(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性インキ組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/037 20140101AFI20220531BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220531BHJP
C09B 23/06 20060101ALI20220531BHJP
C09B 57/00 20060101ALI20220531BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20220531BHJP
C09D 11/50 20140101ALN20220531BHJP
【FI】
C09D11/037
B41J2/01 501
C09B23/06
C09B57/00 X
C09D11/101
C09D11/50
(21)【出願番号】P 2017234166
(22)【出願日】2017-12-06
【審査請求日】2020-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 僚一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 昌平
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏明
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/186050(WO,A1)
【文献】特開2019-001983(JP,A)
【文献】特開2019-011455(JP,A)
【文献】特開2017-145347(JP,A)
【文献】特開2017-105921(JP,A)
【文献】特開2009-091517(JP,A)
【文献】特開2009-209297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/037
B41J 2/01
C09B 23/06
C09B 57/00
C09D 11/101
C09D 11/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される近赤外吸収剤(A)と、重合性化合物と
、重合開始剤と、体質顔料とを含む活性エネルギー線硬化性インキであって、
前記重合開始剤が、ベンゾフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、α―ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、α-アミノアルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、および、チオキサントン系化合物からなる群より選択される重合開始剤を1種以上含み、
前記重合開始剤の含有量が、活性エネルギー線硬化性インキの総質量に対し、3~20質量%であり、
前記体質顔料の含有量が、活性エネルギー線硬化性インキの総質量に対し、5~20質量%である、活性エネルギー線硬化性インキ。
一般式(1)
【化1】
[一般式(1)中、
Q
1、Q
4、Q
5およびQ
8は、それぞれ独立に、炭素原子または窒素原子を表す。Q
1、Q
4、Q
5およびQ
8が窒素原子の場合、X
1、X
4、X
5およびX
8はないものとする。
R
1~R
5は、それぞれ独立に、水素原子、スルホ基、-SO
3
-M
+またはハロゲン原子を表す。M
+は無機または有機のカチオンを表す。
X
1~X
8は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、-NR
6R
7、スルホ基、-SO
2NR
8R
9、-COOR
10、-CONR
11R
12、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。X
1~X
8は、互いに結合して環を形成してもよい。
R
6~R
12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアシル基または置換基を有してもよいピリジル基を表す。R
6とR
7、R
8とR
9、R
11とR
12は、互いに結合して環を形成してもよい。]
【請求項2】
前記重合性化合物が、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む、請求項
1に記載の活性エネルギー線硬化性インキ。
【請求項3】
前記分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物が、(メタ)アクリロイル基を3~6個有する化合物を、活性エネルギー線硬化性インキの総質量中30~60質量%含む、請求項
2に記載の活性エネルギー線硬化性インキ。
【請求項4】
前記重合開始剤が、ベンゾフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、α―ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、α-アミノアルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、および、チオキサントン系化合物からなる群より選択される重合開始剤を2種以上含む、請求項
1~3いずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性インキ。
【請求項5】
さらにバインダー樹脂を含む、請求項1~
4いずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性インキ。
【請求項6】
基材、請求項1~
5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性インキからなるインキ層、および請求項1~
5いずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性インキ以外のインキからなるインキ層が、順に積層された積層体。
【請求項7】
前記請求項1~
5いずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性インキ以外のインキが、着色剤を含むインキである、請求項
6に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の近赤外吸収剤を含む活性エネルギー線硬化性インキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種証明書等には改ざん、偽造防止のため様々な機能が施されている。たとえば通常の条件下では、肉眼では、識別し得ないようにし、特定の操作によってのみ識別できる機能のある液晶、導電性物質、磁性物質を使用することによって、照合や改ざん防止機能が付与されている。これらの方法は、たとえば、インキそのものに着色性を有する為に肉眼での通常の条件下で視認防止効果が不十分であることや、使用中の剥離、損傷や改ざんが容易であること、照合の操作が容易にできないことから、必ずしも満足できるものではなかった。
【0003】
近年、赤外線吸収を利用した検知方法が比較的容易な方法として用いられるようになり、バーコード印刷にも応用されるようになってきた。例えば、カーボンブラックなどの赤外線吸収物質を含む印刷インキで証券類などの所定部に情報パターンを印刷し、赤外線読み取り装置により情報パターンの有無を読み取り、真偽を判定している。しかし、前記カーボンブラックは可視光領域でも光吸収性を有するため、情報パターンの有無を目視で判別できる。そのため、情報パターンを形成しても識別されてしまい、真偽の判別精度を低下させる。
【0004】
したがって、インキは、情報の不可視性の観点から、400~700nmの可視光領域における吸収が低く、不可視情報を読み取るために750~1000nm(人間の眼では視認できない)の近赤外線領域に吸収を有することが求められる。また、耐光性、耐熱性、経時保存安定性などが求められる。不良な場合、経時変化によって不可視情報の読み取りの精度が低下する。
【0005】
750nm~1000nmの近赤外領域に吸収を有する代表的な色素としては、フタロシアニン色素、シアニン色素、ジイモニウム色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素などが知られている。これらの中でも特に代表的な色素として、フタロシアニン色素とシアニン色素が挙げられる。例えば、特許文献1には、特定のフタロシアニン色素を使用したシクロヘキサノン系溶剤を含有するセキュリティインキ組成物が開示されている。しかしながら、フタロシアニン色素は、各種耐性が良好であるが、可視光領域にsoret帯と呼ばれる構造由来の吸収があるため透明性・不可視性が劣っている。一方シアニン色素は、一般に染料として溶解状態で使用されるため、非常に高い透明性・不可視性を有しているが、各種耐性、特に耐光性が著しく悪い。ジイモニウム色素、スクアリリウム色素、及びクロコニウム色素もシアニン色素に類似した特徴を有している。
【0006】
特許文献2と特許文献3には、特定のペリミジン型スクアリリウム色素を、粒子として分散状態で使用する事で、耐光性を向上させたインクが開示されている。しかしながら、特許文献2に関しては、耐光性は不十分であり実用レベルに至っていない。また、特許文献3に関しては、耐光性は実用レベルではあるが、凝集しやすい色素であるため、分散性、粘度、保存安定性に課題がある。
【0007】
さらに、インキは、様々な基材への密着性や、印刷された塗膜の耐摩擦性、耐折り曲げ性、耐水性、耐溶剤性、耐ブロッキング性、黄変性などの各種耐性が求められる。不良な場合、塗膜の脱落や割れなどで、真偽の判別精度が低下する。
【0008】
塗膜の各種耐性を向上させるために、活性エネルギー線硬化性インキが提案されている。しかしながら、活性エネルギー線硬化性インキの場合、強い活性エネルギー線を照射して硬化させるため、硬化時に近赤外吸収色素が容易に分解を起こし、耐光性が低下する。更に、重合開始剤を含んでいる場合は、硬化後も塗膜内に残った重合開始剤によって塗膜が着色する。そのため、情報パターンを形成しても識別されてしまい、真偽の判別精度を低下させる。
【0009】
特許文献4には、特定の耐光性向上剤を使用する事で、近赤外吸収色素を含む活性エネルギー線硬化性インキの耐光性を向上させている。しかしながら、耐光性は向上するが、耐光性向上剤が可視光領域から紫外光領域に吸収波長をもつことや、経時で分解しインキが着色するため、情報の不可視性に課題があった。また、着色のためにインキの硬化性が悪化し、種々の塗膜耐性が低下するという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平4-320466
【文献】特開2009―91517
【文献】特開2009-209297
【文献】特開2002-241414
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、高い不可視性を有する、すなわち可視光領域(400nm~750nm)に吸収が少なく、近赤外線吸収能に優れ、高耐光性、高い塗膜耐性、密着性、硬化性、かつ安定性を有する活性エネルギー線硬化型インキ、および前記活性エネルギー線硬化型インキを用いた積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示すインキにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記一般式(1)で表される近赤外吸収剤(A)と、重合性化合物と、重合開始剤と、体質顔料とを含む活性エネルギー線硬化性インキであって、
前記重合開始剤が、ベンゾフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、α―ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、α-アミノアルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、および、チオキサントン系化合物からなる群より選択される重合開始剤を1種以上含み、
前記重合開始剤の含有量が、活性エネルギー線硬化性インキの総質量に対し、3~20質量%であり、
前記体質顔料の含有量が、活性エネルギー線硬化性インキの総質量に対し、5~20質量%である、活性エネルギー線硬化性インキに関する。
【0013】
【0014】
[一般式(1)中、
Q1、Q4、Q5およびQ8は、それぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表す。Q1、Q4、Q5およびQ8が窒素原子の場合、X1、X4、X5およびX8はないものとする。
R1~R5は、それぞれ独立に、水素原子、スルホ基、-SO3
-M+またはハロゲン原子を表す。M+は無機または有機のカチオンを表す。
X1~X8は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、-NR6R7、スルホ基、-SO2NR8R9、-COOR10、-CONR11R12、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。X1~X8は、互いに結合して環を形成してもよい。
R6~R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアシル基または置換基を有してもよいピリジル基を表す。R6とR7、R8とR9、R11とR12は、互いに結合して環を形成してもよい。]
【0016】
また、本発明は、前記重合性化合物が、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む、上記活性エネルギー線硬化性インキに関する。
【0017】
また、本発明は、前記分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物が、(メタ)アクリロイル基を3~6個有する化合物を、活性エネルギー線硬化性インキの総質量中30~60質量%含む、上記活性エネルギー線硬化性インキに関する。
【0018】
また、本発明は、前記重合開始剤が、ベンゾフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、α―ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、α-アミノアルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、および、チオキサントン系化合物からなる群より選択される重合開始剤を2種以上含む、上記活性エネルギー線硬化性インキに関する。
【0019】
また、本発明は、さらにバインダー樹脂を含む、上記活性エネルギー線硬化性インキに関する。
【0020】
また、本発明は、基材、上記活性エネルギー線硬化性インキからなるインキ層、および上記活性エネルギー線硬化性インキ以外のインキからなるインキ層が、順に積層された積層体に関する。
【0021】
また、本発明は、上記活性エネルギー線硬化性インキ以外のインキが、着色剤を含むインキである、上記積層体に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によって、高い不可視性を有する、すなわち可視光領域(400nm~750nm)に吸収が少なく、近赤外線吸収能に優れ、高耐光性、高い塗膜耐性、密着性、硬化性、かつ安定性を有する活性エネルギー線硬化型インキ、および前記活性エネルギー線硬化型インキを用いた積層体を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。まず、本明細書で使用される用語について説明する。「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよび/またはメタアクリロイルを意味する。「活性エネルギー線」とは、紫外線、電子線等、照射することによって照射されたものに化学反応等の化学的変化を生じさせ得る性質を有するエネルギー線を意味する。特に断りがない限り「部」とは質量部、「%」とは「質量%」を表す。
【0024】
[活性エネルギー線硬化性インキ]
本発明の一実施形態は、活性エネルギー線硬化性インキに係わる。当該活性エネルギー線硬化性インキは、一般式(1)で表される近赤外吸収剤(A)と、重合性化合物とを含むことを特徴とする。一般式(1)で表される近赤外吸収剤(A)は、750~1000nmの波長領域に吸収を有するものを用いるのが好ましい。本発明の活性エネルギー線硬化性インキは、近赤外吸収剤(A)を含まない様々なインキと組合せて使用することができ、特に、近赤外吸収剤(A)を含まない活性エネルギー線硬化性インキと組合せで好適に使用することができる。
【0025】
[近赤外吸収剤(A)]
本発明に用いる一般式(1)で表される近赤外吸収剤(A)について詳しく説明する。
【0026】
【0027】
[一般式(1)中、
Q1、Q4、Q5およびQ8は、それぞれ独立に、炭素原子、または窒素原子を表す。Q1、Q4、Q5およびQ8が窒素原子の場合、X1、X4、X5およびX8はないものとする。
R1~R5は、それぞれ独立に、水素原子、スルホ基、-SO3
-M+またはハロゲン原子を表す。M+は無機または有機のカチオンを表す。
X1~X8は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、-NR6R7、スルホ基、-SO2NR8R9、-COOR10、-CONR11R12、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。X1~X8は、互いに結合して環を形成してもよい。
R6~R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアシル基または置換基を有してもよいピリジル基を表す。R6とR7、R8とR9、R11とR12は、互いに結合して環を形成してもよい。]
【0028】
Q1、Q4、Q5およびQ8としては、炭素原子がより好ましい。
【0029】
R1~R5において「ハロゲン原子」としては、フッ素、臭素、塩素、または、ヨウ素が挙げられる。
【0030】
R1~R5においてM+の「無機又は有機のカチオン」としては、公知のものが制限なく採用でき、有機のカチオンの場合、低分子タイプと高分子タイプのどちらでも良い。具体的には、金属原子、アンモニウム化合物、ピリジニウム化合物、イミダゾリウム化合物、ホスホニウム化合物、スルホニウム化合物等を挙げることができる。高分子タイプの場合、例えば、「4級アンモニウム塩基を有する樹脂」などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの中でも3価の金属原子、アンモニウム化合物、4級アンモニウム塩基を有する樹脂が、耐性付与の観点で好ましい。
【0031】
R1~R5は、耐性付与の観点から、全て水素原子であるか、もしくはR1~R5のうち4つが水素原子であり、1つがスルホ基、-SO3-M+、またはハロゲン原子であることが好ましい。これらの中でも、全て水素原子であるか、またはR1~R5のうち4つが水素原子であり、1つがスルホ基、またはハロゲン原子であることが特に好ましい。
【0032】
X1~X8において「置換基を有してもよいアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、イソブチル基、tert-アミル基、2-エチルヘキシル基、ステアリル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2-メトキシエチル基、2-クロロエチル基、2-ニトロエチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、または、ジメチルシクロヘキシル基等を挙げることができ、これらの中でもメチル基、または、エチル基が、合成難易度の観点で好ましい。
【0033】
X1~X8において「置換基を有してもよいアルケニル基」としては、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、または、5-ヘキセニル基等を挙げることができ、これらの中でもビニル基、または、アリル基が、合成難易度の観点で好ましい。
【0034】
X1~X8において「置換基を有してもよいアラルキル基」としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、または、ナフチルメチル基等を挙げることができ、これらの中でもベンジル基が、合成難易度の観点で好ましい。
【0035】
X1~X8において「置換基を有してもアルコキシ基」としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ステアリルオキシ基、または、2-(ジエチルアミノ)エトキシ基等を挙げることができ、これらの中でもメトキシ基、エトキシ基、トリフルオロメトキシ基、または、2-(ジエチルアミノ)エトキシが、合成難易度の観点で好ましい。
【0036】
X1~X8において「置換基を有してもよいアリールオキシ基」としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、4-メチルフェニルオキシ基、3,5-クロロフェニルオキシ基、4-クロロ-2-メチルフェニルオキシ基、4-tert- ブチルフェニルオキシ基、4-メトキシフェニルオキシ基、4-ジエチルアミノフェニルオキシ基、または、4-ニトロフェニルオキシ基等を挙げることができ、これらの中でもフェノキシ基、または、ナフチルオキシ基が、合成難易度の観点で好ましい。
【0037】
X1~X8において「ハロゲン原子」としては、フッ素、臭素、塩素、または、ヨウ素が挙げられる。
【0038】
X1~X8は、互いに結合して環を形成してもよく、例として以下の構造が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
【0040】
X1~X8は、分散性、保存安定性及び合成難易度の観点から、全て水素原子であることが特に好ましい。
【0041】
R6~R12において「置換基を有してもよいアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、イソブチル基、secブチル基、tert-アミル基、2-エチルヘキシル基、ステアリル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2-メトキシエチル基、2-クロロエチル基、2-ニトロエチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、または、ジメチルシクロヘキシル基等を挙げることができ、これらの中でもメチル基、または、エチル基が、合成難易度の観点で好ましい。
【0042】
R6~R12において「置換基を有してもよいアリール基」としては、フェニル基、ナフチル基、4-メチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、4-ブロモフェニル基、2-メトキシフェニル基、4-ジエチルアミノフェニル基、3-ニトロフェニル基、または、4-シアノフェニル基等を挙げることができ、これらの中でもフェニル基、または、4-メチルフェニル基が、合成難易度の観点で好ましい。
【0043】
R6~R12において「置換基を有してもよいアシル基」としては、アセチル基、プロ
ピオイル基、ベンゾイル基、アクリリル基、または、トリフルオロアセチル基等を挙げることができ、これらの中でもアセチル基が、合成難易度の観点で好ましい。
【0044】
R6~R12において「置換基を有してもよいピリジニル基」としては、2-ピリジニル基、3-ピリジニル基、4-ピリジニル基、または、2-メチル-4-ピリジニル基等を挙げることができ、これらの中でも4-ピリジニル基が、合成難易度の観点で好ましい。
【0045】
R6とR7、R8とR9、R11とR12は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0046】
本発明において、一般式(1)で表される近赤外吸収剤(A)の活性エネルギー線硬化性インキの総質量における含有量は、0.05~10質量%で用いられることが好ましい。より好ましくは、0.5~5質量%の範囲である。
【0047】
本発明において、一般式(1)で表される近赤外吸収剤(A)は、1種単独で用いてもよいし、必要に応じて任意の比率で2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0048】
本発明の効果が低下しない範囲で、一般式(1)で表される近赤外吸収剤(A)以外の、その他近赤外吸収剤を含有してもよい。その他近赤外吸収剤は、活性エネルギー線硬化性インキの総量に対して、0.1質量%以下であることが好ましい。本発明に用いることができるその他近赤外吸収剤としては、フタロシアニン色素、シアニン色素、ジイモニウム色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素など公知のものが挙げられる。
【0049】
[重合性化合物]
本発明における活性エネルギー線硬化性インキは、塗膜耐性、密着性、硬化性のために少なくとも重合性化合物を含有する。
重合性化合物としては、ラジカル重合反応、カチオン重合反応、二量化反応など公知の重合性もしくは架橋性材料を用いることができる。中でも、塗膜耐性、密着性、硬化性の観点から、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物、エポキシ系化合物、オキセタン系化合物、オキシラン系化合物、マレイミド基を側鎖に有する高分子化合物などが挙げられる。少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、より好ましくは2個以上有する化合物から選択される。具体的には、本発明に係わる産業分野において広く知られたものの中から適宜選択することができ、例えば、モノマー、プレポリマー、オリゴマー又はそれらの混合物、並びにそれらの共重合体などの化学的形態を持つものが含まれる。
【0050】
重合性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、重合性化合物の活性エネルギー線硬化性インキの総質量に対する含有量は、30~90%質量%の範囲で用いられることが好ましい。より好ましくは、40~80質量%の範囲である。
【0051】
重合性化合物は、具体的には分子内に(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基、ビニルエーテル基、内部二重結合性基(マレイン酸など)などの重合性基を有するものが好ましい。中でも、硬化性の点で、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。
【0052】
前記(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アクリル樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレートなどが挙げられる。中でも(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
【0053】
前記(メタ)アクリレートとしては、分子内に(メタ)アクリロイル基が1個である単官能(メタ)アクリレート、分子内に(メタ)アクリロイル基が2個以上である多官能(メタ)アクリレートを挙げられる。中でも、分子内に(メタ)アクリロイル基が3個以上6個以下である多官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。さらには、分子内に(メタ)アクリロイル基が6個である多官能(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。
【0054】
前記単官能(メタ)アクリレートの具体例として、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキノールアクリレート、テトラヒドロキシ(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノールアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリンなどが挙げられる。中でも、アクリロイルモルフォリンが好ましい。
【0055】
前記多官能(メタ)アクリレートの具体例として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールアクリル酸多量体エステル(2官能)、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタンエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)テトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。中でも、分子内に(メタ)アクリロイル基が3つ以上6つ以下である多官能(メタ)アクリレートが好ましい。特に、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。ここで、「EO」とは、エチレンオキシド、「PO」とはプロピレンオキシドを意味し、これらによって変性されたものであることを意味する。
【0056】
本発明において、分子内に(メタ)アクリロイル基が3つ以上6つ以下である多官能(メタ)アクリレートの活性エネルギー線硬化性インキの総質量に対する含有量は、30~60質量%の範囲で用いられることが好ましく、より好ましくは35~55質量の範囲%である。さらには、分子内に(メタ)アクリロイル基が6個である多官能(メタ)アクリレートを、重合性化合物の総質量に対して、50~80質量%含むことがより好ましい。
【0057】
前記ウレタン(メタ)アクリレートとは、ポリオールとポリイソシアネートとの付加反応により得られるウレタン結合を複数有する主骨格を有し、さらに、末端及びあるいは側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。中でも、(メタ)アクリロイル基が4~12個であるウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。より好ましくは、(メタ)アクリロイル基が6~10個であるウレタン(メタ)アクリレートである。
【0058】
前記ウレタン(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ダイセル・オルネクス株式会社製のEBECRY220、EBECRYL230、EBECRY264、EBECRY265、EBECRY270、EBECRY284、EBECRY285、EBECRY1258、EBECRY4100、EBECRY4200、EBECRY8415、EBECRY8602などが挙げられる。
【0059】
本発明において、前記ウレタン(メタ)アクリレートの活性エネルギー線硬化性インキの総質量に対する含有量は、3~20質量%の範囲で用いられることが好ましく、より好ましくは5~15質量%の範囲である。
【0060】
本発明の効果が低下しない範囲で、上述した以外のその他重合性化合物を含有してもよい。
【0061】
[重合開始剤]
本発明における活性エネルギー線硬化性インキは、ラジカル重合、若しくは、カチオン重合の重合性開始剤を含有することが好ましく、光重合開始剤を含有することが特に好ましい。本発明における重合開始剤は、光の作用、または増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、化学変化を生じ、ラジカル、酸および塩基のうち少なくともいずれか1種を生成する化合物であり、中でも、露光という手段で重合開始させることができるという観点から光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0062】
光ラジカル重合開始剤は、特に制限なく、公知のものを用いることができる。例えば、具体例としては、ベンゾフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、α―ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、α―アミノアルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チオキサントン化合物などが挙げられる。
【0063】
ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]-フェニルメタノンなどが挙げられる。ジアルコキシアセトフェノン系化合物としては、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ジメトキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンなどが挙げられる。α―ヒドロキシアルキルフェノン系化合物としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシメトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オンなどが挙げられる。α―アミノアルキルフェノン系化合物としては、2-メチル-1-[4-(メトキシチオ)-フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル-1-ブタノンなどが挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系化合物としては、ジフェニルアシルフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。チオキサントン系化合物としては、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントンなどが挙げられる。
【0064】
上記重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、硬化性の観点から、ベンゾフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、α―ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、α-アミノアルキルフェノン系化合物およびアシルフォスフィンオキサイド系化合物、チオキサントン系化合物からなる群より選択される重合開始剤を2種以上組み合わせて用いられることが好ましい。さらには、塗膜の黄変が少ないジアルコキシアセトフェノン系化合物、α―ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、α-アミノアルキルフェノン系化合物の何れかを1種以上を含み、かつ、全重合開始剤の総質量に対して、50質量%以上の範囲であることがより好ましい。
【0065】
重合開始剤の活性エネルギー線硬化性インキの総質量に対する含有量は、0.5~20質量%の範囲で用いられることが好ましく、より好ましくは3~12質量%の範囲である。
【0066】
[バインダー樹脂]
本発明における活性エネルギー線硬化性インキは、バインダー樹脂を含有することが好ましい。バインダー樹脂を含有することで、硬化時に生じる塗膜の硬化収縮を緩和でき、基材のカールを抑制できる。さらには、種々の基材に対して優れた密着性、塗膜耐性を得ることができる。
【0067】
バインダー樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、石油樹脂、尿素樹脂、ブタジエン-アクリルニトリル共重合体のような合成ゴムなどが挙げられる。中でも、ジアリルフタレート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。より好ましくは、ジアリルフタレート樹脂である。
【0068】
バインダー樹脂の重量平均分子量は、1,000~100,000の範囲であることが好ましい。より好ましくは、2,000~70,000の範囲である。
【0069】
バインダー樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、バインダー樹脂の活性エネルギー線硬化性インキの総質量に対する含有量は、1~25質量%の範囲で用いられることが好ましく、より好ましくは7~20質量%の範囲である。
【0070】
[重合開始助剤]
本発明における活性エネルギー線硬化性インキは、重合開始助剤を含有することもできる。重合開始助剤を含有することで、硬化性を一層向上することができる。重合開始剤助剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、脂肪族アミン、2-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジブチルエタノールアミンなどが挙げられる。
【0071】
重合開始助剤の活性エネルギー線硬化性インキの総質量に対する含有量は、0.1~5質量%の範囲で用いられることが好ましく、より好ましくは0.5~3質量%の範囲である。
【0072】
[体質顔料]
本発明における活性エネルギー線硬化性インキは、体質顔料を含有することが好ましい。体質顔料を含有することで、インキの流動性改善や塗膜の強度を向上することができる。
【0073】
体質顔料としては、特に制限なく、公知のものを用いることができる。具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、シリカ、タルク、カオリンなどが挙げられる。中でも、炭酸カルシウム、タルク、シリカが好ましい。
【0074】
体質顔料の活性エネルギー線硬化性インキの総質量に対する含有量は、1~20質量%の範囲で用いられることが好ましく、より好ましくは5~15質量%の範囲である。
【0075】
[その他の成分]
本発明における活性エネルギー線硬化性インキは、本発明の効果が低下しない範囲で、分散剤、レベリング剤、帯電防止剤、界面活性剤、消泡剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ワックス、スリップ剤、有機溶剤、着色剤などを必要に応じて添加することができる。
【0076】
本発明における活性エネルギー線硬化性インキは、下記式(I)及び下記式(II)を満たすことが好ましい。式(I)及び式(II)を満たすことで、情報の不可視性と不可視情報の読み取りやすさとを両立することが可能となり、さらに、不可視情報が記録された記録媒体における長期信頼性を実現することが可能となる。
【0077】
式(I)
0≦ΔE≦15
式(II)
(100-R)≧75
[式(I)中、ΔEは下記式(III)を表し、式(II)中、R(単位:%)は前記画像部における波長850nmの赤外線反射率を示す。]
【0078】
式(III)
【数1】
[式(III)中、L
1、a
1、b
1はそれぞれ画像形成前における記録媒体表面のL値、a値、及びb値を示し、L
2、a
2、b
2はそれぞれ前記活性エネルギー線硬化性インキを用いて付着量4g/m
2の定着画像を記録媒体表面に形成した時の画像部におけるL値、a値、及びb値を示す。)で表されるCIE1976L*a*b*表色系における色差を示す。]
【0079】
L1、a1、b1、L2、a2、b2は反射分光濃度計を用いて得ることができる。本発明におけるL1、a1、b1、L2、a2、b2は、反射分光濃度計としてエックスライト株式会社製、x-rite939を用いて測定されたものである。
【0080】
[積層体]
本発明の積層体は、基材に本発明の活性エネルギー線硬化性インキからなるインキ層上に、更に本発明の活性エネルギー線硬化性インキ以外のインキからなるインキ層を有する。
前記積層体とは、基材上に、本発明の活性エネルギー線硬化性インキを印刷・硬化させた層上に、トナー、インクジェットインキ、スクリーンインキ、フレキソインキ、オフセットインキ、グラビアインキからなる本発明の活性エネルギー線硬化性インキ以外のインキからなるインキ層を少なくとも1層を形成したものである。本発明の活性エネルギー線硬化性インキ以外のインキは、本発明の活性エネルギー線硬化型インキとの密着性の観点から、活性エネルギー線によって硬化するインキが好ましい。本発明の活性エネルギー線硬化性インキ以外のインキからなるインキ層は、本発明の活性エネルギー線硬化性インキの一部に形成しても、全体に形成してもよい。
積層体における本発明の活性エネルギー線硬化性インキの厚みは、0.1~10μmであることが好ましく、0.5~5μmであることがより好ましい。
【0081】
本発明の活性エネルギー線硬化性インキ以外のインキは、着色剤を含まなくても含んでもよい。着色剤としては、特に制限がなく、公知のものが使用できる。中でも、750~1000nmの波長領域に吸収を有しないか、750~1000nmの波長領域の吸収が低いものが好ましい。
【0082】
基材としては、特に制限なく、公知のものを用いることができる。具体的には、アート紙、コート紙、キャスト紙などの塗工紙や上質紙、中質紙、新聞用紙などの非塗工紙、ユポ紙などの合成紙、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、OPP(2軸延伸ポリプロピレン)のようなプラスチックフィルムが挙げられる。
【0083】
本発明の活性エネルギー線硬化性インキを印刷する方法には、特に制限がなく公知の方法を用いることができる。具体的には、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷などが挙げられる。中でも、オフセット印刷が好ましい。
【0084】
本発明の活性エネルギー線硬化性インキを硬化する方法には、特に制限がなく公知の方法を用いることができる。例えば、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などを照射することで硬化することができる。中でも、紫外線、電子線が好ましく、より好ましくは紫外線である。紫外線のピーク波長は、200~600nmであることが好ましく、より好ましくは300~450nmである。
【0085】
活性エネルギー線源としては、特に制限がなく公知のものを用いることができる。具体的には、水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハイドライドランプ、紫外線発光ダイオード(UV-LED)、紫外線レーザーダイオード(UV-LD)等のLED(発光ダイオード)やガス・固体レーザーなどが挙げられる。
【0086】
本発明の活性エネルギー線硬化性インキを用いて印刷された不可視情報は、例えば750nm以上1000nm以下のいずれかの波長で発光する半導体レーザー又は発光ダイオードを光学読み取り用の光源として用い、近赤外光に高い分光感度を有する汎用の受光素子を使用することにより、非常に簡易にかつ高感度に読み出すことが可能である。受光素子としては、例えばシリコンによる受光素子(CCD等)が挙げられる。
【実施例】
【0087】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例中、「部」及び「%」とは「質量部」および「質量%」をそれぞれ表す。
【0088】
[近赤外吸収剤[A-1]の製造方法]
トルエン400部に、1,8-ジアミノナフタレン40.0部、9-フルオレノン46.0部、p-トルエンスルホン酸一水和物0.087部を混合し、窒素ガスの雰囲気中で加熱攪拌し、3時間還流させた。反応中に生成した水は共沸蒸留により系中から除去した。反応終了後、トルエンを蒸留して得られた暗茶色固体をアセトンで抽出し、アセトンとエタノールの混合溶媒から再結晶することにより精製した。得られた茶色固体を、トルエン240部とn-ブタノール160部の混合溶媒に溶解させ、3,4-ジヒドロキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオン13.8部を加えて、窒素ガスの雰囲気中で加熱撹拌し、8時間還流反応させた。反応中に生成した水は共沸蒸留により系中から除去した。反応終了後、溶媒を蒸留し、得られた反応混合物を攪拌しながら、ヘキサン200部を加えた。得られた黒茶色沈殿物を濾別した後、順次ヘキサン、エタノール及びアセトンで洗浄を行い、減圧下で乾燥させ、近赤外吸収剤[A-1]84.6部(収率:97%)を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、近赤外吸収剤[A-1]であることを同定した。
【0089】
【0090】
[近赤外吸収剤[A-2]の製造方法]
近赤外吸収剤[A-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、2-メチル-9-フルオレノン49.6部を使用した以外は、近赤外吸収剤[A-1]の製造と同様の操作を行い、近赤外吸収剤[A-2]86.7部(収率:96%)を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、近赤外吸収剤[A-2]であることを同定した。
【0091】
【0092】
[近赤外吸収剤[A-3]の製造方法]
近赤外吸収剤[A-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、1,8-ジメチル-9-フルオレノン53.2部を使用した以外は、近赤外吸収剤[A-1]の製造と同様の操作を行い、近赤外吸収剤[A-3]88.2部(収率:94%)を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、近赤外吸収剤[A-3]であることを同定した。
【0093】
【0094】
[近赤外吸収剤[A-4]の製造方法]
近赤外吸収剤[A-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、2-フェニル-9-フルオレノン65.5部を使用した以外は、近赤外吸収剤[A-1]の製造と同様の操作を行い、近赤外吸収剤[A-4]96.6部(収率:91%)を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、近赤外吸収剤[A-4]であることを同定した。
【0095】
【0096】
[近赤外吸収剤[A-5]の製造方法]
近赤外吸収剤[A-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、2,3-ジメトキシ-9-フルオレノン61.4部を使用した以外は、近赤外吸収剤[A-1]の製造と同様の操作を行い、近赤外吸収剤[A-5]93.4部(収率:92%)を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、近赤外吸収剤[A-5]であることを同定した。
【0097】
【0098】
[近赤外吸収剤[A-6]の製造方法]
近赤外吸収剤[A-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、2-アミノ-9-フルオレノン49.9部を使用した以外は、近赤外吸収剤[A-1]の製造と同様の操作を行い、近赤外吸収剤[A-6]86.8部(収率:96%)を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、近赤外吸収剤[A-6]であることを同定した。
【0099】
【0100】
[近赤外吸収剤[A-7]の製造方法]
近赤外吸収剤[A-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、2-アミノ-7-ブロモ-9-フルオレノン70.0部を使用した以外は、近赤外吸収剤[A-1]の製造と同様の操作を行い、近赤外吸収剤[A-7]102.4部(収率:93%)を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、近赤外吸収剤[A-7]であることを同定した。
【0101】
【0102】
[近赤外吸収剤[A-8]の製造方法]
近赤外吸収剤[A-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、9-オキソ-9H-フルオレン-2-スルホン酸66.5部を使用した以外は、近赤外吸収剤[A-1]の製造と同様の操作を行い、近赤外吸収剤[A-8]97.3部(収率:91%)を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、近赤外吸収剤[A-8]であることを同定した。
【0103】
【0104】
[近赤外吸収剤[A-9]の製造方法]
近赤外吸収剤[A-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、2-フルオロ-9-フルオレノン50.6部を使用した以外は、近赤外吸収剤[A-1]の製造と同様の操作を行い、近赤外吸収剤[A-9]85.9部(収率:94%)を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、近赤外吸収剤[A-9]であることを同定した。
【0105】
【0106】
[近赤外吸収剤[A-10]の製造方法]
近赤外吸収剤[A-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、4-アザ-9-フルオレノン46.3部を使用した以外は、近赤外吸収剤[A-1]の製造と同様の操作を行い、近赤外吸収剤[A-10]82.1部(収率:94%)を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、近赤外吸収剤[A-10]であることを同定した。
【0107】
【0108】
[近赤外吸収剤[A-11]の製造方法]
近赤外吸収剤[A-1]の製造で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、4,5-ジアザフルオレン-9-オン46.5部を使用した以外は、近赤外吸収剤[A-1]の製造と同様の操作を行い、近赤外吸収剤[A-11]80.2部(収率:91%)を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、近赤外吸収剤[A-11]であることを同定した。
【0109】
【0110】
[近赤外吸収剤[A-12]の製造方法]
近赤外吸収剤[A-1]の製造で使用した1,8-ジアミノナフタレン40.0部の代わりに、4,5-ジアミノナフタレン-1-スルホン酸60.2部を使用した以外は、近赤外吸収剤[A-1]の製造と同様の操作を行い、近赤外吸収剤[A-12]99.8部(収率:94%)を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、近赤外吸収剤[A-12]であることを同定した。
【0111】
【0112】
[近赤外吸収剤[A-13]の製造方法]
近赤外吸収剤[A-1]の製造で使用した1,8-ジアミノナフタレン40.0部の代わりに、1,8-ジアミノ-3,6-ジクロロナフタレン57.4部を使用した以外は、近赤外吸収剤[A-1]の製造と同様の操作を行い、近赤外吸収剤[A-13]97.4部(収率:94%)を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、近赤外吸収剤[A-13]であることを同定した。
【0113】
【0114】
[近赤外吸収剤[A-14]の製造方法]
近赤外吸収剤[A-1]の製造で使用した1,8-ジアミノナフタレン40.0部の代わりに、1,8-ジアミノ-4-ブロモナフタレン59.9部を使用した以外は、近赤外吸収剤[A-1]の製造と同様の操作を行い、近赤外吸収剤[A-14]101.7部(収率:96%)を得た。TOF-MSによる質量分析及び元素分析の結果、近赤外吸収剤[A-14]であることを同定した。
【0115】
【0116】
[近赤外吸収剤[A-15]の製造方法]
近赤外吸収剤[A-11]20.0部を、水300部に加えて撹拌し再分散した後、26%アンモニア水を用いてpH7.0に調整して溶解させた。この溶液中に8%テトラブチルアンモニウムブロミド水溶液192.6部を徐々に添加した。滴下した箇所から析出物が次々に現れ、添加と共に徐々にpHが低下した。添加終了後にはブリードは見られなかった。スラリーから析出物を濾別した後、水洗して、80℃で乾燥し、近赤外吸収剤[A-15]30.7部(収率:99%)を得た。
【0117】
[近赤外吸収剤[B-1]の製造]
特開2009-91517号公報に準拠して下記の近赤外吸収剤[B-1]を合成した。
【0118】
【0119】
[近赤外吸収剤[B-2]の製造]
特開2009-209297号公報に準拠して下記の近赤外吸収剤[B-2]を合成した。
【0120】
【0121】
[ポリエステル樹脂Cの製造]
還流冷却管、蒸留塔、窒素ガス導入管、温度計、及び撹拌機を備え付けたフラスコに、
2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、テトラヒドロ無水フタル酸、1,6-ヘキサンジオール、及び触媒として、ジブチル錫オキサイドを投入し、窒素雰囲気下で撹拌しながら200℃まで加温し、4時間反応させた。さらに、減圧下で1時間反応させた。2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン/テトラヒドロ無水フタル酸/1,6-ヘキサンジオールの重量比が50/42/8である重量平均分子量5,000のポリエステル樹脂Cを得た。
【0122】
なお、樹脂の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ、東ソー社製、HLC-8120GPCを使用)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0123】
[活性エネルギー線硬化性インキの製造方法]
実施例1
ダイソーダップAを15.0質量部に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを45.0質量部加え、100℃で加熱撹拌しダイソーダップAを溶解させた。
冷却後、近赤外吸収剤(A-1)を1.0質量部、重合性化合物として、EO変性ビスフェノールAジアクリレートを5.0質量部、トリメチロールプロパントリアクリレートを5.0質量部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを5.0質量部、重合性開始剤として、イルガキュア907を1.0質量部、SB-PI751を5.0質量部、重合開始助剤として、ChemarkEDBを0.5質量部、体質顔料として、白艶華Oを11.4質量部、レオロシールMT10Cを1.0質量部、スリップ剤として、Tワックスコンパウンドを5.0質量部、重合禁止剤として、Q-1301を0.1質量部加え、撹拌後、3本ロールにて分散し、活性エネルギー線硬化性インキを得た。
【0124】
実施例2~31、比較例1~4
表1に記載した原料と量を変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施例2~31、比較例1~4を得た。尚、表1中の数値は特に断らない限り「質量部」を表し、空欄は配合していないことを表す。
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
表1中の略語は、以下の通りである。
[近赤外吸収剤]
・C3051:東京化成工業株式会社製、5,9,14,18,23,27,32,36-オクタブトキシ-2,3-ナフタロシアニン銅(II)
・C2886:東京化成工業株式会社製、2-[2-[2-クロロ-3-[2-(1,3-ジヒドロ-1,1,3-トリメチル-2H-ベンゾ[e]インドール-2-イリデン)エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]エテニル]-1,1,3-トリメチル-1H-ベンゾ[e]インドリウム4-メチルベンゼンスルホナート
【0129】
[バインダー樹脂]
・ダイソーダップA:株式会社大阪ソーダ製、ジアリルフタレート樹脂(重量平均分子量55,000)
【0130】
[重合性化合物]
・EBECRYL8415:ダイセル・オルネクス株式会社製、脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー(10官能)
【0131】
[重合開始剤]
・イルガキュア907:BASF社製、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン
・イルガキュア2959:BASF社製、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン
・イルガキュア379:BASF社製、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル-1-ブタノン
・SB-PI751:ソート社製、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン
・SB-PI718: ソート社製、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド
・SB-PI712:ソート社製、4-メチルベンゾフェノン
・SB-PI799:ソート社製、2,4-ジメチルチオキサントン
[重合開始助剤]
・ChemarkEDB:ChemarkChemical社製、4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル
[体質顔料]
・白艶華O:白石工業株式会社製、炭酸カルシウム
・レオロシールMT10C:株式会社トクヤマ製、乾式シリカ
[その他の成分]
・Tワックスコンパウンド:東新油脂株式会社製、ポリエチレンワックス
・Q-1301:和光純薬工業株式会社製、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン
【0132】
得られた活性エネルギー線硬化性インキを、以下の方法により性能評価を行なった。結果を表2に示す。
【0133】
[分散性]
得られた活性エネルギー線硬化性インキとジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを2/1の重量比でそれぞれ混合し、JIS K5600-2-5に従って分散粒子径測定器(グラインドメーター)で分散性を測定した。◎、〇が実用上問題ないレベルであると評価する。
◎ :粒子径が5.0ミクロン以下
○ :粒子径が7.5ミクロン以下
△ :粒子径が10.0ミクロン以下
× :粒子径が12.5ミクロン以下
【0134】
[試験サンプルの作成方法]
得られた活性エネルギー線硬化性インキを、RIテスターにて全面ロールを用いて、基材であるコート紙に0.25mlの盛り量で画像を印刷した。その後、実施例1~15、17~31と比較例1~4の印刷物は、コンベア速度30m/分、水銀ランプ160W/cm、印刷物と水銀ランプ間距離5cmにて活性エネルギー線硬化性インキを硬化させ、試験サンプルを作成した。
実施例16の印刷物は、コンベア速度30m/分、加速電圧80kV、線量50kGy、印刷物と電子線発生源距離5cmにて、電子線を用いて活性エネルギー線硬化性インキを硬化させ、試験サンプルを作成した。
【0135】
[不可視性(式(I)のΔE)及び近赤外吸収能(式(II)の(100-R))]
上記方法で作成した試験サンプルを用いて、反射分光濃度計(エックスライト株式会社製、x-rite939)にて画像部分の測定を行い、式(I)中のΔEおよび式(II)中のRを求めた。なお、◎、〇が実用上問題ないレベルであると評価する。
(不可視性)
◎ :ΔE 10未満
○ :ΔE 10以上、15未満
× :ΔE 15以上
(近赤外線吸収能)
◎ :(100-R) 80以上
○ :(100-R) 75以上、80未満
× :(100-R) 75未満
【0136】
[耐光性]
上記方法で作成した試験サンプルを、耐光性試験機(TOYOSEIKI社製「SUNTEST CPS+」)に入れ、24時間放置した。この際、放射照度47mW/cm2、300~800nmの広帯の光にて試験を実施した。耐光性試験前後の画像について、反射分光濃度計(エックスライト株式会社製、x-rite939)を用いて測定を行い、式(II)中のRを求めた。光照射前のそれに対する残存率を求め、耐光性を評価した。◎、〇が実用上問題ないレベルであると評価する。なお、残存率の算出は、以下の式を用いて算出した。
残存率=〈照射後の(100-R)〉÷〈照射前の(100-R)〉×100
◎ :残存率が95%以上
○ :残存率が92.5%以上、95%未満
△ :残存率が90%以上、92.5%未満
× :残存率が90%未満
【0137】
[耐摩擦性]
上記方法で作成した試験サンプルを用いて、学振型摩擦堅牢試験機で荷重500g、500回 対紙:上質紙にて耐摩擦試験を行い、画像部分に生じた傷について評価した。◎、〇が実用上問題ないレベルであると評価する。
◎ :傷が全くつかない
○ :傷の面積が30%未満
△ :傷の面積が30%以上50%未満
× :傷の面積が50%以上
【0138】
[密着性]
上記方法で作成した試験サンプルを用いて、画像面に幅12mmの粘着テープ(ニチバン社製 セロハンテープ)を貼り付け、これを画像面に対して90℃方向に剥がした際の画像の剥離した面積を評価した。◎、〇が実用上問題ないレベルであると評価する。
◎ :全く剥離しない。
○ :塗膜の剥離面積が1%以上10%未満
△ :塗膜の剥離面積が10%以上30%未満
× :塗膜の剥離面積が30%以上
【0139】
[カール性]
カール性については、50μm処理OPP(二軸延伸ポリプロピレンフィルム)に得られた活性エネルギー線硬化性インキをバーコーター#3で塗工した。その後、実施例1~15、17~31と比較例1~4の塗工物は、コンベア速度30m/分、水銀ランプ160W/cm、印刷物とランプ間距離5cmの条件で塗工物を作成した。
実施例16の印刷物は、コンベア速度30m/分、加速電圧80kV、線量50kGy、印刷物と電子線発生源距離5cmにて、電子線を用いて活性エネルギー線硬化性インキを硬化させ、塗工物を作成した。
得られた塗工物を10cm×10cmに裁断し、水平面に置き、水平面と塗工物の四隅までの距離を測定し評価した。◎、〇が実用上問題ないレベルでると評価する。
◎ :4mm未満
○ :4mm以上6mm未満
△ :6mm以上8mm未満
× :8mm以上
【0140】
[硬化性]
硬化性については、得られた活性エネルギー線硬化性インキを、RIテスターにて全面ロールを用いて、基材であるコート紙上に1.00mlの盛り量で画像を印刷した。その後、実施例1~15、17~31と比較例1~4の印刷物は、コンベア速度10m/分、水銀ランプ128W/cm、印刷物と水銀ランプ間距離5cmの条件で印刷物を通過させ、表面からタックがなくなるまでの通過回数にて評価した。実施例16の印刷物は、コンベア速度10m/分、加速電圧80kV、線量30kGy、印刷物と電子線発生源距離5cmの条件で印刷物を通過させ、表面からタックがなくなるまでの通過回数にて評価した。◎、〇が実用上問題ないレベルであると評価する。
◎ :1回
○ :2回
△ :3回
× :4回以上
【0141】