(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20220531BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2018004649
(22)【出願日】2018-01-16
【審査請求日】2020-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 崇
(72)【発明者】
【氏名】木元 貴士
(72)【発明者】
【氏名】川端 章裕
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-299337(JP,A)
【文献】特開2017-192478(JP,A)
【文献】特開2010-017556(JP,A)
【文献】特開2017-225645(JP,A)
【文献】特開2003-019133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
短軸方向に並んだ複数の長軸方向の列に配列され、超音波を送受信する複数の振動子と、前記各列の振動子への駆動信号の入力及び受信信号の出力のオンオフを切替えるスイッチング素子と、を有する超音波探触子と、
前記スイッチング素子の切替えを介して、前記超音波探触子の各列の振動子に駆動信号を出力する送信部と、
前記スイッチング素子の切替えを介して、前記超音波探触子から前記各列の振動子に対応する受信信号を取得する受信部と、
前記各列に対応する受信信号から前記各列に対応する超音波画像データを生成する画像生成部と、
前記複数の超音波画像データのそれぞれの認識対象物の部分画像を前記各列で別々に識別可能な表現にし、当該部分画像を含む複数の超音波画像データ
の各画素の座標位置を合わせて合成して当該部分画像を含む合成画像データを生成する画像処理部と、
前記合成画像データの部分画像の表現が、当該合成画像データの合成画像の前記短軸方向としての奥行き方向のどの位置に対応するかを示す第1の識別情報を生成する識別情報生成部と、
生成された前記第1の識別情報と前記合成画像データとを対応付けて表示部に表示する表示制御部と、を備える超音波診断装置。
【請求項2】
前記超音波探触子は、前記短軸方向の位置に対応する前記部分画像の表現を示す識別部を備える請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記識別部は、前記超音波探触子の表側及び裏側又はそのいずれか一方の位置に配置される請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記識別部は、前記超音波探触子の側面の位置に配置される請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記識別情報生成部は、前記各部分画像の表現が、前記超音波探触子の短軸方向の対応する位置を示す第2の識別情報を生成し、
前記表示制御部は、生成された前記第1の識別情報、前記第2の識別情報及び合成画像データを前記表示部に表示する請求項1から4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、前記短軸方向の中心に位置する少なくとも1つの列に対応する超音波画像データの認識対象物の部分画像の強調及び表現設定を行わない請求項1から5のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
超音波画像の左右反転又は上下反転の操作入力を受け付ける操作部を備え、
前記画像処理部は、前記左右反転又は上下反転の操作入力に応じて、前記合成画像データの合成画像の反転を行い、
前記識別情報生成部は、前記左右反転又は上下反転の操作入力に応じて、前記第1の識別情報の奥行き方向を逆にして表現を変更する請求項1から6のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
短軸方向に並んだ複数の長軸方向の列に配列され、超音波を送受信する複数の振動子と、前記各列の振動子への駆動信号の入力及び受信信号の出力のオンオフを切替えるスイッチング素子と、を有する超音波探触子と、
前記スイッチング素子の切替えを介して、前記超音波探触子の各列の振動子に駆動信号を出力する送信部と、
前記スイッチング素子の切替えを介して、前記超音波探触子から前記各列の振動子に対応する受信信号を取得する受信部と、
前記各列に対応する受信信号から前記各列に対応する超音波画像データを生成する画像生成部と、
前記複数の超音波画像データのそれぞれの認識対象物の部分画像を前記各列で別々に識別可能な表現にし、当該部分画像を含む複数の超音波画像データ
の各画素の座標位置を合わせて合成して当該部分画像を含む合成画像データを生成する画像処理部と、
前記生成された合成画像データを表示部に表示する表示制御部と、を備え、
前記超音波探触子は、当該超音波探触子の前記短軸方向の位置に配置され、当該配置された位置に対応する前記部分画像の表現を示す識別部を備える超音波診断装置。
【請求項9】
短軸方向に並んだ少なくとも1つの長軸方向の列に配列され、超音波を送受信する複数の振動子と、
前記短軸方向の表裏を表現する識別部と、を有する超音波探触子と、
前記超音波探触子の振動子に駆動信号を出力する送信部と、
前記超音波探触子の振動子から受信信号を取得する受信部と、
前記受信信号から超音波画像データを生成する画像生成部と、
前記複数の超音波画像データのそれぞれの認識対象物の部分画像を前記短軸方向の表裏の各列で別々に識別可能な表現にし、当該部分画像を含む複数の超音波画像データ
の各画素の座標位置を合わせて合成して当該部分画像を含む合成画像データを生成する画像処理部と、
前記合成画像データの
部分画像の表裏の表現に対応する前記超音波探触子の表裏の少なくとも1つの表現を示す第3の識別情報を生成する識別情報生成部と、
生成された前記第3の識別情報と前記超音波画像データとを対応付けて表示部に表示する表示制御部と、を備え
、
前記識別部の表裏の表現は、前記第3の識別情報の表裏の表現に対応する超音波診断装置。
【請求項10】
超音波画像の左右反転又は上下反転の操作入力を受け付ける操作部と、
前記左右反転又は上下反転の操作入力に応じて、前記超音波画像データの超音波画像の反転を行う画像処理部と、を備え、
前記識別情報生成部は、前記左右反転又は上下反転の操作入力に応じて、前記第3の識別情報の表裏の表現を逆にする請求項9に記載の超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を被検体内部に照射し、その反射された超音波を受信して所定の信号データ処理を行うことにより被検体の内部構造の超音波画像を生成する超音波診断装置が知られている。このような超音波診断装置は、医療目的の検査、治療や建築構造物内部の検査といった種々の用途に広く用いられている。
【0003】
超音波診断装置は、超音波画像を表示させるだけではなく、被検体内の特定の部位(ターゲット)のサンプルを採取したり、水分などを排出したり、あるいは、特定の部位に薬剤やマーカーなどを注入、留置したりする際に、これらに用いられる穿刺針とターゲットの位置とを視認しながら当該穿刺針をターゲット位置に向けて刺入する場合にも用いられる。このような超音波画像の利用により、被検体内のターゲットに対する処置を迅速、確実かつ容易に行うことができる。
【0004】
超音波診断装置では、一次元又は二次元マトリクス状に超音波の送受信を行う振動子が配列され、超音波の送受信を行う位置や方向を所定の配列方向に走査(特に、電子走査)させながら撮像を行うものが多く用いられている。穿刺針は、医師などの操作者の操作により、この走査方向(ラテラル方向)に沿って刺入されることで、被検体への刺入位置からターゲットへの到達までの間、継続的に撮像可能な範囲に位置する。穿刺針は、以前は、穿刺ガイドと呼ばれる超音波探触子に固定接続されたアタッチメントに取り付けられて刺入されていたが、現在では、操作者がフリーハンドで穿刺針を刺入することが多くなっている。
【0005】
このため、穿刺針は、被検体の内部状態、構造や穿刺針の先端形状などにより、必ずしも最初の刺入方向に正確に向かわなかったり、穿刺針が湾曲してしまったりする場合がある。その結果、穿刺針の先端が走査方向に垂直なエレベーション方向に撮像可能な範囲から外れて撮像がなされなくなる場合が生じていた。また、穿刺を用いず、単純に断面画像を得る場合であっても、操作者が不慣れな場合には、超音波探触子の姿勢を変更させてエレベーション方向の撮像範囲を微調整する際にも、適切な変更が行えず、所望の画像を得るのに手間を要する場合があった。
【0006】
このため、複数の振動子が2次元に配列された超音波探触子において、当該配列の長軸方向(走査方向)に垂直な短軸方向(エレベーション方向)の複数の振動子の個々に対し送受信信号を入出力する遅延回路及び偏向切替スイッチを有する偏向制御回路を備え、偏向制御回路により、送信信号のタイミングをずらし、受信信号に遅延をかけて加算することにより、超音波ビームを短軸方向に偏向して、ターゲットから短軸方向にずれた穿刺針を表示させる超音波診断装置が知られている(特許文献1参照)。
【0007】
また、複数の振動子が2次元に配列され全体が略同一曲率の音響レンズで覆われた超音波探触子において、複数の振動子が短軸方向に分割され、分割された一部の振動子群を送受信に用いることで、超音波ビームを短軸方向に偏向して、ターゲットから短軸方向にずれた穿刺針を表示させる超音波診断装置が知られている(特許文献2参照)。
【0008】
また、一方の側面にフロントマークを設けることにより、操作者の把持方向を判別できる超音波探触子が知られている(特許文献3参照)。また、一方の側面などに、すべり止め部を設けることにより、操作者が上下左右を識別できる超音波診断装置用プローブ(超音波探触子)が知られている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2000-139926号公報
【文献】特開2016-47191号公報
【文献】特開2006-326204号公報
【文献】特開平9-313491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1、2の技術において、超音波画像として1つの断層画像を表示する場合に、操作者が短軸方向にそれた穿刺針を視認できるが、それている方向が断層画像の手前側か奥側かを認識できなかった。また、特許文献3、4の技術では、操作者が超音波探触子の把持方向を認識できるが、表示されている断層画像と超音波探触子との関係を操作者が容易に認識できなかった。
【0011】
本発明の課題は、穿刺針などの認識対象物の奥行き方向の位置を容易に認識することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の超音波診断装置は、
短軸方向に並んだ複数の長軸方向の列に配列され、超音波を送受信する複数の振動子と、前記各列の振動子への駆動信号の入力及び受信信号の出力のオンオフを切替えるスイッチング素子と、を有する超音波探触子と、
前記スイッチング素子の切替えを介して、前記超音波探触子の各列の振動子に駆動信号を出力する送信部と、
前記スイッチング素子の切替えを介して、前記超音波探触子から前記各列の振動子に対応する受信信号を取得する受信部と、
前記各列に対応する受信信号から前記各列に対応する超音波画像データを生成する画像生成部と、
前記複数の超音波画像データのそれぞれの認識対象物の部分画像を前記各列で別々に識別可能な表現にし、当該部分画像を含む複数の超音波画像データの各画素の座標位置を合わせて合成して当該部分画像を含む合成画像データを生成する画像処理部と、
前記合成画像データの部分画像の表現が、当該合成画像データの合成画像の前記短軸方向としての奥行き方向のどの位置に対応するかを示す第1の識別情報を生成する識別情報生成部と、
生成された前記第1の識別情報と前記合成画像データとを対応付けて表示部に表示する表示制御部と、を備える。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記超音波探触子は、前記短軸方向の位置に対応する前記部分画像の表現を示す識別部を備える。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の超音波診断装置において、
前記識別部は、前記超音波探触子の表側及び裏側又はそのいずれか一方の位置に配置される。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の超音波診断装置において、
前記識別部は、前記超音波探触子の側面の位置に配置される。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の超音波診断装置において、
前記識別情報生成部は、前記各部分画像の表現が、前記超音波探触子の短軸方向の対応する位置を示す第2の識別情報を生成し、
前記表示制御部は、生成された前記第1の識別情報、前記第2の識別情報及び合成画像データを前記表示部に表示する。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の超音波診断装置において、
前記画像処理部は、前記短軸方向の中心に位置する少なくとも1つの列に対応する超音波画像データの認識対象物の部分画像の強調及び表現設定を行わない。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の超音波診断装置において、
超音波画像の左右反転又は上下反転の操作入力を受け付ける操作部を備え、
前記画像処理部は、前記左右反転又は上下反転の操作入力に応じて、前記合成画像データの合成画像の反転を行い、
前記識別情報生成部は、前記左右反転又は上下反転の操作入力に応じて、前記第1の識別情報の奥行き方向を逆にして表現を変更する。
【0019】
請求項8に記載の発明の超音波診断装置は、
短軸方向に並んだ複数の長軸方向の列に配列され、超音波を送受信する複数の振動子と、前記各列の振動子への駆動信号の入力及び受信信号の出力のオンオフを切替えるスイッチング素子と、を有する超音波探触子と、
前記スイッチング素子の切替えを介して、前記超音波探触子の各列の振動子に駆動信号を出力する送信部と、
前記スイッチング素子の切替えを介して、前記超音波探触子から前記各列の振動子に対応する受信信号を取得する受信部と、
前記各列に対応する受信信号から前記各列に対応する超音波画像データを生成する画像生成部と、
前記複数の超音波画像データのそれぞれの認識対象物の部分画像を前記各列で別々に識別可能な表現にし、当該部分画像を含む複数の超音波画像データの各画素の座標位置を合わせて合成して当該部分画像を含む合成画像データを生成する画像処理部と、
前記生成された合成画像データを表示部に表示する表示制御部と、を備え、
前記超音波探触子は、当該超音波探触子の前記短軸方向の位置に配置され、当該配置された位置に対応する前記部分画像の表現を示す識別部を備える。
【0020】
請求項9に記載の発明の超音波診断装置は、
短軸方向に並んだ少なくとも1つの長軸方向の列に配列され、超音波を送受信する複数の振動子と、
前記短軸方向の表裏を表現する識別部と、を有する超音波探触子と、
前記超音波探触子の振動子に駆動信号を出力する送信部と、
前記超音波探触子の振動子から受信信号を取得する受信部と、
前記受信信号から超音波画像データを生成する画像生成部と、
前記複数の超音波画像データのそれぞれの認識対象物の部分画像を前記短軸方向の表裏の各列で別々に識別可能な表現にし、当該部分画像を含む複数の超音波画像データの各画素の座標位置を合わせて合成して当該部分画像を含む合成画像データを生成する画像処理部と、
前記合成画像データの部分画像の表裏の表現に対応する前記超音波探触子の表裏の少なくとも1つの表現を示す第3の識別情報を生成する識別情報生成部と、
生成された前記第3の識別情報と前記超音波画像データとを対応付けて表示部に表示する表示制御部と、を備え、
前記識別部の表裏の表現は、前記第3の識別情報の表裏の表現に対応する。
【0021】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の超音波診断装置において、
超音波画像の左右反転又は上下反転の操作入力を受け付ける操作部と、
前記左右反転又は上下反転の操作入力に応じて、前記超音波画像データの超音波画像の反転を行う画像処理部と、を備え、
前記識別情報生成部は、前記左右反転又は上下反転の操作入力に応じて、前記第3の識別情報の表裏の表現を逆にする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、認識対象物の奥行き方向の位置を容易に認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態の超音波診断装置の全体図である。
【
図2】超音波診断装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図3】超音波探触子における振動子の配列の一例を示す図である。
【
図4】(a)は、超音波ガイド下穿刺における平行法を示す概略図である。(b)は、超音波ガイド下穿刺における交差法を示す概略図である。
【
図5】超音波探触子の短軸方向における概略構成を示す図である。
【
図6】(a)は、実施の形態の超音波探触子の表面の平面図である。(b)は、実施の形態の超音波探触子の裏面の平面図である。
【
図7】異なる外形例の超音波探触子の側面図である。
【
図8】穿刺針画像表示処理を示すフローチャートである。
【
図9】(a)は、実施の形態の手前側が赤色の識別マークを示す図である。(b)は、実施の形態の手前側が緑色の識別マークを示す図である。
【
図10】(a)は、手前側が赤色のプローブマークを示す図である。(b)は、手前側が緑色のプローブマークを示す図である。
【
図11】実施の形態の超音波診断画面を示す図である。
【
図12】第1の変形例の超音波診断画面を示す図である。
【
図13】(a)は、第2の変形例の超音波探触子の表面の平面図である。(b)は、第2の変形例の超音波探触子の裏面の平面図である。
【
図14】(a)は、第2の変形例の手前側が赤色の識別マークを示す図である。(b)は、第2の変形例の手前側が緑色の識別マークを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付図面を参照して、本発明に係る実施の形態及び第1、第2の変形例を順に詳細に説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態)
図1~
図9を参照して、本発明に係る実施の形態を説明する。まず、
図1及び
図2を参照して、本実施の形態の超音波診断装置Uの全体の装置構成を説明する。
図1は、本実施の形態の超音波診断装置Uの全体図である。
図2は、超音波診断装置Uの内部構成を示すブロック図である。
【0026】
図1に示すように、超音波診断装置Uは、超音波診断装置本体1と、ケーブル5を介して超音波診断装置本体1に接続された超音波探触子2と、認識対象物としての処置具である穿刺針3と、を備える。
【0027】
穿刺針3は、ここでは、中空状の長針形状を有し、医師などの操作者によりフリーハンドで定められた角度で被検体に対して刺入される。穿刺針3は、患者などの被検体の採取する部位(ターゲット)又は注入される薬剤などの種別や分量に応じて適宜な太さ、長さや先端形状を有したものに換装されることが可能となっている。なお、超音波診断装置Uにおいて、穿刺針3を穿刺方向に案内するアタッチメントとしての取付部や、超音波探触子2に固定的に設けられて穿刺針3を穿刺方向に案内する案内部が設けられる構成でもよい。
【0028】
超音波診断装置本体1には、操作部としての操作入力部18と、表示部としての出力表示部19と、が設けられている。また、
図2に示すように、超音波診断装置本体1は、これらに加えて、識別情報生成部、表示制御部としての制御部11、送信部としての送信駆動部12、受信部としての受信処理部13、送受信切替部14、画像生成部15、画像処理部16などを備える。制御部11は、操作入力部18のキーボードやマウスといった入力デバイスに対する外部からの入力操作に基づき、超音波探触子2に駆動信号を出力して超音波を出力させ、また、超音波探触子2から超音波受信に係る受信信号を取得して各種処理を行い、必要に応じて出力表示部19の表示画面などに結果などを表示させる。
【0029】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、HDD(Hard Disk Drive)及びRAM(Random Access Memory)などを備えている。CPUは、HDDに記憶されている各種プログラムを読み出してRAMにロードし、当該プログラムに従って超音波診断装置Uの各部の動作を統括制御する。HDDは、超音波診断装置Uを動作させる制御プログラム及び各種処理プログラムや、各種設定データなどを記憶する。HDDには、特に、後述する穿刺針画像表示処理を行うための穿刺針画像表示プログラムが記憶されている。これらのプログラムや設定データは、HDDの他、例えば、SSD(Solid State Drive)を含むフラッシュメモリーなどの不揮発性メモリーを用いた補助記憶装置に読み書き更新可能に記憶させることとしてもよい。RAMは、SRAMやDRAMなどの揮発性メモリーであり、CPUに作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。
【0030】
送信駆動部12は、制御部11から入力される制御信号に従って超音波探触子2に供給する駆動信号を出力し、超音波探触子2に超音波を発信させる。送信駆動部12は、例えば、クロック発生回路、パルス幅設定部、パルス発生回路及び遅延回路を備える。クロック発生回路は、パルス信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。パルス幅設定部は、パルス発生回路から出力させる送信パルスの波形(形状)、電圧振幅及びパルス幅を設定する。パルス発生回路は、パルス幅設定部の設定に基づいて駆動信号としての送信パルスを生成し、超音波探触子2の個々の振動子210ごとに異なる配線経路に出力する。遅延回路は、クロック発生回路から出力されるクロック信号を計数し、設定された遅延時間が経過すると、パルス発生回路に送信パルスを発生させて各配線経路に出力させる。
【0031】
受信処理部13は、制御部11の制御に従って、超音波探触子2から入力された受信信号を取得する回路である。受信処理部13は、例えば、増幅器、A/D(Analog to Digital)変換回路、整相加算回路を備えている。増幅器は、超音波探触子2の各振動子210により受信された超音波に応じた受信信号を予め設定された所定の増幅率でそれぞれ増幅する回路である。A/D変換回路は、増幅された受信信号を所定のサンプリング周波数でデジタルデータに変換する回路である。整相加算回路は、A/D変換された受信信号に対して、振動子210毎に対応した配線経路ごとに遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データを生成する回路である。
【0032】
送受信切替部14は、制御部11の制御に基づいて、振動子210から超音波を出射(送信)する場合に駆動信号を送信駆動部12から振動子210に送信させる一方、振動子210が出射した超音波に係る信号を取得する場合に受信信号を受信処理部13に出力させるための切り替え動作を行う。
【0033】
画像生成部15は、超音波の受信データに基づく診断用画像を生成する。画像生成部15は、受信処理部13から入力される音線データを検波(包絡線検波)して信号を取得し、また、必要に応じて対数増幅、フィルタリング(例えば、低域透過、スムージングなど)や強調処理などを行う。画像生成部15は、診断用画像の一つとして、当該信号強度に応じた輝度信号で信号の送信方向(被検体の深さ方向)と超音波探触子2により送信される超音波の走査方向(ラテラル方向、振動子210の2次元配列の長軸方向)を含む断面内の二次元構造を表す断層画像としてのB(Brightness)モード表示に係る各フレーム画像データを生成する。このとき、画像生成部15は、表示に係るダイナミックレンジの調整やガンマ補正などを行うことができる。この画像生成部15は、これらの画像生成に用いられる専用のCPUやRAMを備える構成とすることができる。または、画像生成部15では、画像生成に係る専用のハードウェア構成が基板(ASIC(Application-Specific Integrated Circuit)など)上に形成されて、又はFPGA(Field Programmable Gate Array)により形成されて備えられていてもよい。あるいは、画像生成部15は、制御部11のCPU及びRAMにより画像生成に係る処理が行われる構成であってもよい。
【0034】
画像処理部16は、記憶部161、穿刺針同定部162などを備える。記憶部161は、画像生成部15で処理されてリアルタイム表示やこれに準じた表示に用いられる診断用画像データ(フレーム画像データ)をフレーム単位で直近の所定フレーム数分記憶する。記憶部161は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリーである。あるいは、この記憶部161は、高速書き換えが可能な各種不揮発性メモリーであってもよい。記憶部161に記憶された診断用画像データは、制御部11の制御に従って読み出され、出力表示部19に送信されたり、図示略の通信部を介して超音波診断装置Uの外部に出力されたりする。このとき、出力表示部19の表示方式がテレビジョン方式の場合には、記憶部161と出力表示部19との間にDSC(Digital Scan Converter)が設けられて、走査フォーマットが変換された後に出力されればよい。
【0035】
穿刺針同定部162は、穿刺針3の位置を同定するための画像データを生成し、当該画像データに適宜な処理を行って穿刺針3の先端部分を含む位置の針部分画像を抽出して同定し、抽出した穿刺針3の針部分画像に色付けを行う。穿刺針同定部162は、画像処理部16のCPU及びRAMを共用で用いてもよいし、各々専用のCPU及びRAMを備えてもよい。あるいは、穿刺針同定部162は、制御部11のCPU及びRAMにより各種処理が行われてもよい。穿刺針同定部162は、同定された穿刺針3の先端位置情報を履歴として記憶保持することができる。
【0036】
穿刺針3の位置の同定方法としては、例えば、特許第6123458号公報に記載のように、複数フレームの超音波画像データからフレーム間の差分や相関をとることで動きの評価を示す動き評価情報を生成し、穿刺針の先端の移動速度を演算し、穿刺針の先端の移動速度と動き評価情報とから穿刺針の先端の位置を検出し、先端を含む穿刺針の位置を同定する方法がある。また、穿刺針3の先端の移動履歴に基づいてその後の先端の位置を推定し、当該推定位置を基準として先端を検出し、先端を含む穿刺針の位置を同定してもよい。また、輪郭検知を行って最初に得られた候補の中から操作者が操作入力部18への入力操作により選択し、当該選択された輪郭と類似する輪郭を上述の推定位置を基準として穿刺針の位置を検出することとしてもよい。
【0037】
操作入力部18は、押しボタンスイッチ、キーボード、マウス若しくはトラックボール又はこれらの組み合わせを備えており、ユーザーの入力操作を操作信号に変換し、超音波診断装置本体1に入力する。
【0038】
出力表示部19は、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescent)ディスプレイ、無機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイといった種々の表示方式のうち、何れかを用いた表示画面とその駆動部を備える。出力表示部19は、CPU15から出力された制御信号や、画像処理部16で生成された画像データに従って表示画面(各表示画素)の駆動信号を生成し、表示画面上に超音波診断に係るメニュー、ステータスや、受信された超音波に基づく計測データの表示を行う。また、出力表示部19は、LED(Light Emitting Diode)ランプなどを別途備えて電源の投入有無などの表示を行う構成であってもよい。
【0039】
これらの操作入力部18や出力表示部19は、超音波診断装置本体1の筐体に一体となって設けられたものであってもよいし、RGBケーブル、USB(Universal Serial Bus)ケーブルやHDMI(High-Definition Multimedia Interface)ケーブル(登録商標:HDMI)などを介して外部に取り付けられるものであってもよい。また、超音波診断装置本体1に操作入力端子や表示出力端子が設けられていれば、これらの端子に操作用及び表示用の周辺機器を接続して利用するものであってもよい。
【0040】
超音波探触子2は、超音波(ここでは、1~30MHz程度)を発信して生体などの被検体に対して出射するとともに、出射した超音波のうち被検体で反射された反射波(エコー)を受信して電気信号に変換する音響センサーとして機能する。
【0041】
超音波探触子2は、超音波を送受信する複数の振動子210と、振動子210に各々対応する複数のスイッチング素子230と、切替設定部24と、を備える。なお、ここでは、超音波探触子2を外部(体表面)から被検体内部に超音波を出射してその反射波を受信するものとしているが、超音波探触子2としては、消化管や血管などの内部や、体腔内などに挿入して用いるサイズ、形状のものも含まれる。操作者は、この超音波探触子2における超音波の送受信面、即ち、振動子210から超音波を出射する方向の面を被検体に所定の圧力で接触させて超音波診断装置Uを動作させ、超音波診断を行う。
【0042】
なお、振動子210の振動子の個数は、任意に設定することができる。また、本実施の形態では、超音波探触子2について、リニア走査方式の電子スキャンプローブを採用するものとするが、電子走査方式あるいは機械走査方式の何れを採用してもよく、また、リニア走査方式、セクター走査方式あるいはコンベックス走査方式の何れの方式を採用することもできる。
【0043】
振動子210は、圧電体とその変形(伸縮)により電荷が現れる両端に設けられた電極とを有する圧電素子を備えた複数の振動子である。
【0044】
複数の振動子210のそれぞれに対して駆動信号としての電圧パルスが供給されることで、当該電圧パルスが供給された振動子の圧電体は、当該圧電体に生じる電界に応じて変形(伸縮)し、超音波が発信される。発信された超音波は、電圧パルスが供給された所定数の振動子列に含まれる振動子210の位置、方向、発信された超音波の集束方向及びタイミングのずれ(遅延)の大きさに応じた位置、方向に出射される。また、振動子210に所定の周波数帯の超音波(被検体での反射波)が入射すると、その音圧により圧電体の厚さが変動(振動)することで当該変動量に応じた電荷が生じ、当該電荷量に応じた電気信号に変換し、受信信号として出力される。
【0045】
切替設定部24は、超音波の送受信を振動子210の2次元配列の短軸方向(エレベーション方向)にわたり行うための振動子210の送受信シーケンスの設定を記憶し、当該設定に応じた各振動子210に対応するスイッチング素子230のオンオフを切替動作させる。振動子210の送受信シーケンスについては、後述する。
【0046】
ケーブル5は、その両端にそれぞれ超音波診断装置本体1とのコネクター(図示略)及び超音波探触子2とのコネクター(図示略)を有し、超音波探触子2は、このケーブル5により超音波診断装置本体1に対して着脱可能に構成されている。ケーブル5は、超音波探触子2と一体に形成されていてもよい。
【0047】
ここで、
図3~
図7を参照して、超音波探触子2のより詳細な構成及び動作を説明する。
図3は、超音波探触子2における振動子210の配列の一例を示す図である。
図4(a)は、超音波ガイド下穿刺における平行法を示す概略図である。
図4(b)は、超音波ガイド下穿刺における交差法を示す概略図である。
図5は、超音波探触子2の短軸方向における概略構成を示す図である。
図6(a)は、超音波探触子2の表面の平面図である。
図6(b)は、超音波探触子2の裏面の平面図である。
図7は、異なる外形例の超音波探触子2Dの側面図である。
【0048】
図3に示すように、超音波診断装置Uでは、振動子210は、所定のラテラル方向(走査方向)と、ラテラル方向に直交するエレベーション方向と、で規定される二次元面(平面でなくてもよい)内でマトリクス状に配列された複数の振動子ある。通常、ラテラル方向への振動子210の配列数は、エレベーション方向への振動子210の配列数よりも多く、ラテラル方向が長軸方向、エレベーション方向が短軸方向となる。振動子210は、短軸方向に3列(列a,b,c)の振動子群を有し、各列で長軸方向に複数段(段1,2…)の振動子が配列されている。ここで、列aの振動子群を便宜的に振動子VAと表現し、同様に、列b,cの振動子群を便宜的に振動子VB,VCと表現する。また、段x、列yの1つの振動子を、振動子Vxyと表現する。
【0049】
通常のBモード(断層)画像を生成する場合には、列bの振動子VBを用いて長軸方向に駆動する振動子を順次ずらしながら超音波の送受信を行う。
【0050】
ここで、
図4(a)、
図4(b)を参照して、超音波ガイド下における穿刺針3の穿刺法として、平行法と、交差法と、を説明する。
【0051】
図4(a)に示すように、平行法は、被検体SUの穿刺による組織取得などのターゲットTに向かって、長軸方向に平行に穿刺針3を刺入する方法である。
図4(b)に示すように、交差法は、被検体SUのターゲットTに向かって、長軸方向に直交な方向に穿刺針3を刺入する方法である。平行法及び交差法は、用途により使い分けられる。穿刺を行なう部位や、穿刺の目的によりどちらの手法を用いるかが決まることが多いが、術者の経験値により選択される場合もある。
【0052】
平行法においては、穿刺針を刺入する場合、超音波探触子の長軸端から穿刺針を被検体SUに刺し、振動子VBに対応する1列の長軸の穿刺針で形成される断層面内を深いところに向かって刺入していることになる。この際に断層面内から穿刺針3が短軸方向に逸れてしまった場合、従来の超音波診断装置では、穿刺針3が描写されなくなってしまう。
【0053】
交差法においては、超音波探触子の短軸側から穿刺針3を被検体SUに斜めに刺入して、超音波探触子直下にあるターゲットTに刺入する。従来の交差法において、一般の超音波探触子を用いると、体表に刺した穿刺針3は、かなりの深さになっても超音波画像には表示されず、ターゲットTの直近において、初めて超音波画像に穿刺針の像が現れる。このため、刺入した穿刺針3が正しい方向に向かって進んでいるのかを知ることが難しい。
【0054】
本実施の形態では、平行法及び交差法のいずれにおいても、広い領域で穿刺針3を捕捉するため、同一時刻で、振動子VBによる超音波画像のフレームに加えて、振動子VAによる超音波画像のフレームと、振動子VCによる超音波画像のフレームと、を得るものとする。
【0055】
図5に示すように、超音波探触子2は、長軸端から見た短軸方向において、音響レンズ220と、振動子VA,VB,VCと、振動子VA,VB,VCにそれぞれ対応するスイッチング素子230のスイッチSWA,SWB,SWCと、を有する。なお、音響レンズ220と振動子VA,VB,VCとの間に配置される音響整合層や、振動子VA,VB,VCの超音波出射方向と逆側に配置されるバッキング材などは、図示を省略しているものとする。
【0056】
音響レンズ220は、振動子VA,VB,VCから出射された超音波ビーム(送信超音波)を集束させる非球面形状のレンズである。音響レンズ220は、振動子VAから出射される超音波ビームBaが通過するレンズ部221Aと、振動子VBから出射される超音波ビームBbが通過するレンズ部221Bと、振動子VCから出射される超音波ビームBcが通過するレンズ部221Cと、を有する。
【0057】
スイッチSWAは、切替設定部24、ケーブル5を介して、送受信切替部14からの振動子VAの各振動子への駆動信号の入力、受信信号の出力を独立にオンオフ可能なスイッチである。スイッチSWBは、切替設定部24、ケーブル5を介して、送受信切替部14からの振動子VBの各振動子への駆動信号の入力、受信信号の出力を独立にオンオフ可能なスイッチである。スイッチSWCは、切替設定部24、ケーブル5を介して、送受信切替部14からの振動子VCの各振動子への駆動信号の入力、受信信号の出力を独立にオンオフ可能なスイッチである。
【0058】
また、本実施の形態において、振動子VA,VB,VCは、超音波ビームBa,Bb,Bcがある程度の深さまでおおよそ重ならず、かつ隙間があかないように、配置されている。
【0059】
振動子VBの短軸幅は、通常の超音波走査に耐えうるだけの幅を持つ。振動子VBを覆う音響レンズ220のレンズ部221Bは、通常の超音波走査に用いることが可能なビーム形成能力を有しているものとする。振動子VA,VCの短軸幅は、振動子VBより狭くともよいが、刺入された穿刺針3の反射波(エコー)が十分得られるだけの幅を持つものとする。なお、振動子VA,VCを覆う音響レンズ220のレンズ部221A,221Cは、レンズ部221Bに比べて曲率半径が大きくなるような非球面形状が望ましいが、斜め平坦の形状を用いることも可能である。また、斜めでなく平坦という形状もまったく不可ではないが、後に述べる振動子VBによる超音波ビームBbとの融合を考えると斜めであるほうが望ましい。レンズ部221Bのレンズ形状も、通常の超音波走査において不都合(たとえばサイドローブが大きくなるなど)が起こらなければ、レンズ部221A,221Cと滑らかに接続できるという利点において、非球面形状であってもよい。
【0060】
穿刺針3の位置を的確に捕捉するためには、振動子VA,VB,VCで送受信される超音波ビームBa,Bb,Bcの占める位置は、排他的であることが望ましい。排他的であることによって穿刺針3からの反射波(エコー)は、振動子VA,VB,VCのいずれか1つからの反射波にしか含まれないため、判別が容易になるためである。
【0061】
しかしながら、超音波ビームの指向性は、なだらかな裾野を持つ形状をしているために、各超音波ビームBa,Bb,Bcは裾野において重なりあうため、
図5に示すように、完全に排他的にはならない。短軸方向の方位角に対する、ある深さにおける超音波ビームBa,Bb,Bcの指向性のグラフにおいて、どの超音波ビームに穿刺針3の反射波が含まれるかの判別を容易にするためには、好ましくは隣接する超音波ビームが同じレベルになる点が、送信又は受信の超音波ビームのピークから-6[dB]~-12[dB]であることが経験上明らかになっている。また、振動子VA,VCの指向性のピークの高さを、振動子VBの指向性の高さに揃える補正を行う構成としてもよい。振動子間の感度に差異が大きい場合はこのようにして、針位置の捕捉を正確に行うことができるようになる。また、深さによっても振動子間の感度の差異が発生するので、差異が大きい場合は補正をおこなってもよい。
【0062】
ここで、本実施の形態における音響レンズ220の適切な形状を説明する。まず、振動子VBの超音波ビームは、振動子VB付近から焦点に向かって超音波ビームが細くなる。つまり、振動子VA及びVCによる超音波ビームは、振動子VBの細くなる超音波ビームの左右を埋める(指向性を持つ)必要がある。振動子VAの超音波ビームと振動子VBの超音波ビームとの指向性に、又は振動子VCの超音波ビームと振動子VBの超音波ビームとの指向性に、隙間(厳密には双方の超音波ビームの感度が低いゾーン)があると、その部分に穿刺針3が位置したときに、捕捉が困難になる。したがって、振動子VAによる超音波ビーム、振動子VCによる超音波ビームが内側に偏向するような音響レンズのレンズ形状であることが望ましい。
【0063】
しかし、振動子VA,VCの超音波ビームが振動子VA,VCに近い、浅い位置で集束すると、交差法の穿刺において、刺入した穿刺針3がなかなか超音波ビームの中に入ってこない、つまり捕捉できない。このことから考えると、振動子VA,VCの超音波ビームは、偏向するが、集束位置が深い位置にある、又は集束しないことが望ましい。
【0064】
振動子VAによる超音波ビーム、振動子VCによる超音波ビームが内側に偏向するようなレンズ形状の音響レンズを用いた場合には、深さが深くなるにつれ、振動子VA,VCによる超音波ビームは、振動子VBによる中央の超音波ビームと重なってしまい、穿刺針3位置の判別ができなくなる。したがって、偏向角度はあまり大きすぎないようにし、臨床上問題がない深さまで、針位置の判別ができるよう、各振動子VA,VB,VCによる超音波ビームが分離することが望ましい。
【0065】
どの深さまで分離されるのかは、診断部位にもよるが、例えば超音波探触子2として高周波リニアプローブを用いる場合においては、25~30[mm]までは分離可能であることが望ましい。上記のような条件に合う音響レンズの形状としては、
図5に示すような非球面形状の音響レンズ220のレンズ形状が挙げられる。音響レンズ220においては、振動子VBに対応するレンズ部221Bで曲率がきつく(曲率半径が小さく)、振動子VA及びVCに対応するレンズ部221A,221Cでは、曲率が緩い(曲率半径が大きい)形状となっている。
【0066】
平行法において、
図5に示すように、音響レンズ220を用いるが、スイッチSWBをオンにし、スイッチSWA,SWCをオフにした場合には、振動子VBを用いて超音波の送受信を行うが、この場合に動作については、上述したように、従来の超音波診断装置の超音波の送受信と変わらない。
【0067】
仮にスイッチSWAをオンにし、スイッチSWB,SWCをオフにした場合には、振動子VAにより超音波の送受信が行われるが、振動子VAに対応するレンズ部221Aが略斜めの非球面形状であるために、超音波の送受信ビームは、振動子中心側に偏向し、かつ送受信ビームと中心線の交点は、振動子VBに対応するレンズ部221Bの集束点に比較して遠い位置になる。レンズ部221A,221Cに曲率を設ける場合は、この交点付近で集束するような曲率にすることが望ましい。音響レンズ220、振動子VA,VB,VCにより形成した各超音波の送受信ビームは、所望の深さまで、それぞれが重複することなく、また、隙間(センシング上の死角)があくこともない。本実施の形態では、平行法において、振動子VBを用いた断層画像のほか、振動子VA,VCのそれぞれを用いた断層画像を形成するため、振動子VBによる断層画像面から逸れた穿刺針を捕捉することが可能である。
【0068】
また、交差法について、
図4(b)に示すように、本実施の形態の超音波探触子2においては、被検体SU内のターゲットTは、振動子VBによる断層画像内にある。一方で刺入されてきた穿刺針3は、振動子VA(又は振動子VC)による断層画像において、通常の超音波探触子を用いた場合に比較してかなり早くに捕捉可能である。一例としては、刺入角45度で深さ1cmのターゲットに対し刺入した場合、振動子VBの超音波ビーム幅が1.8mmだとすると、通常の超音波探触子では、ターゲット手前約1mmにおいて初めて穿刺針が映ったのに対し、本実施形態の超音波探触子2では、約4mm手前から確認が可能であった。このように、本実施の形態の交差法を行った場合、ターゲットTより、かなり手前から穿刺針3の位置の確認ができ、穿刺作業を容易にすることができる。
【0069】
ここで、
図3を参照して、本実施の形態の振動子210の送受信シーケンスを説明する。上述したように、音響レンズ220、振動子VA,VB,VC、スイッチSWA,SWB,SWCを用いる構成において、振動子VBで形成された超音波ビームBbから逸脱した穿刺針3の反射波(エコー)を得るために、振動子VA,VBを用いて超音波の送受信を行うが、この場合の走査(超音波送受信)は、例えば、振動子V1a,V1b,V1c,V2a,V2b,V2c,V3a,V3b,V3c…の順に行うことができる。このような走査シーケンスが、切替設定部24に記憶されている。
【0070】
しかし、この場合、送受信回数が3倍となるため、Bモード断層画像表示のフレームレートは3分の1に低下してしまう。そこで穿刺針3の捕捉のための振動子VA,VCの走査を間引いて、例えば、振動子V1a,V1b,V1c,V2b,V3a,V3b,V3c,V4b,V5a,V5b,V5c…の順に行い、フレームレートの低下をおさえることも可能である。なお、上記の説明は、簡略化のため長軸方向に1つの振動子を走査に用いる場合を説明したが、実際には長軸方向の送受信ビーム形成のために複数の振動子を用いる。また、この他に、すでに公知である長軸方向の並列受信などを用いてフレームレートを上げるなどの方法を適用することも可能である。
【0071】
ついで、
図6、
図7を参照して、超音波探触子2の外形を説明する。
図6(a)、
図6(b)に示すように、超音波探触子2の外形のケース部25には、表裏に識別部26A,26Cが形成されている。ケース部25は、振動子210、音響レンズ220、スイッチング素子230、切替設定部24などの部品を格納する。特に、超音波探触子2の表裏の短軸方向に、
図3の振動子VA,VB,VCが配列されて格納されているものとする。ケース部25の表側に形成された識別部26Aは、
図3の表側の振動子VAに対応する色として、赤色の塗料で塗られた部分である。ケース部25の裏側に形成された識別部26Cは、
図3の裏側の振動子VCに対応する色として、緑色の塗料で塗られた部分である。なお、識別部26A,26Cは、赤色、緑色のシールや、ケース部25に着脱可能な赤色、緑色の部分を有するカバー(アダプター)などで構成してもよい。さらに、識別部26A,26Cは、操作者が手の触感でも互いに識別可能な構成としてもよく、例えば、識別部26Aを凸部として形成し、識別部26Cを凹部として形成する構成としてもよい。
【0072】
図6(a)、
図6(b)、
図7の図上において、赤色を「網掛け模様」で表現し、緑色を「ハッチング」で表現した。これらの色の表現は、
図10、
図12、
図14でも同様とする。また、後述する振動子VBに対応する青色を、「格子模様」で表現するものとする。
【0073】
操作者は、穿刺法としての平行法及び交差法ともに、識別部26A,26Cを視認できる。ただし、平行法では、操作者が識別部26A,26Cを視認しづらいおそれがある。このため、超音波探触子2を
図7に示す超音波探触子2Dに代えてもよい。
【0074】
超音波探触子2Dは、超音波探触子2と同様であるが、ケース部25は、識別部26A,26Cに代えて、識別部26A1,26C1を有する。超音波探触子2Dは、ケース部25に、凸部27、凹部28を有するが、これらは、超音波探触子2でも同様に有するものである。
【0075】
識別部26A1は、ケース部25の表面及び側面に形成され、
図3の表側の振動子VAに対応する色として、赤色の塗料で塗られた部分である。識別部26C1は、ケース部25の裏面及び側面に形成され、
図3の表側の振動子VCに対応する色として、緑色の塗料で塗られた部分である。識別部26A1,26C1は、赤色、緑色のシールなどとしてもよい。さらに、識別部26A1,26C1は、操作者が手の触感でも互いに識別可能な構成としてもよく、例えば、識別部26A1を凸部として形成し、識別部26C1を凹部として形成する構成としてもよい。
【0076】
凸部27は、超音波探触子のアダプターを接続するための突起部である。凹部28は、操作者が手の触感によりスキャン方向を認識するための凹部であり、凸部などであってもよい。
【0077】
識別部26A1,26C1は、操作者が表側、裏側からのみでなく、側面からも視認が可能であるため、交差法のみならず、平行法でも、操作者が識別部26A,26Cを視認できる。
【0078】
次に、
図8~
図11を参照して、超音波診断装置Uの動作を説明する。
図8は、穿刺針画像表示処理を示すフローチャートである。
図9(a)は、本実施の形態の手前側が赤色の識別マーク320を示す図である。
図9(b)は、本実施の形態の手前側が緑色の識別マーク320Vを示す図である。
図10(a)は、手前が赤色のプローブマーク330を示す図である。
図10(b)は、手前が緑色のプローブマーク330Vを示す図である。
図11は、本実施の形態の超音波診断画面300を示す図である。
【0079】
図8を参照して、超音波診断装置Uで実行される穿刺針画像表示処理を説明する。穿刺針画像表示処理は、技師、医師などの操作者が被検体SUの組織取得などを行う対象としてのターゲットTに穿刺針3を刺入する穿刺作業を行う場合に、被検体内の穿刺針3のBモード断層画像をライブ表示して穿刺作業を補助する処理である。
【0080】
予め、例えば、超音波診断装置Uが設けられた診察室で医師などの操作者が待機し、被検体SUとしての患者が当該診察室に入室してベッドに横になり、穿刺針3を用いた穿刺作業の準備ができているものとする。そして、超音波診断装置Uにおいて、操作入力部18を介して、操作者から穿刺針画像表示処理におけるフレームレートなどの各種設定情報入力及び穿刺針画像表示処理の実行指示を受け付けたことをトリガとして、制御部11は、ROMに記憶された穿刺針画像表示プログラムに従い、穿刺針画像表示処理を実行する。
【0081】
まず、制御部11は、初期の識別マークと、プローブマークと、を生成し、表示用に設定する(ステップS10)。識別マークは、並べて表示する穿刺針の刺入に用いる超音波画像の手前及び奥が、針部分画像に着色されたどの色であるかを識別するための表示用のマークである。この針部分画像の表示色(表現)は、振動子VA,VB,VCに対応する表現として、赤色、青色、緑色に設定されるものとする。振動子VA,VCに対応する表現としての赤色、緑色は、超音波探触子2の識別部26A,26Cにも対応する。ステップS10では、例えば、
図9(a)に示す識別マーク320が作成される。
【0082】
識別マーク320は、超音波画像の手前側を示す手前側識別部321Fと、超音波画像の中心(中間)を示す中心識別部321Mと、超音波画像の奥側を示す奥側識別部321Rと、を有する。識別マーク320において、手前側識別部321Fが赤色に設定され、中心識別部321Mが青色に設定され、奥側識別部321Rが緑色に設定されている。
【0083】
プローブマークは、超音波探触子2の種類を示すための表示用のマークであり、並べて表示する超音波画像の手前側が超音波探触子2の表裏のいずれ側かをも示すものとする。ステップS10では、例えば、
図10(a)に示すプローブマーク330が作成される。
【0084】
プローブマーク330は、超音波探触子2の種類を示す情報に加え、識別部331を有する。
図10(a)に示すプローブマーク330において、識別部331が、超音波探触子2の識別部26Aに対応する赤色に設定されている。
【0085】
そして、制御部11は、送信駆動部12に駆動信号を生成開始させ、送受信切替部14を介して、切替設定部24に記憶された送受信シーケンスに応じたスイッチング素子230のスイッチングにより、当該駆動信号を振動子VA,VB,VCの各振動子に入力して送信超音波を出射し、反射超音波(エコー)を受信させ、送受信切替部14を介して、受信処理部13に受信信号を取得させる(ステップS11)。ステップS11で得られる受信信号は、各振動子VA,VB,VCに対応する同一時刻のフレームごとの受信信号が送受信シーケンスに応じた順に取得されていく。
【0086】
そして、制御部11は、画像生成部15により、ステップS11で受信処理部13から入力された振動子VAに対応する受信信号から1フレームのBモード画像データを生成させる(ステップS12)。そして、制御部11は、穿刺針同定部162により、ステップS12で生成された振動子VAに対応するBモード画像データから穿刺針3の針部分画像を強調して抽出する(針部分画像以外の部分を捨てる)(ステップS13)。そして、制御部11は、穿刺針同定部162により、ステップS13で生成された画像データの針部分画像に振動子VAを示す赤色を着色する(ステップS14)。
【0087】
また、制御部11は、画像生成部15により、ステップS11で受信処理部13から入力された振動子VCに対応する受信信号から1フレームのBモード画像データを生成させる(ステップS15)。ステップS15で生成されるBモード画像データは、ステップS12で生成されたBモード画像データと同時刻のフレームとなる。そして、制御部11は、穿刺針同定部162により、ステップS15で生成された振動子VCに対応するBモード画像データから穿刺針3の針部分画像を強調して抽出する(ステップS16)。そして、制御部11は、穿刺針同定部162により、ステップS16で生成された画像データの針部分画像に振動子VCを示す緑色を着色する(ステップS17)。
【0088】
また、制御部11は、画像生成部15により、ステップS11で受信処理部13から入力された振動子VBに対応する受信信号から1フレームのBモード画像データを生成させる(ステップS18)。ステップS18で生成されるBモード画像データは、ステップS12,S15で生成されたBモード画像データと同時刻のフレームとなる。そして、制御部11は、穿刺針同定部162により、ステップS18で生成された振動子VBに対応するBモード画像データから穿刺針3の針部分画像を強調して抽出する(ステップS19)。そして、制御部11は、穿刺針同定部162により、ステップS19で生成された画像データの針部分画像に振動子VBを示す青色を着色する(ステップS20)。
【0089】
ステップS14,S17,S20では、振動子VA,VB,VCのどれで得られた針部分画像かを、表現の種類としての色を異にしている。ステップS14,S17,S20での色の組合せは、一例であり、これに限定されるものではなく、例えば、緑-青-紫というようなグラデーションを用いてもよい。さらに、各針部分画像の別々に識別可能な表現の種類を他の種類に変えることとしてもよい。例えば、各針部分画像の別々に識別可能な表現として、彩度、輝度を異にする構成でもよく、点滅の有無や間隔などを異にする構成でもよく、複数種類の表現を組合せる構成でもよい。また、各針部分画像の表現に対応するように、識別部26A,26C(識別部26A1,26C1)、識別マーク320、プローブマーク330が設定される。
【0090】
ステップS11,S12,S15,S18では、最初に入力された各種設定情報に対応した処理が実行される。また、穿刺針画像表示処理の実行中に、操作入力部18を介して操作者から適宜各種設定情報が変更入力される構成としてもよい。また、操作入力部18を介して操作者から、ステップS14,S17,S20における針部分画像の表現(色)が各種設定情報として入力される構成としてもよい。
【0091】
また、ステップS18の実行後、制御部11は、画像生成部15により、ステップS11で生成された1フレームの通常のBモード画像データを取得する(ステップS21)。そして、制御部11は、画像処理部16により、ステップS14で生成された赤の針部分画像と、ステップS17で生成された緑の針部分画像と、ステップS20で生成された青の針部分画像と、ステップS21で取得された1フレームのBモード画像データと、を合成させ、1フレームの合成画像データを生成させる(ステップS22)。
【0092】
そして、制御部11は、操作入力部18を介して操作者から超音波画像の左右反転又は上下反転の操作入力がされたか否かを判別する(ステップS23)。超音波画像が左右反転又は上下反転されると、当該超音波画像の手前側と奥側とが入れ替わる。左右反転又は上下反転の操作入力がされた場合(ステップS23;YES)、制御部11は、表示用に設定中の識別マーク及びプローブマークを、反転後の識別マーク及びプローブマークに変更して表示用に設定する(ステップS24)。ステップS24において、直前に識別マーク320、プローブマーク330が表示用に設定されている場合に、
図9(b)に示す識別マーク320V、
図10(b)に示すプローブマーク330Vに変更される。
【0093】
識別マーク320Vは、緑色に設定された手前側識別部321Fと、青色に設定された中心識別部321Mと、赤色に設定された奥側識別部321Rと、を有する。プローブマーク330Vは、超音波探触子2の識別部26Aに対応する緑色に設定された識別部331を有する。ステップS24において、直前に識別マーク320V、プローブマーク330Vが表示用に設定されている場合に、識別マーク320、プローブマーク330に変更される。
【0094】
なお、識別マーク320,320Vは、
図9(a)、
図9(b)に示される構成に限定されるものではない。例えば、識別マーク320,320Vが、手前側識別部321Fのみを有する構成としてもよい。また、プローブマーク330,330Vは、
図10(a)、
図10(b)に示される構成に限定されるものではない。
【0095】
そして、制御部11は、画像処理部16により、反転操作の有無及び内容に応じてステップS22で生成された超音波画像の合成画像データを適宜左右又は上下に反転し(又は反転することなく)、当該合成画像データの超音波画像と、表示用に設定中の識別マーク及びプローブマークと、を含む超音波診断画面データを出力表示部19に表示させる(ステップS25)。左右反転又は上下反転の操作入力がされていない場合(ステップS23;NO)、ステップS25に移行される。
【0096】
ステップS25では、例えば、
図11に示す超音波診断画面300が表示される。超音波診断画面300は、超音波画像310と、識別マーク320と、プローブマーク330と、を有する。超音波画像310は、交差法による針部分画像311A,311B,311Cを有する。針部分画像311Aが赤色に着色され、針部分画像311Bが青色に着色され、針部分画像311Cが緑色に着色されている。図上、超音波画像310において、針部分画像を見やすくするため、針部分画像311A,311B,311C以外の画像部分を白で表しており、後述する
図12の超音波画像310Eでも同様である。識別マーク320及びプローブマーク330の視認により、操作者は、赤色の針部分画像311Aが超音波画像310の手前側の位置にあり、青色の針部分画像311Bが超音波画像310の奥行き方向の中間の位置にあり、緑色の針部分画像311Cが超音波画像310の奥側の位置にあることを容易に認識できる。
【0097】
なお、穿刺針画像表示処理は、振動子VA,VB,VCの全てを超音波画像生成に用いる構成であるが、深部描写能力を向上するのが好ましい。
【0098】
2次元配列された複数の振動子の短軸方向の中心の振動子を用いて比較的浅い部位を描出し、短軸方向の全ての振動子を用いて比較的深い部分を描出する手法については、既に知られている。超音波探触子2において、短軸方向の全ての振動子VA,VB,VC及び音響レンズ220を用いて生成される超音波ビーム(Babcとする)の焦点距離は、短軸方向の中心の振動子VB及び音響レンズ220のレンズ部221Bを用いて生成される超音波ビームBbの焦点距離よりも長い。
【0099】
超音波探触子2で、比較的深い部位を描出する場合においては、振動子VA,VCに対応するレンズ部221A,221Cについて、描出を行いたい深さで超音波ビーム(Bacとする)が短軸方向全体の中心(振動子VBの超音波ビームBbの位置)を通過するようにすること、また、描出を行いたい深さで、超音波ビームBabcが集束するような曲率を持たせることで、深部描写能力を向上でき望ましい。この描出を行いたい深さは、各振動子VA,VB,BCに対応する各超音波ビームBa,Bb,Bcが排他的となる所定の深さよりも深くなる。
【0100】
以上、本実施の形態によれば、超音波診断装置Uは、短軸方向に並んだ複数の長軸方向の列に配列され、超音波を送受信する複数の振動子210と、各列の振動子への駆動信号の入力及び受信信号の出力のオンオフを切替えるスイッチング素子230と、を有する超音波探触子2を備える。また、超音波診断装置Uは、スイッチング素子230の切替えを介して、超音波探触子2の各列の振動子210に駆動信号を出力する送信駆動部12と、スイッチング素子230の切替えを介して、超音波探触子2から各列の振動子210に対応する受信信号を取得する受信処理部13と、各列に対応する受信信号から各列に対応する超音波画像データを生成する画像生成部15と、複数の超音波画像データのそれぞれの認識対象物としての穿刺針3の針部分画像を各列で別々に識別可能な表現(色)にし、針部分画像を含む複数の超音波画像データを合成して合成画像データを生成する画像処理部16と、合成画像データの針部分画像の表現(色)が、合成画像データの合成画像の奥行き方向のどの位置に対応するかを示す第1の識別情報としての識別マーク320又は320Vを生成し、生成された識別マーク320又は320Vと、合成画像データと、を出力表示部19に表示する制御部11と、を備える。
【0101】
このため、超音波画像の各色の針部分画像と識別マーク320又は320Vとにより、認識対象物としての穿刺針3の奥行き方向の位置(手前側、中間、奥側の位置)を、操作者が目視により直感的かつ容易に認識できる。
【0102】
また、超音波探触子2は、短軸方向の位置に対応する針部分画像の表現を示す識別部26A,26Cを備える。このため、超音波画像の各色の針部分画像と識別部26A,26Cとにより、認識対象物としての穿刺針3の奥行き方向の位置を、超音波探触子2の短軸方向の位置(表側、裏側の位置)に対応づけて、操作者が目視により直感的かつ容易に認識できる。
【0103】
また、識別部26A,26Cは、超音波探触子2の表側及び裏側の位置に配置される。このため、穿刺法の交差法及び平行法において、穿刺針3の奥行き方向の位置を、超音波探触子2の短軸方向の位置に対応づけて、操作者が目視により直感的かつ容易に認識できる。
【0104】
また、識別部26A1,26C1は、超音波探触子2Dの表側、裏側及び側面の位置に配置される。このため、穿刺法の平行法において、穿刺針3の奥行き方向の位置を、超音波探触子2の短軸方向の位置に対応づけて、操作者が目視によりさらに直感的かつ容易に認識できる。
【0105】
また、制御部11は、各針部分画像の表現(色)が、超音波探触子2の短軸方向の対応する位置を示す第2の識別情報としてのプローブマーク330又は330Vを生成する。制御部11は、生成された識別マーク320又は320V、プローブマーク330又は330V及び合成画像データを出力表示部19に表示する。このため、プローブマーク330又は330Vにより、穿刺針3の奥行き方向の位置を、超音波探触子2の短軸方向の位置に対応づけて、操作者が目視により直感的かつ容易に認識できる。
【0106】
また、超音波診断装置Uは、超音波画像の左右反転又は上下反転の操作入力を受け付ける操作入力部18を備える。画像処理部16は、左右反転又は上下反転の操作入力に応じて、合成画像データの合成画像の反転を行う。制御部11は、左右反転又は上下反転の操作入力に応じて、識別マークの奥行き方向を逆にして表現(色)を変更する(識別マーク320⇔320V)。このため、超音波画像の左右反転又は上下反転を行った場合にも、超音波画像の各色の針部分画像と識別マーク320又は320Vとにより、穿刺針3の奥行き方向の位置を、操作者が目視により直感的かつ容易に認識できる。
【0107】
(第1の変形例)
図12を参照して、上実施の形態の第1の変形例を説明する。ただし、上記実施の形態と同じ部分には、同じ符号を付して、その説明を省略する。
図12は、本変形例の超音波診断画面300Eを示す図である。
【0108】
本変形例の装置構成として、上記実施の形態と同様に、超音波診断装置Uを用いるものとする。超音波診断装置Uの動作として、
図8の穿刺針画像表示処理が実行される。ただし、穿刺針画像表示処理の実行開始前に、操作入力部18を介して操作者から振動子VBに対応する針部分画像の強調及び青色の着色を行わない旨の指示情報が入力され、穿刺針画像表示処理の実行開始後に、当該指示情報に応じて、ステップS19,ステップS20が実行されないものとする。
【0109】
本変形例の穿刺針画像表示処理により、ステップS25では、例えば、
図12に示す超音波診断画面300Eが表示される。超音波診断画面300Eは、超音波画像310Eと、識別マーク320Eと、プローブマーク330と、を有する。識別マーク320Eは、識別マーク320と同様であるが、中心識別部321Mに青色の着色がされていない。超音波画像310Eは、交差法による針部分画像311A,311B1,311Cを有する。針部分画像311B1は、強調されておらず着色もされていない。識別マーク320E及びプローブマーク330の視認により、操作者は、赤色の針部分画像311Aが超音波画像310の手前側にあり、緑色の針部分画像311Cが超音波画像310の奥側にあることをより容易に認識できる。
【0110】
以上、本変形例によれば、上記実施の形態と同様の効果を奏するとともに、画像処理部16は、短軸方向の中心に位置する少なくとも1つの列(振動子VB)に対応する超音波画像データの認識対象物としての穿刺針3の針部分画像の強調及び表現設定を行わない。このため、認識対象物としての穿刺針3が中心の列(振動子VB)からずれていないときに、針先をきれいに表示できて、操作者が目視によりその針先を容易に認識でき、ずれたときに、ずれた針先を操作者が目視により容易に認識できる。
【0111】
(第2の変形例)
図13及び
図14を参照して、上記実施の形態の第2の変形例を説明する。
図13(a)は、本変形例の超音波探触子2Fの表面の平面図である。
図13(b)は、本変形例の超音波探触子2Fの裏面の平面図である。
図14(a)は、本変形例の手前側が赤色の識別マーク320Fを示す図である。
図14(b)は、本変形例の手前側が緑色の識別マーク320FVを示す図である。
【0112】
本変形例の装置構成として、上記実施の形態と同様に、超音波診断装置Uを用いるものとするが、超音波探触子2を
図14(a)、
図14(b)に示す超音波探触子2Fに代えた構成とする。
【0113】
超音波探触子2Fは、超音波探触子2とほぼ同様であるが、ケース部25の表裏に識別部29A,29Cが形成されている。
図14(a)に示すように、ケース部25の表側に形成された識別部29Aは、
図3の表側の振動子VAに対応するマークとして、「○」が形成された部分である。識別部29Aは、操作者が「○」が視認できる形状とし、手の触感により「○」を認識できる形状であるとより好ましい。
【0114】
図14(b)に示すように、超音波探触子2Fのケース部25の裏側に形成された識別部29Cは、
図3の裏側の振動子VCに対応するマークとして、「△」が形成された部分である。識別部29Cは、操作者が「△」を視認できる形状とし、手の触感により「△」を認識できる形状であるとより好ましい。超音波探触子2のケース部25に識別部26A,26Cにより色を付けるよりも、識別部29A,29Cを形成する方が容易である。
【0115】
本変形例の超音波診断装置Uの動作として、
図8の穿刺針画像表示処理が実行される。ただし、識別マーク320が、
図14(a)に示す識別マーク320Fに代えられるものとし、識別マーク320Vが、
図14(b)に示す識別マーク320FVに代えられるものとする。識別マーク320Fは、超音波探触子2Fのケース部25の表側の識別部29Aの形状に対応する「○」の形状を有し、かつ振動子VAの針部分画像の色に対応する赤色に設定されている。識別マーク320FVは、超音波探触子2Fのケース部25の裏側の識別部29Aの形状に対応する「△」の形状を有し、かつ振動子VCの針部分画像の色に対応する緑色に設定されている。
【0116】
以上、本変形例によれば、上記実施の形態と同様の効果を奏するとともに、識別部29A,29Cを超音波探触子2Fに容易に形成することができる。
【0117】
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係る好適な超音波診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。
【0118】
例えば、上記実施の形態及び変形例の少なくとも2つの構成を適宜組合せる構成としてもよい。また、上記実施の形態及び変形例では、超音波診断装置Uが、超音波画像データとしてBモード画像データを生成・表示する構成としたが、これに限定されるものではない。超音波診断装置Uが、超音波画像データとして他のモードの断層画像データを生成・表示する構成としてもよい。
【0119】
また、上記実施の形態及び変形例では、超音波診断装置Uにおいて、超音波探触子2に色を有する識別部26A,26Cを備える構成としたが、これに限定されるものではない。操作者の中には、弱視などの視力の障害により、識別部26A,26Cの色を視認しずらい者もいる。このため、例えば、超音波探触子2に、ケース部25の表側にLED(Light Emitting Diode)などの発光部により赤色を発光する識別部と、ケース部25の裏側に発光部により緑色を発光する識別部と、を設ける構成としてもよい。
【0120】
また、上記実施の形態及び変形例では、短軸方向に3列の長軸方向の複数の振動子が配列された超音波探触子2を説明したが、これに限定されるものではない。短軸方向に5列、7列…など、短軸方向の分割数(振動子数)をもっと多くしたり、複数の振動子を同時に使用するなどを行ない、排他的な領域の数を増やすことも考えられる。
【0121】
また、上記実施の形態及び変形例では、認識対象物として、処置具としての穿刺針3の部分画像を超音波画像データから抽出して着色する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、被検体内の血管などの部位を認識対象物とし、当該部位の部分画像を超音波画像データから抽出して着色(各列で別々に識別可能な表現に)する構成や、疑似的(簡易的)な3次元表示を行なうことも可能である。
【0122】
また、上記実施の形態及び変形例では、超音波診断装置Uにおいて、超音波探触子2が識別部26A(26A1,29A)及び26C(26C1,29C)を具備する構成としたが、これに限定するものではない。例えば、超音波探触子2が識別部26A(26A1,29A)又は識別部26C(26C1,29C)を具備する構成としてもよい。
【0123】
また、上記実施の形態では、超音波診断装置Uにおいて、穿刺針3の部分画像の複数色表示と、超音波探触子2の識別部26A,26Cの具備と、識別マーク320,320Vの表示と、プローブマーク330,330Vの表示と、の全て組合せる構成としたが、これに限定するものではない。例えば、超音波診断装置Uにおいて、穿刺針3の部分画像の複数の各色表示と、識別マーク320,320Vの表示と、を組合せる構成としてもよい。また、超音波診断装置Uにおいて、穿刺針3の部分画像の複数の各色表示と、超音波探触子2の識別部26A,26Cの具備と、を組合せる構成としてもよい。また、超音波診断装置Uにおいて、穿刺針3の部分画像の複数の各色表示と、超音波探触子2の識別部26A,26Cの具備と、識別マーク320,320V又はプローブマーク330,330Vの表示と、を組合せる構成としてもよい。この構成では、プローブマーク330,330Vは、第1の識別情報としても機能する。
【0124】
特に、超音波診断装置Uにおいて、超音波探触子2の識別部26A,26Cの具備と、識別マーク320,320Vなどの表示又はプローブマーク330,330Vの表示と、を組合せる構成としてもよい。この構成では、穿刺針などの認識対象物を認識するために、超音波探触子の振動子の短軸方向の各列に応じて、抽出した部分画像(針部分画像)を異なる色分けを行う構成に限定されない。この構成について、超音波診断装置Uが通常のBモードの超音波画像を表示するものとして、説明する。上記の特許文献3、4では、操作者が超音波探触子の表裏を認識できるのみで、超音波画像と超音波探触子との表裏の関係を認識できない。
【0125】
これに対して、例えば、超音波診断装置Uは、短軸方向に並んだ少なくとも1つの長軸方向の列に配列され、超音波を送受信する複数の振動子(例えば、振動子VB)と、短軸方向の表裏を表現する識別部(例えば、識別部26A,26C)と、を有する超音波探触子2を備える構成とする。超音波診断装置Uは、超音波探触子2の振動子VBに駆動信号を出力する送信駆動部12と、超音波探触子2の振動子VBから受信信号を取得する受信処理部13と、受信信号から超音波画像データを生成する画像生成部15と、超音波画像データの表裏に対応する超音波探触子2の表裏の表現(色)を示す第3の識別情報としての識別マーク(例えば、中心識別部321Mを除く識別マーク320若しくは320V)又はプローブマーク(例えば、プローブマーク330若しくは330V)を生成し、生成された識別マーク又はプローブマークと、超音波画像データと、を出力表示部19に表示する制御部11と、を備える構成としてもよい。
【0126】
この構成によれば、超音波画像と識別部26A,26Cと識別マーク又はプローブマークとにより、超音波画像の表裏を、超音波探触子2の短軸方向の位置(表側、裏側の位置)に対応づけて、操作者が目視により直感的かつ容易に認識できる。なお、この識別マークは、表側又は裏側の識別部を有するものとしてもよい。
【0127】
また、超音波診断装置Uは、超音波画像の左右反転又は上下反転の操作入力を受け付ける操作入力部18と、左右反転又は上下反転の操作入力に応じて、超音波画像データの超音波画像の反転を行う画像処理部16と、を備える構成としてもよい。制御部11は、左右反転又は上下反転の操作入力に応じて、識別マーク(中心識別部321Mを除く識別マーク320若しくは320V)又はプローブマーク(例えば、プローブマーク330若しくは330V)の表裏の表現(色)を逆にする。このため、超音波画像の左右反転又は上下反転を行った場合にも、超音波画像と識別部26A,26Cと識別マーク又はプローブマークとにより、超音波画像の表裏を、超音波探触子2の短軸方向の位置に対応づけて、操作者が目視により直感的かつ容易に認識できる。
【0128】
また、以上の実施の形態における超音波診断装置Uを構成する各部の細部構成及び細部動作に関して本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0129】
U 超音波診断装置
1 超音波診断装置本体
11 制御部
12 送信駆動部
13 受信処理部
14 送受信切替部
15 画像生成部
16 画像処理部
161 記憶部
162 穿刺針同定部
18 操作入力部
19 出力表示部
2,2D,2F 超音波探触子
210,VA,VB,VC,V1a 振動子
220 音響レンズ
230 スイッチング素子
SWA,SWB,SWC スイッチ
24 切替設定部
25 ケース部
26A,26C,26A1,26C1,29A,29C 識別部
27 凸部
28 凹部
3 穿刺針
5 ケーブル