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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】易開封性容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20220531BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20220531BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20220531BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
B65D65/40 D
C08L23/00
C08L25/04
C08L53/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018048116
(22)【出願日】2018-03-15
(65)【公開番号】P2019156467
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】515107720
【氏名又は名称】MCPPイノベーション合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】日比野 美智子
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 直哉
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-361798(JP,A)
【文献】特開平09-095564(JP,A)
【文献】特開平06-041365(JP,A)
【文献】特開2015-042738(JP,A)
【文献】特開2015-174349(JP,A)
【文献】特開2009-279936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
C08L 1/00-101/14
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層及びヒートシール層を含む積層体からなり、該積層体のヒートシール層同志が接合されることにより形成された容器において、該ヒートシール層が、下記(A)~(C)成分を含み、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対し、(A)成分を45~70質量部、(B)成分を20~40質量部、(C)成分を3~20質量部含有する、熱可塑性樹脂組成物よりなることを特徴とする易開封性容器。
(A)成分:ポリオレフィン
(B)成分:ポリスチレン系樹脂
(C)成分:ビニル芳香族化合物を主体とする単量体の重合体ブロックPの少なくとも1個と、共役ジエンを主体とする単量体の重合体ブロックQの少なくとも1個とを有するブロック共重合体、並びに該ブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1つのブロック共重合体よりなり、重合体ブロックQを構成する単量体がブタジエン単独であり、該ブロック共重合体に含まれるジブロック共重合体の合計量が20質量%以上であるスチレン系熱可塑性エラストマー
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂組成物が、(A)成分として、密度が0.860~0.930g/cmのポリエチレンを含む、請求項1に記載の易開封性容器。
【請求項3】
前記(C)成分のスチレン含有量が8~40質量%である、請求項1又は2に記載の易開封性容器。
【請求項4】
前記容器が袋である、請求項1乃至のいずれか1項に記載の易開封性容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、ヒートシール性及び易開封性に優れた易開封性容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、飲料、薬品、化粧品、医療器具等の包装手法として、アルミ箔、紙、各種熱可塑性樹脂からなる基材層にヒートシールする層が積層され、ヒートシール層同士をヒートシールし、その後開封(剥離)する際に容易に開封(剥離)可能な易開封性容器を用いるものがあり、これらは、ピロー包装、スナック包装、スティック包装、三方包装、四方包装等のフィルム包装などに適用されている。このような形態の包装物は、内容物を取り出す際に包装体の両面を引き剥がす必要があることから、包装体から内容物の漏洩等がないことに加えて、内容物を取り出す際には、包装体のシール部分が容易に剥離できる程度のヒートシール強度を有していること、即ち、易開封性であることが必要とされる。
【0003】
このような包装体においては開封箇所を含めた全シール部分が易開封シールとなるため、易開封性と密封性の高度な制御が必要となる。例えばフィルム包装体は剛性容器よりも内外圧によって変形しやすく、包装、流通、保管時に破袋が生じやすいのでシール部の耐圧性が求められる。
【0004】
ヒートシール層のイージーピール機構としては界面剥離タイプと層間剥離タイプと凝集剥離タイプの3種類があるが、フィルム包装体の面々シールにおいては上記のように安定したシール強度が求められことから、一般的にシール安定性に優れると言われている凝集剥離タイプのシーラントが主に用いられている。
【0005】
凝集剥離タイプの包装体は、ヒートシール層と必要に応じて設けられる保持層と基材で形成され、ヒートシール層同士をヒートシールすることで、ヒートシール層同士が熱融着し、剥離時にはポリマーブレンドした樹脂の界面でヒートシール層自体を凝集破壊しながら剥離していく。従って、ヒートシール層がシール性と剥離性の両方の機能を持つことになる。
【0006】
従来、面々シール可能なヒートシール層形成用樹脂組成物としては、例えば、特許文献1、2に記載されているようなポリオレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマー、ポリスチレン系樹脂を所定の割合でブレンドしたものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-55250号公報
【文献】特開2015-174349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
面々シール可能な凝集剥離タイプの易剥離性シーラントとして用いられるフィルムには、凝集剥離による易開封性に優れることに加えて、ヒートシール強度が十分に高く、かつ剥離外観等に優れることが要求される。
【0009】
しかしながら、従来において、このような要求特性をすべて満たす易開封性フィルムは提供されておらず、例えば、特許文献1、2に記載の樹脂組成物からなる易剥離性フィルムは、凝集剥離による易開封性が十分ではなく、剥離強度に関しても不安定であった。具体的には、高温のヒートシール温度で、ある程度高い剥離強度を有するものであったとしても、剥離後の糸引きなどで剥離外観が悪化する、というように、剥離強度と剥離外観の両立が出来なかった。
【0010】
本発明は、高温のヒートシール温度でのヒートシール強度を維持しつつ、易開封性に優れ、かつ剥離外観等に優れたヒートシール層有する易開封性容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ポリオレフィンと、ポリスチレン系樹脂と、ビニル芳香族化合物に由来する少なくとも1個の重合体ブロックPと、共役ジエンに由来する少なくとも1個の重合体ブロックQとを有するブロック共重合体、並びに該ブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1つのブロック共重合体よりなり、該ブロック共重合体に含まれるジブロック共重合体の合計量が20質量%以上であるスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む樹脂組成物からなる易剥離性フィルムが面々シール可能であり、凝集剥離による易開封性を有し、ヒートシール強度が十分に高く、易開封性、剥離外観等に優れ、安価かつ簡便にヒートシール層を形成することができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0012】
[1] 基材層及びヒートシール層を含む積層体からなり、該積層体のヒートシール層同志が接合されることにより形成された容器において、該ヒートシール層が、下記(A)~(C)成分を含む熱可塑性樹脂組成物よりなることを特徴とする易開封性容器。
(A)成分:ポリオレフィン
(B)成分:ポリスチレン系樹脂
(C)成分:ビニル芳香族化合物に由来する少なくとも1個の重合体ブロックPと、共役ジエンに由来する少なくとも1個の重合体ブロックQとを有するブロック共重合体、並びに該ブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1つのブロック共重合体よりなり、該ブロック共重合体に含まれるジブロック共重合体の合計量が20質量%以上であるスチレン系熱可塑性エラストマー
【0013】
[2] 前記熱可塑性樹脂組成物が、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対し、(A)成分を45~70質量部、(B)成分を20~40質量部、(C)成分を3~20質量部含有する、[1]に記載の易開封性容器。
【0014】
[3] 前記熱可塑性樹脂組成物が、(A)成分として、密度が0.860~0.930g/cmのポリエチレンを含む、[1]又は[2]に記載の易開封性容器。
【0015】
[4] 前記(C)成分のスチレン含有量が8~40質量%である、[1]乃至[3]のいずれかに記載の易開封性容器。
【0016】
[5] 前記容器が袋である、[1]乃至[4]のいずれかに記載の易開封性容器。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高温のヒートシール温度でのヒートシール強度を維持しつつ、易開封性に優れ、かつ剥離外観等に優れたヒートシール層有する易開封性容器が提供される。本発明の易開封性容器を用いて、易開封性に優れ、剥離外観等にも優れた商品価値の高いフィルム包装体を高い生産性で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
なお、以下において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
【0019】
また、本発明において、樹脂のメルトフローレート(MFR)、密度、硬度は、以下のようにして測定された値である。
【0020】
<MFR>
(A)成分のうち、ポリエチレン系樹脂のMFRはJIS K7210に従い、温度190℃、荷重2.16kg、10分の条件で測定される。ポリプロピレン系樹脂のMFRは、JIS K7210またはASTM D1238に従い、温度230℃、荷重2.16kg、10分の条件で測定される。
(B)成分のMFRはISO 1133に従い、温度200℃、荷重5kg、10分の条件で測定される。
(C)成分のMFRはISO 1133に従い、温度200℃、荷重5kg、10分の条件で測定される。
【0021】
<密度>
(A)成分の密度はJIS K7112またはASTM D1505に従い、水中置換法で測定される。
(B)成分、(C)成分の密度はISO 1183に従い測定される。
【0022】
<硬度>
(C)成分のショアA硬度は、ISO 7619により測定される。
【0023】
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本発明の易開封性容器は、下記(A)~(C)成分を含む熱可塑性樹脂組成物(以下、「本発明の熱可塑性樹脂組成物」と称す場合がある。)よりなることを特徴とする。
(A)成分:ポリオレフィン
(B)成分:ポリスチレン系樹脂
(C)成分:ビニル芳香族化合物に由来する少なくとも1個の重合体ブロックPと、共役ジエンに由来する少なくとも1個の重合体ブロックQとを有するブロック共重合体、並びに該ブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1つのブロック共重合体よりなり、該ブロック共重合体に含まれるジブロック共重合体の合計量が20質量%以上であるスチレン系熱可塑性エラストマー
【0024】
[(A)成分]
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる(A)成分はポリオレフィンである。
【0025】
(A)成分として用いることのできるポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1等の炭素数2~20程度のオレフィンの単独重合体又は共重合体、或いはこれらのオレフィンと共重合性ビニル単量体、例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸等の不飽和有機酸又はその無水物等との共重合体が挙げられる。なお、オレフィンと共重合性ビニル単量体との共重合体において、オレフィン単位の含有量は50質量%以上である。また、ここで、共重合体とはランダム、ブロック及びグラフト共重合体を包含する。
【0026】
(A)成分として用いることのできるポリオレフィンとしてはより具体的には、高圧法、中圧法又は低圧法により製造されたポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン・プロピレンブロック共重合体、プロピレン・ブテン-1ランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン-1ランダム共重合体、プロピレンと炭素数5~12のα-オレフィンと場合により更にエチレン又はブテン-1とからなる共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらのうち、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(エチレン単位の含有量が50質量%未満であるもの)等が好ましい。なお、「ポリプロピレン」は構成単位としてプロピレン単位を50質量%より多く含有するものを意味し、また、「ポリエチレン」は構成単位としてエチレン単位を50質量%より多く含有するものを意味する。
(A)成分としては成形性の観点から、特にポリエチレンが好ましい。
【0027】
(A)成分として用いることのできるポリプロピレンとしては、成形性の観点から、MFR(230℃、荷重2.16kg)が1.0~60g/10分であることが好ましく、2.0~40g/10分であることがより好ましい。
【0028】
(A)成分として好適なポリエチレン系樹脂は、MFR(190℃、荷重2.16kg)が0.05~100g/10分、好ましくは1~50g/10分で、密度0.850~0.950g/cmのエチレン単独重合体又はエチレン・α-オレフィン共重合体である。エチレン・α-オレフィン共重合体を構成するα-オレフィンは、通常炭素数3~20の環状分子を含まないα-オレフィン、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-オクタデセン等であり、それぞれ単独或いは2種以上の混合物からなる。また、エチレン・α-オレフィン共重合体は共重合成分としてビニルエステル(酢酸ビニル等)、不飽和カルボン酸又はそのエステル(アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル等)等を使用したものでもよい。
【0029】
ポリエチレン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、低結晶性エチレン・1-ブテンランダム共重合体(EBM)、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0030】
これらのうち特に、(A)成分のポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレンが好ましい。特に、高圧法低密度ポリエチレンは、成形加工性の安定性や剥離強度の安定性を高めると共に、剥離外観を良好なものとするために有効である。なお、低密度ポリエチレンとしては、密度が0.860~0.930g/cmのものが好ましく、0.880~0.930g/cmのものがより好ましく、特に0.910g/cm以上0.930g/cm未満のものが好ましい。
【0031】
(A)成分で使用するポリオレフィンは、1種類のポリオレフィンを単独で用いても、2種類以上のポリオレフィンを組み合わせて用いてもよいが、1種類のポリオレフィン単独で用いる、若しくは2種類のポリオレフィンを組み合わせて用いることが好ましい。(A)成分としては成形性の観点から、より好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレンであり、特に好ましくはポリエチレンを単独で用いる、若しくはポリエチレンとポリプロピレンを併用することである。
【0032】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、(A)成分の含有量は、(A)成分と後述の(B)成分、及び(C)成分との合計100質量部に対して、好ましくは45~70質量部である。(A)成分は融着成分であり、(A)成分の含有量が上記下限よりより少ない場合、ヒートシール強度が十分でない傾向があり、上記上限より多いと、易開封性が低下する傾向にある。以上の観点から、(A)成分の含有量は、(A)成分と後述の(B)成分及び(C)成分との合計100質量部に対して、より好ましくは50質量部以上であり、また、より好ましくは65量部以下である。
【0033】
[(B)成分]
(B)成分のポリスチレン系樹脂とは、下記一般式(I)で示される構造単位を樹脂中に少なくとも50質量%以上含有する樹脂(ただし、後述の(C)成分のスチレン系熱可塑性エラストマーを除く。)であり、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン等のうちの1種又は2種以上を好ましく用いることができる。
【0034】
【化1】
【0035】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Zはハロゲン原子又はメチル基を表し、pは0~3の整数である。)
【0036】
(B)成分のポリスチレン系樹脂のMFR(200℃、荷重5kg)は、成形加工性の観点から0.1~50g/10分であることが好ましく、1~30g/10分であることがより好ましい。
【0037】
また、(B)成分のポリスチレン系樹脂の密度は、(A)成分との相溶性の観点から、0.93~1.10g/cmであることが好ましく、0.95~1.07g/cmであることがより好ましい。
【0038】
ポリスチレン系樹脂は市販品として入手することができる。例えば、ポリスチレン系樹脂の市販品としては、PSジャパン社製 PSJ-ポリスチレン GPPSシリーズ、PSJ-ポリスチレン HIPSシリーズ等が挙げられる。
【0039】
これら(B)成分は、1種のみを用いてもよく、共重合成分組成や物性の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、(B)成分の含有量は、前述の(A)成分と(B)成分及び後述の(C)成分との合計100質量部に対して好ましくは20~40質量部である。(B)成分は凝集剥離性(易開封性)を担う凝集剥離成分であり、成分(B)の含有量が上記下限より少ない場合、易開封性が低下する傾向があり、上記上限より多いと、ヒートシール強度が十分でない傾向がある。以上の観点から、成分(B)の含有量は、前述の(A)成分と成分(B)及び後述の(C)成分との合計100質量部に対して、より好ましくは25質量部以上であり、また、より好ましくは35質量部以下である。
【0041】
[(C)成分]
(C)成分のスチレン系熱可塑性エラストマーは、ビニル芳香族化合物に由来する少なくとも1個の重合体ブロックPと、共役ジエンに由来する少なくとも1個の重合体ブロックQとを有するブロック共重合体、並びに該ブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体(水添ブロック共重合体)よりなる群から選ばれる少なくとも1つのブロック共重合体よりなり、該ブロック共重合体に含まれるジブロック共重合体の合計量が20質量%以上であるものである。なお、ここで、ジブロック共重合体は水素添加されたジブロック共重合体を包含するものである。
【0042】
(C)成分の重合体ブロックPは、ビニル芳香族化合物を主体とする単量体の重合体ブロックであり、一方、重合体ブロックQは、共役ジエンを主体とする単量体の重合体ブロックである。ここで「主体とする」とは、50モル%以上であることを意味する。
【0043】
重合体ブロックPを構成する単量体のビニル芳香族化合物は限定されないが、スチレン、α-メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン誘導体が好ましい。これらの中でも、スチレンを主体とすることが好ましい。なお、当該重合体ブロックPには、ビニル芳香族化合物以外の単量体が原料として含まれていてもよい。
【0044】
重合体ブロックQを構成する単量体は、好ましくはブタジエン単独、イソプレン単独、ブタジエン及びイソプレンのいずれかである。なお、重合体ブロックQには、ブタジエン及びイソプレン以外の単量体が原料として含まれていてもよい。
【0045】
また、重合体ブロックQは、重合後に有する二重結合を水素添加した水素添加誘導体、即ち水添ブロック共重合体であってもよい。重合体ブロックQの水素添加率は限定されないが、50~100質量%が好ましく、80~100質量%が好ましい。重合体ブロックQを前記範囲で水素添加することにより、熱安定性が向上する傾向にある。なお、重合体ブロックPが、原料としてジエン成分を用いた場合についても同様である。水素添加率は、13C-NMRにより測定することができる。
【0046】
(C)成分のスチレン系熱可塑性エラストマーはスチレン含有量が8~45質量%であることが好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量が上記下限以上であるとフィルムのハンドリング性が良好となる傾向があり、上記上限以下であると、(A)成分との相溶性が良好となる傾向がある。スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量は、より好ましくは10~40質量%である。(C)成分における「スチレン含有量」とはスチレン単位の含有量のみならず、スチレン単位の芳香環に水素原子以外の原子又は原子団が置換した構成単位の含有量も含む意味で用いられる。スチレン含有量は13C-NMRにより測定することができる。
【0047】
(C)成分のスチレン系熱可塑性エラストマーにおける前記の重合体ブロックP及び重合体ブロックQを有する共重合体の化学構造は、直鎖状、分岐状、放射状等の何れであってもよいが、下記式(1)又は(2)で表されるブロック共重合体であることが好ましい。
【0048】
さらに、下記式(1)又は(2)で表されるブロック共重合体は、水素添加誘導体(水添ブロック共重合体)であることが好ましい。下記式(1)又は(2)で表される共重合体が水添ブロック共重合体であると、本発明の易剥離性フィルムの接着性が良好となる傾向にある。
P-(Q-P) (1)
(P-Q) (2)
(式中Pは重合体ブロックPを、Qは重合体ブロックQをそれぞれ表し、mは1~5の整数を表し、nは2~5の整数を表す。)
【0049】
式(1)又は(2)においてm及びnは、ゴム的高分子体としての秩序-無秩序転移温度を下げる点では大きい方がよいが、製造のしやすさ及びコストの点では小さい方がよい。
【0050】
本発明で用いる(C)成分のスチレン系熱可塑性エラストマーは、上記式(1),(2)で表されるブロック共重合体のうち、下記式(2A)で表される重合体ブロックPと重合体ブロックQとを各々1個ずつ有するジブロック体或いはその水素添加物(水添ジブロック体)を20質量%以上含むことを特徴とする。
P-Q (2A)
スチレン系熱可塑性エラストマーのブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体中のジブロック体及び/又は水添ジブロック体の含有量が20質量%以上であることにより上述のポリオレフィンとポリスチレン系樹脂との相溶化効果が良好であり、易剥離強度がヒートシール温度に依存せず、安定的に得ることができる。この観点から、スチレン系熱可塑性エラストマーを構成するブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体中のジブロック体及び/又は水添ジブロック体の割合は、23質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。ジブロック体及び/又は水添ジブロック体の割合の上限は100質量%である。
【0051】
なお、スチレン系熱可塑性エラストマーのブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体(以下、まとめて「(水添)ブロック共重合体」と記す)中のジブロック体及び/又は水添ジブロック体以外の(水添)ブロック共重合体としては、ゴム弾性に優れることから、式(2)で表される(水添)ブロック共重合体よりも式(1)で表される(水添)ブロック共重合体の方が好ましく、mが3以下である式(1)で表される(水添)ブロック共重合体がより好ましく、mが2以下である式(1)で表される(水添)ブロック共重合体が更に好ましい。
【0052】
(C)成分のスチレン系熱可塑性エラストマーの製造方法は、上述の構造と物性が得られればどのような方法でもよく、特に限定されない。具体的には、例えば、リチウム触媒等を用いて不活性溶媒中でブロック重合を行うことによって得ることができる。この際、ジブロック体を上記の割合で製造するには、トリブロック体及びジブロック体をそれぞれ上述の触媒等を用いて重合し、その後、ドライブレンドまたは溶融混練を行い、適宜必要な割合でブレンドを行えばよい。また、ブロック共重合体の水素添加(水添)は、不活性溶媒中で水添触媒の存在下で行う等の公知の方法を採用することができる。
【0053】
(C)成分のスチレン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量は限定されないが、通常250,000以下、好ましくは230,000以下、より好ましくは210,000以下、更に好ましくは200,000以下である。また、スチレン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量は限定されないが、通常20,000以上、好ましくは40,000以上、より好ましくは50,000以上である。スチレン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量が前記内であると、成形性が良好となる傾向にある。なお、(C)成分スチレン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと略記する場合がある)により測定したポリスチレン換算の値である。
【0054】
(C)成分のMFR(200℃、荷重5kg)は限定されないが、好ましくは0.01~100g/10分、より好ましくは0.03~90g/10分であり、更に好ましくは0.05~80g/10分である。(C)成分のMFRが前記範囲内であると、成形性が良好となる傾向にある。
【0055】
また、(C)成分の密度は、フィルムのブロッキング性の観点から好ましくは0.86~0.94g/cmであり、より好ましくは0.87~0.93g/cmであり、更に好ましくは0.88~0.92g/cmである。
【0056】
更に(C)成分の硬度は特に制限されないが、硬度ショアA(JIS K6253)で、好ましくは20以上であり、より好ましくは25以上であり、更に好ましくは30以上であり、特に好ましくは35以上であり、一方、好ましくは95以下であり、より好ましくは90以下であり、更に好ましくは85以下である。(C)成分の硬度が上記範囲内であると、柔軟性が良好となる傾向にある。
【0057】
本発明の(C)成分として用いるスチレン系熱可塑性エラストマーは、市販品を用いることも可能である。市販品としては例えば、クレイトンポリマー社製「KRATON」シリーズ、旭化成ケミカルズ社製「タフテック(登録商標)」シリーズ等から該当するものを適宜選択して用いることができる。
【0058】
上記(C)成分のスチレン系熱可塑性エラストマーは、1種のみを用いてもよく、共重合成分組成や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0059】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、(C)成分の含有量は、前述の(A)成分及び成分(B)及び(C)成分との合計100質量部に対して好ましくは3~20質量部である。(C)成分は、良好な剥離外観を担う成分であり、(C)成分の含有量が上記下限よりも少ないと、剥離外観が悪化する傾向があり、上記上限より多いと、相対的に他の成分の含有量が少なくなって、ヒートシール強度が高くなりすぎ、易開封性が損なわれる傾向にある。以上の観点から、(C)成分の含有量は、前述の(A)成分及び成分(B)と(C)成分との合計100質量部に対して、より好ましくは4質量部以上であり、また、より好ましくは17質量部以下である。
【0060】
[その他の成分]
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、上記の各成分に加え、本発明の効果を著しく損なわない範囲で各種目的に応じ他の任意の添加剤や樹脂等(以下、これらを「その他の成分」と称す。)を配合することができる。その他の成分は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
【0061】
添加剤としては、一般的にポリオレフィンに用いられる補助添加成分、具体的には、プロセス油、中和剤、加工助剤、可塑剤、結晶核剤、衝撃改良剤、難燃剤、難燃助剤、架橋剤、架橋助剤、帯電防止剤、滑剤、充填材、相溶化剤、耐熱安定剤、耐候安定剤(酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤など)、防曇剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、抗菌剤、カーボンブラック、着色剤(顔料、染料など)等が挙げられる。
【0062】
このうち、難燃剤は、ハロゲン系難燃剤と非ハロゲン系難燃剤に大別されるが、非ハロゲン系難燃剤が好ましく、具体的には、金属水酸化物、リン系難燃剤、窒素含有化合物(メラミン系、グアニジン系)難燃剤及び無機系化合物(硼酸塩、モリブデン化合物)難燃剤等が挙げられる。
【0063】
耐熱安定剤及び酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物等が挙げられる。
【0064】
充填材は、有機充填材と無機充填材に大別される。有機充填材としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然由来のポリマーやこれらの変性品等が挙げられる。また、無機充填材としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維等が挙げられる。
【0065】
これらの添加剤を用いる場合、その含有量は限定されないが、本発明の樹脂組成物中の含有量として、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、また、通常5質量%以下、好ましくは2質量%以下であることが望ましい。
【0066】
その他の成分として用いる樹脂としては、具体的には、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ナイロン66、ナイロン11等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、及びポリメチルメタクリレート系樹脂等のアクリル/メタクリル系樹脂等を挙げることができる。
【0067】
本発明の熱可塑性樹脂組成物がこれらのその他の樹脂を含有する場合、その含有量は、(A)成分、成分(B)及び(C)成分の合計100質量部に対して30質量部以下であることが好ましい。
【0068】
[製造方法]
(A)成分、成分(B)及び(C)成分と、必要に応じて添加されるその他の成分を用いて、本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造するための配合方法は、溶融法、溶液法、懸濁分散法等があり、特に限定されない。実用的には溶融混練法が好ましい。
【0069】
溶融混練のための具体的な方法としては、粉状又は粒状の(A)~(C)成分、並びに必要に応じて添加されるその他の成分を、所定の配合割合にて、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を用いて均一に混合した後、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、単軸又は二軸等の多軸混練押出機等の通常の混練機を用いて混練する方法が例示できる。
【0070】
各成分の溶融混練の温度は、通常100~300℃の範囲、好ましくは120~280℃の範囲、特に好ましくは150~250℃の範囲である。さらに、各成分の混練順序及び方法は、特に限定されるものではなく、(A)~(C)成分と必要に応じて用いられるその他の成分とを一括して混練する方法、又は(A)~(C)成分と必要に応じて用いられるその他の成分の一部を予め混練しておき、その後残りの成分を混練する方法でもよい。
【0071】
〔易開封性容器〕
本発明の易開封性容器は、基材層と、上述の本発明の熱可塑性樹脂組成物よりなるヒートシール層を積層してなる積層体(以下、「本発明の積層体」と称す場合がある。)により形成される。この積層体の基材層の材料としては、アルミ箔、紙、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂フィルム、例えば延伸ポリエステルフィルム、延伸ナイロンフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂フィルム、例えば延伸ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、シリカ蒸着延伸ポリエステルフィルム、アルミ蒸着延伸ポリエステルフィルム、その他バリア性フィルム等、一般に軟包装材の基材として使用されるものであれば適用可能であり、内容物や用途によって、適宜最適な基材を選定して用いることができる。
【0072】
本発明の積層体の製造方法としては、この基材層に上述の本発明の熱可塑性樹脂組成物を押出ラミネートすることによって製造する方法、或いは、上述の本発明の熱可塑性樹脂組成物をインフレーション法、Tダイ法等のフィルム成形法により製造し、上記各種基材とドライラミネーション、サンドラミネーション等の公知の手法でラミネートすることにより製造する方法、或いは、各種基材と上述の本発明の熱可塑性樹脂組成物を共押出インフレーション、共押出キャスト成形することにより製造する方法などが挙げられる。
【0073】
本発明の積層体において、本発明の熱可塑性樹脂組成物よりなるヒートシール層の厚さは、通常2~100μm、特に5~30μmであることが好ましい。厚さが上記範囲内であることが、十分なヒートシール強度を得る観点、凝集剥離性を得る観点、フィルム包装体等の易開封性容器への適用において、適切な厚さ範囲とする観点等から好ましい。
一方、基材層の厚さは、基材層の構成材料や易開封性容器の用途、形状等によっても異なり特に制限はないが、通常10~200μm程度である。
【0074】
本発明の積層体は、ヒートシール層と基材層との間に保持層としてポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂層を介在させた積層構造とすることもできる。この場合、保持層の厚さは、通常5~500μm、特に10~100μm程度である。
【0075】
ヒートシール層と基材層との間に保持層を介在させた積層体を製造するには、上述の本発明の熱可塑性樹脂組成物をインフレーション法、Tダイ法等のフィルム成形法により製造する際に、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂よりなる保持層と積層して成形したり、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂との共押出ラミネート成形で保持層とヒートシール層とを積層成形した後、更に基材を貼り合せる方法や、アルミ箔、紙、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等の各種熱可塑性樹脂からなる基材層にヒートシール層を形成する本発明の熱可塑性樹脂組成物と保持層用のポリオレフィン系樹脂を押出ラミネート成形することによってラミネートフィルムを形成することにより製造する方法が挙げられる。
【0076】
このようにして得られるヒートシール層/基材層或いはヒートシール層/保持層/基材層よりなるシート状又はフィルム状の本発明の積層体を用いて易開封性容器とするには、例えば、真空成形、圧空成形等により各種物品を収容するための凹部を形成し、該凹部の外周縁部に設けた鍔部に、本発明の積層体よりなる平板状のシートのヒートシール層をヒートシールして接合することによりシールパック包装容器として形成することができる。また、本発明の積層体をヒートシール層が内側となるように袋状に成形し、そのヒートシール層同士を開口部を加熱加圧してヒートシールすることにより内容物の密封に用いることができる。
【0077】
この際のヒートシール条件としては、本発明の熱可塑性樹脂組成物の主成分となる(A)成分の融解ピーク温度に応じて、成分(A)の融点ないし融点より20℃程度高い温度、例えば100~200℃程度で、圧力0.1~0.3MPa、ヒートシール時間1~10秒程度とすることが好ましい。
【実施例
【0078】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0079】
[原料]
以下の実施例及び比較例で用いた原料は、次の通りである。
【0080】
<(A)成分:ポリオレフィン>
A-1:低密度ポリエチレン(密度(JIS K7112):0.919g/cm、MFR(190℃、2.16kg(JIS K7210)):7g/10分)
A-2:ポリプロピレン系樹脂(密度(ASTM D1505):0.874g/cm、MFR(230℃、2.16kg(ASTM D1238)):3g/10分)
【0081】
<(B)成分:ポリスチレン系樹脂>
B-1:PSジャパン社製 汎用ポリスチレン(GPPS)「679K29」(MFR(200℃、5kg(ISO 1133)):18g/10分、密度(ISO 1183):1.05g/cm、スチレン含有量:100質量%))
B-2:PSジャパン社製 耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)「HT478」(MFR(200℃、5kg(ISO 1133)):3.0g/10分、密度(ISO 1183):1.04g/cm
【0082】
<(C)成分:スチレン系熱可塑性エラストマー>
C-1:クレイトンポリマー社製 スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン-ブタジエン-スチレン水添ブロック共重合体)「KRATON G1657MU」(スチレン含有量:13質量%、密度(ISO 1183):0.91/cm、MFR(200℃、5kg(ISO 1133)):8g/10分、硬度ショアA(ISO 7619):47、ジブロック体及び/又は水添ジブロック体含有量:30質量%、数平均分子量:1.09×10、水素添加率:90質量%以上)、
C-2:クレイトンポリマー社製 スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン-ブタジエン-スチレン水添ブロック共重合体)「KRATON G1726MU」(スチレン含有量:30質量%、密度(ISO 1183):0.91/cm、MFR(200℃、5kg(ISO 1133)):65g/10分、硬度ショアA(ISO 7619):70、ジブロック体及び/又は水添ジブロック体含有量:70質量%、数平均分子量:1.45×10、水素添加率:90質量%以上)
【0083】
[実施例1~5、比較例1]
[積層体の作製]
易開封性(イージーピール性)を確認するために、各原料成分を表-1に示す配合割合で二軸押出機を用い、160~200℃で混練し、三層フィルム成形機を用い、ポリエチレン系樹脂(日本ポリエチレン社製 「ノバテック(登録商標) SF8402」)と、成形温度200~220℃でそれぞれ共押出を行うことで、厚さ50μm(ヒートシール層:20μm/ポリエチレン系樹脂層:30μm)の積層体を作製した。
【0084】
[評価用フィルムの作製]
評価用フィルムの作製に用いたPETフィルムとしては、東洋紡社製「東洋紡ポリエステルフィルム」(厚さ25μm)を用い、接着剤としては、東洋モートン社製二液硬化型ポリウレタン系接着剤の主剤「TM329」と硬化剤「CAT-8B」を酢酸エチルで希釈したものを用いた。
PETフィルムの一方の面にコーター(テスター産業製)を用いて接着剤を塗布し、溶剤を蒸発させた後、この接着剤塗布面に上記で作製した積層体のポリエチレン系樹脂層のヒートシール層が積層されていない面を張り合わせ、40℃のオーブン中にて1昼夜乾燥させて、各々評価フィルムとした。
【0085】
[ヒートシール強度の評価]
各評価用フィルムを50mm×100mmの大きさに切り出し、2枚の評価用フィルムのヒートシール層同士が合わさるように置いた。ヒートシーラー((有)佐川製作所製)を用いて以下の条件でヒートシールを行って、評価用フィルムの長さ方向の中央部分を10mmの幅にヒートシールした。
圧力:0.2MPa
時間:1.0秒
シールバー:10mm
温度:120~160℃
上記ヒートシールした積層体から幅15mm、長さ50mmの試験片を5片作成した。これらの試験片について23℃の温度および50%の相対湿度の雰囲気下で引張速度300mm/minで180度剥離させた時の剥離強度の平均値を測定し、試験片5片の平均値をもってヒートシール強度を評価した。結果を表-1に示した。このヒートシール強度は1~20N/15mm程度であることが易開封性とヒートシール強度との両立の面で好ましい。
【0086】
[剥離外観]
上記の160℃でのヒートシール強度測定の際に、剥離外観を目視にて観察し、下記の基準で評価した。結果を表-1に示す。
○:剥離した際に、糸引きがなく、剥離外観が良好である。
△:剥離した際に、若干の糸引きがあるが、剥離外観が良好である。
×:剥離した際に、糸引きが発生しかつ滑らかな剥離外観が得られない。
【0087】
【表1】
【0088】
[評価結果]
表-1に示すように、(C)成分であるジブロック体(及び/又は水添ジブロック体)含有量が20質量%以上のスチレン系熱可塑性エラストマーを用いた本発明の熱可塑性樹脂組成物よりなる易開封性容器に該当する実施例1~5は、高温のヒートシール温度において易開封性とヒートシール強度との両立が可能なヒートシール強度を得ることができると共に、剥離時における剥離外観が優れる。一方、(C)成分を用いていない比較例1は剥離時において良好な剥離外観が得られない。