(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】押出しラミネート積層用接着性樹脂組成物及び積層体
(51)【国際特許分類】
C09J 123/26 20060101AFI20220531BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20220531BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220531BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220531BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
C09J123/26
C09J11/04
C09J11/06
B32B27/00 D
B32B15/08 A
(21)【出願番号】P 2018052934
(22)【出願日】2018-03-20
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】上野 真寛
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-195924(JP,A)
【文献】特開2003-292694(JP,A)
【文献】特開2003-064226(JP,A)
【文献】特開2016-028133(JP,A)
【文献】特開2017-122194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a1)メルトフローレートが0.1~50g/10分であるポリエチレンと、(B)分子内にエポキシ基を2個以上有し、分子量が3000以下であるエポキシ化合物と、(C)塩基性化合物とを含み、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計に対する(B)成分の含量が0.01~5重量%であり、(C)成分の含量が0.005~0.1重量%であ
り、(C)塩基性化合物がアルカリ金属、アルカリ土類金属、または遷移金属の有機酸塩または無機塩である押出しラミネート積層用接着性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)ポリエチレンが(a2)密度が0.880~0.945g/cm
3であることを特徴とする請求項
1に記載の押出しラミネート積層用接着性樹脂組成物。
【請求項3】
(B)エポキシ化合物が、エポキシ化植物油であることを特徴とする請求項1~
2のいずれか一項に記載の押出しラミネート積層用接着性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の押出しラミネート積層用接着性樹脂組成物からなる層と、基材の少なくとも2層を含む積層体
であって、前記基材が前記押出しラミネート積層用接着性樹脂組成物からなる層に直接接触することを特徴とする積層体。
【請求項5】
前記基材がポリエステル、ポリアミド、またはアルミのフィルムまたはシートであることを特徴とする請求項
4記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出しラミネート積層用接着性樹脂組成物及び積層体に関し、特には、良好な押出しラミネート加工性を有し、かつ、ポリエステル、ポリアミド、金属箔等、特にポリエステルからなる基材への強力な接着性を具備した押出しラミネート積層用接着性樹脂組成物および該押出しラミネート積層用接着性樹脂組成物からなる層を有する積層体に関する。かかる積層体は、食品包装等の各種包装材として用いられる。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンはヒートシール性、防湿性に優れ、押出加工が容易であることから、単層のフィルム、シートあるいは成形容器用材料として用いられるだけでなく、各種樹脂フィルムまたはシート、アルミ箔等の金属箔、紙等との積層体としても広く用いられている。しかし、ポリエチレンは本来非極性であり、異種材料、特に極性を有した材料に対して接着しにくいという欠点を有している。したがって、ポリエチレンを用いて多層積層体を形成するためには、種々の方法が提案されている。
【0003】
例えば、ポリエチレンとポリアミドとの積層体を製造するためには、ポリエチレン単独ではなく、変性ポリエチレンを用いた次のような方法が行われている。
(1)不飽和カルボン酸またはその誘導体をポリエチレンにグラフト重合して得られる変性ポリエチレン、エチレンと不飽和カルボン酸またはその誘導体とを共重合して得られるエチレン共重合体、あるいは、これらの重合体とポリエチレンとからなる組成物とポリアミド樹脂とを溶融させてダイから押出して積層体を得る、いわゆる共押出による方法、(2)ポリアミドフィルムを予め作製しておき、その上にポリエチレンと上記重合体とのブレンド物を押出ラミネート(コーティング)する方法、(3)ポリエチレンと上記重合体とをポリアミドフィルム上に共押出ラミネートする方法。
また、ポリエチレンとポリエステルとの積層体を製造するためには、グリシジルメタクリレートやアリルグリシジルエーテル等をポリエチレンにグラフトしたり、エチレンと共重合させて得られる重合体を用いて、ポリエステルとの共押出成形やポリエステルフィルム等の基材に押出ラミネート成形する方法が提案されている。
【0004】
しかし、これらの方法は、共押出の場合は接着強度が得られても、フィルム、シート、紙等の基材にラミネートするラミネート成形方法の場合には充分な接着強度を付与することができない。特にポリエステル系の基材に対しては接着強度の強い積層体を得ることは困難である。
【0005】
基材との接着性を充分なものとするための確実な方法として、アンカーコート剤と呼ばれる接着剤を併用する方法がある。この方法は基材とラミネート樹脂の間に接着層を介在させる方法であり、接着剤としては、ポリエチレンイミン等のイミン系、ウレタン系等の接着剤が用いられ、一般には、高い接着強度を発現するウレタン系接着剤が広く用いられている。しかし、この方法では、高い接着強度が得られるものの、コーティング工程が煩雑であり、また、有機溶剤を用いるため、安全上あるいは労働環境上の問題もある。更に、アンカーコート液の調製、ロールに付着したアンカーコート剤の拭き取りが必要であることなど、作業効率を大きく低下させる問題がある。
【0006】
また、アンカーコート剤を使用しないで基材に接着できる接着性樹脂組成物も開示されている(特開平08-188679号公報)。この接着性樹脂組成物はエポキシ基を含有する化合物を含む組成物であり、エポキシ基が基材(被着体)の官能基(アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基等)と反応することで接着力を発現することが開示されている。
しかし、樹脂中のエポキシ基と基材(被着体)の官能基との反応は、固相界面での化学反応であり反応速度が遅い。そのため積層加工直後では接着力が発現せず、十分な接着強度を得るべくエポキシ基と基材(被着体)の官能基との反応を促進するため「エージング」という積層後に一定時間加熱保持する工程が必要であった(加工技術協会刊 コンバーテック1999.7 P5)。そのため、製品のリードタイムや接着力の管理などの面で使いにくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】加工技術協会刊 コンバーテック1999.7 P5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記欠点がなく、良好な押出しラミネート加工性を有し、かつ、ポリエステル、ポリアミド、アルミ箔等、特にポリエステルからなる基材への強力な接着性を具備した押出しラミネート積層用接着性樹脂組成物および該押出しラミネート積層用接着性樹脂組成物からなる層を有する積層体の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は鋭意検討を行った結果、特定のメルトフローレートを有するポリエチレンに、特定の分子量を有するエポキシ化合物と塩基性化合物とを特定量にて配合することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0011】
即ち、本発明は
(1)(A)(a1)メルトフローレートが0.1~50g/10分であるポリエチレンと、(B)分子内にエポキシ基を2個以上有し、分子量が3000以下であるエポキシ化合物と、(C)塩基性化合物とを含み、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計に対する(B)成分の含量が0.01~5重量%であり、(C)成分の含量が0.005~0.1重量%である押出しラミネート積層用接着性樹脂組成物、
(2)(C)塩基性化合物がアルカリ金属、アルカリ土類金属、または遷移金属の有機酸塩または無機塩であることを特徴とする上記(1)記載の押出しラミネート積層用接着性樹脂組成物、
(3)(A)ポリエチレンが(a2)密度が0.880~0.945g/cm3であることを特徴とする上記(1)~(2)のいずれか一項に記載の押出しラミネート積層用接着性樹脂組成物、
(4)(B)エポキシ化合物が、エポキシ化植物油であることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれか一項に記載の押出しラミネート積層用接着性樹脂組成物、
(5)上記(1)~(4)のいずれか一項に記載の押出しラミネート積層用接着性樹脂組成物からなる層と、基材の少なくとも2層を含む積層体、
(6)前記基材が前記押出しラミネート積層用接着性樹脂組成物からなる層に直接接触することを特徴とする上記(5)記載の積層体、
(7)前記基材がポリエステル、ポリアミド、またはアルミのフィルムまたはシートであることを特徴とする上記(5)または(6)記載の積層体、
(8)上記(5)~(7)のいずれか一項に記載の積層体を、押出ラミネート法により製造する積層体の製造方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、良好な押出しラミネート加工性を有し、かつ、ポリエステル、ポリアミド、アルミ箔等、特にポリエステルからなる基材への強力な接着性を具備した押出しラミネート積層用接着性樹脂組成物および該押出しラミネート積層用接着性樹脂組成物からなる層を有する積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の押出しラミネート積層用接着性樹脂組成物(以下、接着性樹脂組成物ともいう)は、(A)(a1)メルトフローレートが0.1~50g/10分であるポリエチレンと、(B)分子内にエポキシ基を2個以上有し、分子量が3000以下であるエポキシ化合物と、(C)塩基性化合物とを含み、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計に対する(B)成分の含量が0.01~5重量%であり、(C)成分の含量が0.005~0.1重量%である。
【0014】
本発明に用いる(A)成分であるポリエチレンは、エチレンの単独重合体またはエチレンと炭素数が3~16のα-オレフィンの共重合体であり、分岐状低密度ポリエチレン(以下、LDPEともいう)、直鎖状低密度ポリエチレン(以下、LLDPEともいう)、中・高密度ポリエチレン(以下、HDPEともいう)が例示され、特にLDPEとLLDPEが好ましい。これらのポリエチレンは単独でも、2種以上を用いることもできる。
【0015】
LDPEは、一般に100~350MPaの高圧下でパーオキサイド等の遊離基発生剤の存在下で重合させて得られ、多くの長鎖分岐を有することを特徴の一つとし、そのために優れた押出成形性を保持することが知られている。重合に用いられる反応器はオートクレーブあるいはチューブラータイプのいずれであってもよい。
【0016】
HDPEおよびLLDPEは、一般にチーグラー触媒、メタロセン触媒、フィリップス触媒等とよばれる触媒を用いてエチレンを単独重合させたり、エチレンと炭素数3~16のα-オレフィンとを共重合させて得ることができる。一般には中・低圧法で製造されるが、高圧法で製造することもでき、気相法、溶液法、スラリー法等のいずれの方法でも製造される。
【0017】
(a1)メルトフローレート
ポリエチレンのメルトフローレート(JIS-K6922-2:1997付属書に準拠して測定される値である。ポリエチレン系樹脂は190℃における2.16kg荷重での測定値を示し、以下MFRともいう)は0.1~50g/10分であり、0.1~30g/10分が好ましく、1~20g/10分がより好ましい。MFRが0.1g/10分以上であれば高速成形性と薄肉成形性に優れ、50g/10分以下であるとヒートシール強度、ネックイン特性が向上する。
【0018】
(a2)密度
ポリエチレンの密度(JIS-K7112に準拠して測定される値である。ポリエチレン系樹脂は23℃における測定値を示す)は用途・要求特性に合わせ任意に選択できる。好ましくは0.880~0.945g/cm3の範囲である。
【0019】
本発明における(B)成分であるエポキシ化合物は分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基(オキシラン基)を含む分子量3000以下の多価エポキシ化合物である。エポキシ化合物は分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基(オキシラン基)を含むことが必要であり、エポキシ基が分子内に1個では、本発明の目的とする基材との接着性に効果がない。エポキシ化合物の分子量は3000以下が必要であり、1500以下が好ましい。分子量が3000以下であると、組成物に配合した際に、十分に高い接着強度が発揮できる。
【0020】
エポキシ化合物としては、フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、エポキシ化植物油等が挙げられ、なかでも、ポリエステル基材に対する接着性付与についてはエポキシ化植物油が好適である。ここで、エポキシ化植物油とは、天然植物油の不飽和二重結合を例えば過酸を用いてエポキシ化したものであり、エポキシ化大豆油、エポキシ化オリーブ油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化コーン油、エポキシ化亜麻仁油等を挙げることができる。エポキシ化植物油は、例えば旭電化工業(株)のO-130P(エポキシ化大豆油)、O-180A(エポキシ化亜麻仁油)等として、市販されている。なお、植物油をエポキシ化する際に若干副生するエポキシ化されていないか、エポキシ化が不十分な油分の存在は本発明の趣旨・本質をなんら妨げるものではない。
【0021】
本発明の接着性樹脂組成物において(B)成分の含量は、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計に対して0.01~5重量%であり、0.01~0.9重量%が好ましい。(B)成分の含量が0.01重量%以上であると、基材との接着強度の向上効果が充分に得られ、また5重量%以下であると、充分な接着強度を確保しつつ、成形体が臭いを発する等の問題が発生するのを防ぐことができ、好ましい。
【0022】
このエポキシ化合物を添加することによる接着性向上のメカニズムとして、ポリエチレンの溶融成形時に押出機内あるいはTダイ等から押出された際に空気と触れる中で、ポリエチレンが空気酸化され、この酸化の過程でエポキシ化合物と反応し、まずエポキシ化合物がポリエチレンにグラフトされる。このグラフトされたエポキシ化合物の分子内に残っている未反応のエポキシ基が基材(被着体)の官能基(アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基等)と反応するためと考えられる。ポリエステル基材に対しては、エポキシ化植物油が特に有効である。
【0023】
(C)成分である塩基性化合物は、添加することによりエポキシ基と基材(被着体)の官能基との反応速度を向上する触媒的な効果を与えることができる。
塩基性化合物としては、例えば、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を含む金属典型元素および、遷移金属の有機酸塩および無機塩が挙げられる。金属典型元素および遷移金属としては、Na、Mg、Al、K、Ca、Co、等が挙げられる。これらの金属の有機酸塩を形成する有機酸としては炭素数1~30の脂肪酸である酢酸、酪酸、オクタン酸、オクチル酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸等が挙げられる。また無機塩として上記金属の水酸化物塩、炭酸塩、塩化物塩、アンモニウム塩等が挙げられる。具体例としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ステアリン酸コバルト、オクチル酸コバルト、ステアリン酸セリウム、オクチル酸セリウムなどが挙げられる。その中でも水酸化カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸コバルト等が入手が容易であり好適に用いられる。
【0024】
本発明の接着性樹脂組成物において(C)成分である塩基性化合物の含量は、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計に対し0.005~0.1重量%であり、0.01~0.1重量%が好ましく、0.01~0.08重量%が特に好ましい。(C)成分の含量が0.005重量%以上であると、充分な反応促進の効果が得られ、一方、(C)成分の含量が高すぎてもさらなる効果の向上が期待できず経済的でもないため、0.1重量%以下であることが好ましい。
【0025】
この塩基性化合物を添加することによる接着性向上のメカニズムとして、塩基性化合物の金属イオンがルイス酸として作用することでエポキシ基の開裂を促進し、エポキシ基と基材(被着体)の官能基との反応を促進していると考えられる。
【0026】
更に、本発明の接着性樹脂組成物には該組成物の特徴を損なわない範囲で慣用の添加剤、例えば可塑剤、滑剤、各種安定剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、染料、顔料、各種充填剤などを添加してもよい。
【0027】
本発明の押出しラミネート積層用接着性樹脂組成物を得るには、上記各成分を、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー等により混合するか、混合したものをさらにオープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機などを使用して混練する方法を適宜利用すればよい。混練の温度は、通常110~350℃であり、120~300℃が好ましい。
【0028】
本発明の接着性樹脂組成物は基材との接着性が良好なため、積層体として使用される。
【0029】
本発明の積層体は、上述した本発明の押出しラミネート積層用接着性樹脂組成物からなる層と基材の少なくとも2層を含む積層体である。
ここで、基材としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6・66、ポリアミド12等のポリアミド、エチレン酢酸ビニル共重合体鹸化物(以下、EVOHという)等の熱可塑性樹脂のフィルムまたはシート、シリカあるいはアルミニウムを蒸着した樹脂フィルム、鉄、アルミ等の金属箔、紙等一般にフィルムまたはシートとして用いられているものを使用でき、形状は、織布、不織布、板状のようなものであっても差し支えない。これらの基材の中でもポリエステル、ポリアミドのフィルムまたはシート、アルミ箔が好ましく、ポリエステルのフィルムまたはシートが特に好ましい。またこれらの基材に対しては、コロナ処理、フレーム処理、プレヒート処理、プラズマ処理等を行ってもよい。
【0030】
本発明の積層体は、接着性樹脂組成物層と基材とが接していることが必要であるが、接着性樹脂組成物層あるいは基材上にさらに他の層を有していてもよいことはいうまでもない。
【0031】
本発明の接着性樹脂組成物と基材とから、積層体を成形するには、押出ラミネート成形等を用いることができ、従来法に比べて著しい接着強度の改善が図られ好ましい。
【0032】
押出しラミネート成形において、ポリエチレンが酸化される温度で成形することが好ましい。成形温度は成形速度との関係で一該には限定できないが、ポリエチレン系樹脂の場合は、一般に120℃以上であり、200~400℃が好ましく、280~340℃が特に好ましい。ここで、成形速度は押出機内での滞留時間、あるいは溶融状態で空気と接している時間に影響するため、ポリエチレンの酸化に関係するのである。
また、押出しラミネート成形は、オゾン処理または酸素処理を行うと、より低温度で成形が可能である。ここで、オゾン処理または酸素処理とは、ダイからでた樹脂にオゾンガスもしくは酸素ガスを吹きつけて溶融樹脂の表面を強制酸化させる方法をいう。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0034】
(A)成分であるポリエチレンとしては、以下のポリエチレンを用いた。
A-1:LDPE:MFR7g/10分、密度0.918g/cm3のLDPE
A-2:LLDPE:MFR8g/10分、密度0.913g/cm3のメタロセンLLDPE
(B)成分であるエポキシ化合物は以下のものを用いた。
B-1:エポキシ化大豆油(旭電化工業(株)製O-130P)
(C)成分である塩基性化合物は以下のものを用いた。
C-1:微粉末水酸化カルシウム(矢崎ホールディングス社製 ミクロスターT)
【0035】
(実施例1)
[接着性樹脂組成物:PE-1]
A-1:99.83重量%、B-1:0.14重量%、C-1:0.03重量%からなる組成で、各成分をヘンシェルミキサーで混合後、26mm同方向2軸押出機を用いて180℃で混練りして接着性樹脂組成物PE-1を得た。
[評価用積層体の作製]
押出ラミネート装置を用い、幅500mm、厚み25μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡社製ユニペットフィルムE4102 以下「PETフィルム」と表記)を基材層として、また市販のLLDPEフィルム(厚み30μm フタムラ社製 LL-XMTN)をサンド層として用いた。PETフィルムにインラインでコロナ処理(20W分/m2)を行いつつ、PETフィルム/接着性樹脂組成物層(厚み20μm)/LLDPEフィルムの構成となるよう接着性樹脂組成物PE-1を引き取り速度100m/分、被覆厚み20μmで溶融押出しラミネート加工を行い積層体を得た。
押出ラミネート装置は、口径90mmφの押出機に装着したTダイスから押し出される樹脂の温度が325℃になるように設定し、冷却ロール表面温度25℃、ダイス幅560mm、ダイリップ開度0.7mm、エアギャップ120mmで引き取り加工速度が100m/分の場合に被覆厚みが20μmになるように押出量を調整した。押出ラミネート加工は特に問題なく容易に加工できた。
[接着強度の測定]
PETフィルム/接着性樹脂組成物層(厚み20μm)/LLDPEフィルムの構成の積層体を、PETフィルムと接着性樹脂組成物層との界面で剥離し、サンプル幅15mm、剥離速度300mm/分、T剥離での剥離強度をもって接着強度とした(単位:N/15mm)。
なお接着強度の測定に用いるサンプルは、(1)押出ラミネート加工直後、(2)23℃の環境下で保管し、押出ラミネート加工後1,3,7,14日経過後、(3)押出ラミネート加工後に40℃のオーブン内にて48時間のエージング後の積層体である。サンプルの積層体についてはそれぞれ23℃50%RHの環境下で状態調整後に測定を行った。評価結果を表1に示す。
【0036】
(実施例2)
A-1:99.845重量%、B-1:0.14重量%、C-1:0.015重量%からなる組成に変更した以外は実施例1と同様に接着性樹脂組成物PE-2を製造した。次いで、実施例1と同条件にて押出しラミネート加工を行い積層体を得た。評価結果を表1に示す。
【0037】
(実施例3)
A-1:99.76重量%、B-1:0.14重量%、C-1:0.1重量%からなる組成に変更した以外は実施例1と同様に接着性樹脂組成物PE-3を製造した。次いで、実施例1と同条件にて押出しラミネート加工を行い積層体を得た。評価結果を表1に示す。
【0038】
(実施例4)
A-1成分の代わりにA-2成分を用いて、A-2:99.83重量%、B-1:0.14重量%、C-1:0.03重量%からなる組成に変更した以外は実施例1と同様に接着性樹脂組成物PE-4を製造した。次いで、Tダイスから押し出される樹脂の温度が300℃になるように設定し、Tダイから押し出された溶融膜にオゾン吹きつけを行う以外は実施例1と同様に押出しラミネート加工を行い積層体を得た。評価結果を表1に示す。
【0039】
(比較例1)
C-1成分を使用せず、A-1:99.86重量%、B-1:0.14重量%からなる組成に変更した以外は実施例1と同様に接着性樹脂組成物PE-5を製造した。次いで、実施例1と同条件にて押出しラミネート加工を行い積層体を得た。結果を表1に示す。
【0040】
(比較例2)
B-1およびC-1成分を使用せず、A-1成分を単独で用いた(便宜上、これを接着性樹脂組成物PE-6と記す)。接着性樹脂組成物PE-1に代えて接着性樹脂組成物PE-6を用いた以外は実施例1と同条件にて押出しラミネート加工を行い積層体を得た。結果を表1に示す。
【0041】
(比較例3)
C-1成分を使用せず、A-2:99.86重量%、B-1:0.14重量%からなる組成に変更した以外は実施例4と同様に接着性樹脂組成物PE-7を製造した。次いで、実施例1と同条件にて押出しラミネート加工を行い積層体を得た。結果を表1に示す。
【0042】
(比較例4)
B-1およびC-1成分を使用せず、A-2成分を単独で用いた(便宜上、これを接着性樹脂組成物PE-8と記す)。接着性樹脂組成物PE-4に代えて接着性樹脂組成物PE-8を用いた以外は実施例4と同条件にて押出しラミネート加工を行い積層体を得た。結果を表1に示す。
【0043】
【0044】
(比較例2)に対し(比較例1)はB-1成分を添加しているので、PETフィルムに対しての接着強度は40℃エージング後で8.1N/15mmと大きく向上している。しかしながら、23℃保管条件では14日経過後でも40℃エージング後の接着強度まで至っておらず、常温では接着強度の発現まで非常に時間がかかることがわかる。
(比較例1)に対し(実施例1~3)は23℃保管条件での接着強度の発現が早く、3日経過後で40℃エージング後の接着強度に至っている。これは(C)成分の反応促進効果による。
また(比較例4)に対し(比較例3)、(実施例4)は、加工温度を300℃と低くしたにもかかわらず、オゾン処理により(B)成分の効果が発現し、PETフィルムに対しての接着強度は40℃エージング後で大きく向上している。
さらに(実施例4)では、(C)成分の反応促進効果により、23℃保管条件での接着強度が(比較例3)に対してより早く発現していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
押出しラミネート成形等の手法により、特にポリエステルやポリアミドからなる基材に対しアンカーコート処理なしで良好な接着性を有するポリエチレン系積層用接着性樹脂組成物による積層体を得ることができ産業上有用である。