(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】2成分現像剤
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20220531BHJP
G03G 9/113 20060101ALI20220531BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
G03G9/097 374
G03G9/113 351
G03G9/087 325
(21)【出願番号】P 2018061257
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯岡 淳
(72)【発明者】
【氏名】萱森 隆成
(72)【発明者】
【氏名】舎川 直哉
(72)【発明者】
【氏名】松原 政治
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 育子
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-020919(JP,A)
【文献】特開2015-210483(JP,A)
【文献】特開2015-163950(JP,A)
【文献】特開2019-164292(JP,A)
【文献】特開2010-024095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー母体粒子表面に外添剤を有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーと、キャリアとを含有する2成分現像剤であって、
前記外添剤が、少なくともランタン含有チタン酸化合物を含有し、
前記ランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子の個数平均一次粒径が、320nm以下であり、
前記ランタン含有チタン酸化合物として、ランタン含有チタン酸ストロンチウムを含有し、
前記キャリアを構成するキャリア粒子が、芯材粒子と、当該芯材粒子表面を被覆する被覆用樹脂層とを有し、当該被覆用樹脂層が、脂環式メタアクリレートモノマーの重合体を含有
し、
前記脂環式メタアクリレートモノマーが、前記重合体において共重合比率で70質量%以上であり、かつ、
前記トナー母体粒子が、少なくともスチレン・アクリル樹脂を含有することを特徴とする2成分現像剤。
【請求項2】
前記ランタン含有チタン酸化合物を含有する前記外添剤粒子の、SrO/LaO/TiO
2
のモル比の値が、1.00/0.07/1.00~1.00/0.65/1.00の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の2成分現像剤。
【請求項3】
トナー母体粒子表面に外添剤を有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーと、キャリアとを含有する2成分現像剤であって、
前記外添剤が、少なくともランタン含有チタン酸化合物を含有し、前記ランタン含有チタン酸化合物として、ランタン含有チタン酸カルシウムを含有し、かつ、
前記キャリアを構成するキャリア粒子が、芯材粒子と、当該芯材粒子表面を被覆する被覆用樹脂層とを有し、当該被覆用樹脂層が、脂環式メタアクリレートモノマーの重合体を含有すること特徴とする2成分現像剤。
【請求項4】
前記外添剤が、1種類のチタン酸化合物を含有する外添剤粒子を含むことを特徴とする請求項1
から請求項
3までのいずれか一項に記載の2成分現像剤。
【請求項5】
前記ランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子の個数平均一次粒径が、300nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項
4までのいずれか一項に記載の2成分現像剤。
【請求項6】
前記ランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子の個数平均一次粒径が、10~100nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項
5までのいずれか一項に記載の2成分現像剤。
【請求項7】
前記ランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子の平均円形度が、0.82~0.95の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項
6までのいずれか一項に記載の2成分現像剤。
【請求項8】
前記ランタン含有チタン酸化合物におけるランタン含有率が、3.0~15.0質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項
7までのいずれか一項に記載の2成分現像剤。
【請求項9】
前記ランタン含有チタン酸化合物の含有率が、前記トナー母体粒子の全質量に対して、0.1~1.0質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項
8までのいずれか一項に記載の2成分現像剤。
【請求項10】
前記脂環式メタアクリレートモノマーが、前記重合体において共重合比率で70%以上であることを特徴とする請求項
3に記載の2成分現像剤。
【請求項11】
前記トナー母体粒子が、少なくともビニル系樹脂を含有することを特徴とする請求項
3又は請求項10
に記載の2成分現像剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2成分現像剤に関し、特に、連続印刷時の帯電安定性及び画像濃度安定性に優れ、かつ、画像カブリの発生を抑制することができる2成分現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の複写機やプリンターでは、静電荷像現像用トナーと磁性粉体からなる静電荷現像用キャリアで構成される2成分現像剤が高速現像に有利なことから主流となっている。
トナーと機械的に撹拌することでトナーに帯電量を付与する役目であるキャリアに求められる機能としては、トナーへの適正な摩擦帯電付与性、流動性、現像性、及び、長期使用に耐え得る高耐久性等がある。
これらの機能を向上させるために、強磁性金属又はその酸化物からなる芯材粒子表面に樹脂が被覆された被覆用樹脂層を有する樹脂被覆キャリアと呼ばれるタイプのキャリアが広く用いられている。このような被覆用樹脂層としては、高温高湿環境下での帯電付与能力の低下を抑制でき、適度な機械的強度を有している脂環式メタアクリレートモノマーからなる樹脂が広く使用され、外添剤としては、帯電制御剤である二酸化チタンが広く使われている。
【0003】
キャリアが現像機内で長期間撹拌されていると、外添剤がキャリアに移行し、キャリアの被覆用樹脂層に付着、埋没することでキャリア表面が汚染され、帯電性能が悪化し、画像濃度の低下、画像カブリなどが発生する。
特許文献1では、被覆用樹脂層で被覆してなるキャリア粒子の粒径、体積抵抗率、比重及び形状を制御することで、連続印刷時の画像を安定化させる現像剤が提案されている。
また、特許文献2では、キャリア汚染対策として、トナーの外添剤として使用するチタン酸化合物の体積平均粒径を3~7μmの範囲内にして、ポリメタクリル酸シクロヘキシル樹脂で被覆したキャリア粒子を組み合わせることで、キャリア粒子へのチタン酸化合物の埋没を抑制する例が報告されている。
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載のトナーでは、連続印刷時の画質安定性が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-133618号公報
【文献】特開2015-210483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、連続印刷時の帯電安定性及び画像濃度安定性に優れ、かつ、画像カブリの発生を抑制することができる2成分現像剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、外添剤としてランタン含有チタン酸化合物を含有し、かつ、キャリア粒子を構成する被覆用樹脂層として特定の重合体を用いることで、連続印刷時の帯電安定性及び画像濃度安定性に優れ、画像カブリの発生を抑制することができる2成分現像剤を提供することができることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.トナー母体粒子表面に外添剤を有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーと、キャリアとを含有する2成分現像剤であって、
前記外添剤が、少なくともランタン含有チタン酸化合物を含有し、前記ランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子の個数平均一次粒径が、320nm以下であり、
前記ランタン含有チタン酸化合物として、ランタン含有チタン酸ストロンチウムを含有し、
前記キャリアを構成するキャリア粒子が、芯材粒子と、当該芯材粒子表面を被覆する被覆用樹脂層とを有し、当該被覆用樹脂層が、脂環式メタアクリレートモノマーの重合体を含有し、
前記脂環式メタアクリレートモノマーが、前記重合体において共重合比率で70質量%以上であり、かつ、
前記トナー母体粒子が、少なくともスチレン・アクリル樹脂を含有することを特徴とする2成分現像剤。
2.前記ランタン含有チタン酸化合物を含有する前記外添剤粒子の、SrO/LaO/TiO
2
のモル比の値が、1.00/0.07/1.00~1.00/0.65/1.00の範囲内であることを特徴とする第1項に記載の2成分現像剤。
3.トナー母体粒子表面に外添剤を有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーと、キャリアとを含有する2成分現像剤であって、
前記外添剤が、少なくともランタン含有チタン酸化合物を含有し、前記ランタン含有チタン酸化合物として、ランタン含有チタン酸カルシウムを含有し、かつ、
前記キャリアを構成するキャリア粒子が、芯材粒子と、当該芯材粒子表面を被覆する被覆用樹脂層とを有し、当該被覆用樹脂層が、脂環式メタアクリレートモノマーの重合体を含有すること特徴とする2成分現像剤。
【0008】
4.前記外添剤が、1種類のチタン酸化合物を含有する外添剤粒子を含むことを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の2成分現像剤。
【0009】
5.前記ランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子の個数平均一次粒径が、300nm以下であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の2成分現像剤。
【0010】
6.前記ランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子の個数平均一次粒径が、10~100nmの範囲内であることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の2成分現像剤。
【0011】
7.前記ランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子の平均円形度が、0.82~0.95の範囲内であることを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載の2成分現像剤。
【0012】
8.前記ランタン含有チタン酸化合物におけるランタン含有率が、3.0~15.0質量%の範囲内であることを特徴とする第1項から第7項までのいずれか一項に記載の2成分現像剤。
【0015】
9.前記ランタン含有チタン酸化合物の含有率が、前記トナー母体粒子の全質量に対して、0.1~1.0質量%の範囲内であることを特徴とする第1項から第8項までのいずれか一項に記載の2成分現像剤。
【0016】
10.前記脂環式メタアクリレートモノマーが、前記重合体において共重合比率で70%以上であることを特徴とする第3項に記載の2成分現像剤。
11.前記トナー母体粒子が、少なくともビニル系樹脂を含有することを特徴とする第3項又は第10項に記載の2成分現像剤。
【発明の効果】
【0017】
本発明の上記手段により、連続印刷時の帯電安定性及び画像濃度安定性に優れ、かつ、画像カブリの発生を抑制することができる2成分現像剤を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
従来の酸化チタンは、脂環式メタアクリレートモノマーの重合体を含有する被覆用樹脂層との帯電序列が離れているために、キャリア帯電量の絶対値が変動してしまう。これに対して、本発明に係るチタン酸化合物は、前記酸化チタンよりも帯電序列が脂環式メタアクリレートモノマーと近く、さらにチタン酸化合物にランタンを含有させることで、含有していないチタン酸化合物よりも電気抵抗が下がっている。そのため、連続印刷時に現像剤に機械的負荷がかかって、キャリア表面に本発明に係るランタン含有チタン酸化合物が付着しても、キャリアの帯電量変化を抑制することができる。
さらに、ランタンを含有させることでチタン酸化合物は、ランタンを含有しないものよりも、粒子形状が球形状に近づき、かつ、比重が小さくなる。球形状に近づくことで直方体状粒子よりもキャリア表面への付着強度が低下し、比重が小さくなることでキャリアの被覆用樹脂層へのチタン酸化合物の埋没が起こりづらくなる。その結果、キャリア表面の汚染抑制にもつながると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の2成分現像剤は、トナー母体粒子表面に外添剤を有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーと、キャリアとを含有する2成分現像剤であって、前記外添剤が、少なくともランタン含有チタン酸化合物を含有し、かつ、前記キャリアを構成するキャリア粒子が、芯材粒子と、当該芯材粒子表面を被覆する被覆用樹脂層とを有し、当該被覆用樹脂層が、脂環式メタアクリレートモノマーの重合体を含有することを特徴とする。
この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
【0019】
本発明の実施態様としては、前記脂環式メタアクリレートモノマーが、前記重合体において共重合比率で70%以上であることが、含有率が高くなることで、被覆用樹脂層の帯電序列もチタン酸化合物に近づく点で好ましい。
【0020】
前記外添剤が、1種類のチタン酸化合物を含有する外添剤粒子を含むことが、外添剤の帯電性能が単一で決まり、ばらつきが生じにくい点で好ましい。
【0021】
また、前記ランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子の個数平均一次粒径が、300nm以下であることが好ましく、10~100nmの範囲内であることが、帯電制御剤としての機能を効果的に発現させ、帯電性能を安定化できる点でより好ましい。
【0022】
前記ランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子の平均円形度が、0.82~0.95の範囲内であることが、キャリア表面への付着や埋没を防げ、また、トナーへの付着力の低下を抑制することができる点で好ましい。
【0023】
前記ランタン含有チタン酸化合物におけるランタン含有率が、3.0~15.0質量%の範囲内であることが、ランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子の形状が球形状に近くなり、キャリア表面への付着強度をより小さくすることができ、また、ランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子の粒度をコントロールしやすくなり、粗大粒子の発生を防ぎ、現像剤中の帯電にばらつきが出ることを防げる点で好ましい。
【0024】
前記ランタン含有チタン酸化合物として、ランタン含有チタン酸ストロンチウム又はランタン含有チタン酸カルシウムを含有することが、粒径制御のしやすさの観点から好ましい。
【0025】
前記ランタン含有チタン酸化合物の含有率が、前記トナー母体粒子の全質量に対して、0.1~1.0質量%の範囲内であることが、異なる温度・湿度環境下における帯電量の変動を抑制する観点から好ましい。
【0026】
また、前記トナー母体粒子が、少なくともビニル系樹脂を含有することが、異なる温度・湿度環境下における帯電量の変動を抑制する観点から好ましい。
【0027】
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0028】
[本発明の2成分現像剤の概要]
本発明の2成分現像剤は、トナー母体粒子表面に外添剤を有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーと、キャリアとを含有する2成分現像剤であって、前記外添剤が、少なくともランタン含有チタン酸化合物を含有し、かつ、前記キャリアを構成するキャリア粒子が、芯材粒子と、当該芯材粒子表面を被覆する被覆用樹脂層とを有し、当該被覆用樹脂層が、脂環式メタアクリレートモノマーの重合体を含有することを特徴とする。
【0029】
なお、本発明において、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをトナー粒子といい、トナー粒子の集合体をトナーという。トナー母体粒子は、一般的には、そのままでもトナー粒子として用いることもできるが、本発明においては、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをトナー粒子として用いる。
【0030】
<外添剤>
本発明に係る外添剤は、少なくともランタン含有チタン酸化合物を含有する。
また、本発明に係る外添剤は、1種類のチタン酸化合物を含有する外添剤粒子を含むことが好ましい。ここでいう「チタン酸化合物」とは、ランタン含有チタン酸化合物と、ランタンを含有しないランタン非含有チタン酸化合物の両方を含む化合物をいう。すなわち、本発明に係る外添剤は、ランタン含有チタン酸化合物及びランタン非含有チタン酸化合物のうち、1種類のチタン酸化合物を含有する外添剤粒子を含むことが好ましい。
【0031】
(ランタン含有チタン酸化合物)
ランタン含有チタン酸化合物としては、ランタン含有チタン酸カリウム、ランタン含有チタン酸バリウム、ランタン含有チタン酸カルシウム、ランタン含有チタン酸マグネシウム、ランタン含有チタン酸鉛、ランタン含有チタン酸アルミニウム、ランタン含有チタン酸リチウム等が好ましく用いられ、粒径の大きさを制御しやすい観点からは、ランタン含有チタン酸カルシウム、ランタン含有チタン酸ストロンチウム及びランタン含有チタン酸マグネシウムがより好ましく用いられ、ランタンチタン含有チタン酸ストロンチウム及びランタン含有チタン酸カルシウムが、粒径制御のしやすさの観点から特に好ましい。
なお、ランタン非含有チタン酸化合物としては、上記で列挙したランタン含有チタン酸化合物の例示において、ランタンを含有しないチタン酸化合物が挙げられる。
【0032】
(ランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子の個数平均一次粒径)
前記ランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子の個数平均一次粒径は、300nm以下であることが好ましく、すなわち、300nmより大きなランタン含有チタン酸化合物を含まないことが好ましい。特に、10~100nmの範囲内であることが好ましい。
当該ランタン含有チタン酸化合物の個数平均一次粒径を、10nm以上とすることで、帯電制御剤としての機能を効果的に発現させ、100nm以下とすることで、トナーとキャリアとの接触点を十分に持たせ、帯電性能を安定化できる。粒径が大きなランタン含有チタン酸化合物が含まれると、体積当たりの表面積が小さく、トナーとキャリアとの接触点が十分に得られないために、帯電能力を十分に発揮できない。また、トナーの帯電量にばらつきが生じてしまうことから、個数平均一次粒径が300nmより大きなチタン酸化合物が含まれないことが好ましい。
【0033】
(個数平均一次粒径の測定方法)
外添剤としてのランタン含有チタン酸化合物の個数平均一次粒径は、トナー粒子に外添剤を外添(分散)させた後、外添剤の一次粒子100個を走査型電子顕微鏡「JSM-7401F」(日本電子(株)製)にて40000倍で観察し、一次粒子の画像解析によって粒子ごとの最長径及び最短径を測定し、この中間値から球相当径として測定する。そして、測定した一次粒径の100個の平均を、個数平均一次粒径とする。
【0034】
(ランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子の平均円形度)
前記ランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子の平均円形度は、0.82~0.95の範囲内であることが好ましい。前記平均円形度が0.82以上であると、前記ランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子が直方体に近くなることを防ぐことができる。その結果、キャリア表面に付着、埋没することもない。また、前記平均円形度が、0.95以下であると、前記ランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子が球形に近くなることを防ぐことができ、その結果、トナーへの付着力が弱くなることもない。
【0035】
(平均円形度の測定方法)
ランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子における平均円形度の測定は、100個のランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子について走査型電子顕微鏡「JSM-7401F」(日本電子(株)製)にて40000倍の写真を撮影し、この写真画像をスキャナーにより取り込む。画像処理解析装置「LUZEX(登録商標) AP」((株)ニレコ製)を用いて画像解析することにより行う。
解析された画像から円相当径周囲長及び周囲長を求めた上で、下記式(1)に従って各々の外添剤粒子(ランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子)の円形度を求め、それらを平均して求める。
式(1):円形度=円相当径周囲長/周囲長=[2×(Aπ)1/2]/PM
上式において、Aは前記外添剤粒子の投影面積、PMは前記外添剤粒子の周囲長を表す。円形度は、1.0の場合は真球であり、数値が低いほど外周に凹凸があり、異形の度合いが高くなる。
【0036】
前記ランタン含有チタン酸化合物におけるランタン含有率は、3.0~15.0質量%の範囲内であることが好ましい。前記ランタン含有率が3.0質量%以上であると、ランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子の形状が球形状に近くなり、吸着性をより小さくすることができ、また、前記ランタン含有率が15.0質量%以下であると、ランタン含有チタン酸化合物を含有する外添剤粒子の粒度をコントロールしやすくなり、粗大粒子の発生を防ぎ、現像剤中の帯電にばらつきが出ることを防げる。
【0037】
ランタン含有チタン酸化合物のトナー母体粒子への含有率に制限はないが、トナー母体粒子の全量に対して、0.1~1.0質量%の範囲内とすることが好ましい。これにより、異なる温度・湿度環境下における帯電量の変動を抑制するという効果を得ることができる。
【0038】
(ランタン含有チタン酸化合物の製造方法)
ランタン含有チタン酸化合物の製造方法として、ランタン含有チタン酸ストロンチウムを製造する方法を一例に挙げて説明するが、以下の方法に限定されない。
【0039】
外添剤として用いることができるランタン含有チタン酸ストロンチウム微細粉末は、代表的には、常圧加熱反応法により、ペロブスカイト型チタン酸化合物を製造する方法において、二酸化チタン源としてチタン化合物の加水分解物の鉱酸解膠品を用い、またストロンチウム源として水溶性酸性化合物を用い、ランタン源として水溶性酸性化合物用い、それらの混合液に、50℃以上でアルカリ水溶液を添加しながら反応させる方法で製造される。
【0040】
前記二酸化チタン源としては、チタン化合物の加水分解物の鉱酸解膠品を用いる。具体的には硫酸法で得られた、SO3含有量が1.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下のメタチタン酸を塩酸でpHを25℃において0.8~1.5に調整して解膠したものを用いることで、分布良好なチタン酸ストロンチウム微細粉末が得られるので好ましい。
前記ストロンチウム源としては、硝酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム等を使用することができる。
前記ランタン源としては、硝酸ランタン六水和物、塩化ランタン七水和物等を使用することができる。
前記アルカリ水溶液としては、苛性アルカリが使用できるが水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
【0041】
前記製造方法において、得られるランタン含有チタン酸ストロンチウム微細粉末の粒径に影響を及ぼす因子としては、反応時における二酸化チタン源、ストロンチウム源及びランタン源の混合割合、反応初期の二酸化チタン源濃度、アルカリ水溶液を添加するときの温度及び添加速度などが挙げられ、目的の粒径及び粒度分布のものを得るために適宜調整すればよい。
なお、反応過程における炭酸ストロンチウムの生成を防ぐため、窒素ガス雰囲気下で反応する等によって、炭酸ガスの混入を防ぐことが好ましい。
【0042】
反応時における二酸化チタン源に対するストロンチウム源のモル比(SrO/TiO2)は0.9~1.4の範囲内が好ましく、0.95~1.15の範囲内が特に好ましい。
ランタン含有チタン酸化合物におけるランタン含有率は、反応時におけるランタン源の配合比率により調整することが可能であり、本発明では、当該ランタン含有率を、3.4~14.9質量%の範囲内とすることが好ましい。
反応初期の二酸化チタン源(TiO2)のモル濃度としては、0.05~1.0モル/Lの範囲内であることが好ましく、0.1~0.8モル/Lの範囲内であることが特に好ましい。
【0043】
アルカリ水溶液を添加するときの温度は、高いほど結晶性の良好なものが得られるが、実用的には50~101℃の範囲内が適切である。
アルカリ水溶液の添加速度は得られる粉末の粒径に最も影響し、添加速度が遅いほど大きな粒径のランタン含有チタン酸ストロンチウム粉末が得られ、添加速度が速いほど小さな粒径のチタン酸ストロンチウム粉末が得られる。アルカリ水溶液の添加速度は、仕込原料に対し好ましくは0.001~1.0当量/h、より好ましくは0.005~0.5当量/hであり、得ようとする粒径に応じて適宜調整する。アルカリ水溶液の添加速度は目的に応じて途中で変更することもできる。
【0044】
なお、ランタン含有チタン酸カルシウムの場合は、前記ストロンチウム源の代わりにカルシウム源として、硝酸カルシウム、塩化カルシウム等を使用することで製造することができる。
【0045】
<ランタン含有チタン酸化合物の表面修飾>
表面修飾の方法に特に制限はなく、例えば表面修飾をする場合、表面修飾剤としては、ヘキサメチルジシラザンのようなアルキルシラザン系化合物、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシランのようなアルキルアルコキシシラン系化合物、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシランのようなクロロシラン系化合物、シリコーンオイル、シリコーンワニスなどを用いることができる。これらの表面修飾剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0046】
また、具体的な処理方法としては、例えば、本発明に係るランタン含有チタン酸化合物の粒子に表面修飾剤を噴霧し、又は気化した表面修飾剤を混合し、加熱処理する方法が挙げられる。このとき、水、アミン、その他の触媒を使用しても良い。ここで、この乾式表面修飾は窒素などの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
また、溶媒に表面修飾剤を溶解し、これに本発明に係るランタン含有チタン酸化合物を混合分散した後、必要に応じて加熱処理を行い、さらに乾燥処理を行って、表面を改質したランタン含有チタン酸化合物の粒子を得ることができる。ここで、表面修飾剤はランタン含有チタン酸化合物の粒子を溶媒に混合分散した後又は同時に加えても良い。
【0047】
(その他の外添剤)
本発明に係るトナーには、その効果を阻害しない限り、本発明に係るランタン含有チタン酸化合物のほかに、流動性や帯電性を改善する目的で他の外添剤を添加することもできる。
他の外添剤としては、例えば脂肪酸金属、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、二酸化チタン微粒子などの無機酸化物微粒子が挙げられる。
【0048】
<トナー母体粒子>
本発明に係るトナー母体粒子は、少なくとも結着樹脂を含有し、その他必要に応じて、離型剤(ワックス)、着色剤及び荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。
【0049】
<結着樹脂>
本発明に係る結着樹脂は、非晶性樹脂と結晶性樹脂を含有することが好ましい。結着樹脂は、非晶性樹脂のみによって構成されていてもよい。異なる温度・湿度環境下における帯電量の変動を抑制する観点から、少なくとも後述するビニル系樹脂を含有することが好ましい。
【0050】
<非晶性樹脂>
本発明に係る非晶性樹脂としては、ビニル系樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂等を含有することが好ましい。また、本発明においては、中でも、ビニル系樹脂であることが好ましい。これは、ビニル系樹脂は、主鎖が炭素鎖で構成されていることから、後述する結晶性樹脂に好ましく用いられる結晶性ポリエステル樹脂となじみにくく、非晶性樹脂と結晶性樹脂との相溶をより抑えることができるためである。
【0051】
本発明に係る非晶性樹脂とは、当該樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂である。
【0052】
DSC測定において1度目の昇温過程におけるガラス転移温度をTg1とし、2度目の昇温過程におけるガラス転移温度をTg2としたとき、上記非晶性樹脂のTg1が、35~80℃の範囲内であることが好ましく、特に45~65℃の範囲内であることが好ましい。また、上記非晶性樹脂のTg2は20~70℃の範囲内であることが好ましく、特に30~55℃の範囲内であることが好ましい。
【0053】
(ビニル系樹脂)
ビニル系樹脂とは、少なくともビニル系単量体を用いた重合により得られる樹脂である。
【0054】
非結晶性のビニル系樹脂として、具体的には、アクリル樹脂及びスチレン・アクリル樹脂などが挙げられる。中でも、非結晶性のビニル系樹脂としては、スチレン系単量体及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体を用いて形成されるスチレン・アクリル樹脂が好ましい。
以下に、スチレン・アクリル樹脂の形成が可能なスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例を示すが、本発明で使用されるスチレン・アクリル樹脂の形成に使用可能なものは以下に示すものに限定されない。
【0055】
(1)スチレン系単量体
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン及びこれらの誘導体などが挙げられる。これらスチレン系単量体は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
【0056】
(2)(メタ)アクリル酸エステル系単量体
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。
【0057】
上記スチレン・アクリル樹脂の含有量は、結着樹脂の全量に対して、70質量%以上であることが好ましい。この範囲であれば、十分に帯電性改善の効果を発現することができる。
【0058】
なお、重合性単量体としては、上記以外にも、第三の重合性単量体を使用することもできる。第三の重合性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、ビニル酢酸等の酸単量体及びアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブチレン塩化ビニル、N-ビニルピロリドン及びブタジエン等が挙げられる。
重合性単量体としては、さらに、多官能ビニル単量体を使用してもよい。多官能ビニル単量体としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等のジアクリレート、ジビニルベンゼン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三級以上のアルコールのジメタクリレート及びトリメタクリレート等が挙げられる。
【0059】
(スチレン・アクリル樹脂の製造方法)
スチレン・アクリル樹脂は、乳化重合法で作製されることが好ましい。乳化重合は、後述の水系媒体中にスチレン、アクリル酸エステルなどの重合性単量体を分散し重合することによって得ることができる。水系媒体に重合性単量体を分散するためには界面活性剤を用いることが好ましく、重合には公知の重合開始剤、連鎖移動剤を用いることができる。
【0060】
(重合開始剤)
重合開始剤としては、公知の種々の重合開始剤が好適に用いられる。具体的には、例えば、過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化-tert-ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、ジ-t-ブチルペルオキシド、テトラリンヒドロペルオキシド、1-フェニル-2-メチルプロピル-1-ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸-tert-ヒドロペルオキシド、過ギ酸-tert-ブチル、過酢酸-tert-ブチル、過安息香酸-tert-ブチル、過フェニル酢酸-tert-ブチル、過メトキシ酢酸-tert-ブチル、過N-(3-トルイル)パルミチン酸-tert-ブチルなどの過酸化物類;2,2′-アゾビス(2-アミノジプロパン)塩酸塩、2,2′-アゾビス-(2-アミノジプロパン)硝酸塩、1,1′-アゾビス(1-メチルブチロニトリル-3-スルホン酸ナトリウム)、4,4′-アゾビス-4-シアノ吉草酸、ポリ(テトラエチレングリコール-2,2′-アゾビスイソブチレート)などのアゾ化合物などが挙げられる。
【0061】
(連鎖移動剤)
連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、アルキルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン;n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート、ステアリル-3-メルカプトプロピオネートなどのメルカプトプロピオン酸、メルカプト脂肪酸エステル及びスチレンダイマーなどを用いることができる。これらは1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0062】
また、非晶性樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量は、重量平均分子量(Mw)で10000~100000の範囲内であることが好ましい。本発明において、非晶性樹脂のGPCによる分子量は、以下のようにして測定される値である。
測定試料(非晶性樹脂)を室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mLになるようにテトラヒドロフランに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得る。装置「HLC-8120GPC」(東ソー社製)及びカラム「TSKgel guardcolumn SuperHZ-L」及び「TSKgel SuperHZM-M」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/minで流し、上記で調製した試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒とともに装置内に注入する。そして、屈折率検出器(RI検出器)を用いて測定試料を検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いる。
【0063】
また、結晶性樹脂として、後述のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含有する場合には、非晶性樹脂として、当該ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に使用される非晶性樹脂と同種の樹脂を含有することが好ましい。
【0064】
ここで、「同種の樹脂」とは、繰り返し単位中に特徴的な化学結合が共通に含まれていることを意味する。ここで、「特徴的な化学結合」とは、物質・材料研究機構(NIMS)物質・材料データベース(http://polymer.nims.go.jp/PoLyInfo/guide/jp/term_polymer.html)に記載の「ポリマー分類」に従う。すなわち、ポリアクリル、ポリアミド、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリジエン、ポリエステル、ポリハロオレフィン、ポリイミド、ポリイミン、ポリケトン、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフェニレン、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリビニル及びその他のポリマーの計22種によって分類されたポリマーを構成する化学結合を「特徴的な化学結合」という。
また、樹脂が共重合体である場合における「同種の樹脂」とは、共重合体を構成する複数のモノマー種の化学構造において、上記化学結合を有するモノマー種を構成単位としている場合、特徴的な化学結合を共通に有する樹脂同士を指す。したがって、樹脂自体の示す特性が互いに異なる場合や、共重合体中を構成するモノマー種のモル成分比が互いに異なる場合であっても、特徴的な化学結合を共通に有していれば同種の樹脂とみなす。
【0065】
例えば、スチレン、ブチルアクリレート及びアクリル酸によって形成される樹脂(又は樹脂セグメント)と、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸によって形成される樹脂(又は樹脂セグメント)とは、少なくともポリアクリルを構成する化学結合を有しているため、これらは同種の樹脂である。さらに例示すると、スチレン、ブチルアクリレート及びアクリル酸によって形成される樹脂(又は樹脂セグメント)と、スチレン、ブチルアクリレート、アクリル酸、テレフタル酸及びフマル酸によって形成される樹脂(又は樹脂セグメント)とは、互いに共通する化学結合として、少なくともポリアクリルを構成する化学結合を有している。したがって、これらは同種の樹脂である。
【0066】
<結晶性樹脂>
本発明に係る結晶性樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性樹脂とが化学的に結合したハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
【0067】
本発明に係るトナー中にハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含有する場合、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、トナー母体粒子中に5~30質量%の範囲内で含まれることが好ましく、より好ましくは10~20質量%の範囲内である。トナー母体粒子中にハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂が、30質量%以下で含まれていると、結晶成長しきれないポリエステル樹脂が存在することを回避できるため、この結果、定着時の結晶を十分に成長させることができるため好ましい。一方、トナー母体粒子中にハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂が、5質量%以上含まれていると、結晶化に必要なハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を充分な量確保でき、この結果、定着時の結晶を十分に成長させることができるため好ましい。
【0068】
なお、結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂である。明確な吸熱ピークとは、具体的には示差走査熱量測定(DSC)において、例えば昇温速度10℃/minで測定した際、吸熱ピークの半値幅が15℃以内となるピークを示すものを意味する。
【0069】
<結晶性ポリエステル樹脂>
結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸化合物)と、2価以上のアルコール(多価アルコール化合物)との重縮合反応によって得られる結晶性樹脂である。
【0070】
多価カルボン酸化合物とは、1分子中にカルボキシ基を2個以上有する化合物であり、多価カルボン酸化合物のアルキルエステル、酸無水物及び酸塩化物を用いることができる。多価カルボン酸化合物としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β-メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン-3,5-ジエン-1,2-ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシフェニル酢酸、p-フェニレン二酢酸、m-フェニレンジグリコール酸、p-フェニレンジグリコール酸、o-フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル-p,p′-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸などの2価のカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸などの3価以上のカルボン酸と組み合わせてもよい。
【0071】
多価アルコール化合物とは、1分子中にヒドロキシ基を2個以上有する化合物であり、多価アルコール化合物としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物などの2価のアルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンなどの3価以上のポリオールなどを挙げることができる。
【0072】
結晶性ポリエステル樹脂を合成するための触媒としては、従来公知の種々の触媒を使用することができ、例えばエステル化触媒などを使用することができる。
エステル化触媒としては、酸化ジブチルスズ、2-エチルヘキサン酸スズ(II)等のスズ化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、多価アルコール化合物と多価カルボン酸化合物と両反応性単量体成分の総量100質量部に対して、0.01~1.5質量部が好ましく、0.1~1.0質量部がより好ましい。エステル化助触媒の使用量は、多価アルコール化合物と多価カルボン酸化合物と両反応性単量体成分の総量100質量部に対して、0.001~0.5質量部が好ましく、0.01~0.1質量部がより好ましい。
【0073】
本発明で使用可能な結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価カルボン酸化合物及び多価アルコール化合物の組合せとしては、例えば、1,12-ドデカンジオール(炭素数12)及びセバシン酸(炭素数10)、エチレングリコール(炭素数2)及びセバシン酸(炭素数10)、1,6-ヘキサンジオール(炭素数6)及びドデカン二酸(炭素数12)、1,9-ノナンジオール(炭素数9)及びドデカン二酸(炭素数12)、1,6-ヘキサンジオール(炭素数6)及びセバシン酸(炭素数10)などが挙げられる。
【0074】
なお、結晶性ポリエステル樹脂粒子の融点Tmは、65~90℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは70~80℃の範囲内である。結晶性ポリエステル樹脂粒子の融点Tmが、65~90℃の範囲内であれば、低温定着性を阻害することなく、また、耐熱保管性が向上する。
【0075】
(結晶性ポリエステル樹脂の融点測定法)
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、示差熱量分析装置(DSC)により測定することができる。
例えば、DSC-7示差走査カロリメーター(パーキンエルマー社製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラー(パーキンエルマー社製)を用いて行うことができる。具体的には、試料4.50mgをアルミニウム製パン(KITNo.0219-0041)に封入し、これを「DSC-7」のサンプルホルダーにセットし、リファレンスの測定には空のアルミニウム製パンを使用し、測定温度0~200℃で、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分の測定条件で、Heat-Cool-Heatの温度制御を行い、その2nd.Heatにおけるデータを取得する。融点は、吸熱ピークのピークトップの温度とする。
なお、当該結晶性ポリエステル樹脂の融点測定法は、結晶性ポリエステル樹脂以外の結晶性樹脂の融点測定法としても同様に適用できる。
【0076】
<ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂>
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂とは、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性樹脂とが化学的に結合して形成された樹脂である。なお、以下の説明において、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂中、結晶性ポリエステル樹脂由来の部位を「第1の樹脂のセグメント」といい、非晶性樹脂由来の部位を「第2の樹脂のセグメント」という。
第1の樹脂のセグメント及び第2の樹脂のセグメントは、両反応性単量体を介して化学的に結合して形成されていることが好ましい。なお、上記第1の樹脂のセグメントは結晶性ポリエステル樹脂から構成される。
【0077】
(第1の樹脂のセグメント)
ハイブリッド樹脂を構成する第1の樹脂のセグメントは、多価カルボン酸と多価アルコールとを触媒の存在下で、重縮合反応を行うことにより製造された結晶性ポリエステル樹脂から構成される。ここで、多価カルボン酸及び多価アルコールの具体的な種類については、上述したとおりである。
【0078】
(第2の樹脂のセグメント)
ハイブリッド結晶性樹脂を構成する第2の樹脂のセグメントは、第2の樹脂を形成する単量体を重合して得られた樹脂から構成される。ここで、第2の樹脂を形成する単量体としては、非晶性樹脂を形成する単量体であれば特に限定されず、例えば、ビニル系樹脂を構成する、上述のビニル系単量体など公知の単量体を使用できる。
【0079】
また、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に対する第2の樹脂のセグメントの含有量(ハイブリッド比率)は、0.1~30質量%の範囲内であることが好ましい。当該含有量のより好ましい範囲は、0.5~10質量%の範囲内である。当該含有量が、0.1質量%以上であれば、結晶化を促進する効果をより得やすい。また、当該含有量が、30質量%以下であれば、相溶性が高まることを抑えるため、同様に、結晶化を促進する効果をより得やすい。
なお、上記ハイブリッド比率は、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂中の第1の樹脂、第2の樹脂及び両反応性単量体由来の構造の全量に占める第2の樹脂の割合である。
【0080】
「両反応性単量体」とは、第1の樹脂のセグメントと第2の樹脂のセグメントとを結合する単量体で、分子内に、第1の樹脂のセグメントを形成するヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選択される基と、第2の樹脂のセグメントを形成するエチレン性不飽和基との双方を有する単量体である。両反応性単量体は、好ましくはヒドロキシ基又はカルボキシ基とエチレン性不飽和基とを有する単量体であることが好ましい。さらに好ましくは、カルボキシ基とエチレン性不飽和基とを有する単量体であることが好ましい。すなわち、ビニル系カルボン酸であることが好ましい。 両反応性単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられ、さらにこれらのヒドロキシアルキル(炭素原子数1~3個)のエステルであってもよいが、反応性の観点からアクリル酸、メタクリル酸又はフマル酸が好ましい。この両反応性単量体を介して第1の樹脂のセグメントと第2の樹脂のセグメントとが結合される。
両反応性単量体の使用量は、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性及び耐久性を向上させる観点から、第2の樹脂のセグメントを構成する単量体の総量100質量部に対して1~10質量部が好ましく、4~8質量部がより好ましい。
【0081】
(ハイブリッド結晶性樹脂の製造方法)
ハイブリッド結晶性樹脂を製造する方法としては、既存の一般的なスキームを使用することができる。代表的な方法としては、次の三つが挙げられる。
(1)第1の樹脂のセグメントをあらかじめ重合しておき、当該第1の樹脂のセグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、第2の樹脂のセグメントを形成するための単量体(例えば、芳香族系ビニル単量体及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体)を反応させることにより、ハイブリッド結晶性樹脂を形成する方法。
(2)第2の樹脂のセグメントをあらかじめ重合しておき、当該第2の樹脂のセグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、第1の樹脂のセグメントを形成するための多価カルボン酸及び多価アルコールを反応させることにより、第1の樹脂のセグメントを形成する方法。
(3)第1の樹脂のセグメント及び第2の樹脂のセグメントをそれぞれあらかじめ重合しておき、これらに両反応性単量体を反応させることにより、両者を結合させる方法。
【0082】
本発明においては、上記製造方法のうち、いずれも用いることができるが、好ましくは、上記(2)項の方法が好ましい。具体的には、第1の樹脂のセグメントを形成する多価カルボン酸並びに多価アルコール、及び第2の樹脂のセグメントを形成する単量体並びに両反応性単量体を混合し、重合開始剤を加えて第2の樹脂のセグメントを形成する単量体と両反応性単量体を付加重合させて第2の樹脂のセグメントを形成した後、エステル化触媒を加えて、重縮合反応を行うことが好ましい。
ここで、第1の樹脂のセグメントを合成するための触媒としては、従来公知の種々の触媒を使用することができる。また、エステル化触媒としては、酸化ジブチルスズ、2-エチルヘキサン酸スズ(II)等のスズ化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、エステル化助触媒としては、没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸)等が挙げられる。
【0083】
<着色剤>
本発明に係るトナーには着色剤を添加することができる。着色剤としては、以下に示すような公知の着色剤を使用できる。
【0084】
イエロートナーに含有される着色剤としては、例えば、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185などが挙げられる。これらは、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にC.I.ピグメントイエロー74が好ましい。
イエロートナーに含有される着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは2~8質量部である。
【0085】
マゼンタトナーに含有される着色剤としては、例えば、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222などが挙げられる。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にC.I.ピグメントレッド122が好ましい。
マゼンタトナーに含有される着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは2~8質量部である。
【0086】
シアントナーに含有される着色剤としては、例えばC.I.ピグメントブルー15:3などが挙げられる。
シアントナーに含有される着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは2~8質量部である。
【0087】
ブラックトナーに含有される着色剤としては、例えばカーボンブラック、磁性体、チタンブラックなどが挙げられる。カーボンブラックとしては、例えばチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられる。磁性体としては、例えば鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性金属、これら強磁性金属を含む合金、フェライト、マグネタイトなどの強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理することにより強磁性を示す合金などが挙げられる。熱処理することにより強磁性を示す合金としては、例えばマンガン-銅-アルミニウム、マンガン-銅-スズなどのホイスラー合金、二酸化クロムなどが挙げられる。
ブラックトナーに含有される着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは2~8質量部である。
【0088】
<離型剤>
本発明に係るトナー母体粒子には、離型剤を添加することができる。
離型剤としては、公知の種々のワックスを用いることができる。ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘニル、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
【0089】
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは1~10質量部である。
【0090】
<荷電制御剤>
また、本発明に係るトナー母体粒子には、必要に応じて荷電制御剤を添加することができる。
【0091】
荷電制御剤としては、摩擦帯電により正又は負の帯電を与えることのできる物質であれば特に限定されず、公知の種々の正帯電制御剤及び負帯電制御剤を用いることができる。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.01~30質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.1~10質量部の範囲内である。
【0092】
<トナー母体粒子の粒径>
本発明に係るトナーを構成するトナー母体粒子の粒径は、体積基準のメジアン径で5.0~8.0μmの範囲内であることが好ましく、5.5~7.0μmの範囲内であることが特に好ましい。トナー母体粒子の粒径を5.0μm以上とすることで転写効率を向上させ、8.0μm以下とすることで潜像の解像性を向上することができる。
【0093】
トナー母体粒子の体積基準のメジアン径は、「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にデータ処理用のコンピューターシステム(ベックマン・コールター社製)を接続した測定装置を用いて測定・算出される。
【0094】
具体的には、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー母体粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加してなじませた後、超音波分散処理を1分間行い、トナー母体粒子の分散液を調製し、このトナー母体粒子の分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が5~10%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を50μmにし、測定範囲である1~30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒径を体積基準のメジアン径とする。
【0095】
<トナー母体粒子の平均円形度>
トナー母体粒子は、帯電性の安定性及び低温定着性を高める観点から、平均円形度が0.930~1.000の範囲内にあることが好ましく、0.950~0.995の範囲内にあることがより好ましい。
平均円形度が上記範囲内にあれば、個々のトナー母体粒子が破砕しにくくなる。これにより、摩擦帯電付与部材の汚染を抑制してトナーの帯電性を安定させることができるとともに、形成される画像の画質を高めることができる。
【0096】
トナー母体粒子の平均円形度は、FPIA-2100(Sysmex社製)を用いて測定することができる。
具体的には、測定試料(トナー)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させる。その後、FPIA-2100(Sysmex社製)によって、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000~10000個の適正濃度で撮影を行う。HPF検出数が上記の範囲内であれば、再現性のある測定値を得ることができる。撮影した粒子像から、個々のトナー母体粒子の円形度を下記式(2)に従って算出し、各トナー粒子の円形度を加算して全トナー母体粒子数で除することにより、平均円形度を得る。
式(2):トナー母体粒子の円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
【0097】
<コア・シェル構造>
本発明に係るトナー母体粒子は、当該トナー母体粒子をコア粒子として当該コア粒子とその表面を被覆するシェル層とを備えるコア・シェル構造のような多層構造のトナー母体粒子としてもよい。シェル層は、コア母体粒子の全表面を被覆していなくてもよく、部分的にコア粒子が露出していてもよい。コア・シェル構造の断面は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)、走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)等の公知の観察手段によって、確認することができる。
【0098】
コア・シェル構造の場合は、コア粒子とシェル層でガラス転移点、融点、硬度等の特性を異ならせることができ、目的に応じたトナー粒子の設計が可能である。例えば、結着樹脂、着色剤、離型剤等を含有し、ガラス転移点(Tg)が比較的低いコア粒子の表面に、ガラス転移点(Tg)が比較的高い樹脂を凝集、融着させて、シェル層を形成することができる。シェル層は、非晶性樹脂を含有することが好ましい。
【0099】
[静電荷像現像用トナーの製造方法]
本発明に係るトナーを製造する方法としては、特に限定されず、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法など公知の方法が挙げられる。これらの中でも、粒径の均一性、形状の制御性観点からは、乳化凝集法を採用することが好ましい。
【0100】
乳化凝集法とは、界面活性剤や分散安定剤によって分散された結着樹脂の粒子(以下、「結着樹脂粒子」ともいう)の分散液を、必要に応じて、着色剤の粒子(以下、「着色剤粒子」ともいう)の分散液と混合し、所望のトナー粒径となるまで凝集させ、さらに結着樹脂粒子間の融着を行うことにより形状制御を行って、トナー粒子を製造する方法である。ここで、結着樹脂の粒子は、任意に離型剤、荷電制御剤などを含有していてもよい。
本発明に係るトナーの好ましい製造方法として、乳化凝集法を用いてコア・シェル構造を有するトナー粒子を得る場合の一例を以下に示す。
【0101】
(1)水系媒体中に着色剤粒子が分散されてなる着色剤粒子分散液を調製する工程
(2)水系媒体中に、必要に応じて内添剤を含有した結着樹脂粒子が分散されてなる樹脂粒子分散液(コア用/シェル用樹脂粒子分散液)を調製する工程
(3)着色剤粒子分散液とコア用樹脂粒子分散液とを混合して凝集用樹脂粒子分散液を得て、凝集剤の存在下で着色剤粒子及び結着樹脂粒子を凝集、融着させてコア粒子としての凝集粒子を形成する工程(凝集・融着工程)
(4)コア粒子を含む分散液中に、シェル層用の結着樹脂粒子を含むシェル用樹脂粒子分散液を添加して、コア粒子表面にシェル層用の粒子を凝集、融着させてコア・シェル構造のトナー母体粒子を形成する工程(凝集・融着工程)
(5)トナー母体粒子の分散液(トナー母体粒子分散液)からトナー母体粒子を濾別し、界面活性剤などを除去する工程(洗浄工程)
(6)トナー母体粒子を乾燥する工程(乾燥工程)
(7)トナー母体粒子に外添剤を添加する工程(外添剤処理工程)
【0102】
コア・シェル構造を有するトナー粒子は、先ず、コア粒子用の結着樹脂粒子と着色剤粒子とを凝集、融着させてコア粒子を作製し、次いで、コア粒子の分散液中にシェル層用の結着樹脂粒子を添加してコア粒子表面にシェル層用の結着樹脂粒子を凝集、融着させてコア粒子表面を被覆するシェル層を形成することにより得ることができる。
また、シェル層が形成されたコア・シェル構造を有するトナー母体粒子の作製方法について説明したが、必ずしもシェル層を有する必要はない。
【0103】
また、コア粒子は、組成の異なる結着樹脂よりなる2層以上の多層構造を有するように作製してもよい。例えば3層構造を有する結着樹脂微粒子を作製する場合、第1段重合(内層の形成)、第2段重合(中間層の形成)及び第3段重合(外層の形成)の3段階に分けて結着樹脂を合成する重合反応を行うことで、作製することができる。また、ここで、第1段重合~第3段重合のそれぞれの重合反応において、重合性単量体の組成を変更することで、組成の異なる3層構成の結着樹脂微粒子を作製できる。また、例えば、第1段重合~第3段重合のいずれかにおいて、離型剤等の適宜の内添剤を含有した状態で結着樹脂の合成反応を行うことで、適宜の内添剤を含有する3層構成の結着樹脂微粒子を形成することができる。
【0104】
<外添処理>
トナー母体粒子に対する外添剤の外添混合処理は、機械式混合装置を用いることができる。機械式混合装置としては、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、タービュラーミキサー等が使用できる。これらの中で、ヘンシェルミキサーのように処理される粒子に剪断力を付与できる混合装置を用いて、混合時間を長くする又は撹拌羽根の回転周速を上げる等の混合処理を行うことが好ましい。また、複数種類の外添剤を使用する場合、トナー粒子に対して全ての外添剤を一括で混合処理するか、又は外添剤に応じて複数回に分けて分割して混合処理してもよい。
また、外添剤の混合方法は、例えば上記機械式混合装置を用いて、混合強度、すなわち撹拌羽根の周速、混合時間、又は、混合温度等を制御することによって外添剤の解砕度合いや付着強度を制御することができる。
本発明に係るトナーの製造方法では、上記機械式混合装置及び混合方法により、外添剤としてのランタン含有チタン酸化合物の解砕度合いやトナー母体粒子への付着強度を制御することができる。
【0105】
[2成分現像剤]
本発明に係るトナーと、下記キャリアとを混合することにより、本発明の2成分現像剤を得ることができる。混合の際に用いられる混合装置としては特に制限されないが、例えば、ナウターミキサー、Wコーン及びV型混合機等が挙げられる。
2成分現像剤中のトナーの含有量(トナー濃度)は、特に制限されないが、4.0~8.0質量%であると好ましい。
【0106】
<キャリア粒子>
本発明に係るキャリアを構成するキャリア粒子は、芯材粒子と、当該芯材粒子表面を被覆する被覆用樹脂層とを有し、当該被覆用樹脂層が、脂環式メタアクリレートモノマーの重合体を含有する。
【0107】
(芯材粒子)
本発明に係る芯材粒子は、例えば、鉄粉などの金属粉の他、各種フェライトなどから構成される。これらの中では、フェライトが好ましい。
フェライトとしては、銅、亜鉛、ニッケル、マンガンなどの重金属を含有するフェライトやアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有する軽金属フェライトが好ましい。
フェライトは、下記式(a)で表される化合物で、フェライトを構成するFe2O3のモル比yを30~95モル%の範囲内とすることが好ましい。
式(a):(MO)x(Fe2O3)y
上記モル比yが、前記範囲内の値となるフェライトは、所望の磁化を得やすいので、キャリア付着を起こしにくいキャリア粒子を作製できるなどのメリットを有する。
【0108】
上記式(a)中のMは、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、コバルト(Co)、リチウム(Li)などの金属原子で、これらを単独又は複数種類組み合わせて使用することが可能である。
【0109】
また、芯材粒子として、ストロンチウム(Sr)を含有することが好ましい。ストロンチウムを含有することで、芯材粒子の表面の凹凸を大きくすることができ、樹脂をコートしても表面が露出しやすくなり、キャリアの抵抗を調整しやすくなる。
【0110】
また、キャリア粒子の体積平均粒径としては、10~100μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、20~80μmの範囲内である。キャリア粒子の体積平均粒径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「へロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0111】
また、キャリア粒子を構成する芯材粒子の磁化は、飽和磁化が30~75A・m2/kgの範囲内、残留磁化が5.0A・m2/kg以下であることが好ましい。
このような磁気特性を有する芯材粒子を用いることにより、キャリア粒子が部分的に凝集することが防止され、現像剤搬送部材の表面に2成分現像剤が均一分散されて、濃度むらがなく、均一で高精細のトナー画像を形成することが可能になる。
【0112】
(被覆用樹脂層)
本発明に係る被覆用樹脂層は、脂環式メタアクリレートモノマーを含む重合体から形成される。
脂環式メタアクリレートモノマーを用いることで、吸湿性が低減し、高温高湿での帯電量の低下を抑制することができる。また、適度な機械的強度を有し、被覆材として膜摩耗されることでキャリア粒子表面がリフレッシュされる。
脂環式メタアクリレートモノマーは、前記重合体において共重合比率で50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。70%以上とすることで、脂環式メタアクリレートモノマーの含有率が高くなり、被覆用樹脂層の帯電序列もチタン酸化合物に近づく。
【0113】
脂環式メタアクリレートモノマーとしては、炭素数5~8のシクロアルキル基を有するものが好ましく、具体的には、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘプチル、メタクリル酸シクロオクチルなどが挙げられる。これらの中では、機械的強度及び帯電量の環境安定性の観点から、メタクリル酸シクロヘキシルが特に好ましい。
【0114】
被覆用樹脂層の具体的作製方法としては、湿式コート法、乾式コート法等が挙げられる。以下に、各方法について述べるが、乾式コート法は本発明に適用するのに特に好ましい方法であり、以下に詳細を説明する。
湿式コート法としては、下記のものがある。
(A)流動層式スプレーコート法
被覆用樹脂を溶剤に溶解した塗布液を、流動層を用いて芯材粒子(以下、「磁性体粒子」ともいう。)の表面にスプレー塗布し、次いで乾燥して被覆用樹脂層を作製する方法
(B)浸漬式コート法
被覆用樹脂を溶剤に溶解した塗布液中に、磁性体粒子を浸漬して塗布処理し、次いで乾燥して被覆用樹脂層を作製する方法
(C)重合法
反応性化合物を溶剤に溶解した塗布液中に、磁性体粒子を浸漬して塗布処理し、次いで熱等を加えて重合反応を行い被覆用樹脂層を作製する方法等を挙げることができる。
【0115】
乾式コート法は、被覆しようとする粒子の表面に樹脂粒子を被着させ、その後、機械的衝撃力を加えて、被覆しようとする粒子表面に被着した樹脂粒子を溶融又は軟化させて固着し被覆層を作製する方法である。
磁性体粒子、樹脂及び低抵抗微粒子等を非加熱下、又は、加熱下で機械的衝撃力が付与できる高速撹拌混合機を用い、高速撹拌して当該混合物に衝撃力を繰り返して付与し、磁性体粒子の表面に溶解又は軟化させて固着したキャリア粒子を作製するのである。
コート条件として、加熱する場合には、80~130℃の範囲内が好ましく、衝撃力を起こす風速としては、加熱中は10m/s以上が好ましく、冷却時にはキャリア粒子同士の凝集を抑制するため5m/s以下が好ましい。衝撃力を付与する時間としては、20~60分が好ましい。
【0116】
前述した、樹脂のコート工程又はコート後の工程において、キャリアにストレスを加えることで芯材粒子の凸部の樹脂を剥がし、芯材粒子を露出させる手法について説明する。
乾式コート法での樹脂コート工程においては、加熱温度を60℃以下に低温化しつつ、冷却時の風速を高速せん断にすることで樹脂はがれを生じさせることができる。また、コート後の工程としては、強制撹拌できる装置であれば可能であり、例えば、タービュラー、ボールミル、振動ミルなどで撹拌混合することが挙げられる。
次に、前述した、コート樹脂に熱及び衝撃を加えることで凸部表面にある樹脂を凹部側に移動させることで芯材粒子を露出させる手法としては、衝撃力を付与する時間を長くとることが有効となる。具体的には、1時間半以上にすることが好ましい。
【0117】
また、キャリア及びトナーの合計に対するトナーの比率(トナー濃度)は、4.0~8.0質量%の範囲内であることが好ましい。トナー粒子の比率が4.0~8.0質量%の範囲内にあることで、トナーの帯電量が適切となり、初期及び連続印字後の画質がより良好となる。
【0118】
本発明の2成分現像剤は、キャリアとトナーとを、混合装置を用いて混合することで製造することができる。混合装置としては、例えばヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機を挙げることができる。
【0119】
[画像形成方法]
本発明に係る画像形成方法は、記録媒体上に、本発明に係るトナーを用いて画像形成層を形成することを含む。
本発明に係る画像形成方法は、本発明に係るトナーを用いる方法であり、フルカラーの画像形成方法に好適に用いることができる。フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、一つの静電潜像担持体(「電子写真感光体」又は単に「感光体」とも称する)と、により構成される4サイクル方式の画像形成装置を用いる方法や、各色に係るカラー現像装置及び静電潜像担持体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成装置を用いる方法など、いずれの画像形成方法も用いることができる。
また、クリアトナーをさらに用いる場合には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック及びクリアの各々に係る5種類の現像装置と、一つの静電潜像担持体(「電子写真感光体」又は単に「感光体」とも称する)と、により構成される5サイクル方式の画像形成装置を用いる方法や、クリアトナーを含む各色に係る現像装置及び静電潜像担持体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成装置を用いる方法などの画像形成方法を用いることができる。
【0120】
画像形成方法としては、圧力を付与するとともに加熱することができる熱圧力定着方式による定着工程を含む画像形成方法が好ましく挙げられる。
この画像形成方法においては、具体的には、上記トナーを使用して、例えば、感光体上に形成された静電潜像を現像してトナー像を得て、このトナー像を画像支持体に転写し、その後、画像支持体上に転写されたトナー像を熱圧力定着方式の定着処理によって画像支持体に定着させることにより、可視画像が形成された印画物を得ることができる。
定着工程における圧力の付与及び加熱は、同時であることが好ましく、また、まず圧力を付与し、その後、加熱してもよい。
【0121】
また、本発明に係る画像形成方法は、熱圧力定着方式の画像形成方法において好適に用いられる。本発明に係る画像形成方法に用いられる熱圧力定着方式の定着装置としては、公知の種々のものを採用することができる。以下に、熱圧力定着装置として、熱ローラー方式の定着装置及びベルト加熱方式の定着装置を説明する。
【0122】
(i)熱ローラー方式の定着装置
熱ローラー方式の定着装置は、一般に、加熱ローラーと、これに当接する加圧ローラーとによるローラー対を有する。当該定着装置において、加熱ローラーと加圧ローラーとの間に付与された圧力によって加圧ローラーが変形することにより、この変形部にいわゆる定着ニップ部が形成される。
加熱ローラーは、一般に、アルミニウムなどよりなる中空の金属ローラーからなる芯金の内部に、ハロゲンランプなどの熱源が配設されてなる。当該加熱ローラーは、当該熱源によって芯金が加熱される。このとき、加熱ローラーの外周面が所定の定着温度に維持されるように当該熱源ヘの通電が制御されて温度調節される。
定着装置が、4層のトナー層(イエロー、マゼンタ、シアン及びブラック)又は5層のトナー層(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック及びクリア)からなるトナー像を十分に加熱溶融させて混色させる能力を要求されるフルカラー画像の形成を行う画像形成装置において用いられる場合は、以下の構成を有していると好ましい。
すなわち、定着装置は、加熱ローラーとして、高い熱容量を有する芯金を有し、当該芯金の外周面上に、トナー像を均質に溶融させるための弾性層が形成されたものを含んでいると好ましい。
【0123】
また、加圧ローラーは、例えばウレタンゴム、シリコーンゴムなどの軟質ゴムからなる弾性層を有するものである。
加圧ローラーとしては、アルミニウムなどよりなる中空の金属ローラーからなる芯金を有し、当該芯金の外周面上に弾性層が形成されたものを用いてもよい。
さらに、加圧ローラーが芯金を有する場合に、当該芯金の内部に、加熱ローラーと同様、ハロゲンランプなどの熱源を配設してもよい。そして、当該熱源によって芯金を加熱し、加圧ローラーの外周面が所定の定着温度に維持されるように当該熱源ヘの通電が制御されて温度調節される構成であってもよい。
これらの加熱ローラーや加圧ローラーとしては、その最外層として、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素樹脂などよりなる離型層が形成されてなるものを用いることが好ましい。
このような熱ローラー方式の定着装置においては、ローラー対を回転させて定着ニップ部に可視画像を形成すべき画像支持体を挟持搬送させることによって、加熱ローラーによる加熱と、定着ニップ部における圧力の付与とを行い、これにより、未定着のトナー像が画像支持体に定着される。
【0124】
本発明に係る画像形成方法は、低温定着性もまた良好となる。よって、上記熱ローラー方式の定着装置において、加熱ローラーの温度を比較的低くすることができ、具体的には、150℃以下とすることができる。さらに、加熱ローラーの温度は、140℃以下であると好ましく、135℃以下であるとより好ましい。低温定着性に優れるという観点からは、加熱ローラーの温度は低いほど好ましく、その下限値は特に制限されないが、実質的には90℃程度である。
【0125】
(ii)ベルト加熱方式の定着装置
ベルト加熱方式の定着装置は、一般に、例えばセラミックヒータよりなる加熱体と、加圧ローラーと、これらの加熱体と加圧ローラーとの間に耐熱性ベルトよりなる定着ベルトが挟まれてなるものであり、加熱体と加圧ローラーとの間に付与された圧力によって加圧ローラーが変形されることにより、この変形部にいわゆる定着ニップ部が形成されてなるものである。
【0126】
定着ベルトとしては、ポリイミドなどよりなる耐熱性のベルト及びシートなどが用いられる。また、定着ベルトは、ポリイミドなどよりなる耐熱性のベルト及びシートなどを基体とし、当該基体上にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素樹脂などよりなる離型層が形成された構成を有していてもよく、さらに、基体と離型層との間に、ゴムなどよりなる弾性層が設けられた構成を有していてもよい。
【0127】
このようなベルト加熱方式の定着装置においては、定着ニップ部を形成する定着ベルトと加圧ローラーとの間に、未定着のトナー像が担持された画像支持体を前記定着ベルトとともに挟持搬送させる。これにより、定着ベルトを介した加熱体による加熱と、定着ニップ部における圧力の付与とを行い、未定着のトナー像が画像支持体に定着される。
このようなベルト加熱方式の定着装置によれば、加熱体を、画像形成時のみ当該加熱体に通電して所定の定着温度に発熱させた状態にすればよい。したがって、画像形成装置の電源の投入から画像形成が実行可能な状態に至るまでの待ち時間を短くすることができる。また、画像形成装置のスタンバイ時の消費電力も極めて小さく、省電力化が図られるなどの利点がある。
【0128】
上記のように、定着工程で定着部材として用いられる、加熱体、加圧ローラー及び定着ベルトは、複数の層構成を有するものが好ましい。
上記ベルト加熱方式の定着装置において、加熱体の温度を比較的低くすることができ、具体的には、150℃以下とすることができる。さらに、加熱体の温度は、140℃以下であると好ましく、135℃以下であるとより好ましい。低温定着性に優れるという観点からは、加熱体の温度は低いほど好ましく、その下限値は特に制限されないが、実質的には90℃程度である。
【0129】
<記録媒体>
記録媒体(記録材、記録紙、記録用紙等ともいう)は、一般に用いられているものでよく、例えば、画像形成装置等による公知の画像形成方法により形成したトナー像を保持するものであれば特に限定されるものではない。使用可能な画像支持体として用いられるものには、例えば、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙、又は、コート紙等の塗工された印刷用紙、市販の和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布、いわゆる軟包装に用いられる各種樹脂材料、又はそれをフィルム状に成形した樹脂フィルム、ラベル等が挙げられる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0130】
以下、実施例を挙げて本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態は以下に示す実施例にのみ限定されるものではない。なお、実施例中において「部」及び「%」は、特に断りのない限り「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0131】
<スチレン・アクリル(StAc)樹脂粒子分散液の調製>
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム(C10H21(OCH2CH2)2SO3Na)よりなるアニオン系界面活性剤4質量部を、イオン交換水3040質量部に溶解させた界面活性剤水溶液を仕込んだ。さらに、過硫酸カリウム(KPS)10質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、液温を75℃に昇温させた。
次に、スチレン532質量部、n-ブチルアクリル酸200質量部、メタクリル酸68質量部及びn-オクチルメルカプタン16.4質量部よりなる重合性単量体溶液を1時間かけて滴下した。滴下後、75℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合(第1段重合)を行い、スチレン・アクリル樹脂粒子分散液を調製した。分散液中のスチレン・アクリル樹脂粒子の重量平均分子量(Mw)は、16500であった。
【0132】
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)によって測定した分子量分布から求めた。
具体的には、測定試料を濃度1mg/mLとなるようにテトラヒドロフラン(THF)中に添加し、室温において超音波分散機を用いて5分間分散処理した後、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して、試料液を調製した。GPC装置HLC-8120GPC(東ソー社製)及びカラム「TSKgel guardcolumn SuperHZ-L」及び「TSKgel SuperHZM-M」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフランを流速0.2mL/minで流した。キャリア溶媒とともに、調製した試料液10μLをGPC装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて試料を検出し、単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて、試料の分子量分布を算出した。検量線は、分子量がそれぞれ6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106である10点のポリスチレン標準粒子(Pressure Chemical社製)を測定することにより、作成した。
【0133】
(第2段重合)
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に、スチレン101.1質量部、n-ブチルアクリル酸62.2質量部、メタクリル酸12.3質量部及びn-オクチルメルカプタン1.75質量部からなる重合性単量体溶液を仕込んだ。さらに、離型剤としてパラフィンワックスHNP-57(日本精蝋社製)93.8質量部を添加し、内温を90℃に加温して溶解させることによって、単量体溶液を調製した。
別の容器に、第1段重合において用いたアニオン系界面活性剤3質量部をイオン交換水1560質量部に溶解させた界面活性剤水溶液を仕込み、内温が98℃となるよう加熱した。この界面活性剤水溶液に、第1段重合により得られたスチレン・アクリル樹脂粒子分散液32.8質量部(固形分換算)を添加し、さらにパラフィンワックスを含有する単量体溶液を添加した。循環経路を有する機械式分散機クレアミックス(エムテクニック社製)を用い、8時間かけて混合分散することにより、粒径340nmの乳化粒子(油滴)の分散液を調製した。
この分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加した。この系を98℃にて12時間にわたって加熱撹拌することにより重合(第2段重合)を行い、スチレン・アクリル樹脂粒子分散液を調製した。分散液中のスチレン・アクリル樹脂粒子の重量平均分子量(Mw)は、23000であった。
【0134】
(第3段重合)
第2段重合において得られたスチレン・アクリル樹脂粒子分散液に、過硫酸カリウム5.45質量部をイオン交換水220質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加した。この分散液に、80℃の温度条件下で、スチレン293.8質量部、n-ブチルアクリル酸154.1質量部及びn-オクチルメルカプタン7.08質量部からなる重合性単量体溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱撹拌することにより重合(第3段重合)を行った後、28℃まで冷却し、スチレン・アクリル樹脂粒子分散液(1)を得た。分散液中のスチレン・アクリル樹脂粒子の重量平均分子量(Mw)は、26800であった。
【0135】
<着色剤粒子分散液の調製>
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解した。この溶液を撹拌しながら、カーボンブラックリーガル330R(キャボット社製)420質量部を徐々に添加した。次いで、撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子分散液(1)を調製した。分散液中の着色剤粒子の粒径を、粒度分布測定器「Nanotrack Wave(マイクロトラックベル社製)を用いて測定したところ、117nmであった。
【0136】
<非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液の調製>
(非晶性ポリエステル樹脂の合成)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物360質量部、テレフタル酸80質量部、フマル酸55質量部、及び重縮合触媒としてチタンテトライソプロポキシド2質量部を10回に分割して入れ、200℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。次いで13.3kPa(100mmHg)の減圧下に反応させ、軟化点が104℃になった時点で取り出し、非晶性ポリエステル樹脂を合成した。
【0137】
(非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液の調製)
得られた非晶性ポリエステル樹脂100質量部を、「ランデルミル 形式:RM」(徳寿工作所社製)で粉砕し、あらかじめ作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US-150T」(日本精機製作所製)を用いてV-LEVEL、300μAで30分間超音波分散し、体積基準のメジアン径(D50)が250nmである非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(1)を調製した。
【0138】
<結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液の調製>
(結晶性ポリエステル樹脂の合成)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、1,6-ヘキサンジオール118質量部、テテトラデカン二酸271質量部、及び重縮合触媒としてチタンテトライソプロポキシド0.8質量部を10回に分割して入れ、235℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた。次いで13.3kPa(100mmHg)の減圧下にて1時間反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂を合成した。
【0139】
(結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液の調製)
得られたポリエステル樹脂100質量部を、「ランデルミル 形式:RM」(徳寿工作所社製)で粉砕し、あらかじめ作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US-150T」(日本精機製作所製)を用いてV-LEVEL、300μAで30分間超音波分散し、体積基準のメジアン径(D50)が200nmである結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(1)を調製した。
【0140】
<トナー母体粒子の作製>
撹拌装置、温度センサー及び冷却管を取り付けた反応容器に、スチレン・アクリル樹脂粒子分散液(1)を固形分換算で300質量部、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液(1)を固形分換算で50質量部、イオン交換水2000質量部を投入後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。その後、着色剤粒子分散液(1)を固形分換算で40質量部投入した。
次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。その後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて80℃まで昇温し、80℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準におけるメジアン径(D50)が5.9μmになった時点で、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(1)を固形分換算で30質量部を30分間かけて投入し、反応液の上澄みが透明になった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに、昇温を行い、90℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、トナーの平均円形度の測定装置「FPIA-2100」(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数を4000個)平均円形度が0.950になった時点で30℃に冷却し、トナー母体粒子の分散液を調製した。
このトナー母体粒子の分散液を遠心分離機で固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成し、このウェットケーキを、前記遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥することにより、トナー母体粒子(1)を作製した。
得られたトナー母体粒子(1)は粒径6.1μm、円形度0.955であった。
【0141】
<ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子(1)の製造>
硫酸法で得られたメタチタン酸を脱鉄漂白処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えpH9.0(25℃)とし、脱硫処理を行い、その後、塩酸によりpH5.8(25℃)まで中和し、濾過水洗を行った。洗浄済みケーキに水を加えTiO2として1.85モル/Lのスラリーとした後、塩酸を加えpH1.0(25℃)とし解膠処理を行った。このメタチタン酸をTiO2として0.625モル採取し、3Lの反応容器に投入した。さらに、塩化ストロンチウム水溶液及び塩化ランタン水溶液をSrO/LaO/TiO2モル比で1.00/0.18/1.00となるよう0.719モル添加した後、TiO2濃度0.313モル/Lに調整した。
次に、撹拌混合しながら90℃に加温した後、5N水酸化ナトリウム水溶液296mLを10時間かけて添加し、その後、95℃で1時間撹拌を続け反応を終了した。
当該反応スラリーを50℃まで冷却し、pH5.0(50℃)となるまで塩酸を加え1時間撹拌を続けた。得られた沈殿をデカンテーション洗浄し、当該沈殿を含むスラリーに塩酸を加えpH6.5(25℃)に調整し、固形分に対して9質量%のイソブチルトリメトキシシランを添加して1時間撹拌保持を続けた。
次いで、濾過・洗浄を行い、得られたケーキを120℃の大気中で8時間乾燥し、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子(1)を得た。得られた粒子を電子顕微鏡で観察すると、一次粒径26~34nmの粒子であった。電子顕微鏡写真を用いて個数基準で算出した平均一次粒径は30nmで、平均円形度は0.85であった。
【0142】
<ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子(2)~(13)の製造>
前記ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子(1)の製造方法において、製造条件(SrO/LaO/TiO2モル比及び水酸化ナトリウム水溶液の添加に要した時間[時間])を下記表Iに示すように変更した以外は同様にして、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子(2)~(13)を作製した。得られた各粒子の平均一次粒径及び平均円形度は表Iのとおりである。
【0143】
【0144】
<ランタン含有チタン酸カルシウム粒子(1)の製造>
前記ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子(1)の製造において、塩化ストロンチウム水溶液の代わりに塩化カルシウム水溶液を用いた以外はランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子(1)の製造と同様に製造し、ランタン含有チタン酸カルシウム粒子(1)を得た。得られた粒子を電子顕微鏡で観察すると、一次粒径26~34nmの粒子であった。電子顕微鏡写真を用いて個数基準で算出した平均一次粒径は30nmで、平均円形度は0.85であった。
【0145】
<チタン酸ストロンチウム粒子(1)の製造>
前記ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子(1)の製造において、SrO/LaO/TiO2モル比を1.00/0/1.00となるようにした以外はランタン含有チタン酸ストロンチウムの製造方法(1)と同様に製造し、チタン酸ストロンチウム粒子(1)を得た。得られた粒子を電子顕微鏡で観察すると、一次粒径26~33nmの粒子であった。電子顕微鏡写真を用いて個数基準で算出した平均一次粒径は30nmでありm、平均円形度は0.75であった。
【0146】
<チタン酸カルシウム粒子(1)の製造>
前記ランタン含有チタン酸カルシウム粒子(1)の製造において、SrO/LaO/TiO2モル比を1.00/0/1.00となるようにした以外はランタン含有チタン酸カルシウム粒子(1)の製造と同様に製造し、チタン酸カルシウム粒子(1)を得た。得られた粒子を電子顕微鏡で観察すると、一次粒径26~33nmの粒子であった。電子顕微鏡写真を用いて個数基準で算出した平均一次粒径は30nmであり、平均円形度は0.75であった。
【0147】
<外添処理>
得られたトナー母体粒子(1)と、下記疎水性シリカ粒子、及び上記で得られた各チタン酸化合物の粒子を、下記表IIIの組み合わせで、かつ、チタン酸化合物の粒子のトナー母体粒子(1)に対する添加量を表IIIに示したとおりとして、ヘンシェルミキサー型式「FM20C/I」(日本コークス工業(株)製)に添加し、羽根先端周速が40m/sとなるようにして回転数を設定して15分間撹拌し、トナー粒子1~24を作製した。
・疎水性シリカ粒子(HMDS処理、疎水化度72%、個数平均一次粒径=30nm)を0.5質量%
なお、トナー粒子17では、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子(1)及びチタン酸ストロンチウム粒子(1)を併用した。
また、トナー粒子23では、チタン酸化合物の代わりに疎水性酸化チタン粒子(HMDS処理、疎水化度55%、個数平均一次粒径=20nm)を添加した。
また、外添混合時の品温は40℃±1℃となるように設定し、41℃になった場合は、ヘンシェルミキサーの外浴に冷却水を5L/分の流量で冷却水を流し、39℃になった場合は、1L/分となるように冷却水を流すことでヘンシェルミキサー内部の温度制御を実施した。
【0148】
<キャリアの作製>
(芯材粒子(1)の作製)
MnO:35mol%、MgO:14.5mol%、Fe2O3:50mol%及びSrO:0.5mol%になるように原料を秤量し、水と混合した後、湿式のメディアミルで5時間粉砕してスラリーを得た。
得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥し、真球状の粒子を得た。この粒子を粒度調整した後、950℃で2時間加熱し、仮焼成を行った。直径0.3cmのステンレスビーズを用いて湿式ボールミルで1時間粉砕した後、さらに直径0.5cmのジルコニアビーズを用いて4時間粉砕した。バインダーとしてポリビニルアルコール(PVA)を固形分に対して0.8質量%添加し、次いで、スプレードライヤーにより造粒、乾燥し、電気炉にて、温度1350℃、5時間保持し、本焼成を行った。
その後、解砕し、さらに分級して粒度調整し、その後、磁力選鉱により低磁力品を分別し、芯材粒子(1)を得た。芯材粒子(1)の粒径は35μmであった。
【0149】
(被覆用樹脂(1)の作製)
0.3質量%のベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液中に、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)を添加し、単量体総量の0.5質量%にあたる量の過硫酸カリウムを添加して乳化重合を行い、スプレードライで乾燥することで、被覆用樹脂(1)を作製した。得られた被覆用樹脂(1)における重量平均分子量は40万であった。
【0150】
(被覆用樹脂(2)の作製)
0.3質量%のベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液中に、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)及びメタクリル酸メチル(MMA)を「質量比=9:1」(共重合比)で添加し、単量体総量の0.5質量%にあたる量の過硫酸カリウムを添加して乳化重合を行い、スプレードライで乾燥することで、被覆用樹脂(2)を作製した。得られた被覆用樹脂(2)における重量平均分子量は50万であった。
【0151】
(被覆用樹脂(3)の作製)
0.3質量%のベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液中に、メタクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸メチルを「質量比=7:3」(共重合比)で添加し、単量体総量の0.5質量%にあたる量の過硫酸カリウムを添加して乳化重合を行い、スプレードライで乾燥することで、被覆用樹脂(3)を作製した。得られた被覆用樹脂(3)における重量平均分子量は48万であった。
【0152】
(被覆用樹脂(4)の作製)
0.3質量%のベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液中に、メタクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸メチルを「質量比=5:5」(共重合比)で添加し、単量体総量の0.5質量%にあたる量の過硫酸カリウムを添加して乳化重合を行い、スプレードライで乾燥することで、被覆用樹脂(4)を作製した。得られた被覆用樹脂(4)における重量平均分子量は50万であった。
【0153】
(被覆用樹脂(5)の作製)
0.3質量%のベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液中に、メタクリル酸メチルを添加し、単量体総量の0.5質量%にあたる量の過硫酸カリウムを添加して乳化重合を行い、スプレードライで乾燥することで、被覆用樹脂(5)を作製した。得られた被覆用樹脂(5)における重量平均分子量は40万であった。
【0154】
(キャリア粒子1の作製)
水平撹拌羽根付き高速撹拌混合機に、芯材粒子として上記で準備した芯材粒子(1)を100質量部と、被覆用樹脂(1)を4.5質量部投入し、水平回転翼の周速が8m/secとなる条件で、22℃で15分間混合撹拌した後、120℃で50分混合して機械的衝撃力(メカノケミカル法)の作用で芯材粒子の表面に被覆材(被覆用樹脂層)を被覆させて、キャリア粒子1を製造した。
【0155】
(キャリア粒子2~5の作製)
前記キャリア粒子1の作製において、被覆用樹脂(1)を被覆用樹脂(2)~(5)に変更することで、キャリア粒子2~5を作製した。
【0156】
【0157】
<現像剤の作製>
(現像剤1の作製)
上記のようにして作製したトナー粒子1とキャリア粒子1を、トナー濃度が6質量%となるようにして混合し、現像剤1を作製した。混合機は、V型混合機(株式会社徳寿工作所製)を用いて25℃で30分間混合した。
【0158】
(現像剤2~24の作製)
前記現像剤1の作製において、トナー粒子とキャリア粒子の組み合わせを下記表IIIのようにした以外は、同様にして現像剤2~24を作製した。
【0159】
<評価>
(連続印刷後の画質評価)
複合機「bizhub PRESS(登録商標)C1070」(コニカミノルタ株式会社製)を用いて常温常湿環境(20℃、55%RH)において画素率が50%の画像をA4版上質紙(64g/m2)に100万枚画像形成を行った。
【0160】
(帯電量)
前記100万枚印刷前後のサンプルにおけるトナーの帯電量を帯電量測定装置「ブローオフ式TB-200」(東芝社製)により測定した。
装置に400メッシュのステンレス製スクリーンを装着し、ブロー圧0.5kgf/cm2の条件で10秒間窒素ガスにてブローする。測定された電荷を飛翔したトナー質量で割ることによって帯電量(μC/g)を算出する。
◎:印刷前後の帯電量の差の絶対値が3μC/g以下
○:印刷前後の帯電量の差の絶対値が3μC/gより大きく8μC/g以下
×:印刷前後の帯電量の差の絶対値が8μC/gより大きい
【0161】
(画像濃度安定性)
前記100万枚印刷前後において、A4サイズの上質紙「CFペーパー」上に全面40%平網画像を出力した。得られた画像の反射濃度を、マクベス反射濃度計「RD907」(マクベス社製)によって測定し、100万枚の画像形成前後でのハーフトーン画像の反射濃度差を求めた。本評価においては、反射濃度差の絶対値が0.06以下であれば合格とした。
◎:反射濃度差の絶対値が0.03以下
○:反射濃度差の絶対値が0.03より大きく0.06以下
×:反射濃度差の絶対値が0.06より大きい
【0162】
(カブリ)
印字されていない白紙について、マクベス反射濃度計「RD907」を用いて20か所の絶対画像濃度を測定して平均し、白紙濃度とする。次に、評価画像の白地部について、同様に20か所の絶対画像濃度を測定して平均し、この平均濃度から白紙濃度を引いた値をカブリ濃度として評価した。
◎:カブリ濃度が0.007未満
○:カブリ濃度が0.007以上0.011未満
×:カブリ濃度が0.011以上
【0163】
【0164】
上記結果に示されるように、本発明の現像剤は、比較例の現像剤に比べて、連続印刷後の帯電安定性及び画像濃度安定性に優れ、かつ、画像カブリの発生を抑制することができることが分かる。