(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】ポリオレフィン繊維
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20220530BHJP
C08L 23/20 20060101ALI20220530BHJP
D01F 8/06 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L23/20
D01F8/06
(21)【出願番号】P 2021532462
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2019085692
(87)【国際公開番号】W WO2020127296
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-08
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】デパロ、ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ムサッチ、ギアンルカ
(72)【発明者】
【氏名】ルメール、ルノー
(72)【発明者】
【氏名】マルチポリケレス、ジャウメ
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-107612(JP,A)
【文献】特開平01-246413(JP,A)
【文献】特開2005-097558(JP,A)
【文献】特表2011-506716(JP,A)
【文献】特表2008-524415(JP,A)
【文献】特開2007-321098(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103756143(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むポリオレフィン組成物:
A)80超過のアイソタクチック指数(25℃でキシレンに不溶性の分画の重量%で測定)を有するプロピレンのホモポリマー、または85重量%以上のプロピレンを含有し、80以上のアイソタクチック指数を有する
、プロピレン
と、エチレン及び/または炭素原子数4~10の一つ以上のα-オレフィン
との結晶性コポリマー、あるいはこれらのブレンド60~95重量%;
B)エチレン及び高級α-オレフィンから選択された一つ以上のコモノマーとブテン-1のコポリマー(I)、または
ブテン-1と、前記コモノマーのうち1つ以上
との少なくとも一つのコポリマーを含むブテン-1ポリマーの組成物(II)5~40重量%、ここで前記コポリマー(I)または組成物(II)は以下を有する:
-5~100g/10分のMFRE値、ここで、MFREは、2.16kgの荷重で、190℃において(条件E)ISO 1133に従って測定したメルトフローレートである;
-B)の総重量を基準に4~15モル%の共重合コモノマー含量;
-Mwが重量平均モル質量であり、Mnが数平均分子量であるMw/Mn値が、両方ともGPCによって測定するとき、4以下である;
-80MPa以上の曲げ弾性率;
ここで、前記A)およびB)の量は、A)+B)の総重量を基準とする。
【請求項2】
前記成分B)は、以下を含む組成物(II)である、請求項1に記載のポリオレフィン組成物:
B
I)ブテン-1ホモポリマー、または共重合コモノマー含量(C
A)が5モル%以下である、エチレンおよび高級α-オレフィンから選択される1つ以上のコモノマーとブテン-1のコポリマー;
B
II)共重合コモノマーの含量(C
B)が6~20モル%である、エチレンおよび高級アルファ-オレフィンから選択される1つ以上のコモノマーとブテン-1のコポリマー;
前記組成物は、B
I)とB
II)の総重量に対して決定される、0℃でキシレン中の可溶性画分の含量が75重量%以下、好ましくは、70重量%以下である。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一項に記載のポリオレフィン組成物を含む繊維。
【請求項4】
スキン・コア構造またはサイドバイサイド構造を有する、請求項3に記載の繊維。
【請求項5】
スキン成分中に請求項1または2に記載のポリオレフィン組成物を含有する、請求項4に記載のスキン・コア繊維。
【請求項6】
繊維の総重量に対して、コア層を形成するポリマー物質50~80重量%と、請求項1または2に記載の組成物を含み、外側スキン層を形成するポリマー材料20~50重量%とをそれぞれ含む、請求項5に記載のスキン・コア繊維。
【請求項7】
前記コア層は、スキンに存在する特定の成分(A)と同一または異なる成分(A)の同一のホモポリマーまたはコポリマーから選択されたプロピレンポリマーを含む、請求項6に記載のスキン・コア繊維。
【請求項8】
請求項3に記載の繊維を含む不織布。
【請求項9】
平方メートル当たり10~120gの密度を有する、請求項8に記載の不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリオレフィン繊維、前記繊維で製造された物品、並びにプロピレンポリマーおよびブテン-1コポリマーまたはブテン-1ポリマー組成物を含む前記繊維製造用ポリオレフィン組成物に関する。
【0002】
前記繊維で製造された物品は、機械的特性、特に高い強靭度と破断伸度との高いバランスを示す。
【背景技術】
【0003】
プロピレンポリマーとブテン-1ポリマーのブレンドで製造された繊維は、WO2010069775号に記載されており、ここで前記ブテン-1ポリマーは60MPa以下の低い曲げ弾性率の値で示したように、高い柔軟性を特徴とする。
【0004】
このような繊維は、優れた柔軟性および弾性回復率を示すが、重要な引張特性、特に強靭度および伸度は、プロピレンポリマーのみで製造された繊維に比べて改善されていない。
【0005】
しかし、特に不織布のような繊維物品においては、強靭度と伸度との高いバランスを得ることが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような目標は、相対的に高いメルトフローレートと曲げ弾性率の値とを組み合わせて有する特定のブテン-1コポリマーまたはブテン-1ポリマー組成物を用いることで達成できるということが明らかになった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本開示は、一実施形態において、下記を含むポリオレフィン組成物を提供する:
A)80超過、好ましくは90~98のアイソタクチック指数(25℃でキシレンに不溶性の分画の重量%)を有するプロピレンのホモポリマー、または85重量%以上のプロピレンを含有し、80以上のアイソタクチック指数を有する、プロピレンと、エチレンおよび/または炭素原子数4~10の一つ以上のα-オレフィンとの結晶性コポリマー、あるいはこれらのブレンド60~95重量%、好ましくは65~95重量%、より好ましくは65~92重量%;
B)エチレンおよび高級α-オレフィンから選択された一つ以上のコモノマーとブテン-1のコポリマー(I)、またはブテン-1と、エチレンおよび高級α-オレフィンから選択された一つ以上のコモノマーとの少なくとも一つのコポリマーを含むブテン-1ポリマーの組成物(II)5~40重量%、好ましくは5~35重量%、より好ましくは8~35重量%、ここで前記コポリマー(I)または組成物(II)は以下を有する:
-5~100g/10分、好ましくは、20~100g/10分、より好ましくは、25~95g/10分、特に、30~80g/10分のMFRE値、ここで、MFREは、2.16kgの荷重で、190℃において(条件E)ISO 1133に従って測定したメルトフローレートである;
-B)の総重量を基準に4~15モル%、好ましくは、4~10モル%または5~10モル%の共重合コモノマー含量;
-Mwが重量平均モル質量であり、Mnが数平均分子量であるMw/Mn値が、両方ともGPCによって測定するとき、4以下である;
-80MPa以上、好ましくは、100MPa以上、より好ましくは、115MPa以上の曲げ弾性率;
ここで、前記A)およびB)の量は、A)+B)の総重量を基準とする。
【0008】
A)+B)の総重量は、100%となる。
【0009】
このようなポリオレフィン組成物から得られた繊維は、機械方向(MD)および横方向(TD)の両方において高い強靭度および伸度の値を有する繊維物品、特に不織布を提供する。
【0010】
従って、前記物品の引張特性は両方向において高く、かつ高い引裂強度および穿孔抵抗性を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
繊維の定義には、スパンボンド繊維およびフィラメント(フィラメントは、「連続繊維」または「連続ストランド」とも呼ぶ)が含まれる。
【0012】
前述のように、本ポリオレフィン繊維は、使い捨ておむつのように、柔軟性と強靭度の両者ともを必要とする用途のための不織布を製造するのに特に好適である。
【0013】
本明細書で使用される用語「コポリマー」は、ターポリマーのように、鎖内に2つ超えの異なるモノマーの繰り返し単位を有するポリマーと、2つ超えの異なるモノマーの繰り返し単位を有するポリマーの両方ともを指す。
【0014】
上記のプロピレンポリマー成分(A)は、好ましくは、230℃において2.16kgの荷重で(条件L)ISO 1133に従って測定したメルトフローレートMFRLの値が10~50g/10分、より好ましくは、15~35g/10分である。知られているように、高いメルトフローレート値は、重合で直接得られるか、または紡糸ラインにおいて、あるいはオレフィンポリマーの以前のプレット化の段階中に有機過酸化物などのフリーラジカル発生剤を添加してコントロールされたラジカル分解によって得られる。
【0015】
ポリマー成分は、好ましくは、以下に明示された方法によって測定したとき、2~8範囲の分子量分布(Mw/Mn)を示す。
【0016】
特に、ポリマー成分(A)をチーグラー・ナッタ触媒で製造する場合、Mw/Mn値は、好ましくは3~8、好ましくは3.2~6の範囲である。
【0017】
ポリマー成分(A)をメタロセン触媒で製造する場合、Mw/Mn値は、好ましくは2~3、好ましくは2.4~2.6の範囲である。
【0018】
ポリマー成分(A)は、アイソタクチックタイプの立体規則性を示す。これは、プロピレンのホモポリマー、またはプロピレンとエチレンおよび/または炭素原子数4~10のα-オレフィンのランダムコポリマー、例えばプロピレンのコポリマーおよびターポリマーである。ポリマー成分(A)はまた、前記ポリマーのブレンドであり得、このとき混合比は重要ではない。好ましくは、前記α-オレフィンコモノマーまたはコモノマーらは、エチレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1、オクテン-1、ノネン-1、デセン-1、および4-メチル-1-ペンテンからなる群より選択される。コモノマー含量の好ましい量は、必要によって(A)に存在する単独コポリマーの総重量に対して1重量%~15重量%である。
【0019】
エチレンおよびブテン-1が好ましいコモノマーである。
【0020】
ポリマー成分(A)は、プロピレンおよび任意選択的に前述のような一つ以上のα-オレフィンを立体特異的チーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒などの重合触媒の存在下で重合させることで従来のプロセスにより製造することができる。
【0021】
メタロセン系触媒で得られたポリマー成分(A)は、好ましくは架橋されたベンゾインデニルジルコニウムジクロリドをメタロセン化合物として使用することで得られる。前記化合物は、シリカ上に支持され、当業界によく知られている手順に従ってアルモキサン、好ましくはメチルアルモキサンを使うことで活性化される。ポリマーは、プロピレンモノマーを希釈剤として用いてスラリープロセスで得られる。このような種類のプロセスおよび触媒の例は、国際公開特許WO2005005495A1号に掲示されている。
【0022】
立体特異的チーグラー・ナッタ触媒で得られたポリマー成分(A)は、希釈剤としてプロピレンモノマーを用いてスラリー中で製造することもできる。立体特異的チーグラー・ナッタ触媒は、少なくとも一つのチタン-ハロゲン結合を有する少なくとも一つのチタン化合物および少なくとも一つの電子供与体化合物(内部供与体)を含む固体触媒成分を含み、これらの混合物の両者ともは塩化マグネシウム化合物に支持される。チーグラー・ナッタ触媒系は、必須助触媒として、有機アルミニウム化合物および任意選択的に外部電子供与体化合物をさらに含む。好ましくは、内部電子供与体化合物は、フタル酸、1,3-ジエーテル、およびコハク酸から選ばれる。前述したように、液相プロピレンを主希釈剤として使用して、液相で重合プロセスを行うことができる(バルク重合)。好ましくは、バルク重合は直列に連結された一つ以上のループ反応器で行われる。
【0023】
上述の定義からして、成分(B)の中でブテン-1コポリマーまたはコポリマーらは、エチレンおよび高級アルファ-オレフィンから選択される1つ以上のコモノマーを含んでよいことが明確になる。
【0024】
ブテン-1ポリマー成分(B)が組成物(II)である場合、かかる組成物は好ましくは以下を含む:
BI)ブテン-1ホモポリマー、または共重合コモノマー含量(CA)が5モル%以下、好ましくは、4モル%以下であるエチレンおよび高級α-オレフィンから選択される1つ以上のコモノマーとブテン-1のコポリマー;
BII)共重合コモノマーの含量(CB)が6~20モル%、好ましくは、8~18モル%である、エチレンおよび高級アルファ-オレフィンから選択される1つ以上のコモノマーとブテン-1のコポリマー;
前記組成物は、BI)とBII)の総重量に対して決定される、0℃でキシレン中の可溶性画分の含量が75重量%以下、好ましくは、70重量%以下である。
【0025】
BI)およびBII)の総重量に対して抽出によって測定される画分の重量含量として表される、本明細書において提供されているようなブテン-1ポリマー組成物(II)に対し、0℃でキシレン中の可溶性画分の具体的な量は、35~75重量%、または35~70重量%、特に、40~70重量%、または40~65の重量%である。
【0026】
BI)がコポリマーである場合、コモノマー含量の具体的な下限は、1モル%である。
【0027】
好ましくは、BI)およびBII)の両方がコポリマーである場合、BI)およびBI)の共重合コモノマー含量の百分率の値間の差は、次の関係式を満足させる:
CB) - CA) ≧ 5;または
CB) - CA) ≧ 6。
【0028】
成分BI)およびBII)の相対的な量は、総共重合コモノマー含量、単一成分のコモノマー含量および0℃でキシレン中の可溶性画分含量の所望の値に応じて容易に決定することができる。
【0029】
好ましい量は、30~70重量%、好ましくは、35~65重量%のBI)、および30~70重量%、好ましくは、35~65重量%のBII)であり、すべてBI)およびBII)の総重量を基準とする。
【0030】
成分BI)およびBII)に対する特定のMFRE値は、全体組成物の上記MFRE値が得られる限り、幅広く選択することができる。
【0031】
これと関連し、ポリオレフィンブレンドのMFR値、一般的にブテン-1ポリマーのブレンドのMFR値の対数は、単一成分の重量画分およびMFR値の対数の積の和に与えられることは良く知られている。
【0032】
したがって、上記成分BI)およびBII)のブレンドで製造される組成物のMFRE値は、下記関係式によって決定される:
log MFRE (BI+BII) = wBI log MFRE (BI) + wBII log MFRE(BII)
ここで、MFRE(BI+BII)は、BI)とBII)のブレンドに対するMFRE値であり、MFRE(BI)およびMFRE(BII)は、それぞれ成分BI)およびBII)のMFRE値であり、wBIおよびwBIIはそれぞれの重量分率である。例えば、ブレンドが50重量%のBI)および50重量%のBII)からなる場合、wBIおよびwBIIは、両方とも0.5である。
【0033】
しかし、溶融状態で良好な流動性を得るためには、単一ポリマーBI)およびBII)のMFRE値を十分に高く、特に、10~200g/10分または15~150g/10分の範囲に維持させることが好ましい。
【0034】
ブテン-1ポリマー成分(B)において、エチレンに加えて、またはその代替として、コモノマーとして存在し得る高級アルファ-オレフィンの具体例は、Rが炭素原子を3~8個または3~6個含有するメチルまたはアルキルラジカルである式CH2=CHRのアルファ-オレフィン、例えば、プロピレン、ヘキセン-1、オクテン-1である。
【0035】
しかしながら、エチレンは、好ましいコモノマーである。
【0036】
ブテン-1ポリマー成分(B)は、示差走査熱量計(DSC)パターンにおいて結晶性ブテン-1ポリマーの溶融温度ピークの存在によって立証されるように、測定可能な結晶性を有する。
【0037】
特に、ブテン-1ポリマー成分(B)は、第2のDSC加熱走査において1つ以上の溶融ピークを示す。このような温度ピークまたはピークらは、一般的に100℃以下、または85℃以下、特に、40℃~100℃、または40℃~85℃の温度で発生し、ブテン-1ポリマーの結晶形態II(TmII)の融点に起因し、ピーク(またはピークら)下の面積は、全体溶融エンタルピー(DH TmII)として見なされる。しかし、1つ以上のピークが存在すれば、最も高い(最も強い)ピークをTmIIとして採用する。
【0038】
ブテン-1ポリマー成分(B)に対する特定の全体DH TmII値は、10℃/分に相応する走査速度で測定するとき、25J/g以下、特に、0.2~25J/g、または0.2~20J/g、または4~15J/gである。
【0039】
さらに、ブテン-1ポリマー成分(B)は、エージング後に実行されるDSC加熱走査において一般的に100℃以下、または90℃以下、特に、30℃~100℃、または30℃~90℃の温度で発生する1つ以上の溶融ピークを示す。このような温度ピークまたはピークらは、ブテン-1ポリマー(TmI)の結晶形態Iの融点に起因し、ピーク(または、ピークら)下の面積は,全体溶融エンタルピー(DH TmI)として見なされる。しかし、1つ以上のピークが存在すれば、最も高い(最も強い)ピークはTmIとして採用する。
【0040】
ブテン-1ポリマー成分(B)に対する特定の全体DH TmI値は、10℃/分に相応する走査速度で測定するとき、50J/g以下、特に、25~50J/gまたは30~50J/gである。
【0041】
ブテン-1ポリマー成分(B)はまた、結晶形態IIIの検出可能な含量を有することができる。結晶形態IIIは、文献[Journal of Polymer Science Part B:Polymer Letters Volume 1, Issue 11,pages 587-591, November 1963],または文献[Macromolecules, Vol. 35, No. 7, 2002]に記載されるX-線回折法を介して検出可能である。
【0042】
ブテン-1ポリマー成分(B)に対する特定のX-線結晶性値は、10~50%、特に、15~45%である。
さらに、ブテン-1ポリマー成分(B)は、好ましくは、以下のさらなる特徴のうち、少なくとも1つを有する:
-135℃においてテトラヒドロナフタレン(THN)中において測定した固有粘度(IV)が0.98dl/g以下、0.95dl/g以下、特に、0.75dl/g~0.98dl/gまたは0.75dl/g~0.95dl/gである;
-1.5~4、特に1.5~3.5、または1.5~2.5のMw/Mn値;
-Mwが90,000g/mol以上、特に、90,000~200,000g/mol、または100,000~180,000g/molである;
-Mz値が180,000g/mol以上、または190,000g/mol以上、特に、180,000~350,000g/molまたは190,000~300,000g/molである;
-150.91MHzで作動する13C-NMRで測定したアイソタクチックペンタッド(mmmm)が90%以上;特に、93%超過または95%超過である;
-4,1挿入物は、150.91 MHzで作動する13C-NMRを使用して検出することができない;
-黄色指数が0未満;特に、0~-10または-1~-9または-1~-5である;
-ショアD値が50以下、または45以下、特に、15~50または15~45である;
-ISO 527にしたがって測定された破断点引張応力が10MPa~45MPa、特に、15MPa~40MPaである;
-ISO 527にしたがって測定された引張破断伸度が400%~1000%;特に、450%~800%である;
-ガラス転移温度が-18℃以下、特に、-20℃以下であり、その下限が-30℃である;
-密度が0.880g/cm3以上、特に、0.885g/cm3以上であり;その上限が0.899g/cm3である;
-曲げ弾性率が80~250MPa、または80~200MPa、より好ましくは、100~250MPa、または100~200MPa、特に、115~250MPa、または115~200MPaである。
【0043】
ブテン-1ポリマー成分(B)は、以下を接触させることによって得られるメタロセン触媒システムの存在下にモノマー(ら)を重合させることによって得ることができる:
-立体剛性メタロセン化合物;
-アルモキサンまたはアルキルメタロセンカチオンを形成し得る化合物;および任意選択的に、
-有機アルミニウム化合物。
【0044】
好ましくは、立体剛性メタロセン化合物は、下記化学式(I)に属する:
【化1】
ここで:
Mは、4族に属するものから選択される遷移金属の原子であり;好ましくは、Mは、ジルコニウムであり;
Xは、互いに同一であるか、異なり、水素原子、ハロゲン原子、R、OR、OR’O、OSO
2CF
3、OCOR、SR、NR
2またはPR
2基であり、ここでRは、元素周期律表の13~17族に属するヘテロ原子を任意選択的に含む、直鎖状もしくは分岐状の、飽和もしくは不飽和のC
1-C
20-アルキル、C
3-C
20-シクロアルキル、C
6-C
20-アリール、C
7-C
20-アルキルアリールまたはC
7-C
20-アリールアルキルラジカルであり、R’は、C
1-C
20-アルキリデン、C
6-C
20-アリーリデン、C
7-C
20-アルキルアリーリデン、またはC
7-C
20アリールアルキリデンラジカルであり;好ましくは、Xは、水素原子、ハロゲン原子、OR’OまたはR基であり;より好ましくは、Xは、塩素またはメチルラジカルであり;
R
1、R
2、R
5、R
6、R
7、R
8およびR
9は、互いに同一であるか、異なり、水素原子、または元素周期律表の13~17族に属するヘテロ原子を任意選択的に含む、直鎖状もしくは分岐状の、飽和もしくは不飽和のC
1-C
20-アルキル、C
3-C
20-シクロアルキル、C
6-C
20-アリール、C
7-C
20-アルキルアリールまたはC
7-C
20-アリールアルキルラジカルであるか;もしくはR
5およびR
6、および/またはR
8およびR
9は、飽和または不飽和の5員または6員環を選択的に形成することができ、前記環は、C
1-C
20-アルキルラジカルを置換基として有することができ;ただし、R
6またはR
7のうち、少なくとも1つは、元素周期律表の13~17族に属するヘテロ原子を選択的に含む、直鎖状もしくは分岐状の、飽和または不飽和のC
1-C
20-アルキルラジカルであり;好ましくは、C
1-C
10-アルキルラジカルであり;
R
3およびR
4は、互いに同一であるか、異なり、元素周期律表の13~17族に属するヘテロ原子を任意選択的に含む、直鎖状もしくは分岐状の、飽和もしくは不飽和のC
1-C
20-アルキルであり;好ましくは、R
3およびR
4は、互いに同一であるか、異なり、C
1-C
10-アルキルラジカルであり;より好ましくは、R
3は、メチル、またはエチルラジカルであり;R
4は、メチル、エチルまたはイソプロピルラジカルである。
【0045】
好ましくは、化学式(I)の化合物は、次の化学式(Ia)を有する:
【化2】
ここで:
M、X、R
1、R
2、R
5、R
6、R
8およびR
9は、上記の通りであり;
R
3は、元素周期律表の13~17族に属するヘテロ原子を任意選択的に含む、直鎖状もしくは分岐状の、飽和もしくは不飽和のC
1-C
20-アルキルであり;好ましくは、R
3は、C
1-C
10-アルキルラジカルであり;より好ましくは、R
3は、メチル、またはエチルラジカルである。
【0046】
メタロセン化合物の具体例は、ジメチルシリル{(2,4,7-トリメチル-1-インデニル)-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b’]-ジチオフェン)}ジルコニウムジクロライド;ジメチルシランジイル{(1-(2,4,7-トリメチルインデニル)-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b’]-ジチオフェン)}ジルコニウムジクロライドおよびジメチルシランジイル{(1-(2,4,7-トリメチルインデニル)-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b’]-ジチオフェン)}ジルコニウムジメチルである。
【0047】
アルモキサンの例は、メチルアルモキサン(MAO)、テトラ-(イソブチル)アルモキサン(TIBAO)、テトラ-(2,4,4-トリメチル-ペンチル)アルモキサン(TIOAO)、テトラ-(2,3-ジメチルブチル)アルモキサン(TDMBAO)およびテトラ-(2,3,3-トリメチルブチル)アルモキサン(TTMBAO)である。
【0048】
アルキルメタロセンカチオンを形成することのできる化合物の例は、式D+E-の化合物であり、D+は、プロトンを提供することができ、化学式(I)のメタロセンの置換基Xと非可逆的に反応することのできるブレンステッド酸であり、E-は、両立可能なアニオンであり、これは、2つの化合物の反応に起因する活性触媒種を安定化がすることができ、オレフィン系モノマーによって除去され得る程度に十分に不安定である。好ましくは、アニオンE-は、1つ以上のホウ素原子を含む。
【0049】
有機アルミニウム化合物の例は、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)、トリス(2,4,4-トリメチル-ペンチル)アルミニウム(TIOA)、トリス(2,3-ジメチルブチル)アルミニウム(TDMBA)およびトリス(2,3,3-トリメチルブチル)アルミニウム(TTMBA)である。
【0050】
上記の触媒システムおよびかかる触媒システムを使用する重合プロセスの例は、WO2004099269およびWO2009000637に見出すことができる。
【0051】
上述の触媒の存在下に公知の重合条件下において操作することによって、本発明のブテン-1ポリマー成分(B)は、重合において直接製造することができる。
【0052】
ブテン-1ポリマー成分(B)が特に前述したブテン-1ポリマーBI)およびBII)を含む組成物(II)である場合、単一ポリマーは別途に製造した後、一軸および二軸押出機のような公知のポリマー処理装置を用いて溶融状態で一緒に混合することができる。
【0053】
しかし、重合プロセスは、直列に連結された2つ以上の反応器において実行される少なくとも2つの連続段階を含み得、ここでポリマー、特にBI)およびBII)は、第1段階を除いては、形成されたポリマーおよび以前の段階で使用された触媒の存在下に各々の段階で作動する別個の後続段階で製造される。
【0054】
重合プロセスは、任意選択的に不活性炭化水素溶媒の存在下に液相で、または気相で、流動床もしくは機械攪拌式気相反応器を使用して実行される。
【0055】
2つ以上の重合段階が実行される場合、触媒は、第1反応器にのみ、または1つ以上の反応器に添加することができる。
【0056】
炭化水素溶媒は、芳香族(例えば、トルエン)または脂肪族(例えば、プロパン、ヘキサン、ヘプタン、イソブタン、シクロヘキサンおよび2,2,4-トリメチルペンタン、イソドデカン)のいずれかであり得る。
【0057】
好ましくは、重合プロセスは、液状ブテン-1を重合媒体として使用することによって実行される。重合温度は、20℃~150℃、特に、50℃~90℃、例えば、65℃~82℃であり得る。
【0058】
重合反応時に、液相中の水素濃度(モルppmH2/ブテン-1モノマー)は、一般的に400ppm~950ppm、特に、450ppm~900ppmである。
【0059】
液相中のコモノマー、特に、エチレンの量は、コポリマーを製造するとき、重合反応器に存在するコモノマーおよびブテン-1モノマーの総重量に対して、0.1~8重量%、特に0.2~6重量%であり得る。
【0060】
本ポリオレフィン組成物は、次のように製造されることができる。ブテン-1ポリマー成分(B)は、純物な形態で、若しくは、好ましくは濃縮物の一部としてポリマー成分(A)と混合されることができ、この場合、成分(B)はポリマー成分(A)と同一でも異なってもよいプロピレンポリマー樹脂にあらかじめ分散されている。このように製造された濃縮物は、ポリマー成分(A)と混合される。
【0061】
混合段階は、従来の方法によって、たとえば、ポリマー成分(A)、ポリマー成分(B)またはその濃縮物、および周知の添加剤をヘンシェル(Henschel)ミキサーまたはバンバリー(Banbury)ミキサー等のブレンダーで混合して、ポリマーの軟化温度以上の温度で前記成分を均一に分散させた後、組成物を押出し、ペレット化を行う段階を通じて行うことができる。
【0062】
しかし、繊維の場合、前記成分(A)および(B)は、好ましくは、固体状態で混合した後、押出段階を必要とせずに、前記繊維を製造するために用いられる装置に所望の相対量で直接供給されることができる。
【0063】
ポリオレフィン組成物は、通常添加剤および/または過酸化物と共に、後者が所望するメルトフローレートを得るために必要な場合常に添加される。
【0064】
前記添加剤は、顔料、乳白剤、充填剤、安定剤、難燃剤、制酸剤、および増白剤などのポリオレフィンポリマー用の一般的な添加剤を含む。
【0065】
本発明のポリオレフィン組成物を含む繊維またはフィラメントは、当業界においてよく知られているプロセスおよび装置を用いて製造されることができ、すなわち、単一または複合繊維若しくはフィラメントを製造するのに好適な従来の装置でポリオレフィン組成物を溶融紡糸することで製造することができる。
【0066】
他の実施形態によれば、複合繊維またはフィラメントは、「スキン・コア構造」(skin-core structure)を有することができる。
【0067】
本明細書で「スキン・コア構造を有する繊維またはフィラメント」とは、軸方向に延びる界面を有し、少なくとも2つの成分、すなわち内側コアおよび少なくとも外側スキンを含む繊維またはフィラメントであって、前記少なくとも2つの成分は、異なるポリマー材料を含み、軸方向に延びる界面に沿って結合される繊維またはフィラメントを意味する。スキン・コア繊維またはフィラメントでは、スキンの厚さが均一であってもよく、あるいはスキンの厚さが繊維またはフィラメント断面の周りにおいて不均一であってもよい。
【0068】
スキン・コア構造を有する前記繊維またはフィラメントは、偏心または同心の環状ダイを備えた通常の溶融紡糸装置を用いて製造することができる。本発明のポリオレフィン組成物は、スキン・コア構造を有する繊維またはフィラメントの外側スキンの製造に簡便に使用できる。内側コアは、複合繊維またはフィラメントの所望の最終特性によってスパンボンド用に一般的に使用される任意のポリマー材料を含むことができる。好ましくは、スキン・コア繊維またはフィラメントは、前記繊維またはフィラメントの総重量に対してて、コア層を形成するポリマー50~80重量%、より好ましくは、55~75重量%、および本発明のポリオレフィン組成物を含み、前記外側スキン層を形成するポリマー材料20~50重量、より好ましくは25~45重量%を含む。
【0069】
あるいは、複合繊維またはフィラメントは、「サイドバイサイド構造」(side-by-side structure)を有することができる。
【0070】
本明細書で「サイドバイサイド構造を有する繊維またはフィラメント」とは、前記少なくとも2つの繊維成分がスキン・コア構造のように一つが他方の内側に配列されておらず、かえって繊維またはフィラメントの側面に隣接する部分に配列されている繊維またはフィラメントを意味する。
【0071】
前記複合繊維、内側コアまたはサイドバイサイド構造において、本発明のポリオレフィン組成物を含有しない繊維成分または成分は、本発明のポリオレフィン組成物を含有するスキンに、あるいは他の繊維成分または成分に存在する特定の成分(A)と同一または異なる成分(A)の同一のホモポリマーまたはコポリマーから選択される、プロピレンポリマーからなるか、またはこれを含むことができる。
【0072】
いくつかの実施形態において、前記繊維は10~50μmの直径を有することができる。
【0073】
前記繊維または該繊維で製造された物品は、公知の方法によって製造される。特に、本発明の織物は、スパンボンド不織布を製造するための周知のプロセスによって製造でき、ここで前記繊維が広げられて直接ファイバーウェブを形成しカレンダリングをして不織布を得る。
【0074】
典型的なスパンボンドプロセスでは、ポリマーを押出機でポリオレフィン組成物の融点まで加熱した後、溶融されたポリオレフィン組成物を所望する直径の多数のオリフィスを含む紡糸口金を介して加圧下でポンプすることで、次の延伸を行うことなく溶融ポリマー組成物のフィラメントを生成する。
【0075】
その装備は、紡糸ヘッドにダイを備える押出機、冷却塔、ベンチュリ管を使用する空気吸引収集装置を含むことを特徴とする。
【0076】
空気速度を利用してフィラメント速度を制御するこの装置の下部に、フィラメントは通常コンベヤベルト上に収集され、ここでフィラメントは周知の方法によって分散されてウェブを形成する。
【0077】
一般的なスパンボンド機を使用する場合、通常的に次のようなプロセス条件を適用することが便利である:
-ホール当たり出力は、0.3~0.8g/分、好ましくは0.4~0.6g/分の範囲である;
-紡糸口金の表面から供給された溶融ポリマーフィラメントは、一般的に空気流れによって冷却され、冷却の結果として固化される;
-紡糸温度は、一般的に200~300℃である。
【0078】
次に、フィラメントはコンベヤベルトによって熱接着段階に移り、熱接着段階は、2つの加熱されたロールによってカランダリングをすることで行われる。
【0079】
本繊維またはフィラメントを用いる場合、前記機械的特性の高いバランスは、相対的に低い熱接着温度、好ましくは120℃~170℃で達成される。
【0080】
織物は単層または多層の不織布で構成されることができる。
望ましい実施形態において、不織布は多層であり、少なくとも一つの層は、前記ポリオレフィン組成物からなる繊維を含む。他の層は、スパンボンド以外の紡糸プロセスによって得られることができ、他の類型のポリマーを含むことができる。
【0081】
一実施形態において、不織布は平方メートル当たり10~120g、好ましくは平方メートル当たり20~110、より好ましくは平方メートル当たり30~100gの密度を有する。
【0082】
不織布の強靭度および破断伸度は、それぞれ10~200N/cmおよび25%~150%の範囲であることができる。
実施例
【0083】
本明細書において提供されるような様々な実施形態、組成物および方法は、以下の実施例で説明する。これら実施例は、単に例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0084】
以下の分析方法は、ポリマー組成物および不織布を特性化するのに使用される。
【0085】
熱特性(溶融温度およびエンタルピー)
【0086】
以下に記述するように、Perkin Elmer DSC-7装置を使用する示差走査熱量計(D.S.C.)によって決定した。
-TmII(第2加熱操作で測定した溶融温度)の決定のために、重合から得られる秤量した試料(5~10mg)をアルミニウムパン中に密封し、10℃/分に相応する走査速度で200℃において加熱した。試料を200℃で5分間維持し、すべての結晶体を完全に溶融させ、試料の熱履歴を消去した。次いで、10℃/分に相応する走査速度で-20℃まで冷却させた後、ピーク温度を結晶温度(Tc)として採用した。-20℃で5分間放置した後、試料を10℃/分に相応する走査速度で200℃において再度加熱をした。この2度目の加熱操作で、測定したピーク温度を(TmII)として採用した。1つ以上のピークが存在すれば、最も高い(最も強い)ピークをTmIIとして採用した。ピーク(またはピークら)下の面積は、全体溶融エンタルピー(DH TmII)として採用した。
-溶融エンタルピーおよび溶融温度は、Perkin Elmer DSC-7装置を使用する示差走査熱量計(D.S.C.)によって次のようにエージングなしで(熱履歴を消去せず)測定した。重合から得られる秤量した試料(5~10mg)をアルミニウムパン中に密封し、10℃/分に相応する走査速度で200℃において加熱した。試料を200℃で5分間維持し、すべての結晶体を完全に溶融させた。次いで、試料を室温で10日間保存した。10日後、試料をDSCに供して-20℃まで冷却した後、10℃/分に相応する走査速度で200℃において加熱した。この加熱操作において、ピーク温度を溶融温度(TmI)として採用した。1つ以上のピークが存在すれば、最も高い(最も強い)ピークをTmIとして採用した。ピーク(またはピークら)下の面積は、10日後、全体溶融エンタルピー(DH TmI)として採用した。
【0087】
MFR
【0088】
MFREに対し190℃で2.16kgの荷重(標準ダイ)で、MFRLに対し230℃で2.16kgの荷重で、標準ISO 1133-2:2011にしたがって決定した。
【0089】
固有粘度
【0090】
135℃でテトラヒドロナフタレン中で標準ASTM D 2857-16にしたがって決定した。
【0091】
密度
【0092】
試料の密度は、23℃においてISO 1183-1:2012(ISO 1183-1方法A「非-細胞性プラスチックの密度を測定する方法-パート1:浸漬法、液体比重計法および滴定法」;方法A:ボイドのない形態の固体プラスチック(粉末を除く)の浸漬法)にしたがって測定した。試験片を密度測定を実行する前に10日間コンディショニングされた圧縮成形プラークから採取した。
【0093】
コモノマー含量
【0094】
コモノマーの含量は、FT-IRを介して決定した。
【0095】
ポリマーの圧縮フィルムのスペクトルを吸光度対波数(cm-1)で記録した。以下の測定を使用し、エチレン含量を計算した:
a)フィルム厚さの分光標準化に使用される、4482~3950cm-1の組み合わせ吸収バンドの面積(At)。
b)メチレン基のシーケンスBEEとBEB(B:1,ブテン単位、E:エチレン単位)(CH2ロッキング振動)による吸収バンドとポリマー試料のスペクトル間のデジタル減算の減算係数(FCRC2)。
c)C2PBスペクトルを減算した後、残余バンドの面積(AC2,ブロック)。これは、メチレン基のシーケンスEEE(CH2ロッキング振動)に由来する。
【0096】
装置
【0097】
上記報告された分光測定値を提供することのできるフーリエ変換赤外分光計(FTIR)を使用した。
【0098】
200℃まで加熱可能なプラテンを有する油圧プレス(Carverまたは同等品)を使用した。
【0099】
方法
【0100】
(BEB+BEE)シーケンスの較正
【0101】
較正直線は、%(BEB+BEE)wt対FCRC2/Atをプロットして得られる。傾斜度Grおよび切片Irは、線形回帰から計算される。
【0102】
EEEシーケンスの較正
【0103】
%(EEE)wt対AC2,ブロック/Atをプロットして較正直線が得られる。傾斜GHおよび切片IHは、線形回帰から計算される。
【0104】
試料準備
【0105】
油圧プレスを使用し、2つのアルミニウムホイル間に約g1.5の試料をプレスして厚いシートを得る。均質性が問題であれば、少なくとも2回のプレス操作が推奨される。このシートから小さい部分を切断してフィルムを成形する。推奨されるフィルム厚さは、0.1~0.3mmの範囲である。
【0106】
プレス温度は140±10℃である。
【0107】
結晶相の変形は、時間の経過とともに起こるため、試料フィルムを成形する直後に、試料フィルムのIRスペクトルを収集することが推奨される。
【0108】
手順
【0109】
機器データ収集パラメータは、次の通りである:
パージ時間:最小30秒。
収集時間:最小3分。
アポダイゼーション:Happ-Genzel。
分解能:2cm-1。
試料対空気背景のIRスペクトルを収集する。
【0110】
計算
【0111】
エチレン単位のBEE+BEBシーケンスの重量当たりの濃度を計算する。
【数1】
【0112】
残余バンドのショルダー間の基準線を使用して上述の減算後に残余面積(AC2,ブロック)を計算する。
【0113】
エチレン単位のEEEシーケンスの重量当たりの濃度を計算する。
【数2】
【0114】
【0115】
鎖構造のNMR分析
【0116】
13C NMRスペクトルは、120℃でフーリエ変換モードで150.91 MHzで作動する低温プローブを具備したBruker AV-600分光器で獲得した。
【0117】
Tβδ炭素(C.J.Carman,R.A.Harrington and C. E. Wilkes, Macromolecules, 10, 3, 536(1977)による命名法)のピークは、37.24ppmで内部基準として使用された。試料を1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2に120℃において8%(wt/v)濃度で溶解させた。各スペクトルは、1H-13C結合を除去するためにパルスとCPD間に15秒の遅延、90°パルスで獲得した。約512個のトランジェントが9000 Hzのスペクトルウインドウを使用して32Kデータポイントに貯蔵された。
【0118】
スペクトルの割り当て、トライアッド分布の評価および組成は、以下を使用してKakugo[M. Kakugo, Y. Naito, K. Mizunuma and T. Miyatake, Macromolecules, 16,
4, 1160(1982)]およびRandall [J. C. Randall, Macromol. Chem Phys., C30, 211(1989)]にしたがって行った。
BBB = 100 (T
ββ)/S = I5
BBE = 100T
βδ/S = I4
EBE = 100 P
δδ /S = I14
BEB = 100 S
ββ/S = I13
BEE= 100 S
αδ/S = I7
EEE = 100(0.25 S
γδ+0.5 S
δδ)/S = 0.25 I9+ 0.5I10
【表1】
【0119】
最初の近似値に対して、mmmmは、次のように2B2炭素を使用して計算された。
【表2】
【0120】
GPCによるMw/MnおよびMz決定
【0121】
1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)中にゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した。すべての試料に対する分子量パラメータ(Mn、Mw、Mz)および分子量分布Mw/Mnは、4つのPLgel Olexis混合床(Polymer Laboratories)およびIR5赤外線検出器(PolymerChar)のカラムセットを具備したPolymerCharによってGPC-IR装置を使用して測定した。カラムの寸法は、300×7.5mmであり、その粒径は、13μmであった。移動相流量を1.0mL/分で維持させた。すべての測定は、150℃で実行した。溶液濃度は、2.0mg/mL(150℃において)であり、分解を防止するために0.3g/Lの2,6-ジタールブチル-p-クレゾールを添加した。GPC計算のため、PolymerChar(266~1220000範囲のピーク分子量)によって提供される12個のポリスチレン(PS)標準試料を使用して汎用較正曲線を得た。3次多項式フィットを使用して実験データを補間し、関連する較正曲線を得た。データ収集および処理は、Empower3(Waters)を使用して実行した。Mark-Houwink関係を使用して分子量分布および関連平均分子量を決定した:PSおよびポリブテン(PB)のK値は、各々KPS=1.21×10-4dL/gおよびKPB=1.78×10-4dL/gであり、反面、Mark-Houwink指数は、PSの場合α=0.706であり、PBの場合α=0.725であった。
【0122】
ブテン/エチレンコポリマーの場合、データ評価に関する限り、各試料に対し、組成が分子量の全体範囲において一定であり、Mark-Houwink関係式のK値は、以下に報告される線形組み合わせを使用して計算されるものと仮定した。
【数4】
ここでK
EBは、コポリマーの定数であり、K
PE(4.06×10
-4,dL/g)およびK
PB(1.78×10
-4dL/g)は、ポリエチレン(PE)およびPBの定数であり、x
Eおよびx
Bはエチレンおよびブテン重量相対量x
E+x
B=1である。Mark-Houwink指数α=0.725は、すべてのブテン/エチレンコポリマーに、これらの組成に関して独立的に使用された。最終処理データの管理は、すべての試料に対して分子量換算で1000の画分を含むように固定した。1000未満の画分をGCを介して調査した。
【0123】
-0℃(XS-0℃)でキシレン中の可溶性および不溶性画分
【0124】
2.5gのポリマー組成物および250cm3のキシレンを冷蔵庫および磁性攪拌機が具備されたガラスフラスコに導入した。温度は、溶媒の沸騰点まで30分内に上昇させる。次いで、このように得られた透明な溶液を還流下に維持し、さらに30分間撹拌する。次いで、密閉されたフラスコを空気中に100℃で10~15分間攪拌した後、60分間0℃の恒温水槽で30分間維持する。このように形成された固体を0℃で迅速濾過紙上で濾過する。濾過された液体100cm3を予め秤量したアルミニウム容器に注ぎ、窒素流下で加熱板上で加熱して蒸発させ、溶媒を除去した。したがって、残渣の平均重量からポリマー可溶性(キシレン可溶分0℃=XS0℃)の重量%を計算する。0℃でo-キシレン中、不溶性画分(0℃でキシレン不溶分=XI%0℃)は、以下の通りである:
XI%0℃=100-XS%0℃。
【0125】
25℃(XS-25℃)でo-キシレン中の可溶性および不溶性画分
【0126】
2.5gのポリマーを250mlのキシレンに135℃で撹拌しながら溶解させる。20分後、溶液を撹拌しながら25℃に冷却させた後、30分間沈殿させる。沈殿物をろ過紙でろ過し;溶液を窒素気流の下に蒸発させ、残渣を一定の重量となるまで80℃で真空下で乾燥させる。したがって、残渣からポリマー可溶性(キシレン可溶分25℃=XS 25℃)の重量%を計算する。0℃でo-キシレン中、不溶性画分(25℃でキシレン不溶分=XI 25℃)は、以下の通りである:
XI%25°C = 100- XS%25°C
【0127】
周囲温度(25℃)でキシレンに不溶性のポリマーの重量%は、ポリマーのアイソタクチック指数と見なされる。この値は、沸騰n-ヘプタンを用いた抽出によって決められたアイソタクチック指数と実質的に対応し、定義上、ポリプロピレンのアイソタクチック指数を構成する。
【0128】
X線結晶性の決定
【0129】
スリットを固定したCu-Kα1放射線を使用するX線回折粉末測定器(XDPD)でX線結晶性を測定した。毎6秒に0.1°段階で回折角2θ=5°および2θ=35°間のスペクトルを収集することができた。
試料は、圧縮成形によって製造した約1.5~2.5mm厚さおよび2.5~4.0cm直径のディスケットである。ディスケットを室温(23℃)で96時間の間エージングした。
このような準備後に、試料をDPD試料ホルダーに挿入する。回折角2θ=5°から2θ=35°まで0.1°段階で6秒の計数時間を使用して試料のXRPDスペクトルを収集し、最後には、最終スペクトルが収集されるようにXRPD装置を設定した。
Taをカウント/秒・2θで表されるスペクトルプロファイルと基準線間の総面積として定義し、総非結晶領域としてAaをカウント/秒・2θで表す。Caは、カウント/秒・2θで表される総結晶領域である。
スペクトルまたは回折パターンは、次の段階で分析される:
1)全体スペクトルに適した線形基準線を定義し、スペクトルプロファイルと基準線間の総面積(Ta)を計算する;
2)2つの位相モデルによって非結晶領域と結晶領域を分離する全体スペクトルにしたがって適した非結晶プロファイルを定義する;
3)非結晶プロファイルと基準線間の領域として非結晶領域(Aa)を計算する;
4)スペクトルプロファイルと非結晶プロファイル間の領域として結晶領域(Ca)をCa=Ta-Aaとして計算する、
5)下記式を使用して試料の結晶性(%Cr)を計算する:
%Cr = 100 x Ca / Ta
【0130】
曲げ弾性率
【0131】
標準ISO 178:2010にしたがって、成形後10日間測定する。
【0132】
ショアD
【0133】
標準ISO 868:2003にしたがって、成形後10日間測定する。
【0134】
引張応力および破断伸度
【0135】
成形後10日目に圧縮成形プラークに対し、標準ISO 527-1:2012にしたがって測定した。
【0136】
DMTA(動的機械的熱分析)を介するガラス転移温度¥p76mm×13mm×1mmの成形試料を引張応力のためにDMTA機械に固定する。試料の引張周波数と依存度は、1Hzで固定される。DMTAは、-100℃から始まって130℃まで試料の弾性応答を解釈する。このようにして、弾性応答対温度をプロットすることが可能である。粘弾性材料に対する弾性係数は、E=E’+iE”で定義される。DMTAは、2つの成分E’とE”をこれらの共鳴によって分割し、E’対温度、およびE’/E”=tan(δ)対温度にプロットする。
ガラス転移温度Tgは、曲線E’/E”=tan(δ)対温度の最大値における温度とする。
【0137】
黄色指数
【0138】
ASTM D1925にしたがって決定した。
【0139】
不織布の強靭度および破断伸度
【0140】
大きさ50mm、長さ約100mmの試験片は、スパンボンドコンベヤベルトの移動方向に対応する機械方向(MD)または機械方向に垂直な横方向(TD)へと、より長辺で不織布を切断することで得られる。試料の反対側の2つの50mmの側面はインストロンの動力計(1122型)のクランプに固定し、100mm/分の牽引速度で破損するように引張し、クランプ間の初期距離は100mmである。最大強度(破断荷重)および破断伸度を決定する。50mmで割った最終強度は、試料の強度として採用される。
【0141】
強靭度および伸度はいずれもそれぞれ切断された試験片を用いてMDおよびTDで測定する。
【0142】
実施例および比較例で使用されたポリマー成分
【0143】
成分(A)
【0144】
ポリマー成分(A)として、25g/10分のMFRL、0.9g/cm3の密度および25℃でキシレンに不溶性の分画の重量%で測定したとき、97のアイソタクチック指数を有するアイソタクチックプロビレンホモポリマーを使用した。
【0145】
成分(B)
【0146】
ポリマー成分(B)として、42重量%のBI)および58重量%のBII)を含有する組成物(II)を用いて次のように製造した。
【0147】
メタロセン触媒(A-1)の製造
【0148】
ジメチルシリル{(2,4,7-トリメチル-1-インデニル)-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b’]-ジチオフェン)}ジルコニウムジクロライド(A-1)は、WO0147939の実施例32にしたがって製造した。
【0149】
触媒溶液の製造
【0150】
窒素雰囲気下に、イソドデカン中の、4.5%wt/vのTIBA(1.84モルのTIBA)の溶液8.1Lおよびトルエン中、30%wt/wtのMAO(3.65モルのMAO)の溶液760mLをアンカー攪拌機が装着された20Lジャケットガラス反応器に充填し、攪拌下に室温で約1時間反応させた。
【0151】
この時間後、メタロセンA-1(1.6g,2.75mmol)を添加して攪拌しながら、約30分間溶解させた。
【0152】
最終溶液は、固形残渣(存在する場合)を除去するためにフィルタを通って反応器からシリンダーに排出された。
【0153】
【0154】
重合
【0155】
重合は、液体ブテン-1が液体媒体を構成する直列に連結された2つの撹拌反応器を含むパイロットプラントで連続的に実行された。
【0156】
触媒溶液は、2つの反応器両方に供給した。
【0157】
【0158】
表2において最終組成物(II)の性質が明示される。
【表5】
【0159】
実施例1~6および比較例1~4:不織布の製造
【0160】
同心のスキン・コア複合フィラメントで製造された不織布を用意した。
【0161】
実施例1~8において、スキンは表3および表4に報告されている相対量で固体状態の成分(A)および(B)を機械的に混合することで得られたポリオレフィン組成物により製造した。
【0162】
比較例1~4において、スキンは成分(A)のみで製造した。
【0163】
すべての実施例において、コアは成分(A)のみで製造した。
【0164】
ポリマー材料、すなわち、成分(A)および(B)、あるいはフィラメントスキンの場合、成分(A)のみを、そしてフィラメントコアの場合、成分(A)を含むポリオレフィン組成物をReicofil 4スパンボンドパイロットラインに供給し、次の設定および動作条件で実行した。
● コア/スキン70/30(全体直径:0.6mm);
● 線速度(m/分):214(17gsm*)-73(50gsm);
● 紡糸口金:7377ホール(6827ホール/m);
● ギャップ・プレディフューザー(出口):23mm;
● 2次エアギャップ-右側/左側:14mm;
● ギャップ・ディフューザー出口:75mm;
● ベルト右側/左側の距離:131mm。
*gsm=平方メートル当たりグラム
【0165】
熱接着は、表3に報告されている温度でホットロールで行った。
【0166】
従って、コア70%とスキン30%の重量比で、密度が平方メートル当たり17または50g(gsm)である同心のコア・スキン構造を有する複合フィラメントで作られた不織布。
【0167】
不織布の機械的特性も表3および表4に報告されている。
【表6】
【表7】
【表8】