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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】光走査装置および計測器
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20220531BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20220531BHJP
   B81B 7/02 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
G02B26/10 C
B81B7/02
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2017154319
(22)【出願日】2017-08-09
(65)【公開番号】P2019032470
(43)【公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石河 範明
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-335962(JP,A)
【文献】特開2013-076984(JP,A)
【文献】特開2014-021188(JP,A)
【文献】特開昭63-131687(JP,A)
【文献】特開2005-326620(JP,A)
【文献】特開2011-203575(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0185051(US,A1)
【文献】特開2017-129428(JP,A)
【文献】特開2011-154324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10
G02B 26/08
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被走査対象に照射される第1の光と、第2の光とを出射する光源部と、
前記第1の光と、前記第2の光とを反射する光走査部と、
前記第2の光を受光する光検出部と、
前記光走査部における反射部の予め定められた領域と検出部とにより形成される静電容量であって、前記光走査部の前記反射部の傾斜角度に対応して変化する前記静電容量の変化と、前記第2の光に応じた前記光検出部の出力とに基づいて、前記反射部の状態を検出する状態検出部と
を備えており、
前記光検出部は、前記光走査部が前記光検出部において前記第2の光を走査する走査長さの少なくとも一部に設けられた光電変換素子を有しており、
前記光電変換素子は、前記走査長さの中心位置から予め定められた距離だけ離間した位置に設けられ、受光面が点状の光電変換素子である、光走査装置。
【請求項2】
被走査対象に照射される第1の光と、第2の光とを出射する光源部と、
前記第1の光と、前記第2の光とを反射する光走査部と、
前記第2の光を受光する光検出部と、
前記光走査部における反射部の予め定められた領域と検出部とにより形成される静電容量であって、前記光走査部の前記反射部の傾斜角度に対応して変化する前記静電容量の変化と、前記第2の光に応じた前記光検出部の出力とに基づいて、前記反射部の状態を検出する状態検出部と
を備えている光走査装置であって、
前記光検出部は、前記光走査部が前記光検出部において前記第2の光を走査する走査長さの少なくとも一部に設けられた光電変換素子を有しており、
前記光電変換素子は、受光面が前記走査長さ以上の長さを有する線状の光電変換素子であり、
前記状態検出部は、前記光検出部の出力に基づいて、前記反射部における反射面と予め定められた平面との成す走査角度を補正し、
前記光走査装置は、前記静電容量を電圧信号に変換する容量電圧変換部をさらに備え、
前記容量電圧変換部は、前記光検出部の出力に基づいて、前記容量電圧変換部が出力する電圧信号を大きくするよう補正する、光走査装置。
【請求項3】
被走査対象に照射される第1の光と、第2の光とを出射する光源部と、
前記第1の光と、前記第2の光とを反射する光走査部と、
前記第2の光を受光する光検出部と、
前記光走査部における反射部の予め定められた領域と検出部とにより形成される静電容量であって、前記光走査部の前記反射部の傾斜角度に対応して変化する前記静電容量の変化と、前記第2の光に応じた前記光検出部の出力とに基づいて、前記反射部の状態を検出する状態検出部と
前記第1の光と前記第2の光とを分離して、前記第1の光を前記被走査対象に入射させ、前記第2の光を前記光検出部に入射させる光分離部と、
前記光走査部から反射された光のうち、前記第1の光および前記第2の光を反射する第1の光学部材と、
前記第1の光学部材からそれぞれ反射された前記第1の光および前記第2の光を反射する追加の光走査部と、
を備え
前記光分離部は、前記追加の光走査部から反射された光のうち、前記第1の光を前記被走査対象に入射させ且つ前記第2の光を前記光検出部に入射させる、
光走査装置。
【請求項4】
被走査対象に照射される第1の光と、第2の光とを出射する光源部と、
前記第1の光と、前記第2の光とを反射する光走査部と、
前記第2の光を受光する光検出部と、
前記光走査部における反射部の予め定められた領域と検出部とにより形成される静電容量であって、前記光走査部の前記反射部の傾斜角度に対応して変化する前記静電容量の変化と、前記第2の光に応じた前記光検出部の出力とに基づいて、前記反射部の状態を検出する状態検出部と、
前記光走査部から反射された光のうち、前記第2の光の一部を透過し、前記第2の光における前記一部以外の部分と前記第1の光とを反射する第2の光学部材と、
前記第2の光学部材からそれぞれ反射された前記第1の光および前記第2の光を反射する追加の光走査部と、
追加の光検出部と、
前記追加の光走査部から反射された光のうち、前記第1の光を前記被走査対象に入射させ且つ前記第2の光を前記追加の光検出部に入射させる第3の光学部材と
を備え、
前記第2の光学部材を透過した前記第2の光の前記一部が、前記光検出部に入射する
光走査装置。
【請求項5】
被走査対象に照射される第1の光と、第2の光とを出射する光源部と、
前記第1の光と、前記第2の光とを反射する光走査部と、
前記第2の光を受光する光検出部と、
前記光走査部における反射部の予め定められた領域と検出部とにより形成される静電容量であって、前記光走査部の前記反射部の傾斜角度に対応して変化する前記静電容量の変化と、前記第2の光に応じた前記光検出部の出力とに基づいて、前記反射部の状態を検出する状態検出部と
を備えており、
前記光走査部と、前記光検出部とは同一基板上に設けられる、
光走査装置。
【請求項6】
被走査対象に照射される第1の光と、第2の光とを出射する光源部と、
前記第1の光と、前記第2の光とを反射する光走査部と、
前記第2の光を受光する光検出部と、
前記光走査部における反射部の予め定められた領域と検出部とにより形成される静電容量であって、前記光走査部の前記反射部の傾斜角度に対応して変化する前記静電容量の変化と、前記第2の光に応じた前記光検出部の出力とに基づいて、前記反射部の状態を検出する状態検出部と
を備えており、
光走査部の使用時間の長さに応じて、前記光源部から出射される前記第2の光の強度を高くする
光走査装置。
【請求項7】
前記光検出部は、前記光走査部が前記光検出部において前記第2の光を走査する走査長さの少なくとも一部に設けられた光電変換素子を有する
請求項3から6のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項8】
前記光電変換素子は、受光面が前記走査長さ以上の長さを有する線状の光電変換素子である
請求項またはに記載の光走査装置。
【請求項9】
前記光電変換素子は、前記走査長さの中心位置から予め定められた距離だけ離間した位置に設けられ、受光面が点状の光電変換素子である
請求項またはに記載の光走査装置。
【請求項10】
前記状態検出部は、前記光検出部の出力に基づいて、前記反射部における反射面と予め定められた平面との成す走査角度を補正する
請求項またはに記載の光走査装置。
【請求項11】
前記状態検出部は、前記光検出部の出力に基づいて、前記反射部における反射面と予め定められた平面との成す走査角度の正負を補正する
請求項1から10のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項12】
前記第1の光と前記第2の光とは、前記反射部の異なる位置に入射する
請求項1から11のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項13】
前記光走査部に入射する前に、前記第1の光と、前記第1の光の波長とは異なる波長を有する前記第2の光とを光路上において重ね合わせる光結合部をさらに備える
請求項1から11のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項14】
前記第1の光と前記第2の光とを分離して、前記第1の光を前記被走査対象に入射させ、前記第2の光を前記光検出部に入射させる光分離部をさらに備える請求項1、2、4から6のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項15】
前記光走査部から反射された光のうち、前記第1の光および前記第2の光を反射する第1の光学部材と、
前記第1の光学部材からそれぞれ反射された前記第1の光および前記第2の光を反射する追加の光走査部と
をさらに備え、
前記光分離部は、前記追加の光走査部から反射された光のうち、前記第1の光を前記被走査対象に入射させ且つ前記第2の光を前記光検出部に入射させる
請求項14に記載の光走査装置。
【請求項16】
前記光走査部から反射された光のうち、前記第2の光の一部を透過し、前記第2の光における前記一部以外の部分と前記第1の光とを反射する第2の光学部材と、
前記第2の光学部材からそれぞれ反射された前記第1の光および前記第2の光を反射する追加の光走査部と、
追加の光検出部と、
前記追加の光走査部から反射された光のうち、前記第1の光を前記被走査対象に入射させ且つ前記第2の光を前記追加の光検出部に入射させる第3の光学部材と
をさらに備え、
前記第2の光学部材を透過した前記第2の光の前記一部が、前記光検出部に入射する
請求項1、2、5および6のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項17】
前記光源部は、前記第1の光を出射する間、前記第2の光を出射し続ける
請求項1から16のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項18】
前記光走査部と、前記光検出部とは同一基板上に設けられる
請求項1からのいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項19】
光走査部の使用時間の長さに応じて、前記光源部から出射される前記第2の光の強度を高くする
請求項1からのいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載の光走査装置を有する、計測器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置および計測器に関する。
【0002】
従来、マイクロミラーに設けられた回動部の変位を、マイクロミラーに設けられた櫛歯部間の容量の変化に応じた電圧により検出することが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、支持梁を挟んで設けられた第1の容量素子および第2の容量素子を有する光走査装置において、第1の容量素子の静電容量が最大となる可動部の変位量と、第2の容量素子の静電容量が最大となる可動部の変位量とが異なること知られている。但し、この場合、可動部の厚み方向において段差部を設ける必要がある(例えば、特許文献2参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2005-208251号公報
[特許文献2] 特開2004-245890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
可動部の厚み方向において段差部を設けることなく、光スキャナにおける走査角度の正負(+θ度であるのか、または、-θ度であるのか)を特定することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、光走査装置を提供する。光走査装置は、光源部と、光走査部と、光検出部と、状態検出部とを備えてよい。光源部は、第1の光と、第2の光とを出射してよい。第1の光は、被走査対象に照射されてよい。光走査部は、第1の光と第2の光とを反射してよい。光検出部は、第2の光を受光してよい。状態検出部は、静電容量の変化と、第2の光に応じた光検出部の出力とに基づいて、反射部の状態を検出してよい。静電容量は、光走査部における反射部の予め定められた領域と検出部とにより形成されてよい。静電容量は、光走査部の反射部の傾斜角度に対応して変化してよい。光走査装置は、光走査部を揺動するために設けられた駆動部を備えてよい。静電容量を形成する検出部は、駆動部とは別個に設けられてよい。
【0005】
光検出部は、光電変換素子を有してよい。光電変換素子は、光走査部が光検出部において第2の光を走査する走査長さの少なくとも一部に設けられてよい。
【0006】
光電変換素子は、受光面が走査長さ以上の長さを有する線状の光電変換素子であってよい。これに代えて、光電変換素子は、受光面が点状の光電変換素子であってもよい。受光面が点状の光電変換素子は、走査長さの中心位置から予め定められた距離だけ離間した位置に設けられてよい。
【0007】
状態検出部は、光検出部の出力に基づいて、走査角度を補正してよい。走査角度は、反射部における反射面と予め定められた平面との成す角度であってよい。
【0008】
光走査装置は、容量電圧変換部をさらに備えてよい。容量電圧変換部は、静電容量を電圧信号に変換してよい。容量電圧変換部は、光検出部の出力に基づいて、容量電圧変換部が出力する電圧信号を大きくするよう補正してよい。
【0009】
状態検出部は、光検出部の出力に基づいて、走査角度の正負を補正してよい。走査角度は、反射部における反射面と予め定められた平面との成す角度であってよい。
【0010】
第1の光と第2の光とは、反射部の異なる位置に入射してもよい。
【0011】
光走査装置は、光結合部をさらに備えてよい。光結合部は、光走査部に入射する前に、第1の光と第2の光とを光路上において重ね合わせてよい。第2の光は、第1の光の波長とは異なる波長を有してよい。
【0012】
光走査装置は、光分離部をさらに備えてよい。光分離部は、第1の光と第2の光とを分離して、第1の光を被走査対象に入射させ、第2の光を光検出部に入射させてよい。
【0013】
光走査装置は、第1の光学部材と、追加の光走査部とをさらに備えてよい。第1の光学部材は、光走査部から反射された光のうち、第1の光および第2の光を反射してよい。追加の光走査部は、第1の光学部材からそれぞれ反射された第1の光および第2の光を反射してよい。光分離部は、追加の光走査部から反射された光のうち、第1の光を被走査対象に入射させ且つ第2の光を光検出部に入射させてよい。
【0014】
第1の光学部材と追加の光走査部とをさらに備えることに代えて、光走査装置は、第2の光学部材と、追加の光走査部と、追加の光検出部と、第3の光学部材とをさらに備えてよい。第2の光学部材は、光走査部から反射された光のうち、第2の光の一部を透過し、第2の光における一部以外の部分と第1の光とを反射してよい。追加の光走査部は、第2の光学部材からそれぞれ反射された第1の光および第2の光を反射してよい。第3の光学部材は、追加の光走査部から反射された光のうち、第1の光を被走査対象に入射させ且つ第2の光を追加の光検出部に入射させてよい。第2の光学部材を透過した第2の光の一部が、光検出部に入射してよい。
【0015】
光源部は、第1の光を出射する間、第2の光を出射し続けてよい。
【0016】
光走査部と、光検出部とは同一基板上に設けられてよい。
【0017】
光走査部の使用時間の長さに応じて、光源部から出射される第2の光の強度を高くしてよい。
【0018】
本発明の第2の態様においては、光走査装置を有する計測器を提供する。
【0019】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態における光走査装置200の概要を示す図である。
図2】光スキャナ30およびCV変換部70を示す図である。
図3】(a)は反射部32の状態の例を示し、(b)は傾斜角度θと静電容量Cとの関係を示し、(c)は傾斜角度θの時間変化を示し、(d)は静電容量Cの時間変化を示す。
図4】(a)は1次元PSD61の上面図であり、(b)は1次元PSD61の断面図である。
図5】(a)は傾斜角度θの時間変化を示し、(b)は光検出部60における光量重心gの位置の時間変化を示し、(c)はCV変換部70における出力電圧の時間変化を示す。
図6】第1実施形態の第1変形例である光走査装置210を示す図である。
図7】第1実施形態の第2変形例である光走査装置220を示す図である。
図8】光検出部60の変形例である、受光面62が点状の光電変換素子68を示す図である。
図9】(a)は傾斜角度θの時間変化を示し、(b)は走査角度±θで反射面33が振動する場合における光検出部60の出力電流を示し、(c)は走査角度±θで反射面33が振動する場合における光検出部60の出力電流を示す。
図10】第2実施形態における光走査装置230の概要を示す図である。
図11】第3実施形態における光走査装置240の概要を示す図である。
図12】第3実施形態の変形例である光走査装置250を示す図である。
図13】第4実施形態における光走査装置260の概要を示す図である。
図14】第4実施形態の変形例である光走査装置270を示す図である。
図15A】光スキャナ130においてレーザー光がX‐Z平面方向に広がった第5実施形態を示す図である。
図15B】スクリーン300における第1の光13の走査範囲を示す図である。
図16】第6実施形態である光走査装置280を示す図である。
図17】第7実施形態である光走査装置290を示す図である。
図18】第8実施形態における共焦点顕微鏡システム500を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0022】
図1は、第1実施形態における光走査装置200の概要を示す図である。本例のZ軸は、X軸およびY軸に直交する軸である。本例のX、YおよびZ軸は、右手系を構成する。X、YおよびZ軸は、光走査装置200等の相対的な方向を示すために用いられる。Y軸方向は、必ずしも重力方向と平行でなくてよい。本明細書において、Y軸方向と平行な方向を指す表現として「上」よおび「下」等を用いるが、これらの用語もまた重力方向における上下方向に限定されない。
【0023】
光走査装置200は、窓部98から被走査対象へ第1の光13を照射し、被走査対象を第1の光13で走査する機能を有してよい。本例の被走査対象は、スクリーン300である。本例の光走査装置200は、光源部10と、光結合部20と、光スキャナ30と、ダイクロイックミラー50と、光検出部60と、CV変換部70と、配線基板79と、走査角度出力部80と、制御部90と、交流電源部92と、直流電源部94とを含む。
【0024】
本例の光源部10は、第1の光13を出射する第1の光源11と、第2の光14を出射する第2の光源12とを含む。本例の第1の光13および第2の光14は、互いに異なる波長を有するレーザー光である。例えば、第1の光13は波長帯域450nm以上495nm以下の光であり、第2の光14は波長帯域750nm以上1400nm以下の光である。ただし、これは一例であり、第1の光13および第2の光14の波長帯域は当該範囲に限定されない。
【0025】
本例のコンバイナ22およびコンバイナ24は、光結合部の一例である。本例において、第1の光13は、コンバイナ22により反射され、コンバイナ24に入射する。コンバイナ22は、第1の光13を反射するミラーであってよい。本例において、コンバイナ24は第2の光14を反射し、かつ、第1の光13を透過させる。これにより、第1の光13と第2の光14とが光スキャナ30に入射する前に、両者を光路上において重ね合わせられる。本例においては、第1の光13および第2の光14を反射部32の表面における一点(一箇所のスポット)に当てることができるので、第1の光13および第2の光14を反射部32の表面の異なる位置に当てる場合に比べて、光学系の設計および組み立てが比較的容易である。
【0026】
本例において、第1の光13および第2の光14の両方は、光スキャナ30で反射された後、ダイクロイックミラー50で分離される。本例のダイクロイックミラー50は、光分離部の一例である。本例のダイクロイックミラー50は、光スキャナ30から各々反射された第1の光13と第2の光14とを分離する。本例のダイクロイックミラー50は、第1の光13をスクリーン300に入射させ、第2の光14を光検出部60に入射させる。
【0027】
詳細については後述するが、光検出部60および第2の光14は、光スキャナ30の走査角を補正するために用いられてよい。光検出部60は、第2の光14を受光して光電変換することにより、第2の光14の強度に応じた電流信号を走査角度出力部80へ出力してよい。
【0028】
本例においては、第1の光13と第2の光14とを用いるので、スクリーン300を走査するための第1の光13の強度と、走査角の補正をするための第2の光14の強度とを個別に調節することができる点が有利である。これにより、例えば、スクリーン300をより高い強度の第1の光13で走査し、かつ、光検出部60へ入射する第2の光14の強度は一定とすることができる。例えば、画像または動画をスクリーン300に表示する場合に、第1の光13の強度は調整するが、第2の光14の強度を一定にする。
【0029】
なお、1種類のみの波長帯域の光をビームスプリッタにより分離することにより一部をスクリーン300に入射させ且つ残りを光検出部60に入射させる他の例においては、被走査対象へ照射される光の強度を下げると、光検出部60へ入射する光の強度も付随して低下することになる。この場合、光検出部60へ入射する光の強度が光検出部60における測定可能範囲外となる問題があるが、本例ではこの問題を解消することができる。
【0030】
本例の光スキャナ30は、光走査部の一例である。本例の光スキャナ30は、MEMS(MicroElectro Mechanical Systems)の一例である。光スキャナ30は、サイズの微小さゆえに、マイクロミラーおよびマイクロスキャナ等とも呼ばれる。光スキャナ30は、反射部32と、反射部32を揺動させるように駆動する駆動部34と、駆動部34を支持する基体部36とを含んでよい。
【0031】
本例の反射部32は、その最表面に、第1の光13および第2の光14を反射する反射面33を有する。また、本例の反射部32は、本体部と、X軸方向において揺動可能に本体部を支持する軸部42と、本体部上に形成されて反射面33として機能する約100nmの厚みのアルミニウム(Al)膜とを有する。反射部32は、軸部42を中心として比較的小さな揺動角度で高速に揺動する(即ち、振動する)。なお、本例の軸部42は、反射部32の揺動に伴い捻じれる、いわゆる捻じり棒ばね(torsion bar)である。
【0032】
駆動部34は電圧値Vの交流電源部92に接続し、反射部32は電圧値Vの直流電源部94に接続してよい。なお、交流電源部92は、可変交流電源であってよい。駆動部34と反射部32とは微小ギャップを介して電気的に絶縁されており、両者の間には各電源部により供給された電荷に応じたクーロン力(静電力または静電引力ともいう)が生じてよい。本例の駆動部34は基体部36等を介して配線基板79に固定されており、反射部32は駆動部34に対して相対的に揺動する。
【0033】
本例の反射部32および反射面33は、X‐Z面に平行な平面に対して最大で|±θ|度傾くように揺動する。また、本例においては、任意の時間において反射部32または反射面33とX‐Z面に平行な平面とが成す角度を傾斜角度θと表す。これに対して、反射部32または反射面33における傾斜角度θの大きさの最大値をθと表す。つまり、‐θ≦傾斜角度θ≦θである。また、本例において、反射部32または反射面33の傾斜角度θを、走査角度と称する。走査角度は、走査角の角度の大きさでもある。なお、本例において、反射部32の傾斜角度θは反射面33の傾斜角度θと等しい。それゆえ、本例においては両者を区別しないが、通常、傾斜角度θは反射面33の傾斜角度θを意味するとしてよい。
【0034】
光スキャナ30は、例えばSOI(Silicon on Insulator)基板をエッチングすることにより形成することができる。例えば、第1の単結晶シリコン層、二酸化シリコン(SiO)層および第2の単結晶シリコン層を有するSOI基板を、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)により微細加工することにより、光スキャナ30を形成することができる。一例において、反射部32、駆動部34および軸部42は、第1の単結晶シリコン層を加工することにより形成されてよい。基体部36は、第2の単結晶シリコン層を加工することにより形成されてよい。少なくとも反射部32の直下に位置する二酸化シリコン層および第2の単結晶シリコン層は、全て除去されてよい。なお、駆動部34と基体部36との間には、二酸化シリコン層が残存してよい。
【0035】
本例のCV変換部70は、容量電圧変換部の一例である。本例のCV変換部70は、チャージアンプ回路である。CV変換部70は、静電容量Cを電圧信号に変換する機能を有してよい。後述するように、静電容量Cは、反射部32における予め定められた領域37と検出部38とにより形成されてよい。静電容量Cは、反射部32の傾斜角度θに応じで変化してよい。本例のCV変換部70は、傾斜角度θの変化を電流信号として光スキャナ30から受け取り、これを電圧信号に変換して走査角度出力部80に出力する。
【0036】
なお、光スキャナ30およびCV変換部70は、同一の配線基板79上に近接して設けられる。例えば、光スキャナ30およびCV変換部70は数mm以内に近接して設けられる。これにより、光スキャナ30およびCV変換部70を別の基板上に離間して設ける場合に比べて、光スキャナ30から出力される電流信号にノイズが乗る可能性を低減することができるので、傾斜角度θの検出精度を向上させることができる。
【0037】
本例の走査角度出力部80は、状態検出部の一例である。走査角度出力部80は、光検出部60からの電流信号と、静電容量Cの変化に対応するCV変換部70からの電圧信号とに基づいて、反射部32の状態を検出してよい。反射部32の傾斜角度θは、反射部32の状態の一例である。つまり、走査角度出力部80は、任意の時刻における反射部32の傾斜角度θ(走査角度θを含む)を検出してよい。
【0038】
さらに、本例の走査角度出力部80は、光検出部60からの電流信号のみに基づいて、傾斜角度θ(走査角度θを含む)を検出することもできる。また、本例の走査角度出力部80は、光検出部60からの電流信号のみに基づいて、反射部32がX‐Z面に平行な平面に対して「反時計回り」に進んだ傾斜角度+θを有するのか、または、「時計回り」に進んだ傾斜角度-θを有するのかを検出することもできる。なお、傾斜角度の正負(即ち、傾斜方向)も、反射部32の状態の一例である。
【0039】
制御部90は、走査角度出力部80からの情報に基づいて、第1の光源11および第2の光源12の出力と、交流電源部92の電圧値Vとの少なくともいずれかを制御してよい。制御部90は、走査角度θを一定に保つべく、電圧値Vの大きさを増加または減少させてよい。また、制御部90は、適切な光の強度でスクリーン300を走査するべく、第1の光源11のレーザー光の出力を増加または減少させてよい。
【0040】
さらに、制御部90は、光検出部60において光の強度に対して光電変換される電荷の量が直線性を有するように、第2の光14の強度を増加または減少させてよい。より好ましくは、制御部90は、第2の光14におけるガウシアン強度分布のピークが、前述の直線性を実現する光の強度の範囲の上限値と下限値との中央値となるように、第2の光14の強度を調節してよい。
【0041】
また、制御部90は、光スキャナ30の使用時間の長さに応じて、光源部10から出射される第2の光14の強度を高くしてもよい。なお、光源部10がレーザー光を出射する本例において、光の強度とは、例えば、単位面積・単位時間当たりのエネルギー[W/cm]である。例えば、1年以上使用すると反射面33であるアルミニウム膜が部分的に剥げる場合があり、これにより光スキャナ30から出射されるレーザー光の強度が弱くなる場合がある。光スキャナ30の使用時間に応じてレーザー光の強度を上げることにより、レーザー光の強度を制御しない場合に比べて、光検出部60に入射する光の強度を一定に保つことができる。
【0042】
図2は、光スキャナ30およびCV変換部70を示す図である。光スキャナ30およびCV変換部70を破線の枠で囲んで示す。理解を容易にすることを目的として、光スキャナ30についてはX、YおよびZ軸と共に上面図を示し、CV変換部70については回路図を示す。
【0043】
本例において、反射部32の本体部および反射面33は、上面視において矩形形状である。本例の反射部32は、本体部のZ軸方向の両端部に設けられ且つX軸方向において互いに離間して設けられた複数の櫛歯31‐1および31‐2を含む。また、本例において、反射部32および固定部40‐1はX軸方向において軸部42‐1を介して接続され、反射部32および固定部40‐2はX軸方向において軸部42‐2を介して接続される。
【0044】
本例の光スキャナ30は、軸部42に対して線対称な位置に、一対の駆動部34‐1および34‐2と、一対の検出部38‐1および検出部38‐3ならびに一対の検出部38‐2および検出部38‐4を有する。本例において、駆動部34‐1、検出部38‐1および検出部38‐2は、反射部32の+Z方向に対向する。また、駆動部34‐2、検出部38‐3および検出部38‐4は、反射部32の-Z方向に対向する。X軸方向において、検出部38‐1および検出部38‐2は駆動部34‐1を挟み、検出部38‐3および検出部38‐4は駆動部34‐2を挟む。
【0045】
本例における駆動部34‐1および駆動部34‐2の各々は、Z軸方向に突出する櫛歯35‐1および35‐2を有する。また、本例における検出部38‐1から38‐4の各々も、Z軸方向に突出する櫛歯39‐1から39‐4を有する。櫛歯35および櫛歯39は、反射部32の櫛歯31とかみ合うように配置されてよい。本例において、櫛歯35および櫛歯39の各々は、微小ギャップ空間を形成するように、反射部32の矩形の端部と反射部32の櫛歯31とから離間する。
【0046】
また、本例において、反射部32の櫛歯31および本体部には、電圧値Vが印加される。また、本例の駆動部34の櫛歯35および本体部には、電圧値Vが印加される。このようにして、反射部32の予め定められた領域37‐1から37‐4と検出部38‐1から38‐4とにより、静電容量Cが形成される。静電容量Cは、反射部32の揺動に応じて、変化してよい。
【0047】
本例において、全ての検出部38は互いに電気的に接続し、CV変換部70の増幅器72の反転入力端子(-)に電気的に接続する。本例において、静電容量C(領域37‐1と検出部38‐1とにより形成される)から静電容量C(領域37‐4と検出部38‐4とにより形成される)は、反射部32の揺動に応じて同様に変化する。また、本例において、静電容量Cは静電容量CからCの和であり(C=C+C+C+C)、CV変換部70は各静電容量CからCの変化の和を、ΔCとして検出することができる。これにより、例えば1つの静電容量Cのみの変化を検出する場合に比べて、ノイズ耐性を向上させることができる。
【0048】
反射部32と検出部38との間の電位差は所定の値であってよく、本例において当該電位差はVであるとする。これに対して、反射部32の揺動に伴い静電容量Cは変化する。本例においては、静電容量Cの変化量をΔCと表す。静電容量Cの変化に対応して、静電容量Cに蓄積される電荷量Qが変化する。本例においては、電荷量Qの変化をΔQと表す。反射部32の傾斜角度θの変化はΔQに変換され、単位時間当たりのΔQが電流信号IINとして増幅器72の反転入力端子(-)に入力される。
【0049】
本例のCV変換部70は、電流信号IINを電圧信号VOUTに変換するチャージアンプ回路である。本例のCV変換部70は、増幅器72と、増幅器72に各々並列に接続されるコンデンサ76および抵抗器74とを有する。増幅器72は、非反転入力端子(+)と、反転入力端子(-)と、出力端子78とを有する。非反転入力端子(+)は電気的に接地されてよい。
【0050】
本例において、抵抗器74の一端は反転入力端子(-)に電気的に接続され、他端は出力端子78に電気的に接続される。抵抗器74は、MΩからGΩ程度の高い抵抗値を有してよい。本例の抵抗器74は、1GΩの抵抗値を有する。抵抗器74は、電流信号IINの直流成分を通過させることなく、かつ、増幅器72のネガティブフィードバック経路として機能することができる。なお、反転入力端子(-)と非反転入力端子(+)とは仮想接地されているので、検出部38は接地電位であると見なしてもよい。
【0051】
本例において、コンデンサ76の一端は反転入力端子(-)に電気的に接続され、他端は出力端子78に電気的に接続される。本例において、コンデンサ76の静電容量Cは変化せず、一定である。それゆえ、電流信号IINにより電荷がチャージ/ディスチャージされると、コンデンサ76の電荷量Qが変化する。本例においては、電荷量Qの変化をΔQと表す。ΔQに応じてコンデンサ76における電圧Vが変化する。本例においては、電圧Vの変化をΔVと表す。これにより、電流信号IINは電圧信号VOUTに変換される。ただし、当該説明はVOUTについての定性的な説明である。
【0052】
増幅器72の出力端子78から出力される電圧信号VOUTは、増幅器72における抵抗器74のRおよびコンデンサ76の静電容量C、静電容量C、直流電源部94の電圧値Vを用いて、定量的には[数1]で表される。ただし、jは虚数単位であり、ωは周期的に変化する静電容量Cの周波数である。
[数1]
OUT=(-jωR)/(1+jωC
【0053】
なお、増幅器72における利得Gは、[数1]を変形することにより[数2]で表される。
[数2]
G=|VOUT/C|=ωR|V|/{1+(ωC1/2
【0054】
ここで、ωが十分高く、ωCが1よりも十分に大きい場合には、利得Gは[数3]に近似することができる。なお、[数3]において「≒」は、近似であることを意味する。Cは一定であるので、Vが一定であれば、利得Gは一定となる。
[数3]
G≒|V|/C
【0055】
図3の(a)は、反射部32の状態の例を示す。図3の(a)の左側は、反射面33がX‐Z面に平行な平面に対して「時計回り」に進んだ傾斜角度θ=-θの状態を示す。θ=-θの状態において、反射部32における櫛歯31‐1の下部と検出部38‐1の櫛歯39‐1の上部とはX軸方向において部分的に重なってよく、櫛歯31‐2の上部と櫛歯39‐3の下部とはX軸方向において部分的に重なってよい。θ=-θの状態において、静電容量Cは最小となる。
【0056】
また、図3の(a)の右側は、反射面33がX‐Z面に平行な平面に対して「反時計回り」に進んだ傾斜角度θ=+θの状態を示す。θ=+θの状態において、反射部32における櫛歯31‐1の上部と検出部38‐1の櫛歯39‐1の下部とはX軸方向において部分的に重なってよく、櫛歯31‐2の下部と櫛歯39‐3の上部とはX軸方向において部分的に重なってよい。θ=+θの状態においても、静電容量Cは最小となる。
【0057】
さらに、図3の(a)の中央は、反射面33がX‐Z面に平行である傾斜角度θ=0の状態を示す。θ=0の場合に、櫛歯31と櫛歯39とのX軸方向における重なり面積が最大になるので、静電容量Cは最大となる。
【0058】
図3の(b)は、傾斜角度θと静電容量Cとの関係を示す。横軸は傾斜角度θを示し、縦軸は静電容量Cを示す。PからPの各々は、時刻tからtに対応する傾斜角度θおよび静電容量Cを示す。PからPは、図3の(c)および(d)におけるtからtにそれぞれ対応する。上述のように、θ=0(P、PおよびP)の場合に静電容量Cは最大となり、θ=±θ(PおよびP)の場合に静電容量Cは最小となる。
【0059】
図3の(c)は、傾斜角度θの時間変化を示す。横軸は傾斜角度θであり、縦軸は時間tである。本例の傾斜角度θは、θ=0(時刻t)→θ=+θ(時刻t)→θ=0(時刻t)→θ=-θ(時刻t)→θ=0(時刻t)と変化する。
【0060】
図3の(d)は、静電容量Cの時間変化を示す。横軸は時間tであり、縦軸は静電容量Cである。本例の静電容量Cは、最大(時刻t)→最小(時刻t)→最大(時刻t)→最小(時刻t)→最大(時刻t)と変化する。ただし、本例において、静電容量Cの周期は傾斜角度θの周期の半分であるので、静電容量Cの大小をモニタリングするだけでは、傾斜角度θが+θであるのか-θであるのかは特定することができない。これは、本例の反射部32が特許文献2に記載の段差部のような構造を有せず、走査角度±θにおいて静電容量Cが等しいことに起因する。しかしながら、傾斜角度の正負(即ち、傾斜方向)は、第1の光13で被走査対象を正確に走査する上で重要となる。そこで、本例においては、光検出部60を利用して傾斜角度の正負を特定する。
【0061】
図4の(a)は、1次元PSD(Position Sensitive Detector)61の上面図である。光検出部60は、光スキャナ30が光検出部60において第2の光14を走査する走査長さの少なくとも一部に設けられた光電変換素子を有してよい。本例の光検出部60は、受光面62がZ軸方向において長さLを有する1次元PSD61である。1次元PSD61は、線状の光電変換素子の一例である。
【0062】
本例において、第2の光14は、受光面62上を往復走査する。この往復走査において-Z方向の端部に位置する第2の光14のスポットSを破線で示し、当該スポットSの光量重心gを黒丸で示す。また、本例において、往復走査において+Z方向の端部に位置する第2の光14のスポットSを破線で示し、スポットSの光量重心gを黒丸で示す。本例において、第2の光14の往復走査の長さ、即ち、スポットSの-Z方向の端部からスポットSの+Z方向の端部までの長さはLである。これに対して、本例の受光面62におけるZ軸方向の長さLは、走査長さL以上の長さ(即ち、L≦L)である。
【0063】
本例の1次元PSD61は、X軸方向の短辺とZ軸方向の長辺とを有する矩形形状である。1次元PSD61は、Z軸方向の両端部に、アノード電極63‐1および63‐2を有する。アノード電極63‐1および63‐2間の距離は、抵抗長とも呼ばれ、受光面62のZ軸方向の長さLに等しい。本例では長さLの中点を、基準位置(ゼロ点)とする。本例では、スポットSの光量重心gがゼロ点から+Z方向に離れた位置zに位置する場合を示す。
【0064】
図4の(b)は、1次元PSD61の断面図である。本例の1次元PSD61は、第2の光14の入射側に近い順に、P型層65、I型層66およびN型層67を有する。P型層65およびN型層67はI型層66を挟んでPN接合を形成する。P型層65の表面のうち、アノード電極63に覆われていない部分が、受光面62である。P型層65は、光電変換された電流にとっての抵抗層でもある。受光面62に光が入射すると、光量重心gからP型層65上のアノード電極63‐1に電流IZ1が流れ、光量重心gからP型層65上のアノード電極63‐2に電流IZ2が流れる。なお、N型層67下には、カソード電極64が設けられる。
【0065】
この場合、例えば、電流IZ1および電流IZ2の比は、長さLおよび位置zを用いて[数4]のように表される。
[数4]
Z1/IZ2=(L-2z)/(L+2z)
【0066】
Z1およびIZ2は測定から得られ且つ長さLは既知であるので、位置zを算出することができる。位置zと電流比IZ1/IZ2とは一対一に対応するので、[数4]から光量重心gの位置を特定することができる。これにより、1次元PSD61を用いることにより、任意の時刻における光量重心gの位置を特定することができる。本例においては、光量重心gの位置がゼロ点よりも+Z方向に位置する場合に走査角度θが正であり、光量重心gの位置がゼロ点よりも-Z方向に位置する場合に走査角度θが負である。このように本例では、光検出部60を利用して傾斜角度の正負を特定することができる。
【0067】
図5の(a)は、傾斜角度θの時間変化を示す。図5の(a)は、図3の(c)に対応する。横軸は時間tであり、縦軸は傾斜角度θである。但し、本例においては、時刻tから時刻tまでを示す。時刻tから時刻tまでの傾斜角度θの振る舞いは、時刻tから時刻tまでと同じである。
【0068】
図5の(b)は、光検出部60における光量重心gの位置の時間変化を示す。横軸は時間tであり、縦軸は光量重心gの位置である。本例の光量重心gは、-L/2≦z≦L/2の範囲で変化する。なお、光量重心gの位置の変化の周期と傾斜角度θの周期とは一致するので、走査角度θの情報は走査長さLの情報に変換可能である。
【0069】
図5の(c)は、CV変換部70における出力電圧の時間変化を示す。横軸は時間tであり、縦軸はCV変換部70の電圧信号VOUT[V]である。図3の(c)および(d)の例からも明らかなように、静電容量Cの周期は傾斜角度θの周期の半分となる。同様に、本例の電圧信号VOUTの周期は傾斜角度θの周期の半分となる。
【0070】
上述の[数2]および[数3]を利用すると、電圧値Vが一定である場合には、VOUTを測定することにより静電容量Cを算出することができる。図5の(c)において、電圧値Vが一定である場合のVOUTを実線で示す。本例の走査角度出力部80は、VOUTにより反射面33の傾斜角度θを算出し、また、光検出部60の出力により走査角度θの正負を補助的に補正する。これにより、任意の時刻においてVOUTから光検出部60に比べて高い精度で傾斜角度θを得つつ、光検出部60を利用して正しい走査角度θも得ることもできる。
【0071】
ただし、電気的外乱により電圧値Vの大きさが変動すると、上述の[数2]および[数3]から明らかなように、利得Gが変化する。利得Gが変化すると、仮に走査角度θが利得Gの変化の前後において一定であったとしても、VOUTのピークピーク値(peak‐to‐peak value)が変化する。この場合、VOUTの測定により正しい走査角度θを算出することができなくなる。図5の(c)において、電圧値Vが減少した例におけるVOUTを破線で示す。
【0072】
そこで、走査角度出力部80は、光検出部60の出力に基づいて、走査角度θを補正してよい。つまり、走査角度出力部80は、光検出部60の出力に基づいて、走査角度θの大きさに対応する電圧信号VOUTのピークピーク値を補正してよい。より具体的には、利得Gが変化しても光検出部60における光量重心gのピークピーク値は変化しないので、走査角度出力部80は、光量重心gのピークピーク値(本例では、±L/2)を基準として逐次的に電圧信号VOUTのピークピーク値を補正することができる。
【0073】
本例の走査角度出力部80は、光検出部60の出力電流に基づいて、電圧信号VOUTの大きさをピークピーク値2Nからこれより大きい2Mにするよう補正する。このように本例では、特定の時刻における走査角度θの正負と、走査角度θの大きさとを補正する。走査角度θの正負と走査角度θの大きさとの補正は、上述した走査角の補正に対応してよい。
【0074】
静電容量Cは光スキャナ30の温度によって変化する場合がある。任意温度における光検出部60の出力と電圧信号VOUTとの関係を示すテーブルを予め準備しておけば、当該テーブルに基づいて光検出部60の出力から電圧信号VOUTを走査角度出力部80が補正することもできる。走査角度出力部80は、温度変化のテーブルと光検出部60の出力との両方に基づいて、電圧信号VOUTを補正してもよい。
【0075】
なお、光源部10は、第1の光13を出射する間、第2の光14を出射し続けてよい。つまり、ピークピーク値と走査角度θの正負との補正に用いる光検出部60のための第2の光14は、スクリーン300を第1の光13で走査する間、常に出してよい。これにより、スクリーン300を第1の光13で走査間、常に第1の光13を補正することができる。
【0076】
図6は、第1実施形態の第1変形例である光走査装置210を示す図である。本例において、第1の光13および第2の光14は、光路上において重ね合わされず且つ反射部32の異なる位置に入射する。ただし、本例において、第1の光13および第2の光14は、互いに平行に反射部32に入射する。例えば、第1の光13および第2の光14は、光量重心gが互いに微小距離Δzだけずれて、反射面33の略中央に入射する。これにより、コンバイナ22および24を用いることなく、第1実施形態と同じ機能を有する光走査装置210を実現することができる。本例は、部品点数を減らすことができる点が、第1実施形態に比べて有利である。
【0077】
図7は、第1実施形態の第2変形例である光走査装置220を示す図である。本例において、第1の光13および第2の光14は、光路上において重ね合わされず且つ異なる角度で反射部32の同じ位置に入射する。本例において、傾斜角度θ=0の反射面33に対する鉛直線44と第1の光13とは角度αを形成し、鉛直線44と第2の光14とは角度αよりも大きな角度βを形成する。これにより、第1の光13と第2の光14とを光スキャナ30で走査しつつも、第1の光13および第2の光14の出射先を分けることができる。なお、角度αおよびβは、反射部32から窓部98までの距離と、反射部32から反射部52までの距離とに応じて適宜定めてよい。
【0078】
本例では、第1の光13は窓部98からスクリーン300へ照射され、第2の光14は反射部52で反射され光検出部60に入射する。ただし、第1の光13も第2の光14も光スキャナ30により同じ走査角度θで走査されるので、第1実施形態と同じ機能を有する光走査装置210を実現することができる。本例ではダイクロイックミラー50等を必要としないので、部品点数を減らすことができる点が第1実施形態に比べて有利である。また、本例においては、光検出部60と光スキャナ30とを配線基板79上に設ける。これにより、光学的な組み立てが容易になる点が有利である。
【0079】
図8は、光検出部60の変形例である、受光面62が点状の光電変換素子68を示す図である。光電変換素子68は、走査長さLの中心位置から予め定められた距離lだけ離間した位置に設けられてよい。本例において、走査長さLの中心位置は、図4の(a)の基準位置(ゼロ点)に対応する。光電変換素子68は、ゼロ点から+Z方向に距離lだけ離れた位置に光量重心gが来たタイミングにおいて、光電変換してよい。
【0080】
光電変換素子68は、ドット状の光電変換素子と表現してもよい。図4の(a)および(b)の例のように電気的に独立した複数のアノード電極をP型層に接続するのではなく、光電変換素子68は、1つのアノード電極をP型層に接続し且つ1つのカソード電極をN型層に接続した構造を有すればよい。
【0081】
図9の(a)は、傾斜角度θの時間変化を示す。横軸は時間を示し、縦軸は傾斜角度θを示す。本例においては、走査角度がθである例を実線で示し、走査角度がθよりも小さいθである例を破線で示す。
【0082】
図9の(b)は走査角度±θで反射面33が振動する場合における光検出部60の出力電流を示し、図9の(c)は走査角度±θで反射面33が振動する場合における光検出部60の出力電流を示す。横軸は図9の(a)と同じ時間であり、縦軸は光電変換素子68の出力電流[A]である。
【0083】
本例の光電変換素子68は、第2の光14が入射するタイミングにおいて電流を生成する。本例においては、光量重心gの位置のピークピーク値を検出しないので、電圧信号VOUTのピークピーク値を補正しない。しかしながら、本例においても、光電変換素子68の出力を用いて走査角度θの正負を特定することはできる。本例の光電変換素子68は、反射面33の傾斜角度θが正である場合に電流を生成する。それゆえ、本例においても、走査角度の正負を補正することはできる。また、本例においては、1次元PSD61およびCV変換部70を用いないので、これらを用いる例に比べて低コストで光走査装置200を製造することができる。
【0084】
なお、他の例においては、電圧信号VOUTのピークピーク値を補正してもよい。この場合、走査角度出力部80は、光電変換素子68から電流出力タイミングの間隔と、走査角度θとに対応するテーブルを予め有してよい。例えば、当該テーブルを参照することにより、走査角度出力部80は、光電変換素子68から得られた電流出力タイミングの間隔がΔtである場合には、走査角度θに対応するようにVOUTを補正してよい。同様に、走査角度出力部80は、電流出力タイミングの間隔がΔtである場合には、走査角度θに対応するようにVOUTを補正してよい。
【0085】
図10は、第2実施形態における光走査装置230の概要を示す図である。本例のダイクロイックミラー54は、第1の光13を透過し、第2の光14を反射する。それゆえ、本例においては、窓部98がダイクロイックミラー54の上方に設けられ、光検出部60がダイクロイックミラー54の下方に設けられる。本例は、係る点において第1実施形態と異なるが、第1実施形態と同じ有利な効果を得ることができる。また、本例と上述の各変形例とを組み合わせてもよい。
【0086】
図11は、第3実施形態における光走査装置240の概要を示す図である。本例の光走査装置240は、配線基板79上の光スキャナ130およびCV変換部170と、光スキャナ30から反射された光のうち第1の光13および第2の光14を反射する反射部52とをさらに有する。本例の光スキャナ130は、追加の光走査部の一例である。また、本例の反射部52は、第1の光学部材の一例である。
【0087】
光スキャナ30の軸部42がX軸方向に延伸するのに対して、光スキャナ130の軸部はZ軸方向に延伸する。光スキャナ130は、光スキャナ30をY軸周りに90度だけ回転させた構造を有してよい。本例の光スキャナ130は、反射部52から反射された第1の光13および第2の光14をダイクロイックミラー50へ反射する。第1の光13はダイクロイックミラー50により反射され、第2の光14はダイクロイックミラー50を透過する。本例の光走査装置240は、光スキャナ30により第1の方向においてスクリーン300を走査し、光スキャナ130により第1の方向と直交する第2の方向においてスクリーン300を走査することができる。
【0088】
CV変換部170は、CV変換部70と同様に、光スキャナ130の反射部における予め定められた領域と光スキャナ130の検出部とにより形成される静電容量Cに対応する電圧信号VOUTを走査角度出力部80に出力してよい。また、光検出部60は、2次元PSDであってよい。2次元PSDは、光スキャナ30の走査方向と光スキャナ130の走査方向とを個別に検出できる機能を有していればよく、両面分割型PSDであっても、表面分割型PSDであってもよい。本例においても、走査角度出力部80は、光検出部60の出力に基づいて、走査角度θの大きさに対応する電圧信号VOUTのピークピーク値を補正することができ、走査角度θの正負を補正することもできる。
【0089】
図12は、第3実施形態の変形例である光走査装置250を示す図である。本例の光走査装置250は、反射部52に代えてダイクロイックミラー150‐1を有し、ダイクロイックミラー50に代えてダイクロイックミラー150‐2を有し、さらに、追加的に光検出部160を有する。本例のダイクロイックミラー150‐1は第2の光学部材の一例であり、本例のダイクロイックミラー150‐2は第3の光学部材の一例である。また、本例の光検出部160は、追加の光検出部の一例である。
【0090】
ダイクロイックミラー150‐1は、光スキャナ30から反射された光のうち、第2の光14の一部を透過し、第2の光14における一部以外の部分と第1の光13とを反射してよい。そして、ダイクロイックミラー150‐1を透過した第2の光14の一部が、光検出部60に入射してよい。例えば、第2の光14の50%がダイクロイックミラー150‐1を透過する。本例の走査角度出力部80は、光検出部60の出力に基づいて、電圧信号VOUTのピークピーク値と、光スキャナ30における走査角度θの正負とを補正することができる。
【0091】
また、光スキャナ130は、ダイクロイックミラー150‐1からそれぞれ反射された第1の光13および第2の光14を反射してよい。ダイクロイックミラー150‐2は、光スキャナ130から反射された光のうち、第1の光13をスクリーン300に入射させ且つ第2の光14を光検出部160に入射させてよい。本例においては、第1の光13はダイクロイックミラー150‐2において反射され、第2の光14の残り50%がダイクロイックミラー150‐2を透過する。本例の走査角度出力部80も、光検出部160の出力に基づいて、電圧信号VOUTのピークピーク値と、光スキャナ130における走査角度θの正負とを補正することができる。
【0092】
図13は、第4実施形態における光走査装置260の概要を示す図である。本例のダイクロイックミラー54は、第1の光13を透過し、第2の光14を反射する。それゆえ、本例においては、窓部98がダイクロイックミラー54の上方に設けられ、光検出部60がダイクロイックミラー54の下方に設けられる。本例は、係る点において第3実施形態と異なるが、第3実施形態と同じ有利な効果を得ることができる。なお、本例においては、光検出部60と光スキャナ30および130とを配線基板79上に設ける。これにより、光学的な組み立てが容易になる点が有利である。
【0093】
図14は、第4実施形態の変形例である光走査装置270を示す図である。本例は、窓部98がダイクロイックミラー54の上方に設けられ、光検出部60がダイクロイックミラー54の下方に設けられる点で第4実施形態と同じであり、2つのダイクロイックミラーを有する点で、第3実施形態の変形例と同じである。ただし、第3実施形態のダイクロイックミラー150‐2が、第2の光14を透過し、第1の光13を反射するのに対して、本例のダイクロイックミラー154は、第1の光13を透過し、第2の光14を反射する。係る点で、第3実施形態の変形例と相違する。本例のダイクロイックミラー154は第3の光学部材の一例である。本例においても第3実施形態と同じ有利な効果を得ることができる。
【0094】
なお、本例においては、光検出部160と光スキャナ30および130とを配線基板79上に設ける。これにより、光検出部60および160の両方を配線基板79上に設けない場合に比べて、光学的な組み立てが容易になる点が有利である。ところで、第3および第4実施形態においては、レーザー光を個別の光スキャナ30および130により直交する2つの方向に走査する例を示した。ただし、2つの光スキャナ30および130に代えて、レーザー光を2次元的に走査する2軸光スキャナを1つ用いてもよい。
【0095】
図15Aは、光スキャナ130においてレーザー光がX‐Z平面方向に広がった第5実施形態を示す図である。本例では、第1の光13および第2の光14が光路上において重ね合されている。ただし、本例では、前段の光スキャナ30においては点状に光が入射するのに対して、光スキャナ30から光スキャナ130へ反射される過程でレーザー光が広がる場合を示す。光スキャナ130の反射面におけるレーザー光の範囲を破線にて示す。破線の範囲の面積は、前段の光スキャナ30における点状の光の面積よりも大きい。なお、本例の光走査装置の構成は、例えば第3実施形態の光走査装置240と同じであってよい。
【0096】
図15Bは、スクリーン300における第1の光13の走査範囲を示す図である。本例においては、第1の光13はスクリーン300上の第2方向において曲線状に走査される。これに対して、第1の光13は、第2方向に直交する第1方向においてスクリーン300上を直線状に走査される。
【0097】
ところで、例えば、光スキャナ130の温度変化に起因して、交流電源部92の電圧値Vが一定であっても走査角度θが小さくなる場合がある。光スキャナ130の走査角度θが小さくなった場合、第1の光13がスクリーン300上に走査される範囲は、走査範囲Aから走査範囲Bへ縮小する。これに伴い、第1方向の走査長さは走査長さLから走査長さLへ縮小する。第1方向における走査長の減少は、光検出部60にも同様に反映される。
【0098】
そこで、本例においては、光検出部60(例えば、2次元PSD)の出力に基づいて走査角度θを大きくするよう、交流電源部92‐2の電圧値Vを増加させてよい。一例において、予め定められた走査角度θに対応する光検出部60の走査長さLを記録しておけば、光検出部60においてこの記録された走査長さLが得られるように電圧値Vを調整してよい。
【0099】
図16は、第6実施形態である光走査装置280を示す図である。光走査装置280においては、一つの光源から発せられるレーザー光が用いられてよい。第6実施形態においては、第1の光13と第2の光14とが同じ波長の光であってよい。それゆえ、第1の光源11および第2の光源12のいずれかが用いられてよい。本例の光源部10は、第2の光源12を有さず、第1の光源11を有する。さらに、本例の光走査装置280は、ダイクロイックミラー50に代えてビームスプリッタ56を有する。係る点が、第1実施形態と異なる。
【0100】
本例において、光スキャナ30により反射された第1の光13の一部は、ビームスプリッタ56により反射される。ビームスプリッタ56により反射された第1の光13は、スクリーン300に入射する。これにより、第1の光13でスクリーン300を走査することができる。また、光スキャナ30により反射された第1の光13の残りは、ビームスプリッタ56を透過する。ビームスプリッタ56を透過した第1の光13は、光検出部60に入射する。これにより、光検出部60は、第1の光13の強度に応じた電流信号を走査角度出力部80へ出力することができる。本例においても、第1実施形態と同様に、傾斜角度の正負を特定する等の利点を得ることができる。なお、第1の光源11に代えて、第2の光源12を用いてもよい。また、本例を第2実施形態(図10)の様に変形してもよい。
【0101】
図17は、第7実施形態である光走査装置290を示す図である。光走査装置290においては、一つの光源から発せられるレーザー光が用いられてよい。第7実施形態においても、第1の光13と第2の光14とが同じ波長の光であってよい。それゆえ、第1の光源11および第2の光源12のいずれかが用いられてよい。本例の光源部10は、第2の光源12を有さず、第1の光源11を有する。さらに、本例の光走査装置290は、ダイクロイックミラー50に代えてビームスプリッタ56を有する。係る点が、第3実施形態(図11)と異なる。
【0102】
本例においても、ビームスプリッタ56により反射された第1の光13でスクリーン300を走査することができる。また、ビームスプリッタ56を透過した第1の光13は、光検出部60に入射する。これにより、光検出部60は、第1の光13の強度に応じた電流信号を走査角度出力部80へ出力することができる。本例においても、第3実施形態と同様に、傾斜角度の正負を特定する等の利点を得ることができる。なお、第1の光源11に代えて、第2の光源12を用いてもよい。また、本例を、第3実施形態の変形例(図12)、第4実施形態(図13)または第4実施形態の変形例(図14)の様に変形してもよい。
【0103】
図18は、第8実施形態における共焦点顕微鏡システム500を示す図である。本例の共焦点顕微鏡システム500は、計測器の一例である。本例の共焦点顕微鏡システム500は、被走査対象600の表面または内部の凹凸形状を可視化する機能を有する。
【0104】
本例の共焦点顕微鏡システム500は、光源部10、光結合部20、走査角度出力部80、制御部90、光ファイバ400、先端部510、ダイクロイックミラー520、光検出部530、AD変換部540、画像処理部550および表示部560を有する。先端部510は、上述した光走査装置240、250、260および270のいずれかと同じ構成を有してよい。ただし、先端部510の筐体サイズの制限に起因して、走査角度出力部80および制御部90は、先端部510の外部に設けられてよい。また、適用する光走査装置の実施形態に応じて、光結合部20を省略してよく、先端部510の構成を変更してもよいのは勿論である。
【0105】
先端部510は、走査部515と、対物レンズ512と、コリメートレンズ514とを含んでよい。走査部515は、光スキャナ30および130、ダイクロイックミラー50、光検出部60および160、CV変換部70および170、ならびに、配線基板79等を含んでよい。なお、交流電源部92および直流電源部94は図示を省略するが、交流電源部92および直流電源部94は走査部515へ電気的に接続してよい。本例においては、コリメートレンズ514の後方であって、対物レンズ512の焦点位置と共役な位置に光ファイバ400の端部を配置することにより、共焦点光学系が形成される。なお、本例の先端部510は、内視鏡に適用されてもよい。
【0106】
被走査対象600は、細胞培養装置に載置された人間または動物の細胞であってよい。被走査対象600は、先端部510から照射される第1の光13を吸収して蛍光を放出してよい。本例の被走査対象600は、内部に蛍光材料を有してよい。当該蛍光材料は、第1の光13を吸収して、第1の光13および第2の光14とは異なる波長帯域の蛍光を放出してよい。被走査対象600から放出された蛍光は、ダイクロイックミラー520を経て光検出部530に入射してよい。なお、本例のダイクロイックミラー520は、第1の光13および第2の光14を反射し、蛍光を透過する機能を有する。
【0107】
光検出部530は、フォトダイオード等の光電変換素子を有してよい。光検出部530は、蛍光の強度に応じて電荷を生成してよい。AD変換部540は、アナログ情報である電荷の量をデジタル信号に変換するアナログ・デジタルコンバータを有してよい。AD変換部540はデジタル信号を画像処理部550に出力し、画像処理部550はデジタル信号に基づいて画像を生成する。本例の画像処理部550はデジタル信号からリサージュ走査画像を生成し、表示部560はリサージュ走査画像を表示する。ユーザは、リサージュ走査画像により被走査対象600を視認することができる。
【0108】
なお、上述した各実施形態の光走査装置200から270は、共焦点顕微鏡システム500だけでなく、工業用計測器に適用されてもよい。工業用計測器は、物体の表面における凹凸の観察、および、物体の表面における異物の検査等に利用されてよい。なお、工業用計測器においては、先端部510の筐体サイズの制限は、考慮しなくてもよい。
【0109】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0110】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。
[項目1]
被走査対象に照射される第1の光と、第2の光とを出射する光源部と、
上記第1の光と、上記第2の光とを反射する光走査部と、
上記第2の光を受光する光検出部と、
上記光走査部を揺動するために設けられた駆動部と、
上記光走査部における反射部の予め定められた領域と検出部とにより形成される静電容量であって、上記光走査部の上記反射部の傾斜角度に対応して変化する上記静電容量の変化と、上記第2の光に応じた上記光検出部の出力とに基づいて、上記反射部の状態を検出する状態検出部と、
を備えており、
上記静電容量を形成する上記検出部は、上記駆動部とは別個に設けられている、光走査装置。
[項目2]
被走査対象に照射される第1の光と、第2の光とを出射する光源部と、
上記第1の光と、上記第2の光とを反射する光走査部と、
上記第2の光を受光する光検出部と、
上記光走査部における反射部の予め定められた領域と検出部とにより形成される静電容量であって、上記光走査部の上記反射部の傾斜角度に対応して変化する上記静電容量の変化と、上記第2の光に応じた上記光検出部の出力とに基づいて、上記反射部の状態を検出する状態検出部と、
を備えており、
上記光検出部は、上記光走査部が上記光検出部において上記第2の光を走査する走査長さの少なくとも一部に設けられた光電変換素子を有しており、
上記光電変換素子は、上記走査長さの中心位置から予め定められた距離だけ離間した位置に設けられ、受光面が点状の光電変換素子である、光走査装置。
[項目3]
被走査対象に照射される第1の光と、第2の光とを出射する光源部と、
上記第1の光と、上記第2の光とを反射する光走査部と、
上記第2の光を受光する光検出部と、
上記光走査部における反射部の予め定められた領域と検出部とにより形成される静電容量であって、上記光走査部の上記反射部の傾斜角度に対応して変化する上記静電容量の変化と、上記第2の光に応じた上記光検出部の出力とに基づいて、上記反射部の状態を検出する状態検出部と、
を備えている光走査装置であって、
上記光検出部は、上記光走査部が上記光検出部において上記第2の光を走査する走査長さの少なくとも一部に設けられた光電変換素子を有しており、
上記光電変換素子は、受光面が上記走査長さ以上の長さを有する線状の光電変換素子であり、
上記状態検出部は、上記光検出部の出力に基づいて、上記反射部における反射面と予め定められた平面との成す走査角度を補正し、
上記光走査装置は、上記静電容量を電圧信号に変換する容量電圧変換部をさらに備え、
上記容量電圧変換部は、上記光検出部の出力に基づいて、上記容量電圧変換部が出力する電圧信号を大きくするよう補正する、光走査装置。
[項目4]
被走査対象に照射される第1の光と、第2の光とを出射する光源部と、
上記第1の光と、上記第2の光とを反射する光走査部と、
上記第2の光を受光する光検出部と、
上記光走査部における反射部の予め定められた領域と検出部とにより形成される静電容量であって、上記光走査部の上記反射部の傾斜角度に対応して変化する上記静電容量の変化と、上記第2の光に応じた上記光検出部の出力とに基づいて、上記反射部の状態を検出する状態検出部と、
上記第1の光と上記第2の光とを分離して、上記第1の光を上記被走査対象に入射させ、上記第2の光を上記光検出部に入射させる光分離部と、
を備える、光走査装置。
[項目5]
被走査対象に照射される第1の光と、第2の光とを出射する光源部と、
上記第1の光と、上記第2の光とを反射する光走査部と、
上記第2の光を受光する光検出部と、
上記光走査部における反射部の予め定められた領域と検出部とにより形成される静電容量であって、上記光走査部の上記反射部の傾斜角度に対応して変化する上記静電容量の変化と、上記第2の光に応じた上記光検出部の出力とに基づいて、上記反射部の状態を検出する状態検出部と、
上記光走査部から反射された光のうち、上記第2の光の一部を透過し、上記第2の光における上記一部以外の部分と上記第1の光とを反射する第2の光学部材と、
上記第2の光学部材からそれぞれ反射された上記第1の光および上記第2の光を反射する追加の光走査部と、
追加の光検出部と、
上記追加の光走査部から反射された光のうち、上記第1の光を上記被走査対象に入射させ且つ上記第2の光を上記追加の光検出部に入射させる第3の光学部材と、
を備え、
上記第2の光学部材を透過した上記第2の光の上記一部が、上記光検出部に入射する、
光走査装置。
[項目6]
被走査対象に照射される第1の光と、第2の光とを出射する光源部と、
上記第1の光と、上記第2の光とを反射する光走査部と、
上記第2の光を受光する光検出部と、
上記光走査部における反射部の予め定められた領域と検出部とにより形成される静電容量であって、上記光走査部の上記反射部の傾斜角度に対応して変化する上記静電容量の変化と、上記第2の光に応じた上記光検出部の出力とに基づいて、上記反射部の状態を検出する状態検出部と、
を備えており、
上記光走査部と、上記光検出部とは同一基板上に設けられる、
光走査装置。
[項目7]
被走査対象に照射される第1の光と、第2の光とを出射する光源部と、
上記第1の光と、上記第2の光とを反射する光走査部と、
上記第2の光を受光する光検出部と、
上記光走査部における反射部の予め定められた領域と検出部とにより形成される静電容量であって、上記光走査部の上記反射部の傾斜角度に対応して変化する上記静電容量の変化と、上記第2の光に応じた上記光検出部の出力とに基づいて、上記反射部の状態を検出する状態検出部と、
を備えており、
光走査部の使用時間の長さに応じて、上記光源部から出射される上記第2の光の強度を高くする、
光走査装置。
[項目8]
上記光検出部は、上記光走査部が上記光検出部において上記第2の光を走査する走査長さの少なくとも一部に設けられた光電変換素子を有する、項目1、4、5、6、または7のいずれか一項に記載の光走査装置。
[項目9]
上記光電変換素子は、受光面が上記走査長さ以上の長さを有する線状の光電変換素子である、項目2または8に記載の光走査装置。
[項目10]
上記光電変換素子は、上記走査長さの中心位置から予め定められた距離だけ離間した位置に設けられ、受光面が点状の光電変換素子である、項目3または8に記載の光走査装置。
[項目11]
上記状態検出部は、上記光検出部の出力に基づいて、上記反射部における反射面と予め定められた平面との成す走査角度を補正する、項目9または10に記載の光走査装置。
[項目12]
上記状態検出部は、上記光検出部の出力に基づいて、上記反射部における反射面と予め定められた平面との成す走査角度の正負を補正する、項目1から11のいずれか一項に記載の光走査装置。
[項目13]
上記第1の光と上記第2の光とは、上記反射部の異なる位置に入射する、項目1から12のいずれか一項に記載の光走査装置。
[項目14]
上記光走査部に入射する前に、上記第1の光と、上記第1の光の波長とは異なる波長を有する上記第2の光とを光路上において重ね合わせる光結合部をさらに備える、項目1から12のいずれか一項に記載の光走査装置。
[項目15]
上記第1の光と上記第2の光とを分離して、上記第1の光を上記被走査対象に入射させ、上記第2の光を上記光検出部に入射させる光分離部をさらに備える項目1、2、3、5、6、または7のいずれか一項に記載の光走査装置。
[項目16]
上記光走査部から反射された光のうち、上記第1の光および上記第2の光を反射する第1の光学部材と、
上記第1の光学部材からそれぞれ反射された上記第1の光および上記第2の光を反射する追加の光走査部と、
をさらに備え、
上記光分離部は、上記追加の光走査部から反射された光のうち、上記第1の光を上記被走査対象に入射させ且つ上記第2の光を上記光検出部に入射させる、
項目15に記載の光走査装置。
[項目17]
上記光走査部から反射された光のうち、上記第2の光の一部を透過し、上記第2の光における上記一部以外の部分と上記第1の光とを反射する第2の光学部材と、
上記第2の光学部材からそれぞれ反射された上記第1の光および上記第2の光を反射する追加の光走査部と、
追加の光検出部と、
上記追加の光走査部から反射された光のうち、上記第1の光を上記被走査対象に入射させ且つ上記第2の光を上記追加の光検出部に入射させる第3の光学部材と、
をさらに備え、
上記第2の光学部材を透過した上記第2の光の上記一部が、上記光検出部に入射する、
項目1、2、3、6、または7のいずれか一項に記載の光走査装置。
[項目18]
上記光源部は、上記第1の光を出射する間、上記第2の光を出射し続ける、項目1から17のいずれか一項に記載の光走査装置。
[項目19]
上記光走査部と、上記光検出部とは同一基板上に設けられる、項目1から5のいずれか一項に記載の光走査装置。
[項目20]
光走査部の使用時間の長さに応じて、上記光源部から出射される上記第2の光の強度を高くする、項目1から6のいずれか一項に記載の光走査装置。
[項目21]
項目1から20のいずれか一項に記載の光走査装置を有する、計測器。
【符号の説明】
【0111】
10・・光源部、11・・第1の光源、12・・第2の光源、13・・第1の光、14・・第2の光、20・・光結合部、22・・コンバイナ、24・・コンバイナ、30・・光スキャナ、31・・櫛歯、32・・反射部、33・・反射面、34・・駆動部、35・・櫛歯、36・・基体部、37・・領域、38・・検出部、39・・櫛歯、40・・固定部、42・・軸部、44・・鉛直線、50・・ダイクロイックミラー、52・・反射部、54・・ダイクロイックミラー、56・・ビームスプリッタ、60・・光検出部、61・・1次元PSD、62・・受光面、63・・アノード電極、64・・カソード電極、65・・P型層、66・・I型層、67・・N型層、68・・光電変換素子、70・・CV変換部、72・・増幅器、74・・抵抗器、76・・コンデンサ、78・・出力端子、79・・配線基板、80・・走査角度出力部、90・・制御部、92・・交流電源部、94・・直流電源部、98・・窓部、130・・光スキャナ、150、154・・ダイクロイックミラー、160・・光検出部、170・・CV変換部、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290・・光走査装置、300・・スクリーン、400・・光ファイバ、500・・共焦点顕微鏡システム、510・・先端部、512・・対物レンズ、514・・コリメートレンズ、515・・走査部、520・・ダイクロイックミラー、530・・光検出部、540・・AD変換部、550・・画像処理部、560・・表示部、600・・被走査対象
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