に露出される他の乗員部位と比較して高い温度受容性反応を有する乗員の部位に近接するように構成されている。制御装置はミクロ気候装置との通信状態にある。制御装置は、乗員個人快適性を判断し、乗員個人快適性に応じて自動的にミクロ気候装置に命令して所望の乗員個人快適性を達成するように構成されている。
【0006】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、HVAC熱調節システムはマクロ気候環境を提供するように構成されている。
【0007】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、車両ミクロ気候システムは、内燃エンジンと電気モータシステムと燃料電池のうち少なくとも一つを有する。HVAC熱調節システムは、内燃エンジンと電気モータシステムと燃料電池のうち少なくとも一つにより駆動される。
【0008】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態では、多数のミクロ気候装置を有する補助的熱調節システムが設けられる。多数のミクロ気候装置は、ステアリングホイールとシートとドアパネルとアームレストとウィンドウデフォッガとダッシュパネルとルーフパネルのうち少なくとも一つにより設けられる。
【0009】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、乗員の部位は、手と足と首と顔と脚と腕と頭と胴体のうち少なくとも一つを含む。
【0010】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、制御装置は、乗員に対応するユーザプロファイルを提供する乗員特性を有するメモリを含む。制御装置は、乗員個人快適性の判断にユーザプロファイルを使用するように構成されている。
【0011】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、乗員特性は、性別と身長と体重と乗員提供の快適性データのうち少なくとも一つを含む。
【0012】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、メモリは、ミクロ気候プロファイルを備える少なくとも一つのルックアップテーブルを含み、制御装置は、少なくとも一つのユーザ入力に基づいてミクロ気候プロファイルを修正するように構成されている。
【0013】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、乗員快適性センサは制御装置との通信状態にある。乗員快適性センサは、乗員特性を検出するように構成されている。制御装置は、検出された乗員特性を乗員個人快適性の判断に使用するように構成されている。
【0014】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、乗員特性は、乗員深部温度と乗員皮膚温度と乗員皮膚水分量とマクロ気候湿度とマクロ気候温度のうち少なくとも一つを含む。
【0015】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態では、ユーザプロファイルと、ユーザプロファイルに関連するミクロ気候プロファイルとに応じてミクロ気候装置への命令を調整するように制御装置が構成されている。
【0016】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態では、内部空間の外側の車両外部環境を評価し、マクロ気候環境を評価し、ミクロ気候環境を評価して乗員個人快適性を判断するように制御装置が構成されている。
【0017】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態では、ユーザプロファイルとミクロ気候プロファイルとに応じてマクロ気候装置に命令するように制御装置が構成されている。
【0018】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、車両外部環境は、車両位置と時刻と気候の条件のうち少なくとも一つを含む外側パラメータに対応する。
【0019】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、制御装置は、傾眠パラメータに基づいて乗員傾眠を検出するように構成されている傾眠モジュールを含む。ミクロ気候装置は傾眠パラメータに応じて命令される。
【0020】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、制御装置は、太陽負荷パラメータに基づいて車両への太陽負荷を検出するように構成されている太陽負荷モジュールを含む。ミクロ気候装置は太陽負荷パラメータに応じて命令される。
【0021】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、制御装置は、表面温度感受性パラメータに基づいて乗員表面温度感受性を検出するように構成されている表面温度感受性モジュールを含む。ミクロ気候装置は表面温度感受性パラメータに応じて命令される。
【0022】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、制御装置は、幼児用シートパラメータに基づいて乗員幼児用シートを検出するように構成されている幼児用シートモジュールを含み、ミクロ気候装置は幼児用シートパラメータに応じて命令される。
【0023】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、制御装置は、遠隔始動入力パラメータに基づいて遠隔始動入力を検出するように構成されている遠隔始動モジュールを含む。ミクロ気候装置は、遠隔始動入力パラメータに応じて命令される。
【0024】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、制御装置は、気候調節推移パラメータに基づいて所望の気候調節推移を検出するように構成されている気候調節推移モジュールを含む。ミクロ気候装置は、気候調節推移パラメータに応じて命令される。
【0025】
別の例示的実施形態において、車両ミクロ気候システムは、乗員にマクロ気候環境を提供する内部空間に配置されるように構成されているミクロ気候装置を含む。ミクロ気候装置は、乗員にミクロ気候環境を提供するように構成されている。制御装置はミクロ気候装置との通信状態にある。制御装置は、太陽負荷と乗員個人快適性とを判断するように構成されている。制御装置は、太陽負荷と乗員個人快適性とに応じて自動的にミクロ気候装置に命令して所望の乗員個人快適性を達成するように構成されている。
【0026】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、HVAC熱調節システムは、マクロ気候環境を提供するように構成されている。
【0027】
上記のいずれかのさらなる実施形態では、多数のミクロ気候装置を有する補助的熱調節システムが設けられる。多数のミクロ気候装置は、ステアリングホイールとシートとドアパネルとアームレストとウィンドウデフォッガとダッシュパネルとルーフパネルのうち少なくとも一つにより設けられる。
【0028】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、制御装置は、乗員に対応するユーザプロファイルを提供する乗員特性を有するメモリを含む。制御装置は、乗員個人快適性の判断にユーザプロファイルを使用するように構成されている。
【0029】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、乗員特性は、性別と身長と体重と乗員提供の快適性データのうち少なくとも一つを含む。
【0030】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、メモリは、ミクロ気候プロファイルを備える少なくとも一つのルックアップテーブルを含み、少なくとも一つのユーザ入力に基づいてミクロ気候プロファイルを修正するように制御装置が構成されている。
【0031】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、乗員快適性センサは制御装置との通信状態にある。乗員快適性センサは乗員特性を検出するように構成されている。制御装置は、検出された乗員特性を乗員個人快適性の判断に使用するように構成されている。
【0032】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、乗員特性は、乗員深部温度と乗員皮膚温度と乗員皮膚水分量とマクロ気候湿度とマクロ気候温度のうち少なくとも一つを含む。
【0033】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態では、ユーザプロファイルと、ユーザプロファイルに関連するミクロ気候プロファイルとに応じてミクロ気候装置への命令を調整するように制御装置が構成されている。
【0034】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態では、内部空間の外側の車両外部環境を評価し、マクロ気候環境を評価し、ミクロ気候環境を評価して乗員個人快適性を判断するように制御装置が構成されている。
【0035】
上記のいずれかのさらなる実施形態において、車両外部環境は、車両位置と時刻と気候条件のうち少なくとも一つを含む外側パラメータに対応する。
【0036】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態では、車両位置と、車両走行方向と、検出された光度および太陽位置のうち少なくとも一つに基づいて太陽負荷を判断するように制御装置が構成されている。
【0037】
別の例示的実施形態において、車両ミクロ気候システムは、乗員にマクロ気候環境を提供する内部空間に配置されるように構成されているミクロ気候装置を含む。ミクロ気候装置は、乗員にミクロ気候環境を提供するように構成されている。制御装置はミクロ気候装置との通信状態にある。気候調節推移パラメータに基づいて所望の気候調節推移を検出して、乗員個人快適性を判断するように制御装置が構成されている。ミクロ気候装置は、気候調節推移パラメータと乗員個人快適性とに応じて命令されて所望の乗員個人快適性を達成する。
【0038】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、気候調節推移は、暖房と冷房と中間のモードを含む。暖房モードは、多くの熱が乗員に所望されている条件に対応する。冷房モードは、多くの冷房が乗員に所望されている別の条件に対応する。中間モードは、現在熱環境が乗員にとって快適であるまた別の条件に対応する。制御装置は、中間モードにおいてミクロ気候装置とマクロ気候装置の少なくとも一方に自動的に命令して所望の乗員個人快適性を達成するように構成されている。
【0039】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、HVAC熱調節システムは、マクロ気候環境を提供するように構成されている。
【0040】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、補助的熱調節システムは多数のミクロ気候装置を有する。多数のミクロ気候装置は、ステアリングホイールとシートとドアパネルとアームレストとウィンドウデフォッガとダッシュパネルとルーフパネルのうち少なくとも一つにより設けられる。
【0041】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、制御装置は、乗員に対応するユーザプロファイルを提供する乗員特性を有するメモリを含む。制御装置は、乗員個人快適性の判断にユーザプロファイルを使用するように構成されている。
【0042】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、乗員特性は、性別と身長と体重と乗員提供の快適性データのうち少なくとも一つを含む。
【0043】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、メモリは、ミクロ気候プロファイルを備える少なくとも一つのルックアップテーブルを含む。少なくとも一つのユーザ入力に基づいてミクロ気候プロファイルを修正するように制御装置が構成されている。
【0044】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、乗員快適性センサは制御装置との通信状態にある。乗員快適性センサは、乗員特性を検出するように構成されている。検出された乗員特性を乗員個人快適性の判断に使用するように制御装置が構成されている。
【0045】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、乗員特性は、乗員深部温度と乗員皮膚温度と乗員皮膚水分量とマクロ気候湿度とマクロ気候温度のうち少なくとも一つを含む。
【0046】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、制御装置は、内部空間の外側の車両外部環境を評価し、マクロ気候環境を評価し、ミクロ気候環境を評価して乗員個人快適性を判断するように構成されている。
【0047】
上記のいずれかについてのさらなる実施形態において、車両外部環境は、車両位置と時刻と天候条件のうち少なくとも一つを含む外側パラメータに対応する。
【0048】
添付図面に関して検討される際には以下の詳細な説明を参照することにより開示がさらに理解されうる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】ミクロ気候システムを有する車両の概略図である。
図2】ミクロ気候システムの制御装置と、図1の車両についてこの制御装置に提供される入力例との概略図である。
図3図1の車両についてマクロ気候装置およびミクロ気候装置との通信状態にある制御装置の概略図である。
図4】制御装置により実施されるミクロ気候システム制御方法を表すフローチャート例である。
図5】制御装置と車両気候制御モジュール例との概略図である。
図6】車両の熱エネルギー環境の概略図である。
図7図6の熱エネルギー環境について様々な暖房および/または冷房装置のための熱エネルギー入力を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
様々な態様やそれぞれの個別特徴を含む前出段落、請求項、または以下の説明および図面の実施形態と例と代替案とは、単独で、または組み合わせにより解釈されうる。一つの実施形態に関して記載される特徴は、このような特徴が適合しない場合を除いて、すべての実施形態に適用可能である。
【0051】
自動車などの車両10が、図1に概略的に示されている。車両10は、一人以上の乗員16のための車室または内部空間12を含み、この空間は、乗員が熱的快適性を体感する車両内部環境を提供する。車両10は、内部空間12の熱的快適性にも影響して熱エネルギー不均衡を車両の内部空間に導入しうる車両外部環境14に配置されている。
【0052】
各乗員は一般的に、独自の乗員個人快適性を有している。すなわち、特定の乗員は別の乗員と異なるように熱エネルギーレベルを検出するのである。その結果、車両内の全く同じ熱的環境がある乗員には快適、別の乗員には不快と認識される。このため、本開示は、マクロ気候装置(中央HVACシステムなど)と、ミクロ気候(気候制御シート(米国特許第5,524,439号および第6,857,697号など)、ヘッドレスト/首調節部(米国仮特許出願第62/039,125号など)、気候制御ヘッドライナ(米国仮特許出願第61/900334号など)、ステアリングホイール(米国特許第6,727,457号および米国特許公報第2014/0090513号など)、暖房ギヤシフタ(米国特許公報第2013/0061603号など)の両方を制御して調和させて個別ミクロ気候システムを達成することにより、人の熱管理に対する統合的アプローチを提供することに関している。ミクロ気候システムは、乗員からの入力がわずかであるか全くない、より自動化された状態で所望の乗員個人快適性を提供する。ミクロ気候装置のみで(つまりマクロ気候装置なしで)マクロ気候とマクロ気候の中の個別ミクロ気候の両方を提供できることが理解されるべきである。引用した特許、公報、および出願は、参照によりその全体が援用される。
【0053】
一つの例において、車両10は、制御装置22との通信状態にあるHVAC熱調節システム18と(ミクロ気候装置を備える)補助的熱調節システム20とを含む。様々な入力24は制御装置22と通信を行って、HVAC熱調節システム18および/または補助的熱調節システム20の動作に影響してこれを制御する。
【0054】
一例としてのミクロ気候システムにおいて、制御装置22は、例えば図2に示されている車両外部環境26からミクロ気候システム内のセンサおよび/または装置を介して様々な入力を受信する。車両外部環境26は、車両位置、車両方向および高度、時刻および日付などのパラメータと、天候関連のパラメータ(屋外温度、屋外湿度、車両への太陽負荷)とを含みうる。
【0055】
マクロ気候環境28も、制御装置22へパラメータを通信する。マクロ気候環境パラメータは、一つ以上の位置での内部温度および/または湿度と、現在HVACシステム設定とを含みうる。
【0056】
ミクロ気候環境30は、制御装置22へパラメータを通信する。ミクロ気候環境パラメータは、一つ以上のミクロ気候装置の温度および/または湿度と、補助的調節システム設定と、乗員快適性フィードバックとを含みうる。スイッチのポジションを変えることなどにより乗員が入力を提供してミクロ気候装置の一つを制御する時に、乗員快適性フィードバックが提供される。
【0057】
乗員情報32は、様々な乗員の間での熱受容性の差をカスタマイズしてこれに対処するため制御装置22に提供される。例えば、男性と女性は概して高温と低温に対して異なるように反応し、女性は低温に対して敏感かつ迅速に反応し、男性は高温に対して迅速に反応することが分かっている。加えて、乗員情報32は、熱質量と熱容量と内部エネルギー生産率とを判断するための情報を提供できる。乗員情報32は、性別、身長、体重、ユーザプロファイルを提供する他の乗員提供データなどの情報を含む。そして、例えば、何らかのデータの収集に先立って、顧客車両購入プロセス中に初期デフォルトデータセットやミクロ気候プロファイルが規定されうる。それからデフォルトミクロ気候プロファイルに基づいて、システムは、データを直感的に収集してから、ユーザによる実際の入力と経時使用に基づいて個人の必要/希望に合わせて調整するプロセスを開始できる。この初期のミクロ気候プロファイルは、最初の購入場所、ドライバ特性(性別、身長、体重など)のような量的要因とともに、熱的快適性/ストレスの正常状態についての質問に回答者が答えるアンケート調査のような質的要因とを含む幾つかの要因に基づくものである。この情報は、制御装置22へ通信を行うキーフォブまたはモバイル装置に記憶される。ユーザプロファイルと学習によるミクロ気候プロファイルとは、例えば車両データリンク、クラウド、ワイヤレス送信および/またはスマートフォンを介して、乗員とともに「移動」できる。
【0058】
検知された乗員情報は、例えば乗員温度を検出することによっても提供されうる(図3のセンサ79など参照)。検知されたこれらの乗員個人快適性入力は、認知された乗員個人快適性を判断するため制御装置22へ提供される。入力は、身体深部温度のような皮膚や他の身体温度など、測定による一つ以上の生理学的パラメータを含みうる。
【0059】
車両外部環境26とマクロ気候環境28とミクロ気候環境30と乗員情報32からの多数のパラメータは、一つ以上のルックアップテーブル34などのメモリに記憶されうる。メモリは、特定のユーザに対応する様々な使用シナリオについての一つ以上のユーザプロファイル31とミクロ気候プロファイル33に関する情報を記憶しうる。乗員個人快適性が予測されてミクロ気候システムが自動的に調整されるように、制御装置22は、乗員により行われるミクロ気候システムの調整から学習して、ルックアップテーブル34のミクロ気候プロファイル33を更新しうる。既存の設定点の間の設定を判断するのに、ルックアップテーブル値の補間または別の適当な方法が使用されうる。
【0060】
図3を参照すると、HVAC熱調節システム18の例が制御装置22との通信状態にある。HVAC熱調節システム18は、エンジン42に接続された暖房ループとの流通状態にある熱交換器36を含む。エンジン42は、内燃エンジン、電気モータシステム、および/または燃料電池を含みうる。エンジン42は、HVAC熱調節システム18に熱源を提供する。冷房ループには蒸発器40が配置され、これは車両に一般的に見られる冷媒と従来の空調コンポーネントとを含みうる。所望であれば、代わりに従来のHVACシステムが一つ以上の電気式マイクロコンプレッサにより設けられてもよいことが理解されるべきである。HVACシステムに外気を提供する換気システム38も設けられうる。HVAC熱調節システム18は一般的に、多数のベント46が設けられたダクト類44を含む。一つ以上のバルブ48は、HVACシステムからベント46への気流を選択的に制御する。これらのHVACシステムコンポーネントは、マクロ気候環境を提供する。
【0061】
補助的熱調節システム20は、ウィンドウデフロスタ/デフォッガ50、ルーフパネル52、計器盤54の一つ以上のパネル58(ベント56を含みうる)、ドアパネル60、ドアアームレスト62、センターコンソールアームレスト63、熱要素66とベント68を有する首調節装置67とを有するシート64、および/またはステアリングホイール70など、多数のミクロ気候装置を含む。これらのミクロ気候装置は、乗員に近接して暖房および/または冷房を提供することで周囲の内部環境の中に一層個別化されたミクロ気候環境を設けることにより、HVACシステムが可能にするもの以上に乗員快適性を高めることを意図している。例えば一つ以上の暖房要素、ファン、熱電装置、ヒートポンプ、および/またはマイクロコンプレッサにより、暖房と冷房が提供されうる。
【0062】
入力24は、制御装置22を通してマクロ気候環境とミクロ気候環境とを調整して所望の乗員個人快適性を達成するのに使用される。入力24は、センサ信号と、車両外部環境26とマクロ気候環境28とミクロ気候環境30の様々なパラメータを表す他の入力とを含む。入力24はさらに、一つ以上のスイッチ72、乗員情報を格納するキーフォブ74、乗員情報を格納するモバイル装置76、および/またはディスプレイ78を含む。ディスプレイ78は、HVAC熱調節システム18および/または補助的熱調節システム20の出力または動作モードを視覚的に表示しうる。ディスプレイ78は、例えばタッチスクリーンを介した入力手段も提供しうる。センサ79は、温度、水分量、湿度、または他の情報など、検知されたリアルタイムの乗員情報を提供しうる。
【0063】
概して、車両ミクロ気候システムは、車両の内部空間に配置されるように構成されている少なくとも一つのミクロ気候装置を含む。内部空間12は、乗員16にミクロ気候環境を提供する。ミクロ気候装置は、ユーザプロファイル31とミクロ気候プロファイル33に従って乗員16にミクロ気候環境を提供するように構成されている。一つの動作モード例において、ミクロ気候装置は、マクロ気候環境に露出される他の乗員部位と比較して高い個人的反応を有する乗員の部位に近接するように構成されている。これらの乗員部位は、手と足と首と顔と脚と腕と頭と胴体のうち少なくとも一つを含みうる。
【0064】
制御装置22は、ミクロ気候装置との通信状態にある。制御装置は、例えば乗員情報32に基づいて乗員個人快適性を判断するように構成されている。制御装置22は、乗員個人快適性に応じてミクロ気候装置に命令して、HVACシステムが提供できるものより高い乗員快適性を提供することにより、乗員のすぐ周囲の環境を微調整する。例えば、太陽が乗員の顔に長時間にわたって強く照り付けて乗員の背中に発汗を生じさせるなど、熱エネルギー入力はマクロ気候環境を不均衡にすることがある。この望ましくない状態を予測して、制御装置22はシートの冷房を命令し、熱要素66および/または首調節装置で乗員の背中、首、および/または腕を除湿する。背中の冷房は、背中エリアの発汗と、このような発汗が引き起こす関連の不快感を抑制および/または軽減できる。片腕または両腕を冷房すると、皮膚温度を低下させて、最も露出されているエリアへの太陽負荷の作用を中和する。上記の状態で、補助的熱調節システム20は、不快感の付加的原因となりうる発汗を抑制および/または軽減することにより快適な状態を維持できる。
【0065】
HVACシステムは主として車室環境の平衡点を変更するのに使用されるのに対して、補助的熱快適性システム20は乗員による快適性の認知を管理する。対象が明確な局所的装置により乗員の熱快適性が直接的に操作されるので、こうしてHVACシステムの縮小を可能にする。さらに、動作中に制御設定を変更するのに乗員が介入する必要性を限定するように、二つのシステムの作用が調和されうる。例えば、暑い車に乗り込む時には、ほとんど常にフルパワーで空調が始動し、所望の状態に達すると低い値で安定する。これはドライバ入力なしで容易に管理されうる。
【0066】
ミクロ気候システムとその制御装置とは、一つ以上の方法を使用して設計されうる。例えば、車両に設けられても設けられなくてもよいコンピューティングプラットフォームで特定のモデルが具現される「開ループ」方法が使用されうる。そしてこのモデルは、乗員熱的快適性がどのように操作されるべきかを判断するのに利用される。モデルは、オフラインでの試験と検証からのデータを使用して事前設定され、その際にはセンサ入力(湿度、外部温度など)に基づいて適切な制御効果が生み出される。
【0067】
システム(安全システムの一部である赤外線カメラとともに湿度センサを備えるものなど)がドライバなどの乗員の条件を確認し、この情報に基づいて熱的条件を調整する「閉ループ」方法が使用されうる。例えば、画像処理技術であれば、赤外線(IR)撮像に基づいて、ドライバが帽子を着用していること、またはドライバが運動のため高体温になっていることを判断できるだろう。
【0068】
ミクロ気候プロファイル33を調整するため特定の乗員か乗員集合により行われる選択に基づいて閉ループまたは開ループ方法が経時的に修正される「学習」方法が使用されうる。例えば、車両は、外側温度と内側温度と湿度とをルックアップテーブル34に記録して、これらの条件でドライバにより選択された熱制御設定を記憶し、次に類似の条件に遭遇した時にはこれらが複製(補間)される。ドライバが車両を長く使用するほど、入手可能な情報は多くなり、より「カスタマイズ」されるほど、ミクロ気候システムのためのミクロ気候プロファイルはその特定の個人に合ったものになるだろう。さらに、特定の条件集合が与えられる何らかのパラメータ集合の適合性についての優れた基準はおそらく、どれほど長くシステムが特定の状態に置かれているか、つまり乗員が熱的設定を調整していないかというものであろう。
【0069】
図4は、ミクロ気候システムの制御方法の例を示している。動作時に、制御装置22は、ブロック82に記されているように乗員情報32(図2)などの乗員特性を識別して、ユーザプロファイル31を提供する方法80を含む。これは何らかのレベルの乗員検出と個人識別とを含み、様々な車両システムを利用しうる。例えば、多くの車両は、ドライバを識別する「プリセット」を有する。さらに、乗員の存在を検出して別のレベルの情報を追加する重量センサが、乗員の識別に使用される。(安全/エアバッグ展開などの一部としての)内部視覚システムは、特定の乗員の識別を大いに向上させる。ブルートゥース(登録商標)接続されたスマートフォンも、この作業を大いに簡単にする。音声認識または指紋識別が使用されてもよい。特定の装置の存在は、ドライバ(場合によっては乗員)の識別を高い確実度で提供するだろう。そして乗員のユーザプロファイル31と関連の「熱的プロファイル」のデータを作成して、開示される熱的管理方式を具現するのに使用されるミクロ気候プロファイル33を生成するのに、この情報が使用されうる。この情報はそれからスマートフォンまたは車両に記憶されて、ある車両から別の車両へのこの情報の移動を可能にする。
【0070】
それから制御装置22は、ブロック84に記されているように、乗員個人快適性を判断する。乗員個人快適性は、車両外部環境の評価(図2のブロック86;26)、マクロ気候環境の評価(図2のブロック88;28)、および/またはミクロ気候環境の評価(図2のブロック90;30)に基づいて判断されうる。乗員個人快適性入力は、例えば、赤外線カメラ(図3のセンサ79など)を使用して乗員の体温や他の条件を検出することにより評価される(図2のブロック94;32)。
【0071】
乗員個人快適性が判断されると、ミクロ気候装置は、ブロック92に記されているように、ミクロ気候プロファイル33に従って命令されて、所望の乗員個人快適性を達成する。加えて、ブロック96に記されているように、マクロ気候装置は、所望の乗員個人快適性をさらに、より迅速に達成するように命令される。ブロック98に記されているように、ミクロ気候プロファイル33を調整することにより乗員個人快適性が再評価される。このフィードバックは、乗員がまだ快適ではないことを示すスイッチや他の入力装置を介した付加的入力を提供する乗員により、または乗員の快適性を能動的に検知することにより、提供されうる。
【0072】
制御装置22は、所与の条件集合について乗員により一般的に使用される設定から学習する。制御装置22はまた、乗員のユーザプロファイル31と関連する乗員のミクロ気候プロファイル33に従ってミクロ気候システムが作動している時には、自動制御期間中の設定に対する調整から学習する。シートヒータが例えばプリセット時間量だけ「高」に変えられてから、乗員がより快適になってHVACシステムがマクロ気候環境を充分に調整すると、再び低下する。さらに複雑な例について、シート首保温部が起動され、ステアリングホイールの調節と調和させながら手への血流を拡張して、ドライバの側での最大の熱的快適性認知を達成する。動作中に熱的管理システムを調整しなかったことに基づいて特定の乗員が何を好むかを車両が学習すると、次に発生した時に同じ条件が複製される。
【0073】
加えて、乗員が快適になるように、シート表面などのミクロ気候装置が暖房または冷房されうる。一例において、特に高温の車両内部では、車室に冷気流を単純に提供するだけでは充分ではない。シート、特にビニールやレーザのシートは高温であるか触感が不快であって、冷房された車室に入る時でも最初は乗員の背中に発汗を生じる。条件に応じてシートを急速に暖房または冷房すると、乗員の熱的快適性を高める。
【0074】
制御のために存在する自由度が高くなるほど、ミクロ気候システムは乗員に順応するようになる。戦略的位置への湿度センサの追加、または皮膚温度を検知する低出力IRセンサの使用(またはその組み合わせ)は、熱的快適性の認知を直接的に操作するのに使用されうる。さらに、HVACシステムとの調和により、車両ミクロ気候システムは、動的な状態または環境(フルパワーのシート熱的要素、フルパワーのHVACシステム)から所望の静的/恒常状態または環境へのスムーズな推移をミクロ気候システムに達成させる先行予測型コンポーネントを具備する。この推移は、内部空間12での温度推移と乗員熱的快適性推移とを同時に管理できる。
【0075】
開示されるミクロ気候システムは、多くの独自の熱的快適性状況が車両でより効果的に対処されることを可能にする。図5には幾つかの例が図示されている。方法80は、乗員情報モジュール100と車両環境モジュール102とが制御装置22と通信して、車両での乗員の特定位置におけるミクロ気候システムの設定に使用するための乗員固有のミクロ気候プロファイルを作成するシステムを含む。
【0076】
気候調節推移モジュール104は、HVAC熱調節システム18と補助的熱調節システム20との動作を調和させるアルゴリズムを含む(その例は、図6および7に図示され、以下で詳述される)。気候調節推移モジュール104は、暖房と冷房と中間のモードを有する入力を含みうる。暖房モードでは、さらに暖房が所望であることを乗員が指示し、冷房モードではさらに冷房が所望であることを乗員が指示する。暖房および冷房モードで、補助的熱調節システム20は動的状態で作動して、所望の静的/平衡状態に向けて、またはこの状態へ、動作を推移させる。暖房および冷房モードは、ミクロ気候システムにより提供される自動制御を上書きする。中間モードでは、現在熱的環境が乗員にとって快適であることを乗員が指示している。このモードで、気候調節推移モジュール104はHVAC熱調節システム18および/または補助的熱調節システム20を自動的に調節して、この快適な熱的状態を特定の乗員のために維持する。制御装置22は、中間モードでの動作中の乗員による調整に基づいて、メモリ内の乗員のミクロ気候プロファイルを調整できる。
【0077】
電力管理モジュール106は、HVAC熱調節システム18と補助的熱調節システム20とにより使用される電力を、例えばできる限り最小にする。電力管理制御特徴は、HVACシステム動作を同時に調整または抑制しながらある補助的熱調節システム装置への電力を調整または増加することにより、エンジンへのコンプレッサおよび/またはオルタネータ負荷を軽減する。
【0078】
ドライバ傾眠モジュール108は、ドライバが傾眠状態である時を検出して、例えば、ステアリングホイールを急激に冷房するか乗員の足や顔に冷気を吹き付けることによりドライバへの警告を維持するように、HVACシステムおよび/またはミクロ気候装置に命令する。
【0079】
幼児用シートモジュール110は、幼児用シートのエリアでHVAC熱調節システム18と補助的熱調節システム20とを制御し、これはシートベルトセンサ、乗員体重センサ、または他の入力装置により検出される。
【0080】
表面温度感受性モジュール112は、対麻痺など、特定の温度感受性を有する患者のために、ミクロ気候装置、例えばシートを制御する。こうして、乗員に特定の必要性および希望に基づいて表面温度が制御されることを保証する。乗員識別基準としてブルートゥースを使用すると、対麻痺である乗員の識別を容易にし、こうしてミクロ気候システムは所望であればシートヒータオプションを無効にできる。これは対麻痺者の側での何らかの形の自己識別を必要とするだろう。
【0081】
遠隔始動モジュール114は、遠隔始動条件でミクロ気候装置を制御しうる。遠隔始動を起動させるキーフォブを識別することにより、ミクロ気候システムは、車室内の温度および湿度や車室の外側の温度および湿度とともに、乗員識別およびプロファイル、時刻、最終キーサイクルの終了時でのミクロ気候システム設定を含む個別ドライバの履歴に基づいて、車両を事前調節できるだろう。遠隔始動モジュール114は、HVACシステム動作と周囲の内部環境とに基づいてミクロ気候を調整して所望の快適性に収束させ、所望のミクロ気候を乗員に「過剰提供」することを回避する。
【0082】
太陽負荷モジュール116は、車内の乗員に対する、時には重大な太陽の快適性影響に対処する。ある状況では、車室内の温度および湿度が安定したままであって以前は乗員にとって快適であったとしても、乗員に照り付ける強い太陽が乗員に発汗を生じることがある。太陽負荷モジュール116はこの状況に対処するものであって、これは後述するように図6および7の例に関して充分に図示されている。
【0083】
車両10とその内部空間12が、図6に概略的に図示されている。車両10は、車両外部環境14に配置されている。例示を目的として、車両10は、ベント56を有する計器盤54と、シート64と、ステアリングホイール70とを含む。言うまでもないが、追加の、または異なる装置が設けられてもよい。ミクロ気候環境は、以下の方程式により例示されうる。
TEocc=Σq+Σqcv+Σqcd 方程式1
TEocc=qr1+qr2+qcv1+qcv2+qcd1+qcd2 方程式2
TEocc=1.2qr1+0.8qr2+1.8qcv1
+1.1qcv2+2.0qcd1+1.6qcd2 方程式3
【0084】
方程式1を参照すると、TEoccは乗員が受ける熱エネルギーであり、qは熱放射源に対応し、qcvは熱対流源に対応し、qcdは熱伝導源に対応する。方程式2には、例示的な目的で多数の熱入力が設けられている。これより多いか少ない熱入力がミクロ気候制御システムにより使用されうる。方程式3に挙げられて図6に示されている一例において、qr1は太陽放射源であり、qr2は計器盤など車内のコンポーネントからの熱負荷であり、qcv1は第1ベントからの気流であり、qcv2は第2ベントからの気流であり、qcd1はシートバックからの冷房であり、qcd2はステアリングホイールからの冷房である。
【0085】
動作時に、制御装置22は、例えば車両位置、車両走行方向、検出された光度および太陽位置に基づいて車両内部空間12に対する太陽負荷を判断して、乗員個人快適性への影響を判断する。一例において、制御装置22は、太陽負荷により影響されるミクロ気候の容積(ミクロ気候影響容積)を判断し、ミクロ気候影響容積内の少なくとも一つの装置を調整することにより太陽負荷(方程式3では係数として表現)を補正し、その例は図7に図示されている。
【0086】
車両動作中に、太陽負荷qr1が増加して、乗員個人快適性を乱すことがある。これに応じて、制御装置22は自動的に、ベント56を通して冷気流qcv1を乗員16へ誘導するようにHVACシステムに命令する。制御装置22は自動的に、乗員16の背中を冷却するqcd1ようにシート64に命令する。乗員16への気流の誘導がこの特定の乗員により煩わしいものと認知されたと制御装置22が学習したため、ベント56からの気流はシート64からの冷房より急速に縮小する。
【0087】
本出願で開示される様々な機能性を具現するのに制御装置22が使用されうることに注意すべきである。制御装置22は一つ以上の個別ユニットを含む。また、制御装置22の一部分は車両10に設けられるのに対して、制御装置22の別の部分は他のところに設置されうる。ハードウェアアーキテクチャに関して、このようなコンピューティング装置は、ローカルインタフェースを介して通信結合されるプロセッサ、メモリ、一つ以上の入力および/または出力(I/O)装置インタフェースを含みうる。ローカルインタフェースは、例えば一つ以上のバス、および/または他の有線か無線の接続を限定的にではなく含みうる。ローカルインタフェースは、通信を可能にする制御装置、バッファ(キャッシュ)、ドライバ、リピータ、およびレシーバなど、簡潔性のため省略される付加的要素を有しうる。さらに、ローカルインタフェースは、上述のコンポーネントの間での適切な通信を可能にするアドレス、制御、および/またはデータ接続を含みうる。
【0088】
制御装置22は、ソフトウェア、特にメモリに記憶されたソフトウェアを実行するためのハードウェア装置でありうる。制御装置22は、注文品または市販品のプロセッサ、中央処理ユニット(CPU)、制御装置と関連する幾つかのプロセッサのうちの補助的プロセッサ、半導体ベースのマイクロプロセッサ(マイクロチップかチップセットの形)、またはソフトウェア命令を実行するためのほぼいかなる装置でもよい。
【0089】
メモリは、揮発性メモリ要素(ランダムアクセスメモリ(DRAM、SRAM、SDRAM、VRAMなどのRAM)、および/または不揮発性メモリ要素(ROM、ハードドライブ、テープ、CD-ROMなど)のいずれか一つかその組み合わせを含みうる。また、メモリは、電子、磁気、光学、および/または他のタイプの記憶媒体を内含しうる。メモリは分散アーキテクチャを有してもよく、様々なコンポーネントが互いに遠隔位置にあるが、プロセッサによりアクセスされうる。
【0090】
メモリのソフトウェアは一つ以上の独立プログラムを含み、その各々が、論理機能を具現するための実行可能命令についての整列リストを含む。ソフトウェアとして設けられるシステムコンポーネントは、ソースプログラム、実行可能プログラム(オブジェクトコード)、スクリプト、または実施される命令集合を包含する他のエンティティとしても構築されうる。ソースプログラムとして構築される時には、メモリに含まれるか含まれないコンパイラ、アセンブラ、インタープリタ、その他を介してプログラムが翻訳される。
【0091】
システムI/Oインタフェースに結合されうる、開示の入力および出力装置は、例えば限定的ではないが、キーボード、マウス、スキャナ、マイクロフォン、カメラ、モバイル装置、近接装置などの入力装置を含みうる。さらに、出力装置は、例えば限定的ではないが、プリンタ、ディスプレイ、マクロ気候装置、ミクロ気候装置などを含む。最後に、入力および出力装置はさらに、例を挙げると、限定的ではないが、モジュレータ/デモジュレータ(別の装置、システム、またはネットワークにアクセスするためのモデム)、無線周波数(RF)や他のトランシーバ、電話インタフェース、ブリッジ、ルータなど、入力および出力の両方として通信する装置を含みうる。
【0092】
制御装置22が作動している時に、プロセッサは、メモリに記憶されたソフトウェアを実行し、メモリに対してデータを通信し、ソフトウェアにしたがってコンピューティング装置の動作を概ね制御するように構成されうる。メモリ内のソフトウェアは、全体的または部分的に、プロセッサにより読み取られ、おそらくはプロセッサ内にバッファリングされてから実行される。
【0093】
例示された実施形態には特定のコンポーネント配置が開示されているが、他の配置も有利であることも理解されるべきである。特定のステップシーケンスが図示、記載、および請求されているが、ステップは、他に指摘がなければ、いかなる順序で実施されても、分離されるか組み合わされてもよく、それでも本発明による利点を備えることが理解されるべきである。
【0094】
多様な例は、図に示された具体的なコンポーネントを有するが、本発明の実施形態はこれらの特定実施形態に限定されるわけではない。例の一つによるコンポーネントまたは特徴のうち幾つかを別の例による特徴またはコンポーネントとの組み合わせで使用することが可能である。
【0095】
実施形態例が開示されたが、ある変形が請求項の範囲に含まれることを当業者であれば認識するだろう。その理由から、真の範囲および内容を判断するには以下の請求項が検討されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7