(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】能力評価システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20220531BHJP
G09B 19/00 20060101ALI20220531BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20220531BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G09B19/00 H
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2017225362
(22)【出願日】2017-11-24
【審査請求日】2020-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和真
(72)【発明者】
【氏名】朱 光宇
(72)【発明者】
【氏名】林 雅祐
(72)【発明者】
【氏名】近藤 康弘
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-289134(JP,A)
【文献】特開2006-190166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G09B 19/00
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の作業時間を取得する作業時間取得装置と、
作業毎の基準時間を記憶する基準時間記憶装置と、
予め設定された演算処理をコンピュータにて実行することにより、取得した前記作業時間及び対応する作業の前記基準時間に基づいて、前記作業者の生産能力レベルを前記作業者毎に算出する生産能力算出装置と、
前記作業の後工程にて実施される品質検査における検査結果情報を取得する検査結果情報取得装置と、
品質許容範囲と前記品質許容範囲より狭い高精度範囲とを記憶する品質範囲記憶装置と、
予め設定された演算処理をコンピュータにて実行することにより、前記検査結果情報に基づいて、前記作業者による作業の品質能力レベルを前記作業者毎に算出する品質能力算出装置と、
予め設定された演算処理をコンピュータにて実行することにより、前記生産能力レベル及び前記品質能力レベルに基づいて、前記作業者の総合能力レベルを前記作業者毎に算出する総合能力算出装置と、
を備え、
前記生産能力算出装置は、取得した複数回分の前記作業時間が前記基準時間に到達した割合である到達度合が高いほど前記生産能力レベルが高くなるように評価し、且つ、取得した複数回分の前記作業時間の安定度合が高いほど前記生産能力レベルが高くなるように評価することによって、前記到達度合及び前記安定度合に基づいて前記生産能力レベルを算出し、
前記品質能力算出装置は、
前記検査結果情報に基づいて前記品質許容範囲への収まり度合を示す品質良好度合と前記高精度範囲への収まり度合を示す高精度度合と算出し、
前記品質良好度合が高いほど前記品質能力レベルが高くなるように評価し、且つ、前記高精度度合が高いほど前記品質能力レベルが高くなるように評価することによって、前記品質良好度合及び前記高精度度合に基づいて前記品質能力レベルを算出し、
前記総合能力算出装置は、前記生産能力レベルが高いほど前記総合能力レベルが高くなるように評価し、且つ、前記品質能力レベルが高いほど前記総合能力レベルが高くなるように評価することによって、前記生産能力レベル及び前記品質能力レベルに基づいて前記総合能力レベルを算出する、能力評価システム。
【請求項2】
作業者の作業時間を取得する作業時間取得装置と、
作業毎の基準時間を記憶する基準時間記憶装置と、
予め設定された演算処理をコンピュータにて実行することにより、取得した前記作業時間及び対応する作業の前記基準時間に基づいて、前記作業者の生産能力レベルを前記作業者毎に算出する生産能力算出装置と、
前記作業の後工程にて実施される品質検査における検査結果情報を取得する検査結果情報取得装置と、
予め設定された演算処理をコンピュータにて実行することにより、前記検査結果情報に基づいて、前記作業者による作業の品質能力レベルを前記作業者毎に算出する品質能力算出装置と、
予め設定された演算処理をコンピュータにて実行することにより、前記生産能力レベル及び前記品質能力レベルに基づいて、前記作業者の総合能力レベルを前記作業者毎に算出する総合能力算出装置と、
を備え、
前記生産能力算出装置は、取得した複数回分の前記作業時間が前記基準時間に到達した割合である到達度合が高いほど前記生産能力レベルが高くなるように評価し、且つ、取得した複数回分の前記作業時間の安定度合が高いほど前記生産能力レベルが高くなるように評価することによって、前記到達度合及び前記安定度合に基づいて前記生産能力レベルを算出し、
前記品質能力算出装置は、所定の短期間の前記作業についての前記検査結果情報に基づく短期的品質良好度合が高いほど前記品質能力レベルが高くなるように評価し、且つ、所定の長期間の前記作業についての前記検査結果情報に基づく長期的品質良好度合が高いほど前記品質能力レベルが高くなるように評価することによって、前記短期的品質良好度合及び前記長期的品質良好度合に基づいて、前記品質能力レベルを算出し、
前記総合能力算出装置は、前記生産能力レベルが高いほど前記総合能力レベルが高くなるように評価し、且つ、前記品質能力レベルが高いほど前記総合能力レベルが高くなるように評価することによって、前記生産能力レベル及び前記品質能力レベルに基づいて前記総合能力レベルを算出する、能力評価システム。
【請求項3】
前記生産能力算出装置は、取得した前記作業時間が前記基準時間に到達した場合には取得した前記作業時間を前記基準時間に置換し、取得した前記作業時間が前記基準時間に到達していない場合には取得した前記作業時間そのものを用いて、複数回分の前記作業時間の前記到達度合を算出する、請求項1又は2に記載の能力評価システム。
【請求項4】
前記生産能力算出装置は、取得した前記作業時間そのものを用いて、複数回分の前記作業時間の前記安定度合を算出する、請求項3に記載の能力評価システム。
【請求項5】
前記能力評価システムは、さらに、前記検査結果情報のそれぞれについて対応する作業を記憶する対応作業記憶装置を備え、
前記品質能力算出装置は、
前記検査結果情報が一人の作業者による作業のみに対応する場合には、当該検査結果情報を当該一人の作業者の作業のみに負担させることにより、負担した当該一人の作業者の前記品質能力レベルを算出し、
前記検査結果情報が複数の作業者による作業に対応する場合には、当該検査結果情報を当該複数の作業者の作業の全てに分担させることにより、分担した各作業者の前記品質能力レベルを算出する、請求項1-4の何れか一項に記載の能力評価システム。
【請求項6】
前記品質能力算出装置は、所定の短期間の前記作業についての前記検査結果情報に基づく短期的品質良好度合が高いほど前記品質良好度合が高くなるように評価し、且つ、所定の長期間の前記作業についての前記検査結果情報に基づく長期的品質良好度合が高いほど前記品質良好度合が高くなるように評価することによって、前記短期的品質良好度合及び前記長期的品質良好度合に基づいて、前記品質能力レベルにおける前記品質良好度合を算出する、請求項1に記載の能力評価システム。
【請求項7】
前記所定の長期間は、前記所定の短期間を含み、且つ、前記所定の短期間よりも過去の期間を含む、請求項2に記載の能力評価システム。
【請求項8】
前記能力評価システムは、さらに、前記生産能力レベル、前記品質能力レベル及び前記総合能力レベルを前記作業者毎に提示する提示装置を備える、請求項1-7の何れか一項に記載の能力評価システム。
【請求項9】
作業者による作業の後工程にて実施される品質検査における検査結果情報を取得する検査結果情報取得装置と、
品質許容範囲と前記品質許容範囲より狭い高精度範囲とを記憶する品質範囲記憶装置と、
予め設定された演算処理をコンピュータにて実行することにより、前記検査結果情報に基づいて、前記作業者による作業の品質能力レベルを前記作業者毎に算出する品質能力算出装置と、
を備え、
前記品質能力算出装置は、
前記検査結果情報に基づいて前記品質許容範囲への収まり度合を示す品質良好度合と前記高精度範囲への収まり度合を示す高精度度合と算出し、
前記品質良好度合が高いほど前記品質能力レベルが高くなるように評価し、且つ、前記高精度度合が高いほど前記品質能力レベルが高くなるように評価することによって、前記品質良好度合及び前記高精度度合に基づいて前記品質能力レベルを算出する、能力評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、能力評価システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業時間及び作業品質データにより作業結果の評価を行い、作業結果に基づいて作業者の習熟度を評価することが記載されている。
【0003】
特許文献2にも、作業者の作業習熟度を判定することが記載されている。作業習熟度の判定は、実作業時間から見た作業者の習熟度を判定する作業時間習熟度、不良発生回数から見た作業者の習熟度を判定する品質習熟度、作業時間習熟度と品質習熟度の合計から判定する総合作業習熟度、のいずれか1以上で判定する。
【0004】
ここで、作業時間習熟度は、作業映像を分析・計測して得たデータから作業者要因でない無効作業を除去した実作業時間と、予め記憶した標準作業時間とを比較して判定する。品質習熟度は、製造中に組立及び検査工程で発生した部品の品質に問題がある非作業者要因を除いた作業者要因の品質不良発生回数と、最終検査工程で発生した部品の品質に問題がある非作業者要因を除いた作業者要因の品質不良発生回数とから判定する。
【0005】
作業者の作業時間に加え、検査工程における不良項目をチェックし、総合的に作業者要因による不良を抽出することで、作業スピードと作業品質の両面から作業者の習熟度を判定することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-166681号公報
【文献】特許第4176416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
作業者の習熟度(能力)を作業時間に基づいて評価する場合において、単に作業時間のスピードのみにより評価するのでは十分ではない。また、作業者の品質評価を行う場合において、品質不良発生回数のみにより評価するのでは十分ではない。
本発明は、上記課題の少なくとも一つを解決することにより、作業者の能力をより適切に評価することができる能力評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、
作業者の作業時間を取得する作業時間取得装置と、
作業毎の基準時間を記憶する基準時間記憶装置と、
予め設定された演算処理をコンピュータにて実行することにより、取得した前記作業時間及び対応する作業の前記基準時間に基づいて、前記作業者の生産能力レベルを前記作業者毎に算出する生産能力算出装置と、
前記作業の後工程にて実施される品質検査における検査結果情報を取得する検査結果情報取得装置と、
品質許容範囲と前記品質許容範囲より狭い高精度範囲とを記憶する品質範囲記憶装置と、
予め設定された演算処理をコンピュータにて実行することにより、前記検査結果情報に基づいて、前記作業者による作業の品質能力レベルを前記作業者毎に算出する品質能力算出装置と、
予め設定された演算処理をコンピュータにて実行することにより、前記生産能力レベル及び前記品質能力レベルに基づいて、前記作業者の総合能力レベルを前記作業者毎に算出する総合能力算出装置と、
を備え、
前記生産能力算出装置は、取得した複数回分の前記作業時間が前記基準時間に到達した割合である到達度合が高いほど前記生産能力レベルが高くなるように評価し、且つ、取得した複数回分の前記作業時間の安定度合が高いほど前記生産能力レベルが高くなるように評価することによって、前記到達度合及び前記安定度合に基づいて前記生産能力レベルを算出し、
前記品質能力算出装置は、
前記検査結果情報に基づいて前記品質許容範囲への収まり度合を示す品質良好度合と前記高精度範囲への収まり度合を示す高精度度合と算出し、
前記品質良好度合が高いほど前記品質能力レベルが高くなるように評価し、且つ、前記高精度度合が高いほど前記品質能力レベルが高くなるように評価することによって、前記品質良好度合及び前記高精度度合に基づいて前記品質能力レベルを算出し、
前記総合能力算出装置は、前記生産能力レベルが高いほど前記総合能力レベルが高くなるように評価し、且つ、前記品質能力レベルが高いほど前記総合能力レベルが高くなるように評価することによって、前記生産能力レベル及び前記品質能力レベルに基づいて前記総合能力レベルを算出する、能力評価システムにある。
また、本発明の第二の態様は、
作業者の作業時間を取得する作業時間取得装置と、
作業毎の基準時間を記憶する基準時間記憶装置と、
予め設定された演算処理をコンピュータにて実行することにより、取得した前記作業時間及び対応する作業の前記基準時間に基づいて、前記作業者の生産能力レベルを前記作業者毎に算出する生産能力算出装置と、
前記作業の後工程にて実施される品質検査における検査結果情報を取得する検査結果情報取得装置と、
予め設定された演算処理をコンピュータにて実行することにより、前記検査結果情報に基づいて、前記作業者による作業の品質能力レベルを前記作業者毎に算出する品質能力算出装置と、
予め設定された演算処理をコンピュータにて実行することにより、前記生産能力レベル及び前記品質能力レベルに基づいて、前記作業者の総合能力レベルを前記作業者毎に算出する総合能力算出装置と、
を備え、
前記生産能力算出装置は、取得した複数回分の前記作業時間が前記基準時間に到達した割合である到達度合が高いほど前記生産能力レベルが高くなるように評価し、且つ、取得した複数回分の前記作業時間の安定度合が高いほど前記生産能力レベルが高くなるように評価することによって、前記到達度合及び前記安定度合に基づいて前記生産能力レベルを算出し、
前記品質能力算出装置は、所定の短期間の前記作業についての前記検査結果情報に基づく短期的品質良好度合が高いほど前記品質能力レベルが高くなるように評価し、且つ、所定の長期間の前記作業についての前記検査結果情報に基づく長期的品質良好度合が高いほど前記品質能力レベルが高くなるように評価することによって、前記短期的品質良好度合及び前記長期的品質良好度合に基づいて、前記品質能力レベルを算出し、
前記総合能力算出装置は、前記生産能力レベルが高いほど前記総合能力レベルが高くなるように評価し、且つ、前記品質能力レベルが高いほど前記総合能力レベルが高くなるように評価することによって、前記生産能力レベル及び前記品質能力レベルに基づいて前記総合能力レベルを算出する、能力評価システムにある。
また、本発明の第三の態様は、
作業者による作業の後工程にて実施される品質検査における検査結果情報を取得する検査結果情報取得装置と、
品質許容範囲と前記品質許容範囲より狭い高精度範囲とを記憶する品質範囲記憶装置と、
予め設定された演算処理をコンピュータにて実行することにより、前記検査結果情報に基づいて、前記作業者による作業の品質能力レベルを前記作業者毎に算出する品質能力算出装置と、
を備え、
前記品質能力算出装置は、
前記検査結果情報に基づいて前記品質許容範囲への収まり度合を示す品質良好度合と前記高精度範囲への収まり度合を示す高精度度合と算出し、
前記品質良好度合が高いほど前記品質能力レベルが高くなるように評価し、且つ、前記高精度度合が高いほど前記品質能力レベルが高くなるように評価することによって、前記品質良好度合及び前記高精度度合に基づいて前記品質能力レベルを算出する、能力評価システムにある。
【0009】
上記の第一~第三の態様によれば、作業者の生産能力レベルは、到達度合と安定度合とに基づいて算出される。到達度合は、作業時間が短いほど、高い評価となる。安定度合は、複数回分の作業時間のばらつきが少ないほど、高い評価となる。つまり、常に作業時間が基準時間に到達している作業者は、到達度合が高く、且つ、安定度合が高くなる。従って、当該作業者の能力レベルは、高い評価となる。例えば、複数の作業者において、到達度合が同程度であっても、基準時間に到達していない場合における遅れが大きい場合と小さい場合とでは、前者の安定度合が低くなり、後者の安定度合が高くなる。つまり、到達度合が同程度である場合に、安定度合が高いほど、作業者の能力レベルは高い評価となる。このように、基準時間への到達度合に加えて、安定度合を考慮することで、作業者の能力レベルをより適切に評価することができる。
【0011】
例えば、長期的に見れば、良好な品質の製品を生産できる能力を有するが、体調不良等により、短期的に見れば、良好な品質の製品を生産できる能力が低くなることがある。また、長期的に見れば、まだ良好な品質の製品を安定して生産できる能力を有しないとしても、成長が著しい場合に短期的に見れば、良好な品質の製品を生産できる能力を有する場合がある。長期的品質良好度合と短期的品質良好度合とに基づいて作業者の品質能力レベルを算出することにより、上記の場合であっても、作業者の品質能力レベルを適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】複数のセル生産により構成された生産設備の模式図である。
【
図3】第一組立工程におけるA1,A2,A3の各セルにおける5回分の作業時間を示す。
【
図4】セルA1,A2,A3の各セルについて、生産能力算出装置において用いられる到達度合算出用の時間、合計時間、及び、平均時間を示す。
【
図5】セルA1,A2,A3の各セルについて、生産能力算出装置において用いられる安定度合算出用の時間、標準偏差を示す。
【
図6】生産能力算出装置において生産能力を算出する際に用いられる到達度合と安定度合と生産能力の関係を示す図である。
【
図7】検査工程において検査項目とその結果を示す図である。
【
図8】検査工程における検査項目と対応工程との関係を示す図である。
【
図9】製品の寸法と分布数を示すグラフであり、設計基準値、品質許容範囲、及び、高精度範囲を示す。
【
図10】セルA1において現在までの作業において、作業回数、不良の検査項目、長期評価点、及び、短期評価点を示す。
【
図11】長期品質レベルと短期品質レベルと品質良好度合との関係を示す。
【
図12】品質能力算出装置において品質能力を算出する際に用いられる品質良好度合と収まり度合と品質能力との関係を示す図である。
【
図13】総合能力算出装置において総合能力を算出する際に用いられる生産能力と品質能力と総合能力との関係を示す図である。
【
図14】提示装置が提示する内容の例を示す図である。
【
図15】提示装置が提示する内容の他の例を示す図である。
【
図16】提示装置が提示する内容の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1.生産設備1の概要)
能力評価システムに適用する生産設備1について
図1を参照して説明する。生産設備1は、種々の製品を生産するための設備であって、例えば、自動車の生産、自動車部品の生産、産業機械の生産等に用いられる。
【0014】
図1に示すように、生産設備1は、セル生産を適用する場合を例にあげる。生産設備1は、第一組立工程11、第二組立工程12、第三組立工程13及び検査工程14を構成する。第一組立工程11は、複数のセルA1,A2,A3のそれぞれにより生産される。第二組立工程12は、第一組立工程11にて生産された中間品を用いて生産し、複数のセルB1,B2,B3のそれぞれにより生産される。第二組立工程12は、複数のセルB1,B2,B3のそれぞれにより生産される。第三組立工程13は、第二組立工程12にて生産された中間品を用いて生産し、複数のセルC1,C2,C3のそれぞれにより生産される。第三組立工程13は、複数のセルC1,C2,C3のそれぞれにより生産される。検査工程14は、第三組立工程13にて完成された製品を検査する。
【0015】
なお、組立工程の数は、任意に設定することができる。また、検査工程14は、最終工程のみではなく、組立工程間に行うようにしてもよい。また、セル生産を対象として説明するが、ライン生産にも適用可能である。また、組立工程を加工工程に置換することもできる。
【0016】
(2.能力評価システム2の概要)
能力評価システム2(
図2に示す)は、生産設備1の第一組立工程11の各セルA1等を担当する作業者、第二組立工程12の各セルB1等を担当する作業者、第三組立工程13の各セルC1等を担当する作業者の能力を評価する。能力評価システム2は、各作業者の作業時間に基づいて作業者の生産能力を算出し、検査工程14における検査結果情報に基づいて作業者の品質能力を算出し、さらには、生産能力と品質能力とに基づいて総合能力を算出する。ここで、生産能力、品質能力及び総合能力は、例えば、複数段階(例えば5段階)のレベルで示す。レベル値が高いほど、高い能力を有する。
【0017】
(3.能力評価システム2の詳細構成)
能力評価システム2について、
図2-
図14を参照して詳細に説明する。能力評価システム2は、作業時間取得装置21、基準時間記憶装置22、生産能力算出装置23、検査結果情報取得装置24、対応作業記憶装置25、品質範囲記憶装置26、品質能力算出装置27、総合能力算出装置28、提示装置29を備える。
【0018】
作業時間取得装置21は、各作業者による1回当たりの作業時間(一連の作業に要する時間)を取得する。例えば、各作業者の作業領域に、作業の開始を示すための開始ボタン、及び、作業の終了を示すための終了ボタンが設置されており、作業者によって開始ボタン及び終了ボタンが操作される。この場合、作業時間取得装置21は、各作業者が1回の作業(一連の作業に相当)を開始する場合に開始ボタンを操作した時刻から、作業を終了した場合に終了ボタンを操作した時刻までの時間を、1回当たりの作業時間として取得する。例えば、第一組立工程11におけるセルA1の作業者を対象とした場合には、当該作業者が1回のセルA1を開始する場合に開始ボタンを操作した時刻から、1回のセルA1を終了した場合に終了ボタンを操作した時刻までの時間を、当該作業者による1回当たりのセルA1の作業時間として取得する。なお、開始ボタン及び終了ボタンを用いるシステムの他に、自動的に作業の開始及び終了を検出することができるシステムにおいては、自動的に開始時刻及び終了時刻を取得することにより、自動的に作業時間を取得できる。
【0019】
基準時間記憶装置22は、作業毎の基準時間を記憶する。基準時間記憶装置22は、例えば、第一組立工程11の作業に関する基準時間、第二組立工程12の作業に関する基準時間、第三組立工程13の作業に関する基準時間のそれぞれを記憶する。基準時間とは、例えば、生産計画を決定するに当たり予め設定されている時間である。また、本実施形態においては、第一組立工程11の作業に関する基準時間を60分として、以下を説明する。
【0020】
生産能力算出装置23は、予め設定された第一演算処理をコンピュータにて実行することにより、取得した作業時間と対応する作業の基準時間とに基づいて、作業者の生産能力を作業者毎に算出する。つまり、生産能力算出装置23は、取得した実際の作業時間が当該作業の基準時間に対してどのような程度であるかを、生産能力として算出する。
【0021】
詳細には、生産能力算出装置23は、到達度合と安定度合の2つの指標を用いて、生産能力を算出する。つまり、生産能力算出装置23は、取得した複数回分の作業時間が基準時間に到達した割合である到達度合と、取得した複数回分の作業時間の安定度合と、に基づいて、生産能力を算出する。
【0022】
例えば、セルA1,A2,A3における5回分の作業時間が、
図3に示すような場合であるとする。作業時間取得装置21が、それぞれのセルA1,A2,A3における作業時間を取得する。ここで、第一組立工程11の基準時間は、60分であるとする。
【0023】
そして、生産能力算出装置23は、取得した作業時間を用いて到達度合を算出する。生産能力算出装置23は、取得した作業時間が基準時間に到達した場合には取得した作業時間を基準時間に置換する。一方、生産能力算出装置23は、取得した作業時間が基準時間に到達していない場合には取得した作業時間そのものを用いる。そして、生産能力算出装置23は、到達時間算出用の複数回分の作業時間の到達度合を算出する。
【0024】
例えば、
図4に示すように、セルA1において、実際の5回分の作業時間が、58分、56分、59分、61分、60分である場合に、到達度合算出用の作業時間は、60分、60分、60分、61分、60分に変換される。この理由は、作業時間が基準時間に到達したかしていないかを評価すると共に、到達していない場合にどの程度の未到達状態であるかを評価するためである。
【0025】
続いて、生産能力算出装置23は、到達度合算出用に変換された複数回分の作業時間の平均を、到達度合の指標の一つとして算出する。例えば、セルA1,A2,A3の到達度合としての当該平均は、それぞれ、60.2分、65.2分、63分となる。到達度合としての当該平均が60分であれば、全てにおいて基準時間に到達していることを意味し、当該平均が60分より多い時間分が基準時間に到達していない場合の程度を意味する。
【0026】
さらに続いて、生産能力算出装置23は、到達度合としての平均を用いて、到達度合としてのレベル(以下、「到達度合レベル」と称する)を決定する。到達度合レベルは、複数段階(例えば5段階)に分けられる。例えば、到達度合としての平均が小さい値である場合には、当該作業者の到達度合レベルが高く(例えばレベル5)となり、到達度合としての平均が大きい値である場合には、当該作業者の到達度合レベルが低く(例えばレベル1)となる。
【0027】
つまり、3人の作業者の中では、セルA1を担当する作業者の到達度合レベルが最も高く、セルA3を担当する作業者の到達度合レベルが最も低い。なお、到達度合の指標の一つとして平均を用いたが、平均に限られず、他の統計量を用いてもよい。例えば、到達度合は、到達の有無のみを現すことができる統計量を用いることもできる。
【0028】
また、生産能力算出装置23は、取得した作業時間を用いて安定度合を算出する。ここでは、生産能力算出装置23は、到達度合の算出の場合とは異なり、取得した作業時間そのものを用いて、複数回分の作業時間の安定度合を算出する。例えば、
図5に示すように、セルA1において、実際の5回分の作業時間が、58分、56分、59分、61分、60分である場合に、安定度合算出用の作業時間は、58分、56分、59分、61分、60分となる。
【0029】
続いて、生産能力算出装置23は、安定度合算出用の複数回分の作業時間の標準偏差を、安定度合の指標の一つとして算出する。例えば、セルA1,A2,A3の安定度合としての標準偏差は、それぞれ、1.72、11.36、1.41となる。標準偏差が0に近いほど、作業時間のばらつきが小さいことを意味する。
【0030】
さらに続いて、生産能力算出装置23は、安定度合としての標準偏差を用いて、安定度合としてのレベル(以下、「安定度合レベル」と称する)を決定する。安定度合レベルは、複数段階(例えば5段階)に分けられる。例えば、安定度合としての標準偏差が小さい値である場合には、当該作業者の安定度合レベルが高く(例えばレベル5)となり、安定度合としての標準偏差が大きい値である場合には、当該作業者の安定度合レベルが低く(例えばレベル1)となる。
【0031】
つまり、3人の作業者の中では、セルA3を担当する作業者の安定度合レベルが最も高く、セルA2を担当する作業者の安定度合レベルが最も低い。なお、安定度合の指標の一つとして標準偏差を用いたが、標準偏差に限られず、他の統計量を用いてもよい。
【0032】
続いて、生産能力算出装置23は、到達度合レベルと安定度合レベルとを用いて、
図6に示すように、生産能力のレベルを決定する。例えば、
図6に示すように、5段階の到達度合レベルと、5段階の安定度合レベルとを用いて、マトリックスにすることにより、生産能力のレベルを5段階で現す。なお、生産能力のレベルを決定する際に、到達度合レベル及び安定度合レベルを用いたが、到達度合の指標の一つとしての作業時間の平均、及び、安定度合の指標の一つとしての標準偏差を用いることもできる。また、マトリックスにより生産能力のレベルを決定する場合の他に、到達度合レベルと安定度合レベルとの平均とすることもできる。このとき、到達度合レベルと安定度合レベルについて、それぞれ重み付けを行うようにしてもよい。
【0033】
検査結果情報取得装置24は、各作業の後工程にて実施される品質検査における検査結果情報を取得する。本実施形態においては、検査結果情報取得装置24は、検査工程14における検査結果情報を取得する。例えば、検査結果情報取得装置24は、検査工程14を担当する作業者によって検査結果情報が入力されることにより、当該検査結果情報を取得する。
【0034】
例えば、
図7に示すように、検査工程14における検査項目が複数存在し、各項目における検査結果を、良好か不良かを示す。例えば、良好である場合を○とし、不良である場合を×とする。
図7には、検査の項目2が、不良であり、他の項目は良好である場合を示す。このように、検査結果情報取得装置24は、対象の製品毎に、検査の項目の結果を取得する。対象の製品の情報には、各工程において担当したセルの情報(例えば、A1,B1,C1等の情報)が含まれている。つまり、検査結果情報取得装置24は、対象の製品、検査の項目とその結果、対象の製品を生産した各工程において担当者セルの情報を取得する。
【0035】
対応作業記憶装置25は、検査結果情報のそれぞれについて対応する作業を記憶する。すなわち、
図8に示すように、対応作業記憶装置25においては、例えば、検査工程14の項目毎に、対応する作業が設定されている。対応する作業とは、当該項目に対する責任を負う作業工程となる。例えば、項目1-5に対応する作業は、
図8に示すように、それぞれ、「A」、「A,B,C」、「C」、「A,B」、「B」となる。ここで、作業工程Aは、第一組立工程11であり、作業工程Bは、第二組立工程12であり、作業工程Cは、第三組立工程13である。つまり、項目1の検査結果が不良である場合には、その責任は、作業工程A(第一組立工程11)の作業者が負うことを意味する。項目2の検査結果が不良である場合には、その責任は、作業工程A,B,C(第一、第二、第三組立工程11,12,13)の各作業者が負うことを意味する。
【0036】
品質範囲記憶装置26は、品質許容範囲と品質許容範囲より狭い高精度範囲とを記憶する。
図9に示すように、品質許容範囲は、検査工程14において製品に関する計測を行った場合の計測値に関して、設計基準値に対して品質が良好であるとされる範囲である。品質許容範囲は、例えば、設計基準値に対して公差範囲に相当する。高精度範囲は、品質許容範囲よりも狭い範囲であり、設計基準値に対して品質が高精度であるとされる範囲である。品質許容範囲は、当該製品が良好であるか不良であるかを判定するために用いられる。そして、計測値が品質許容範囲に入っていた場合において、高精度範囲は、高精度範囲に入っている場合に当該作業者の品質能力が高くなるように判定するために用いられ、高精度範囲に入っていない場合に当該作業者の品質能力が低くなるように判定するために用いられる。
【0037】
品質能力算出装置27は、予め設定された第二演算処理をコンピュータにて実行することにより、検査結果情報に基づいて、作業者による作業の品質能力を作業者毎に算出する。検査結果情報には、検査工程14における項目検査から導出される品質良好度合と、検査工程14における計測結果から導出される高精度範囲(
図9に示す)への収まり度合とが含まれる。つまり、品質能力算出装置27は、品質良好度合と高精度範囲への収まり度合との2つの指標を用いて、品質能力を算出する。
【0038】
品質良好度合は、長期的品質良好度合(長期品質レベル)と短期的品質良好度合(短期品質レベル)との2つの指標を用いて算出される。長期的品質良好度合とは、所定の長期間において、
図9に示す品質許容範囲に収まるか否かを示す指標である。つまり、長期的品質良好度合は、所定の長期間において、不良が発生していない程度を示す。所定の長期間とは、例えば、6ヶ月、1年、作業開始初期から現在に至るまでの期間等である。短期的品質良好度合とは、所定の短期間において、
図9に示す品質許容範囲に収まるか否かを示す指標である。つまり、短期的品質良好度合は、所定の短期間において、不良が発生していない程度を示す。所定の短期間とは、例えば、直近の不良発生から遡って所定の作業回数分を対象としたり、特定の期間として2週間、1ヶ月としたり、現在から遡って所定の作業回数分を対象としたりすることができる。
【0039】
長期的品質良好度合及び短期的品質良好度合の算出方法の一例について、
図10を参照して説明する。
図10に示すように、セルA1を対象とし、作業回数が現在45回目まで終了している場合とする。不良の検査項目が記載されている作業回は、該当する検査項目(
図7に示す)が不良であると判定されたことを意味する。また、不良の検査項目に何も記載されていない作業回は、全ての項目において良好であると判定されたことを意味する。例えば、3回目の作業では、検査の項目1が不良と判定されており、35回目の作業では、検査の項目2が不良と判定されている。
【0040】
長期的品質良好度合に用いるための指標である長期評価点は、各作業回における不良を点数化している。ここで、長期評価点を算出する際には、
図8に示すように、検査項目と対応工程との関係を用いる。
図8において、例えば、検査の項目1は、第一組立工程11の作業のみが対応している。また、当該製品は、第一組立工程11においてセルA1が担当し、第二組立工程12においてセルB1が担当し、第三組立工程13においてセルC1が担当したものとする。
【0041】
検査結果情報が一人の作業者による作業(セルA1のみの作業)に対応する場合には、当該検査結果情報を当該一人の作業者の作業のみに負担させることにより、負担した当該一人の作業者の品質能力を算出する。具体的には、
図10に示すように、長期評価点は、3回目及び43回目の作業では、1点となる。なお、検査の項目1個につき、1点とする。
【0042】
また、
図8に示すように、検査の項目2は、第一組立工程11、第二組立工程12及び第三組立工程13が対応する。検査結果情報が複数の作業者による作業(セルA1,B1,C1の作業)に対応する場合には、当該検査結果情報を当該複数の作業者の作業の全てに分担することにより、分担した各作業者の品質能力を算出する。具体的には、
図10に示すように、長期評価点は、35回目、37回目及び39回目のそれぞれの作業では、3分の1点となる。
【0043】
そして、初回から現在(45回目)に至る間における長期評価点の合計は、7と3分の1点であるとする。長期的品質良好度合の指標の一つとしての長期的品質良好割合は、現在の長期評価点の合計と、対象の作業回数とに基づき算出される。具体的には、長期的品質良好割合は、式(1)により算出される。この場合、長期的品質良好割合は、84%となる。
【0044】
[数1]
{1-(7+1/3)/45}×100 = 84% ・・・ (1)
【0045】
続いて、品質能力算出装置27は、長期的品質良好割合を用いて、長期的品質良好度合としてのレベル(以下、「長期品質レベル」と称する)を決定する。長期品質レベルが、長期的な品質能力に相当する。長期品質レベルは、複数段階(例えば5段階)に分けられる。例えば、長期的品質良好割合が高い場合には、当該作業者の長期品質レベルが高く(例えばレベル5)となり、長期的品質良好割合が低い場合には、当該作業者の長期品質レベルが低く(例えばレベル1)となる。なお、長期的品質良好度合の指標の一つとして、長期的品質良好割合を用いたが、他の統計量を用いてもよい。
【0046】
次に、短期的品質良好度合に用いるための指標である短期評価点は、基本的には、長期評価点と同様に、各作業回における不良を点数化している。ただし、短期評価点は、所定の短期間として、直近の不良発生から遡って所定の作業回数分を対象とする。ここで、短期評価点は、各作業回における評価点が1点に満たない場合には、所定の短期間において合計して1点に到達した場合に、カウントするようにする。
【0047】
例えば、
図10に示すように、直近の不良発生が43回目の作業となり、短期評価点は、43回目の作業では、1点となる。ここで、所定の短期間を、直近の不良発生から遡って10回分の作業を対象とする。この場合、短期評価点は、34回目の作業から43回目の作業までが対象となる。この間、35回目、37回目及び39回目のそれぞれの作業では、長期評価点において3分の1点ずつを有する。そのため、各回を合計すると1点に到達するため、39回目の作業において、1点としてカウントすることとしている。つまり、34回目から43回目までの作業における短期評価点は、2点となる。なお、短期評価点の合計は、長期評価点と同様に、小数(又は、分数)をカウントするようにしてもよい。
【0048】
そして、短期的品質良好度合の指標の一つとしての短期的品質良好割合は、所定の短期間における短期評価点の合計と、対象の作業回数とに基づき算出される。具体的には短期的品質良好割合は、式(2)により算出される。この場合、短期的品質良好割合は、80%となる。
【0049】
[数2]
{1-2/10}×100 = 80% ・・・ (2)
【0050】
続いて、品質能力算出装置27は、短期的品質良好割合を用いて、短期的品質良好度合としてのレベル(以下、「短期品質レベル」と称する)を決定する。短期品質レベルが、短期的な品質能力に想到する。短期品質レベルは、複数段階(例えば5段階)に分けられる。例えば、短期的品質良好割合が高い場合には、当該作業者の短期品質レベルが高く(例えばレベル5)となり、短期的品質良好割合が低い場合には、当該作業者の短期品質レベルが低く(例えばレベル1)となる。なお、短期的品質良好度合の指標の一つとして、短期的品質良好割合を用いたが、他の統計量を用いてもよい。
【0051】
続いて、品質能力算出装置27は、長期品質レベル(長期的品質良好度合)と短期品質レベル(短期的品質良好度合)とを用いて、
図11に示すように、品質良好度合を決定する。品質良好度合は、例えば、複数段階(例えば5段階)に分けられる。そして、
図11に示すように、5段階の長期品質レベルと、5段階の短期品質レベルとを用いて、マトリックスにすることにより、品質良好度合のレベルを5段階で現す。また、マトリックスにより品質良好度合のレベルを決定する場合の他に、長期品質レベルと短期品質レベルとの平均とすることもできる。このとき、長期品質レベルと短期品質レベルについて、それぞれ重み付けを行うようにしてもよい。
【0052】
また、高精度範囲への収まり度合は、検査工程14における計測結果から導出される。具体的には、品質能力算出装置27は、
図9において、品質許容範囲に含まれる対象物を母集団として、高精度範囲に含まれる対象物の割合を、収まり度合の指標の一つとして算出する。収まり度合の指標の一つとしての割合は、数値である。さらに続いて、品質能力算出装置27は、当該割合を用いて、収まり度合としてのレベル(以下、「収まり度合レベル」と称する)を決定する。収まり度合レベルは、複数段階(例えば5段階)に分けられる。例えば、収まり度合としての割合が高い場合には、収まり度合レベルが高く(例えばレベル5)となり、収まり度合としての割合が低い場合には、収まり度合レベルが低く(例えばレベル1)となる。
【0053】
次に、品質能力算出装置27は、品質良好度合と収まり度合とを用いて、
図12に示すように、品質能力を決定する。品質能力は、例えば、複数段階(例えば5段階)に分けられる。そして、
図12に示すように、5段階の品質良好度合のレベルと、5段階の収まり度合レベルとを用いて、マトリックスにすることにより、品質能力のレベルを5段階で現す。また、マトリックスにより品質能力のレベルを決定する場合の他に、品質良好度合のレベルと収まり度合レベルとの平均とすることもできる。このとき、品質良好度合のレベルと収まり度合レベルについて、それぞれ重み付けを行うようにしてもよい。
【0054】
総合能力算出装置28は、予め設定された第三演算処理をコンピュータにて実行することにより、生産能力のデータ及び品質能力のデータに基づいて、作業者の総合能力を作業者毎に算出する。生産能力のデータとは、生産能力算出装置23が算出した生産能力のレベルに関するデータである。品質能力のデータとは、品質能力算出装置27が算出した品質能力のレベルに関するデータである。
【0055】
つまり、総合能力算出装置28は、生産能力のレベルと品質能力のレベルとを用いて、
図13に示すように、総合能力を決定する。総合能力は、例えば、複数段階(例えば5段階)に分けられる。そして、
図13に示すように、5段階の生産能力のレベルと、5段階の品質能力のレベルとを用いて、マトリックスにすることにより、総合能力のレベルを5段階で現す。また、マトリックスにより総合能力のレベルを決定する場合の他に、生産能力のレベルと品質能力のレベルとの平均とすることもできる。このとき、生産能力のレベルと品質能力のレベルについて、それぞれ重み付けを行うようにしてもよい。
【0056】
提示装置29は、
図14に示すように、総合能力、生産能力、品質能力を作業者毎に提示する。提示装置29は、例えば、作業者が使用可能な固定端末やモバイル端末等とすることができる。この場合、提示装置29には、各能力を提示可能なアプリケーションがインストールされている。
【0057】
また、提示装置29は、
図14に示す提示内容に代えて、
図15に示す提示内容とすることもできる。
図15に示す提示内容は、総合能力、生産能力及び品質能力に加えて、生産能力を算出するために用いられた到達度合及び安定度合を提示すると共に、品質能力を算出するために用いられた品質良好度合及び収まり度合を提示する。
【0058】
また、提示装置29は、さらに、
図16に示す提示内容とすることもできる。
図16に示す提示内容は、総合能力、生産能力及び品質能力に加えて、生産能力を算出するために用いられた到達度合及び安定度合を提示すると共に、品質能力を算出するために用いられた長期的品質良好度合及び短期的品質良好度合を提示する。また、提示装置29は、
図15に示すように、品質良好度合及び収まり度合を提示すると共に、
図16に示すように、長期的品質良好度合及び短期的品質良好度合を提示するようにしてもよい。なお、提示装置29は、提示内容を適宜設定することができる。
【0059】
(4.効果)
上記のとおり、作業者の総合能力は、生産能力と品質能力とに基づいて算出される。作業者の生産能力は、到達度合と安定度合とに基づいて算出される。到達度合は、作業時間が短いほど、高い評価となる。安定度合は、複数回分の作業時間のばらつきが少ないほど、高い評価となる。つまり、常に作業時間が基準時間に到達している作業者は、到達度合が高く、且つ、安定度合が高くなる。従って、当該作業者の能力は、高い評価となる。例えば、複数の作業者において、到達度合が同程度であっても、基準時間に到達していない場合における遅れが大きい場合と小さい場合とでは、前者の安定度合が低くなり、後者の安定度合が高くなる。つまり、到達度合が同程度である場合に、安定度合が高いほど、作業者の能力は高い評価となる。このように、基準時間への到達度合に加えて、安定度合を考慮することで、作業者の能力をより適切に評価することができる。
【0060】
また、作業者の品質能力は、品質良好度合と収まり度合とに基づいて算出される。品質良好度合は、検査工程14における良好であるか不良であるかの検査結果に基づいて算出される。収まり度合は、製品としては良好であるが、その中でもより高精度となる割合である。つまり、収まり度合は、品質のばらつきがより小さいことを示す指標となる。換言すると、作業者の品質能力は、不良を出さない能力と、より高精度な製品を生産できる能力とにより算出される。これにより、作業者の品質能力を、より適切に評価することができる。
【0061】
さらに、品質良好度合は、長期的品質良好度合と短期的品質良好度合とに基づいて算出される。例えば、長期的に見れば、良好な品質の製品を生産できる能力を有するが、体調不良等により、短期的に見れば、良好な品質の製品を生産できる能力が低くなることがある。また、長期的に見れば、まだ良好な品質の製品を安定して生産できる能力を有しないとしても、成長が著しい場合に短期的に見れば、良好な品質の製品を生産できる能力を有する場合がある。これらの場合に、作業者の品質能力を適切に評価することができる。
【0062】
また、検査工程14における検査項目に関連する作業が、複数の作業者により作業に関わる場合には、当該検査項目の結果をこれら複数の作業者に分担させることとした。仮に、各検査項目をより詳細に区分することができれば、どの工程の作業による結果であるかを把握できることができる。しかし、検査項目を完全な項目に区分しないとしても、上記のように複数の作業者に分担させることにより、各作業者の品質能力を容易に算出することができる。また、提示装置29により各能力を提示することにより、作業者は、自身の能力を容易に把握することができる。
【符号の説明】
【0063】
1:生産設備、2:能力評価システム、11:第一組立工程(作業工程A)、12:第二組立工程(作業工程B)、13:第三組立工程(作業工程C)、14:検査工程、21:作業時間取得装置、22:基準時間記憶装置、23:生産能力算出装置、24:検査結果情報取得装置、25:対応作業記憶装置、26:品質範囲記憶装置、27:品質能力算出装置、28:総合能力算出装置、29:提示装置、A1-A3,B1-B3,C1-C3:生産セル