(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】易引裂き性積層体用グラビアインキおよび易引裂き積層体
(51)【国際特許分類】
C09D 11/102 20140101AFI20220531BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20220531BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20220531BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20220531BHJP
C09D 11/106 20140101ALI20220531BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
C09D11/102
B32B27/20 A
B32B27/40
C09D11/037
C09D11/106
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2018093439
(22)【出願日】2018-05-15
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大島 良太
(72)【発明者】
【氏名】小藤 通久
(72)【発明者】
【氏名】木村 幸雄
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-062642(JP,A)
【文献】特開2006-150617(JP,A)
【文献】特開2003-306628(JP,A)
【文献】特開2017-031298(JP,A)
【文献】特開2009-073936(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110780(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/102
B32B 27/20
B32B 27/40
C09D 11/037
C09D 11/106
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン顔料、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂およびアミノ基含有シランカップリング剤を含有する易引裂き積層体用グラビアインキであって、該ポリウレタン樹脂は下記一般式(1)および/または(2)で表される構造を含むポリエステルポリオール由来の構造単位を含有することを特徴とする易引裂き性積層体用グラビアインキ。
一般式(1)
-OCO-R
1-COO-
一般式(2)
-COO-R
2-COO-
(式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立に、炭素数5~20の置換もしくは未置換のアルキレン基または炭素数5~20の置換もしくは未置換のアルケニレン基を表す。)
【請求項2】
更にイソシアネート系硬化剤を含有することを特徴とする、請求項1に記載の易引裂き性積層体用グラビアインキ。
【請求項3】
前記ポリエステルポリオールは、リシノレイン酸および/またはセバシン酸とジオールとの縮合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の易引裂き性積層体用グラビアインキ。
【請求項4】
アミノ基含有シランカップリング剤が、下記一般式(3)で表される構造を含むことを特徴とする請求項1~3いずれかに記載の易引裂き性積層体用グラビアインキ。
一般式(3)
(R
3O)
3-Si-R
4-NHR
5
(式中、R
3はそれぞれ独立にメチル基、エチル基、または水素原子を表し、R
4は炭素数2~6のアルキレン基を表し、R
5は置換もしくは未置換のアルキル基または水素原子を表す。)
【請求項5】
更に、セルロース樹脂を含有することを特徴とする請求項1~4いずれかに記載の易引裂き性積層体用グラビアインキ。
【請求項6】
基材1上に請求項1~5いずれかに記載の易引裂き性積層体用グラビアインキからなる印刷層を有する印刷物。
【請求項7】
基材1、請求項1~5いずれかに記載の易引裂き性積層体用グラビアインキからなる印刷層、接着剤層および基材2をこの順に有する易引裂き性積層体。
【請求項8】
請求項7に記載の易引裂き性積層体により形成される包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は易引裂き性積層体用グラビアインキおよび易引裂き積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、包装袋は絵柄等の模様を付すことがあり、また内容物を不可視化するためにインキからなる印刷層が設けられている。それらインキは、オフセットインキ、フレキソインキ、シルクスクリーンインキおよびグラビアインキその他の印刷インキが挙げられる。中でもグラビアインキはその印刷速度や高精細な絵柄を作成可能ということから生産性が良く、グラビア印刷で使用される場合が多い。
【0003】
一方、グラビアインキからなる印刷層は、当該層上に更に接着剤層および熱可塑性基材等が順に貼り合され(ラミネート)積層体となる。当該積層体は最外層の熱可塑性基材どうしを熱融着(ヒートシール)されて包装袋となる。このような包装袋は食品包装分野に多く用いられる。食品包装の包装袋場合、例えば液体子袋などでは内容物を取り出すために包装袋を直接手で引き裂いて開封する場合が多い。その際に鋏などの器具を用いずに包装袋を引裂いて開封できることは利便性の面で大きなメリットとなるため、より市場価値を与える。しかしながら、包装袋の引裂き性が悪い場合、特に包装袋の中身が液体であると、開封時に過剰な力が必要となる、あるいは思わぬ方向に引裂かれてしまい内容物がこぼれてしまうといった問題が生じるため、食品包装分野のラミネート積層体では良好な引裂き性が求められる。
【0004】
従来技術として、例えばフィルム端面に切り込みを入れる等の工夫をすることで引裂けるきっかけを作る方法があるが、このような方法では引裂き始めの改善にはなるものの、フィルム面そのものが引裂きにくいと途中で引っかかる/直線的に引裂けないという事態を生じる。
【0005】
また、包装袋は内容物の表示および意匠性のために印刷インキにより印刷層(絵柄層)を構成する場合が多い。その場合上記のように絵柄層を中間層として有する部分と印刷層を有さない部分(無地部)ができる場合がある。一般に絵柄層部分は、無地部よりラミネート強度が劣るため引裂き性が劣る。なお、引裂き性を向上させる手段として接着剤層を硬くすることで引裂き性が向上することが知られているが、例えば、絵柄部および無地部が混在する場合、接着剤層の硬さを絵柄層で引裂ける硬さに調整すると、無地部とで引裂き性のバランスが取れず、逆に無地部に接着剤層の硬さを合わせると、絵柄部で引裂き性が劣る不具合が知られている。(特許文献1)
【0006】
引裂き性を改善するために、例えばポリウレタン樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂を併用した印刷インキにおいて更にイソシアネート硬化剤を使用したグラビアインキが提案されているが、硬化時にインキ被膜が硬くなりすぎてラミネート強度が経時劣化する場合があることや、残留溶剤が多くなってしまうこと・引裂き性の発現のために多量のイソシアネート化合物が入ることによる印刷適性や物性バランスの崩れが起こることがあり、引裂き性を始めとした物性バランスを満足するには至っていない。(特許文献2、3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-274061号公報
【文献】特開2017-31298号公報
【文献】特開2018-8422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ラミネート強度および引裂き性が良好であり、更に残留溶剤の少ない易引裂き性積層体のためのグラビアインキ提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下に記載のグラビアインキを用いることで上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、酸化チタン顔料、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂およびアミノ基含有シランカップリング剤を含有する易引裂き積層体用グラビアインキであって、該ポリウレタン樹脂は下記一般式(1)および/または(2)で表される構造を含むポリエステルポリオール由来の構造単位を含有することを特徴とする易引裂き性積層体用グラビアインキに関する。
一般式(1)
-OCO-R1-COO-
一般式(2)
-COO-R2-COO-
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に、炭素数5~20の置換もしくは未置換のアルキレン基または炭素数5~20の置換もしくは未置換のアルケニレン基を表す。)
【0011】
また、本発明は、更にイソシアネート系硬化剤を含有することを特徴とする、前記易引裂き性積層体用グラビアインキに関する。
【0012】
また、本発明は、前記ポリエステルポリオールは、リシノレイン酸および/またはセバシン酸とジオールとの縮合物であることを特徴とする前記易引裂き性積層体用グラビアインキに関する。
【0013】
また、本発明は、アミノ基含有シランカップリング剤が、下記一般式(3)で表される構造を含むことを特徴とする前記易引裂き性積層体用グラビアインキに関する。
一般式(3)
(R3O)3-Si-R4-NHR5
(式中、R3はそれぞれ独立にメチル基、エチル基、または水素原子を表し、R4は炭素数2~6のアルキレン基を表し、R5は置換もしくは未置換のアルキル基または水素原子を表す。)
【0014】
また、本発明は、更に、セルロース樹脂を含有することを特徴とする前記易引裂き性積層体用グラビアインキに関する。
【0015】
また、本発明は、基材1上に前記易引裂き性積層体用グラビアインキからなる印刷層を有する印刷物に関する。
【0016】
また、本発明は、基材1、前記易引裂き性積層体用グラビアインキからなる印刷層、接着剤層および基材2をこの順に有する易引裂き性積層体に関する。
【0017】
また、本発明は、前記易引裂き性積層体により形成される包装袋に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によりラミネート強度および引裂き性が良好であり、更に残留溶剤の少ない易引裂き性積層体のためのグラビアインキを提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0020】
本発明の易引裂き性積層体用グラビアインキについて説明する。なお以下で易引裂き性積層体用グラビアインキは単に「グラビアインキ」、「インキ」と略称する場合があるが易引裂き性積層体用グラビアインキと同義である。また、易引裂き性積層体用グラビアインキからなる印刷層は、「印刷層」、「インキ層」あるいは「インキ被膜」と称する場合があるが易引裂き性積層体用グラビアインキからなる印刷層と同義である。
【0021】
本発明は、酸化チタン顔料、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂およびアミノ基含有シランカップリング剤を含有する易引裂き積層体用グラビアインキであって、該ポリウレタン樹脂は下記一般式(1)および/または(2)で表される構造を含むポリエステルポリオール由来の構造単位を含有することを特徴とする易引裂き性積層体用グラビアインキである。
一般式(1)
-OCO-R1-COO-
一般式(2)
-COO-R2-COO-
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に、炭素数5~20の置換もしくは未置換のアルキレン基または炭素数5~20の置換もしくは未置換のアルケニレン基を表す。)
【0022】
酸化チタン顔料、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂からなるグラビアインキにアミノ基含有シランカップリング剤を使用することで酸化チタン顔料と前記樹脂成分の相互作用が強くなり印刷層が強固になるため、積層体において易引裂き性を発現する。またイソシアネート系硬化剤を使用することでその効果は促進され、更に易引裂き性が良好となる。また、上記一般式(1)および/または一般式(2)の構造を有するポリウレタン樹脂を使用することで印刷後の残留溶剤をも低減させることができる。
【0023】
<酸化チタン顔料>
本発明において使用できる酸化チタン顔料とは、酸化チタンを主成分とした白色顔料をいう。なお、酸化チタン顔料はアミノ基含有シランカップリング剤との反応の観点から以下の態様が好ましい。
酸化チタン顔料は、少なくともシリカあるいはアルミナで表面処理された、結晶構造がルチル型のものが好ましい。この処理層を有することでグラビアインキの印刷適性が向上する。またその他の金属により処理されていても良く、例えばSi、Al、ZnおよびZrの元素からなる金属単体、Al、Znの酸化物などが挙げられる。上記酸化チタンの「処理された」とは、酸化チタン粒子の表面を被覆されている状態をいう。酸化チタンは、JIS K5101に規定されている測定法による吸油量が14~40ml/100gであることが好ましく、17~30ml/100gであることがより好ましい。また、透過型電子顕微鏡により測定した平均粒子径(メディアン粒子径)が0.15~0.35μmが好ましく、0.20~0.30μmであることがより好ましい。また、酸化チタン顔料の合計含有量は、インキ総質量中、10~45重量%であることが好ましい。また複数種の酸化チタン顔料を併用してもよい。なお、本発明のグラビアインキにおいて、酸化チタン顔料の他に、その他の無機顔料、有機顔料も更に併用することができる。
【0024】
また、酸化チタン顔料とバインダー樹脂の固形分質量比率は、15:10~50:10であることが好ましく、15:10~40:10であることがより好ましい。
【0025】
<ポリウレタン樹脂>
本発明で用いるポリウレタン樹脂とは、上記一般式(1)および/または(2)で表される構造を含むポリエステルポリオール由来の構造単位を含有するポリウレタン樹脂をいう。当該ポリウレタン樹脂は、水酸基価を有することが好ましく、1~30mgKOH/gであることが好ましく、1~20mgKOH/gであることがより好ましい。また、アミン価を有することが好ましく、1~10mgKOH/gであることが好ましく、1~7mgKOH/gであることがより好ましい。
【0026】
上記ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネートと、上記ポリエステルポリオールを含むポリオールと、の反応物であるポリウレタン樹脂であることが好ましく、ポリイソシアネートと当該ポリオールによりウレタンプレポリマーとして、更にポリアミンを用いて鎖延長されたポリウレタン樹脂であることがより好ましい。
なお当該ポリエステルポリオール由来の構造単位は、ポリウレタン樹脂総質量中に20~75質量%含有することが好ましく、40~75質量%含有することがより好ましい。また、ポリオール総質量中に50質量%以上含まれていることが好ましく、70質量%以上含まれていることがより好ましい。積層体における引裂き性が良好となり、印刷物の残量溶剤を低減できるためである。ポリエステルポリオール由来の構造単位の含有量は、合成時の配合量より算出できる。
【0027】
ポリオールは、上記ポリエステルポリオールを必須とし、その他ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール等を併用することが好適である。なお、「その他ポリエステルポリオール」とは一般式(1)および/または(2)で表される構造を含有しないポリエステルポリオールをいう。
【0028】
<ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオールは、一般式(1)および/または(2)で表される構造を有するものをいう。上記ポリエステルポリオールは数平均分子量が500~10,000であることが好ましい。なお、数平均分子量は以下の式(1)で得られ、価数とはポリオール一分子に有する水酸基の平均個数であり、水酸基価は試料 1g をアセチル化させたとき,水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムの mg 数をいう。なおポリエステルポリオール以外のポリオールの数平均分子量も同様である。
式(1) 数平均分子量=1000×56.1×水酸基の価数/水酸基価
【0029】
上記一般式(1)において、-OCO-R1-COO-は二塩基酸からなるエステル構造単位であり、HOCO-R1-COOHで表される二塩基酸とジオールの脱水縮合で得られる。かかる二塩基酸としてはピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、タプシン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,3-アダマンタンジカルボン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸等が挙げられ、物性のバランスをとれるアゼライン酸またはセバシン酸が好ましい。またジオールとしてはエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,3,5-トリメチルペンタンジオール、1,12-オクタデカンジオール、1,2-アルカンジオール、1,3-アルカンジオール、ダイマージオール、水添ダイマージオール等が挙げられ、物性のバランスが取りやすいプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールが好ましい。
【0030】
上記一般式(2)において、-COO-R2-COO-はヒドロキシカルボン酸の縮合物として得られる構造単位であり、ヒドロキシカルボン酸としては15-ヒドロキシペンタデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、リシノレイン酸、水添リシノレイン酸、trans-ヒドロキシ-2-デセン酸等が挙げられ、物性のバランスからリシノレイン酸または水添リシノレイン酸が好ましい。なおジオールを開始剤として得られるものが好ましい。
【0031】
一般式(1)および/または(2)において、R1およびR2における置換基としてはアルキル基であることが好ましい。アルキル基は炭素数が1~20であることが好ましく、炭素数が4~10がより好ましい。
【0032】
ポリイソシアネートは芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートから選ばれる少なくとも一種のジイソシアネートを含むことが好ましい。当該ジイソシアネートは例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4、4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が代表例として挙げられる。なおこれらは3量体となってイソシアヌレート環構造となっていてもよい。これらのポリイソシアネート種は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
ポリアミンは、イソシアネート基との反応でウレア結合を形成し、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’ -ジアミンなどが好適に挙げられる。また、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン類も用いることも好ましい。これらの有機ジアミンは単独または2種以上を混合して用いることができるが、イソホロンジアミン、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミンが好ましい。さらに、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン:(IBPA、3,3’-ジアミノジプロピルアミン)、N-(3-アミノプロピル)ブタン-1,4-ジアミン:(スペルミジン)、6,6-イミノジヘキシルアミン、3,7-ジアザノナン-1,9-ジアミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン等のアミノ基数が3以上の多官能アミンを、上記有機ジアミンと併用することもできる。
【0034】
<その他ポリエステルポリオール>
その他ポリエステルポリオールは、例えばアジピン酸とジオールからなるポリエステルポリオールであることが好ましく、ジオールは上記と同様のものが挙げられ、数平均分子量としては500~10,000であることが好ましい。上記ポリエステルポリオールとその他ポリエステルポリオールを併用する場合、ポリエステルポリオールの質量(A)とその他ポリエステルポリオールの質量(B)との比である(A):(B)は20:80~90:10であることが好ましい。なお、40:60~90:10であることがより好ましい。
【0035】
上記ポリエステルポリオールの質量(A)とその他ポリエステルポリオールの質量(B)の合計はポリウレタン樹脂総質量中に50~80質量%含有することが好ましく、55~80質量%含有することがより好ましい。
【0036】
<ポリエーテルポリオール>
ポリエーテルポリオールを使用することも好ましく、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、およびそれらの共重合物が挙げられる。数平均分子量としては500~10,000であることが好ましい。
【0037】
本発明において使用するポリウレタン樹脂の製造は特段限定されるものではなく、例えば特開2016-150942号公報、特開2016-150944号公報、特開2013-213109または特開2017-31298号公報に記載の製造方法等を適宜使用することができる。
【0038】
<塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂>
塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂とは塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合した樹脂をいう。分子量としては重量平均分子量で5,000~100,000のものが好ましく5,000~50,000が更に好ましい。塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂の固形分100質量%中の酢酸ビニルモノマー由来の構造は、1~30質量%が好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は、70~95質量%であることが好ましい。
また、アミノ基含有シランカップリング剤やポリイソシアネート系硬化剤との反応性および顔料分散性が向上するため、ケン化反応あるいは共重合でビニルアルコール由来の水酸基を含むものが更に好ましく、水酸基価として10~200mgKOH/gであることが好ましい。また、ガラス転移温度は50℃~90℃であることが好ましい。
【0039】
ポリウレタン樹脂と塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂の質量比(ポリウレタン樹脂:塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂)は95:5~30:70であることが好ましく、90:10~40:60であることがより好ましい。有機溶剤への溶解性が向上し、更に基材への密着性、被膜物性、ラミネート強度等が良好となるためである。
【0040】
<セルロース樹脂>
本発明のグラビアインキは更にセルロース樹脂を含有することが好ましい。当該セルロース樹脂としては、例えばニトロセルロース、またはセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースアセテートアルキレート類、またはヒドロキシアルキルセルロースもしくはカルボキシアルキルセルロース等のアルキルセルロース類が挙げられ、上記アルキル基は例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していても良い。中でも、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ニトロセルロースが好ましい。これらのセルロース樹脂はガラス転移温度(以下Tgと記載する場合がある)が高いため、印刷層の被膜が丈夫になり、耐ブロッキング性が向上するためである。
【0041】
上記セルロース樹脂は分子量としては重量平均分子量で5,000~100,000のものが好ましく、10,000~70,000が更に好ましい。また、ガラス転移温度が100℃~160℃であるものが好ましい。セルロース樹脂は易引裂き性積層体用グラビアインキにおける樹脂成分の総質量に対し0.5~10質量%含有することが好ましく、1~5質量%含有することがより好ましい。
【0042】
<アミノ基含有シランカップリング剤>
本発明におけるアミノ基含有シランカップリング剤は、1分子内に1~3級のアミノ基と、アルコキシシリル基とを有する化合物のことを示す。
【0043】
本発明におけるインキ組成物は、前記アミノ基含有シランカップリング剤を、グラビアインキの固形分100質量%中に0.15~7質量%含有することが好ましく、0.5~3質量%含有することがより好ましい。なお、下記一般式(3)で表されるアミノ基含有シランカップリング剤であることが好ましく、インキ被膜の凝集力を強固にし、積層体における引裂き性が向上する。
これは、シランカップリング剤の有するトリアルコキシシリル基は脱メタノール反応によりシラノール基を発生し上記酸化チタン顔料表面の水酸基と結合すること、およびアミノ基はポリウレタン樹脂と水素結合することで印刷層(インキ被膜)の強い凝集力が発生するためである。なお、更に後述のイソシアネート系硬化剤と併用することでより凝集力は増し、基材との密着性・ラミネート強度は向上して引裂き性が向上する。本作用・効果はボイル・レトルト後においても有効である。
【0044】
一般式(3)
(R3O)3-Si-R4-NHR5
(式中、R3はそれぞれ独立にメチル基、エチル基、または水素原子を表し、R4は炭素数2~6のアルキレン基を表し、R5は置換もしくは未置換のアルキル基または水素原子を表す。)
【0045】
更に、一般式(4)で表される2量体アミノ基含有シランカップリング剤である場合も好ましい。
一般式(4)
(R3O)3-Si-R4-NH-R4-Si-(OR3)3
(式中、R3はそれぞれ独立にメチル基、エチル基、または水素原子を表し、R4はそれぞれ独立に炭素数2~6のアルキレン基を表し、R5は置換もしくは未置換のアルキル基または水素原子を表す。)
【0046】
上記一般式(3)で表されるアミノ基含有シランカップリング剤は、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1-ブタンアミン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノブチル)-3-アミノブチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、などが好適に挙げられる。
【0047】
上記一般式(4)で表されるアミノ基含有シランカップリング剤は、ビス(3‐トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(4‐トリメトキシシリルブチル)アミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)アミン、ビス(6‐トリメトキシシリルヘキシル)アミンなどが好適に挙げられる。
【0048】
上記以外のアミノ基含有シランカップリング剤としては、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有芳香族シランカップリング剤、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)アミンなどのアミノ基含有ジアルコキシシランカップリング剤、N,N´-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N-(2-アミノエチル)-N´-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミンなどのエチレンジアミン系シランカップリング剤などが好適に挙げられる。
【0049】
<イソシアネート系硬化剤>
本発明のグラビアインキにおいて、引き裂き性を向上させるため、更にイソシアネート系硬化剤使用することが好ましい。シランカップリング剤の有するアミノ基またはポリウレタン樹脂の有する水酸基またはアミノ基と架橋してラミネート強度等が向上するためである。
以下にイソシアネート系硬化剤の実施形態として好ましい態様を示す。当該イソシアネート系硬化剤としては、アダクト型ポリイソシアネート(アダクト体)、ビウレット型ポリイソシアネート(ビウレット体)、イソシアヌレート型ポリイソシアネート(イソシアヌレート体)等を含むポリイソシアネートが好適であり、アダクト体、ビウレット体およびイソシアヌレート体は例えば、トリメチロールプロパン1モルとジイソシアネート3モルとの反応から得られるアダクト体、水1モルとジイソシアネート3モルとの反応から得られるビウレット体、ジイソシアネートの環状三量化反応から得られるイソシアヌレート体等が挙げられる。ポリイソシアネート系硬化剤の添加量はインキ総質量に対して、0.5~5質量%が好ましい。また、イソシアネート硬化剤の分子量は100~2,000であることが好ましい。当該ジイソシアネートとしては上記したジイソシアネートを任意に選択して使用してもよく、中でも、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(水添XDI)が好適に挙げられる。
アダクト型ポリイソシアネート、ビウレット型ポリイソシアネート、イソシアヌレート型ポリイソシアネートは併用してもよく、更にその他のポリイソシアネートと併用してもよい。
なお、前記アミノ基含有シランカップリング剤とイソシアネート系硬化剤の使用比率は、(アミノ基含有シランカップリング剤:イソシアネート系硬化剤)が1:1~1:30であることが好ましい。なお、1:1~1:20であることがより好ましい。なお、その合計はグラビアインキ総質量中0.5~10質量%含有することが好ましく、1~8質量%含有することがより好ましい。
【0050】
<有機溶剤>
本発明のグラビアインキは、液状媒体として有機溶剤を含む。使用される有機溶剤としては、二種以上の有機溶剤からなる混合溶剤としての使用が好ましく、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、などのアルコール系有機溶剤など公知の有機溶剤を使用できる。中でも、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤を含まない有機溶剤(ノントルエン系有機溶剤)がより好ましい。更に好ましくは芳香族系有機溶剤および/またはメチルエチルケトン(以下「MEK」と表記する)などのケトン系有機溶剤を含まない有機溶剤が更に好ましい。また、印刷適性が向上するため、エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤の混合溶剤であることが好ましい。エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤の好ましい質量比率(エステル系有機溶剤/アルコール系有機溶剤)は40/60~90/10である。
【0051】
<その他の添加剤>
その他、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、ワックス、可塑剤、光安定化剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤などの添加剤を含むこともできる。
【0052】
<その他樹脂>
本発明におけるグラビアインキには、本発明の効果を損なわない範囲で、その他樹脂を併用することができる。用いられる樹脂の例としては、上記記載以外のポリウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂、およびこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0053】
<グラビアインキの製造>
本発明におけるグラビアインキは、酸化チタン顔料をポリウレタン樹脂および塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂等により分散機を用いて有機溶剤中に分散し、得られた顔料分散体にその他樹脂、各種添加剤や有機溶剤等を混合して製造できる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としてはサンドミルの使用が好ましい。また、本発明のグラビアインキは粘度が40~400mPa・sであることが好ましい。
【0054】
<グラビアインキの印刷>
本発明における印刷物は、グラビアインキにグラビア印刷機を用いて塗布し、オーブンによる乾燥によって乾燥させて定着することで得られる。乾燥温度は通常40~60℃程度である。
【0055】
<基材1>
本発明のグラビアインキを適用できる基材としては、ポリエチレンおよびポリプロピレンその他のポリオレフィン基材、ポリカーボネート基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸その他のポリエステル基材、ポリスチレン基材、AS樹脂もしくはABS樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリアミド基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリ塩化ビニリデンの各種基材、セロハン基材、紙基材もしくはアルミニウム箔基材など、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状、またはシート状のものがある。中でも、ガラス転移温度が高いポリエステル基材、ポリアミド基材が好適に用いられる。引裂き性を発現しやすくするためである。
【0056】
上記基材は、金属酸化物などを表面に蒸着コート処理および/またはポリビニルアルコールなどコート処理が施されていてもよく、例えば、酸化アルミニウムを基材表面に蒸着させた凸版印刷株式会社製GL-AEや、大日本印刷株式会社製IB-PET-PXB等が挙げられる。さらに、必要に応じて帯電防止剤、紫外線防止剤などの添加剤を処理したものや、基材の表面をコロナ処理あるいは低温プラズマ処理したものなども使用することができる。
【0057】
<基材2>
基材2は基材1と同様のものが挙げられ、同一でも異なっていてもよい。なお、熱可塑性基材(シーラントと称する場合がある)であることが好ましく、無延伸ポリエチレン基材、無延伸ポリプロピレン基材、無延伸ポリエステル基材等が好ましい。
【0058】
<積層体>
本発明における積層体とは、少なくとも基材1、印刷層、基材2をこの順に有する易引裂き性を有する積層体をいう。少なくとも基材1、印刷層、接着剤層、基材2をこの順に有する積層体の使用形態であることが好ましい。
本発明の積層体はグラビアインキを印刷した印刷物の印刷層上に、接着剤層を設け、基材2と貼り合わせる(ラミネートする)ことで得られる。ラミネート加工の代表例として、ドライラミネート法等が挙げられる。ドライラミネート法とは、接着剤を印刷物の印刷層上に塗布・乾燥し、シーラントと圧着して積層する方法である。
【0059】
<接着剤層>
接着剤層は接着剤を塗布、乾燥して得られる。当該接着剤としてはポリオールおよびイソシアネート硬化剤の混合物からなる2液型接着剤などが好適であり、ポリオールとしてはポリエステル系、ポリエーテル系などが挙げられる。具体的には東洋モートン株式会社製・TM-250HV/CAT-RT86L-60、TM-550/CAT-RT37、TM-314/CAT-14B等が挙げられる。
【0060】
<易引裂き包装袋>
易引裂き包装袋とは、上記の方法で得られた易引裂き性積層体のシーラント面同士が熱融着(ヒートシール)されることで得られる包装袋をいう。ヒートシールは通常100~160℃で行われる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、重量部および重量%を表わす。
【0062】
(水酸基価)
JIS K0070に従って求めた。
(酸価)
JIS K0070に従って求めた。
(アミン価)
アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数でJISK0070に準じて以下の方法に従って求めた。
試料を0.5~2g精秤した(試料固形分:Sg)。精秤した試料にメタノール/メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記(式2)によりアミン価を求めた。
(式2)アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S [mgKOH/g]
【0063】
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(東ソー株式会社製HLC-8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW2500
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW3000
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW4000
東ソー株式会社製 TSKgel guardcolumn SuperAWH
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0064】
(合成例1)[ポリウレタン樹脂PU1]
数平均分子量2000の1,3-プロパンジオールとアゼライン酸の縮合物であるポリエステルポリオール(以下「1,3-PD/AzA」)78.7部、数平均分子量5000のメチルペンタンジオールとアジピン酸の縮合物であるポリエステルポリオール(以下「MPD/AdA」)17.8部、数平均分子量1000のポリプロピレングリコール(以下「PPG」)3.5部、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」)21.8部を110℃窒素雰囲気下で4時間反応させ、末端イソシアネートウレタンプレポリマーを得た。次いでイソホロンジアミン(以下「IPDA」)8.3部、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール(以下「AEA」)0.6部に、得られた末端イソシアネートウレタンプレポリマーを40℃で徐々に添加し、次に80℃で1時間反応させ、固形分30%、アミン価1.3mgKOH/g、水酸基価2.5mgKOH/g、重量平均分子量50000のポリウレタン樹脂溶液PU1を得た。
【0065】
(合成例2~4)[ポリウレタン樹脂PU2~PU4]
表1に示す原料を用い、合成例1と同様の方法により、ポリウレタン樹脂溶液PU2~PU7を得た。なお、表1中の略称は下記の通りである。
・リシノレイン酸ポリオール:数平均分子量2500の、ジオールを開始剤としたリシノレイン酸の縮合物であるポリエステルポリオール
・1,3-PD/SeA:数平均分子量2000の1,3-プロパンジオールとセバシン酸の縮合物であるポリエステルポリオール
【0066】
(比較合成例1~3)[ポリウレタン樹脂PU5~PU7]
表1に示す原料を用い、合成例1と同様の方法により、ポリウレタン樹脂溶液PU5~PU7を得た。なお、表1中の略称は下記の通りである。
・1,3-PD/DA:数平均分子量2000の1,3-プロパンジオールとダイマー酸の縮合物であるポリエステルポリオール
・1,2-PD/AdA:数平均分子量2000の1,2-プロパンジオールとアジピン酸の縮合物であるポリエステルポリオール
【0067】
(実施例1)[グラビアインキS1の作成]
ポリウレタン樹脂溶液PU1(固形分30%)を30部、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインTA5R:日信化学工業社製 塩化ビニル:酢酸ビニル:ビニルアルコール=88:1:11(固形分30%酢酸エチル溶液))10部、JR-805(テイカ社製 酸化チタン ルチル型結晶構造 シリカおよびアルミナによる表面処理、平均粒子径0.29μm、吸油量22(ml/100g))を35部、アミノ基含有シランカップリング剤(KBM-573:信越シリコーン社製、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)0.5部、n-プロピルアセテート(NPAC)/イソプロパノール(IPA)=70/30の混合溶剤24.5部を混合し、アイガーミルで20分間分散して、グラビアインキS1を得た。
【0068】
(実施例2~18)[グラビアインキS2~S18の作成]
表2に示す原料を用いた以外は実施例1と同様の方法により、グラビアインキS2~S18を得た。なお、表2中の略称は以下を表す。
・ソルバインTAO:塩化ビニル:酢酸ビニル:ビニルアルコール=91:2:7 水酸基価89mgKOH/g(日信化学社製)の固形分30%酢酸エチル溶液
・CAP-482-0.5:アセチル基2.5%、プロピオニル基45%、水酸基2.6%、数平均分子量25,000のセルロースアセテートプロピオネート 固形分30%溶液(酢酸エチル/イソプロピルアルコールが1/1)
・KBM-903:3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
・Dynasylan 1189:N-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(エボニック社製)
・Dynasylan 1124:ビス(3‐トリメトキシシリルプロピル)アミン(エボニック社製)
・KBM-603:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
・KBM-573:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
・NPAC/IPA:ノルマルプロピルアセテートとイソプロピルアルコール70:30の混合溶剤
・HDI-TMPアダクト:トリメチロールプロパンの水酸基3つとヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアナト基が縮合した3官能イソシアネート硬化剤
【0069】
(比較例1~6)[グラビアインキT1~T6の作成]
表3に示す原料を使用する以外は、上記実施例1~18に記載の方法と同様の方法にてグラビアインキT1~T6を得た。
【0070】
<グラビアインキの印刷>
上記で得られたグラビアインキS1~18、T1~6を、混合溶剤(メチルエチルケトン「MEK」:Nプロピルアセテート「NPAC」:イソプロパノール「IPA」=30:40:30)により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈し、ヘリオ175線ベタ版(版式コンプレスト、100%ベタ柄)により、二軸延伸NY基材(N1102、東洋紡社製、膜厚15μm)のコロナ放電処理面に印刷速度100m/分で印刷し、印刷物SS1~SS18を得た。
【0071】
<ドライラミネート加工>
印刷物SS1~18、TT1~6の印刷面に、ポリエステルウレタン系ラミネート接着剤(東洋モートン社製 TM-550/CAT-RT37)を固形分30%の酢酸エチル溶液を、乾燥後の接着剤層が3.0g/m2となるように塗工・乾燥した後、接着剤層に厚さ50μmの未延伸ポリエチレン(PE)を貼り合わせてドライラミネート加工を行って積層体SL1~18、TL1~6を得た。
【0072】
<評価>
実施例および比較例のグラビアインキ、印刷物および積層体を用いて、以下の評価を行った。表4-1及び表4-2に結果を示した。
【0073】
<易引裂き性>
積層体SL1~18、TL1~6について、JIS K7128-1:1998に従ってサンプルを作成し、インテスコ社製201万能引張り試験機で引裂いた際の抵抗で評価した。なお、ボイル後の引裂き性は90℃、30分の熱水処理後に同様の手法で評価した。
[評価基準]
5: 0.5N未満(良好)
4: 0.5N以上1.0N未満(やや良好)
3: 1.0N以上1.5N未満(実用可)
2: 1.5N以上2.0N未満(やや不良)
1: 2.0N以上(不良)
なお実用可能である評価は3以上である。
【0074】
<ラミネート強度>
積層体SL1~18、TL1~6積層体について、40℃48時間経過した後、印刷部分を巾15mmで裁断し、インキ面と基材面で剥離させた後、剥離強度(ラミネート強度)をインテスコ社製201万能引張り試験機にて測定した。
[評価基準]
5: 1.6N以上(良好)
4: 1.2N以上1.6N未満(やや良好)
3: 0.8N以上1.2N未満(実用可)
2: 0.4N以上0.8N未満(やや不良)
1: 0.4N未満(不良)
なお実用可能である評価は3以上である。
【0075】
<残留溶剤>
印刷物SS1~18、TT1~6について、印刷物を密閉した三角フラスコ中で80℃に加熱し溶剤を揮発させ、ガスクロマトグラフィー(GLサイエンス社製、GC-4000)にて、揮発溶剤量を確認した。
[評価基準]
5: 2mg/m2未満(良好)
4: 2mg/m2以上4 mg/m2未満(やや良好)
3: 4mg/m2以上6 mg/m2未満(実用可)
2: 6mg/m2以上8 mg/m2未満(やや不良)
1: 8mg/m2以上(不良)
なお実用可能である評価は3以上である。
【0076】
<耐ブロッキング性>
印刷物SS1~18、TT1~6について、二軸延伸NY基材(N1102、東洋紡社製、膜厚15μm)のコロナ放電処理面と印刷層の面を40℃・5kg/cm2の条件で24時間圧着させ、剥がした際の印刷層の面の挙動を評価した。
[評価基準]
5: 剥離はなく、抵抗も感じられない(良好)
4: 剥離はないものの、抵抗が感じられる(やや良好)
3: 20%未満の薄い剥離あり(実用可)
2: 20%以上薄い剥離および/または濃い剥離有り(やや不良)
1: 50%以上剥離有り(不良)
なお実用可能である評価は3以上である。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の易引裂き積層体用グラビアインキは液体小袋やボイル・レトルト包材などの易引裂き性が不可欠な包装袋の用途に適用できる。