(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】画像形成装置、スクリーンパターンの決定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20220531BHJP
G03G 15/01 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/01 S
(21)【出願番号】P 2018037023
(22)【出願日】2018-03-02
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴行
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-093488(JP,A)
【文献】特開2013-250547(JP,A)
【文献】特開2011-257727(JP,A)
【文献】特開2000-284554(JP,A)
【文献】特開2006-142660(JP,A)
【文献】特開2013-033167(JP,A)
【文献】特開2006-309140(JP,A)
【文献】特開2002-072702(JP,A)
【文献】特開2011-197037(JP,A)
【文献】特開2011-197036(JP,A)
【文献】特開2008-015506(JP,A)
【文献】特開2011-022318(JP,A)
【文献】特開2006-018151(JP,A)
【文献】特開2017-072747(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0357131(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 15/01
G03G 21/00
G03G 15/08
G03G 15/16
G03G 21/14
B41J 29/00-29/70
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体にトナー像を形成し、前記像担持体に形成されたトナー像を記録媒体に転写することにより前記記録媒体に画像を形成する画像形成装置において、
異なる複数のスクリーンパターンを記憶する記憶手段と、
転写後に前記像担持体に残留した残留トナー量を検出する検出手段と、
前記記憶手段に記憶されている複数のスクリーンパターンを用いて生成した複数のパッチを前記像担持体に形成し、当該像担持体に形成した複数のパッチを表面に凹凸が形成された凹凸記録媒体に転写した後、前記像担持体に残留した前記複数のパッチのそれぞれの残留トナー量を前記検出手段により検出し、検出された前記複数のパッチのそれぞれの残留トナー量に基づいて、
前記複数のスクリーンパターンの中から、前記凹凸記録媒体に画像を形成する際
のスクリーン処理に用いるスクリーンパターンを決定するスクリーンパターン決定手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記スクリーンパターン決定手段は、前記複数のパッチのうち前記残留トナー量が予め定められた基準より少ないパッチの生成に用いたスクリーンパターンのうち、スクリーン線数が最も多いスクリーンパターンを、前記凹凸記録媒体に画像を形成する際に用いるスクリーンパターンとして決定する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成装置は、色成分毎の感光体上に前記色成分毎の現像装置によりトナー像を形成し、前記色成分毎の感光体上に形成されたトナー像を前記像担持体としての中間転写体上に順次重ねて転写した後、前記中間転写体に転写されたトナー像を記録媒体に転写する請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
重ねた色成分の数の異なる複数のパッチを前記中間転写体上に形成し、前記中間転写体に形成した前記複数のパッチを前記凹凸記録媒体に転写した後、前記中間転写体に残留した前記複数のパッチのそれぞれの残留トナー量を前記検出手段により検出し、検出された前記複数のパッチのそれぞれの残留トナー量に基づいて、前記凹凸記録媒体に画像を形成する際に用いる前記現像装置の現像パラメーターを決定する現像パラメーター決定手段を備える請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記現像パラメーター決定手段は、前記複数のパッチのうち前記中間転写体における残留トナー量が予め定められた基準より少ないパッチであって、重ねた色成分の数が最も少ないパッチのトナー量に基づいて、前記現像パラメーターを決定する請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記スクリーンパターン決定手段は、前記像担持体に前記複数のパッチを形成する際に、前記現像パラメーター決定手段により決定された現像パラメーターを用いて前記像担持体に複数のパッチを形成する請求項4又は5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
像担持体にトナー像を形成し、前記像担持体に形成されたトナー像を記録媒体に転写することにより前記記録媒体に画像を形成する画像形成装置におけるスクリーンパターンの決定方法であって、
記憶手段に記憶されている
異なる複数のスクリーンパターンを用いて生成した複数のパッチを前記像担持体に形成し、当該像担持体に形成した複数のパッチを表面に凹凸が形成された凹凸記録媒体に転写した後、前記像担持体に残留した前記複数のパッチのそれぞれの残留トナー量を検出手段により検出し、検出された前記複数のパッチのそれぞれの残留トナー量に基づいて、
前記複数のスクリーンパターンの中から、前記凹凸記録媒体に画像を形成する際
のスクリーン処理に用いるスクリーンパターンを決定するスクリーンパターンの決定方法。
【請求項8】
像担持体にトナー像を形成し、前記像担持体に形成されたトナー像を記録媒体に転写することにより前記記録媒体に画像を形成する画像形成装置に用いられるコンピュータを、
記憶手段に記憶されている
異なる複数のスクリーンパターンを用いて生成した複数のパッチを前記像担持体に形成し、当該像担持体に形成した複数のパッチを表面に凹凸が形成された凹凸記録媒体に転写した後、前記像担持体に残留した前記複数のパッチのそれぞれの残留トナー量を検出手段により検出し、検出された前記複数のパッチのそれぞれの残留トナー量に基づいて、
前記複数のスクリーンパターンの中から、前記凹凸記録媒体に画像を形成する際
のスクリーン処理に用いるスクリーンパターンを決定するスクリーンパターン決定手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、スクリーンパターンの決定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンボス紙には表面に凹凸があり、普通紙と異なった風合いがあり、招待状などの印刷に用いられている。しかし、エンボス紙の表面にある凹部では、中間転写ベルトに付着したトナー層とエンボス紙の間に空気層ができるため、
図10に示すような転写抜け(白抜け)等の画質劣化が発生する。
【0003】
エンボス紙等の表面に凹凸が形成された記録媒体に対する画質劣化の抑制のための技術として、例えば、特許文献1には、中間転写部の上流に表面形状測定器を設けて記録紙の表面凹凸の起伏量を測定し、起伏が大きい場合には一色目の露光位置と二色目の露光位置が重ならないように配置する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、記録紙の表面の凹凸を検出するための特別なセンサーが必要になる。
【0006】
本発明の課題は、記録媒体表面の凹凸を検出するための特別なセンサーを用いずに、エンボス紙等の表面に凹凸が形成された凹凸記録媒体に形成する画像の画質劣化を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
像担持体にトナー像を形成し、前記像担持体に形成されたトナー像を記録媒体に転写することにより前記記録媒体に画像を形成する画像形成装置において、
異なる複数のスクリーンパターンを記憶する記憶手段と、
転写後に前記像担持体に残留した残留トナー量を検出する検出手段と、
前記記憶手段に記憶されている複数のスクリーンパターンを用いて生成した複数のパッチを前記像担持体に形成し、当該像担持体に形成した複数のパッチを表面に凹凸が形成された凹凸記録媒体に転写した後、前記像担持体に残留した前記複数のパッチのそれぞれの残留トナー量を前記検出手段により検出し、検出された前記複数のパッチのそれぞれの残留トナー量に基づいて、前記複数のスクリーンパターンの中から、前記凹凸記録媒体に画像を形成する際のスクリーン処理に用いるスクリーンパターンを決定するスクリーンパターン決定手段と、
を備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記スクリーンパターン決定手段は、前記複数のパッチのうち前記残留トナー量が予め定められた基準より少ないパッチの生成に用いたスクリーンパターンのうち、スクリーン線数が最も多いスクリーンパターンを、前記凹凸記録媒体に画像を形成する際に用いるスクリーンパターンとして決定する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
前記画像形成装置は、色成分毎の感光体上に前記色成分毎の現像装置によりトナー像を形成し、前記色成分毎の感光体上に形成されたトナー像を前記像担持体としての中間転写体上に順次重ねて転写した後、前記中間転写体に転写されたトナー像を記録媒体に転写する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、
重ねた色成分の数の異なる複数のパッチを前記中間転写体上に形成し、前記中間転写体に形成した前記複数のパッチを前記凹凸記録媒体に転写した後、前記中間転写体に残留した前記複数のパッチのそれぞれの残留トナー量を前記検出手段により検出し、検出された前記複数のパッチのそれぞれの残留トナー量に基づいて、前記凹凸記録媒体に画像を形成する際に用いる前記現像装置の現像パラメーターを決定する現像パラメーター決定手段を備える。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、
前記現像パラメーター決定手段は、前記複数のパッチのうち前記中間転写体における残留トナー量が予め定められた基準より少ないパッチであって、重ねた色成分の数が最も少ないパッチのトナー量に基づいて、前記現像パラメーターを決定する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の発明において、
前記スクリーンパターン決定手段は、前記像担持体に前記複数のパッチを形成する際に、前記現像パラメーター決定手段により決定された現像パラメーターを用いて前記像担持体に複数のパッチを形成する。
【0013】
請求項7に記載の発明は、
像担持体にトナー像を形成し、前記像担持体に形成されたトナー像を記録媒体に転写することにより前記記録媒体に画像を形成する画像形成装置におけるスクリーンパターンの決定方法であって、
記憶手段に記憶されている異なる複数のスクリーンパターンを用いて生成した複数のパッチを前記像担持体に形成し、当該像担持体に形成した複数のパッチを表面に凹凸が形成された凹凸記録媒体に転写した後、前記像担持体に残留した前記複数のパッチのそれぞれの残留トナー量を検出手段により検出し、検出された前記複数のパッチのそれぞれの残留トナー量に基づいて、前記複数のスクリーンパターンの中から、前記凹凸記録媒体に画像を形成する際のスクリーン処理に用いるスクリーンパターンを決定する。
【0014】
請求項8に記載の発明のプログラムは、
像担持体にトナー像を形成し、前記像担持体に形成されたトナー像を記録媒体に転写することにより前記記録媒体に画像を形成する画像形成装置に用いられるコンピュータを、
記憶手段に記憶されている異なる複数のスクリーンパターンを用いて生成した複数のパッチを前記像担持体に形成し、当該像担持体に形成した複数のパッチを表面に凹凸が形成された凹凸記録媒体に転写した後、前記像担持体に残留した前記複数のパッチのそれぞれの残留トナー量を検出手段により検出し、検出された前記複数のパッチのそれぞれの残留トナー量に基づいて、前記複数のスクリーンパターンの中から、前記凹凸記録媒体に画像を形成する際のスクリーン処理に用いるスクリーンパターンを決定するスクリーンパターン決定手段として機能させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、記録媒体表面の凹凸を検出するための特別なセンサーを用いずに、エンボス紙等の表面に凹凸が形成された凹凸記録媒体に形成する画像の画質劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】画像形成装置の主要な機能構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態において
図2の制御部により実行される転写性調整処理Aを示すフローチャートである。
【
図4】第2の実施形態において
図2の制御部により実行される転写性調整処理Bを示すフローチャートである。
【
図5】エンボス紙への転写前の中間転写ベルト上の現像パラメーター決定用のパッチの様子を模式的に示す図である。
【
図6】
図5に示す現像パラメーター決定用のパッチを凹部の深いエンボス紙の凹部に転写した状態を示す図である。
【
図7】
図5に示す現像パラメーター決定用のパッチを
図6に示すエンボスよりも凹部の浅いエンボス紙の凹部に転写した状態を示す図である。
【
図8】
図5に示す現像パラメーター決定用のパッチを
図7に示すエンボスよりも凹部の浅いエンボス紙の凹部に転写した状態を示す図である。
【
図9】
図5に示す現像パラメーター決定用のパッチを凹部のない普通紙に転写した状態を示す図である。
【
図10】エンボス紙における転写抜けの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。
【0018】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。
図2は、第1の実施形態に係る画像形成装置1の主要な機能的構成を示すブロック図である。
図1、2に示す画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色成分のトナー像を中間転写ベルト421に順次重ねて転写(一次転写)した後、用紙に転写(二次転写)することにより、用紙に画像を形成する。
【0019】
画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0020】
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60、記憶部70、通信部80及び制御部100を備えている。
【0021】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して
図2に示す画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。例えば、制御部100は、画像読取部10や通信部80によりジョブの画像データが入力されると、ジョブを実行し、各ブロックの動作を制御して、入力された画像データに基づいて用紙に画像を形成する。また、制御部100は、ユーザー操作に応じて、後述する転写性調整処理Aを始めとする各種処理を実行する。
制御部100は、スクリーンパターン決定手段、現像パラメーター決定手段として機能する。
【0022】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
【0023】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいてジョブの画像データを生成する。この画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0024】
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21及び操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
【0025】
画像処理部30は、入力された画像データに対して、色変換処理、階調補正処理、スクリーン処理等の各種画像処理を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40により用紙に画像が形成される。
【0026】
画像形成部40は、画像処理済みの入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
【0027】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示すこととする。
図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0028】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、ドラムクリーニング装置415等を備える。
【0029】
感光体ドラム(感光体)413は、例えばドラム径が80[mm]のアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
【0030】
制御部100は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度で回転させる。
【0031】
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0032】
現像装置412は、感光体ドラム413と現像領域を介して対向するように配置された現像スリーブ412aを備える。現像スリーブ412aには、例えば、帯電装置414の帯電極性と同極性の直流現像バイアス、又は交流電圧に帯電装置414の帯電極性と同極性の直流電圧が重畳された現像バイアスが印加され、これにより、感光体ドラム413に形成された静電潜像上に現像剤を供給し、感光体ドラム413にトナー像を形成する。なお、現像剤は、トナーと、トナーを帯電するためのキャリアーと、を含む。トナーは特に限定されず、一般に使用されている公知のトナーを使用することができる。例えば、バインダー樹脂中に、着色剤や必要に応じて荷電制御剤や離型剤等を含有させ、外添剤を処理させたものを使用することができる。
【0033】
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレード等を有し、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーを除去する。
【0034】
中間転写ユニット42は、像担持体としての中間転写ベルト(中間転写体)421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、ベルトクリーニング装置426、画像濃度センサー427等を備える。
【0035】
中間転写ベルト421は、無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0036】
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
【0037】
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるローラー423B(以下「バックアップローラー423B」と称する)に対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙へトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
【0038】
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側(一次転写ローラー422と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
【0039】
その後、用紙が二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙に二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙の裏面側(二次転写ローラー424と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙に静電的に転写される。トナー像が転写された用紙は定着部60に向けて搬送される。
【0040】
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接するベルトクリーニングブレード等を有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。なお、二次転写ローラー424に代えて、二次転写ローラーを含む複数の支持ローラーに、二次転写ベルトがループ状に張架された構成(いわゆるベルト式の二次転写ユニット)を採用しても良い。
【0041】
中間転写ベルト421の外周面側の、二次転写ローラー424よりもベルト走行方向下流側には、画像濃度センサー427が設けられている。画像濃度センサー427は、最大濃度を決定するために中間転写ベルト421に形成されたパッチのトナー濃度を検出して制御部100に出力するセンサーである。画像濃度センサー427は、また、後述する転写性調整処理において、中間転写ベルト421に形成された複数のパッチをエンボス紙に転写した後に中間転写ベルト421の表面に残留したトナーの濃度を検出して制御部100に出力する。制御部100は、画像濃度センサー427により検出された中間転写ベルト421に残留したトナーの濃度に基づいて、各パッチの残留トナー量を検出する。すなわち、画像濃度センサー427と制御部100は、検出手段として機能する。
【0042】
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙を定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙にトナー像を定着させる。
【0043】
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、及び搬送経路部53等を備える。給紙部51は、用紙を装填するための給紙トレイユニット51a~51cを有する。搬送経路部53は、レジストローラー対53a等の複数の搬送ローラー対を有する。
【0044】
給紙トレイユニット51a~51cに収容されている用紙は、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により、給紙された用紙の傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙の一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙は、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
【0045】
記憶部70は、例えば、不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブ等により構成される。記憶部70には、画像形成装置1に係る各種設定情報を始めとする各種データが記憶されている。例えば、記憶部70には、角度、線数等が異なる複数のスクリーンパターンがスクリーンパターンの識別情報に対応付けて記憶されている。また、記憶部70には、給紙トレイユニット51a~51cのそれぞれの識別情報に対応付けて、その給紙トレイユニットに装填されている用紙に関する情報(紙種、坪量、用紙サイズ、使用するスクリーンパターン、現像パラメーター等)が記憶されている。
【0046】
通信部80は、例えばLAN(Local Area Network)カード等の通信制御カードで構成され、LAN、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の
装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。
【0047】
次に、第1の実施形態における動作ついて説明する。
図3は、第1の実施形態において、操作部22により給紙トレイユニット(給紙トレイユニット51a~51cのいずれか)が選択され、装填した用紙としてエンボス紙が設定された際に実行される転写性調整処理Aの流れを示すフローチャートである。
図3に示す転写性調整処理Aは、制御部100のCPU101とROM102に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0048】
まず、制御部100は、選択された給紙トレイユニットからエンボス紙を給紙し、所定の画像(例えば、所定の色(1色でも複数色でもよい)の所定の階調(1つの階調でも複数の階調でもよい)の所定サイズの画像)に対し記憶部70に記憶されている複数のスクリーンパターンを用いてスクリーン処理を施すことにより生成された複数のパッチを画像形成ユニット41により中間転写ベルト421上に形成させ、二次転写ローラー424により、給紙されたエンボス紙上に転写させる(ステップS1)。
【0049】
次いで、制御部100は、画像濃度センサー427に中間転写ベルト421のトナー濃度の検出を行わせ、その検出結果に基づいて、パッチ毎に、エンボス紙に転写されずに中間転写ベルト421に残留した残留トナー量を検出する(ステップS2)。
【0050】
次いで、制御部100は、残留トナー量が予め定められた基準より少ないパッチの生成に用いられたスクリーンパターンのうち、スクリーン線数が最も多いスクリーンパターンを、ジョブにおいてそのエンボス紙(ステップS1で給紙されたエンボス紙と同種のエンボス紙を指し、ステップS1で給紙されたエンボス紙そのものではない)に画像を形成する際に用いるスクリーンパターンとして決定する(ステップS3)。
【0051】
ここで、表面に凹凸のあるエンボス紙に対する転写抜けを抑制するためには、孤立点の少ない、線数の小さいスクリーンパターンを選択することが有効であると考えられるが、粒状性が悪化し画質が劣化する。そこで、エンボス紙に転写したときに残留トナー量が予め定められた基準より少ないパッチの生成に用いられたスクリーンパターンのうち、スクリーン線数が最も多いスクリーンパターンを、ジョブにおいてそのエンボス紙に画像を形成する際に用いるスクリーンパターンとして決定する。これにより、転写抜けを抑制し、粒状性の悪化も抑えられた最適なスクリーンパターンをジョブにおいてそのエンボス紙に画像を形成する際に用いるスクリーンパターンとして決定することができる。
【0052】
スクリーンパターンを決定すると、制御部100は、決定したスクリーンパターンの識別情報を、選択されたエンボス紙の給紙トレイユニットの識別情報に対応付けて記憶させ(ステップS4)、転写性調整処理Aを終了する。
【0053】
ジョブの開始が指示された際、制御部100は、ジョブの設定情報に基づいて、ジョブで使用する用紙の種類及び給紙トレイユニットを判別し、使用する用紙がエンボス紙であり、記憶部70において、使用する用紙を装填した給紙トレイユニットにスクリーンパターンの識別情報が対応付けられている場合には、画像処理部30においてジョブの画像データにスクリーン処理を施す際、そのスクリーンパターンを用いて画像データにスクリーン処理を施させる。
【0054】
なお、例えば、エンボス紙が装填されていた給紙トレイユニットに普通紙等の表面に凹凸が形成されていない用紙を装填する場合、操作部22により、該当する給紙トレイユニットが選択され、装填した用紙として普通紙が設定されると、制御部100は、記憶部70に記憶されている、選択された給紙トレイユニットの識別情報に対応付けて記憶されている用紙に関する情報(用紙の紙種、坪量、用紙サイズ等)を更新する。使用するスクリーンパターンの情報については削除する。
【0055】
このように、第1の実施形態によれば、複数のスクリーンパターンを用いてスクリーン処理を施すことにより得られた複数のパッチを画像形成ユニット41により中間転写ベルト421上に形成してエンボス紙上に転写した後、中間転写ベルト421に残留した残留トナー量を検出し、検出した残留トナー量が予め定められた基準より少ないパッチの生成に用いたスクリーンパターンのうちスクリーン線数が最も多いスクリーンが、そのエンボス紙に画像を形成する際に用いるスクリーンパターンとして決定される。
したがって、エンボス紙に形成する画像の転写抜け及び粒状性の悪化等の画質劣化を抑制することが可能なスクリーンパターンをエンボス紙に画像を形成する際に用いるスクリーンパターンとして自動的に決定することができるので、用紙表面の凹凸を検出するための特別なセンサーを用いずに、エンボス紙に形成する画像の転写抜け及び粒状性の悪化等の画質劣化を抑制することが可能となる。
【0056】
なお、第1の実施形態においては、カラーの画像形成装置に本発明を適用した場合を例にとり説明したが、モノクロの画像形成装置に本発明を適用してもよい。モノクロの画像形成装置に本発明を適用する場合、像担持体としての感光体ドラムの回転方向における転写ローラーとのニップ部の下流側の感光体ドラムに対向する位置に、画像濃度センサーを設け、制御部は、複数のスクリーンパターンを用いてスクリーン処理を施すことにより得られた複数のパッチを感光体ドラム上に形成してエンボス紙上に転写した後、感光体ドラムに残留したトナー量をパッチ毎に検出し、検出した残留トナー量が予め定められた基準より少ないパッチの作成に用いたスクリーンパターンのうちスクリーン線数が最も多いスクリーンパターンを、そのエンボス紙に画像を形成する際に用いるスクリーンパターンとして決定する。これにより、モノクロの画像形成装置においても、用紙表面の凹凸を検出するための特別なセンサーを用いずに、使用するエンボス紙に最適なスクリーンパターンを選択することができ、転写抜け及び粒状性の悪化等の画質劣化を抑制することが可能となる。
【0057】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態においては、使用するエンボス紙に応じた最適なスクリーンパターンを選択することで、転写抜け及び粒状性の悪化等の画質劣化を抑制する場合について説明したが、第2の実施形態では、まず、使用するエンボス紙に応じた最適な現像パラメーターを決定し、決定した現像パラメーターで画像を形成する際の最適なスクリーンパターンを決定する例について説明する。
【0058】
第2の実施形態における画像形成装置1の構成は、第1の実施形態で説明したものと同様であるので説明を援用し、以下、第2の実施形態の動作について説明する。
【0059】
図4は、第2の実施形態において、ユーザーの操作部22の操作により、給紙トレイユニット(給紙トレイユニット51a~51cのいずれか)が選択され、装填した用紙としてエンボス紙が設定された際に実行される転写性調整処理Bの流れを示すフローチャートである。
図4に示す転写性調整処理Bは、制御部100のCPU101とROM102に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0060】
まず、制御部100は、選択された給紙トレイユニットからエンボス紙を給紙し、現像パラメーター決定用の複数のパッチを画像形成ユニット41により中間転写ベルト421上に形成させ、二次転写ローラー424により、給紙されたエンボス紙上に転写させる(ステップS11)。
現像パラメーター決定用の複数のパッチは、重ねた色成分の数の異なる複数のパッチである。例えば、Y1色のベタ画像のパッチP1、YM2色のベタ画像を重ねたパッチP2、YMC3色のベタ画像を重ねたパッチP3、YMCK4色のベタ画像を重ねたパッチP4である(
図5参照)。
【0061】
次いで、制御部100は、画像濃度センサー427に中間転写ベルト421のトナー濃度の検出を行わせ、その検出結果に基づいて、パッチ毎に、エンボス紙に転写されずに中間転写ベルト421に残留した残留トナー量を検出する(ステップS12)。
【0062】
次いで、制御部100は、現像パラメーター決定用の複数のパッチのうち中間転写ベルト421に残留した残留トナー量が予め定められた基準より少ないパッチであって、重ねた色成分の数が最も少ないパッチのトナー量に基づいて、ジョブにおいてそのエンボス紙(ステップS11で給紙されたエンボス紙と同種のエンボス紙を指し、ステップS11で給紙されたエンボス紙そのものではない)に画像を形成する際の現像パラメーターを決定する(ステップS13)。
【0063】
図5は、エンボス紙への転写前の中間転写ベルト421上の現像パラメーター決定用のパッチP1~P4の様子を模式的に示す図である。
図6は、
図5に示す現像パラメーター決定用のパッチP1~P4を凹部の深いエンボス紙EP1の凹部に転写した状態を示す図である。
図7は、
図5に示す現像パラメーター決定用のパッチP1~P4を
図6に示すエンボスEP1よりも凹部の浅いエンボス紙EP2の凹部に転写した状態を示す図である。
図8は、
図5に示す現像パラメーター決定用のパッチP1~P4を
図7に示すエンボスEP2よりも凹部の浅いエンボス紙EP3の凹部に転写した状態を示す図である。
図9は、
図5に示す現像パラメーター決定用のパッチP1~P4を凹部のない普通紙EP0に転写した状態を示す図である。
【0064】
図6に示すように、用紙として凹部の深いエンボス紙EP1を用いた場合、YMCK4色のベタ画像を重ねたパッチP4のみがエンボス紙EP1の凹部に転写され、重ねた色成分の数が3色以下のパッチP1~P3についてはエンボス紙EP1の凹部とパッチのトナーの間に空気層ができてしまうため、トナーがエンボス紙EP1の凹部に転写されず、中間転写ベルト421上に残留トナーとして残ってしまう。すなわち、パッチP1~P3は全て残留トナーとして検出され、パッチP4は、わずかに残留トナーが検出されるか、または残留トナー量が0となる。この場合、制御部100は、現像パラメーター決定用の複数のパッチのうち中間転写ベルト421に残留した残留トナー量が予め定められた基準(少なくともY1色のパッチのトナー量より少ない)より少ないパッチであって、重ねた色成分の数が最も少ないパッチのトナー量に基づいて、現像パラメーター(現像バイアス又は現像θ)を決定する。例えば、
図6においては、画像形成ユニット41Y、M、C、Kそれぞれにおいてベタ画像を形成する際に、パッチP4と同等のトナー量のトナー像が中間転写ベルト421上に形成されるように、現像パラメーター(現像バイアス又は現像θ)を決定する。ここで、現像θとは、感光体ドラム413の回転速度に対する現像スリーブ412aの回転速度の比(現像スリーブ412aの回転速度/感光体ドラム413の回転速度)である。これにより、転写抜けを抑制することができる。ただし、決定した現像パラメーターが装置の上限を超える(例えば、その現像パラメーターで現像を行うとトナー消費量が多すぎる、定着部60に用紙が巻き付いてしまう場合等)場合には、現像パラメーターの上限を超えない範囲の値が現像パラメーターとして決定される。
【0065】
図7に示すように、用紙としてエンボス紙EP1より凹部の浅いエンボス紙EP2を用いた場合、重ねた色成分の数が3色以上のパッチP3~P4についてはエンボス紙EP2の凹部に転写されるが、重ねた色成分の数が2色以下のパッチP1~P2についてはエンボス紙EP2の凹部とパッチのトナーの間に空気層ができてしまうため、トナーがエンボス紙EP2の凹部に転写されず、中間転写ベルト421上に残留トナーとして残ってしまう。すなわち、パッチP1~P2については全て残留トナーとして検出され、パッチP3~P4についてはわずかに残留トナーが検出されるか、または残留トナー量が0となる。この場合、制御部100は、現像パラメーター決定用の複数のパッチのうち中間転写ベルト421に残留したトナー量が予め定められた基準(少なくともY1色のパッチのトナー量より少ない)より少ないパッチであって、重ねた色成分の数が最も少ないパッチのトナー量に基づいて、現像パラメーター(現像バイアス又は現像θ)を決定する。例えば、画像形成ユニット41Y、M、C、Kのそれぞれにおいてベタ画像を形成する際に、パッチP3と同等のトナー量のトナー像が中間転写ベルト421上に形成されるように、現像パラメーター(現像バイアス又は現像θ)を決定する。これにより、転写抜けを抑制することができる。また、残留トナー量が基準より少ないパッチのうち、重ねた色成分の数が最も少ないパッチのトナー量に基づき現像パラメーターを決定するので、無駄なトナー消費を抑えるとともに、トナー量過多による用紙の定着部60への巻き付きを防止することができる。ただし、決定した現像パラメーターが装置の上限を超える(例えば、その現像パラメーターで現像を行うとトナー消費量が多すぎる、定着部60に用紙が巻き付いてしまう場合等)場合には、現像パラメーターの上限を超えない範囲の値が現像パラメーターとして決定される。
【0066】
図8に示すように、用紙としてエンボス紙EP2より凹部の浅いエンボス紙EP3を用いた場合、重ねた色成分の数が2色以上のパッチP2~P4についてはエンボス紙EP3の凹部に転写されるが、重ねた色成分の数が1色のパッチP1についてはエンボス紙EP3の凹部とパッチのトナーの間に空気層ができてしまうため、トナーがエンボス紙EP3の凹部に転写されず、中間転写ベルト421上に残留トナーとして残ってしまう。すなわち、パッチP1については全て残留トナーとして検出され、パッチP2~P4についてはわずかに残留トナーが検出されるか、または残留トナー量が0となる。この場合、制御部100は、現像パラメーター決定用の複数のパッチのうち中間転写ベルト421に残留したトナー量が予め定められた基準(少なくともY1色のパッチのトナー量より少ない)より少ないパッチであって、重ねた色成分の数が最も少ないパッチのトナー量に基づいて、現像パラメーター(現像バイアス又は現像θ)を決定する。例えば、画像形成ユニット41Y、M、C、Kのそれぞれにおいてベタ画像を形成する際に、パッチP2と同等のトナー量のトナー像が中間転写ベルト421上に形成されるように、現像パラメーター(現像バイアス又は現像θ)を決定する。これにより、転写抜けを抑制することができる。また、残留トナー量が基準より少ないパッチのうち、重ねた色成分の数が最も少ないパッチのトナー量に基づき現像パラメーターを決定するので、無駄なトナー消費を抑えるとともに、トナー量過多による用紙の定着部60への巻き付きを防止することができる。ただし、決定した現像パラメーターが装置の上限を超える(例えば、その現像パラメーターで現像を行うとトナー消費量が多すぎる、定着部60に用紙が巻き付いてしまう場合等)場合には、現像パラメーターの上限を超えない範囲の値が現像パラメーターとして決定される。
【0067】
次いで、制御部100は、決定した現像パラメーターを、選択されたエンボス紙の給紙トレイユニットの識別情報に対応付けて記憶させるとともに、決定した現像パラメーターを現像装置412に設定する(ステップS14)。
【0068】
次いで、制御部100は、選択された給紙トレイユニットからエンボス紙を給紙し、スクリーンパターン決定用の複数のパッチを画像形成ユニット41により中間転写ベルト421上に形成させ、二次転写ローラー424により、エンボス紙上に転写させる(ステップS15)。スクリーンパターン決定用の複数のパッチとは、所定の画像(例えば、所定の色(1色でも複数色でもよい)の所定の階調(1つの階調でも複数の階調でもよい)の所定サイズの画像)に対し記憶部70に記憶されている複数のスクリーンパターンを用いてスクリーン処理を施すことにより得られた複数のパッチである。
【0069】
次いで、制御部100は、画像濃度センサー427に中間転写ベルト421のトナー濃度の検出を行わせ、その検出結果に基づいて、パッチ毎に、エンボス紙に転写されずに中間転写ベルト421に残留した残留トナー量を検出する(ステップS16)。
【0070】
次いで、制御部100は、中間転写ベルト421に残留したトナーの濃度が予め定められた基準より少ないパッチに使用したスクリーンパターンのうち、スクリーン線数が最も多いスクリーンパターンを、ジョブにおいてそのエンボス紙(ステップS15で給紙されたエンボス紙と同種のエンボス紙を指し、ステップS15で給紙されたエンボス紙そのものではない)に画像を形成する際に用いるスクリーンパターンとして決定する(ステップS17)。
そして、制御部100は、決定したスクリーンパターンの識別情報を、選択されたエンボス紙の給紙トレイユニットの識別情報に対応付けて記憶させ(ステップS18)、転写性調整処理Bを終了する。
【0071】
ジョブの開始が指示された際、制御部100は、ジョブの設定情報に基づいて、ジョブに用いる用紙の種類及び給紙トレイユニットを判別し、使用する用紙がエンボス紙であり、記憶部70において、使用する用紙を装填した給紙トレイユニットにスクリーンパターン及び現像パラメーターが対応付けられている場合には、画像処理部30においてジョブの画像データにスクリーン処理を施す際、そのスクリーンパターンを用いてスクリーン処理を施させる。また、現像装置412により感光体ドラム413にジョブに基づくトナー像を現像する際、その現像パラメーターを現像装置412に設定して現像を行わせる。
【0072】
なお、例えば、エンボス紙が装填されていた給紙トレイユニットに普通紙等の表面に凹凸が形成されていない用紙を装填する場合、操作部22により、該当する給紙トレイユニットが選択され、装填した用紙として普通紙が設定されると、制御部100は、記憶部70に記憶されている、選択された給紙トレイユニットの識別情報に対応付けて記憶されている用紙に関する情報(用紙の紙種、坪量、用紙サイズ等)を更新する。使用するスクリーンパターンの情報及び現像パラメーターについては削除する。
【0073】
このように、第2の実施形態によれば、まず、制御部100は、現像パラメーター決定用の、重ねた色成分の数の異なる複数のパッチを画像形成ユニット41により中間転写ベルト421上に形成して選択されたエンボス紙上に転写した後、中間転写ベルト421に残留した残留トナー量が予め定められた基準より少ないパッチであって、重ねた色成分の数が最も少ないパッチのトナー量に基づいて、そのエンボス紙に画像を形成する際に用いる現像パラメーターを決定し、決定した現像パラメーターを現像装置412に設定する。次いで、制御部100は、複数のスクリーンパターンを用いて生成された複数のパッチを画像形成ユニット41により中間転写ベルト421上に形成して、給紙したエンボス紙上に転写した後、中間転写ベルト421に残留した残留トナー量が予め定められた基準より少ないパッチの生成に用いたスクリーンパターンのうちスクリーン線数が最も多いスクリーンパターンを、そのエンボス紙に画像を形成する際に用いるスクリーンパターンとして決定する。
【0074】
したがって、まず、エンボス紙に画像を形成したときに無駄なトナー消費や用紙の定着部60への巻き付きを抑えつつ転写抜けを抑制することのできる現像パラメーターを決定した上で、決定した現像パラメーターを用いてエンボス紙に画像形成を行ったときにエンボス紙に形成する画像の転写抜け及び粒状性の悪化等の画質劣化を抑制することが可能なスクリーンパターンを決定するので、用紙表面の凹凸を検出するための特別なセンサーを用いずに、エンボス紙に形成する画像の転写抜け及び粒状性の悪化等の画質劣化をより高精度に抑制することが可能となる。
【0075】
なお、上述の実施形態における記述内容は、本発明の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
【0076】
例えば、上記実施形態では、用紙に画像を形成する画像形成装置において、エンボス紙に画像を形成する際のスクリーンパターンや現像パラメーターを決定する場合を例にとり説明したが、画像形成装置で画像を形成する際に使用する記録媒体としては、用紙に限らず布等でもよく、また、凹凸記録媒体としては、エンボス紙に限らず、表面に凹凸が形成された布等を用いることとしてもよい。
【0077】
また、例えば、上記した実施形態では、スクリーンパターン決定手段及び現像パラメーター決定手段としての制御部100、複数のスクリーンパターンを記憶する記憶手段としての記憶部70、画像形成部40等は1つの画像形成装置1内部に備えられている構成として説明したが、通信ネットワークを介して接続された複数の装置に備えられている構成としてもよい。
【0078】
また、上記実施形態においては、ジョブを実行する前に、予めジョブに用いるエンボス紙を用いて転写性調整処理Aや転写性調整処理Bを行っておくこととして説明したが、ジョブを開始する際に、制御部100においてジョブで使用する用紙がエンボス紙であるか否かを判断し、エンボス紙である場合に、上述の転写性調整処理A又は転写性調整処理Bを自動的に実行して、使用するスクリーンパターンや現像パラメーターを決定してからジョブを実行することとしてもよい。これにより、ジョブの開始時に自動的に転写性調整処理A又は転写性調整処理Bが自動的に実行されるので、ユーザーの利便性を向上させることができる。また、ジョブの開始時に実行された転写性調整処理A又は転写性調整処理Bにより決定されたスクリーンパターンや現像パラメーターは、エンボス紙を給紙した給紙トレイユニットの識別情報に対応付けて記憶部70に記憶しておき、同じエンボス紙を用いるジョブを実行する場合には、転写性調整処理A又は転写性調整処理Bを省略して、記憶部70に記憶されているスクリーンパターンや現像パラメーターを用いてジョブを実行することとしてもよい。
【0079】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体として、不揮発性メモリー、ハードディスク等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0080】
その他、画像形成装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 画像形成装置
100 制御部
10 画像読取部
20 操作表示部
30 画像処理部
40 画像形成部
412 現像装置
412a 現像スリーブ
413 感光体ドラム
421 中間転写ベルト
427 画像濃度センサー
50 用紙搬送部
60 定着部
70 記憶部
80 通信部