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特許7081041薄膜バルク音響波共振器とその製造方法、フィルタ、および無線周波数通信システム
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  • 特許-薄膜バルク音響波共振器とその製造方法、フィルタ、および無線周波数通信システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】薄膜バルク音響波共振器とその製造方法、フィルタ、および無線周波数通信システム
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/17 20060101AFI20220530BHJP
   H03H 3/02 20060101ALI20220530BHJP
   H03H 9/54 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
H03H9/17 F
H03H3/02 B
H03H9/54 Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021503042
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 CN2020099647
(87)【国際公開番号】W WO2021012917
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2021-01-19
(31)【優先権主張番号】201910657139.6
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520281859
【氏名又は名称】中芯集成電路(寧波)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】隋 歓
(72)【発明者】
【氏名】斉 飛
(72)【発明者】
【氏名】楊 国煌
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-147833(JP,A)
【文献】特開平07-147527(JP,A)
【文献】特開平08-267764(JP,A)
【文献】特開2015-198450(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0132262(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00- 9/74
H03H 3/007-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜バルク音響波共振器であって、
第1の基板と、
前記第1の基板に配置される筒状の支持層と、
前記第1の基板と前記支持層とによって取り囲まれて形成されるキャビティと、
前記キャビティに設けられる圧電積層であって、前記支持層に順次設けられた第1の電極、圧電層及び第2の電極を含むとともに、前記キャビティの中央上方に位置する有効共振領域と前記有効共振領域を取り囲む無効共振領域とを有する圧電積層と、
前記有効共振領域の範囲を画定するように前記有効共振領域と前記無効共振領域との境界部に設けられる少なくとも二つのトレンチと、を含み、
前記トレンチは、
前記圧電積層の積層方向に沿って前記第1の電極と前記圧電層とを貫通するとともに前記キャビティと連通する第1のトレンチと、
前記圧電積層の積層方向に沿って前記第2の電極と前記圧電層とを貫通する第2のトレンチと、を含む、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器。
【請求項2】
請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器であって、
前記第1のトレンチの側壁と前記第2の電極が位置する平面とをなす角は、鈍角であり、
前記第2のトレンチの側壁と前記第1の電極が位置する平面とをなす角は、鈍角である、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器。
【請求項3】
請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器であって、
前記支持層と前記第1の基板とは、結合接続される、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器。
【請求項4】
請求項3に記載の薄膜バルク音響波共振器であって、
前記支持層と前記第1の基板の結合方式は、ホットプレス結合とドライフィルム結合とを含む、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器。
【請求項5】
請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器であって、
前記圧電層が位置する平面における前記有効共振領域の投影は、多角形であり、前記多角形の任意の2つの辺が平行しない、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器。
【請求項6】
請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器であって、
前記第1の電極は、第1の電極掛接領域と第1の電極共振領域とをさらに有し、
前記第1の電極共振領域と前記有効共振領域とは、重なり合い、
前記第1の電極掛接領域は、前記第1の電極共振領域と前記支持層とを接続する、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器。
【請求項7】
請求項6に記載の薄膜バルク音響波共振器であって、
前記第2の電極は、第2の電極掛接領域と第2の電極共振領域をさらに有し、
前記第2の電極共振領域と前記有効共振領域とは、重なり合い、
前記第2の電極掛接領域は、前記第2の電極共振領域と前記キャビティよりも外側に位置する前記圧電積層とを接続し、
前記圧電層が位置する平面における前記第2の電極掛接領域の投影と、前記圧電層が位置する平面における前記第1の電極掛接領域の投影とは、重なり合わない、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器。
【請求項8】
請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器であって、
前記支持層の材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、および炭窒化ケイ素のうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器。
【請求項9】
請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器であって、
前記圧電層の材料は、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、ニオブ酸リチウム、石英、およびニオブ酸カリウムのうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器。
【請求項10】
フィルタであって、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の薄膜バルク音響波共振器を少なくとも1つ含む、
ことを特徴とするフィルタ。
【請求項11】
無線周波数通信システムであって、
請求項10に記載のフィルタを少なくとも1つ含む、
ことを特徴とする無線周波数通信システム。
【請求項12】
薄膜バルク音響波共振器の製造方法であって、
第2の基板を提供し、前記第2の基板に順次形成された第2の電極層、圧電層及び第1の電極層を含む圧電積層を、前記第2の基板に形成することと、
前記第1の電極層の一部を露出させるように開口を有するキャビティが形成される支持層を、前記第1の電極層に形成することと、
前記圧電積層の積層方向に沿って前記第1の電極層と前記圧電層とが貫通されるように前記第1の電極層と前記圧電層とをエッチングすることにより、前記キャビティと連通する第1のトレンチを少なくとも1つ形成することと
第1の基板を提供し、前記キャビティの開口を密封するように前記第1の基板と前記支持層とを結合させることと、
前記第2の基板を除去することと、
前記圧電積層の積層方向に沿って前記第2の電極層と前記圧電層とが貫通されるように前記第2の電極層と前記圧電層とをエッチングすることにより、第2のトレンチを少なくとも1つ形成することと、を含み、
前記圧電層が位置する平面における前記第1のトレンチの投影と、前記圧電層が位置する平面における前記第2のトレンチの投影とにより有効共振領域が取り囲まれる、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の薄膜バルク音響波共振器の製造方法であって、
前記第1の電極層と前記圧電層とをエッチングすることにより前記第1のトレンチを少なくとも1つ形成することは、
第1のフォトマスクパターンで前記第1の電極層と前記圧電層とをエッチングすることにより前記第1のトレンチを少なくとも1つ形成することを含み、
前記第1のトレンチの側壁と前記第2の電極層が位置する平面とをなす角は、鈍角である、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【請求項14】
請求項12に記載の薄膜バルク音響波共振器の製造方法であって、
前記第1の電極層と前記圧電層とをエッチングすることにより第1のトレンチを少なくとも1つ形成することは、
前記第1の電極層をパターニングすることにより、第1の電極掛接領域と第1の電極共振領域とを有する第1の電極を形成することを含み、
前記第1の電極共振領域と前記有効共振領域とは、重なり合い、
前記第1の電極掛接領域は、前記第1の電極共振領域と前記支持層とを接続する、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【請求項15】
請求項12に記載の薄膜バルク音響波共振器の製造方法であって、
前記第2の電極層と前記圧電層とをエッチングすることにより前記第2のトレンチを少なくとも1つ形成することは、
第2のフォトマスクパターンで前記第2の電極層と前記圧電層とをエッチングすることにより前記第2のトレンチを少なくとも1つ形成することをさらに含み、
前記第2のトレンチの側壁と前記第1の電極層が位置する平面とをなす角は、鈍角である、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【請求項16】
請求項14に記載の薄膜バルク音響波共振器の製造方法であって、
前記第2の電極層と前記圧電層とをエッチングすることにより第2のトレンチを少なくとも1つ形成することは、
前記第2の電極層をパターニングすることにより、第2の電極掛接領域と第2の電極共振領域を有する第2の電極を形成することを含み、
前記第2の電極共振領域と前記有効共振領域とは、重なり合い、
前記第2の電極掛接領域は、前記第2の電極共振領域と前記キャビティよりも外側に位置する前記圧電積層とを接続し、
前記圧電層が位置する平面における前記第2の電極掛接領域の投影と、前記圧電層が位置する平面における前記第1の電極掛接領域の投影とは、重なり合わない、
薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【請求項17】
請求項12に記載の薄膜バルク音響波共振器の製造方法であって、
前記有効共振領域の形状は、多角形であり、前記多角形の任意の2つの辺が平行しない、
薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【請求項18】
請求項12に記載の薄膜バルク音響波共振器の製造方法であって、
前記第2の基板を除去することは、
前記第2の基板を機械的研削、エッチングまたは腐食により除去することを含む、
薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【請求項19】
請求項12に記載の薄膜バルク音響波共振器の製造方法であって、
前記キャビティの開口を密封するように前記第1の基板と前記支持層とを結合させることは、
ホットプレス結合またはドライフィルム結合により前記第1の基板と前記支持層とを結合させることを含む、
薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス製造の分野に関し、特に薄膜バルク音響波共振器とその製造方法、フィルタ、および無線周波数通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
アナログ無線周波数通信技術が1990年代初頭に開発されて以来、無線周波数フロントエンドモジュールは徐々に通信機器のコアコンポーネントになっている。すべての無線周波数(Radio Frequency、以下は「RF」と略す)フロントエンドモジュールの中で、フィルタは最も成長の勢い強く、最も開発の見通しのあるコンポーネントになっている。ワイヤレス通信技術の急速な発展に伴い、5G通信プロトコルはより成熟し、市場のRFフィルタパフォーマンスのさまざまな側面に対してパフォーマンス上の要求も高まっている。フィルタのパフォーマンスは、フィルタを構成する共振器ユニットによって決まる。現在のフィルタの中で、薄膜バルク音響波共振器(FBAR)は、サイズが小さく、挿入損失が小さく、帯域外抑制が大きく、品質係数が高く、動作周波数が高く、電力容量が大きく、静電衝撃に対する耐性が優れるなどの特徴があるので、5Gアプリケーションに最適なフィルタの1つになっている。
【0003】
一般に、薄膜バルク音響波共振器は、2つの薄膜電極を含み、2つの薄膜電極の間に圧電薄膜層が配置される。その動作原理は、圧電薄膜層が交番電界下で振動を発生し、当該振動が圧電薄膜層の厚さ方向に伝播するバルク音響波を励起させ、当該音響波が上/下電極と空気との界面に伝達されてから反射され、このように薄膜内で繰り返し反射されて振動することである。当該音響波が圧電薄膜層を半波長のちょうど奇数倍で伝播すると、定在波振動が形成される。
【0004】
しかし、現在製造されているキャビティ型薄膜バルク音響波共振器の品質係数(Q)はこれ以上改善できないため、高性能無線周波数システムのニーズに満たすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、薄膜バルク音響波共振器とその製造方法、フィルタ、および無線周波数通信システムを提供することであり、薄膜バルク音響波共振器の品質係数を改善し、それによってデバイスのパフォーマンスを改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述目的を実現するために、本発明によれば、薄膜バルク音響波共振器であって、
上部で開口するキャビティが形成されるように前記第1の基板に配置される支持層と、
前記キャビティに設けられる圧電積層であって、前記支持層に順次設けられた第1の電極、圧電層及び第2の電極を含むとともに、前記キャビティの中央上方に位置する有効共振領域と前記有効共振領域を取り囲む無効共振領域とを有する圧電積層と、
前記有効共振領域の範囲を画定するように前記有効共振領域と無効共振領域との境界部に設けられる少なくとも二つのトレンチと、を含み、
前記トレンチは、
前記第1の電極と前記圧電層とを貫通するとともに前記キャビティと連通する第1のトレンチと、
前記第2の電極と前記圧電層とを貫通する第2のトレンチと、を含む薄膜バルク音響波共振器が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、前記薄膜バルク音響波共振器を少なくとも1つ含むフィルタがさらに提供される。
【0008】
また、本発明によれば、前記フィルタを少なくとも1つ含む無線周波数通信システムがさらに提供される。
【0009】
また、本発明によれば、薄膜バルク音響波共振器の製造方法であって、
第2の基板を提供し、前記第2の基板に順次形成された第2の電極層、圧電層及び第1の電極層を含む圧電積層を、前記第2の基板に形成することと、
前記第1の電極層の一部を露出させるように開口を有するキャビティが形成される支持層を、前記第1の電極層に形成することと、
前記第1の電極層と前記圧電層とをエッチングすることにより、前記キャビティと連通する第1のトレンチを少なくとも1つ形成することと;
第1の基板を提供し、前記キャビティの開口を密封するように前記第1の基板と前記支持層とを結合させることと、
前記第2の基板を除去することと、
前記第2の電極層と前記圧電層とをエッチングすることにより、第2のトレンチを少なくとも1つ形成することと、を含み、
前記圧電層が位置する平面における前記第1のトレンチの投影と、前記圧電層が位置する平面における前記第2のトレンチの投影とにより有効共振領域が取り囲まれる薄膜バルク音響波共振器の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の有益な効果は、下記のとおりである:
本発明による薄膜バルク音響波共振器では、少なくとも二つのトレンチを設け、前記トレンチは前記有効共振領域と無効共振領域との境界部に設けられ、前記有効共振領域の範囲を画定するためであって、前記トレンチが第1のトレンチと第2のトレンチを含み、前記第2のトレンチが前記第2の電極と前記圧電層を貫通し、前記第1のトレンチが前記第1の電極と前記圧電層を貫通するとともに前記キャビティと連通する。前記第1のトレンチと第2のトレンチは、無効共振領域での横波の伝播を効果的にブロックし、音響波損失を改善し、薄膜バルク音響波共振器の品質係数を改善し、デバイスのパフォーマンスを改善する。
【0011】
さらに、パターン化された第1の電極と第2の電極により、第1の電極共振領域及び第2の電極共振領域と有効共振領域とがオーバーラップするとともに、第1の電極掛接領域と第2の電極掛接領域との前記圧電層への投影がオーバーラップしないようにするので、寄生共振を効果的に避けられ、音響波損失を改善し、薄膜バルク音響波共振器の品質係数をさらに改善する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の実施形態または従来技術における技術方案をより明確に説明するために、以下に、実施形態または従来技術の説明に使用される必要な図面を簡単に紹介する。言うまでもなく、以下の図面は、本発明のいくつかの実施形態に過ぎなく、当業者にとって、他の図面は、創造的な作業なしに、これらの図面に基づいて得ることができる。
【0013】
図1】本発明の一実施形態におけるトレンチ構造を有する薄膜バルク音響波共振器の断面構造概略図である。
図2A】本発明の一実施形態における連続的な第1のトレンチおよび連続的な第2のトレンチを有する薄膜バルク音響波共振器の上面図である。
図2B】本発明の一実施形態における、複数の不連続な第1のトレンチおよび複数の不連続な第2のトレンチを有する別の薄膜バルク音響波共振器の上面図である。
図2C】本発明の一実施形態における、マルチブリッジ構造の電極掛接領域の形成された薄膜バルク音響波共振器の上面図である。
図2D】本発明の一実施形態における、メッシュ状の電極掛接領域の形成された薄膜バルク音響波共振器の上面図である。
図3図2BのAA´線に沿った断面構造の概略図である。
図4】本発明の一実施形態による薄膜バルク音響波共振器を製造するための方法のフローチャートである。
図5】この実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法の各工程に対応する構造概略図である。
図6】この実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法の各工程に対応する構造概略図である。
図7】この実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法の各工程に対応する構造概略図である。
図8】この実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法の各工程に対応する構造概略図である。
図9】この実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法の各工程に対応する構造概略図である。
図10】この実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法の各工程に対応する構造概略図である。
図11】この実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法の各工程に対応する構造概略図である。
図12】この実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法の各工程に対応する構造概略図である。
図13】この実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法の各工程に対応する構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、一種の薄膜バルク音響波共振器とその製造方法、フィルタ、および無線周波数通信システムを提供する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態におけるトレンチ構造を有する薄膜バルク音響波共振器の断面構造概略図である。薄膜バルク音響波共振器は、図1に示されるように、基板10と、上部で開口するキャビティ11aが形成されるように基板10に配置される支持層11と、キャビティ11aに設けられる圧電積層と、少なくとも二つのトレンチと、を含み、トレンチは、第1の電極13と圧電層14とを貫通するとともにキャビティ11aと連通する第1のトレンチ12aと、第2の電極15と圧電層14とを貫通する第2のトレンチ12bと、を含む。
【0016】
本発明による薄膜バルク音響波共振器では、圧電積層には第1のトレンチと第2のトレンチがそれぞれ少なくとも1つ配置され、圧電層が位置する平面における第1のトレンチおよび第2のトレンチの投影により薄膜バルク音響波共振器の有効共振領域が取り囲まれる。本発明の第1のトレンチと第2のトレンチは、無効共振領域における横波の伝播を効果的にブロックし、音響波損失を改善し、薄膜バルク音響波共振器の品質係数を向上させることにより、デバイスのパフォーマンスが向上する。
【0017】
以下に、添付の図面および特定の実施形態を参照して、さらに本発明の薄膜バルク音響波共振器および薄膜バルク音響波共振器の製造方法を詳細に説明する。以下の説明および図面によれば、本発明の利点および特徴はより明確になるであろうが、本発明の技術方案は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の特定の実施例に限定されないことに留意されたい。図面は、非常に簡略化された形式であり、すべて精確でない比例を使用し、本発明の実施例を容易かつ明瞭に補助して説明するためのみに使用される。
【0018】
明細書および特許請求の範囲における「第1」、「第2」などの用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも特定の順序または時系列を説明するために使用されるわけではない。適切な状況で、そのように使用されるこれらの用語は、例えば、本明細書に記載または示された以外の順序で本明細書に記載の本発明の実施形態を実施できるように置き換えることができることを理解されたい。同様に、本明細書に記載の方法が一連の工程を含み、本明細書に記載のこれらの工程の順序が必ずしもこれらの工程を実行できる唯一の順序ではなく、記載された工程のいくつかが省略され得るおよび/または本明細書に記載されない他の工程も方法に追加できる。特定の図面の部材が他の図面の部材と同じである場合、これらの部材はすべての図面で簡単に識別できるが、図面の説明を明確にするために、同じ部材の符号をすべて各図に示されるわけではない。
【0019】
図2Aは本発明の一実施形態における連続的な第1のトレンチおよび連続的な第2のトレンチを有する薄膜バルク音響波共振器の上面図である。図2Bは本発明の一実施形態における、複数の不連続な第1のトレンチおよび複数の不連続な第2のトレンチを有する別の薄膜バルク音響波共振器の上面図である。図2Cは本発明の一実施形態における、マルチブリッジ構造の電極掛接領域の形成された薄膜バルク音響波共振器の上面図である。図2Dは本発明の一実施形態における、メッシュ状の電極掛接領域の形成された薄膜バルク音響波共振器の上面図である。図3図2BのAA’線に沿った断面構造の概略図である。
【0020】
図2A図3を参照して、この実施形態の薄膜バルク音響波共振器は、
第1の基板100と、上部で開口するキャビティ110が形成されるように第1の基板100に配置される支持層101と、
キャビティ110aに設けられる圧電積層120であって、支持層101に順次設けられた第1の電極103、圧電層104及び第2の電極105を含むとともに、キャビティ110aの中央上方に位置する有効共振領域001と有効共振領域001を取り囲む無効共振領域002とを有する圧電積層120と、
有効共振領域001の範囲を画定するように有効共振領域001と無効共振領域002との境界部に設けられる二つのトレンチと、を含み、トレンチは、第1の電極103と圧電層104とを貫通するとともにキャビティ110aと連通する第1のトレンチ120aと、第2の電極層105’と圧電層104とを貫通する第2のトレンチ120bを含む。
【0021】
ここで、第1の基板100は、当業者に知られている任意の適切な基板であってよく、例えば、以下に記載の材料の少なくとも1つであってよい。シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、シリコンカーボン(SiC)、カーボンゲルマニウムシリコン(SiGeC)、インジウムヒ素(InAs)、ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムリン(InP)または他のIII/V複合半導体(これらの半導体で構成される多層構造なども含まれる)、またはシリコンオンインシュレーター(SOI)、積層シリコンオンインシュレーター(SSOI)、積層シリコンゲルマニウムオンインシュレーター(S-SiGeOI)、シリコンゲルマニウムオンインシュレーター(SiGeOI)およびゲルマニウムオンインシュレーター(GeOI)、または両面研磨ウェーハ(Double Side Polished Wafers,DSP)、アルミナなどのセラミック基板、石英またはガラス基板など。
【0022】
この実施形態における第1の基板100の材料は、結晶配向が<100>のP型高抵抗単結晶シリコンウェーハである。
【0023】
支持層101の材料は、任意の適切な誘電材料であってよく、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭窒化ケイ素などの材料のうちの少なくとも1つを含むが、これらに限られるものではない。
【0024】
支持層101は第1の基板100に位置し、支持層101にはキャビティ110aが設けられ、キャビティ110aはエッチングプロセスにより支持層101をエッチングすることによって形成することができる。しかしながら、本発明の技術はこれに限られるものではない。この実施形態において、キャビティ110aの底面の形状は長方形であるが、本発明の他の実施形態において、キャビティ110aの底面の形状は円形、楕円形、または例えば、五角形、六角形などの長方形以外の多角形などであってよい。
【0025】
圧電積層120は、第1の電極103、圧電層104、および第2の電極105を含む。第1の電極103は支持層101に位置し、第2の電極105と第1の電極103は対向して配置される。圧電層104は、第1の電極103と第2の電極105との間に位置し、第1の電極103、圧電層104、および第2の電極105の厚さ方向における重なり合う領域は、キャビティ110aの真上にある。
【0026】
支持層101と第1の電極103との間には、さらにエッチング停止層102が設けられる。その材料は、窒化ケイ素(Si34)および酸窒化ケイ素(SiON)を含むが、これに限られるものではない。
【0027】
エッチング停止層102は、最終製造される薄膜バルク音響波共振器の構造安定性を向上させる一方、支持層101よりも低いエッチング速度を有するので、支持層101をエッチングしキャビティ110aを形成する過程において、オーバーエッチングを防ぐことができ、その下に位置する第1の電極層103を表面損傷から保護することができ、デバイスのパフォーマンスと信頼性を向上させることができる。その後の電気信号の入力/出力を容易にするために、第1の電極103は圧電層104と第2の電極105によって覆われていないエッジ領域103aを含むことに留意されたい。
【0028】
第1のトレンチ120aおよび第2のトレンチ120bは、エアギャップキャビティ(Air Trench)とも呼ばれ、圧電積層120に設けられ、第1のトレンチ120aは、第1の電極103と圧電層104とを貫通するとともにキャビティ110aと連通し、第2のトレンチ120bは、第2の電極105と圧電層104とを貫通する。
【0029】
図2Aを参照して、圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ120aおよび第2のトレンチ120bの投影は、ハーフ環状またはハーフ環状に近い多角形であり、ちょうど互いに接しまたはほぼ互いに接し、即ち、圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ120aおよび第2のトレンチ120bの投影により、完全に閉じた環状またはほぼ閉じた環状が構成される。ここで、圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ120aと第2のトレンチ120bとの投影のジョイント部は、第1のジョイント部150aおよび第2のジョイント部105bを含む。第1のトレンチ120aと第2のトレンチ120bとの組み合わせは、圧電共振層1042の周りの横波をブロックでき、すなわち、圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ120aおよび第2のトレンチ120bの投影によって取り囲まれたパターン(円形または多角形)が位置する領域は、薄膜バルク音響波共振器の有効共振領域001である。第1のトレンチ120aおよび第2のトレンチ120bは、有効共振領域001の周辺に位置し、圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ120aおよび第2のトレンチ120bの投影のサイズは、両者の組み合わせにより成された環状を均等に分割してもよく(このとき、第1のトレンチ120aおよび第2のトレンチ120bは有効共振領域001の両側にあり、すべての部分がいずれも完全に対向する)、不均等に分割してもよい(このとき、第1のトレンチ120aおよび第2のトレンチ120bは有効共振領域001の両側にあり、一部だけが対向する)。
【0030】
また、第1のトレンチ120aおよび第2のトレンチ120bの図2AのAA’線に沿った断面は、台形または台形に近い形状である。即ち、第1のトレンチ120aと第2の電極105が位置する平面とをなす角α、第2のトレンチ120bの側壁と第1の電極103が位置する平面とをなす角βは鈍角であり、好ましくは、αおよびβは90度より大きく160度未満である。
【0031】
この実施形態において、圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ120aおよび第2のトレンチ120bの投影によって取り囲まれたパターン(有効共振領域001)は、ちょうど互いに接する五角形であり、多角形の任意の二辺は平行しない。他の実施形態において、図2Bに示されるように、第1のトレンチ120aおよび第2のトレンチ120bは複数であってよく、圧電層104が位置する平面における複数の第1のトレンチ120aおよび第2のトレンチ120bの投影によって取り囲まれたパターンは、不連続でほぼ閉じた五角形であってよい。
【0032】
この実施形態において、支持層101および第1の基板100は、ホットプレス結合またはドライフィルム結合によって結合される。
【0033】
圧電積層120において、第1の電極130は、第1の電極掛接領域1031と第1の電極共振領域1032を有し、第1の電極共振領域1032と有効共振領域001とは、重なり合い、第1の電極掛接領域1031は、第1の電極共振領域1032と支持層101とを接続する。第2の電極105は、第2の電極掛接領域1051と第2の電極共振領域1052を有し、第2の電極共振領域1052と有効共振領域001とは、重なり合い、第2の電極掛接領域1051は、第2の電極共振領域1052とキャビティよりも外側に位置する圧電積層とを接続し、キャビティ110aの上部の有効共振領域02以外の領域での寄生共振が避けられるように第2の電極掛接領域1051と第1の電極掛接領域1031はキャビティ110aの上部で重なり合わない。この実施形態および別の実施形態において、図2Aおよび図2Bを参照して、第2の電極掛接領域1051および第1の電極掛接領域1031は、一端が共振器の一方のエッジのみに接続されたブリッジ構造にパターニングされるので、第2の電極掛接領域1051および第1の電極掛接領域1031がキャビティ110aの上部で重なり合わないことが保証され、キャビティ110aの上方の無効共振領域002での寄生共振が避けられる。
【0034】
他の実施形態において、図2Cに示されるように、第2の電極掛接領域1051および第1の電極掛接領域1031の少なくとも1つは、一端が共振器の複数のエッジに接続されたマルチブリッジ構造としてパターニングされてもよい。好ましくは、第1の電極掛接領域1031はマルチブリッジ構造にパターニングされるとともに、第2の電極掛接領域1051および第1の電極掛接領域1031のマルチブリッジ構造は、キャビティ10aの上方で重なり合わない。マルチブリッジ構造により、圧電積層120へのサポートを強化し、共振器の機械的強度を増加させることができる。
【0035】
さらに、別の実施形態において、図2Dを参照して、第2の電極掛接領域1051および第1の電極掛接領域1031の少なくとも1つは、一端が共振器の複数のエッジに接続された平面構造としてパターニングされるとともに、第2の電極掛接領域1051および第1の電極掛接領域1031は、キャビティ10aの上方で重なり合わないので、共振器の機械的強度をさらに増加させることができる。具体的に実施する際に、第1のトレンチ120aと第2のトレンチ120bとの境界部(第1のジョイント部150a、第2のジョイント部150b)に沿ってそれぞれ第1の電極層103’に対して一定の線幅を有する第1の開口106aおよび第2の開口106bをエッチングする。第1の開口106aおよび第2の開口106bは、第1の電極層103’を貫通するとともに、それぞれ、第1のジョイント部150aおよび第2のジョイント部150b(第2のトレンチ120bに連通)から第1の電極層の境界部の外側まで延びる。同様に、第2の電極層150’における第1の開口106aおよび第2の開口106bに対応する位置において、二つの同じ開口(図示せず)をエッチングすることにより、第2の電極掛接領域1051および第1の電極掛接領域1031がキャビティ110aの上部で重なり合わないことが実現され、キャビティ110aの上方の無効共振領域002での寄生共振が避けられる。他の実施形態において、第1の開口106aおよび第2の開口106bは第1の電極層103’、圧電層104、および第2の電極層105’を貫通し、同じ電極分離効果を実現することができ、それによりキャビティ110aの上方の無効共振領域002での寄生共振が避けられる。
【0036】
図2Aおよび図3を参照して、圧電層104は、圧電印加領域1041および圧電共振領域1042を含み、圧電共振領域1042は、第1の電極共振領域1032と第2の電極共振領域1052との間に位置し、即ち、有効共振領域001と重なり合っている。圧電印加領域1041は、共振器のエッジに接続され、圧電印加領域1041と圧電共振領域1042は、第1のトレンチ120aおよび第2のトレンチ120bによって完全に分離される。ここで、第2のトレンチ120bは第1の電極掛接領域1031の上方に、第1のトレンチ120aは第2の電極掛接領域1051の下方に位置する。他の実施形態において、図2Bおよび2Cを参照して、第1のトレンチ120aおよび第2のトレンチ120bは複数の不連続なトレンチであるため、圧電印加領域1041および圧電共振領域1042は、複数の第1のトレンチ120aおよび複数の第2のトレンチ120bの間隔において接続されることになる。
【0037】
本発明の他の実施形態において、薄膜バルク音響波共振器は信号入力/出力構造をさらに含む。例えば、信号入力/出力構造は、それぞれ第1の電極103および第2の電極105に接続される第1のパッド107aおよび第2のパッド107bである。具体的には、図3を参照して、第1のパッド107aは圧電層104および第2の電極105に覆われていない第1の電極103のエッジ領域103aに接続され、第2のパッド107bは第2の電極105のエッジ領域105aに接続されている。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、上記本発明の実施形態の薄膜バルク音響波共振器のいずれかを少なくとも1つ含むフィルタがさらに提供される。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、上記本発明の実施形態のフィルタを少なくとも1つ含む無線周波数通信システムがさらに提供される。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、薄膜バルク音響波共振器の製造方法がさらに提供される。図4を参照して、図4は、本発明の一実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法のフローチャートであり、
第2の基板200を提供し、第2の基板200に順次形成された第2の電極層105’、圧電層及び第1の電極層103’からなる圧電積層構造を、第2の基板200に形成するS01と、
支持層に第1の電極層103’の一部を露出させるように開口を有するキャビティが形成される支持層を、第1の電極層103’に形成し、第1の電極層103’と圧電層とをエッチングすることにより、キャビティと連通する第1のトレンチを少なくとも1つ形成するS02と、
第1の基板を提供し、開口にキャビティが形成されるように第1の基板と支持層とを結合させるS03と、
第2の基板200を除去するS04と、
第2の電極層105’と圧電層とをエッチングすることにより、第2のトレンチを少なくとも1つ形成するS05と、を含み、圧電層が位置する平面における第1のトレンチの投影と、圧電層が位置する平面における第2のトレンチの投影とにより有効共振領域が取り囲まれる。
【0041】
図5から図13は、この実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法の各工程に対応する構造概略図である。続いて、図2A図5図13を参照して、本実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法を詳細に説明する。
【0042】
図5図6に示されるように、工程S01を実行し、第2の基板200を提供し、第2の基板200に圧電積層120を形成する。圧電積層構造120は第2の電極105、圧電層104および第1の電極103を含む。ここで、圧電層104は、第1の電極103と第2の電極105との間に位置し、また、第1の電極103と第2の電極105とは対向して設けられる。第1の電極103は、無線周波数(RF)信号などの電気信号を受信または発信する入力電極または出力電極として使用することができる。例えば、第2の電極105が入力電極として使用される場合、第1の電極103は出力電極として使用することができ、また、第2の電極105が出力電極として使用される場合、第1の電極103は入力電極として使用することができる。圧電層104は、第1の電極103または第2の電極105を介して入力された電気信号をバルク音響波に変換する。例えば、圧電層104は、物理的振動を通じて電気信号をバルク音響波に変換する。
【0043】
第2の基板200と圧電積層120(第2の電極105)との間には、隔離層(図6には示されていない)がさらに形成される。隔離層は第2の基板200の保護層として、その後形成される薄膜バルク音響波共振器の圧電積層120による第2の基板200への影響が避けられる。同時に、その後の剥離プロセスにおいて、隔離層を腐食させることにより、第2の基板200をその後に形成される圧電積層120から分離させることができ、第2の基板200の迅速剥離に有利であるため、プロセス製造効率が向上する。隔離層の材料は、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si34)、酸化アルミニウム(Al23)、または窒化アルミニウム(AlN)のうちの少なくとも一つを含むが、これらに限られるものではない。隔離層は、化学蒸着、マグネトロンスパッタリングまたは蒸着などの方式によって形成することができる。この実施形態において、第2の基板200は<100>結晶配向のP型高抵抗単結晶シリコンウェーハなどのようなシリコンであり、隔離層の材料は二酸化ケイ素(SiO2)である。
【0044】
第2の電極105と第1の電極103は、当業者に知られている任意の適切な導電性材料または半導体材料を使用することができ、ここの導電性材料は、導電性を有する金属材料であってよい。例えば、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、プラチナ(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、金(Au)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、パラジウム(Pd)などの金属うちの1つまたは上述金属からなる積層体でできている。半導体材料は、例えば、Si、Ge、SiGe、SiC、SiGeCなどである。第2の電極層105’および第1の電極層103’は、マグネトロンスパッタリング、蒸着などの物理的蒸着法または化学的蒸着法によって形成することができる。圧電層104は、圧電共振層または圧電共振領域と呼ばれることもある。圧電層104の材料は、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、石英(Quartz)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)または、タンタル酸リチウム(LiTaO3)などのようなウルツ鉱型結晶構造を有する圧電材料とそれらの組み合わせを使用することができる。圧電層104が窒化アルミニウム(AlN)を含む場合、圧電層104は希土類金属、例えば、スカンジウム(Sc)、エルビウム(Er)、イットリウム(Y)およびランタン(La)のうちの少なくとも1つをさらに含むことができる。さらに、圧電層104が窒化アルミニウム(AlN)を含む場合、圧電層104は遷移金属、例えば、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、およびハフニウム(Hf)のうちの少なくとも1つをさらに含むことができる。圧電層104は、化学的蒸着、物理的蒸着、または原子層堆積などの当業者に知られている任意の適切な方法によって堆積することができる。好ましくは、この実施形態において、第2の電極層105’および第1の電極層103’は金属モリブデン(Mo)ででき、圧電層104’は窒化アルミニウム(AlN)でできている。
【0045】
第2の電極層105’、圧電層104および第1の電極層103’の形状は、同じでも同じでなくてもよい。この実施形態において、第2の電極層105’、圧電層104および第1の電極層103’は形状も面積も同じで、いずれも多角形で、例えば、正方形である。
【0046】
第2の電極層105’を形成する前に、隔離層にシード層(図6には示されていない)を形成することができ、シード層は、隔離層と第2の電極層105’との間に形成され、その後形成される第2の電極層105’(圧電層104および第1の電極層103’)の結晶配向に対して配向性を有し、その後形成される圧電積層構造が特定の結晶配向に沿って生成するのに便利であり、圧電層の均一性が保証されることになる。シード層の材料は、窒化アルミニウム(AlN)とすることができるが、シード層は、AlNに加えて、六方最密充填(HCP)構造を持つ金属または誘電性材料で形成することもできる。例えば、シード層は金属チタン(Ti)で形成することもできる。
【0047】
図7から図9に示されるように、工程S02を実行し、第1の電極層103’に支持層101を形成し、第1の電極層103’の一部を露出させるように支持層101に開口110a’を形成し、第1の電極層103’と圧電層104をエッチングすることにより開口110a’と連通する第1のトレンチ120aを形成する。具体的には、まず、化学的堆積法により第1の電極層103’に支持層101を形成することができる。図7に示されるように、支持層101の材料は、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si34)、酸化アルミニウム(Al23)、および窒化アルミニウム(AlN)のうちの一種類または複数種類の組み合わせである。この実施形態において、支持層101の材料は、二酸化ケイ素(SiO2)である。次に、第1の電極層103’の一部を露出させるようにエッチングプロセスにより支持層101をエッチングして開口110a’を形成する。図8に示されるように、当該エッチングプロセスは、湿式エッチングまたは乾式エッチングプロセスであってよい。好ましくは、乾式エッチングプロセスが使用される。乾式エッチングは、反応性イオンエッチング(RIE)、イオンビームエッチング、プラズマエッチング、またはレーザーカットを含むが、これらに限られるものではない。開口110a’の深さおよび形状は、いずれも製造される薄膜バルク音響波共振器に必要なキャビティの深さおよび形状に依存する。即ち、形成される支持層101の厚さにより開口110a’の深さを特定することができる。開口110a’の底面の形状は、長方形または例えば、五角形、六角形、八角形などの長方形以外の多角形であってよく、円形または楕円形であってよい。本発明の他の実施形態において、開口110a’の縦断面の形状は、上広下狭の球形キャップであり、すなわち、その縦断面はU字形である。
【0048】
この実施形態において、支持層101を形成する前に、第1の電極層103’上にさらにエッチング停止層102を形成する。前記エッチング停止層102の材料は、窒化ケイ素(Si34)および酸窒化ケイ素(SiON)を含むが、これに限られるものではない。エッチング停止層102は、後で形成される支持層101よりも低いエッチング速度を有するので、その後支持層101をエッチングして開口110a’を形成する際に、オーバーエッチングを防ぐことができ、その下に位置する第1の電極層103’を表面損傷から保護することができる。
【0049】
次に、開口110a’に第1のトレンチ120aが形成されるように第1の電極層103’および圧電層104をエッチングする。図9に示されるように、第1のトレンチ120aの側壁は、傾斜しても垂直であってもよい。この実施形態において、第1のトレンチ120aの側壁と第2の電極105が位置する平面とは鈍角を形成する(第1のトレンチ120aの縦断面(基板の厚さ方向に沿った断面)の形状は逆台形である)。圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ120aの投影は、ハーフ環状またはハーフ環状に近い多角形である。他の実施形態において、図2Cを参照して、圧電層104が位置する平面における複数の第1のトレンチ120aの投影が不連続なハーフ環状となるように複数の不連続な第1のトレンチ120aを形成することもできる。具体的には、第1のトレンチをエッチングするプロセスは乾式エッチングプロセスであり、乾式エッチングは、誘導結合プラズマ(ICP)エッチング、反応性イオンエッチング(RIE)、イオンビームエッチング、プラズマエッチング、またはレーザーカットを含むが、これらに限られるものではない。エッチングされた第1のトレンチ120aの側壁と第2の電極105が位置する平面とをなす角αは鈍角であり、好ましくは90<α<160である。
【0050】
次に、第1の電極層103’をパターニングすることにより、第1の電極103が形成される。具体的には、第1の電極層103’の表面にフォトレジストをコーティングしてフォトレジスト層を形成し、第1の電極パターンがプリセットされた第1のマスクを介し、フォトレジスト層をフォトエッチングしてパターンを形成し、パターニングされたフォトレジスト層をマスクとして、乾式エッチングプロセスにより第1の電極層103’をエッチングする。エッチングにより形成された第1の電極130は、第1の電極掛接領域1031と第1の電極共振領域1032を有し、第1の電極共振領域1032と有効共振領域001とは、重なり合い、形成された第1の電極掛接領域1031は、第1の電極共振領域1032とキャビティよりも外側に位置する支持層とを接続する。この実施形態において、図2Cを参照して、第1の電極掛接領域1031はブリッジ構造である。他の実施形態において、第1の電極掛接領域1031は、支持層101の複数の辺を接続する面状構造またはマルチブリッジ構造であってよい。第1の電極をパターニングする過程において、第1の電極層103’における第1の電極掛接領域1031および第1の電極共振領域1032を除くすべての領域をエッチングして除去してもよく、第1の電極103のみを第1の電極層103’の他の領域から電気的に隔離させてもよいことに留意されたい。第1の電極103のみを第1の電極層103’の他の領域から電気的に隔離させるには、具体的には、第1の電極層103’における定義された第1の電極103のパターンの境界部(第1のトレンチ120aに定義された第1の電極の境界部以外の領域)をエッチングするとともに、第1の電極層103’を貫通し、第1の電極103のパターンの境界部に沿って一定の線幅を有するギャップをエッチングし、最後に第1の電極103を第1の電極層103’から完全に分離させる。第1の電極層103’の他の領域は、依然として保持することができ、電気的分離が実現される。
【0051】
図10に示されるように、工程S03を実行し、第1の基板100と支持層101とを結合させ、第1の基板100と第1の電極103とは、支持層101の開口110a’にキャビティ110aを形成する。第1の基板100は、当業者に知られている任意の適切な基板であってよく、例えば、以下に記載の材料の少なくとも1つであってよい。シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、シリコンカーボン(SiC)、カーボンゲルマニウムシリコン(SiGeC)、インジウムヒ素(InAs)、ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムリン(InP)または他のIII/V複合半導体(これらの半導体で構成される多層構造なども含まれる)、またはシリコンオンインシュレーター(SOI)、積層シリコンオンインシュレーター(SSOI)、積層シリコンゲルマニウムオンインシュレーター(S-SiGeOI)、シリコンゲルマニウムオンインシュレーター(SiGeOI)およびゲルマニウムオンインシュレーター(GeOI)、または両面研磨ウェーハ(Double Side Polished Wafers,DSP)、アルミナなどのセラミック基板、石英またはガラス基板など。第1の基板100と支持層101との結合は、ホットプレス結合やドライフィルム結合によって実現することができる。結合プロセスが完了した後、その後のプロセスを実行するために結合後の上記薄膜バルク音響波共振器を反転させる。
【0052】
本発明の他の実施形態において、第1のトレンチ120aとキャビティ110aの形成方法は、
第1の基板100を提供し、第1の基板100上に支持層101を形成し、第1の基板100の一部を露出させるように支持層101をエッチングすることにより、支持層101に開口110a’を形成することと、第1の電極103と圧電層104をエッチングして第1のトレンチ120aを形成することと、キャビティ110aが形成されるように開口110a’が形成された支持層101と第1のトレンチ120aが形成された圧電積層120とを結合させると、をさらに含む。
【0053】
ここで、第1のトレンチ120a及び、開口110a’を有する支持層101を製造するプロセス工程は、時系列に限定されず、当業者は、実際のプロセス条件に従ってそれを具体的に実施することができる。
【0054】
図11を参照して、工程S04を実行し、第2の基板200を除去する。この実施形態において、隔離層を腐食させることによって第2の基板200を剥離する。本発明の他の実施形態において、エッチングまたは機械的研削などの他の方法を使用して、第2の基板200を除去することができる。
【0055】
図12から図13を参照して、工程S05を実行し、第2の電極層105’および圧電層104をエッチングすることにより第2のトレンチ120bを形成し、圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ120aおよび第2のトレンチ120bの投影により、閉じたまたはほぼ閉じたパターンが取り囲まれる。
【0056】
具体的には、図13に示されるように、第2のトレンチ120bが形成されるように第2の電極層105および圧電層104をエッチングする。第2のトレンチ120bの側壁は、傾斜しても垂直であってもよい。この実施形態において、第2のトレンチ120bの側壁と第1の電極層103’が位置する平面とは鈍角を形成する(第2のトレンチ120bの縦断面(基板の厚さ方向に沿った断面)の形状は逆台形である)。圧電層104が位置する平面における第2のトレンチ120bの投影は、ハーフ環状またはハーフ環状に近い多角形である。他の実施形態において、図2Cを参照して、圧電層104が位置する平面における複数の第2のトレンチ120aの投影により不連続なハーフ環状が形成されるように複数の不連続な第2のトレンチ120aを形成することもできる。具体的には、第2のトレンチをエッチングするプロセスは乾式エッチングプロセスであり、乾式エッチングは、反応性イオンエッチング(RIE)、イオンビームエッチング、プラズマエッチング、またはレーザーカットを含むが、これらに限られるものではない。エッチングされた第2のトレンチ120aの側壁と第1の電極103が位置する平面とをなす角βは鈍角であり、好ましくは90<β<160である。
【0057】
次に、第2の電極層105’をパターニングすることにより、第2の電極105が形成される。具体的には、第2の電極層105’の表面にフォトレジストをコーティングしフォトレジスト層を形成して、第1の電極パターンがプリセットされた第1のマスクを介し、フォトレジスト層をフォトエッチングしてパターンを形成し、パターニングされたフォトレジスト層をマスクとして、乾式エッチングプロセスにより第2の電極層105’をエッチングする。エッチングにより形成された第2の電極105は、第2の電極掛接領域1051と第2の電極共振領域1052を有し、第2の電極共振領域1052と有効共振領域001とは、重なり合い、形成された第2の電極掛接領域1051は、第2の電極共振領域1052とキャビティよりも外側に位置する圧電積層とを接続する。この実施形態において、図2Aを参照して、第2の電極掛接領域1051はブリッジ構造である。他の実施形態において、第2の電極掛接領域1051は、一端が第2の電極掛接領域1051に接続され、他端がキャビティの周囲の圧電積層のエッジに接続された面状構造またはマルチブリッジ構造であってよい。ここで、キャビティの上方の非有効共振領域(無効共振領域002)の寄生共振が低減されるように第2の電極掛接領域1051と第1の電極掛接領域1031とはキャビティの上方で重なり合わない。第2の電極をパターニングする過程において、第2の電極層105’における第2の電極掛接領域1051および第2の電極共振領域1052を除くすべての領域をエッチングして除去してもよく、第2の電極105のみを第2の電極層105’の他の領域から電気的に隔離させてもよいことに留意されたい。例として、第2の電極層105’における定義された第2の電極105のパターンの境界部(第2のトレンチ120bに定義された第2の電極の境界部以外の領域)をエッチングするとともに、第2の電極層105’を貫通し、第2の電極103のパターンの境界部に沿って一定の線幅を有するギャップをエッチングし、最後に第2の電極105を第2の電極層105’から完全に分離させる。第2の電極層105’の他の領域は、依然として保持することができ、電気的分離が実現される。
【0058】
また、第1のトレンチ120aおよび第2のトレンチ120bの図2AのAA’線に沿った断面は、台形または台形に近い形状である(即ち、α、βは鈍角である)。この実施形態において、圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ120aおよび第2のトレンチ120bの投影によって取り囲まれたパターン(有効共振領域001)は、ちょうど互いに接する五角形であり、且つ、多角形はいずれか一対の平行した直線セグメントを含まない。本発明の他の実施形態において、図2Bに示されるように、圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ120aおよび第2のトレンチ120bの投影によって取り囲まれたパターンは、2箇所のジョイント部にギャップ(第1のジョイント部ギャップ150a’と第2のジョイント部ギャップ150b’)を有するほぼ閉じた五角形である。この実施形態において、第2のパッド107bは、エッジ部分105aに形成してよい。さらに、第2の電極105および圧電層104をエッチングして第2のトレンチ120bを形成する過程において、第1の電極103の信号入力/出力が便利になるように、第2の電極105の一部(エッジ部分105a)および圧電層104をエッチングして第1の電極103側のエッジ部分103aを露出させてよい。例えば、第1のパッド107aは、エッジ部分103aに形成してよい。
【0059】
上記により、本発明によれば薄膜バルク音響波共振器とその製造方法、フィルタ及び無線周波数通信システムが提供される。本発明によって提供される薄膜バルク音響波共振器では、圧電積層には第1のトレンチと第2のトレンチが配置され、圧電層が位置する平面における第1のトレンチの投影と第2のトレンチの投影とにより薄膜バルク音響波共振器の有効共振領域が取り囲まれ、本発明における第1のトレンチと第2のトレンチは、無効共振領域における横波の伝播を効果的にブロックし、音響波損失を改善し、薄膜バルク音響波共振器の品質係数を向上させることにより、デバイスのパフォーマンスが向上する。同時に、パターニングされた第1の電極掛接領域と第2の電極掛接領域とがキャビティの上方で重なり合っていないので、非有効共振領域での寄生共振が効果的に避けられ、薄膜バルク音響波共振器の品質係数がさらに向上する。
【0060】
本明細書の各実施形態は、関連する方式で説明され、各実施形態の間の同じまたは類似の部分は、互いに参照され得ることに留意されたい。各実施形態は、他の実施形態との違いを重要点として説明し、特に、構造に関する実施形態につき、基本的に方法の実施形態と同様であるため、その説明は比較的簡単であり、関連部材につき、方法に関する実施形態についての説明を参照されたい。
【0061】
前述の説明は、あくまでも本発明の好ましい実施形態の説明に過ぎず、本発明の範囲を決して限定するものではない。当業者が前述の開示に基づき行われた変更または修正は、いずれも特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0062】
10-基板; 11-支持層; 11a-キャビティ; 12a-第1のトレンチ; 12b-第2のトレンチ; 13-第1の電極; 14-圧電層; 15-第2の電極;100-第1の基板;200-第2の基板; 120-圧電積層; 101-支持層;110a’-開口; 110a-キャビティ; 120a-第1のトレンチ; 120b-第2のトレンチ; 103-第1の電極; 103’-第1の電極層; 103a-第1の電極エッジ領域; 1031-第1の電極掛接領域; 1032-第1の電極共振領域; 104-圧電層; 1041-圧電印加領域; 1042-圧電共振領域; 105-第2の電極; 105’-第2の電極層; 105a-第2の電極エッジ領域; 1051-第2の電極掛接領域; 1052-第2の電極共振領域; 106a-第1の開口; 106b-第2の開口; 107a-第1のパッド;107b-第2のパッド; 150a-第1のジョイント部; 150b-第2のジョイント部; 150a’-第1のジョイント部ギャップ; 150b’-第2のジョイント部ギャップ; 000-共振領域; 001-有効共振領域; 002-無効共振領域。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13