IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧

<>
  • 特許-車輪用軸受装置 図1
  • 特許-車輪用軸受装置 図2
  • 特許-車輪用軸受装置 図3
  • 特許-車輪用軸受装置 図4
  • 特許-車輪用軸受装置 図5
  • 特許-車輪用軸受装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】車輪用軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 41/00 20060101AFI20220531BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20220531BHJP
   F16C 33/76 20060101ALI20220531BHJP
   B60B 35/02 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C19/18
F16C33/76 A
B60B35/02 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018125208
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020003045
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高麗 豊
(72)【発明者】
【氏名】井上 茂
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-208763(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0231922(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 41/00
F16C 19/00
F16B 4/00
B60B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪が取り付けられるフランジを有する内方部材と、
前記内方部材を複数の転動体を介して回転可能に支持する筒状の外方部材と、
前記内方部材に固定され、周方向に複数の磁極を有する環状の磁性部材を有するエンコーダと、
前記磁性部材の前記複数の磁極の磁界を検出する磁界検出素子、及び前記磁界検出素子を封止する柱状の軸部が形成された封止部材を有する磁界センサと、
前記軸部を収容する収容穴を有し、前記磁界センサを前記外方部材に対して支持する支持部材とを備え、
前記支持部材は、前記収容穴の内周面から内方に突出して前記軸部の外周面に当接し、前記軸部を位置決めする少なくとも3つの位置決め突起を有
前記軸部は、その外周面が前記収容穴内において前記少なくとも3つの位置決め突起の先端部のみに接触して位置決めされている、
車輪用軸受装置。
【請求項2】
前記位置決め突起は、前記収容穴の軸方向中央部よりも前記エンコーダ側の位置で前記軸部の外周面に当接する、
請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項3】
前記磁界センサの前記軸部は、前記内方部材の回転軸線に対して平行に前記収容穴に収容される円柱状であり、
前記支持部材は、前記収容穴に前記軸部を収容する前の自然状態において、前記少なくとも3つの位置決め突起のそれぞれの先端部に内接する仮想円の直径が前記軸部の直径よりも小さい、
請求項に記載の車輪用軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪を支持する車輪用軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輪を支持する車輪用軸受装置は、車輪が取り付けられるフランジを有する内方部材と、内方部材を複数の転動体を介して回転可能に支持する筒状の外方部材とを有している。このような車輪用軸受装置には、車輪の回転速度を検出するための機能を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の車輪用軸受装置は、車輪の回転速度を検出するための構成として、複数の磁極を有するパルサーリングが芯金に取り付けられたエンコーダと、パルサーリングの磁極の磁界を検出するセンサとを有している。エンコーダの芯金は、内方部材に外嵌固定されている。センサは、センサホルダに包埋されており、エンコーダに所定の軸方向すきまを介して対峙している。センサホルダは、円柱状の軸部を有し、この軸部がOリングを介してカバーの装着孔に嵌挿されている。カバーは、外方部材の端部に外嵌固定されており、センサホルダを支持すると共に泥水等の浸入を抑制している。装着孔は、カバーを貫通しており、装着孔の内周面とセンサホルダの軸部の外周面との隙間がOリングによって封止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-150421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように構成された車輪用軸受装置は、センサホルダの軸部にOリングを嵌着するために部品点数及び組み付け工数が増大してしまう。そこで、本発明者らは、磁界センサを外方部材に対して支持する支持部材に底部が閉塞された収容穴を形成し、この収容穴に磁界検出素子を封止する封止部材の軸部を収容することにより、Oリングを不要とすることを考えた。しかし、この場合、収容穴の内径と軸部の外径との径差によって不可避的に発生する隙間により、軸部が収容穴内でがたつき、磁界検出素子の位置がエンコーダの磁界の強度が最も強い位置からエンコーダの径方向にずれてしまうおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、磁界検出素子を封止部材によって封止してなる磁界センサを支持する支持部材に底部が閉塞された収容穴を形成し、この収容穴に磁界検出素子を保持する封止部材の軸部を収容する場合でも、軸部を収容穴内において高精度に位置決めすることができる車輪用軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するため、車輪が取り付けられるフランジを有する内方部材と、前記内方部材を複数の転動体を介して回転可能に支持する筒状の外方部材と、前記内方部材に固定され、周方向に複数の磁極を有する環状の磁性部材を有するエンコーダと、前記磁性部材の前記複数の磁極の磁界を検出する磁界検出素子、及び前記磁界検出素子を封止する柱状の軸部が形成された封止部材を有する磁界センサと、前記軸部を収容する収容穴を有し、前記磁界センサを前記外方部材に対して支持する支持部材とを備え、前記支持部材は、前記収容穴の内周面から内方に突出して前記軸部の外周面に当接し、前記軸部を位置決めする少なくとも3つの位置決め突起を有前記軸部は、その外周面が前記収容穴内において前記少なくとも3つの位置決め突起の先端部のみに接触して位置決めされている、車輪用軸受装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車輪用軸受装置によれば、軸部を収容穴内において高精度に位置決めすることができ、磁界検出素子によってエンコーダの磁極の磁界を確実に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る車輪用軸受装置を示す断面図である。
図2図1の部分拡大図である。
図3】(a)は、カバーを車両インナ側から見た状態を示す平面図である。(b)は、車両インナ側から見たカバーの収容穴の周辺を拡大して示す拡大図である。(c)は、収容穴に収容された磁界センサを軸部及び磁界検出素子の断面で示す断面図である。
図4】(a)は、エンコーダの磁性部材の一部を車両インナ側から見た平面図である。(b)は、磁性部材の断面と共に、N磁極及びS磁極の磁界の強度を示すグラフを示す。
図5】(a)は、本発明の第2の実施の形態に係るカバーの収容穴の周辺を拡大して示す拡大図である。(b)は、(a)に示す収容穴に収容された磁界センサの軸部及び磁界検出素子を示す断面図である。
図6】(a)は、本発明の第3の実施の形態に係るカバーの収容穴の周辺を拡大して示す拡大図である。(b)は、(a)に示す収容穴に収容された磁界センサの軸部及び磁界検出素子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態及び変形例について、図1乃至図4を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0011】
(車輪用軸受装置の全体構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車輪用軸受装置の全体構成を示す断面図である。図2は、図1の部分拡大図である。
【0012】
この車輪用軸受装置1は、車両の懸架装置のナックル10に対して車輪を回転可能に支持するために用いられる。車輪用軸受装置1は、ナックル10に取り付けられる筒状の外方部材2と、車輪が取り付けられる内方部材3と、外方部材2と内方部材3との間に配置された複数の転動体4と、内方部材3に固定されたエンコーダ5と、外方部材2の端部に固定されたカバー6と、カバー6に取り付けられた磁界センサ7と、外方部材2の車輪側の端部と内方部材3との間に配置されたシール部材8とを備えている。図1では、ナックル10を仮想線(二点鎖線)で示している。
【0013】
以下の説明では、車輪用軸受装置1において車輪が取り付けられる側(図1の左側)を車両アウタ側といい、その反対側(図1の右側)を車両インナ側という。また、以下の説明において、「上」及び「下」とは、車輪用軸受装置1が車両に組み付けられた状態における鉛直方向の上下をいうものとする。
【0014】
外方部材2は、円筒状の基部21と、車体側のナックル10への取り付けのための複数の車体取付フランジ22と、車体取付フランジ22よりも車両インナ側に延出された延出部23とを一体に有し、内方部材3を複数の転動体4を介して回転可能に支持している。図1では、複数の車体取付フランジ22のうち、1つの車体取付フランジ22のみを図示している。複数の車体取付フランジ22のそれぞれには、ナックル10に螺合するボルトを挿通させるボルト挿通孔22aが形成されている。基部21の内周には、転動体4を転動させる第1外側軌道面2a及び第2外側軌道面2bが周方向に沿って互いに平行に形成されている。
【0015】
内方部材3は、回転軸線Oを中心として外方部材2に対して回転可能に配置されている。内方部材3の外周には、転動体4を転動させる第1内側軌道面3a及び第2内側軌道面3bが周方向に沿って互いに平行に形成されている。第1内側軌道面3aは外方部材2の第1外側軌道面2aに対向し、第2内側軌道面3bは外方部材2の第2外側軌道面2bに対向する。以下、回転軸線Oに平行な方向を軸方向という。
【0016】
本実施の形態では、内方部材3がハブ輪31及び環状の内輪部材32からなる。ハブ輪31は、車輪が取り付けられる車輪取付フランジ311と、外方部材2の基部21の内側に配置される胴部313と、車輪取付フランジ311と胴部313とを連結する連結部312とを一体に有している。車輪取付フランジ311には、車輪取付用のセレーション付きボルト33を圧入して挿通させる複数のボルト挿通孔311aが形成されている。
【0017】
胴部313は、車輪取付フランジ311側の大径部314と、車輪取付フランジ311側とは反対側の小径部315とを有している。大径部314の外周面には、第1内側軌道面3aが形成されている。小径部315の外周面には、内輪部材32が嵌着されている。内輪部材32は、小径部315の一部を塑性変形させた加締め部315aによってハブ輪31に固定されている。内輪部材32の外周面には、第2内側軌道面3bが形成されている。
【0018】
複数の転動体4は、保持器40に保持され、第1外側軌道面2aと第1内側軌道面3aとの間、及び第2外側軌道面2bと第2内側軌道面3bとの間に配置されている。本実施の形態では、転動体4が球体であるが、これに限らず円錐ころであってもよい。また、本実施の形態では、内方部材3が1つの内輪部材32を有しているが、これに限らず、内方部材3が2つの内輪部材を有し、このうち一方の内輪部材に第1内側軌道面3aが形成され、他方の内輪部材に第2内側軌道面3bが形成されていてもよい。
【0019】
エンコーダ5は、芯金51と、芯金51に取り付けられた環状の磁性部材52とを有している。芯金51は、例えばステンレスや鉄等の金属からなり、内輪部材32の外周面に嵌着されている。磁性部材52は、例えば加硫接着法によって芯金51に取り付けられている。磁性部材52は、例えばゴム製の円環部材にフェライト系のステンレス鋼粉を混入して形成され、磁性の異なる複数の磁極(N極及びS極)が周方向に沿って交互に設けられている。
【0020】
カバー6は、外方部材2における車両インナ側の開口を閉塞すると共に、磁界センサ7を外方部材2に対して支持する支持部材として機能する。カバー6は、樹脂からなる本体部61に芯金62及びナット63がインサート成型により一体に成型されている。本体部61は、例えば66ナイロンからなる。カバー6は、外方部材2における車両インナ側の軸方向一端部に取り付けられ、外方部材2と内方部材3との間への車両インナ側からの異物の侵入を抑止している。一方、外方部材2と内方部材3との間への車両インナ側からの異物の侵入は、シール部材8によって抑止されている。
【0021】
磁界センサ7は、ホールIC等の磁界検出素子71と、磁界検出素子71を封止する柱状の軸部721及びカバー6に固定される固定部722を有する封止部材72と、磁界検出素子71に動作電源を供給すると共に磁界検出素子71が出力する電気信号を伝送するケーブル73とを有している。本実施の形態では、軸部721が円柱状である。ただし、軸部721が例えば断面多角形の角柱状であってもよい。磁界検出素子71は、軸部721の先端部(固定部722側の基端部とは反対側の端部)に収容され、磁性部材52の複数の磁極の磁界を検出する。図1及び図2では、磁界検出素子71を破線で示している。
【0022】
磁界センサ7の固定部722は、カバー6の外側(車両インナ側)において、ボルト9によってカバー6に固定されている。ボルト9は、頭部91が固定部722の車両インナ側の端面に当接し、雄ねじ部92が固定部722に形成されたボルト挿通孔722aに挿通され、ナット63に螺合している。
【0023】
(車輪用軸受装置の動作)
内方部材3が回転すると、磁界検出素子71によって磁界が検出される磁性部材52の磁極の磁性が変化する。磁界検出素子71は、内方部材3の回転に伴う磁界の変化を電気信号として出力し、この電気信号がケーブル73によって車両のECU(Electronic Control Unit)に伝送される。ECUは、磁界検出素子71の電気信号に基づいて車輪の回転速度を検出可能であり、検出した車輪の回転速度に応じて例えば車輪に付与する制動力を調節して制動時における車輪のロックを抑止する。
【0024】
(カバー6の詳細構成)
カバー6の本体部61は、回転軸線Oと平行な軸方向視において円形の円盤部611と、円盤部611から車両インナ側に突出したボス部612と、外方部材2の延出部23の内側に圧入嵌合される円筒状の嵌合部613とを一体に有している。また、カバー6の本体部61には、磁界センサ7の封止部材72における軸部721を収容する収容穴610が形成されている。収容穴610は、回転軸線Oと平行に、ボス部612における車両インナ側の端面612aから車両アウタ側に延在している。このボス部612の端面612aには、図2に示すように、磁界センサ7の固定部722の車両アウタ側の端面722bが当接する。軸部721は、この固定部722の端面722bに立設されている。
【0025】
収容穴610は、本体部61を貫通しない止まり穴であり、収容穴610の底部(車両アウタ側の端部)が底壁614によって閉塞されている。収容穴610の深さ方向の長さは磁界センサ7の軸部721の軸方向の長さよりも長く、収容穴610の底面610aと軸部721の先端面721aとの間には空隙Sが形成される。収容穴610が止まり穴であることにより、収容穴610からカバー6内への泥水等の異物の侵入が抑止される。また、空隙Sが形成されることにより、ボス部612の端面612aに磁界センサ7の固定部722の車両アウタ側の端面722bが密着し、収容穴610内に泥水等が溜まってしまうことが抑制される。
【0026】
また、図2に示すように、底壁614の厚みをtとすると、この厚みtの好ましい範囲は、0.5mm以上1.0mm以下である。底壁614の厚みtが0.5mm未満であると、底壁614の強度が弱くなり、底壁614の厚みtが1.0mmを越えると、磁性部材52と磁界検出素子71との間の距離が長くなって磁界検出素子71で検出される磁界が弱くなってしまうためである。なお、磁性部材52における底壁614との対向面52aと底壁614との間の距離dは、各部の寸法誤差や組み付け誤差を考慮して、少なくとも0mmよりも大きくなるように設定される。
【0027】
図3(a)は、カバー6を車両インナ側から見た状態を示す平面図である。図3(b)は、車両インナ側から見たカバー6の収容穴610の周辺を拡大して示す拡大図である。図3(c)は、収容穴610に収容された磁界センサ7を軸部721及び磁界検出素子71の断面で示す断面図である。
【0028】
カバー6は、磁界センサ7の軸部721を位置決めする位置決め突起を有している。本実施の形態では、本体部61に第1乃至第3の位置決め突起615~617が形成されている。第1乃至第3の位置決め突起615~617は、収容穴610の内周面610bから内方に突出して軸部721の外周面721bに接している。
【0029】
軸部721は、回転軸線Oに対して平行に収容穴610に収容される円柱状であり、収容穴610の中心軸線C(図3(b)に示す)に直交する断面における軸部721の形状は円形である。磁界センサ7は、第1乃至第3の位置決め突起615~617によって軸部721の中心が中心軸線Cに一致するようにカバー6に対して位置決めされ、ボルト9によって固定される。
【0030】
収容穴610の内周面610bは、中心軸線Cを中心とする円形状であり、その直径(収容穴610の内径)は軸部721の直径(外径)よりも大きい。この径差により、収容穴610の内周面610bと軸部721の軸部721の外周面721bとの間には隙間が形成され、収容穴610の内周面610bと軸部721の軸部721の外周面721bとが非接触となっている。すなわち、軸部721は、その外周面721bが収容穴610内において第1乃至第3の位置決め突起615~617の先端部615a,616a,617aのみに接触して位置決めされている。
【0031】
図3(b)に示すように、収容穴610に軸部721を収容する前の自然状態において、第1乃至第3の位置決め突起615~617のそれぞれの先端部615a,616a,617aに内接する仮想円をVcとすると、この仮想円Vcの直径Dは、図3(c)に示す軸部721の直径Dよりも小さい。これにより、収容穴610に軸部721を収容したとき、第1乃至第3の位置決め突起615~617が弾性変形してそれぞれの先端部615a,616a,617aが軸部721の外周面721bに弾接する。そして、軸部721の中心が収容穴610の中心軸線Cに一致する。
【0032】
図3(a)~(c)の図示例では、第1乃至第3の位置決め突起615~617が収容穴610の内周面610bの周方向に沿って等間隔に配置されており、先端部615a,616a,617aを直線で結んだ形状が正三角形をなすが、第1乃至第3の位置決め突起615~617の配置はこれに限らない。ただし、第1乃至第3の位置決め突起615~617の先端部615a,616a,617aを直線で結んだ三角形に軸部721の中心が含まれていることが、軸部721を精度よく位置決めする上で望ましい。
【0033】
また、第1乃至第3の位置決め突起615~617は、収容穴610の軸方向中央部よりもエンコーダ5側(底壁614側)の位置で軸部721の外周面721bに当接する。換言すれば、収容穴610の軸方向中央部よりも開口側(端面612a側)の部分には第1乃至第3の位置決め突起615~617が形成されておらず、軸部721は当該部分では支持されていない。なお、図2では、第1乃至第3の位置決め突起615~617のうち、第3の位置決め突起617のみを示しているが、第1及び第2の位置決め突起615,616も軸方向において第3の位置決め突起617と同じ位置に設けられている。また、図2では、収容穴610の軸方向中央部を破線Dで示している。
【0034】
本実施の形態では、軸部721の径方向における磁界検出素子71の外周側にあたる位置を含む範囲に第1乃至第3の位置決め突起615~617が形成されている。これにより、磁界検出素子71が収容穴610において高精度に位置決めされる。
【0035】
図4(a)は、エンコーダ5の磁性部材52の一部を車両インナ側から見た平面図である。磁性部材52には、N磁極521とS磁極522が周方向に沿って交互に設けられている。図4(b)は、磁性部材52の断面と共に、N磁極521及びS磁極522の磁界の強度を示すグラフを示している。図4(b)では、図面上下方向が磁性部材52の径方向にあたる。N磁極521及びS磁極522の磁界の強度は、磁性部材52の径方向中央部で最も高くなり、内径側及び外径側の端部に近づくほど低くなる。磁界センサ7は、N磁極521及びS磁極522の磁界強度が最も高い位置で磁界検出素子71がこれらの磁界を検出するように、カバー6に位置決めされる。
【0036】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した第1の実施の形態によれば、磁界センサ7において磁界検出素子71が収容された封止部材72の軸部721をカバー6の収容穴610内に高精度に位置決めすることができ、磁界検出素子71によってエンコーダ5のN磁極521及びS磁極522の磁界を確実に検出することが可能となる。また、軸部721にOリング等の環状弾性体を装着しなくとも収容穴610からのカバー6の内側への泥水等の異物の侵入を抑止することができ、環状弾性体を軸部721の外周に装着する場合に比較して、部品点数及び組み付け工数を削減することが可能となる。
【0037】
なお、位置決め突起の数は、上記例示した3つに限らず、4つ以上でもよい。カバー6が少なくとも3つの位置決め突起を有していれば、軸部721の外周面721bと収容穴610の内周面610bとを非接触とし、当該少なくとも3つの位置決め突起によって軸部721を位置決めすることができる。
【0038】
ただし、軸部721の外周面721bを周方向の一箇所で収容穴610の内周面610bに接触させて軸部721を位置決めしてもよい。この場合の例として、以下に第2及び第3の実施の形態を説明する。
【0039】
[第2の実施の形態]
図5(a)は、本発明の第2の実施の形態に係るカバー6の収容穴610の周辺を拡大して示す拡大図である。図5(b)は、図5(a)に示す収容穴610に収容された磁界センサ7の軸部721及び磁界検出素子71を示す断面図である。
【0040】
本実施の形態では、第1及び第2の位置決め突起615,616が収容穴610の内周面610bから内方に突出して形成されており、第1及び第2の位置決め突起615,616によって軸部721の外周面721bの周方向の一箇所が収容穴610の内周面610bに当接するように押し付けられている。軸部721の外周面721bは、第1の位置決め突起615の先端部615aと第2の位置決め突起616の先端部616aとを結んだ線分Lの垂直二等分線Lが収容穴610の内周面610bと交差する交点Pに接触する。
【0041】
この第2の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の作用及び効果が得られる。なお、第2の実施の形態では、収容穴610の中心と軸部721の中心がずれるので、このずれを見込んで収容穴610が形成される。
【0042】
[第3の実施の形態]
図6(a)は、本発明の第3の実施の形態に係るカバー6の収容穴610の周辺を拡大して示す拡大図である。図6(b)は、図6(a)に示す収容穴610に収容された磁界センサ7の軸部721及び磁界検出素子71を示す断面図である。
【0043】
本実施の形態では、一つの位置決め突起618のみが収容穴610の内周面610bから内方に突出して形成されている。軸部721は、この位置決め突起618により、軸部721の中心を挟んで位置決め突起618の反対側にあたる周方向一箇所の外周面721bが収容穴610の内周面610bに当接するように押し付けられている。軸部721の外周面721bに接する位置決め突起618の先端部618aは、内周面610bの周方向に所定の長さを有しており、これにより軸部721が収容穴610の内周面610bとの当接位置を中心として揺動してしまうことが抑止されている。
【0044】
この第3の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の作用及び効果が得られる。なお、位置決め突起618は、上記と同様に、収容穴610の軸方向中央部よりもエンコーダ5側の位置で軸部721の外周面721bに当接することが望ましく、また軸部721の径方向における磁界検出素子71の外周側にあたる位置を含む範囲で軸部721の外周面721bに当接することがより望ましい。
【0045】
(付記)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、これらの実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0046】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、磁界センサ7がボルト9によってカバー6に固定された場合について説明したが、これに限らず、例えば凹部と凸部との係合によって磁界センサ7がカバー6に固定されていてもよい。また、カバー6は、必ずしも芯金62を有していなくともよい。
【符号の説明】
【0047】
1…車輪用軸受装置 2…外方部材
3…内方部材 311…車輪取付フランジ
4…転動体 5…エンコーダ
52…磁性部材 521…N磁極
522…S磁極 6…カバー(支持部材)
610…収容穴 610b…内周面
615…第1の位置決め突起 616…第2の位置決め突起
617…第3の位置決め突起 618…位置決め突起
615a,616a,617a…先端部 7…磁界センサ
71…磁界検出素子 72…封止部材
721…軸部 721b…外周面
Vc…仮想円
図1
図2
図3
図4
図5
図6