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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフィー用部材
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/60 20060101AFI20220530BHJP
【FI】
G01N30/60 B
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021575898
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2021012835
(87)【国際公開番号】W WO2021193912
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2020058423
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根本 有理子
(72)【発明者】
【氏名】梅津 美奈
(72)【発明者】
【氏名】太平 博暁
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-538376(JP,A)
【文献】特開平06-063130(JP,A)
【文献】特開2019-032346(JP,A)
【文献】特表平10-501335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/281-20/292
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体クロマトグラフィー用部材であって、
充填剤が充填された分析用カラム、
通液入口、ならびに
該充填剤の上流かつ該通液入口の下流に配置された第1のフィルタ、
を備え、
該第1のフィルタと該通液入口との間の空間の体積は7~50mm3であり、かつ該第1のフィルタから該通液入口までの距離は0.6~2.0mmである、
液体クロマトグラフィー用部材。
【請求項2】
前記充填剤の上流かつ前記第1のフィルタの下流に第2のフィルタを備える、請求項1記載の液体クロマトグラフィー用部材。
【請求項3】
前記第1のフィルタと前記第2のフィルタとの間の空間の体積は1~50mm3であり、かつ該第1のフィルタから該第2のフィルタまでの距離は0.1~1.5mmである、請求項2記載の液体クロマトグラフィー用部材。
【請求項4】
記第1のフィルタと前記第2のフィルタの間に通液を分散させるためのディストリビュータをさらに備える、請求項2又は3記載の液体クロマトグラフィー用部材。
【請求項5】
前記第1のフィルタと前記第2フィルタとの間にスペーサを備える、請求項2~4のいずれか1項記載の液体クロマトグラフィー用部材。
【請求項6】
前記スペーサがポリエーテルエーテルケトン製である、請求項5記載の液体クロマトグラフィー用部材。
【請求項7】
前記第1のフィルタの上流に通液を分散させるためのディストリビュータをさらに備える、請求項1記載の液体クロマトグラフィー用部材。
【請求項8】
前記充填剤は、平均粒径が2~20μmの粒子であり、かつ、
前記第1のフィルタは、濾過粒度が、該充填剤粒子の平均粒径の1/6~1/3であり、空隙率が60~90%であり、有効濾過面積が15~60mm2である、
請求項1~のいずれか1項記載の液体クロマトグラフィー用部材。
【請求項9】
液体クロマトグラフィー用部材における通液圧力の上昇を低減する方法であって、
該液体クロマトグラフィー用部材は、充填剤が充填された分析用カラムと、通液入口と、該充填剤の上流かつ該通液入口の下流に配置された第1のフィルタを備え、
該方法は、該第1のフィルタと該通液入口との間の空間の体積が7~50mm3であり、かつ該第1のフィルタから該通液入口までの距離が0.6~2.0mmとなるように、該第1のフィルタを配置することを含む、
方法。
【請求項10】
前記充填剤の上流かつ前記第1のフィルタの下流に第2のフィルタを配置することをさらに含む、請求項記載の方法。
【請求項11】
前記第1のフィルタと前記第2のフィルタとの間の空間の体積が1~50mm3であり、かつ該第1のフィルタから該第2のフィルタまでの距離が0.1~1.5mmである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
記第1のフィルタと前記第2のフィルタの間に、通液を分散させるためのディストリビュータを配置することをさらに含む、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
前記第1のフィルタと前記第2フィルタとをスペーサを介して配置する、請求項10~12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記スペーサがポリエーテルエーテルケトン製である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記第1のフィルタの上流に通液を分散させるためのディストリビュータを配置することをさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項16】
前記充填剤は、平均粒径が2~20μmの粒子であり、かつ、
前記第1のフィルタは、濾過粒度が、該充填剤粒子の平均粒径の1/6~1/3であり、空隙率が60~90%であり、有効濾過面積が15~60mm2である、
請求項9~15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
請求項1~のいずれか1項記載の液体クロマトグラフィー用部材を備える、液体クロマトグラフィー分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフィー用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化学、生化学、医学などの分野において、検体中の成分の分析に液体クロマトグラフィーが汎用されている。例えば、医学の分野では、糖尿病診断の指標となるヘモグロビンA1cの分析に液体クロマトグラフィーが利用されている。ヘモグロビンA1cは、血中の糖とヘモグロビンが結合した糖化ヘモグロビンである。血中ヘモグロビンA1c濃度(%)、すなわち血中全ヘモグロビン中のヘモグロビンA1cの割合は、過去1~2ヶ月での血糖値の平均を反映し、糖尿病診断の指標として広く用いられている。
【0003】
液体クロマトグラフィー装置への通液には、検体、反応試薬、移動相、又は該装置の一部に由来する異物が含まれていることがある。これらの異物は、該装置の分析用カラムに充填されている充填剤粒子の表面に吸着したり、検出器のセルに吸着したりして、分析に悪影響を及ぼす可能性がある。特に、多数の検体を連続分析する場合や、血液検体のような異物を多く含む検体を分析する場合には、異物の悪影響が問題になりやすい。
【0004】
そのため、液体クロマトグラフィー装置の検体注入部から分析用カラムに至る流路に、異物を濾過するためのフィルタが設置されることがある。このようなフィルタは、流路、特にカラムが異物で詰まり、通液圧力が変動することを防止するために設置される。とりわけ、カラムの上流に設置されるプレフィルタは、異物によるカラム詰まりの防止に重要である。しかし、異物をより効率的に捕捉するためにフィルタの濾過効率を上げると、フィルタが異物で詰まりやすくなり、結果としてやはり通液圧力が変動することがある。通液圧力の変動は、検体の分析に悪影響を及ぼし得る。
【0005】
一般的に、フィルタ詰まりによる通液圧力の上昇を抑える方法としては、フィルタの濾過面積を大きくする方法、フィルタの空隙率を大きくする方法、複数のフィルタを用いる等のフィルタの構成を改良する方法、などがある。例えば、特許文献1には、カラム上流に孔径の異なる複数のフィルタを積層したものを装備した液体クロマトグラフィー部材が開示されている。特許文献2には、充填剤粒子が充填されたカラムとプレフィルタとを備え、該充填剤粒子は平均粒径が2~20μmであり、かつ、該プレフィルタは濾過粒度が該充填剤粒子の平均粒径の1/6~1/3で、有効濾過面積が7~80mmである、液体クロマトグラフィー用部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平02-262054号公報
【文献】国際公開公報第2009/123199号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、検体の分析に繰り返し使用することによる通液圧力の上昇が抑制されている、耐久性の高い液体クロマトグラフィー用部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、分析用カラムの充填剤の上流にフィルタを有し、かつ該フィルタの上流の空間の体積を適切な範囲に調整した液体クロマトグラフィー用部材が、繰り返し使用による通液圧力の上昇を抑制できることを見出した。
【0009】
したがって、本発明は以下を提供する。
〔1〕液体クロマトグラフィー用部材であって、
充填剤が充填された分析用カラム、
通液入口、ならびに
該充填剤の上流かつ該通液入口の下流に配置された第1のフィルタ、
を備え、
該第1のフィルタと該通液入口との間の空間の体積は7~50mm3であり、かつ該第1のフィルタから該通液入口までの距離は0.6~2.0mmである、
液体クロマトグラフィー用部材。
〔2〕前記充填剤の上流かつ前記第1のフィルタの下流に第2のフィルタを備える、〔1〕記載の液体クロマトグラフィー用部材。
〔3〕前記第1のフィルタと前記第2のフィルタとの間の空間の体積は1~50mm3であり、かつ該第1のフィルタから該第2のフィルタまでの距離は0.1~1.5mmである、〔2〕記載の液体クロマトグラフィー用部材。
〔4〕前記第1のフィルタの上流、又は前記第1のフィルタと前記第2のフィルタの間に通液を分散させるためのディストリビュータをさらに備える、〔1〕~〔3〕のいずれか1項記載の液体クロマトグラフィー用部材。
〔5〕前記第1のフィルタと前記第2フィルタとの間にスペーサを備える、〔2〕~〔4〕のいずれか1項記載の液体クロマトグラフィー用部材。
〔6〕前記スペーサがポリエーテルエーテルケトン製である、〔5〕記載の液体クロマトグラフィー用部材。
〔7〕前記充填剤は、平均粒径が2~20μmの粒子であり、かつ、
前記第1のフィルタは、濾過粒度が、該充填剤粒子の平均粒径の1/6~1/3であり、空隙率が60~90%であり、有効濾過面積が15~60mm2である、
〔1〕~〔6〕のいずれか1項記載の液体クロマトグラフィー用部材。
〔8〕液体クロマトグラフィー用部材における通液圧力の上昇を低減する方法であって、
該液体クロマトグラフィー用部材は、充填剤が充填された分析用カラムと、通液入口と、該充填剤の上流かつ該通液入口の下流に配置された第1のフィルタを備え、
該方法は、該第1のフィルタと該通液入口との間の空間の体積が7~50mm3であり、かつ該第1のフィルタから該通液入口までの距離が0.6~2.0mmとなるように、該第1のフィルタを配置することを含む、
方法。
〔9〕前記充填剤の上流かつ前記第1のフィルタの下流に第2のフィルタを配置することをさらに含む、〔8〕記載の方法。
〔10〕前記第1のフィルタと前記第2のフィルタとの間の空間の体積が1~50mm3であり、かつ該第1のフィルタから該第2のフィルタまでの距離が0.1~1.5mmである、〔9〕記載の方法。
〔11〕前記第1のフィルタの上流、又は前記第1のフィルタと前記第2のフィルタの間に、通液を分散させるためのディストリビュータを配置することをさらに含む、〔8〕~〔10〕のいずれか1項記載の方法。
〔12〕前記第1のフィルタと前記第2フィルタとをスペーサを介して配置する、〔9〕~〔11〕のいずれか1項記載の方法。
〔13〕前記スペーサがポリエーテルエーテルケトン製である、〔12〕記載の方法。
〔14〕前記充填剤は、平均粒径が2~20μmの粒子であり、かつ、
前記第1のフィルタは、濾過粒度が、該充填剤粒子の平均粒径の1/6~1/3であり、空隙率が60~90%であり、有効濾過面積が15~60mm2である、
〔8〕~〔13〕のいずれか1項記載の方法。
〔15〕〔1〕~〔7〕のいずれか1項記載の液体クロマトグラフィー用部材を備える、液体クロマトグラフィー分析装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液体クロマトグラフィー用部材は、検体の分析に繰り返し使用することによる通液圧力の上昇が抑制されているため、耐久性が高く、長寿命である。したがって本発明によれば、検体の液体クロマトグラフィー分析におけるカラム交換の手間やコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】液体クロマトグラフィー用部材の構造の模式図。
図2】液体クロマトグラフィー用部材における通液圧力の経時的変化。
【発明を実施するための形態】
【0012】
従来、ヘモグロビンA1cの液体クロマトグラフィー分析のために用いられる分析用カラムは、通常、1500検体から3000検体を分析するごとに交換される。特許文献2には、3000回連続使用しても通液圧力の変動がほとんど生じない液体クロマトグラフィー用部材が開示されている。しかしながら、分析効率の向上、及びカラムやフィルタの交換の手間やコストの低減のためには、液体クロマトグラフィー用部材におけるカラムやプレフィルタの耐久性のさらなる向上が求められる。
【0013】
本発明は、液体クロマトグラフィー用部材における、繰り返し使用に伴う通液圧力の上昇を抑制し、その耐久性を向上させる。また本発明は、耐久性が向上した液体クロマトグラフィー用部材を提供する。本発明の液体クロマトグラフィー用部材は、液体クロマトグラフィー装置の検体分離部として使用され得る。
【0014】
本発明の液体クロマトグラフィー用部材は、充填剤が充填された分析用カラムと、通液入口と、該充填剤の上流かつ該通液入口の下流に配置されたフィルタを備える。好ましくは、本発明の液体クロマトグラフィー用部材は、該充填剤の上流かつ該通液入口の下流に2枚のフィルタ(すなわち、第1のフィルタ及び第2のフィルタ)を備える。該第1のフィルタは、第2のフィルタの上流に位置する。本明細書において、液体クロマトグラフィー用部材に関して用いられる上流及び下流とは、該部材での通液の流れる方向を基準とする。すなわち、該部材における通液入口により近い側が、より上流側であり、通液の出口により近い側は、より下流である。したがって、本発明の液体クロマトグラフィー用部材に注入された通液は、通液入口を通過し、第1のフィルタ(存在する場合は、続いて第2のフィルタ)を通過し、次いで分析用カラム内の充填剤を通過した後、該部材から流出する。
【0015】
該分析用カラムは、内径が、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは3.0mm以上であり、かつ好ましくは6.0mm以下、より好ましくは5.5mm以下、さらに好ましくは5.0mm以下である。該カラムの内径が小さすぎると、該カラム内を流れる移動相の線速度が高くなりすぎて、通液圧力が高くなりすぎることがある。他方、該カラムの内径が大きすぎると、該カラム内で検体や移動相が拡散して分離性能が低下することがある。該カラムの内径は、好ましくは2.0~6.0mm、より好ましくは3.0~5.5mm、さらに好ましくは3.0~5.0mmの範囲である。
【0016】
該分析用カラムは、長さが、好ましくは10mm以上、より好ましくは15mm以上であり、かつ好ましくは150mm以下、より好ましくは50mm以下、さらに好ましくは40mm以下である。該カラムの長さが短すぎると、理論段数の低下に伴って、液体クロマトグラフィー用部材の分離性能が低下することがある。他方、該カラムの長さが長すぎると、検体の溶出に時間がかかって測定時間が長くなったり、通液圧力が高くなったりすることがある。該カラムの長さは、好ましくは10~150mm、より好ましくは10mm~50mm、さらに好ましくは10mm~40mm、さらに好ましくは15~40mmの範囲である。
【0017】
該分析用カラムに含まれる充填剤は、好ましくは粒子である。該充填剤粒子の平均粒径は、好ましくは2μm以上、より好ましくは6μm以上であり、かつ好ましくは20μm以下、より好ましくは12μm以下である。該充填剤粒子の平均粒径が小さすぎると、該カラムでの通液圧力が高くなりすぎて液体クロマトグラフィー部材への負荷が大きくなったり、クロマトグラフィー分析の精度又は効率が低下したりする。他方、該充填剤粒子の平均粒径が大きすぎると、液体クロマトグラフィー用部材の分離性能が低下する。該充填剤粒子の平均粒径は、好ましくは2~20μm、より好ましくは6~12μmの範囲である。本明細書において、粒子の平均粒径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、「AccuSizer780」;Particle Sizing Systems)で測定された平均粒径をいう。
【0018】
本発明の液体クロマトグラフィー用部材において、該第1及び第2のフィルタは、該分析用カラムの充填剤の上流に配置されたフィルタである。好ましくは、該第1及び第2のフィルタは、通液中の異物捕捉のためのフィルタであり、該充填剤への異物の侵入を防止し得る。
【0019】
該第1のフィルタは、好ましくは、その濾過粒度が、前述した充填剤粒子の平均粒径の1/6~1/3である。これにより、該第1のフィルタに捕捉されず通過する異物は、充填剤の間隙を通って該カラムを通過し得るので、異物によるカラム詰まりが抑制され得る。該第1のフィルタの濾過粒度が該充填剤粒子の平均粒径の1/6未満であると、該フィルタが詰まりやすくなる。他方、該第1のフィルタの濾過粒度が該充填剤粒子の平均粒径の1/3を超えると、該カラムが異物で詰まりやすくなる。より好ましくは、該第1のフィルタの濾過粒度は、該充填剤粒子の平均粒径の1/5~1/3である。
【0020】
本明細書において、フィルタの濾過粒度は、該フィルタで濾過されたときに、該フィルタへの捕捉率が95%以上である標準粒子の平均粒径として規定される。フィルタへの標準粒子の捕捉率は、以下の手順により算出される。
・フィルタを液体クロマトグラフィー装置に接続し、移動相として純水を送液する。標準粒子を、一般的な送液速度、例えば1.7mL/minで流し、得られるクロマトグラムのピーク面積(1)を算出する。ピーク面積(1)は、該フィルタで捕捉されずに通過した標準粒子の量を反映する。
・次に、該フィルタを配管に代え、同様の標準粒子検体を流し、得られるクロマトグラムのピーク面積(2)を算出する。ピーク面積(2)は、流した標準粒子の量を反映する。
・ピーク面積(1)及びピーク面積(2)から、以下の式により標準粒子の捕捉率(%)が算出される。
捕捉率(%)=100-(ピーク面積(1)/ピーク面積(2))×100
該標準粒子としては、市販の標準粒子(例えば、モリテックス社製のポリスチレン製標準粒子)を使用することができる。
【0021】
該第1のフィルタは、有効濾過面積が、好ましくは5mm2以上、より好ましくは15mm2以上、さらに好ましくは20mm2以上であり、かつ好ましくは60mm2以下、より好ましくは55mm2以下、さらに好ましくは30mm2以下である。該フィルタの有効濾過面積が小さすぎると、該フィルタが詰まりやすくなり、他方、該フィルタの有効濾過面積が大きすぎると、液体クロマトグラフィー用部材の分離性能が低下する。該第1のフィルタの有効濾過面積は、好ましくは5~60mm2、より好ましくは15~55mm2、さらに好ましくは20~30mm2の範囲である。
【0022】
該第1のフィルタは、空隙率が、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上であり、かつ好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。空隙率が低すぎると、該フィルタが詰まりやすくなる。他方、該フィルタの空隙率が高すぎると所望の濾過粒度が得られなくことがある。該第1のフィルタの空隙率は、好ましくは60~90%、より好ましくは65~80%の範囲である。
【0023】
一方、該第2のフィルタの濾過粒度、有効濾過面積、及び空隙率は、該第1のフィルタと同じであっても異なっていてもよい。該第2のフィルタにおける濾過粒度、有効濾過面積、及び空隙率の好ましい範囲は、該第1のフィルタと同様である。例えば、該第2のフィルタの濾過粒度は、好ましくは、該充填剤粒子の平均粒径の1/6~1/3、より好ましくは1/5~1/3であり、該第2のフィルタの有効濾過面積は、好ましくは5~60mm2、より好ましくは15~55mm2、さらに好ましくは20~30mm2の範囲であり、該第2のフィルタの空隙率は、好ましくは60~90%、より好ましくは65~80%の範囲である。
【0024】
該液体クロマトグラフィー用部材において、該第1のフィルタの上流、すなわち該第1のフィルタから該通液入口までの間には、空間が存在する。該液体クロマトグラフィー用部材内における、該第1のフィルタから該通液入口までの空間(以下、第1空間という)の体積は、好ましくは7mm3以上、より好ましくは10mm3以上であり、かつ好ましくは50mm3以下、より好ましくは30mm3以下である。また、第1のフィルタから該通液入口までの距離(第1のフィルタの濾過面と通液入口の下流端との最短距離、以下、第1空間長という)は、好ましくは0.6mm以上、より好ましくは0.7mm以上であり、かつ好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。該第1空間が小さすぎる又は第1空間長が短すぎる場合、通液圧力が高くなりすぎて液体クロマトグラフィー部材への負荷が大きくなったり、クロマトグラフィー分析の精度又は効率が低下したりする。他方、該第1空間が大きすぎる又は第1空間長が長すぎる場合、分析用カラムの分離性能が低下する。好ましくは、該第1空間の体積は、7~50mm3、より好ましくは10~30mm3の範囲である。好ましくは、該第1空間長は、0.6~2.0mm、より好ましくは0.7~1.5mmの範囲である。該第1空間体積及び第1空間長は、例えば、通液入口から第1のフィルタまでの間にスペーサ等を配置することによって該第1のフィルタの位置を調整することにより、調節することができる。好ましくは、該第1空間の形状は、一定の幅を有する筒状(例えば一定の内径を有する円筒状)であってもよいが、好ましくは、通液入口に向けて徐々に先細になるテーパー穴の形状である。あるいは、該円筒とテーパー穴の組み合わせであってもよい。
【0025】
該液体クロマトグラフィー用部材において、該通液入口は、該第1空間の上流端に位置する、該第1空間より幅狭い開口部であり得る。該第1空間がテーパー状の場合、該通液入口は、該テーパー先端の最も細い部分に位置し得る。該液体クロマトグラフィー用部材が外部からの通液注入のための注入路を有する場合、該通液入口は、該注入路の下流端であり得る。該通液入口の形状は、限定されないが、円形が好ましい。該通液入口のサイズは、限定されないが、大きすぎると分析用カラムの分離性能が低下し、小さすぎると通液圧力が上昇する。通液入口のサイズは、好ましくは最大幅(又は内径)0.1~2.0mm、より好ましくは0.3~1.0mmである。
【0026】
該液体クロマトグラフィー用部材が第2のフィルタを有する場合、該第1のフィルタと第2のフィルタは、接触していてもよいが、互いに離れて配置されていることが好ましい。該液体クロマトグラフィー用部材内における、該第1のフィルタと第2のフィルタとの間の空間(以下、第2空間という)の体積は、好ましくは1mm3以上、より好ましくは6mm3以上であり、かつ好ましくは50mm3以下、より好ましくは25mm3以下である。また、該第1のフィルタと第2のフィルタとの間の距離(2つのフィルタの濾過面間の最短距離、以下、第2空間長という)は、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上であり、かつ好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.0mm以下である。該第2空間が小さすぎる又は第2空間長が短すぎる場合、通液圧力が高くなりすぎて液体クロマトグラフィー部材への負荷が大きくなったり、クロマトグラフィー分析の精度又は効率が低下したりする可能性が高まる。他方、該第2空間が大きすぎる又は第2空間長が長すぎる場合、分析用カラムの分離性能が低下する。好ましくは、該第2空間の体積は、1~50mm3、より好ましくは6~25mm3の範囲である。好ましくは、該第2空間長は、0.1~1.5mm、より好ましくは0.3~1.0mmの範囲である。該第2空間体積及び第2空間長は、例えば、スペーサ等によって該第1及び第2のフィルタ間の距離を調整することにより、調節することができる。好ましくは、該第2空間の形状は、一定の幅を有する筒状であり、より好ましくは一定の内径を有する円筒状である。
【0027】
該液体クロマトグラフィー用部材において、該分析用カラムの充填剤の上流側及び下流側には、該カラムからの充填剤粒子の漏出を防止するためのフィルタが配置されていることが好ましい。好ましくは、該粒子漏出防止用フィルタは、該充填剤と直接、又はスペーサやシール部材等を介して接するように配置されている。また、該粒子漏出防止用フィルタは、該充填剤の上流側に配置されている場合、前述の第1又は第2のフィルタとして兼用されてもよい。
【0028】
前述した第1のフィルタ、第2のフィルタ、及び粒子漏出防止用フィルタの素材としては、例えば、液体クロマトグラフィー用フィルタに用いる公知のフィルタ素材が使用できる。フィルタ素材の例としては、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、鉄、クロム、スズ等の金属類;ステンレス等の合金類;ナイロン樹脂、フッ素樹脂、セルロース樹脂、スルホン樹脂、エーテルスルホン樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、ビニロン樹脂、カーボネート樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、エーテルエーテルケトン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノリル樹脂等の樹脂類;ジルコニア等のセラミック類;ホウ珪酸ガラス、石英ガラス等のガラス類、などが挙げられる。好ましいフィルタの例としては、特開2006-189427号公報に記載された孔径の異なる3層からなるステンレス製フィルタが挙げられる。これらのフィルタの濾過面の形状は、円形であっても、その他の形状でもよい。またこれらのフィルタの濾過面は、好ましくは平面である。
【0029】
前述した第1のフィルタ、第2のフィルタ、及び粒子漏出防止用フィルタの厚さは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上であり、かつ、好ましくは10mm以下、より好ましくは3mm以下である。フィルタが薄すぎると、該フィルタが詰まりやすくなり、他方、フィルタが厚すぎると、分析用カラムの分離性能が低下することがある。該フィルタの厚さは、好ましくは0.1~10mm、より好ましくは0.2~3mmの範囲である。
【0030】
通液入口と第1のフィルタの間、又は第1のフィルタと第2のフィルタとの間に配置され得るスペーサの素材の例としては、上述したフィルタ素材と同様のものが挙げられ、ステンレス(SUS)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが好ましく、PEEKがより好ましい。ただし、スペーサの素材はこれらの例に限定されず、当業者は任意の素材を選択することができる。スペーサ素材は、通液による圧力に耐え得る圧縮強さ(耐力)を有するものであることが好ましい。より好ましくは、スペーサ素材の耐力は、PTFEと同等以上であり、さらに好ましくはPEEKと同等以上である。なお、ステンレス(SUS)の耐力は、組成や表面仕上げ等により異なるが、例えば東洋サクセス株式会社のSUS316は205MPaである。また通常、PTFEの耐力は10~15MPa、PEEKの耐力は125MPa前後である。該スペーサは、O-リングなどの中空形状であることが好ましい。該スペーサのサイズは、フィルタのサイズ、及び所望する第1及び第2空間のサイズに応じて適宜変更可能である。
【0031】
該液体クロマトグラフィー用部材は、必要に応じて、第1のフィルタの上流、又は第1のフィルタと第2のフィルタとの間に、通液を分散させるための部品(ディストリビュータ)をさらに備えていてもよい。該ディストリビュータは、例えば多数の孔を有する板、網などであり得る。該ディストリビュータは、通液を分散させて、該第1のフィルタ又は第2のフィルタの濾過面への通液圧力を均質にすることができればよく、一方、通液中の異物を捕捉する機能を有している必要はない。
【0032】
本発明の液体クロマトグラフィー用部材において、前述した分析用カラム、充填剤、通液入口、フィルタ、ディストリビュータなどは、該部材の容器本体に収納され得る。あるいは、該容器本体は、それ自体が充填剤を保持するカラムとして構成されていてもよい。例えば、該容器本体は、通液入口及び出口となる開口部を備えた筒状容器であり、内部に充填剤、及び必要に応じて第1のフィルタ、第2のフィルタ、粒子漏出防止用フィルタなどのフィルタや、ディストリビュータなどが収容可能となっている。該容器本体は、1つ以上の部分から構成されていればよい。例えば、該容器本体は、充填剤とフィルタを収納する1つの容器であってもよく、又は、充填剤を収納する部分と、該第1のフィルタ、及び必要に応じて第2のフィルタを収納する部分との組み合わせからなるものであってもよく、又は、該第1のフィルタを収納する部分と、充填剤及び該第2のフィルタを収納する部分との組み合わせからなるものであってもよい。該容器本体の材料としては、例えば、ステンレスやチタン等の金属、フッ素樹脂やPEEK等の樹脂、ガラスなどが挙げられる。
【0033】
前述したフィルタ、ディストリビュータ、通液入口及び出口、分析用カラム、ならびに容器本体の内部は、検体等の非特異吸着を防止するための表面処理が施されていることが好ましい。該表面処理では、化学的処理及び/又は物理的処理により表面を改変し、該表面への非特異吸着を防止する。該化学的処理及び/又は物理的処理の例としては、加熱又は酸での酸化反応による表面の改変、親水性物質又は疎水性物質の被覆によるブロッキング処理、などが挙げられる。該ブロッキング処理に用いる物質としては、ウシ血清アルブミン、グロブリン、ラクトフェリン、スキムミルクなどの蛋白質、シリコーン、フッ素樹脂などが挙げられる。
【0034】
本発明の液体クロマトグラフィー用部材は、前述した構成をとることにより、繰り返し使用に伴う通液圧力の上昇が抑制されているため、耐久性が向上している。したがって、該液体クロマトグラフィー用部材は、より多くの検体の分析を可能とし、それによって検体の液体クロマトグラフィー分析におけるカラム交換の手間やコストを低減することができる。
【0035】
本発明はまた、前述した本発明の液体クロマトグラフィー用部材を備える液体クロマトグラフィー分析装置を提供する。例えば、該液体クロマトグラフィー装置は、本発明の液体クロマトグラフィー用部材を備える検体分離部と、検出部とを備え、さらに必要に応じて、検体液、試薬液、移動相等の送液用のポンプや、送液又は検出条件の制御や検出結果の取得のための制御部、などをさらに備えていてもよい。分析すべき検体液は、該装置の流路に注入され、検体分離部に送られる。検出部は、検体分離部を通過した液の成分を検出し、検出結果をもとにクロマトグラムが出力される。
【実施例
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0037】
製造例 液体クロマトグラフィー用部材の製造
(1)フィルタの準備
孔径12μm、厚さ0.1mmのフィルタ層(外層1)、孔径3μm、厚さ0.2mmのフィルタ層(内層)、孔径12μm、厚さ0.1mmのフィルタ層(外層2)が、この順に積層された3層構造を有する、厚さ0.4mm、空隙率70%のステンレス製繊維焼結フィルタシートを、直径6.5mmの円形に打ち抜きステンレス製繊維焼結フィルタを得た。得られたステンレス製繊維焼結フィルタに、ヘモグロビン類の非特異吸着を防止するため、ウシ血清アルブミンでブロッキング処理を施した。表面処理後のフィルタをポリテトラフルオロエチレン製パッキンではさみ込み、流路に接続できるねじ部を設けたポリエーテルエーテルケトン製ホルダに収納してフィルタを得た。
【0038】
(2)充填剤粒子の準備
3%ポリビニルアルコール(日本合成化学社製)水溶液に、テトラエチレングリコールジメタアクリレート(新中村化学社製)300g、トリエチレングリコールジメタアクリレート(新中村化学社製)100g及び過酸化ベンゾイル(キシダ化学社製)1.0gの混合物を添加し、窒素雰囲気下の反応器中で攪拌しながら、80℃で1時間重合した。次に、イオン交換基を有する単量体として、2-メタアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(東亜合成化学社製)100g、ポリエチレングリコールメタアクリレート(日本油脂社製、エチレングリコール鎖n=4)100gをイオン交換水に溶解した。この混合物を、1時間重合後の上記反応器中にさらに添加し、窒素雰囲気下で攪拌しながらさらに80℃で2時間重合した。得られた重合組成物を水及びアセトンで洗浄することにより、イオン交換基を有する粒子を得た。得られた粒子10gを、溶存オゾンガス濃度100ppmのオゾン水300mLに浸漬し、30分間攪拌した。攪拌終了後、遠心分離機(日立製作所社製Himac CR20G)を用いて遠心分離し、上澄みを除去した。この操作を2回繰り返し、充填剤粒子を得た。得られた充填剤粒子について、レーザー回折式粒度分布測定装置(「AccuSizer780」;Particle Sizing Systems)を用いて測定したところ、平均粒径は10μm、CV値は14%であった。
【0039】
(3)液体クロマトグラフィー用部材の製造
比較例1、製造例1)
(2)で得られた充填剤粒子を、円柱状容器(内径4.6mm、長さ20cm)に充填して、カラムを得た。該カラムの充填剤の上流側及び下流側に、カラムの充填剤側から厚さ0.7mmのドーナツ形のPTFE製シール部材、前記(1)で得た6.5mm径フィルタを配置し、さらに該上流側フィルタの上流に、溝状孔を有する0.2mm厚ステンレス板のディストリビュータを配置した。構築したカラムの上流からカラムエンド(内部にザグリ付きテーパー、先端に内径0.5mmの通液入口を有する)をかぶせ、液体クロマトグラフィー用部材を製造した。カラムエンド内部のザグリの深さは、比較例1は0.3mm、製造例1は0.5mmであった。
【0040】
製造例2)
製造例1と同様の手順で、ただし、充填剤の上流側に配置したフィルタ(第2フィルタ)及びディストリビュータの上流に、さらに前記(1)で得た6.5mm径フィルタ(第1フィルタ)を配置した。構築したカラムの上流からカラムエンド(内部に0.5mmザグリ付きテーパー、先端に内径0.5mmの通液入口を有する)をかぶせ、液体クロマトグラフィー用部材を製造した。
【0041】
製造例3~4)
製造例1と同様の手順で、ただし、充填剤の上流側に配置したフィルタ(第2フィルタ)及びディストリビュータの上流に、さらに第2スペーサ、前記(1)で得た6.5mm径フィルタ(第1フィルタ)、及び第1スペーサを順に配置した。第1及び第2スペーサとしては、テフロン(登録商標)又はPEEK製のO-リング(内径5.5mm)を用いた。構築したカラムの上流からカラムエンド(内部に0.5mmザグリ付きテーパー、先端に内径0.5mmの通液入口を有する)をかぶせ、液体クロマトグラフィー用部材を製造した。製造した液体クロマトグラフィー用部材の構造の模式図を図1に示す。
【0042】
表1に、製造した液体クロマトグラフィー用部材の仕様を示す。該クロマトグラフィー用部材における、第1フィルタからカラムの通液入口までの空間(第1空間)の長さと体積、及び第1フィルタと第2フィルタ間の空間(第2空間)の長さと体積は、ディストリビュータの占める空間を含まない値である。
【0043】
【表1】
【0044】
試験1
(1)通液圧力の評価
実施例及び比較例の液体クロマトグラフィー用部材を下記システムに結合して、液体クロマトグラフィー分析装置を組み上げた。
送液ポンプ LC-20AD(島津製作所社製)
オートサンプラー SIL-20AC(島津製作所社製)
検体分離部(カラム) 製造例1~4又は比較例1
検出器 SPD-M20A(島津製作所社製)
カラムオーブン CTO-20AC(島津製作所社製)
【0045】
この液体クロマトグラフィー分析装置を用いて、下記分析条件にて最大7000検体まで連続して検体のヘモグロビンA1c値の測定を行った。
溶離液:
第1液 50mmol/Lリン酸緩衝液(pH5.3)
第2液 ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(和
光純薬工業社製)を0.05重量%含む250mmol/Lリン酸緩
衝液(pH8.0)
測定時間:60秒
流速:1.7mL/min
カラム温度:40℃
検出波長:415nm
検体注入量:5μL
【0046】
クロマトグラフィー分析では、負荷検体を連続分析しながら、数百分析ごとに1回通液圧力を測定した。圧力測定では、試験検体を通液した後、溶離液第1液を送液したときのカラムに対する通液圧力を測定した。負荷検体は、健常人全血を溶血希釈液(ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(和光純薬工業社製)を0.1重量%含むリン酸緩衝液(pH7.0))で101倍に希釈して調製した。試験検体は、市販のHbA1c測定用コントロールを用いた。
【0047】
通液圧力の測定結果を図2に示す。比較例1の液体クロマトグラフィー用部材は、分析数が3000回に達するあたりから通液圧力が急激に上昇した。製造例1~2の液体クロマトグラフィー用部材は、分析数3000~4000回あたりから通液圧力の上昇がみられたものの、分析数が4000回を超えても通液圧力が比較的低いまま維持されていた。さらに製造例3~4では、測定数が5000回を超えてもなお通液圧力が低いまま維持されていた。4000回測定後の各液体クロマトグラフィー用部材における初期からの圧力上昇値を表2に示す。
【0048】
【表2】
【符号の説明】
【0049】
1 液体クロマトグラフィー用部材
2 カラムエンド
3 充填剤
4 第1フィルタ
4’ 第2フィルタ
5 第1スペーサ
5’ 第2スペーサ
6 ディストリビュータ
7 シール部材
8 第1空間
9 第2空間
10 通液入口
11 注入路
図1
図2