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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】紙製バリア材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20220530BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220530BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220530BHJP
   D21H 19/84 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B27/20 A
B65D65/40 D
D21H19/84
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021507359
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2020011632
(87)【国際公開番号】W WO2020189663
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2019049712
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521362922
【氏名又は名称】ジュウジョウ サーマル オーユー
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】福永 正明
(72)【発明者】
【氏名】紺屋本 博
(72)【発明者】
【氏名】大石 有理
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正嗣
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】岡本 匡史
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-515754(JP,A)
【文献】特開2010-173111(JP,A)
【文献】特開2017-124851(JP,A)
【文献】特開2009-233924(JP,A)
【文献】特開2011-52342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B65D65/00-65/46
D21B1/00-D21J7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリア層/目止め層/紙基材/顔料塗工層がこの順に積層されてなり、
前記紙基材と前記顔料塗工層のみからなる積層体のJAPAN TAPPI No.5-2:2000に基づいて測定した透気抵抗度が2500秒以下であることを特徴とする紙製バリア材料。
【請求項2】
少なくとも一方の最表面に熱可塑性樹脂層を備えることを特徴とする請求項1に記載の紙製バリア材料。
【請求項3】
前記紙基材と前記顔料塗工層のみからなる積層体のJIS P8151:2004に基づいて、ソフトバッキング使用、クランプ圧1MPaの条件で測定した表面粗さが、3.5μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の紙製バリア材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製バリア材料に関する。
【背景技術】
【0002】
紙製の包装材料にガスバリア性(特に、酸素バリア性)を付与することは、包装される各種製品をガスによる劣化、例えば酸素による酸化などから守るために重要である。ガスバリア性を備える紙製バリア材料として、例えば、紙基材上に水蒸気バリア層、ガスバリア層を設けた紙製バリア材料が提案されている(特許文献1、2)。
【0003】
ここで、紙製バリア材料は、商品の容器、包装紙等の包装材料として用いられるが、紙製バリア材料の少なくとも一面に熱可塑性樹脂等からなるヒートシール層を設け、ヒートシール加工により紙製バリア材料同士を接合することにより、包装材料に成形される場合がある。また、このような紙製バリア材料からなる包装材料は、その表面に消費者に商品の魅力を訴求するために様々な印刷が施されることがあるが、その場合、印刷面には印刷適性を向上させるための顔料塗工層が設けられる場合が多い。
【0004】
紙製バリア材料にヒートシール加工を行う場合、接合部及びその周辺部を加熱して熱可塑性樹脂等を軟化させるが、その際に、紙製バリア材料の紙基材内部の水分が加熱されて水蒸気となる。この時、顔料塗工層のバリア性が高いと、水蒸気が紙製バリア材料内部から抜け出せず、水蒸気の急激な膨張による層内、層間での破壊が生じることがある。このような破壊が起こると、バリア性が低下し、また、外観を損なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5331265号公報
【文献】特許第6234654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、加熱時に水蒸気の膨張による破壊が起こりにくい紙製バリア材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を解決するための手段は、以下の通りである。
1.ガスバリア層/目止め層/紙基材/顔料塗工層がこの順に積層されてなり、
前記紙基材と前記顔料塗工層のみからなる積層体のJAPAN TAPPI No.5-2:2000に基づいて測定した透気抵抗度が2500秒以下であることを特徴とする紙製バリア材料。
2.少なくとも一方の最表面に熱可塑性樹脂層を備えることを特徴とする1.に記載の紙製バリア材料。
3.前記紙基材と前記顔料塗工層のみからなる積層体のJIS P8151:2004に基づいて、ソフトバッキング使用、クランプ圧1MPaの条件で測定した表面粗さが、3.5μm以下であることを特徴とする1.または2.に記載の紙製バリア材料。
【発明の効果】
【0008】
本発明の紙製バリア材料は、紙基材と顔料塗工層のみからなる積層体の透気抵抗度が低く、気体が抜けやすい。そのため、本発明の紙製バリア材料は、ヒートシール加工等で急激に加熱され、紙基材内部の水分が加熱されて水蒸気となっても、水蒸気の急激な膨張による層内、層間での破壊が抑制される。そのため、バリア性が低下しにくく、また、外観が損なわれにくい。
少なくとも一方の最表面に熱可塑性樹脂層を備える本発明の紙製バリア材料は、ヒートシール時に破壊が生じにくく、ヒートシール加工に伴う品質の低下が起こりにくい。
紙基材と顔料塗工層のみからなる積層体のJIS P8151:2004に基づいて、ソフトバッキング使用、クランプ圧1MPaの条件で測定した表面粗さが、3.5μm以下である本発明の紙製バリア材料は、印刷適性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の紙製バリア材料は、ガスバリア層/目止め層/紙基材/顔料塗工層がこの順に積層されてなり、紙基材と顔料塗工層のみからなる積層体のJAPAN TAPPI No.5-2:2000に基づいて測定した透気抵抗度(王研式)が2500秒以下であることを特徴とする。
【0010】
・紙基材
紙基材は、パルプ、填料、各種助剤等を含む紙料を抄紙して得られる。
パルプとしては、針葉樹の晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹の未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹の晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹の未晒クラフトパルプ(LUKP)、サルファイトパルプ(SP)等の木材の化学パルプ、グランドパルプ(GP)、リファイナグランドパルプ(RGP)、ストーングランドパルプ(SGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の木材の機械パルプ、ケナフ、バガス、竹、麻、ワラなどから得られた非木材パルプ、古紙を原料とし、脱墨工程にて古紙に含まれるインキを除去した古紙パルプなど、公知のパルプを適宜配合して用いることが可能である。これらの中で、異物混入が発生し難いLBKP、NBKP等の化学パルプが好ましく、また、古紙パルプの配合量が少ないことが好ましい。具体的には、化学パルプの配合量が80%以上であることが好ましく、化学パルプの配合量が100%であることが特に好ましい。
【0011】
填料としては、タルク、カオリン、焼成カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの無機填料、尿素-ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール系樹脂、微小中空粒子等の有機填料等の公知の填料を使用することができる。なお、填料は、必須材料ではなく、使用しなくてもよい。
【0012】
各種助剤としては、ロジン、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニルコハク酸無水物(ASA)などのサイズ剤、ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、カチオン化澱粉、各種変性澱粉、尿素・ホルマリン樹脂、メラミン・ホルマリン樹脂などの乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、歩留剤、濾水性向上剤、凝結剤、硫酸バンド、嵩高剤、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、紫外線防止剤、退色防止剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等が例示可能であり、必要に応じて適宜選択して使用可能である。
【0013】
・顔料塗工層
顔料塗工層は、無機顔料とバインダーを主成分とする。顔料塗工層における無機顔料とバインダーとの混合比率は、固形分での重量比で無機顔料:バインダー=90:10~80:20の範囲内であることが好ましい。
顔料塗工層には、顔料とバインダーの他に、必要に応じて、分散剤、粘性改良剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、蛍光染料、着色染料、着色顔料、界面活性剤、pH調整剤、カチオン性樹脂、アニオン性樹脂、紫外線吸収剤、金属塩など、通常の塗工紙用顔料に配合される各種助剤を適宜使用できる。
【0014】
無機顔料としては、顔料塗工層に配合される用途に使用されているものを特に制限することなく使用することができ、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、エンジニアードカオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、タルク、シリカ、コロイダルシリカ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、カオリナイト、アンチゴライト、スメクタイト、バーミキュライト、マイカ等が挙げられる。これらの無機顔料の中でも、透気抵抗度の調整の観点から、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、シリカが好ましい。
【0015】
バインダーとしては、塗工紙分野等で一般的に使用されている種類のものを適宜使用できる。例えば、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、オレフィン変性ポリビニルアルコール、ニトリル変性ポリビニルアルコール、ピロリドン変性ポリビニルアルコール、シリコーン変性ポリビニルアルコール、その他の変性ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体などのポリビニルアルコール類、(メタ)アクリル酸及び、(メタ)アクリル酸と共重合可能な単量体成分(オレフィンを除く)からなるアクリル系樹脂、エチレン-アクリル系樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロースなどのセルロース誘導体、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉などの澱粉類、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、カゼイン、アラビヤゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルブチラール、ポリスチロース及びそれらの共重合体、ポリアミド樹脂、シリコーン系樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂等を挙げることができる。バインダーは、1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0016】
・目止め層
目止め層は、ガスバリア層を設ける際のガスバリア層用塗工液の紙基材への沈み込みを抑えることにより、ガスバリア性の低下を防ぐものである。目止め層は、上記性能を発揮できるものであれば特に制限されないが、例えば、顔料とバインダーとを含むことが好ましい。また、目止め層には、必要に応じてサイズ剤、耐水化剤、撥水剤、染料、界面活性剤等を含有させることができる。
【0017】
顔料としては、例えば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、エンジニアードカオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、タルク、シリカ、コロイダルシリカ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、カオリナイト、アンチゴライト、スメクタイト、バーミキュライト、マイカなどの無機顔料、アクリル系或いはメタクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、スチレン-イソプレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シリコーン系樹脂、尿素樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂等の樹脂からなる有機顔料などが挙げられる。顔料としては、これらの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0018】
形状が扁平な無機顔料を用いることにより、目止め層に水蒸気バリア性を付与することができる。目止め層に水蒸気バリア性を付与する場合、顔料としては、体積50%平均粒子径(D50)(以下、「平均粒子径」とも言う。)が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料を単独または2種類以上混合して使用することが好ましい。扁平な顔料としては特に制限されず、カオリン、焼成カオリン、エンジニアードカオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、タルク、マイカ等を用いることができる。
【0019】
バインダーとしては、塗工紙分野等で一般的に使用されている種類のものを適宜使用できる。例えば、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、オレフィン変性ポリビニルアルコール、ニトリル変性ポリビニルアルコール、ピロリドン変性ポリビニルアルコール、シリコーン変性ポリビニルアルコール、その他の変性ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体などのポリビニルアルコール類、(メタ)アクリル酸及び、(メタ)アクリル酸と共重合可能な単量体成分(オレフィンを除く)からなるアクリル系樹脂、エチレン-アクリル系樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロースなどのセルロース誘導体、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉などの澱粉類、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、カゼイン、アラビヤゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルブチラール、ポリスチロース及びそれらの共重合体、ポリアミド樹脂、シリコーン系樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂等を挙げることができる。バインダーとしては、これらの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0020】
水蒸気バリア性が高いバインダーを用いることにより、目止め層に水蒸気バリア性を付与することができる。目止め層に水蒸気バリア性を付与する場合、バインダーとしては、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン-アクリル系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体から選択される1種または2種以上混合して使用することが好ましい。
【0021】
目止め層における顔料の配合量は、乾燥重量でバインダー100重量部に対して、1重量部以上1000重量部以下の範囲で使用されることが好ましく、より好ましくは10重量部以上500重量部以下である。
【0022】
・ガスバリア層
本発明において、ガスバリア層に使用される水溶性高分子としては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、エチレン共重合ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパクなどのタンパク質類、酸化澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムなどを例示することができる。これらの中では、ガスバリア性の点から、ポリビニルアルコール類、セルロース誘導体が好ましく、ポリビニルアルコール類がさらに好ましい。また、水分散性樹脂としては、ポリ塩化ビニリデン、変性ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。
【0023】
本発明において、ガスバリア層に顔料を含有させることは、ガスバリア性の向上の点から好ましい。ガスバリア層に使用される顔料としては、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイト、マイカなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコア-シェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。
【0024】
本発明において、ガスバリア層に顔料を含有させる場合、顔料の配合量は、乾燥重量で水溶性高分子100重量部に対して、1重量部以上1000重量部以下の範囲で使用されることが好ましい。なお、本発明において、顔料を水溶性高分子中に配合する際に、顔料がスラリー化したものを添加し混合することが好ましい。
さらに、本発明において、ガスバリア層には、水溶性高分子、顔料の他、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料、架橋剤等の通常使用される各種助剤を使用することができる。
【0025】
「紙製バリア材料」
本発明の紙製バリア材料は、ガスバリア層/目止め層/紙基材/顔料塗工層の4層がこの順に積層されてなるが、そのうちの2層である紙基材と顔料塗工層のみからなる積層体のJAPAN TAPPI No.5-2:2000(紙及び板紙-平滑度及び透気度試験方法-王研法)に基づいて測定した透気抵抗度が2500秒以下であることを特徴とする。この透気抵抗度が2500秒以下である本発明の紙製バリア材料は、急激な加熱により内部で水蒸気が膨張しても、紙製バリア材料の層内、層間における破壊が起こりにくい。この透気抵抗度は、2200秒以下であることが好ましく、1800秒以下であることがより好ましく、1500秒以下であることがさらに好ましい。
【0026】
また、本発明の紙製バリア材料は、印刷適性の点から、紙基材と顔料塗工層のみからなる積層体のJIS P8151:2004に基づいて、ソフトバッキング使用、クランプ圧1MPaの条件で測定した表面粗さが、3.5μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であることがより好ましい。
【0027】
・熱可塑性樹脂層
本発明の紙製バリア材料は、少なくとも一方の最表面に熱可塑性樹脂層を備えることができる。熱可塑性樹脂層を備える紙製バリア材料は、熱可塑性樹脂層をヒートシール加工により接合することにより、様々な形状の包装材料に成形することができる。紙製バリア材料の一方の面のみに熱可塑性樹脂層を設ける場合、ガスバリア層側表面、顔料塗工層側表面のどちらに設けることもできる。熱可塑性樹脂層は、紙製バリア材料の両方の最表面に設けることが好ましい。両方の最表面に熱可塑性樹脂層を備える紙製バリア材料は、ヒートシール加工による接合が容易かつ強固となる。
【0028】
「紙製バリア材料の製造方法」
本発明の紙製バリア材料は、紙基材に、顔料塗工層、目止め層、ガスバリア層を形成するための塗工液を、順次、塗工、乾燥することにより、製造することができる。紙基材の製造(抄紙)方法、抄紙機の型式は特に限定されるものではなく、長網抄紙機、円網抄紙機、短網抄紙機、ギャップフォーマー型、ハイブリッドフォーマー型(オントップフォーマー型)等のツインワイヤー抄紙機等、公知の製造(抄紙)方法、抄紙機が選択可能である。また、抄紙時のpHは酸性領域(酸性抄紙)、疑似中性領域(疑似中性抄紙)、中性領域(中性抄紙)、アルカリ性領域(アルカリ性抄紙)のいずれでもよく、酸性領域で抄紙した後、紙層の表面にアルカリ性薬剤を塗工してもよい。また、紙基材は1層であってもよく、2層以上の多層で構成されていてもよい。
【0029】
紙基材の坪量は特に制限されないが、通常、20g/m以上600g/m以下程度である。紙基材の坪量は、紙製バリア材料の用途等に応じて適宜選択することができ、食品などの包装材、袋、紙器、段ボール箱、カップなど、包装用途に使用する包装材料の場合は、25g/m以上600g/m以下のものがより好ましい。さらに、袋用または軟包装材用では30g/m以上150g/m以下、紙器用では170g/m以上600g/m以下等とすることができる。
【0030】
顔料塗工層、目止め層、ガスバリア層の塗工方法は特に限定されるものではなく、公知の塗工装置および塗工系で塗工することができる。例えば、塗工装置としてはブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター等が挙げられる。また、塗工系としては、水等の溶媒を使用した水系塗工、有機溶剤等の溶媒を使用した溶剤系塗工などが挙げられる。
顔料塗工層、目止め層、ガスバリア層を乾燥させる手法としては、例えば、蒸気加熱ヒーター、ガスヒーター、赤外線ヒーター、電気ヒーター、熱風加熱ヒーター、マイクロウェーブ、シリンダードライヤー等の通常の方法が用いられる。
【0031】
顔料塗工層の塗工量は、乾燥重量で5g/m以上15g/m以下とすることが好ましい。塗工量が5g/m未満であると印刷適性の向上が不十分である場合がある。一方、15g/mより多いと、紙基材と顔料塗工層のみからなる積層体の透気抵抗度が、本発明の範囲内に収まりにくくなる。
【0032】
目止め層の塗工量は、乾燥重量で3g/m以上15g/m以下とすることが好ましい。塗工量が3g/m未満であると目止め効果が不十分である場合がある。一方、15g/mより多いと、塗工時の乾燥負荷が大きくなり、操業面、コスト面の両方の観点より好ましくない。
ガスバリア層の塗工量は、乾燥重量で0.2g/m以上20g/m以下とすることが好ましい。ガスバリア層の塗工量が0.2g/m未満であると、均一なガスバリア層を形成することが困難であるため、十分なガスバリア性が得られなくなることがある。一方、20g/mより多いと、塗工時の乾燥負荷が大きくなり、操業面、コスト面の両方の観点より好ましくない。
【実施例
【0033】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は下記実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部および%は、それぞれ固形分での重量部、重量%を示す。
【0034】
(評価方法)
(1)透気抵抗度
JAPAN TAPPI No.5-2:2000に基づいて、紙基材と顔料塗工層のみからなる積層体の透気抵抗度を測定した。
(2)表面粗さ
JIS P8151:2004に基づいて、ソフトバッキング使用、クランプ圧1MPaの条件で、紙基材と顔料塗工層のみからなる積層体の表面粗さを測定した。
(3)酸素透過度(ガスバリア性)
MOCON社製、OX-TRAN2/21を使用し、23℃-0%RH条件にて、紙製バリア材料の酸素透過度(ガスバリア性)を測定した。
(4)急速加熱時の層内、層間での破壊
縦40mm×横40mmに裁断した紙製バリア材料のガスバリア層側から、ヒートガン(石崎電機製作所製:PJ214A)を用いて約500℃の熱風を1秒間あて、急速に加熱した際の層内、層間での破壊発生の有無を目視にて確認した。
〇:層内、層間での破壊が発生しない。
×:層内、層間での破壊が発生する。
【0035】
(顔料塗工層用塗工液の調製)
下記配合からなる配合物を撹拌分散して、顔料塗工層用塗工液1~6を調製した。
<顔料塗工層用塗工液1>
重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製:FMT-90)100.0部
酸化澱粉(敷島スターチ社製:マーメイドM210) 4.5部
スチレン・ブタジエン系共重合ラテックス
(日本ゼオン社製:PNT8110) 8.5部
水 60.8部
【0036】
<顔料塗工層用塗工液2>
重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製:FMT-90) 20.0部
微粒カオリン(KaMin社製:ハイドラグロス) 80.0部
酸化澱粉(敷島スターチ社製:マーメイドM210) 4.5部
スチレン・ブタジエン系共重合ラテックス
(日本ゼオン社製:PNT8110) 8.5部
水 60.8部
【0037】
<顔料塗工層用塗工液3>
重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製:FMT-90) 90.0部
合成非晶質シリカ
(DSL.ジャパン株式会社:BS-308N) 10.0部
酸化澱粉(敷島スターチ社製:マーメイドM210) 4.5部
スチレン・ブタジエン系共重合ラテックス
(日本ゼオン社製:PNT8110) 9.5部
水 60.8部
【0038】
<顔料塗工層用塗工液4>
重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製:FMT-90) 20.0部
微粒カオリン(KaMin社製:ハイドラグロス) 80.0部
酸化澱粉(敷島スターチ社製:マーメイドM210) 2.0部
スチレン・ブタジエン系共重合ラテックス
(日本ゼオン社製:PNT8110) 20.0部
水 60.8部
【0039】
<顔料塗工層用塗工液5>
重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製:FMT-90) 20.0部
微粒カオリン(KaMin社製:ハイドラグロス) 80.0部
酸化澱粉(敷島スターチ社製:マーメイドM210) 2.0部
スチレン・ブタジエン系共重合ラテックス
(日本ゼオン社製:PNT8110) 18.0部
水 60.8部
【0040】
<顔料塗工層用塗工液6>
微粒カオリン(KaMin社製:ハイドラグロス) 100.0部
酸化澱粉(敷島スターチ社製:マーメイドM210) 2.0部
スチレン・ブタジエン系共重合ラテックス
(日本ゼオン社製:PNT8110) 20.0部
水 60.0部
【0041】
(目止め層用塗工液1の調製)
下記配合からなる配合物を撹拌分散して、目止め層用塗工液1を調製した。
<目止め層用塗工液1>
微粒カオリン(KaMin社製:ハイドラグロス) 60.0部
エンジニアードカオリン(イメリス社製:CapimDG) 20.0部
ポリアクリル酸ソーダ 0.5部
重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製:FMT-90) 20.0部
スチレン・ブタジエン系共重合ラテックス
(日本ゼオン社製:PNT8110) 20.0部
酸化澱粉(敷島スターチ社製:マーメイドM210) 2.0部
水 71.7部
【0042】
(目止め層用塗工液2の調製)
下記配合からなる配合物を撹拌分散して、目止め層用塗工液2を調製した。
<目止め層用塗工液2>
エンジニアードカオリン(イメリス社製:バリサーフHX)100.0部
スチレン・ブタジエン系共重合ラテックス
(日本ゼオン社製:PNT8110) 50.0部
水 71.7部
【0043】
(ガスバリア層用塗工液の調製)
下記配合からなる配合物を撹拌分散して、ガスバリア層用塗工液を調製した。
<ガスバリア層用塗工液>
エンジニアードカオリン(イメリス社製:バリサーフHX)100.0部
ポリアクリル酸ソーダ 0.2部
ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA117) 100.0部
水 1801.8部
【0044】
[実施例1]
紙基材(坪量280g/mの紙器原紙、3層品)の片面に、顔料塗工層用塗工液1を乾燥重量で塗工量6.0g/mとなるようにブレード法で塗工、乾燥を行い、積層体を得た。この積層体のJAPAN TAPPI No.5-2:2000に基づいて測定した透気抵抗度は1600秒であった。
次いで、この積層体の顔料塗工層とは反対の面に、目止め層用塗工液1を乾燥重量で塗工量6.0g/mとなるようにブレード法で塗工、乾燥した後、その上にガスバリア層用塗工液を乾燥重量で塗工量3.0g/mとなるようにエアナイフ法で塗工、乾燥し、ソフトニップカレンダーを用いて線圧60kN/mの条件で処理して、紙製バリア材料を得た。
【0045】
[実施例2]
顔料塗工層用塗工液1を乾燥重量で塗工量12.0g/mとなるようにブレード法で塗工、乾燥を行い、積層体を得た以外は、実施例1と同様にして、紙製バリア材料を得た。この積層体のJAPAN TAPPI No.5-2:2000に基づいて測定した透気抵抗度は2100秒であった。
[実施例3]
顔料塗工層用塗工液1に替えて顔料塗工層用塗工液2を使用し、乾燥重量で塗工量5.0g/mとなるようにブレード法で塗工、乾燥を行い、積層体を得た以外は、実施例1と同様にして、紙製バリア材料を得た。この積層体のJAPAN TAPPI No.5-2:2000に基づいて測定した透気抵抗度は2300秒であった。
[実施例4]
顔料塗工層用塗工液1に替えて顔料塗工層用塗工液3を使用し、乾燥重量で塗工量6.0g/mとなるようにブレード法で塗工、乾燥を行い、積層体を得た以外は、実施例1と同様にして、紙製バリア材料を得た。この積層体のJAPAN TAPPI No.5-2:2000に基づいて測定した透気抵抗度は1100秒であった。
【0046】
[実施例5]
紙基材(坪量42g/m、1層品)を用い、顔料塗工層用塗工液6を乾燥重量で6.0g/mとなるようブレード法で塗工、乾燥を行い、積層体を得た。この積層体のJAPAN TAPPI No.5-2:2000に基づいて測定した透気抵抗度は400秒であった。
次いで、この積層体の顔料塗工層とは反対の面に、目止め層用塗工液2を乾燥重量で塗工量10.0g/mとなるようにカーテン法で塗工、乾燥した後、その上にガスバリア層用塗工液を乾燥重量で塗工量3.0g/mとなるようにエアナイフ法で塗工、乾燥し、ソフトニップカレンダーを用いて線圧60kN/mの条件で処理して、紙製バリア材料を得た。
【0047】
[比較例1]
顔料塗工層用塗工液1に替えて顔料塗工層用塗工液4を使用し、乾燥重量で塗工量10.0g/mとなるようにブレード法で塗工、乾燥を行い、積層体を得た以外は、実施例1と同様にして、紙製バリア材料を得た。この積層体のJAPAN TAPPI No.5-2:2000に基づいて測定した透気抵抗度は6000秒であった。
[比較例2]
顔料塗工層用塗工液1に替えて顔料塗工層用塗工液5を使用し、乾燥重量で塗工量8.0g/mとなるようにブレード法で塗工、乾燥を行い、積層体を得た以外は、実施例1と同様にして、紙製バリア材料を得た。この積層体のJAPAN TAPPI No.5-2:2000に基づいて測定した透気抵抗度は4000秒であった。
【0048】
各実施例、比較例で得られた積層体及び紙製バリア材料の評価結果を表1に示す。
【表1】
【0049】
本発明である実施例1~5で得られた紙製バリア材料は、紙基材と顔料塗工層のみの積層体における透気抵抗度が2500秒以下と低いため、気体が抜けやすく、急速加熱時に破壊が起こらなかった。
比較例1、2で得られた紙製バリア材料は、紙基材と顔料塗工層のみの積層体における透気抵抗度が2500秒よりも高いため、急速加熱時に内部で生じた水蒸気による破壊が確認できた。