(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】画像形成装置および中間転写ベルトの位置制御方法
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20220531BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20220531BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20220531BHJP
B65H 9/00 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
G03G21/00 370
G03G15/16 103
G03G15/00 450
B65H9/00 A
(21)【出願番号】P 2018039668
(22)【出願日】2018-03-06
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155620
【氏名又は名称】木曽 孝
(72)【発明者】
【氏名】塩川 康夫
(72)【発明者】
【氏名】川上 嘉輝
(72)【発明者】
【氏名】大久保 貴弘
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-072980(JP,A)
【文献】特開2014-133634(JP,A)
【文献】特開2008-039894(JP,A)
【文献】特開2011-118143(JP,A)
【文献】特開2015-020830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/16
G03G 15/00
B65H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写位置において用紙に画像を転写する中間転写ベルトを備えた転写部と、
用紙搬送方向における前記転写位置の上流側に設けられ、前記用紙を搬送する用紙搬送部材と、
前記用紙を該用紙の幅方向に沿って揺動させるように前記用紙搬送部材を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記中間転写ベルトを駆動する
モーターにおいて前記中間転写ベルトの軸方向の位置のずれに伴うトルク変動量に基づいて、
前記トルク変動量が少なくなるように、前記用紙搬送部材の揺動を制御して、前記転写位置における前記中間転写ベルトの軸方向の位置のずれを矯正す
る、
画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記中間転写ベルトの前記ずれの方向と逆方向に前記用紙搬送部材を揺動させて、前記転写位置に進入している前記用紙の揺動を通じて前記転写位置における前記中間転写ベルトの軸方向の位置を矯正する制御を行う、
請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記用紙の坪量に応じて、前記用紙搬送部材の揺動量及び揺動速度の少なくとも一方を変える、
請求項1
または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記画像形成装置の周囲の温湿度に応じて、前記用紙搬送部材の揺動量及び揺動速度の少なくとも一方を変える、
請求項1から
3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記用紙搬送部材の劣化度に応じて、前記用紙搬送部材の揺動量及び揺動速度の少なくとも一方を変える、
請求項1から
4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、搬送方向における前記転写位置の上流で前記用紙の側端の位置を検知するラインセンサーによる検知結果に基づいて、用紙の当該側端を目標位置に合わせるように前記用紙搬送部材を揺動させる用紙位置合わせの制御を併せて行う、
請求項1から
5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記転写位置に前記用紙が進入する前は、前記ラインセンサーによる検知結果に基づいて、前記用紙の当該側端を前記目標位置に合わせるように前記用紙搬送部材の揺動を制御する、
請求項
6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記用紙の坪量に応じて、前記転写位置に前記用紙が進入した後の前記用紙搬送部材の揺動の有無を切り替える、
請求項
6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
転写位置において用紙に画像を転写する中間転写ベルトを備えた転写部と、用紙搬送方向における前記転写位置の上流側に設けられ、前記用紙を搬送する用紙搬送部材と、を備えた画像形成装置における中間転写ベルトの位置制御方法であって、
前記中間転写ベルトを駆動する
モーターにおいて前記中間転写ベルトの軸方向の位置のずれに伴うトルク変動量に基づいて、
前記トルク変動量が少なくなるように、前記用紙搬送部材を揺動して、前記転写位置における前記中間転写ベルトの軸方向の位置のずれを矯正す
る、
中間転写ベルトの位置制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および中間転写ベルトの位置制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真プロセス技術を利用した画像形成装置(プリンター、複写機、ファクシミリ等)は、帯電した感光体ドラム(像担持体)に対して、画像データに基づくレーザー光を照射(露光)することにより静電潜像を形成する。そして、画像形成装置では、静電潜像が形成された感光体ドラムへ現像部よりトナーを供給することにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。さらに、画像形成装置では、このトナー像を一次的または二次的に用紙に転写させ、該用紙を定着部の定着ニップで加熱、加圧して、用紙にトナー像を定着させる。また、画像形成装置において、用紙に画像を転写させる転写部の上流側には、用紙の幅方向における位置ずれを補正するレジストローラーが設けられる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、転写体として一次転写ベルト(中間転写ベルトともいう)を備えた二次転写方式の画像形成装置において、かかる中間転写ベルトの幅方向位置を規制する装置を備えない機種では、種々の要因によって二次転写ニップにおける中間転写ベルトの幅方向位置がずれる場合があり得る。すなわち、中間転写ベルト方式の作像系の場合、感光体ドラムからまず中間転写ベルトにトナー像を転写し(一次転写)、この後、中間転写ベルト上の当該トナー像を用紙に二次転写させる。かかる二次転写時に、機械のアライメントや中間転写ベルトの状態等によっては、ベルトの片寄りが発生し、中間転写ベルトが斜行してしまう場合がある。このような中間転写ベルトのずれ(斜行)が発生すると、用紙の幅方向における本来意図した正しい位置に画像が転写されず、画像ずれの原因となる。さらには、中間転写ベルトが破損するなど、部材にダメージが生じる虞がある。
【0005】
本発明の目的は、中間転写ベルトの位置ずれを補正することが可能な画像形成装置および中間転写ベルトの位置制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像形成装置は、
転写位置において用紙に画像を転写する中間転写ベルトを備えた転写部と、
用紙搬送方向における前記転写位置の上流側に設けられ、前記用紙を搬送する用紙搬送部材と、
前記用紙を該用紙の幅方向に沿って揺動させるように前記用紙搬送部材を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記中間転写ベルトを駆動するモーターにおいて前記中間転写ベルトの軸方向の位置のずれに伴うトルク変動量に基づいて、前記トルク変動量が少なくなるように、前記用紙搬送部材の揺動を制御して、前記転写位置における前記中間転写ベルトの軸方向の位置のずれを矯正する。
【0007】
本発明に係る中間転写ベルトの位置制御方法は、
転写位置において用紙に画像を転写する中間転写ベルトを備えた転写部と、用紙搬送方向における前記転写位置の上流側に設けられ、前記用紙を搬送する用紙搬送部材と、を備えた画像形成装置における中間転写ベルトの位置制御方法であって、
前記中間転写ベルトを駆動するモーターにおいて前記中間転写ベルトの軸方向の位置のずれに伴うトルク変動量に基づいて、前記トルク変動量が少なくなるように、前記用紙搬送部材を揺動して、前記転写位置における前記中間転写ベルトの軸方向の位置のずれを矯正する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、中間転写ベルトの位置ずれを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態における画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】本実施の形態における画像形成装置の制御系の主要部を示す。
【
図3】本実施の形態におけるベルト位置検知部の構成および中間転写ベルトの位置矯正のための動作を説明する図である。
【
図4】ベルト位置検知部の他の構成例および中間転写ベルトの位置矯正のための動作を説明する図である。
【
図5】ベルト位置検知部のさらに他の構成例および中間転写ベルトの位置矯正のための動作を説明する図である。
【
図6】
図4に示す構成例におけるベルト位置矯正のためのレジスト揺動制御の概要を説明する図である。
【
図7】
図7Aおよび
図7Bは、
図4に示す構成例におけるベルト位置矯正のためのレジスト揺動制御時の動作を詳しく説明する図である。
【
図8】中間転写ベルトの位置矯正のために、ラインセンサーにより検知された用紙の側端位置の情報を併せて使用する場合を説明する図である。
【
図9】本実施の形態の画像形成装置における中間転写ベルトの位置矯正に関する制御の一例を示すフローチャートである。
【
図10】参考例としての二次転写ドラム方式の画像形成装置の場合のレジスト揺動の制御例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。
図2は、本実施の形態における画像形成装置1の制御系の主要部を示す。
【0011】
本実施の形態の画像形成装置1は、用紙Sとして長尺紙または非長尺紙を使用し、当該用紙Sに画像を形成する。
【0012】
本実施の形態において、長尺紙は、一般に良く用いられるA4サイズ、A3サイズ等の用紙よりも搬送方向の長さが長い枚葉紙であり、機内の給紙トレイユニット51a~51cに収容できない長さを有する。以下、単に「用紙」という場合、長尺紙および非長尺紙の両方が含まれ得る。
【0013】
画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙に二次転写することにより、トナー像を形成する。
【0014】
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0015】
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60、ベルト位置検知部80、および制御部100等を備える。
【0016】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
【0017】
制御部100は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部100は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙にトナー像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
【0018】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
【0019】
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
【0020】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿またはコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0021】
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21および操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
【0022】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部100の制御下で、記憶部72内の階調補正データ(階調補正テーブルLUT)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0023】
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
【0024】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示す。
図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0025】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415等を備える。
【0026】
感光体ドラム413は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
【0027】
制御部100は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度(線速度)で回転させる。
【0028】
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。これにより、感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0029】
現像装置412は、例えば二成分現像方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0030】
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるクリーニング部材等を有する。ドラムクリーニング装置415は、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーをクリーニングブレードによって除去する。
【0031】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
【0032】
中間転写ベルト421は、無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0033】
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
【0034】
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
【0035】
中間転写ベルト421、バックアップローラー423Bおよび二次転写ローラー424により形成される二次転写ニップは、本発明の「転写位置」に対応し、かかる二次転写ニップを構成する部材が「転写部」に対応する。また、中間転写ベルト421を支持する複数の支持ローラー423の内の最上部の支持ローラー423は、ステアリングローラー423Sとして機能させることもでき、このような構成例(変形例)については後述する。
【0036】
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の一次転写ローラー422と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
【0037】
その後、用紙が二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙に二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙の二次転写ローラー424と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙に静電的に転写される。トナー像が転写された用紙は定着部60に向けて搬送される。
【0038】
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接するベルトクリーニングブレード等を有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。
【0039】
定着部60は、用紙の定着面側に配置される定着面側部材を有する上側定着部60A、用紙の定着面の反対の面側に配置される裏面側支持部材を有する下側定着部60B、及び加熱源60C等を備える。定着面側部材に裏面側支持部材が圧接されることにより、用紙を狭持して搬送する定着ニップが形成される。
【0040】
上側定着部60Aは、定着面側部材である無端状の定着ベルト61、加熱ローラー62、上加圧ローラー63等を有する(ベルト加熱方式)。定着ベルト61は、加熱ローラー62と上加圧ローラー63とに所定のベルト張力(例えば、400N)で張架されている。
【0041】
下側定着部60Bは、例えば裏面側支持部材である下加圧ローラー65を有する(ローラー加圧方式)。下加圧ローラー65は、定着ベルト61を介して上加圧ローラー63に所定の定着荷重で圧接される。このようにして、定着ベルト61と下加圧ローラー65との間には、用紙Sを狭持して搬送する定着ニップが形成される。
【0042】
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙を定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙にトナー像を定着させる。定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。
【0043】
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52および搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量(剛度)やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53a等の複数の搬送ローラー、用紙の両面に画像形成するための両面搬送経路等を有する。レジストローラー対53aは、本発明の「用紙搬送部材」に対応する。
【0044】
レジストローラー対53aは、制御部100の制御の下、用紙Sの幅方向における位置を補正する。具体的には、レジストローラー対53aのニップに用紙Sが挟持されると、レジストローラー対53aが幅方向に移動して用紙Sを移動させるレジスト揺動の制御が行われることにより、用紙Sの幅方向における位置が補正される。かかるレジスト揺動の制御内容については後述する。
【0045】
レジストローラー対53aは、用紙Sの幅方向における位置を補正した後、当該用紙Sがレジストローラー対53aを通過し終わる前、すなわち用紙Sの搬送途中で離間して、移動する前の位置に戻される。そして、レジストローラー対53aは、用紙Sの後端が通過した後、再度圧着される。
【0046】
また、レジストローラー対53aにおける用紙Sの搬送速度は、制御部100の制御の下、バックアップローラー423Bと二次転写ローラー424とにより形成される二次転写ニップにおける用紙Sの搬送速度よりも速く設定される。
【0047】
用紙搬送方向におけるレジストローラー対53aの下流側で二次転写ニップの上流側には、ラインセンサー54が配置されている。ラインセンサー54は、光電変換素子をライン状に配置したセンサーであり、用紙Sの幅方向の片寄り、すなわち基準位置からのずれを検知する役割を担う。
【0048】
給紙トレイユニット51a~51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aにより、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。
【0049】
そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。なお、両面印刷時には、第一面への画像形成が行われた用紙Sは、両面搬送経路を通って表裏が反転された後、第二面にトナー像が二次転写および定着された後、排紙部52により機外に排紙される。
【0050】
ところで、このような二次転写方式の画像形成装置1において、中間転写ベルト421の幅方向の移動量を規制する構成を備えない機種では、用紙Sの搬送中に中間転写ベルト421の片寄りが生じることによって、画像不良さらにはベルト破損等が発生する虞がある。
【0051】
より具体的には、用紙Sが二次転写ニップに搬送され画像が二次転写されている最中に中間転写ベルト421が軸方向に揺れると、用紙S上の画像位置が変わってしまい、本来意図した正しい位置に画像が二次転写されず、画像ずれの原因となる。さらには、中間転写ベルト421が破損するなど、二次転写ニップの構成部材にダメージが生じる虞がある。
【0052】
そこで、本実施の形態では、制御部100は、二次転写ニップにおける中間転写ベルト421の軸方向の位置のずれを矯正するように、レジストローラー対53aの揺動を制御する。より具体的には、制御部100は、レジストローラー対53aに挟持され且つ二次転写ニップに進入している用紙Sの揺動を通じて、二次転写ニップにおける中間転写ベルト421の軸方向の位置を矯正するように、レジストローラー対53aの揺動を制御する。
【0053】
以下、本実施の形態の構成および制御内容を、
図3以下を参照してより詳しく説明する。
図3中、矢印Yは用紙Sの搬送方向を示し、矢印X
1は中間転写ベルト421のずれ(片寄り)が生じる方向、矢印X
2はレジストローラー対53aが揺動する方向を示しており、
図4以下も同様である。なお、
図3から
図7に示す構成例では、ラインセンサー54による検知結果(すなわち用紙Sの側端の位置情報)を用いずに中間転写ベルト421の位置矯正のためのレジスト揺動を行う場合を説明することから、
図3~
図7ではラインセンサー54の図示を省略している。
【0054】
図3に示すように、本実施の形態では、ベルト位置検知部80を二次転写ニップの位置における中間転写ベルト421の端部を検知するように配置する。ベルト位置検知部80は、例えば光照射部(発光素子)と受光部(光センサーなど)を有し、中間転写ベルト421の端部を光学的な方法で検出する公知の光学デバイスを使用することができる。制御部100は、ベルト位置検知部80からの検知信号を入力して、かかる検知信号から中間転写ベルト421の端部の位置を特定する。
【0055】
本実施の形態では、ベルト位置検知部80を、中間転写ベルト421の装置手前側の端部を検知するように配置しているが、中間転写ベルト421の装置奥側の端部を検知する配置としてもよい。
【0056】
一具体例では、制御部100は、ベルト位置検知部80の検知結果から、二次転写ニップにおける中間転写ベルト421の軸方向の位置(以下、単にベルト位置という。)の正誤、すなわちベルト位置のずれの発生の有無を判定する。また、制御部100は、ベルト位置のずれが発生したと判定すると、当該ずれを矯正ないし解消する方向にレジストローラー対53aを揺動させるように制御する。
【0057】
例えば、
図3の構成例において、ベルト位置が装置手前側(
図3中の下側)にずれた場合、制御部100は、レジストローラー対53aを、当該ずれ方向とは逆側(この場合は装置奥側すなわち
図3中の上側)に揺動させるように制御する。この制御により、レジストローラー対53aに挟持されている用紙Sは、レジストローラー対53aと同方向(この例では装置奥側)に揺動して、下流側の中間転写ベルト421を当該揺動方向(装置奥側)に移動させる(すなわちベルト位置のずれを直す)ように作用する。
【0058】
一具体例では、制御部100は、ベルト位置検知部80の検知信号を監視して、ベルト位置が正常位置に戻った場合、当該レジストローラー対53aの揺動(この例では装置奥側への駆動)を停止する。
【0059】
このように、ベルト位置のずれ方向と逆方向にレジストローラー対53aを揺動させ、該レジストローラー対53aに挟持されている用紙Sを通じて中間転写ベルト421を軸方向に移動(従動)させることで、中間転写ベルト421の位置ずれを矯正することができる。したがって、本実施の形態によれば、用紙Sが二次転写ニップに搬送されている際の中間転写ベルト421の位置ずれを補正することができる。
【0060】
図4に、ベルト位置検知部80の他の構成例および別の制御例を示す。
図4中に示すベルト位置検知部80は、
図3で上述した光学デバイスをバックアップローラー423Bの軸方向に沿って2つ配置したものであり、装置奥側の検知部80Aと、装置手前側の検知部80Bと、を備える。
図4の構成例では、検知部80Aおよび80Bの配置によって中間転写ベルト421の位置ずれの許容範囲が定義される。言い換えると、
図4中に示す両矢印X
1は、ベルト位置ずれの許容範囲量を示すものであり、理解容易のために誇張して長く表している。
【0061】
図4に示す構成例の一具体例では、制御部100は、検知部80Aおよび80Bの検知信号を監視して、中間転写ベルト421のベルト位置のずれが許容範囲内であるか否かを判定する。そして、制御部100は、ベルト位置のずれが許容範囲内にない(ベルト端部が
図4中の両矢印X
1の範囲内にない)と判定した場合、レジストローラー対53aのずれ方向を特定し、レジストローラー対53aを、当該ずれ方向とは逆側に揺動させるように制御する。
【0062】
図5に、ベルト位置検知部80のさらに他の構成例および別の制御例を示す。
図5中に示す位置検知センサー81は、上述したラインセンサー54と同様の構成、すなわち光電変換素子をライン状に配置したセンサーである。
図5に示す例では、位置検知センサー81は、二次転写ニップにおける中間転写ベルト421の端部の片寄り、すなわち基準位置からのずれを検知する役割を担う。
【0063】
図5に示す例では、制御部100は、
図3で上述した制御を行うことができ、あるいは位置検知センサー81が検知する中間転写ベルト421の端部の基準位置に幅(すなわち許容範囲)を持たせることにより、
図4で上述した制御を行ってもよい。
【0064】
さらに、位置検知センサー81を、用紙位置検知部として、すなわち二次転写ニップにおける用紙Sの側端を検知するように配置してもよい。この場合の一具体例として、制御部100は、位置検知センサー81によって検知された用紙Sの側端の位置が予め定められた基準位置からずれた場合、中間転写ベルト421も同じだけずれたものとみなして、ベルト位置矯正のためのレジスト揺動制御を行う。この場合、制御部100は、位置検知センサー81によって検知された用紙Sの側端の位置を基準位置に戻すように、レジストローラー対53aの揺動(量および速度)を制御する。このように、二次転写ニップにおける用紙Sの側端を一定位置に保つようにする制御では、通常、レジストローラー対53aの揺動量は微小なものとなるが、かかる微小な揺動は、中間転写ベルト421の位置ずれの発生を抑制するための規制力として有効に作用する。
【0065】
図5で説明した構成において、上述した何れの制御を行うかを、図示しないユーザー設定画面等を通じてユーザーが設定できるようにするとよい。また、
図5で説明した構成において、上述した位置検知センサー81を、二次転写ニップにおける中間転写ベルト421の端部検出用、および二次転写ニップにおける用紙Sの側端検出用に2つ設けてもよく、この場合、上述した制御内容を組み合わせて実行することができる。
【0066】
次に、
図6、
図7(
図7A、7B)、および
図8を参照して、本実施の形態のベルト位置矯正のためのレジスト揺動制御の内容をより詳しく説明する。なお、
図6~
図8では
図4に示す構成を前提としているが、以下に説明する動作は、
図3または
図5に示す構成でも同様に適用される。
【0067】
図6および
図7Aは、用紙Sの搬送方向先端が二次転写ニップに入った後に中間転写ベルト421が各図中の矢印X
1方向(すなわち装置奥側)に位置ずれした状態を示している。このとき、用紙Sは、レジストローラー対53aで搬送されていることから、破線の矢印で示す方向(矢印Yと平行方向)に搬送される。ここで、レジストローラー対53aによる用紙Sの搬送速度は二次転写ニップによる搬送速度よりも少し速いため、用紙Sは、中間転写ベルト421を搬送方向に押すように作用する。他方、位置ずれが生じている中間転写ベルト421は、この例では装置奥(図中の上)方向の力を受けており、これら2つ(すなわち用紙Sおよび位置ずれ)の力が合成されることにより、
図7A中の矢印Tに示すように、図中の左斜め上方向に進行する。このように、用紙Sと中間転写ベルト421との進行方向が互いにずれている状態を放置すると、用紙S上に印刷されるトナー像も、曲がった画像として二次転写されることになる。さらに極端なケースでは、中間転写ベルト421の片寄りが過大化して、中間転写ベルト421が破損する虞がある。
【0068】
これに対して、本実施の形態では、
図6および
図7Bに示すように、中間転写ベルト421の位置ずれ方向(装置奥側すなわち矢印X
1方向)とは逆方向となる矢印X
2方向(装置手前側)にレジストローラー対53aを揺動させることで、位置ずれの力と逆方向の力を、用紙Sを介して中間転写ベルト421に伝達させる。この結果、
図7Bに示すように、中間転写ベルト421の位置ずれが解消(矯正)されるとともに、位置ずれの力と当該逆方向の力とが打ち消し合って、中間転写ベルト421が搬送方向Yと同方向に進行する。したがって、本実施の形態の制御を行うことにより、中間転写ベルト421の破損を防止することができる。
【0069】
上述した
図3~
図5の構成例において、制御部100の基本的な制御内容は、ベルト位置検知部80(または位置検知センサー81)により検知された中間転写ベルト421の端部位置を一定位置に保つように、レジストローラー対53aの揺動の量および速度を制御することである。言い換えると、制御部100は、ベルト位置検知部80(位置検知センサー81)の検知信号が予め定められた範囲の値になるように、レジストローラー対53aの揺動の態様(揺動量および揺動速度)を制御する。
【0070】
ところで、画像形成装置1の使用条件、例えば用紙Sの種類、画像形成装置1の周囲の温湿度、レジストローラー対53aの劣化度によっては、中間転写ベルト421の位置ずれ量が同一であっても、レジストローラー対53aの揺動態様(揺動量または揺動速度)を変える必要が発生する。
【0071】
例えば、一般には、用紙Sの剛度(坪量)が高いもの(すなわち厚みのある紙)ほど、レジストローラー対53aの揺動の力を中間転写ベルト421に伝達しやすい。また、同じ剛度の用紙Sであっても、温湿度環境によっては、用紙Sの実際の剛度(測定値)が変化する場合がある。具体的には、温度/湿度が高くなるほど紙が柔らかくなり、実際の剛度が低くなる。さらに、一般に、レジストローラー対53aの耐久が末期に近づくほど、用紙Sとの摩擦力が減少する(紙が滑りやすくなる)ため、結果として揺動の力を中間転写ベルト421に伝達しにくくなる。
【0072】
上記の事項を考慮すると、制御部100は、上述した使用条件に応じて、レジストローラー対53aの揺動態様(揺動量または揺動速度)を変えるように制御することが好ましい。
【0073】
一具体例では、制御部100は、印刷ジョブに実行時に、ユーザーにより設定された用紙Sの種類(坪量など)、記憶部72に格納されているレジストローラー対53aの使用履歴情報、機内の温湿度センサーにより検知された温湿度の値を取得する。そして、制御部100は、ベルト位置検知部80(または位置検知センサー81)によって中間転写ベルト421の位置ずれが発生した場合、取得されたこれらの情報を総合的に勘案した揺動量および揺動速度でレジストローラー対53a(ひいては用紙S)を揺動させる制御を行う。例えば、制御部100は、揺動の力を中間転写ベルト421に伝達しにくい条件の場合(例えば、用紙Sの坪量が小さい、温湿度が高い、レジストローラー対53aの耐久が進んでいる、などの場合)、レジストローラー対53aの揺動速度を速くするように制御する。
【0074】
図3~
図7に示す形態では、基本的に、ラインセンサー54による検知信号(すなわち用紙Sにおける二次転写ニップの上流側の側端の位置情報)を用いないで中間転写ベルト421の位置矯正のためのレジストローラー対53aの揺動制御を行う場合を説明した。他方、
図8に示すように、ラインセンサー54による用紙Sの側端の位置情報をも併用して、中間転写ベルト421の位置矯正のためのレジスト揺動制御を行ってもよい。言い換えると、制御部100は、ラインセンサー54の検知信号に基づいて、用紙Sの側端を目標位置に合わせるようにレジストローラー対53aを揺動させる用紙位置合わせの制御を併せて行うことができる。
【0075】
なお、
図8はベルト位置検知部80として
図4に示す構成を用いた例を示しているが、ベルト位置検知部80は、
図3または
図5で例示した他の構成としてもよい。
【0076】
図8に示す構成における一具体例では、制御部100は、中間転写ベルト421の端部の位置と、ラインセンサー54で検出された用紙Sの側端の位置が相対的に変わった場合に、レジスト揺動における揺動量(レジストローラー対53aの揺動速度等)を補正する。
【0077】
具体的に説明すると、ベルト位置検知部80により検知された中間転写ベルト421の位置ずれの程度が大きく、レジストローラー対53aの揺動を通じて中間転写ベルト421を軸方向に大きく動かすと、二次転写ニップで転写される画像と用紙Sの幅方向位置が合わなくなる虞がある。加えて、用紙Sは、例え同種且つ同ロットの紙であっても1枚毎に剛度等の特性にばらつきがあるため、中間転写ベルト421の端部の位置情報だけに基づいてレジストローラー対53aを揺動させると、個々の用紙Sのばらつきに対応したベルト位置補正を行うことができない。
【0078】
上記問題に対処するために、制御部100は、二次転写ニップの上流かつレジストローラー対53aの下流に配置されているラインセンサー54による検知結果を用いて、用紙Sの側端の位置を目標位置に合わせる用紙位置合わせのためのレジスト揺動の制御を、用紙Sが二次転写ニップに入った後も実施する。
【0079】
さらに、制御部100は、ベルト位置検知部80等の検知結果により中間転写ベルト421の端部の位置ずれが発生した場合、当該ベルト位置矯正のためのレジストローラー対53aの揺動制御において、ラインセンサー54により検知される用紙Sの側端の目標位置を、中間転写ベルト421の軸方向の位置が正しくなるように、通常の基準位置からずらす(軸方向に沿って変える)ように補正する。一具体例として、制御部100は、用紙Sの側端の目標位置を、まず中間転写ベルト421の位置ずれ方向とは逆方向の位置にずらし、続いて、中間転写ベルト421の端部の位置が正常位置に近づくに従って、用紙Sの側端の目標位置を通常の基準位置に近付けるように補正する。
【0080】
上述のように、中間転写ベルト421の位置補正のためのレジスト揺動の制御を、複数の位置情報(用紙側端とベルト端部の位置情報)および複数の基準位置を用いて、かつ、用紙Sの位置合わせの制御と併せて実施することで、二次転写ニップで転写される画像の幅方向位置と用紙Sの幅方向位置とをより良く合わせることができる。
【0081】
図8に示す例では、制御部100は、中間転写ベルト421の位置ずれ矯正のために、ラインセンサー54を通じて取得された用紙Sの側端の位置情報をも併用して、レジストローラー対53aの揺動動作(揺動の開始および停止)を行う場合について説明した。
【0082】
他の具体例として、制御部100は、ラインセンサー54によって検知された用紙Sの側端の情報に基づいて(用紙位置合わせのために)レジストローラー対53aの揺動動作を開始させ、ベルト位置検知部80等により検知された中間転写ベルト421の端部の位置情報に基づいてレジストローラー対53aの揺動動作を停止させてもよい。
【0083】
さらには、制御部100は、ベルト位置検知部80等により検知された中間転写ベルト421の端部の位置情報に基づいてレジストローラー対53aの揺動動作を開始させ、ラインセンサー54を通じて取得された用紙Sの側端の位置情報に基づいてレジストローラー対53aの揺動を停止させてもよい。
【0084】
上述した構成および制御内容は、適宜組み合わせることができる。
【0085】
以下、画像形成装置1における中間転写ベルト421の位置制御に関する動作の一例について説明する。
図9は、画像形成装置1における中間転写ベルト421の位置制御に関する動作例の一例を示す。
図9に示す処理は、
図8に示す構成を前提としており、用紙Sが長尺紙である場合の制御の一例であり、印刷ジョブの実行において、画像形成される用紙Sの一枚毎に実行される。
【0086】
印刷ジョブの実行時に、制御部100は、入力画像データやユーザー設定情報を取得して、用紙Sの搬送および当該用紙Sに印刷する画像(トナー像)の形成の処理を開始するように各部を制御する(ステップS100)。ここで、制御部100は、用紙Sの搬送方向先端が二次転写ニップに入るまでは、ラインセンサー54の検知結果に基づいて用紙Sの側端の目標位置を基準位置に保持させる通常のレジスト揺動制御を実行する。制御部100は、用紙Sの搬送方向先端が二次転写ニップに入ると、ステップS120に移行する。
【0087】
ステップS120において、制御部100は、ベルト位置検知部80(80Aおよび80B)の検知信号から中間転写ベルト421の端部の位置検知(位置情報の取得)の処理を開始する。続くステップS140において、制御部100は、中間転写ベルト421の端部位置にずれが発生したか否かを判定する。制御部100は、中間転写ベルト421の端部位置にずれが発生していない(ステップS140、NO)と判定した場合、中間転写ベルト421の位置検知(ステップS120)およびステップS140の判定を繰り返す。制御部100は、中間転写ベルト421の端部位置にずれが発生した(ステップS140、YES)と判定した場合、当該ずれの方向を特定してステップS160に移行する。
【0088】
ステップS160において、制御部100は、中間転写ベルト421がずれた方向と逆方向にレジストローラー対53aを揺動させるようにレジスト揺動の制御を実行する。このとき、制御部100は、上述のように、ラインセンサー54により検知される用紙Sの側端の目標位置を、通常の基準位置から上記の逆方向にずらすように補正する。かかる制御により、レジストローラー対53aに挟持されている用紙Sの揺動を通じて中間転写ベルト421が当該揺動方向に徐々に移動(従動)して、二次転写ニップにおける中間転写ベルト421の位置ずれが矯正される。制御部100は、ベルト位置検知部80の検知信号から中間転写ベルト421の端部位置のずれが補正(矯正)されたと判断した場合、ラインセンサー54の検知信号を監視して、用紙Sの側端が通常の基準位置になるようにレジストローラー対53aの揺動を制御する。
【0089】
ステップS180において、制御部100は、印刷ジョブが終了したか否かについて判定する。かかる判定の結果、印刷ジョブが終了していない場合(ステップS180、NO)、制御部100は、ステップS100に戻り、次の用紙Sの搬送および画像形成等の印刷処理を行う。他方、制御部100は、印刷ジョブが終了したと判定した場合(ステップS180、YES)、上述した一連の処理を終了する。
【0090】
このように、本実施の形態では、中間転写ベルト421の端部位置のずれに応じてレジストローラー対53aを揺動させ、該レジストローラー対53aに挟持されている用紙Sが揺動する方向に中間転写ベルト421が従動して、当該位置ずれが矯正される。したがって、本実施の形態によれば、用紙Sが二次転写ニップに搬送されている際の中間転写ベルト421の位置ずれを矯正することができる。
【0091】
上述の実施の形態では、制御部100は、二次転写ニップにおける中間転写ベルト421の端部位置(位置ずれの有無やずれ方向)を、ベルト位置検知部80(または位置検知センサー81)の検知結果から判断して、ベルト位置補正のための揺動制御を行う場合を説明した。他の例として、制御部100は、中間転写ベルト421を駆動する駆動源(モーター等)のトルクを検知した信号に基づいて、中間転写ベルト421の位置ずれの有無やずれ方向を判別して、ベルト位置補正のための揺動制御を行うこともできる。この場合、制御部100は、例えば上記モーター等のトルク変動量が少なくなる方向にレジストローラー対53aを揺動させることで、中間転写ベルト421の位置ずれを補正(矯正)することができる。
【0092】
上述した実施の形態では、二次転写ニップにおける中間転写ベルト421の端部の位置に基づいて、ベルト位置補正のためのレジストローラー対53aの揺動制御を行う構成とした。他方、用紙Sの剛度(坪量)が大きい、いわゆる超厚紙を使用する場合、レジストローラー対53aの揺動動作だけでは中間転写ベルト421の位置補正が十分に行えない場合が発生し得る。
【0093】
具体的には、本発明者らの実験結果では、坪量が53~300g/m2の範囲の用紙S(普通紙や厚紙)に対しては、レジストローラー対53aの揺動動作だけで中間転写ベルト421の位置ずれ矯正を問題なく行うことができた。他方、坪量が301g/m2以上の用紙S(超厚紙)を使用した場合、レジストローラー対53aの揺動動作だけでは中間転写ベルト421の位置補正(片寄りの矯正)を十分に行えない場合があることが判明した。具体的には、かかる超厚紙の先端が二次転写ニップに入ると、当該用紙Sの剛性によって二次転写ニップの形状が大きく変形して、かかる変形により中間転写ベルト421自体が装置の前奥方向に動いてしまうことが分かった。
【0094】
そこで、このような超厚紙を使用する場合、中間転写ベルト421を支持する複数の支持ローラー423のうちの一つに、中間転写ベルト421を軸方向に移動させる所謂ベルトステアリングの構成を付加するとよい。
図1に示す例では、中間転写ベルト421を支持する複数の支持ローラー423の内の最上部の支持ローラーを、ベルト位置矯正機構の一部をなすステアリングローラー423Sとして機能させる。ステアリングローラー423Sは、かかるローラー423Sの軸方向に往復移動可能に構成され、図示しないアクチュエーター等の駆動源に接続される構成とする。制御部100は、アクチュエーター等の駆動源に制御信号を出力してステアリングローラー423Sを軸方向に移動させることにより、中間転写ベルト421の幅方向位置を矯正する制御を行う。
【0095】
このように、レジストローラー対53aを揺動させて用紙Sを介しての中間転写ベルト421の位置ずれ補正と、中間転写ベルト421側のステアリング機構とを併用ないし組み合わせることで、中間転写ベルト421の位置ずれ矯正機能の強化を図ることができる。
【0096】
他方、用紙Sが薄紙の場合、一般に厚さが薄くなるほど紙がやわらかくなる(たわみやすくなる)ため、レジストローラー対53aの揺動による中間転写ベルト421の位置ずれ矯正の効果が低減する場合があり得る。本発明者らの実験結果では、坪量が52g/m2以下の用紙S(超薄紙)を使用した場合、レジストローラー対53aの揺動動作だけでは中間転写ベルト421の位置補正(片寄りの矯正)を十分に行えないことが分かった。他方、このような場合でも、ステアリングローラー423Sによる中間転写ベルト421側のステアリング機構と併用ないし組み合わせることで、中間転写ベルト421の位置ずれを矯正することができる。
【0097】
このように、ステアリングローラー423Sによる中間転写ベルト421側のステアリング機構を付加した場合、より幅広い紙種に対応して、レジストローラー対53aの揺動動作に基づいて中間転写ベルト421の位置ずれ矯正を行うことができる。
【0098】
なお、中間転写ベルト421側のステアリング機構を備えない機種の場合、制御部100は、用紙Sの種類に応じて、当該用紙Sの搬送方向先端が二次転写ニップに入った後のレジストローラー対53aの揺動の動作モード(揺動の有無)を切り替えるようにしてもよい。具体的には、用紙Sが上述したような超薄紙の場合、レジストローラー対53aの揺動を通じての中間転写ベルト421の位置ずれ(片寄り)の矯正を行うことが難しくなる。したがって、制御部100は、用紙Sの坪量が閾値(上記例では52g/m2)以下の場合、中間転写ベルト421の位置ずれ矯正のためのレジストローラー対53aの揺動制御を行わず、ラインセンサー54を用いて、用紙Sの側端の位置合わせのためのレジスト揺動制御を続行する。
【0099】
上述した実施の形態では、印刷する画像を中間転写ベルト421から用紙Sに二次転写する方式の画像形成装置について説明した。本実施の形態は、他にも、二次転写ローラー方式、あるいは印刷する画像を用紙Sに一次的に転写させる直接転写方式の画像形成装置(例えばモノクロプリンタなど)等にも応用することができる。
【0100】
例えば、二次転写ローラー方式の画像形成装置では、かかる二次転写ローラーのローラー径が該ローラー軸に沿って異なる場合に、用紙Sを搬送する際にアンバランス(斜行等)が生じ、かかる搬送のアンバランスにより画像ずれが発生する虞がある。このような二次転写ローラー方式の構成の場合も、二次転写ニップにおいて例えば用紙Sの側端の位置を検出することで、当該斜行を発生させないようにレジストローラー対53aを揺動させて、印刷される画像の品質を維持することができる。
【0101】
また、直接転写方式の画像形成装置として、
図10(
図10Aおよび10B)に示すように、転写ドラム423Dを用いた構成であってもよい。かかる構成の画像形成装置では、
図10A中の点線に示すように、同一ジョブ中に連続して搬送される複数の用紙S(長尺紙等)の両端が、常に転写ドラム423Dの同一位置に来る場合がある。
【0102】
この場合、転写ドラム423Dの当該領域に用紙Sの端部の跡(エッジ跡)が残り、次の印刷ジョブでより幅広の用紙Sが使用されると(
図10B参照)、用紙S上に形成された画像の端部が転写ドラム423Dのエッジ跡によって傷付きやすい問題がある。このような場合、制御部100は、
図10Aの状態からレジストローラー対53aを揺動させて画像転写位置(すなわち転写ドラム423Dに対する用紙Sの幅方向位置)を僅かにずらすように制御するとよい。このようなレジスト揺動の制御を行うことによって、転写ドラム423D上のエッジ跡の発生を防止または抑制することができる。
【0103】
上述した実施の形態では、二次転写ニップの上流側に設けられ制御部100により揺動制御される用紙搬送部材がレジストローラー対53aである場合を説明した。他の例として、用紙搬送部材は、例えば、レジストローラー対53a以外のローラー、用紙搬送ガイド、などが付加的または代替的に適用されることができる。
【0104】
上述した実施の形態では、用紙Sとして枚葉紙を使用する場合を説明した。他方、上記実施の形態は、ロール紙に対しても同様に適用することができる。
【0105】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0106】
1 画像形成装置
20 操作表示部
30 画像処理部
40 画像形成部
50 用紙搬送部
53a レジストローラー対(用紙搬送部材)
54 ラインセンサー
80 ベルト位置検知部
81 位置検知センサー
100 制御部
421 中間転写ベルト(転写体)
423B バックアップローラー
423S ステアリングローラー
424 二次転写ローラー