(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】車両制御装置および車両制御方法
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20220531BHJP
B60W 30/12 20200101ALI20220531BHJP
【FI】
B62D6/00
B60W30/12
(21)【出願番号】P 2018124316
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】遠部 周作
(72)【発明者】
【氏名】有永 剛
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-163164(JP,A)
【文献】特開2013-242670(JP,A)
【文献】特開2015-024795(JP,A)
【文献】特開2017-013606(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102009050941(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00- 6/10
B60W 30/10-30/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行状況に応じて、車両が路外に逸脱するのを抑制するための操舵力を前記車両に付与する車両制御装置であって、
前記車両への前記操舵力を生成する操舵力生成部と、
前記車両の一方側の側方において、当該車両の走行方向に沿って延びる区画線を検出する区画線検出部と、
前記一方側の側方であって、前記区画線よりも前記車両の外側に隣接し、且つ、前記走行方向に沿って延びる路端を検出する路端検出部と、
前記操舵力生成部に対して前記車両への前記操舵力の付与を指令する車両制御部と、
を備え、
前記車両制御部は、
前記区画線検出部および前記路端検出部からの各検出結果を逐次取得し、当該取得した検出結果に基づき、前記一方側の側方における前記区画線と前記路端との間の前記車両の車幅方向における幅である路側帯幅を算出する路側帯幅算出部と、
第1操舵特性に基づく前記操舵力である第1操舵力を付与するように前記操舵力生成部に指令する第1操舵力付与部と、
前記第1操舵特性とは異なる第2操舵特性に基づく、前記第1操舵力よりも小さい前記操舵力である第2操舵力を付与するように前記操舵力生成部に指令する第2操舵力付与部と、
を有し、
前記路側帯幅が所定幅よりも広いと判定し、前記区画線の外端から、前記路側帯中の第1所定箇所までの範囲に前記車両の側端が位置する場合に、前記第2操舵力を前記操舵力生成部に生成させ、前記第1所定箇所から前記路端までの範囲に前記車両の前記側端が位置する場合に、前記第1操舵力を前記操舵力生成部に生成させる第1操舵制御を実行し、
前記路側帯幅が前記所定幅以下であると判定し、前記区画線の前記外端よりも前記車線側の第2所定箇所から前記路端までの範囲に前記車両の前記側端が位置する場合に、前記第1操舵力を前記操舵力生成部に生成させる第2操舵制御を実行し、
前記第1操舵力付与部は、前記路側帯幅に応じて、前記第1操舵特性を変える、
車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記第1操舵特性は、前記車両が走行する車線側から前記路端の側に向けた方向において、前記第1操舵力が第1操舵力値まで漸増する操舵力上昇部を有し、
前記第1操舵力付与部は、前記路側帯幅に応じて、前記操舵力上昇部における特性の傾き、および前記第1操舵力値の少なくとも一方を変える、
車両制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両制御装置において、
前記第1操舵力付与部は、前記路側帯幅が相対的に狭い程、前記第1操舵力値を相対的に小さくする、
車両制御装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の車両制御装置において、
前記第1操舵力付与部は、前記路側帯幅が相対的に狭い程、前記操舵力上昇部における特性の傾きを相対的に緩慢にする、
車両制御装置。
【請求項5】
走行状況に応じて、車両が路外に逸脱するのを抑制するための操舵力を前記車両に付与する車両制御方法であって、
前記車両の一方側の側方において、当該車両の走行方向に沿って延びる区画線を検出する区画線検出ステップと、
前記一方側の側方であって、前記区画線よりも前記車両の外側に隣接し、且つ、前記走行方向に沿って延びる路端を検出する路端検出ステップと、
前記車両に前記操舵力を付与する操舵力付与ステップと、
を備え、
前記操舵力付与ステップは、
前記区画線検出ステップおよび前記路端検出ステップで検出された各検出結果に基づき、前記一方側の側方における前記区画線と前記路端との間の前記車両の車幅方向における幅である路側帯幅を算出する路側帯幅算出サブステップと、
第1操舵特性に基づく前記操舵力である第1操舵力を前記車両に付与する第1操舵力付与サブステップと、
前記第1操舵特性とは異なる第2操舵特性に基づく、前記第1操舵力よりも小さい前記操舵力である第2操舵力を前記車両に付与する第2操舵力付与サブステップと、
を有し、
前記路側帯幅が所定幅よりも広く、前記区画線の外端から、前記路側帯中の第1所定箇所までの範囲に前記車両の側端が位置する場合に、前記車両に前記第2操舵力を付与し、前記第1所定箇所から前記路端までの範囲に前記車両の前記側端が位置する場合に、前記車両に前記第1操舵力を付与する第1操舵制御を実行し、
前記路側帯幅が前記所定幅以下であり、前記区画線の前記外端よりも前記車線側の第2所定箇所から前記路端までの範囲に前記車両の前記側端が位置する場合に、前記車両に前記第1操舵力を付与する第2操舵制御を実行し、
前記第1操舵力付与サブステップでは、前記路側帯幅に応じて、前記第1操舵特性を変える、
車両制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の車両制御方法において、
前記第1操舵特性は、前記車両が走行する車線側から前記路端の側に向けた方向において、前記第1操舵力が第1操舵力値まで漸増する操舵力上昇部を有し、
前記第1操舵力付与サブステップでは、前記路側帯幅に応じて、前記操舵力上昇部における特性の傾き、および前記第1操舵力値の少なくとも一方を変える、
車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置および車両制御方法に関し、特に操舵アシスト技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、事故未然防止技術の一種として、車線逸脱回避のための操舵アシスト技術が適用されたものがある。例えば、車両において、車線を逸脱しそうになった場合に、操舵力を付与して車両が車線から逸脱するのを防止する技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示の技術では、車載カメラにより車道外側線(区画線)と路端とを検出し、当該車道外側線と路端との間の幅(路側帯幅)に応じて車道外側線の内側(車線側)に操舵力の付与開始箇所を設定することとしている。
【0004】
特許文献1に開示の技術では、車両が車道外側線に近付いた場合に車両を車線の内側へ戻そうとする操舵力が付与されることにより、車両が車道外側線よりも路端側へと逸脱するのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示の技術では、運転者に対して違和感および煩わしさを覚えさせ、強いストレスを与える場合が生じ得る。具体的に、特許文献1に開示の技術では、車道外側線の幅が広い場合であっても狭い場合であっても、既定の強さの操舵力が車道外側線の内側の箇所(車線内の車道外側線に近い箇所)から付与されることとされている。このため、特許文献1に開示の技術では、路側帯が広い場合にも車道外側線の内側から操舵力が付与されることにより、運転者が違和感および煩わしさを覚えたりすることとなり、運転者が強いストレスを受ける原因となり得る。また、特許文献1に開示の技術では、路側帯の広狭に関係なく所定強さの操舵力が付与されることによっても、運転者が違和感および煩わしさを覚え、強いストレスを受けることとなる。
【0007】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、路外への逸脱を抑制することにより事故を未然に防ぎながら、運転者に対して違和感および煩わしさを覚えさせることなく、ストレスを与え難い車両制御装置および車両制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る車両制御装置は、走行状況に応じて、車両が路外に逸脱するのを抑制するための操舵力を前記車両に付与する車両制御装置であって、前記車両への前記操舵力を生成する操舵力生成部と、前記車両の一方側の側方において、当該車両の走行方向に沿って延びる区画線を検出する区画線検出部と、前記一方側の側方であって、前記区画線よりも前記車両の外側に隣接し、且つ、前記走行方向に沿って延びる路端を検出する路端検出部と、前記操舵力生成部に対して前記車両への前記操舵力の付与を指令する車両制御部と、を備え、前記車両制御部は、前記区画線検出部および前記路端検出部からの各検出結果を逐次取得し、当該取得した検出結果に基づき、前記一方側の側方における前記区画線と前記路端との間の前記車両の車幅方向における幅である路側帯幅を算出する路側帯幅算出部と、第1操舵特性に基づく前記操舵力である第1操舵力を付与するように前記操舵力生成部に指令する第1操舵力付与部と、前記第1操舵特性とは異なる第2操舵特性に基づく、前記第1操舵力よりも小さい前記操舵力である第2操舵力を付与するように前記操舵力生成部に指令する第2操舵力付与部と、を有し、前記路側帯幅が所定幅よりも広いと判定し、前記区画線の外端から、前記路側帯中の第1所定箇所までの範囲に前記車両の側端が位置する場合に、前記第2操舵力を前記操舵力生成部に生成させ、前記第1所定箇所から前記路端までの範囲に前記車両の前記側端が位置する場合に、前記第1操舵力を前記操舵力生成部に生成させる第1操舵制御を実行し、前記路側帯幅が前記所定幅以下であると判定し、前記区画線の前記外端よりも前記車線側の第2所定箇所から前記路端までの範囲に前記車両の前記側端が位置する場合に、前記第1操舵力を前記操舵力生成部に生成させる第2操舵制御を実行し、前記第1操舵力付与部は、前記路側帯幅に応じて、前記第1操舵特性を変える。
【0009】
上記態様に係る車両制御装置では、路側帯幅が所定幅よりも広い場合には区画線の外端から外側で操舵力(第1操舵力、第2操舵力)を付与する第1操舵制御を実行し、路側帯幅が所定幅以下の場合にだけ区画線の外端よりも内側から操舵力を付与する第2操舵制御を実行することとしている。このため、上記態様に係る車両制御装置では、路側帯幅の広狭にかかわらず区画線の内側から操舵力を付与する上記特許文献1に開示の技術よりも、運転者の違和感および煩わしさを軽減することができ、ストレスも軽減することができる。
【0010】
また、上記態様に係る車両制御装置では、路側帯幅に応じて第1操舵特性を変えることとしているので、路側帯幅の広狭に伴って付与される操舵力も増減され、運転者が意図しないような強さの操舵力が車両に付与されるのを抑制することができる。
【0011】
なお、上記態様に係る車両制御装置でも、車両が路端に近付いてゆく場合に、車両を車線側に戻そうとする操舵力が付与されるので、車両が路外へ逸脱すのを抑制することができる。
【0012】
従って、上記態様に係る車両制御装置では、路外への逸脱を抑制することにより事故を未然に防ぎながら、運転者に対して違和感および煩わしさを覚えさせることなく、ストレスを与え難い。
【0013】
上記態様に係る車両制御装置において、前記第1操舵特性は、前記車両が走行する車線側から前記路端の側に向けた方向において、前記第1操舵力が第1操舵力値まで漸増する操舵力上昇部を有し、前記第1操舵力付与部は、前記路側帯幅に応じて、前記操舵力上昇部における特性の傾き、および前記第1操舵力値の少なくとも一方を変える、とすることもできる。
【0014】
上記構成を採用する場合には、路側帯幅の広狭に応じた第1操舵特性の変更の具体例として、操舵力上昇部の特性の傾き、および第1操舵力値の少なくとも一方を採用するので、路側帯幅に応じて確実に第1操舵力の増減を行うことができ、さらに運転者に対して違和感および煩わしさを覚えさせ難い。
【0015】
上記態様に係る車両制御装置において、前記第1操舵力付与部は、前記路側帯幅が相対的に狭い程、前記第1操舵力値を相対的に小さくする、とすることもできる。
【0016】
上記構成を採用する場合には、路側帯幅が相対的に狭い程、第1操舵力値を相対的に小さくするので、路側帯幅が狭い道路では操舵アシストの介入度合を低減することで、運転者が違和感および煩わしさを覚えるのを効果的に抑制することができる。
【0017】
上記態様に係る車両制御装置において、前記第1操舵力付与部は、前記路側帯幅が相対的に狭い程、前記操舵力上昇部における特性の傾きを相対的に緩慢にする、とすることもできる。
【0018】
上記構成を採用する場合には、路側帯幅が相対的に狭い程、操舵力上昇部における特性の傾きを相対的に緩慢にするので、路側帯幅が狭い道路では緩慢な傾きを以って操舵力が強くなり、運転者が違和感および煩わしさを覚えるのを効果的に抑制することができる。
【0019】
本発明の一態様に係る車両制御方法は、走行状況に応じて、車両が路外に逸脱するのを抑制するための操舵力を前記車両に付与する車両制御方法であって、前記車両の一方側の側方において、当該車両の走行方向に沿って延びる区画線を検出する区画線検出ステップと、前記一方側の側方であって、前記区画線よりも前記車両の外側に隣接し、且つ、前記走行方向に沿って延びる路端を検出する路端検出ステップと、前記車両に前記操舵力を付与する操舵力付与ステップと、を備え、前記操舵力付与ステップは、前記区画線検出ステップおよび前記路端検出ステップで検出された各検出結果に基づき、前記一方側の側方における前記区画線と前記路端との間の前記車両の車幅方向における幅である路側帯幅を算出する路側帯幅算出サブステップと、第1操舵特性に基づく前記操舵力である第1操舵力を前記車両に付与する第1操舵力付与サブステップと、前記第1操舵特性とは異なる第2操舵特性に基づく、前記第1操舵力よりも小さい前記操舵力である第2操舵力を前記車両に付与する第2操舵力付与サブステップと、を有し、前記路側帯幅が所定幅よりも広く、前記区画線の外端から、前記路側帯中の第1所定箇所までの範囲に前記車両の側端が位置する場合に、前記車両に前記第2操舵力を付与し、前記第1所定箇所から前記路端までの範囲に前記車両の前記側端が位置する場合に、前記車両に前記第1操舵力を付与する第1操舵制御を実行し、前記路側帯幅が前記所定幅以下であり、前記区画線の前記外端よりも前記車線側の第2所定箇所から前記路端までの範囲に前記車両の前記側端が位置する場合に、前記車両に前記第1操舵力を付与する第2操舵制御を実行し、前記第1操舵力付与サブステップでは、前記路側帯幅に応じて、前記第1操舵特性を変える。
【0020】
上記態様に係る車両制御方法では、路側帯幅算出サブステップで算出された路側帯幅が所定幅よりも広い場合には操舵力付与ステップにおいて区画線の外端から外側で操舵力(第1操舵力、第2操舵力)を付与する第1操舵制御を実行し、路側帯幅が所定幅以下の場合にだけ操舵力付与ステップにおいて区画線の外端よりも内側から操舵力を付与する第2操舵制御を実行することとしている。このため、上記態様に係る車両制御方法では、路側帯幅の広狭にかかわらず区画線の内側から操舵力を付与する上記特許文献1に開示の技術よりも、運転者の違和感および煩わしさを軽減することができ、ストレスも軽減することができる。
【0021】
また、上記態様に係る車両制御方法では、第1操舵力付与サブステップで路側帯幅に応じて第1操舵特性を変えることとしているので、路側帯幅の広狭に伴って付与される操舵力も変更され、運転者が意図しないような強さの操舵力が車両に付与されるのを抑制することができる。
【0022】
なお、上記態様に係る車両制御方法でも、車両が路端に近付いてゆく場合に、操舵力付与ステップの実行により車両を車線側に戻そうとする操舵力が付与されるので、車両が路外へ逸脱すのを抑制することができる。
【0023】
従って、上記態様に係る車両制御方法では、路外への逸脱を抑制することにより事故を未然に防ぎながら、運転者に対して違和感および煩わしさを覚えさせることなく、ストレスを与え難い。
【0024】
上記態様に係る車両制御方法において、前記第1操舵特性は、前記車両が走行する車線側から前記路端の側に向けた方向において、前記第1操舵力が第1操舵力値まで漸増する操舵力上昇部を有し、前記第1操舵力付与スサブテップでは、前記路側帯幅に応じて、前記操舵力上昇部における特性の傾き、および前記第1操舵力値の少なくとも一方を変える、とすることもできる。
【0025】
上記方法を採用する場合には、第1操舵力付与S部ステップにおける路側帯幅の広狭に応じた第1操舵特性の変更の具体例として、操舵力上昇部の特性の傾き、および第1操舵力値の少なくとも一方を採用するので、路側帯幅に応じて確実に第1操舵力の強弱をつけることができ、さらに運転者に対して違和感および煩わしさを覚えさせ難い。
【発明の効果】
【0026】
上記の各態様では、路外への逸脱を抑制することにより事故を未然に防ぎながら、運転者に対して違和感および煩わしさを覚えさせることなく、ストレスを与え難い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態に係る車両の概略構成を示す模式図である。
【
図3】車室外カメラによる区画線および路端の検出を説明するための模式図である。
【
図4】車両と区画線および路端との位置を示す模式図である。
【
図5】コントロールユニットが実行する操舵制御方法を示すフローチャートである。
【
図6】区画線および路端の位置と、付与される操舵トルクとの関係を示す模式図である。
【
図7】(a)は、車用が区画線を超えて路端側へと逸脱し始めた状態を示す模式図であり、(b)は、車両が路側帯をさらに路端側へと逸脱した状態を示す模式図である。
【
図8】コントロールユニットの操舵特性設定部が実行する、操舵特性の設定方法を示すフローチャートである。
【
図9】第1操舵特性を操舵特性として設定した場合の、区画線および路端に対する操舵特性を示す模式図である。
【
図10】第1操舵特性と第2操舵特性との組み合わせを以って操舵特性として設定した場合の、区画線および路端に対する操舵特性を示す模式図であって、(a)は、路側帯幅が相対的に広い場合、(b)は、路側帯幅が相対的に狭い場合をそれぞれ示す。
【
図11】変形例に係る区画線および路端に対する操舵特性を示す模式図であって、(a)は、第1操舵特性と第2操舵特性との組み合わせを以って操舵特性を設定する場合、(b)は、第1操舵特性を操舵特性として設定した場合、をそれぞれを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0029】
なお、以下の説明で用いる図において、「Fr」は自車両の前方(進行方向)、「Re」は自車両の後方、「Le」は自車両の左方、「Ri」は自車両の右方を示す。
【0030】
[実施形態]
1.車両1の概略構成
本実施形態に係る車両1の概略構成について、
図1および
図2を用いて説明する。
【0031】
図1に示すように、車両1は、動力源としてのエンジン2を備える。本実施形態に係る車両1では、エンジン2の一例として、多気筒のガソリンエンジンを採用している。
【0032】
エンジン2には変速機3が接続されており、変速機3には、デファレンシャルギヤ4が接続されている。デファレンシャルギヤ4からは、左右方向に向けてドライブシャフト5が延びている。ドライブシャフト5の端部には、左右の前輪6l,6rが取り付けられている。
【0033】
ドライブシャフト5には、左前輪6lに近い部分に左前ブレーキ7lが設けられ、右前輪6rに近い部分に右前ブレーキ7rが設けられている。
【0034】
車両1の後方には、左右の後輪8l,8rが配置されている。左右の後輪8l,8rのそれぞれは、図示を省略するリヤアームに取り付けられている。そして、左後輪8lを軸支するシャフト(図示を省略)には左後ブレーキ9lが設けられ、右後輪8rを軸支するシャフト(図示を省略)には右後ブレーキ9rが設けられている。
【0035】
図1に示すように、車両1の車室内における運転席の前方部分には、ステアリングハンドル10が配置されている。ステアリングハンドル10は、ステアリングシャフト11の先端部分に取り付けられている。ステアリングシャフト11の他端は、ステアリングギヤ12に接続されている。また、ステアリングシャフト11には、ステアリングアクチュエータ14が接続されており、ステアリングシャフト11に対して操舵トルク(操舵力)を付与可能となっている。即ち、車両1では、ステアリングアクチュエータ14が操舵力を生成する操舵力生成部として機能する。
【0036】
ステアリングギヤ12には、タイロッド13が接続されている。タイロッド13の左右への移動に伴い、前輪6l,6rの向きが変更される。
【0037】
図1に示すように、車両1には、3つのレーダ15,16,17と車室外カメラ(撮像装置)18とが設けられている。3つのレーダ15,16,17の内、レーダ15は、車両1の前方部分に配置され、残りの2つのレーダ16,17は、車両1の側部に配置されている。これらレーダ15,16,17は、自車両(車両1)の周囲の車両の検出や、車両1と周囲の車両との相対速度および相対距離を検出する機能を有する。
【0038】
車室外カメラ18については、車両1の前方における区画線および路端の検出を行う。即ち、本実施形態に係る車両1において、走行する車線の両側の区画線(車道外側線、車道中央線など)を検出する区画線検出部(車道外側線検出部、車道中央線検出部)であり、区画線の路外側に位置する路端を検出する路端検出部である。
【0039】
また、車両1には、地図情報格納部19が設けられている。地図情報格納部19は、車両1が走行する道路に関する情報などが格納されている。地図情報格納部19に格納された地図情報には、道路における車線情報も含まれている。
【0040】
なお、地図情報格納部19は、外部に設けられたサーバと通信を行う機能を備えていてもよく、逐次にサーバとの間での通信を行い道路情報などに関する情報を取得することができるように構成することも可能である。
【0041】
また、車両1には、乗車する乗員に警報の発報が可能な警報機20が設けられている。
【0042】
また、車両1には、コントロールユニット(車両制御部)21も設けられている。コントロールユニット21は、CPU、ROM、RAMなどから構成されたマイクロプロセッサを有して構成されているとともに、
図1および
図2に示すように、レーダ15,16,17、車室外カメラ18、および地図情報格納部19などと接続されており、各種情報を受け付ける構成となっている。
【0043】
また、コントロールユニット21は、受け付けた情報を基に、エンジン2、ステアリングアクチュエータ14、警報機20、およびブレーキ7l,7r,9l,9rに対して指令することができるようになっている。
【0044】
さらに、
図2に示すように、コントロールユニット22は、第1操舵トルク付与部(第1操舵力付与部)211、第2操舵トルク付与部(第2操舵力付与部)212、路側帯幅算出部213、および操舵特性設定部214を有する。これらについては、後述する。
【0045】
2.車室外カメラ18による区画線DL
L,DL
Rおよび路端E
RLの検出
車室外カメラ18による区画線DL
L,DL
Rおよび路端E
RLの検出について、
図3を用いて説明する。
図3は、車室外カメラ18による区画線DL
L,DL
Rおよび路端E
RLの検出を説明するための模式図である。
【0046】
図3に示すように、車両1のフロントウインドシールドの車室内側に設けられた車室外カメラ18は、車両1の前方側の範囲θ
18の検出が可能となっている。
【0047】
ここで、本実施形態では、一例として、車両1は左側の走行車線(レーン)LNを走行している。そして、車線LNの左側には、左側区画線(車道外側線)DLLが設けられ、車線LNの右側には、右側区画線(車道中央線)DLRが設けられている。また、車道外側線DLLのさらに左側には、路側帯RSを挟んで路端ERLが存在する。
【0048】
車室外カメラ18は、車道外側線DLLおよび車道中央線DLRと、路端ERLと、を少なくとも検出できる。なお、車室外カメラ18での車道外側線DLLおよび車道中央線DLRの検出では、各区画線DLL,DLRの外端EDLL,EDLRも検出可能となっている。
【0049】
なお、路端ERLは、車道外側線DLLよりも左側(外側)の路側帯RSと、路外ORとの境界である。路端ERLについては、コントロールユニット21に道路状況に応じた種々の形態が格納されており、最終的には、コントロールユニット21が、地図情報格納部19から取得した道路情報なども参酌して、路端ERLであることを判定する。
【0050】
3.車両1の走行状況
次に、一例として仮定する、車両1の走行状況について、
図4を用いて説明する。
図4は、車両1を後方から見た状態で、車両1と区画線DL
L,DL
Rおよび路端E
RLとの位置を示す模式図である。
【0051】
図4に示すように、車両1は、車線LNを走行している。そして、車室外カメラ18により検出された車道外側線DL
Lが車両1の左側に存在し、さらに左側に路端E
RLが存在する。本実施形態では、一例として、路端E
RLよりも外側の路外ORが縁石により、車線LNや車道外側線DL
Lと路端E
RLとの間の路側帯RSよりも一段高くなっている。また、車道中央線DL
Rが、車両1の右側に存在する。
【0052】
車両1の左側の側端(車両1の側端)である車両左側端E
VCLと車道外側線DL
Lの左側区画線外端E
DLLとの間の幅は、W1Lである。また、車両1における車両左側端E
VCLと路端E
RLとの間の幅は、W2Lである。そして、
図4に示す状況においては、路側帯RSの幅はW3L(=W2L-W1L)である。
【0053】
一方、車両1の右側の外端である車両右側端EVCRと車道中央線DLRの右側区画線外端EDLRとの間の幅は、W1Rである。
【0054】
4.コントロールユニット21による操舵制御
コントロールユニット21による操舵制御の一例について、
図5から
図7を用いて説明する。
図5は、コントロールユニット21が実行する操舵制御方法を示すフローチャートであり、
図6は、車道外側線DL
Lおよび路端E
RLの位置と、付与される操舵トルクとの関係を示す模式図であり、
図7(a)は、車両1が車道外側線DL
Lを超えて路側帯RSへと逸脱し始めた状態を示す模式図であり、
図7(b)は、車両1が路側帯RSをさらに路端E
RL側へと逸脱した状態を示す模式図である。
【0055】
図5に示すように、コントロールユニット21は、車室外カメラ18からの検出結果(車道外側線DL
L、車道中央線DL
R、および路端E
RLの各検出結果)を取得する(ステップS1)。コントロールユニット21は、取得した検出結果を基に、
図4に示す各値W1L,W1R,W2L,W3Lを算出する。なお、路側帯RSの幅W3Lの算出は、路側帯幅算出部213が行う(
図2を参照)。
【0056】
コントロールユニット21は、車両左側端EVCLが操舵トルク付与開始箇所(操舵特性により規定の所定箇所)を路端ERL側に超えたか(逸脱したか)否かを判定する(ステップS2)。
【0057】
なお、上記における「操舵トルク付与開始箇所(操舵特性により規定の所定箇所)」の設定方法については、後述する。
【0058】
コントロールユニット21は、車両左側端EVCLが操舵トルク付与開始箇所を路端ERL側に逸脱していないと判定した場合には(ステップS2:No)、リターンする。
【0059】
一方、コントロールユニット21は、車両左側端E
VCLが操舵トルク付与開始箇所を路端E
RL側に逸脱したと判定した場合には(ステップS2:Yes)、操舵特性設定部214により設定された操舵特性に基づく操舵トルクを付与するように、ステアリングアクチュエータ14に対して指令する(ステップS3)。指令を受けたステアリングアクチュエータ14は、
図7(a)に示すように、矢印Aのように路端E
RL側に逸脱しようとする車両1を、矢印ST2のように車線LNの中央側へと戻すように操舵トルクをかける。
【0060】
また、
図7(b)に示すように、車両1が路側帯RSを路端E
RL側へと向けて矢印Bのようにさらに逸脱した場合には、ステアリングアクチュエータ14は、車両1に対してさらに強い操舵トルクST2を付与する。
【0061】
なお、路側帯RSの幅W3Lによっては、操舵トルクST2を付与せずに操舵トルクST1だけを初期から付与する場合もある。これについては、後述する操舵特性の設定と関連する。
【0062】
ここで、
図6に示す一例においては、路側帯RSの幅W3Lが比較的広い場合には、車道外側線DL
Lの左側区画線外端E
DLLに操舵トルク付与開始箇所P4が設定され、当該操舵トルク付与開始箇所P4から特性切換箇所P1までの間で第2操舵特性CH2に基づく操舵トルクST2が付与され、特性切換箇所P1よりも外側で第1操舵特性CH1に基づく操舵トルクST1が付与される。
【0063】
図6に示すように、第2操舵特性CH2は、左側区画線外端E
DLLから路側帯RS内の箇所P2までの範囲において第2トルク値TO2まで漸増するトルク上昇部(操舵力上昇部)L3と、箇所P2から特性切換箇所P1までの範囲において、第2トルク値TO2が維持されるトルク維持部L4と、を有する。特性切換箇所P1は、車両1の車幅方向において、路側帯RS内における路端E
RLを基準とする箇所に設定されている。
【0064】
なお、
図6に示すように、本実施形態では、第2操舵特性CH2におけるトルク上昇部L3の傾きは、(TO2/W6)となっている。
【0065】
第1操舵特性CH1は、路側帯RS内の箇所P3から路端ERLまでの範囲において第1トルク値TO1まで漸増するトルク上昇部(操舵力上昇部)L1と、路端ERLの外方(路外OR)の範囲において、第1トルク値TO1が維持されるトルク維持部L2と、を有する。
【0066】
なお、
図6に示すように、本実施形態では、第1操舵特性CH1におけるトルク上昇部L1の傾きは、(TO1/W7)であり、本実施形態では、一例として、上記の第2操舵特性CH2におけるトルク上昇部L3の傾き(TO2/W6)と略同一に設定されている。
【0067】
また、箇所P3から特性切換箇所P1までの範囲では、第2操舵特性CH2と第1操舵特性CH1とが重複するため、第1操舵特性CH1に基づく操舵トルクが付与されるのは、実際には特性切換箇所P1から路端ERLまでの幅W5および路端ERLよりも外側の範囲である。
【0068】
図5に戻って、コントロールユニット21は、ステアリングアクチュエータ14に対して第1操舵特性CH1に基づく操舵トルク(第1操舵力)を付与するように指令した状態で、車両左側端E
VCLが路端E
RLに近接したか否かを判定する(ステップS4)。コントロールユニット21は、車両左側端E
VCLが路端E
RLに近接していないと判定した場合には(ステップS4:No)、ステップS2の判定に戻る。なお、ステップS4の判定における「近接」とは、道路状況や車速などによって変化させることもできる。一例として、1~5cmまで接近した状態を規定することができる。
【0069】
ここで、ステップS2の判定に戻った場合において、第2操舵特性CH2および第1操舵特性CH1の少なくとも一方に基づく操舵トルクの付与により、車両1の左側区画線外端EDLLが操舵トルク付与開始箇所P4よりも右側(車線LNの中央側)に戻っている場合には、ステップS2での判定が“No”となり、リターンされることとなり、ステアリングアクチュエータ14への操舵トルクの付与指令も解除される。
【0070】
一方、コントロールユニット21は、車両左側端EVCLが路端ERLに近接していると判定した場合には(ステップS4:Yes)、ブレーキ7l,7r,9l,9rを作動させ、エンジン2の回転数を低減させて車速の減速を行うととともに(ステップS5)、警報機20に対して警報を発報するように指令する(ステップS6)。
【0071】
5.コントロールユニット21による操舵特性の設定方法
コントロールユニット21の操舵特性設定部214が実行する操舵特性の設定方法について、
図8から
図10を用いて説明する。
図8は、コントロールユニット21の操舵特性設定部214が実行する、操舵特性の設定方法を示すフローチャートであり、
図9は、第1操舵特性CH1を操舵特性として設定した場合の、車道外側線DL
Lおよび路端E
RLに対する操舵特性を示す模式図である。
図10は、第1操舵特性CH1と第2操舵特性CH2との組み合わせを以って操舵特性として設定した場合の、車道外側線DL
Lおよび路端E
RLに対する操舵特性を示す模式図であって、(a)は、路側帯RSの幅W3Lが相対的に広い場合、(b)は、路側帯RSの幅W3Lが相対的に狭い場合をそれぞれ示す。
【0072】
図8に示すように、コントロールユニット21の操舵特性設定部214は、車室外カメラ18からの検出結果を取得し(ステップS11)、車道外側線(区画線)DL
Lおよび路端E
RLが検出されているか否かを判定する(ステップS12)。
【0073】
操舵特性設定部214は、車道外側線(区画線)DLLおよび路端ERLの一方あるいは両方が検出されていないと判定した場合には(ステップS12:No)、リターンする。
【0074】
一方、操舵特性設定部214が車道外側線DLLおよび路端ERLの両方が検出されていると判定した場合には(ステップS12:Yes)、コントロールユニット21の路側帯幅算出部213が路側帯RSの幅(路側帯幅)W3Lを算出する(ステップS13)。
【0075】
次に、操舵特性設定部214は、路側帯幅算出部213により算出された路側帯RSの幅W3Lを、幅W7以下であるか否かを判定する(ステップS14)。
図6に示したように、幅W7は、第1操舵特性CH1におけるトルク上昇部L1が設定された範囲の幅である。
【0076】
操舵特性設定部214は、ステップS14において、路側帯幅W3Lが幅W7以下であると判定した場合には(ステップS14:Yes)、第1操舵特性CH1を操舵特性として設定する(ステップS15)。具体的には、
図9に示すように、路側帯幅W3Lが幅W7以下である場合には、第2操舵特性CH2が設定されず(キャンセルされ)、第1操舵特性CH1だけが設定される。この場合に、第1操舵特性CH1における操舵トルク付与開始箇所P4は、車道外側線DL
Lの左側区画線外端E
DLLよりも差分(W7-W3L)だけ内側(車線LNの中央側)に設定される。
【0077】
なお、第1操舵特性CH1におけるトルク上昇部L1の外側端は、路端ERLに合致する箇所に固定される。
【0078】
図8に戻って、操舵特性設定部214は、ステップS14において、路側帯幅W3Lが幅W7よりも大きいと判定した場合には(ステップS14:No)、第1操舵特性CH1と第2操舵特性CH2との組み合わせを以って操舵特性を設定する(ステップS16)。
【0079】
具体的には、
図10(a)、(b)に示すように、路側帯幅W3Lが幅W7よりも大きい場合には、操舵トルク付与開始箇所P4から特性切換箇所P1までの範囲で第2操舵特性CH2が設定され、特性切換箇所P1から外側(路外OR側)で第1操舵特性CH1が設定される。そして、この場合に、操舵トルク付与開始箇所P4は、車道外側線DL
Lの左側区画線外端E
DLLに合致するように設定され、第1操舵特性CH1におけるトルク上昇部L1の外側端は、路端E
RLに合致する箇所に固定される。
【0080】
ここで、操舵特性設定部214は、
図10(a)に示す状態から
図10(b)に示す状態へと、路側帯RSの幅W3Lが狭くなってゆくと、それに伴って矢印Cのように第1操舵トルク値(第1操舵力値)TO1が小さくなるように第1操舵特性CH1を変える。ただし、本実施形態では、第1操舵特性CH1におけるトルク上昇部L1の傾きは変化なく一定のままである。
【0081】
なお、
図9に示した状態においては、
図10(b)に示した状態よりも路側帯RSの幅W3Lが相対的に狭いので、第1操舵特性CH1の第1操舵トルク値TO1が第2操舵トルク値TO2と略同じ程度まで低減されている。
【0082】
6.効果
以上のように、本実施形態に係る車両1では、路側帯RSの幅W3Lが幅W7よりも広い場合には車道外側線DLLの左側区画線外端EDLLに操舵トルク付与開始箇所P4を設定し、当該左側区画線外端EDLLよりも外側(路外OR側)の範囲で第2操舵トルクST2と第1操舵トルクST1とを付与することとしている(第1操舵制御)。このため、車両1が路側帯RSの幅W3Lが比較的広い道路を走行している場合には、車両1の車両左側端EVCLが車道外側線DLLの左側区画線外端EDLLを超えるまでは操舵トルクの付与を行わず、運転者が違和感や煩わしさを覚えるのを抑制することができる。
【0083】
一方、路側帯RSの幅W3Lが幅W7以下の場合には車道外側線DLLの左側区画線外端EDLLよりも内側(車線LNの中央側)に操舵トルク付与開始箇所P4を設定し、当該操舵トルク付与開始箇所P4よりも外側(路外OR側)の範囲で、第1操舵特性CH1に基づく第1操舵トルクST1だけを付与することとしている(第2操舵制御)。このため、車両1が路側帯RSの幅W3Lが狭い道路を走行している場合には、第2操舵特性CH2の設定をキャンセルして第1操舵特性CH1だけを設定することで、仮に車両1の車両左側端EVCLが操舵トルク付与開始箇所P4よりも外側(路外OR側)に逸脱した場合には迅速に操舵トルクST1を付与することができ、高い安全性を確保することができる。
【0084】
また、本実施形態では、第1操舵制御の実行を選択した場合において、路側帯RSの幅W3Lの広狭に応じて、第1操舵特性CH1における第1操舵トルク値TO1の大きさを変えることとしている。具体的には、本実施形態では、路側帯RSの幅W3Lが狭い程、第1操舵トルク値TO1の値を小さくし、逆に、路側帯RSの幅W3Lが広い程、第1操舵トルク値TO1の値を大きくすることとしている。このため、W3L=W7の状態を境として第1操舵制御が選択される場合と第2操舵制御が選択される場合とを切り替えた場合においても、急激な操舵トルクの変化を避けることができ、運転者が違和感や煩わしさを覚えるのを抑制することができる。
【0085】
従って、本実施形態に係る車両1では、路外ORへの逸脱を抑制することにより事故を未然に防ぎながら、運転者に対して違和感および煩わしさを覚えさせることなく、ストレスを与え難い。
【0086】
[変形例]
変形例に係る操舵特性設定部214による操舵特性の設定方法について、
図11を用いて説明する。
図11は、本変形例に係る車道外側線DL
Lおよび路端E
RLに対する操舵特性を示す模式図であって、(a)は、第1操舵特性CH1と第2操舵特性CH2との組み合わせを以って操舵特性を設定する場合、(b)は、第1操舵特性CH1を操舵特性として設定した場合、をそれぞれを示す。なお、本変形例では、
図11を用いて以下で説明する構成を除き、上記実施形態と同じ構成を採用し、以下では重複部分の説明を省略する。
【0087】
図11(a)に示すように、本変形例において、操舵特性設定部214が路側帯RSの幅W3Lが幅W7よりも大きいと判定した場合には、上記実施形態と同様に、第1操舵特性CH1と第2操舵特性CH2との組み合わせを以って操舵特性を設定する。
【0088】
本変形例においても、第2操舵特性CH2は、車道外側線DLLの左側区画線外端EDLLに設定された操舵トルク付与開始箇所P4から特性切換箇所P1までの範囲で設定され、第1操舵特性CH1は、特性切換箇所P1から外側(路外OR側)で設定される。
【0089】
ここで、
図11(a)に矢印D1で示すように、本変形例における操舵特性設定部214は、路側帯RSの幅W3Lの広狭に応じて、第1操舵特性CH1におけるトルク上昇部L1の傾きを可変する。具体的には、操舵特性設定部214は、路側帯RSの幅W3Lが広い程、第1操舵特性CH1のトルク上昇部L1の傾きを急峻とし、逆に、路側帯RSの幅W3Lが狭い程、第1操舵特性CH1のトルク上昇部L1の傾きを緩慢にする。
【0090】
なお、操舵特性設定部214による第1操舵特性CH1のトルク上昇部L1の傾きの可変は、路端ERLに合致するように設定されたトルク上昇部L1の外側端を基点になされ、傾きの緩急を可変することに伴って特性切換箇所P1およびトルク上昇部L1の内側端の箇所P3が、車両1の車幅方向へと移動することとなる。
【0091】
図11(b)に示すように、路側帯RSの幅W3Lが狭く、第1操舵特性CH1のトルク上昇部L1の内側端が車道外側線DL
Lの左側区画線外端E
DLLよりも車線LNの中央側に位置することとなった場合には、操舵特性設定部214は、第2操舵特性CH2の設定をキャンセルする。そして、操舵特性設定部214は、第1操舵特性CH1におけるトルク上昇部L1の内側端を操舵トルク付与開始箇所P4として設定する。
【0092】
ここで、本変形例では、
図11(a)に示す状態と
図11(b)に示す状態とで、第1操舵特性CH1における第1操舵トルク値TO1の大きさを可変しないこととしている。ただし、第1操舵特性CH1におけるトルク上昇部L1の傾きを可変するのに加えて、第1操舵トルク値TO1の大きさを、上記実施形態と同様に可変することとしてもよい。
【0093】
本変形例に係る車両においても、路側帯RSの幅W3Lが幅W7よりも広い場合には車道外側線DLLの左側区画線外端EDLLに操舵トルク付与開始箇所P4を設定し、当該左側区画線外端EDLLよりも外側(路外OR側)の範囲で第2操舵トルクST2と第1操舵トルクST1とを付与することとしている(第1操舵制御)。このため、車両が路側帯RSの幅W3Lが相対的に広い道路を走行している場合には、車両1の車両左側端EVCLが車道外側線DLLの左側区画線外端EDLLを超えるまでは操舵トルクの付与を行わず、運転者が違和感や煩わしさを覚えるのを抑制することができる。
【0094】
一方、車両が路側帯RSの幅W3Lが相対的に狭い道路を走行している場合には、第2操舵特性CH2の設定をキャンセルして第1操舵特性CH1だけを設定することで(第2操舵制御)、仮に車両の車両左側端EVCLが操舵トルク付与開始箇所P4よりも外側(路外OR側)に逸脱した場合には迅速に操舵トルクST1を付与することができ、高い安全性を確保することができる。
【0095】
また、本変形例では、第1操舵制御の実行を選択した場合において、路側帯RSの幅W3Lの広狭に応じて、第1操舵特性CH1におけるトルク上昇部L1の傾きを変えることとしている。具体的には、本変形例では、路側帯RSの幅W3Lが狭い程、トルク上昇部L1の傾きを緩慢にし、逆に、路側帯RSの幅W3Lが相対的に広い程、トルク上昇部L1の傾きを相対的に急峻にすることとしている。このため、W3L=W7の状態を境として第1操舵制御が選択される場合と第2操舵制御が選択される場合とを切り替えた場合においても、急激な操舵トルクの変化を避けることができ、運転者が違和感や煩わしさを覚えるのを抑制することができる。
【0096】
従って、本変形例に係る車両では、路外ORへの逸脱を抑制することにより事故を未然に防ぎながら、運転者に対して違和感および煩わしさを覚えさせることなく、ストレスを与え難い。
【0097】
[その他の変形例]
上記実施形態および上記変形例では、コントロールユニット21の操舵特性設定部214による操舵特性の設定について、路側帯RSの幅W3Lとの対応関係については特に言及しなかったが、例えば、コントロールユニット21に予め路側帯RSの幅W3Lと設定する操舵特性や操舵トルク付与開始箇所P4との対応付けを行った参照テーブルを格納しておき、当該参照テーブルを参照することで行うこととすることもできる。あるいは、路側帯幅算出部213が算出した路側帯RSの幅W3Lを、予めコントロールユニットに設定された演算式に代入して、設定する操舵特性や操舵トルク付与開始箇所P4を算出することとしてもよい。
【0098】
また、上記実施形態および上記変形例では、車両左側端EVCLが路端ERLに近接した場合に、車速を減速し、警報を発報することとしたが、これらは必須のものではない。また、車速の減速と警報の発報との一方だけをすることとしてもよい。
【0099】
また、上記実施形態および上記変形例では、第1操舵特性CH1についてもトルク維持部L2を有することとしたが、これも必須のものではない。例えば、車両の車両左側端が路端と接触する位置や超えてしまったような場合には、操舵トルクを付与せずに車両を停車させることとしてもよい。
【0100】
また、車両の車両左側端が路端に近接した場合に、警報機20に警報を発報するように指令するようにすることや、エンジン2やブレーキ7l,7r,9l,9rに対して車両の車速を減速するように指令するようにすることもできる。
【0101】
また、上記実施形態および上記変形例では、車両1の動力源としてエンジン2を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、電動モータを駆動源とする場合も適用可能である。
【0102】
また、上記実施形態および上記変形例では、車両1が左車線LNを走行している場合を想定したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、右側通行の場合にも適用可能である。この場合には、右側の区画線と、それよりもさらに右側にある路端との間の路側帯の幅を基準に第1操舵トルク付与開始箇所を設定することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 車両
14 ステアリングアクチュエータ(操舵力生成部)
18 車室外カメラ(区画線検出部、路端検出部)
21 コントロールユニット(車両制御部)
211 第1操舵トルク付与部(第1操舵力付与部)
212 第2操舵トルク付与部(第2操舵力付与部)
213 路側帯幅算出部
214 操舵特性設定部
DLL 左側区画線(車道外側線)
EDLL 左側区画線外端
ERL 路端
P4 操舵トルク付与開始箇所(付与開始箇所)
LN 車線(レーン)
L1 トルク上昇部(操舵力上昇部)
OR 路外
RS 路側帯
TO1 第1操舵トルク値(第1操舵力値)