(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20220531BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20220531BHJP
B60K 11/06 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D25/20 A
B60K11/06
(21)【出願番号】P 2018057694
(22)【出願日】2018-03-26
【審査請求日】2021-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】重岡 忠之
(72)【発明者】
【氏名】清見原 辰典
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-012644(JP,A)
【文献】特開平09-052535(JP,A)
【文献】特開2006-088773(JP,A)
【文献】特開2013-193706(JP,A)
【文献】特開平05-169981(JP,A)
【文献】特開平07-052659(JP,A)
【文献】特開2003-260939(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0284530(US,A1)
【文献】特開2012-091636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を駆動させる動力源としてのモータが車両前方のモータルーム内に配置されると共に前記モータルームの車両後方におけるフロアパネルの下方にバッテリユニットが配設された電動車両であって、
前記フロアパネルの下面側に車幅方向に離間して配設されて車体前後方向に延びる左右一対のフロアフレームと、
前記左右一対のフロアフレームより車幅方向外側において前記フロアパネルに結合されて車体前後方向に延びる左右一対のサイドシルと、
前記バッテリユニットの前部と前記フロアパネルとの間を遮蔽して車幅方向に延びる第1遮蔽部材と、
前記バッテリユニットの両側の側部と前記左右一対のフロアフレームとの間をそれぞれ遮蔽して車体前後方向に延びる第2遮蔽部材と、
を備え、
前記フロアパネルの下方側における前記フロアフレームと前記サイドシルとの間に前記モータルームからの空気が流れる空気流通通路が設けられ、
前記フロアパネルの下方側における前記バッテリユニットと前記フロアフレームとの間に車体前後方向に延びるケーブル用配管が配策されるケーブル用空間部が設けられ、
前記ケーブル用空間部に前記ケーブル用空間部の一部を遮蔽する第3遮蔽部材が備えられている、
ことを特徴とす
る電動車両。
【請求項2】
車輪を駆動させる動力源としてのモータが車両前方のモータルーム内に配置されると共に前記モータルームの車両後方におけるフロアパネルの下方にバッテリユニットが配設された電動車両であって、
前記フロアパネルの下面側に車幅方向に離間して配設されて車体前後方向に延びる左右一対のフロアフレームと、
前記左右一対のフロアフレームより車幅方向外側において前記フロアパネルに結合されて車体前後方向に延びる左右一対のサイドシルと、
前記バッテリユニットの前部と前記フロアパネルとの間を遮蔽して車幅方向に延びる第1遮蔽部材と、
前記バッテリユニットの両側の側部と前記左右一対のフロアフレームとの間をそれぞれ遮蔽して車体前後方向に延びる第2遮蔽部材と、
を備え、
前記フロアパネルの下方側における前記フロアフレームと前記サイドシルとの間に前記モータルームからの空気が流れる空気流通通路が設けられ、
前記フロアパネルの下方側における前記バッテリユニットと前記フロアフレームとの間に車体前後方向に延びるブレーキ配管が配策されるブレーキ用空間部が設けられ、
前記ブレーキ用空間部に前記ブレーキ用空間部の一部を遮蔽する第4遮蔽部材が備えられている、
ことを特徴とす
る電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両に関し、特にモータが車両前方のモータルーム内に配置されると共にバッテリユニットがフロアパネルの下方に配設された電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両では、車輪を駆動させる動力源としてのモータと、モータに供給する電力を貯蔵する複数のバッテリモジュールをユニット化したバッテリユニットとを備え、モータが車両前方のモータルーム内に配置されると共にバッテリユニットがフロアパネルの下方に配設された電気自動車等の電動車両が一般に知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータが車両前方のモータルーム内に配置されると共にバッテリユニットがフロアパネルの下方に配設された電動車両では、走行時に、車輪を駆動させるモータの発熱によるモータルームからの熱気が車体後方に移動してバッテリユニットとフロアパネルとの間に流れ、バッテリモジュールの温度を過度に上昇させるおそれがある。バッテリモジュールの温度が過度に上昇すると、バッテリモジュールが許容温度を超えてバッテリ性能の低下を引き起こし得る。
【0005】
そこで、本発明は、モータが車両前方のモータルーム内に配置されると共にバッテリユニットがフロアパネルの下方に配設された電動車両において、モータルームからの熱気がバッテリユニットとフロアパネルとの間に流れてバッテリモジュールの温度が許容温度を超えることを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0008】
本願の請求項1に記載の発明は、車輪を駆動させる動力源としてのモータが車両前方のモータルーム内に配置されると共に前記モータルームの車両後方におけるフロアパネルの下方にバッテリユニットが配設された電動車両であって、前記フロアパネルの下面側に車幅方向に離間して配設されて車体前後方向に延びる左右一対のフロアフレームと、前記左右一対のフロアフレームより車幅方向外側において前記フロアパネルに結合されて車体前後方向に延びる左右一対のサイドシルと、前記バッテリユニットの前部と前記フロアパネルとの間を遮蔽して車幅方向に延びる第1遮蔽部材と、前記バッテリユニットの両側の側部と前記左右一対のフロアフレームとの間をそれぞれ遮蔽して車体前後方向に延びる第2遮蔽部材と、を備え、前記フロアパネルの下方側における前記フロアフレームと前記サイドシルとの間に前記モータルームからの空気が流れる空気流通通路が設けられ、前記フロアパネルの下方側における前記バッテリユニットと前記フロアフレームとの間に車体前後方向に延びるケーブル用配管が配策されるケーブル用空間部が設けられ、前記ケーブル用空間部に前記ケーブル用空間部の一部を遮蔽する第3遮蔽部材が備えられていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、車輪を駆動させる動力源としてのモータが車両前方のモータルーム内に配置されると共に前記モータルームの車両後方におけるフロアパネルの下方にバッテリユニットが配設された電動車両であって、前記フロアパネルの下面側に車幅方向に離間して配設されて車体前後方向に延びる左右一対のフロアフレームと、前記左右一対のフロアフレームより車幅方向外側において前記フロアパネルに結合されて車体前後方向に延びる左右一対のサイドシルと、前記バッテリユニットの前部と前記フロアパネルとの間を遮蔽して車幅方向に延びる第1遮蔽部材と、前記バッテリユニットの両側の側部と前記左右一対のフロアフレームとの間をそれぞれ遮蔽して車体前後方向に延びる第2遮蔽部材と、を備え、前記フロアパネルの下方側における前記フロアフレームと前記サイドシルとの間に前記モータルームからの空気が流れる空気流通通路が設けられ、前記フロアパネルの下方側における前記バッテリユニットと前記フロアフレームとの間に車体前後方向に延びるブレーキ配管が配策されるブレーキ用空間部が設けられ、前記ブレーキ用空間部に前記ブレーキ用空間部の一部を遮蔽する第4遮蔽部材が備えられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願の請求項1に記載の発明によれば、モータが車両前方のモータルーム内に配置されると共にバッテリユニットがフロアパネルの下方に配設された電動車両は、バッテリユニットの前部とフロアパネルとの間を遮蔽して車幅方向に延びる第1遮蔽部材と、バッテリユニットの両側の側部と左右一対のフロアフレームとの間をそれぞれ遮蔽して車体前後方向に延びる第2遮蔽部材とを備え、フロアパネルの下方側におけるフロアフレームとサイドシルとの間にモータルームからの空気が流れる空気流通通路が設けられる。
【0011】
これにより、モータルームからの熱気を含む空気がフロアパネルの下方側を車体後方に移動するときに、第1遮蔽部材によってバッテリユニットの前部とフロアパネルとの間を流れることが遮蔽されると共に第2遮蔽部材によってバッテリユニットの両側の側部とフロアフレームとの間を流れることが遮蔽され、フロアフレームとサイドシルとの間に設けられた空気流通通路を通じて車体後方に移動させることができる。
【0012】
したがって、モータが車両前方のモータルーム内に配置されると共にバッテリユニットがフロアパネルの下方に配設された電動車両において、モータルームからの熱気がバッテリユニットとフロアパネルとの間に流れてバッテリモジュールの温度が許容温度を超えることを抑制することができる。
【0013】
また、フロアパネルの下方側におけるバッテリユニットとフロアフレームとの間に設けられたケーブル用空間部にケーブル用空間部の一部を遮蔽する第3遮蔽部材が備えられることにより、ケーブル用空間部にケーブル用配管が配策される場合においても、モータルームからの熱気が第3遮蔽部材によってケーブル用空間部を通じてバッテリユニットとフロアパネルとの間に流れることを抑制することができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に係る発明と同様、モータルームからの熱気を含む空気がフロアパネルの下方側を車体後方に移動するときに、第1遮蔽部材によってバッテリユニットの前部とフロアパネルとの間を流れることが遮蔽されると共に第2遮蔽部材によってバッテリユニットの両側の側部とフロアフレームとの間を流れることが遮蔽され、フロアフレームとサイドシルとの間に設けられた空気流通通路を通じて車体後方に移動させることができる。
したがって、モータが車両前方のモータルーム内に配置されると共にバッテリユニットがフロアパネルの下方に配設された電動車両において、モータルームからの熱気がバッテリユニットとフロアパネルとの間に流れてバッテリモジュールの温度が許容温度を超えることを抑制することができる。
また、フロアパネルの下方側におけるバッテリユニットとフロアフレームとの間に設けられたブレーキ用空間部にブレーキ用空間部の一部を遮蔽する第4遮蔽部材が備えられることにより、ブレーキ用空間部にブレーキ配管が配策される場合においても、モータルームからの熱気が第4遮蔽部材によってバッテリユニットとフロアパネルとの間に流れることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電動車両の車体の平面図である。
【
図3】バッテリユニットを取り除いた
図2に示す車体の底面図である。
【
図4】
図1におけるY4-Y4線に沿った車体の断面図である。
【
図5】
図1におけるY5-Y5線に沿った車体の断面図である。
【
図6】
図5に示す車体の車体左側を拡大して示す断面図である。
【
図7】
図5に示す車体の車体右側を拡大して示す断面図である。
【
図8】
図1におけるY8-Y8線に沿った車体の断面図である。
【
図9】モータルームからの空気の流れを説明するための説明図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る電動車両の車体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0017】
本発明の実施形態に係る電動車両は、車輪を駆動させる動力源としてのモータと、モータに供給する電力を貯蔵する複数のバッテリモジュールをユニット化したバッテリユニットとを備えた電気自動車であり、モータが車両前方のモータルーム内に配置され、バッテリユニットがモータルームの車両後方におけるフロアパネルの下方に配設されている。
【0018】
図1は、本発明の第1実施形態に係る電動車両の車体の平面図、
図2は、
図1に示す車体の底面図、
図3は、バッテリユニットを取り除いた
図2に示す車体の底面図、
図4は、
図1におけるY4-Y4線に沿った車体の断面図、
図5は、
図1におけるY5-Y5線に沿った車体の断面図、
図6は、
図5に示す車体の車体左側を拡大して示す断面図、
図7は、
図5に示す車体の車体右側を拡大して示す断面図、
図8は、
図1におけるY8-Y8線に沿った車体の断面図である。なお、
図4から
図8では、車体下面を覆うアンダカバーが取り付けられた状態で示している。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る電動車両の車体1は、車輪を駆動させる動力源としてのモータ2が車体前方のモータルーム3内にモータ出力軸が車幅方向に延びるように横置き式に配設されている。モータルーム3は、車体上下方向に延びるダッシュパネル4によってモータルーム3の車体後方に設けられた車室5と区画されている。
【0020】
モータルーム3の車体上下方向中央側には、ダッシュパネル4から車体前側に閉断面状に延びる左右一対のフロントサイドフレーム6が配設されている。左右のフロントサイドフレーム6間には、車幅方向に延びるクロスメンバ7が架設されている。モータ2は、クロスメンバ7の車体下側に配置されてクロスメンバ7に支持されている。
【0021】
車体1はまた、車室5の床面を形成するフロアパネル9と、フロアパネル9の車幅方向両端部にそれぞれ結合されて車体前後方向に延びる左右一対のサイドシル10と、フロアパネル9の上面側において左右一対のサイドシル10間に架設されて車幅方向に延びる複数のクロスメンバ、具体的には第1クロスメンバ11及び第2クロスメンバ12とを備えている。
【0022】
フロアパネル9には、車幅方向中央側に車体前後方向に延びると共に車体上方側に膨出するフロアトンネル部13が形成されている。フロアトンネル部13は、第1クロスメンバ11の車体前方側に配置される前側トンネル部14と第2クロスメンバ12の車体後方側に配置される後側トンネル部15とを備えている。
【0023】
フロアパネル9の前端部は、
図4に示すように、車体上下方向に延びると共に下端部から車体後方側に向かうにつれて車体下方側に傾斜して延びるダッシュパネル4に連結されている。ダッシュパネル4には、車幅方向中央側に車体上方側に膨出するトンネル部8が形成され、トンネル部8は、フロアパネル9の前側トンネル部14に接続されている。
【0024】
左右のサイドシル10はそれぞれ、
図5に示すように、サイドシル10の車体内側を構成するサイドシルインナ16と、サイドシル10の車体外側を構成するサイドシルアウタ17とを備え、サイドシルインナ16とサイドシルアウタ17とが接合されて略矩形閉断面状に形成されている。
【0025】
図4に示すように、第1クロスメンバ11及び第2クロスメンバ12は、車体前後方向に離間して配置され、第1クロスメンバ11は、第2クロスメンバ12の車体前方側に配置されている。第1クロスメンバ11及び第2クロスメンバ12はそれぞれ、断面略ハット状に形成されてフロアパネル9に接合されている。
【0026】
車体1はまた、
図2及び
図3に示すように、フロアパネル9の下面側に車幅方向に離間して配設されて車体前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム18を備えている。フロアフレーム18には、モータ2に供給する電力を貯蔵する複数のバッテリモジュール19をユニット化したバッテリユニット20が取り付けられている。
【0027】
左右のフロアフレーム18はそれぞれ、左右のサイドシル10より車幅方向内側に配置され、車幅方向にサイドシル10とフロアトンネル部13との間に配置されている。フロアフレーム18は、
図6及び
図7に示すように、下面部18aと、下面部18aの車幅方向両端部から上方側に延びる両側の側面部18bと、両側の側面部18bからそれぞれ外側に延びる両側のフランジ部18cとを備えて断面略ハット状に形成されている。フロアフレーム18は、両側のフランジ部18cがフロアパネル9の下面側に溶接等によって接合されて閉断面状に形成されている。
【0028】
左右のフロアフレーム18の前端部は、車体後方側から車体前方側に向かうにつれて車体上方側に傾斜してダッシュパネル4の車体前方側に配置される左右のフロントサイドフレーム6の後端部に連結されている。左右のフロアフレーム18の後端部は、車体前方側から車体後方側に向かうにつれて車体上方側に傾斜して左右のリヤサイドフレーム21の前端部に連結されている。左右のリヤサイドフレーム21は、車体後部に配設されて車体前後方向に閉断面状に延びている。
【0029】
左右のフロアフレーム18の後端部には、フロアパネル9の後端部から車体後方側に向かうにつれて車体上方側に傾斜してから車体後方側に延びるキックアップパネル22が架設され、左右のリヤサイドフレーム21には、キックアップパネル22の後端部から車体後方側に延びるリヤフロアパネル23が架設されている。
【0030】
車体1では、フロアパネル9の下方にバッテリユニット20が配設されている。バッテリユニット20は、
図5に示すように、複数のバッテリモジュール19と、複数のバッテリモジュール19の周囲を覆うカバー部材24と、カバー部材24を支持してフロアフレーム18に取り付けられるバッテリフレーム30とを備えている。
【0031】
本実施形態では、バッテリユニット20は、16個のバッテリモジュール19をユニット化して構成されている。バッテリモジュール19はそれぞれ、略直方体状に形成されている。
図2及び
図4に示すように、車体前方側に車幅方向に4つのバッテリモジュール19が並んで配置され、車体前後方向中央側に車体右側及び車体左側にそれぞれ車体前後方向に3つのバッテリモジュール19が並んで配置され、車体後方側に車幅方向に3つのバッテリモジュール19が並んで配置され、車体後方側に配置されるバッテリモジュール19はそれぞれ上下方向にバッテリモジュール19が積層されている。
【0032】
カバー部材24は具体的には、
図4及び
図5に示すように、カバー部材24の車体上側を構成する上側カバー部材25とカバー部材24の車体下側を構成する下側カバー部材26とから構成されている。
【0033】
上側カバー部材25は、
図7に示すように、略矩形状に形成されて車体上下方向と略直交する略水平方向に延びる上面部25aと、上面部25aの周縁部から車体下方側に延びる側面部25bと、側面部25bの下端部から外方に略水平方向に延びるフランジ部25cとを備え、車体上方側に上面部25aが膨出するように形成されている。
【0034】
一方、下側カバー部材26は、略矩形状に形成されて略水平方向に延びる下面部26aと、下面部26aの周縁部から車体上方側に延びる側面部26bと、側面部26bの上端部から外方に略水平方向に延びるフランジ部26cとを備え、車体下方側に下面部26aが膨出するように形成されている。
【0035】
カバー部材24は、上側カバー部材25のフランジ部25cと下側カバー部材26のフランジ部26cとが接合されることにより上側カバー部材25と下側カバー部材26とが接合され、上側カバー部材25及び下側カバー部材26の内部に複数のバッテリモジュール19が収容されるようになっている。
【0036】
上側カバー部材25の上面部25aには、
図5に示すように、フロアパネル9のフロアトンネル部13に沿って、車幅方向中央側に車体前後方向に延びると共に車体上方側に膨出する膨出部25dが形成されている。下側カバー部材26の下面部26aには、複数のバッテリモジュール19が取り付けられている。
【0037】
バッテリフレーム30は、
図2に示すように、車体前方側に配置されて車幅方向に延びる前方フレーム31と、車体後方側に配置されて車幅方向に延びる後方フレーム32と、前方フレーム31の車幅方向両側と後方フレーム32の車幅方向両側とをそれぞれ接続して車体前後方向に延びる両側の側方フレーム33とを備え、両側の側方フレーム33がそれぞれ、左右のフロアフレーム18の車体下方側に配置されてフロアフレーム18に取り付けられている。
【0038】
前方フレーム31、後方フレーム32及び両側の側方フレーム33はそれぞれ、
図6及び
図7に示すように、バッテリフレーム30の車体上側を構成するアッパフレーム34と、バッテリフレーム30の車体下側を構成するロアフレーム35とから構成されている。
【0039】
アッパフレーム34は、車体上下方向と略直交する方向に延びる上面部34aと車内側に配置されて車体上下方向に延びる内面部34bとを備えて断面略L字状に形成されると共に、上面部34aから略水平方向に車外側に延びるフランジ部34cと内面部34bの下端部から略水平方向に車内側に延びるフランジ部34dとを備えている。
【0040】
ロアフレーム35は、車体上下方向と略直交する略水平方向に延びる下面部35aと車外側に配置されて車体上下方向に延びる外面部35bとを備えて断面略L字状に形成されると共に、下面部35aから略水平方向に車内側に延びるフランジ部35cと外面部35bの上端部から略水平方向に車外側に延びるフランジ部35dとを備えている。
【0041】
バッテリフレーム30は、アッパフレーム34のフランジ部34c、34dとロアフレーム35のフランジ部35c、35dとが溶接等によって接合されることによりアッパフレーム34とロアフレーム35とが接合され、略水平方向に車外側に延びるフランジ部30aと略水平方向に車内側に延びるフランジ部30bとを備えて閉断面状に形成されている。
【0042】
バッテリフレーム30には、アッパフレーム34の上面部34aにカバー部材24、具体的には下側カバー部材26のフランジ部26cが重ね合わせられて取り付けられ、バッテリフレーム30にバッテリモジュール19が収容されたカバー部材24が支持されている。
【0043】
バッテリフレーム30、具体的には側方フレーム33は、フロアフレーム18に略沿って配置されてフロアフレーム18に接続されている。
図7に示すように、バッテリフレーム30とフロアフレーム18とを接続するフレーム接続部36では、フロアフレーム18には、下面部18aにボルト挿通穴18dが形成されると共にボルト挿通穴18dに対応して下面部18aの上面側にナットNが溶接等によって固着されている。
【0044】
一方、バッテリフレーム30、具体的には側方フレーム33には、アッパフレーム34のフランジ部34cにボルト挿通穴34eが形成されると共にロアフレーム35のフランジ部35cにボルト挿通穴35eが形成され、円筒状に形成されてボルトが挿通される筒状部材37がアッパフレーム34のフランジ部34cの上面側にボルト挿通穴34eに対応して溶接等によって固着されている。
【0045】
そして、フロアフレーム18の下面部18aの下方にバッテリフレーム30のアッパフレーム34のフランジ部34cが配置された状態で、ボルトBをバッテリフレーム30の下方側からナットNに螺合させ、バッテリフレーム30とフロアフレーム18とが接続されている。
【0046】
フレーム接続部36は、側方フレーム33の車体前後方向に複数設けられ、車体前後方向において第1クロスメンバ11より車体前方側の位置と、第1クロスメンバ11及び第2クロスメンバ12とそれぞれオーバーラップする位置とに設けられている。
【0047】
このようにして、バッテリユニット20は、フロアフレーム18に取り付けられてフロアパネル9の下方に配設されている。車体1はまた、
図2に二点鎖線で示すように、車体下面を覆うフロントアンダカバー38と、車体下面を覆うフロアアンダカバー39とを備えている。
【0048】
フロントアンダカバー38は、
図4に示すように、バッテリユニット20の前部の車体下方側からモータルーム3の車体下方側まで車体前方側に略水平方向に延びるように設けられている。フロアアンダカバー39は、
図5に示すように、バッテリユニット20の側方フレーム33の下面とサイドシル10の下面とに亘って取り付けられている。
【0049】
本実施形態では、車体1は、
図5及び
図8に示すように、バッテリユニット20の前部とフロアフレーム18との間を遮蔽する第1遮蔽部材41と、バッテリユニット20の両側の側部と左右のフロアフレーム18との間をそれぞれ遮蔽する第2遮蔽部材42とを備えている。第1遮蔽部材41及び第2遮蔽部材42は、モータ2の発熱によるモータルーム3からの熱気を含む空気が車体後方に移動してバッテリユニット20とフロアパネル9との間に流れることを遮蔽するものであり、ゴムなどの弾性材料を用いて形成されている。
【0050】
第1遮蔽部材41は、車体前後方向に所定厚さを有し、バッテリユニット20の前部とフロアパネル9との間を遮蔽するように設けられている。第1遮蔽部材41は、バッテリユニット20の上側カバー部材25の上面部25aとフロアパネル9の間を遮蔽して車幅方向に延びるように配設されている。第1遮蔽部材41は、第1クロスメンバ11より車体前方側に設けられるフレーム接続部36と車体前後方向に略オーバーラップする位置に設けられる。
【0051】
第2遮蔽部材42は、車幅方向に所定厚さを有し、バッテリユニット20の側部とフロアフレーム18との間を遮蔽するように設けられている。第2遮蔽部材42は、バッテリユニット20のバッテリフレーム30、具体的には側方フレーム33のフランジ部30aとフロアフレーム18との間を遮蔽して車体前後方向に延びるように配設されている。
【0052】
第2遮蔽部材42は、第1遮蔽部材41が配設される車体前後方向位置から車体後方側に、バッテリユニット20の側部とフロアフレーム18との間にフレーム接続部36を除いて車体前後方向に略全体に亘って配設されている。
【0053】
第2遮蔽部材42は、後述する
図9に示すように、第1クロスメンバ11より車体前方側に設けられるフレーム接続部36と第1クロスメンバ11とオーバーラップする位置に設けられるフレーム接続部36との間に設けられる第2遮蔽部材42aと、第1クロスメンバ11とオーバーラップする位置に設けられるフレーム接続部36と第2クロスメンバ12とオーバーラップする位置に設けられるフレーム接続部36との間に設けられる第2遮蔽部材42bと、第1クロスメンバ11とオーバーラップする位置に設けられるフレーム接続部36より車体後方側に設けられる第2遮蔽部材42cとを備えている。
【0054】
車体1では、
図6に示すように、車体左側にフロアパネル9の下面側におけるバッテリユニット20とフロアフレーム18との間にケーブル用空間部44が設けられ、ケーブル用空間部44に、車体前後方向に延びるケーブル用配管43が配策されている。
【0055】
ケーブル用空間部44には、ケーブル用配管43の車体下方側を遮蔽してケーブル用空間部44の一部を遮蔽する第3遮蔽部材45が設けられている。第3遮蔽部材45は、車体前後方向に所定厚さを有し、ケーブル用配管43の車体下方側においてバッテリユニット20の上側カバー部材25の側面部25bとフロアフレーム18の側面部18bとの間を遮蔽して車幅方向に延びるように配設されている。第3遮蔽部材45は、第1遮蔽部材41と車体前後方向に略オーバーラップする位置に設けられている。
【0056】
車体1ではまた、
図7に示すように、車体右側にフロアパネル9の下面側におけるバッテリユニット20とフロアフレーム18との間にブレーキ用空間部47が設けられ、ブレーキ用空間部47に、車体前後方向に延びるブレーキ配管46が配策されている。
【0057】
ブレーキ用空間部47には、ブレーキ配管46の車体下方側を遮蔽してブレーキ用空間部47の一部を遮蔽する第4遮蔽部材48が設けられている。第4遮蔽部材48は、車体前後方向に所定厚さを有し、ブレーキ配管46の車体下方側においてバッテリユニット20の上側カバー部材25の側面部25bとフロアフレーム18の側面部18bとの間を遮蔽して車幅方向に延びるように配設されている。第4遮蔽部材48は、第1遮蔽部材41と車体前後方向に略オーバーラップする位置に設けられている。
【0058】
第3遮蔽部材45及び第4遮蔽部材48についても、モータルーム3からの熱気を含む空気が車体後方に移動してバッテリユニット20とフロアパネル9との間に流れることを遮蔽するものであり、ゴムなどの弾性材料を用いて形成されている。
【0059】
第1、第2、第3及び第4遮蔽部材41、42、45、48はそれぞれ、バッテリユニット20に接着剤等を用いて取り付けられ、第1、第2、第3及び第4遮蔽部材41、42、45、48が取り付けられたバッテリユニット20がフロアフレーム18に取り付けられることで、バッテリユニット20とフロアパネル9との間の所定位置に配設される。
【0060】
図9は、モータルームからの空気の流れを説明するための説明図である。車体1では、
図9に示すように、走行時に、モータ2の発熱によるモータルーム3からの熱気を含む空気は、矢印L1に示すように、フロアパネル9の下面側を車体後方に流れるが、フロアパネル9とバッテリユニット20との間に第1遮蔽部材41が配設されているので、第1遮蔽部材41の車体前方側において車幅方向外側に移動される。
【0061】
車幅方向外側に移動されたモータルーム3からの熱気を含む空気は、バッテリユニット20とフロアフレーム18との間に第2遮蔽部材42が配設されているので、バッテリユニット20の車幅方向外側においてフロアパネル9の下方側におけるフロアフレーム18とサイドシル10との間を通じて車体後方に流れる。
【0062】
このように、車体1には、フロアパネル9の下方側におけるフロアフレーム18とサイドシル10との間にモータルーム3からの空気が車体後方に流れる空気流通通路50が設けられている。空気流通通路50は、フロアパネル9、サイドシル10、フロアアンダカバー39、バッテリユニット20及びフロアフレーム18によって略閉断面状に形成されている。
【0063】
本実施形態では、ケーブル用空間部44に第3遮蔽部材45が備えられているが、第3遮蔽部材45を備えないようにすることも可能である。また、ブレーキ用空間部47についても、第4遮蔽部材48を備えないようにすることも可能である。
【0064】
このように、本実施形態に係る電動車両は、バッテリユニット20の前部とフロアパネル9との間を遮蔽して車幅方向に延びる第1遮蔽部材41と、バッテリユニット20の両側の側部と左右一対のフロアフレーム18との間をそれぞれ遮蔽して車体前後方向に延びる第2遮蔽部材42とを備え、フロアパネル9の下方側におけるフロアフレーム18とサイドシル10との間にモータルーム3からの空気が流れる空気流通通路50が設けられる。
【0065】
これにより、モータルーム3からの熱気を含む空気がフロアパネル9の下方側を車体後方に移動するときに、第1遮蔽部材41によってバッテリユニット20の前部とフロアパネル9との間を流れることが遮蔽されると共に第2遮蔽部材42によってバッテリユニット20の両側の側部とフロアフレーム18との間を流れることが遮蔽され、フロアフレーム18とサイドシル10との間に設けられた空気流通通路50を通じて車体後方に移動させることができる。
【0066】
したがって、モータ2が車両前方のモータルーム3内に配置されると共にバッテリユニット20がフロアパネル9の下方に配設された電動車両において、モータルーム3からの熱気がバッテリユニット20とフロアパネル9との間に流れてバッテリモジュール19の温度が許容温度、例えば60度などの許容温度を超えることを抑制することができる。バッテリモジュール19が上下方向に積層される場合においても、バッテリモジュール19の温度が許容温度を超えることを抑制することができる。
【0067】
また、フロアパネル9の下方側におけるバッテリユニット20とフロアフレーム18との間に設けられたケーブル用空間部44にケーブル用空間部44の一部を遮蔽する第3遮蔽部材45が備えられる。これにより、ケーブル用空間部44にケーブル用配管43が配策される場合においても、モータルーム3からの熱気が第3遮蔽部材45によってケーブル用空間部44を通じてバッテリユニット20とフロアパネル9との間に流れることを抑制することができる。
【0068】
また、フロアパネル9の下方側におけるバッテリユニット20とフロアフレーム18との間に設けられたブレーキ用空間部47にブレーキ用空間部47の一部を遮蔽する第4遮蔽部材48が備えられる。これにより、ブレーキ用空間部47にブレーキ配管46が配策される場合においても、モータルーム3からの熱気が第4遮蔽部材48によってバッテリユニット20とフロアパネル9との間に流れることを抑制することができる。
【0069】
図10は、本発明の第2実施形態に係る電動車両の車体の断面図である。第2実施形態に係る電動車両の車体は、第1実施形態に係る電動車両の車体1と、フロアパネルのトンネル部内に配管が配策されると共に配管に第1遮蔽部材の一部が取り付けられること以外は同様であるので、同様の構成については説明を省略する。
【0070】
第2実施形態に係る電動車両の車体61についても、
図10に示すように、バッテリユニット20の前部とフロアパネル9との間を遮蔽して車幅方向に延びる第1遮蔽部材41と、バッテリユニット20の両側の側部と左右のフロアフレーム18との間をそれぞれ遮蔽して車体前後方向に延びる第2遮蔽部材42とを備え、フロアパネル9の下方側におけるフロアフレーム18とサイドシル10との間にモータルーム3からの空気が流れる空気流通通路50が設けられている。
【0071】
車体61では、フロアパネル9のフロアトンネル部13内に車体前後方向に延びるように配管51が配策されている。第1遮蔽部材41は、バッテリユニット20の上側カバー部材25の上面部25aとフロアパネル9の間を遮蔽して車幅方向に延びるように配設され、上側カバー部材25の上面部25aの膨出部25dより車体上方側に配置される上側遮蔽部材41aと上側カバー部材25の上面部25aの膨出部25dより車体下方側に配置される下側遮蔽部材41bとに分割して形成されている。
【0072】
第1遮蔽部材41は、上側遮蔽部材41aが配管51に組み付けられた状態でフロアパネル9に接着剤等を用いて取り付けられ、下側遮蔽部材41bがバッテリユニット20に接着剤等を用いて取り付けられ、その後に、バッテリユニット20がフロアフレーム18に取り付けられることで、バッテリユニット20とフロアパネル9との間の所定位置に配設される。
【0073】
このように、本実施形態に係る電動車両においても、バッテリユニット20の前部とフロアパネル9との間を遮蔽して車幅方向に延びる第1遮蔽部材41と、バッテリユニット20の両側の側部と左右一対のフロアフレーム18との間をそれぞれ遮蔽して車体前後方向に延びる第2遮蔽部材42とを備え、フロアパネル9の下方側におけるフロアフレーム18とサイドシル10との間にモータルーム3からの空気が流れる空気流通通路50が設けられる。
【0074】
これにより、モータルーム3からの熱気がバッテリユニット20とフロアパネル9との間に流れてバッテリモジュール19の温度が許容温度を超えることを抑制することができる。
【0075】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように、本発明によれば、モータが車両前方のモータルーム内に配置されると共にバッテリユニットがフロアパネルの下方に配設された電動車両において、モータルームからの熱気がバッテリユニットとフロアパネルとの間に流れてバッテリモジュールの温度が許容温度を超えることを抑制することが可能となるから、この種の電動車両において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0077】
1 車体
2 モータ
3 モータルーム
9 フロアパネル
10 サイドシル
18 フロアフレーム
20 バッテリユニット
41 第1遮蔽部材
42 第2遮蔽部材
43 ケーブル用配管
44 ケーブル用空間部
45 第3遮蔽部材
46 ブレーキ配管
47 ブレーキ用空間部
48 第4遮蔽部材
50 空気流通通路