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特許7081065渦電流ブレーキ装置、方法、オートビレイ装置およびセルフリトラクティングライフライン装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】渦電流ブレーキ装置、方法、オートビレイ装置およびセルフリトラクティングライフライン装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 49/02 20060101AFI20220531BHJP
   F16H 49/00 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
H02K49/02 B
F16H49/00 A
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2017527284
(86)(22)【出願日】2015-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-02-01
(86)【国際出願番号】 NZ2015050208
(87)【国際公開番号】W WO2016089228
(87)【国際公開日】2016-06-09
【審査請求日】2018-11-22
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】701550
(32)【優先日】2014-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(73)【特許権者】
【識別番号】515073551
【氏名又は名称】エディ・カーレント・リミテッド・パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】アリントン, クリストファー ジェイムス
(72)【発明者】
【氏名】ディール, アンドリュー カール
(72)【発明者】
【氏名】ライト, ケヴィン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ヒル, ウェストン
(72)【発明者】
【氏名】ウォルタース, デイヴ
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】柿崎 拓
【審判官】塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-194091(JP,A)
【文献】特表2012-520655(JP,A)
【文献】特開2000-316272(JP,A)
【文献】特公昭49-23719(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0346909(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0032255(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102428633(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)磁場と、
(b)導電体と
を含む、渦電流ブレーキ装置であって、
前記磁場と前記導電体とが互いに相対運動し、相互作用して渦電流抗力を誘導し、
前記渦電流ブレーキ装置は、主となる第1の回転軸及び第2の制御用の回転軸のそれぞれの周り前記磁場又は前記導電体のいずれか回転させるための2つの回転自由度を有するように構成され、
前記第2の制御用の回転軸は、前記主となる第1の回転軸に対して傾斜して回転され、制動作用が前記主となる第1の回転軸の周りの回転相対運動に加えられ、前記第2の制御用の回転軸が前記制動作用を調節するために使用される、
渦電流ブレーキ装置。
【請求項2】
前記第2の制御用の回転軸が、前記主となる第1の回転軸に略直交する角度にある、請求項1に記載の渦電流ブレーキ装置。
【請求項3】
前記主となる第1の回転軸と前記第2の制御用の回転軸が交差する、請求項1または2に記載の渦電流ブレーキ装置。
【請求項4】
前記ブレーキ装置が、回転シャフトと、前記回転シャフトに連結されかつ前記回転シャフトと共に回転するカラーとを有するように構成され
前記回転シャフトは、前記カラーを備え、前記主となる第1の回転軸上に位置して前記主となる第1の回転軸の周りを回転可能であり、
前記カラーは、前記導電体を備えるか又は前記導電体であり、前記第2の制御用の回転軸の周りも回転可能である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキ装置。
【請求項5】
前記導電体が、制動が生じるときに、少なくとも部分的に前記磁場内に配置される、請求項4に記載の渦電流ブレーキ装置。
【請求項6】
前記導電体と前記磁場との間の相対運動が、前記導電体の運動に抵抗するよう作用する渦電流制動力を誘導し、次に前記回転シャフトの運動に抵抗するように作用する、請求項4または5に記載の渦電流ブレーキ装置。
【請求項7】
前記カラーが、前記カラーの両端に配置されている複数の導電体を備える、請求項4~6のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキ装置。
【請求項8】
前記カラーが、前記回転シャフト自体にまたは前記回転シャフトの周りにある前記第2の制御用の回転軸の周りを回転する、請求項7に記載の渦電流ブレーキ装置。
【請求項9】
前記カラーの回転によって前記導電体も回転する、請求項8に記載の渦電流ブレーキ装置。
【請求項10】
前記カラーおよび前記導電体が取り付けられる前記回転シャフト自体が可撓性であるか、または可撓性継手を組み込んで、前記カラーおよびその上の導電体による前記第2の制御用の回転軸の周りでの回転を可能にする、請求項9に記載の渦電流ブレーキ装置。
【請求項11】
前記導電体が、前記カラーにある前記第2の制御用の回転軸の周りを回転し、前記回転シャフトの回転が生じると、前記導の少なくとも一部は、前記第2の制御用の回転軸の周りを前記カラーの回転面から外側に回転する、請求項9に記載の渦電流ブレーキ装置。
【請求項12】
前記第2の制御用の回転軸が、前記主となる第1の回転軸上に位置して前記主となる第1の回転軸の周りを回転可能である回転シャフトに固定されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキ装置。
【請求項13】
前記導電体が内部を移動する前記磁場が、ハウジングまたは外部要素上に位置する1つまたは複数の磁石によって形成される、請求項1~12のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキ装置。
【請求項14】
前記ハウジングまたは前記外部要素が、回転シャフトおよび前記導電体が内部を移動するキャビティを形成し、前記回転シャフトは、前記主となる第1の回転軸上に位置して前記主となる第1の回転軸の周りを回転可能である、請求項13に記載の渦電流ブレーキ装置。
【請求項15】
前記導電体が、リンクを介して回転シャフトに連結され、前記導電体に作用する遠心力が、前記回転シャフトの回転によって引き起こされ、前記導電体が前記回転シャフトから離れるように軸周りに回転するように付勢し、
前記回転シャフトは、前記主となる第1の回転軸上に位置して前記主となる第1の回転軸の周りを回転可能であり、
前記リンクは、前記第2の制御用の回転軸を形成する前記回転シャフトへの取り付け点の周りも回転可能である、請求項1に記載の渦電流ブレーキ装置。
【請求項16】
少なくとも1つの付勢手段を使用して、前記回転シャフトの軸から離れる前記導電体の前記軸周りの運動速度を調整する、請求項15に記載の渦電流ブレーキ装置。
【請求項17】
(a)請求項1~16のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキ装置を選択するステップと、
(b)前記磁場と前記少なくとも1つの導電体との間の相対運動の変化を引き起こすための駆動力を印加するステップと、
(c)前記運動を引き起こすことによって、前記少なくとも1つの導電体と前記磁場とを相互作用させ、それによって渦電流抗力を誘導し、前記磁場と前記少なくとも1つの導電体との間の相対運動に抵抗するように作用させるステップと、
によって、渦電流抗力を発生させる方法。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキ装置を組み込んだオートビレイ装置。
【請求項19】
請求項1~16のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキ装置を組み込んだセルフリトラクティングライフライン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書には、渦電流ブレーキ装置および使用方法が記載されている。より具体的には、部品間のさまざまな運動学的関係を利用する渦電流ブレーキ装置が記載されている。
【背景技術】
【0002】
渦電流関連装置の分野における本出願人の同時係属中および付与された特許には、米国特許第8,851,235号明細書、米国特許第8,490,751号明細書、ニュージーランド特許第619034号明細書、ニュージーランド特許第627617号明細書、ニュージーランド特許第627619号明細書、ニュージーランド特許第627633号明細書、ニュージーランド特許第627630号明細書、および他の同等物が含まれ、すべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
渦電流ブレーキ装置は、磁場に対して動く導電性要素が、磁場と導電体との間の相対運動に抵抗するように作用する渦電流力を誘導する、すなわちそれらは減速力であるという原則に基づいて動作する。
【0004】
渦電流ブレーキ装置を、ブレーキによって使用される自由度(DOF)の数、およびこれらが直線(L)自由度であるか回転(R)自由度であるかどうかを考慮することによってカテゴリに分類することができる。したがって、1自由度の回転構成は「1R」とラベル付けされ、2自由度の直線構成は「2L」とラベル付けされてもよい。
【0005】
1自由度の直線構成1Lは、図1に示すように、磁石アレイ(1L)を通過する導電体で実現できる直線ブレーキ装置の形態を取ることができる。代替的な1L構成は、技術のローラコースタのブレーキで使用されるような導電体を通過する磁石のアレイであってもよい。1自由度の回転構成1Rを、図2に示すような単純なディスクブレーキで実現することができる。
【0006】
1自由度の直線および1自由度の回転の構成1R1Lが、例えばブレーキ軸に沿った1つの直線自由度とブレーキ軸の回りの1つの回転自由度とを有する、本出願人の同時係属中のニュージーランド特許出願第619034号明細書に記載されたプランジャブレーキを用いて実現されてもよい。この1R1L自由度は、連続した導電体を維持しながら、磁気アレイに対する導電体の軸方向変位を変化させることによってトルク調整の可能性を提供する。
【0007】
別の例は、米国特許第8851235号明細書、米国特許第8490751号明細書に公開された本出願人の同時係属中の特許に記載されている2R自由度のブレーキである。これらの特許に記載されている統合された運動学的制御を有するディスクブレーキ装置は、アームの運動学的動作が主ブレーキ軸から半径方向に並進またはオフセットされた軸の周りに生じるので、2Rブレーキとして分類されることができる。アーム(導電体)と磁気アレイからの磁束との可変オーバラップが、可変トルクブレーキをもたらす。求心力と、渦電流抗力と、ばね付勢力との間の相互作用は、入力トルクに関係なく制御された速度調整を与えるように構成されることができる。
【0008】
当技術分野に記載されたデバイスは、例えば、摩擦なしに運動を制御する方法を提供するために有用であり得る。ただし、渦電流相互作用を変更する他の方法が、異なる構成を用いて実現されてもよく、少なくとも公衆に選択肢を提供してもよい。
【0009】
渦電流ブレーキ装置およびその使用方法のさらなる態様および利点は、単なる例として与えられる次の説明から明らかとされよう。
【発明の概要】
【0010】
渦電流ブレーキ装置および使用方法、特にブレーキまたはブレーキが配置される装置のアクティベーションおよび動作を調整するために使用される少なくとも2つの回転自由度との運動学的関係を有する装置が本明細書に記載されている。
【0011】
第1の態様では、
(a)磁場と、
(b)導電体と
を含む渦電流ブレーキ装置であって、
磁場と導電体とが互いに相対運動し、相互作用して渦電流抗力を誘導し、
渦電流ブレーキは、少なくとも2つの回転自由度を有するように構成され、主となる第1の回転軸は、少なくとも1つの第2の回転軸または制御用の回転軸に対して傾斜して移動され、制動作用が第1の回転軸に加えられ、少なくとも1つの第2の回転軸が制動作用を調節するために使用される渦電流ブレーキ装置が提供される。
【0012】
第2の態様では、
(a)実質的に上述のような渦電流ブレーキ装置を選択するステップと、
(b)磁場と少なくとも1つの導電体との間の相対運動の変化を引き起こすための動力を印加するステップと、
(c)運動を引き起こすことによって、少なくとも1つの導電体と磁場とを相互作用させ、それによって渦電流抗力を誘導し、磁場と少なくとも1つの導電体との間の相対運動に抵抗するように作用させるステップと、
によって、渦電流抗力を発生させる方法が提供される。
【0013】
上述の渦電流ブレーキ装置および使用方法の利点は、1自由度の構成によって実現することが困難であり得る程度にブレーキ応答を調整する能力を含む。より高度な調整は、例えば、大きな範囲のトルクを制動する能力を可能にし、制動のオン/オフを防止する能力を可能にする。制動は、さまざまな入力条件の範囲に対して、制御されたおよび/または略一定の速度であり得る。
【0014】
渦電流ブレーキ装置およびその使用方法のさらなる態様は、単なる例として与えられる以下の説明からおよび添付の図面を参照して、明らかとされよう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来技術の単一直線自由度の渦電流ブレーキ装置を示す図である。
図2】従来技術の単一回転自由度の渦電流ブレーキ装置を示す図である。
図3】回転軸が交差しているかどうかにかかわらず互いに傾斜して移動された2つの回転自由度の渦電流ブレーキ装置の実施形態を示す図である。
図4】回転軸が交差しているかどうかにかかわらず互いに傾斜して移動された2つの回転自由度の渦電流ブレーキ装置の別の実施形態を示す図である。
図5】回転軸が交差しているかどうかにかかわらず互いに傾斜して移動された2つの回転自由度の渦電流ブレーキ装置のさらに別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述したように、渦電流ブレーキ装置および使用方法、特にブレーキまたはブレーキが配置される装置の動作を調整するために使用される少なくとも2つの回転自由度(2R自由度)との運動学的関係を有する装置が本明細書に記載されている。
【0017】
本明細書の目的のために、「約(about)」または「おおよそ(approximately)」という用語やその文法上の変形は、基準の数量、レベル、程度、値、数、頻度、比率、寸法、サイズ、量、重量、または長さに対し、30,25,20,15,10,9,8,7,6,5,4,3,2,または1%だけ異なる、数量、レベル、程度、値、数、頻度、比率、寸法、サイズ、量、重量、または長さを意味する。
【0018】
「実質的に(substantially)」という用語またはその文法上の変形は、少なくとも約50%、例えば、75%、85%、95%、または98%を参照する。
【0019】
「含む、備える(comprise)」という用語やその文法上の変形は、その包括的な意味を有するべきであり、すなわち、列挙されている直接参照する構成要素だけでなく、他の特定されていない構成要素または要素を含むことを意味すると解釈される。
【0020】
用語「連結(link)」およびその文法的変形は、直接的な結合ならびに別の部材を介した間接的な結合の両方を指す。
【0021】
第1の態様では、
(a)磁場と、
(b)導電体と
を含む渦電流ブレーキ装置であって、
磁場と導電体とが互いに相対運動し、相互作用して渦電流抗力を誘導し、
渦電流ブレーキは、少なくとも2つの回転自由度を有するように構成され、主となる第1の回転軸は、少なくとも1つの第2の回転軸または制御用の回転軸に対して傾斜して移動され、制動作用が第1の回転軸に加えられ、少なくとも1つの第2の回転軸が制動作用を調節するために使用される渦電流ブレーキ装置が提供される。
【0022】
本発明者らは、2R自由度構成が渦電流ブレーキ装置を調整するのに有用であり得ることを確認した。2R自由度は、例えば1Rまたは1L構成よりもブレーキダイナミクスを変化させるより多くの範囲および機会を提供することができる。上述した第2の自由度は、ブレーキに対する運動学的な制御規制を導入することができ、これは、当技術分野に対する重要な改善である。運動学的な制御は、例えば制動機構に対する入力原動力に関係なく、制御された出力制動応答を可能にすることができる。さらなる利点は、スムーズなブレーキ効果が望ましく、または必須でさえある多くの用途において望ましくない制動の変動を避けるブレーキ応答のオン/オフ切換えのようなヒステリシスの回避である。他の利点については、以下でさらに説明する。
【0023】
以下の議論のために、導電体(1つまたは複数)および磁石または磁場の1つの構成について説明する。この構成は限定的であると見なされるべきではなく、導電体(1つまたは複数)および磁石(1つまたは複数)/磁場が交換され得、依然として渦電流ブレーキ力発生の同じ結果を達成することができると理解されるべきである。
【0024】
さらに、以下の議論では、単一の導電体または単一の磁場を参照することができるが、複数の導電体または複数の磁場を使用することができるので、これは限定的であると見なされるべきではない。
【0025】
渦電流ブレーキは、回転または旋回の中心点を有するように構成されてもよい。一実施形態では、回転の中心点は第1の回転シャフトであってもよく、導電体は回転シャフトに連結され、回転シャフトと共に回転してもよい。導電体はケーシングの外側に支持され、したがって中央支持体を必要としなくてもよいので、シャフトは必須ではない可能性がある。導電体は、制動が行われるときに少なくとも部分的に磁場内に配置されてもよい。導電体と磁場との間の相対運動は、導電体の運動に抵抗するように作用する渦電流制動力を誘導し、次に、シャフトの運動に抵抗するように作用する。「シャフト」という用語は広い意味で使用され、シャフトは円筒形のボリュームでもよいが、代わりにチューブ、正方形、長方形または他の形状の要素でもよい。
【0026】
上記のように、第2の回転軸は、第1の回転軸の平面とは異なる平面にある。一実施形態では、第2の回転軸は、第1の自由度の回転軸に略直交する角度であってもよいが、直交しない角度も可能である。直交する第2の回転軸は、システムの安定性を助け、振動力を回避することができる。
【0027】
第1の回転軸と少なくとも1つの第2の回転軸とが交差してもよい。説明を容易にするために、本明細書では交差する軸を参照することができるが、これは交差しない軸として限定されるものとして見なされるべきではなく、傾斜した移動を伴って実現されてもよい。
【0028】
1つの特定の実施形態では、回転シャフトはカラーを有してもよく、カラーの1つの部分、カラーの複数の部分、またはカラー全体のいずれかが導電体であってもよい。
【0029】
カラーは、回転シャフト自体にまたはシャフトの周囲にある第2の回転軸の周りを回転することができる。この実施形態では、カラーの回転によって導電体も回転する。カラーおよび導電体が取り付けられるシャフト自体が可撓性であってもよく、または代わりに可撓性継手を組み込んで、カラーおよびその上の導電体による第2の回転軸での回転を可能にしてもよい。
【0030】
あるいは、導電体は、カラーにある1つまたは複数の軸の周りを回転してもよく、回転シャフトまたは第1の回転が生じると、導電部材(1つまたは複数)の少なくとも一部は、1つまたは複数の第2の回転軸の周りをカラーの回転面から外側に回転する。この実施形態では、カラーは、カラーの周囲にあるそれぞれの回転軸を有する別個の部分を含むことができる。
【0031】
第2の回転軸は固定されていてもよい。あるいは、第2の回転軸は、運動学的関係によって規定されるように動くことができる。さらに、第2の回転軸は、ピンまたはシャフトによって物理的に生成されない軸線であってもよいが、むしろ運動および拘束機構の幾何学的構造および運動学から生じる効果的な回転軸であってもよい。この構成が実現され得る方法の非限定的な例は、湾曲溝内のスライダ、「4棒リンク機構」、可撓性板ばね、およびそれらの組み合わせを使用することを含むことができる。
【0032】
その中で導電体が内部を移動する磁場を、ハウジングまたは外部要素上に位置する1つまたは複数の磁石によって形成することができる。ハウジングまたは外部要素は、回転シャフトおよび導電体が内部を移動するキャビティを形成することができる。
【0033】
別の実施形態では、導電体は、線状体ないしはライン(可撓性または剛性)を介して回転シャフトに連結されてもよく、1つまたは複数の導電性部材に作用する遠心力が、回転シャフトの回転によって引き起こされ、導電体が回転シャフトから離れるように軸周りに回転するように付勢する。この実施形態では、付勢手段を使用して、回転シャフトの軸から離れる導電体の軸周りの運動速度を調整することができる。一実施形態では、付勢手段はばねであってもよい。
【0034】
さらなる実施形態では、渦電流ブレーキは、第1の回転軸の周りを回転するシャフトと、シャフトに結合されシャフトの回転軸の周りを回転するカラーとを有するように構成されてもよい。カラーは、カラーの周囲に1つまたは複数の溝を含んでもよく、溝内の磁石は磁石間に少なくとも1つの磁場を形成し、1つまたは複数の磁場は、シャフトの回転軸の周りを移動する。1つまたは複数の導電体は、カラーの周囲にある第2の回転軸の周りで磁場の内外に回転移動することができる。
【0035】
上記態様において、一実施形態は、2R自由度構成を有する遊星変速機の構成を取ることができる。変速機は、太陽の周りを回転する遊星(ギヤ、ボール、ディスク等)を有する太陽(例えば、シャフト)を含んでもよく、その回転は、運動学的および回転可能に結合された関係によって制御され、部品は環を介して整列状態に維持される。
この実施形態の導電体は、磁場が遊星を直交して通過するように、遊星の両側に位置する磁石アレイによって生成された磁場を通って回転する遊星またはそのアタッチメントであってもよい。第1の回転軸は、太陽(シャフト)または環の回転のいずれかの回転であってもよい。1つまたは複数の第2の回転軸は、遊星の回転であってもよい。運動が起こると、太陽軸周りの遊星の運動に誘導される減速トルクや、それ自体の第2の回転軸の周りを回転する遊星によって誘導される付加的な減速トルクが存在し得る。太陽は、ギヤ装置、トラクションドライブ、ベルト、太陽と遊星との間の摩擦、および他の駆動装置を介して遊星を駆動することができる。ベアリングを、遊星変速機と考えることもできる。この場合、ハウジングが全体のキャリアとして機能し、ベアリングのボールまたはローラが遊星として機能し、外側リングが環として機能し、内側リングが太陽として機能する。内側リング(1R)および/または遊星(2R)に作用するように、渦電流ブレーキを構成することができる。
【0036】
第2の態様では、
(a)実質的に上述のような渦電流ブレーキ装置を選択するステップと、
(b)磁場と少なくとも1つの導電体との間の相対運動の変化を引き起こすための駆動力を印加するステップと、
(c)運動を引き起こすことによって、少なくとも1つの導電体と磁場とを相互作用させ、それによって渦電流抗力を誘導し、磁場と少なくとも1つの導電体との間の相対運動に抵抗するように作用させるステップと、
によって、渦電流抗力を発生させる方法が提供されている。
【0037】
一実施形態では、オートビレイまたはセルフリトラクティングライフライン(SRL)の実施形態は、上述の渦電流ブレーキ装置を使用することができる。シャフトまたは第1の回転要素は、その上にラインのスプールを有していてもよく、ラインの繰り出しが発生したとき(例えば、物体が落下するとき)に、シャフトは、導電体上に二次的な回転運動を与えるように回転する。導電体の動きは、導電体の動きを遅くしてシャフトまたは第1の回転要素の動きを遅くするように作用する渦電流抗力を引き起こす。シャフトを減速させると、ラインの繰り出しが遅くなり、それによって、物体の落下を制動する。本明細書に記載の渦電流ブレーキ装置は、多種多様な他の用途に使用することができるので、この例は限定的であると見なされるべきではなく、非限定的な例として以下の速度制御が挙げられる:
ロータリタービンのロータ;
運動器具、例えば、ローイングマシン、エピサイクリックトレーナ;
ローラコースタおよび他の娯楽用乗り物;
エレベータおよびエスカレータシステム;
避難降下装置と火災避難装置;
コンベヤシステム;
工場の生産施設におけるロータリドライブ;
コンベヤベルトやシュート内の制動装置などのマテリアルハンドリング装置;
回転標識の変化率を制御する動的表示サイネージ;
路側安全システム、例えば、渦電流ブレーキ装置が衝突減衰を提供するシステムに接続され、ブレーキを介してエネルギーを散逸させ得る;
車両のシートベルト;
ジップライン;
トロリおよびキャリッジの制動機構。
【0038】
上述の渦電流ブレーキ装置および使用方法の利点は、1自由度の構成によって実現することが困難であり得る程度にブレーキ応答を調整する能力を含む。より高度な調整は、例えば、より大きな範囲のトルク力を制動する能力を可能にし、制動のオン/オフを防止する能力を可能にする。制動は、さまざまな入力条件の範囲に対して、制御されたおよび/または略一定の速度であり得る。
【0039】
上述の実施形態は、本出願の明細書において個別にまたは集合的に参照されるかまたは示される部品、要素および特徴、ならびに任意の2つ以上の前記部品、要素または特徴の任意のまたはすべての組み合わせからなると広く言及されてもよい。
【0040】
また、特定の完全体が、本発明が関連する当技術分野で均等物と知られているものとして本明細書に記載されている場合には、このような既知の均等物は、個別に記載のように本明細書に組み込まれると見なされる。
【0041】
ここで、上記の渦電流ブレーキ装置および使用方法について、具体例を参照して説明する。
【0042】
例1
図3は、1R渦電流ブレーキ装置が2R構成を有するようにどのように変更され得るかを示している。
【0043】
一般に矢印1で示される渦電流ブレーキは、X軸の周りを回転するシャフト2を有する。シャフトは、シャフト2に連結されたカラー3を含む。導電性部材4は、カラー3の両端に配置されている。カラー3は、カラー3の中心にまたはその近くに位置する矢印Yで示す第2の軸の周りを自由に回転する。
【0044】
渦電流制動中、シャフト2およびカラー3は、シャフト2およびカラー3の周りにハウジング5によって形成される磁場内に配置され、ハウジング5は、磁場を生成する磁石6を含む。
【0045】
導電性部材4は、第2の回転軸Yを介して磁場の内外に回転可能に移動することができる。図3は、導電性部材4を、磁石6によって生成された磁場の外に部分的に示している。
【0046】
導電性部材4(第1および第2の回転の程度の両方から)と磁場との間の相対運動は、導電性部材4の運動に抵抗し、次にシャフト2の運動に抵抗する渦電流制動力を誘導する。
【0047】
図3に見られるように、第2の回転軸Yは、第1の回転軸Xに略直交する角度にある。
【0048】
シャフト2自体は、第2の軸回転Yを可能にするように可撓性であってもよく、または、代わりに、シャフト2は、カラー3および導電性部材4の第2の軸回転Yを可能にする可撓性継手(図示せず)を組み込んでもよい。
【0049】
明瞭にするために、これらの追加の手段は示されていないが、ばねなどの追加の力修正および生成手段を使用してもよいことに留意されたい。
【0050】
例2
図4は、導電体が2R構成で回転する第2の回転軸Yを実現する別の方法を示している。この実施形態では、シャフト11は、ハウジング10上に配置された磁石10a,10bによって生成される磁場内で第1の回転軸Xの周りを回転する。導電性部材13は、リンク12およびばね14を介してシャフト11に連結されている。リンク12のシャフト11への取り付け点が、第2の回転軸Yを形成する。第1の軸Xの回転が生じない場合、導電性部材13は、ばね14によって磁場の外側の地点に付勢される。第1の軸Xの回転が生じると、導電性部材13は遠心力によって付勢されて、ばね14の付勢に抗して第2の軸Yを介して磁場内に回転し、それにより渦電流ブレーキ力を誘導する。
【0051】
ここでも、明瞭にするために、これらの追加の手段は示されていないが、ばねなどの追加の力修正および生成手段を使用してもよいことに留意されたい。
【0052】
例3
図5は、別の実施形態を示しており、ここではセグメント化されたまたは花びら状の(petal)2R構成を実現する。
【0053】
この実施形態では、シャフト20は第1の回転軸Xの周りを回転し、導電性部材21は第2の回転軸Yの周りを回転する。この実施形態では、磁石22はシャフト20の周りに配置されたカラー23上に配置される。シャフト20の回転が第1の回転軸Xの周りで生じるとき、遠心力は導電性部材21を第2の回転軸Yの周りで回転させるように付勢する。第2の回転軸Yは、導電性部材21を磁場に進入させ、それによって渦電流ブレーキ力を誘導する。
【0054】
例1および例2のように、明瞭にするために、これらの追加の手段は示されていないが、ばねなどの追加の力修正および生成手段を使用してもよいことに留意されたい。
【0055】
渦電流ブレーキ装置および使用方法の態様は、単なる一例として記載されており、修正や追加が、本明細書の特許請求の範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解されるべきである。
[発明の項目]
[項目1]
(a)磁場と、
(b)導電体と
を含む、渦電流ブレーキ装置であって、
前記磁場と前記導電体とが互いに相対運動し、相互作用して渦電流抗力を誘導し、
前記渦電流ブレーキ装置は、少なくとも2つの回転自由度を有するように構成され、主となる第1の回転軸は、少なくとも1つの第2の回転軸すなわち制御用の回転軸に対して傾斜して移動され、制動作用が前記第1の回転軸に加えられ、前記少なくとも1つの第2の回転軸が前記制動作用を調節するために使用される、
渦電流ブレーキ装置。
[項目2]
前記第2の回転軸が、第1の自由度の回転軸に略直交する角度にある、項目1に記載の渦電流ブレーキ装置。
[項目3]
前記第1の回転軸と前記少なくとも1つの第2の回転軸が交差する、項目1または2に記載の渦電流ブレーキ装置。
[項目4]
前記ブレーキ装置が、第1の回転シャフトと、前記回転シャフトに連結されかつ前記回転シャフトと共に回転する導電体とを有するように構成されている、項目1~3のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキ装置。
[項目5]
前記導電体が、制動が生じるときに、少なくとも部分的に前記磁場内に配置される、項目4に記載の渦電流ブレーキ装置。
[項目6]
前記導電体と前記磁場との間の相対運動が、前記導電体の運動に抵抗するよう作用する渦電流制動力を誘導し、次に前記回転シャフトの運動に抵抗するように作用する、項目4または5に記載の渦電流ブレーキ装置。
[項目7]
前記シャフトがカラーを有し、前記カラーの1つの部分、前記カラーの複数の部分、または前記カラー全体のいずれかが導電体である、項目4~6のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキ装置。
[項目8]
前記カラーが、前記回転シャフト自体にまたは前記回転シャフトの周りにある第2の回転軸の周りを回転する、項目7に記載の渦電流ブレーキ装置。
[項目9]
前記カラーの回転によって前記導電体も回転する、項目8に記載の渦電流ブレーキ装置。
[項目10]
前記カラーおよび前記導電体が取り付けられる前記回転シャフト自体が可撓性であるか、または可撓性継手を組み込んで、前記カラーおよびその上の導電体による第2の回転軸での回転を可能にする、項目9に記載の渦電流ブレーキ装置。
[項目11]
前記導電体が、前記カラーにある1つまたは複数の軸の周りを回転し、前記シャフトの回転が生じると、前記1つまたは複数の導電部材の少なくとも一部は、1つまたは複数の第2の回転軸の周りを前記カラーの回転面から外側に回転する、項目9に記載の渦電流ブレーキ装置。
[項目12]
前記第2の回転軸が固定されている、項目1~11のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキ装置。
[項目13]
前記第2の回転軸が、前述した運動学的関係によって規定されるように動く、項目1~11のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキ装置。
[項目14]
前記第2の回転軸が、運動および拘束機構の幾何学的構造および運動学から生じる効果的な回転軸である、項目1~13のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキ装置。
[項目15]
前記導電体が内部を移動する前記磁場が、ハウジングまたは外部要素上に位置する1つまたは複数の磁石によって形成される、項目1~14のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキ装置。
[項目16]
前記ハウジングまたは前記外部要素が、前記回転シャフトおよび前記導電体が内部を移動するキャビティを形成する、項目1~15のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキ装置。
[項目17]
前記導電体が、ラインを介して前記回転シャフトに連結され、前記1つまたは複数の導電性部材に作用する遠心力が、前記回転シャフトの回転によって引き起こされ、前記導電体が前記回転シャフトから離れるように軸周りに回転するように付勢する、項目1に記載の渦電流ブレーキ装置。
[項目18]
少なくとも1つの付勢手段を使用して、前記回転シャフトの軸から離れる前記導電体の前記軸周りの運動速度を調整する、項目17に記載の渦電流ブレーキ装置。
[項目19]
前記渦電流ブレーキ装置が、第1の回転軸の周りを回転するシャフトと、前記シャフトに結合され前記シャフトの回転軸の周りを回転するカラーとを有するように構成されている、項目1に記載の渦電流ブレーキ装置。
[項目20]
前記カラーが、前記カラー周囲に少なくとも1つの溝を含み、前記溝内の磁石は前記磁石間に少なくとも1つの磁場を形成し、前記1つまたは複数の磁場は前記シャフトの回転軸の周りを移動する、項目19に記載の渦電流ブレーキ装置。
[項目21]
1つまたは複数の導電体が、前記カラー周囲に取り付けられた第2の回転軸の周りで前記磁場の内外に回転移動する、項目19または20に記載の渦電流ブレーキ装置。
[項目22]
前記渦電流ブレーキ装置が、太陽シャフトと、前記太陽シャフトの周りを回転するギヤ、ボールまたはディスクの形態の遊星とを有し、運動学的および回転可能に結合された関係によって回転が制御される、遊星変速機を備え、これらの部品は環を介して整列状態に維持される、項目21に記載の渦電流ブレーキ装置。
[項目23]
(a)項目1~22のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキ装置を選択するステップと、
(b)前記磁場と前記少なくとも1つの導電体との間の相対運動の変化を引き起こすための駆動力を印加するステップと、
(c)前記運動を引き起こすことによって、前記少なくとも1つの導電体と前記磁場とを相互作用させ、それによって渦電流抗力を誘導し、前記磁場と前記少なくとも1つの導電体との間の相対運動に抵抗するように作用させるステップと、
によって、渦電流抗力を発生させる方法。
[項目24]
項目1~22のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキ装置を組み込んだオートビレイ装置。
[項目25]
項目1~22のいずれか一項に記載の渦電流ブレーキ装置を組み込んだセルフリトラクティングライフライン。
図1
図2
図3
図4
図5