(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】半導体素子の保護回路、半導体素子の保護回路を備えた電力変換装置及び半導体素子の保護方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20220531BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2018144248
(22)【出願日】2018-07-31
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】田久保 拡
(72)【発明者】
【氏名】中沢 将剛
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 翔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑平
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-032984(JP,A)
【文献】特開2014-236533(JP,A)
【文献】特開2004-312907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子に流れる主電流を検出する電流検出部と、
前記半導体素子の主端子間の電圧を検出する電圧検出部と、
前記電流検出部で検出された前記主電流が所定の参照電流よりも大きく、かつ前記電圧検出部で検出された前記主端子間の電圧が所定の参照電圧よりも高い場合に、前記半導体素子に流れる電流を遮断するための遮断信号を生成する信号生成部と
を備える半導体素子の保護回路。
【請求項2】
前記電流検出部は、前記半導体素子に内蔵された電流センス部に流れる電流を検出する
請求項1に記載の半導体素子の保護回路。
【請求項3】
半導体素子と、
請求項1または2に記載の半導体素子の保護回路と
を備える電力変換装置。
【請求項4】
前記半導体素子は、ワイドバンドギャップ半導体素子である
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
半導体素子に流れる主電流を検出し、
前記半導体素子の主端子間の電圧を検出し、
検出された前記主電流が所定の参照電流よりも大きく、かつ検出された前記主端子間の電圧が所定の参照電圧よりも高い場合に、前記半導体素子に流れる電流を遮断するための遮断信号を出力する
半導体素子の保護方法。
【請求項6】
前記半導体素子は、ワイドバンドギャップ半導体素子である
請求項5に記載の半導体素子の保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の保護回路、半導体素子の保護回路を備えた電力変換装置及び半導体素子の保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インバータの出力部に電流検出手段を設け、検出した出力電流が設定した過電流レベルを超えると、パワー半導体素子をオフ状態に移行させることで、過電流保護を行う技術が知られている(例えば、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/080279号
【文献】特開2014-217151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パワー半導体素子をオフ状態に移行させる際には、パワー半導体素子に流れる大電流を遮断することとなる。この大電流が流れる配線ケーブルには、浮遊インダクタンスが存在する。このため、パワー半導体素子を遮断する際に、この浮遊インダクタンスに起因する過大なサージ電圧がパワー半導体素子に印加されてしまう。印加されるサージ電圧がパワー半導体素子の絶対最大定格電圧を超えると、パワー半導体素子が破損する可能性があるという問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、半導体素子の破損を防止することができる半導体素子の保護回路、半導体素子を備えた電力変換装置及び半導体素子の保護方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様による半導体素子の保護回路は、半導体素子に流れる主電流を検出する電流検出部と、前記半導体素子の主端子間の電圧を検出する電圧検出部と、前記電流検出部で検出された前記主電流が所定の参照電流よりも大きく、かつ前記電圧検出部で検出された前記主端子間の電圧が所定の参照電圧よりも高い場合に、前記半導体素子に流れる電流を遮断するための遮断信号を生成する信号生成部とを備えることを特徴とする。
【0007】
前記電流検出部は、前記半導体素子に内蔵された電流センス部に流れる電流を検出してもよい。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明の一態様による電力変換装置は、半導体素子と、上記本発明の一態様による半導体素子の保護回路とを備えることを特徴とする。
【0009】
前記半導体素子は、ワイドバンドギャップ半導体素子であってもよい。
【0010】
さらに、上記目的を達成するために、本発明の一態様による半導体素子の保護方法は、半導体素子に流れる主電流を検出し、前記半導体素子の主端子間の電圧を検出し、検出された前記主電流が所定の参照電流よりも大きく、かつ検出された前記主端子間の電圧が所定の参照電圧よりも高い場合に、前記半導体素子に流れる電流を遮断するための遮断信号を出力することを特徴とする。
【0011】
前記半導体素子は、ワイドバンドギャップ半導体素子であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、半導体素子の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態による電力変換装置の概略構成を示す回路ブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態による半導体素子の保護回路の概略構成を示す回路ブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態による半導体素子の保護回路を説明する図であって、半導体素子に流れるドレイン電流及びドレインソース間電圧を測定するための測定回路のブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態による半導体素子の保護回路を説明する図であって、半導体素子に流れるドレイン電流の電流波形及びドレインソース間電圧の電圧波形を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態による半導体素子の保護回路を説明する図であって、半導体素子に流れるドレイン電流の電流波形及びドレインソース間電圧の電圧波形を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態による半導体素子の保護回路を説明する図であって、半導体素子のドレインソース間電圧に対するドレイン電流の特性の一例を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態の変形例による半導体素子の保護回路及び電力変換装置を説明する図であって、電流センス部を有するパワー半導体素子の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態による半導体素子の保護回路、半導体素子の保護回路を備えた電力変換装置及び半導体素子の保護方法について
図1から
図6を用いて説明する。
【0015】
<電力変換装置>
まず、本実施形態による電力変換装置1について
図1を用いて説明する。
図1に示すように、電力変換装置1は、三相交流電源14から入力する三相交流電圧を全波整流して直流電圧に変換するコンバータ部15と、コンバータ部15で変換された直流電圧を平滑化する平滑用コンデンサ16と、平滑用コンデンサ16で平滑化された直流電圧を三相交流電圧に変換してモータ負荷(MT)17に出力するインバータ部10とを有している。モータ負荷17は、例えばファンやポンプなどを駆動する三相誘導モータや三相同期モータである。
【0016】
コンバータ部15は、平滑用コンデンサ16に逆並列接続されて三相交流電源14から出力される三相交流電圧の各々が印加される6つのダイオード15a,15b,15c,15d,15e,15fを有している。ダイオード15a及びダイオード15bは直列に接続され、例えば三相交流電源14のU相電圧が印加される。ダイオード15aの陰極は平滑用コンデンサ16の正極側電極に接続され、ダイオード15aの負極は、ダイオード15bの陰極及び三相交流電源14のU相電圧の出力端子に接続されている。ダイオード15bの陽極は平滑用コンデンサ16の負極側電極に接続されている。
【0017】
ダイオード15c及びダイオード15dは直列に接続され、例えば三相交流電源14のV相電圧が印加される。ダイオード15cの陰極は平滑用コンデンサ16の正極側電極に接続され、ダイオード15cの負極は、ダイオード15dの陰極及び三相交流電源14のV相電圧の出力端子に接続されている。ダイオード15dの陽極は平滑用コンデンサ16の負極側電極に接続されている。
【0018】
ダイオード15e及びダイオード15fは直列に接続され、例えば三相交流電源14のW相電圧が印加される。ダイオード15eの陰極は平滑用コンデンサ16の正極側電極に接続され、ダイオード15eの負極は、ダイオード15fの陰極及び三相交流電源14のW相電圧の出力端子に接続されている。ダイオード15fの陽極は平滑用コンデンサ16の負極側電極に接続されている。ダイオード15a、ダイオード15c及びダイオード15eの陰極は互いに接続され、ダイオード15b、ダイオード15d及びダイオード15fの陽極は互いに接続されている。
【0019】
電力変換装置1に設けられたインバータ部10は、コンバータ部15及び平滑用コンデンサ16で生成された直流電圧の正極側に接続されたパワー半導体素子(半導体素子の一例で、本実施形態ではMOSFET(Metal Oxside Semiconductor Field Emission Transistor)を用いている。)13a,13c,13eと、この直流電圧の負極側に接続されたパワー半導体素子(半導体素子の一例で、本実施形態ではMOSFETを用いている。)13b,13d,13fとを有している。パワー半導体素子13a,13b,13c,13d,13e,13fは、炭素ケイ素(SiC)製の半導体素子である。パワー半導体素子13a及びパワー半導体素子13bは、この直流電圧の正極側と負極側との間に直列に接続されている。パワー半導体素子13c及びパワー半導体素子13dは、この直流電圧の正極側と負極側との間に直列に接続されている。パワー半導体素子13e及びパワー半導体素子13fは、この直流電圧の正極側と負極側との間に直列に接続されている。パワー半導体素子13a及びパワー半導体素子13bの接続部と、パワー半導体素子13c及びパワー半導体素子13dの接続部と、パワー半導体素子13e及びパワー半導体素子13fは、モータ負荷17にそれぞれ接続されている。なお、パワー半導体素子13a,13b,13c,13d,13e,13fは、炭素ケイ素に限らずワイドバンドギャップ半導体を含んでもよい。ワイドバンドギャップ半導体素子とは、シリコン半導体素子よりもバンドギャップが大きい半導体素子であり、例えばSiC、GaN、ダイヤモンド、窒化ガリウム系材料、酸化ガリウム系材料、AlN、AlGaN、または、ZnOなどを含む半導体素子である。
【0020】
より具体的には、パワー半導体素子13aのドレイン端子Dは、ダイオード15a,15c,15eのそれぞれの陰極、平滑用コンデンサ16の正極側電極及びパワー半導体素子13c,13eのそれぞれのドレイン端子Dに接続されている。パワー半導体素子13aのソース端子Sは、パワー半導体素子13bのドレイン端子D及びモータ負荷17に接続されている。
【0021】
パワー半導体素子13bのソース端子Sは、ダイオード15a,15c,15eのそれぞれの陽極、平滑用コンデンサ16の負極側電極及びパワー半導体素子13d,13fのそれぞれのドレイン端子Dに接続されている。
【0022】
パワー半導体素子13cのソース端子Sは、パワー半導体素子13dのドレイン端子D及びモータ負荷17に接続されている。パワー半導体素子13eのソース端子Sは、パワー半導体素子13fのドレイン端子D及びモータ負荷17に接続されている。
【0023】
また、インバータ部10は、パワー半導体素子13aのスイッチング動作を制御するゲート駆動装置12aと、パワー半導体素子13bのスイッチング動作を制御するゲート駆動装置12bとを有している。また、インバータ部10は、パワー半導体素子13cのスイッチング動作を制御するゲート駆動装置12cと、パワー半導体素子13dのスイッチング動作を制御するゲート駆動装置12dとを有している。さらに、インバータ部10は、パワー半導体素子13eのスイッチング動作を制御するゲート駆動装置12eと、パワー半導体素子13fのスイッチング動作を制御するゲート駆動装置12fとを有している。
【0024】
パワー半導体素子13a及びパワー半導体素子13bは、例えばU相アームを構成し、パワー半導体素子13c及びパワー半導体素子13dは、例えばV相アームを構成し、パワー半導体素子13e及びパワー半導体素子13fは、例えばW相アームを構成している。したがって、インバータ部10は、これらのU相アーム、V相アーム及びW相アームが並列接続された三相ブリッジ回路を有している。また、インバータ部10は、U相アームのスイッチング動作を制御するゲート駆動装置12a,12bを有している。また、インバータ部10は、V相アームのスイッチング動作を制御するゲート駆動装置12c,12dを有している。さらに、インバータ部10は、W相アームのスイッチング動作を制御するゲート駆動装置12e,12fを有している。パワー半導体素子13a,13c,13eはハイサイドスイッチを構成し、パワー半導体素子13b,13c,13fはローサイドスイッチを構成する。
【0025】
ゲート駆動装置12aは、ゲート駆動回路121aと、ゲート駆動回路121a及びパワー半導体素子13aのゲート端子Gの間に接続されたゲート抵抗122aとを有している。ゲート駆動装置12bは、ゲート駆動回路121bと、ゲート駆動回路121b及びパワー半導体素子13bのゲート端子Gの間に接続されたゲート抵抗122bとを有している。ゲート駆動装置12cは、ゲート駆動回路121cと、ゲート駆動回路121c及びパワー半導体素子13cのゲート端子Gの間に接続されたゲート抵抗122cとを有している。ゲート駆動装置12dは、ゲート駆動回路121dと、ゲート駆動回路121d及びパワー半導体素子13dのゲート端子Gの間に接続されたゲート抵抗122dとを有している。ゲート駆動装置12eは、ゲート駆動回路121eと、ゲート駆動回路121e及びパワー半導体素子13eのゲート端子Gの間に接続されたゲート抵抗122eとを有している。ゲート駆動装置12fは、ゲート駆動回路121fと、ゲート駆動回路121f及びパワー半導体素子13fのゲート端子Gの間に接続されたゲート抵抗122fとを有している。
【0026】
インバータ部10は、制御部11を有している。制御部11は、ゲート駆動装置12a,12b,12c,12d,12e,12fのそれぞれに駆動信号を出力するようになっている。ゲート駆動装置12a,12b,12c,12d,12e,12fは、制御部11から入力される駆動信号に基づいて、パワー半導体素子13a,13b,13c,13d,13e,13fのスイッチング動作を制御するための制御信号を生成する。
【0027】
電力変換装置1に設けられたインバータ部10は、パワー半導体素子13aを保護する保護回路(半導体素子の保護回路の一例)3aと、パワー半導体素子13bを保護する保護回路(半導体素子の保護回路の一例)3bとを備えている。また、電力変換装置1に設けられたインバータ部10は、パワー半導体素子13cを保護する保護回路(半導体素子の保護回路の一例)3cと、パワー半導体素子13dを保護する保護回路(半導体素子の保護回路の一例)3dとを備えている。さらに、電力変換装置1に設けられたインバータ部10は、パワー半導体素子13eを保護する保護回路(半導体素子の保護回路の一例)3eと、パワー半導体素子13fを保護する保護回路(半導体素子の保護回路の一例)3fとを備えている。
【0028】
保護回路3aは、パワー半導体素子13aに流れるドレイン電流(主電流の一例)を検出する電流検出部35aと、パワー半導体素子13aのドレイン端子D及びソース端子Sの間(主端子間の一例)の電圧(すなわち、ドレインソース間電圧)を検出する電圧検出部36aとを備えている。保護回路3aは、電流検出部35aで検出された主電流(すなわち、パワー半導体素子13aのドレイン電流)が所定の参照電流よりも大きく、かつ電圧検出部36aで検出された主端子間の電圧(すなわち、パワー半導体素子13aのドレインソース間電圧)が所定の参照電圧よりも高い場合に、パワー半導体素子13aに流れる電流を遮断するための遮断信号を生成する遮断信号生成部(信号生成部の一例)37aを備えている。
【0029】
インバータ部10は、パワー半導体素子13a及びパワー半導体素子13bの接続点とモータ負荷17とを接続する配線ケーブルに取り付けられた電流センサ31を有している。電流検出部35aは、電流センサ31で検知された電流を用いてパワー半導体素子13aに流れる電流(すなわち、パワー半導体素子13aのドレイン電流)を検出するようになっている。電圧検出部36aは、パワー半導体素子13aの両端電圧として、パワー半導体素子13aのドレイン端子Dとソース端子Sとの間の電圧であるドレインソース間電圧を検出するようになっている。
【0030】
本実施形態では、遮断信号生成部37aは、制御部11に設けられている。しかしながら、保護回路3aに設けられた電流検出部35a及び電圧検出部36aも制御部11に設けられていてもよい。保護回路3aの詳細な構成については後述する。
【0031】
保護回路3bは、パワー半導体素子13bに流れるドレイン電流(主電流の一例)を検出する電流検出部35bと、パワー半導体素子13bのドレイン端子D及びソース端子Sの間(主端子間の一例)の電圧(すなわち、ドレインソース間電圧)を検出する電圧検出部36bとを備えている。保護回路3bは、電流検出部35bで検出された主電流(すなわち、パワー半導体素子13bのドレイン電流)が所定の参照電流よりも大きく、かつ電圧検出部36bで検出された主端子間の電圧(すなわち、パワー半導体素子13bのドレインソース間電圧)が所定の参照電圧よりも高い場合に、パワー半導体素子13bに流れる電流を遮断するための遮断信号を生成する遮断信号生成部(信号生成部の一例)37bを備えている。
【0032】
電流検出部35bは、電流センサ31で検知された電流を用いてパワー半導体素子13bに流れる電流(すなわち、パワー半導体素子13bのドレイン電流)を検出するようになっている。電流センサ31は、パワー半導体素子13aのドレイン電流及びパワー半導体素子13bのドレイン電流のいずれの検出にも用いられる。電圧検出部36bは、パワー半導体素子13bの両端電圧として、パワー半導体素子13bのドレイン端子Dとソース端子Sとの間の電圧であるドレインソース間電圧を検出するようになっている。
【0033】
本実施形態では、保護回路3bに設けられた遮断信号生成部37bのみが、制御部11に設けられている。しかしながら、保護回路3bに設けられた電流検出部35b及び電圧検出部36bも制御部11に設けられていてもよい。保護回路3bの詳細な構成については後述する。
【0034】
保護回路3cは、パワー半導体素子13cに流れるドレイン電流(主電流の一例)を検出する電流検出部35cと、パワー半導体素子13cのドレイン端子D及びソース端子Sの間(主端子間の一例)の電圧(すなわち、ドレインソース間電圧)を検出する電圧検出部36cとを備えている。保護回路3cは、電流検出部35cで検出された主電流(すなわち、パワー半導体素子13cのドレイン電流)が所定の参照電流よりも大きく、かつ電圧検出部36cで検出された主端子間の電圧(すなわち、パワー半導体素子13cのドレインソース間電圧)が所定の参照電圧よりも高い場合に、パワー半導体素子13cに流れる電流を遮断するための遮断信号を生成する遮断信号生成部(信号生成部)37cを備えている。
【0035】
インバータ部10は、パワー半導体素子13c及びパワー半導体素子13dの接続点とモータ負荷17とを接続する配線ケーブルに取り付けられた電流センサ32を有している。電流検出部35cは、電流センサ32で検知された電流を用いてパワー半導体素子13cに流れる電流(すなわち、パワー半導体素子13cのドレイン電流)を検出するようになっている。電圧検出部36cは、パワー半導体素子13cの両端電圧として、パワー半導体素子13cのドレイン端子Dとソース端子Sとの間の電圧であるドレインソース間電圧を検出するようになっている。
【0036】
本実施形態では、保護回路3cに設けられた遮断信号生成部37cのみが、制御部11に設けられている。しかしながら、保護回路3cに設けられた電流検出部35c及び電圧検出部36cも制御部11に設けられていてもよい。保護回路3cの詳細な構成については後述する。
【0037】
保護回路3dは、パワー半導体素子13dに流れるドレイン電流(主電流の一例)を検出する電流検出部35dと、パワー半導体素子13dのドレイン端子D及びソース端子Sの間(主端子間の一例)の電圧(すなわち、ドレインソース間電圧)を検出する電圧検出部36dとを備えている。保護回路3dは、電流検出部35dで検出された主電流(すなわち、パワー半導体素子13dのドレイン電流)が所定の参照電流よりも大きく、かつ電圧検出部36dで検出された主端子間の電圧(すなわち、パワー半導体素子13dのドレインソース間電圧)が所定の参照電圧よりも高い場合に、パワー半導体素子13dに流れる電流を遮断するための遮断信号を生成する遮断信号生成部(信号生成部の一例)37dを備えている。
【0038】
電流検出部35dは、電流センサ32で検知された電流を用いてパワー半導体素子13dに流れる電流(すなわち、パワー半導体素子13dのドレイン電流)を検出するようになっている。電流センサ32は、パワー半導体素子13cのドレイン電流及びパワー半導体素子13dのドレイン電流のいずれの検出にも用いられる。電圧検出部36dは、パワー半導体素子13dの両端電圧として、パワー半導体素子13dのドレイン端子Dとソース端子Sとの間の電圧であるドレインソース間電圧を検出するようになっている。
【0039】
本実施形態では、保護回路3dに設けられた遮断信号生成部37dのみが、制御部11に設けられている。しかしながら、保護回路3dに設けられた電流検出部35d及び電圧検出部36dも制御部11に設けられていてもよい。保護回路3dの詳細な構成については後述する。
【0040】
保護回路3eは、パワー半導体素子13eに流れるドレイン電流(主電流の一例)を検出する電流検出部35eと、パワー半導体素子13eのドレイン端子D及びソース端子Sの間(主端子間の一例)の電圧(すなわち、ドレインソース間電圧)を検出する電圧検出部36eとを備えている。保護回路3eは、電流検出部35eで検出された主電流(すなわち、パワー半導体素子13eのドレイン電流)が所定の参照電流よりも大きく、かつ電圧検出部36eで検出された主端子間の電圧(すなわち、パワー半導体素子13eのドレインソース間電圧)が所定の参照電圧よりも高い場合に、パワー半導体素子13eに流れる電流を遮断するための遮断信号を生成する遮断信号生成部(信号生成部の一例)37eを備えている。
【0041】
インバータ部10は、パワー半導体素子13e及びパワー半導体素子13fの接続点とモータ負荷17とを接続する配線ケーブルに取り付けられた電流センサ33を有している。電流検出部35eは、電流センサ33で検知された電流を用いてパワー半導体素子13eに流れる電流(すなわち、パワー半導体素子13eのドレイン電流)を検出するようになっている。電圧検出部36eは、パワー半導体素子13eの両端電圧として、パワー半導体素子13eのドレイン端子Dとソース端子Sとの間の電圧であるドレインソース間電圧を検出するようになっている。
【0042】
本実施形態では、保護回路3eに設けられた遮断信号生成部37eのみが、制御部11に設けられている。しかしながら、保護回路3eに設けられた電流検出部35e及び電圧検出部36eも制御部11に設けられていてもよい。保護回路3eの詳細な構成については後述する。
【0043】
保護回路3fは、パワー半導体素子13fに流れるドレイン電流(主電流の一例)を検出する電流検出部35fと、パワー半導体素子13fのドレイン端子D及びソース端子Sの間(主端子間の一例)の電圧(すなわち、ドレインソース間電圧)を検出する電圧検出部36fとを備えている。保護回路3fは、電流検出部35fで検出された主電流(すなわち、パワー半導体素子13fのドレイン電流)が所定の参照電流よりも大きく、かつ電圧検出部36fで検出された主端子間の電圧(すなわち、パワー半導体素子13fのドレインソース間電圧)が所定の参照電圧よりも高い場合に、パワー半導体素子13fに流れる電流を遮断するための遮断信号を生成する遮断信号生成部(信号生成部の一例)37fを備えている。
【0044】
電流検出部35fは、電流センサ33で検知された電流を用いてパワー半導体素子13fに流れる電流(すなわち、パワー半導体素子13fのドレイン電流)を検出するようになっている。電流センサ33は、パワー半導体素子13eのドレイン電流及びパワー半導体素子13fのドレイン電流のいずれの検出にも用いられる。電圧検出部36fは、パワー半導体素子13fの両端電圧として、パワー半導体素子13fのドレイン端子Dとソース端子Sとの間の電圧であるドレインソース間電圧を検出するようになっている。
【0045】
本実施形態では、保護回路3fに設けられた遮断信号生成部37fのみが、制御部11に設けられている。しかしながら、保護回路3fに設けられた電流検出部35f及び電圧検出部36fも制御部11に設けられていてもよい。保護回路3fの詳細な構成については後述する。
【0046】
<半導体素子の保護回路>
保護回路3a,3b,3c,3d,3e,3fは、検出対象のパワー半導体素子が異なるものの、同一の構成を有し、同一の機能を発揮するようになっている。そこで、本実施形態による半導体素子の保護回路の概略構成について、保護回路3aを例にとって、
図1を参照しつつ
図2を用いて説明する。
図2では、理解を容易にするため、保護回路3aの保護対象であるパワー半導体素子13a、パワー半導体素子13aを駆動するゲート駆動装置12aも併せて図示されている。
【0047】
図2に示すように、電流センサ31は、環状のリングコア(不図示)に巻かれたn巻の巻線311と、巻線311から出力される出力電流を流す負荷抵抗312とを有している。負荷抵抗312は、巻線311の両端間に接続されている。パワー半導体素子13a及びパワー半導体素子13bとの接続点とモータ負荷17との間の配線ケーブル(
図1参照)は、電流センサ31のリングコアの中央の穴に通して配置される。電流センサ31は、当該配線ケーブルに流れる電流と出力電流との間がn:1の変流比となる電流トランスとして機能し、負荷抵抗312によって出力電流を検出電圧V31として出力するようになっている。
【0048】
保護回路3aに設けられた電流検出部35aは、全波整流回路の構成を有している。パワー半導体素子13aがオン状態の場合、電流センサ31が取り付けられている配線ケーブルには、パワー半導体素子13a及びパワー半導体素子13bの接続点からモータ負荷17に向かう方向に電流が流れる。一方、パワー半導体素子13b(
図1参照)がオン状態の場合、電流センサ31が取り付けられている配線ケーブルには、モータ負荷17からパワー半導体素子13a及びパワー半導体素子13bとの接続点に向かう方向に電流が流れる。このように、パワー半導体素子13a及びパワー半導体素子13bのオン/オフ状態によって当該配線ケーブルに流れる電流の向きが異なる。電流検出部35a,35b,35c,35d,35e,35fは、配線ケーブルに流れる電流の向きによらずに同じ極性の出力電圧を出力できる全波整流回路の構成を有している。これにより、電流検出部35a,35b,35c,35d,35e,35fは、同一の回路構成を有することができる。
【0049】
図2に示すように、電流検出部35aは、増幅器351aと、入力抵抗352aと、整流用のダイオード353a及びダイオード354aと、バイパス抵抗355aと、帰還抵抗357aとを有している。増幅器351aは、例えばオペアンプで構成されている。増幅器351a、入力抵抗352a、ダイオード353a、ダイオード354a、バイパス抵抗355a及び帰還抵抗357aは、全波整流回路の半波整流部を構成している。電流検出部35aは、増幅器356aを有している。増幅器356aは、例えばオペアンプで構成されている。増幅器356は、全波整流回路の電圧フォロワ部を構成している。
【0050】
増幅器351aの反転入力端子(-)は、ダイオード353aの陽極と、入力抵抗352aの一端子と、帰還抵抗357aの一端子とに接続されている。増幅器351aの非反転入力端子(+)は、基準電位の領域(グランド)に接続されている。増幅器351aの出力端子は、ダイオード353aの陰極と、ダイオード354aの陽極とに接続されている。
【0051】
入力抵抗352aの他端子は、巻線311の一端子及び負荷抵抗312の一端子と、バイパス抵抗355aの一端子とに接続されている。
【0052】
ダイオード354aの陰極は、増幅器356aの非反転入力端子(+)と、バイパス抵抗355aの他端子に接続されている。
【0053】
増幅器356aの反転入力端子(-)は、増幅器356aの出力端子と帰還抵抗357aの他端子に接続されている。
【0054】
詳細は後述するが、電流検出部35aは、電流センサ31で検知されたパワー半導体素子13aのドレイン電流に基づく電圧を全波整流し、増幅器356aの出力端子から出力電圧V35aを遮断信号生成部37aに出力するようになっている。
【0055】
図2に示すように、電圧検出部36aは、増幅器361aと、入力抵抗362aと、入力抵抗363aと、入力抵抗365aと、帰還抵抗364aとを有している。増幅器361aは、例えばオペアンプで構成されている。電圧検出部36aは、増幅器361a、入力抵抗362a、入力抵抗363a、入力抵抗365a及び帰還抵抗364aによって差動増幅の回路構成を有している。
【0056】
増幅器361aの反転入力端子(-)は、入力抵抗362aの一端子と、帰還抵抗364aの一端子とに接続されている。増幅器361aの非反転入力端子(+)は、入力抵抗363aの一端子と、入力抵抗365aの一端子とに接続されている。増幅器361aの出力端子は、帰還抵抗364aの他端子に接続されている。
【0057】
入力抵抗362aの他端子は、パワー半導体素子13aのドレイン端子Dに接続されている。入力抵抗363aの他端子は、パワー半導体素子13aのソース端子Sに接続されている。入力抵抗365aの他端子は、基準電位の領域(グランド)に接続されている。
【0058】
詳細は後述するが、電圧検出部36aは、パワー半導体素子13aのドレイン端子D及びソース端子Sのそれぞれの電位の電位差に基づく差動電圧を増幅器361aの出力端子から遮断信号生成部37aに出力するようになっている。
【0059】
図2に示すように、制御部11は、パワー半導体素子13aをオン/オフ動作させるための動作信号を生成する動作信号生成部111aを有している。また、制御部11は、パワー半導体素子13aに過電流が流れた場合にパワー半導体素子13aのドレイン電流Idを遮断するための遮断信号を生成する遮断信号生成部37aを有している。さらに、制御部11は、動作信号生成部111aが出力する動作信号と、遮断信号生成部37aが出力する遮断信号との論理和を演算してゲート駆動装置12aを駆動するための駆動信号を生成するORゲート112aを有している。
【0060】
図2に示すように、遮断信号生成部37aは、電流検出部35aで検出された電流が所定の参照電流よりも大きいか否かを判定する電流判定部371aを有している。また、遮断信号生成部37aは、電圧検出部36aで検出されたパワー半導体素子13aのドレインソース間電圧が所定の参照電圧よりも高いか否かを判定する電圧判定部372aを有している。さらに、遮断信号生成部37aは、電流判定部371aの出力信号と電圧判定部372aの出力信号との論理積を演算するANDゲート373aを有している。ANDゲート373aから出力され、電圧レベルが高レベルの出力信号がパワー半導体素子13aを遮断するための遮断信号となる。
【0061】
図2に示すように、電流判定部371aは、増幅器AP1aを有している。増幅器AP1aは、例えばオペアンプで構成されている。増幅器AP1aの非反転入力端子(+)は、電流検出部35aの増幅器356aの出力端子と、帰還抵抗357aの他端子とに接続されている。増幅器AP1aの反転入力端子(-)には、所定の参照電流に対応する第一比較電圧Vc1が入力されている。増幅器AP1aの出力端子は、ANDゲート373aの一方の入力端子に接続されている。第一比較電圧Vc1は、所定の参照電流を電圧に変換する電流電圧変換回路(不図示)によって生成される。当該電流電圧変換回路は、例えば制御部11に設けられている。
【0062】
電流判定部371aは、増幅器AP1aによってコンパレータ(比較器)を構成している。電流判定部371aは、増幅器AP1aの非反転入力端子(+)に入力された出力電圧V35aと、増幅器AP1aの反転入力端子(-)に入力された第一比較電圧Vc1とを比較する。電流判定部371aは、出力電圧V35aが第一比較電圧Vc1よりも低い場合には、電圧レベルが低レベルの出力信号を出力し、出力電圧V35aが第一比較電圧Vc1よりも高い場合には、電圧レベルが高レベルの出力信号を出力するようになっている。
【0063】
第一比較電圧Vc1に対応する所定の参照電流は、パワー半導体素子13aの絶対最大定格電流よりも小さい値に設定されている。増幅器AP1aの非反転入力端子(+)に入力される出力電圧V35aは、電流検出部35aが検出したパワー半導体素子13aのドレイン電流に対応する出力電圧である。このため、電流判定部371aは、電流検出部35aが検出したパワー半導体素子13aのドレイン電流が第一比較電圧Vc1に対応する所定の参照電流を超えた場合に、遮断信号を出力するようになっている。これにより、パワー半導体素子13aに絶対最大定格電流よりも大きいドレイン電流がパワー半導体素子13aに流れることが防止される。
【0064】
図2に示すように、電圧判定部372aは、増幅器AP2aを有している。増幅器AP2aは、例えばオペアンプで構成されている。増幅器AP2aの非反転入力端子(+)は、電圧検出部36aの増幅器361aの出力端子と、帰還抵抗364aの他端子とに接続されている。増幅器AP2aの反転入力端子(-)には、所定の参照電圧に対応する第二比較電圧Vc2が入力されている。増幅器AP2aの出力端子は、ANDゲート373aの他方の入力端子に接続されている。第二比較電圧Vc2は、電圧生成回路(不図示)によって生成される。当該電圧生成回路は、例えば制御部11に設けられている。
【0065】
電圧判定部372aは、増幅器AP2aによってコンパレータ(比較器)を構成している。電圧判定部372aは、増幅器AP2aの非反転入力端子(+)に入力された出力電圧V36aと、増幅器AP2aの反転入力端子(-)に入力された第二比較電圧Vc2とを比較する。電圧判定部372aは、出力電圧V36aが第二比較電圧Vc2よりも低い場合には、電圧レベルが低レベルの出力信号を出力し、出力電圧V36aが第二比較電圧Vc2よりも高い場合には、電圧レベルが高レベルの出力信号を出力するようになっている。
【0066】
第二比較電圧Vc2に対応する所定の参照電圧は、パワー半導体素子13aが飽和領域で動作可能なドレインソース間電圧に設定されている。詳細は後述するが、半導体素子は、飽和領域よりも線形領域(非飽和領域)での動作中にドレイン電流を遮断した方が印加されるサージ電圧の振幅が大きくなる。このため、本実施形態による半導体素子の保護回路は、半導体素子が飽和領域で動作可能なドレインソース間電圧よりも大きい値に第二比較電圧Vc2が設定されている。これにより、本実施形態による保護回路は、ドレイン電流が遮断された場合に半導体素子に印加されるサージ電圧の振幅を小さくできるようになっている。その結果、本実施形態による半導体素子の保護回路は、半導体素子のドレイン電流が遮断された場合に印加されるサージ電圧が当該半導体素子の絶対最大定格電圧よりも高くなることを防止できる。
【0067】
増幅器AP2aの非反転入力端子(+)に入力される出力電圧V36aは、電圧検出部36aが検出したパワー半導体素子13aのドレインソース間電圧に対応する電圧である。このため、電圧判定部372aは、電圧検出部36aが検出したパワー半導体素子13aのドレインソース間電圧が第二比較電圧Vc2に対応する所定の参照電圧を超えた場合に、遮断信号を出力するようになっている。これにより、パワー半導体素子13aが異常動作して遮断される時のパワー半導体素子13aのドレインソース間電圧は、飽和領域で動作可能な電圧になる。このため、ドレイン電流の遮断時にパワー半導体素子13aに印加されるサージ電圧は、パワー半導体素子13aの絶対最大定格電圧よりも低くなるので、保護回路3aは、パワー半導体素子13aのドレイン端子Dとソース端子Sとの間に絶対最大定格電圧よりも高い電圧が印加されることを防止できる。
【0068】
図2に示すように、ORゲート112aの出力端子は、ゲート駆動装置12aに設けられたゲート駆動回路121aの入力端子に接続されている。ゲート駆動回路121aは、例えば反転増幅回路としての機能を発揮するようになっている。ゲート駆動回路121aは、ORゲート112aから入力された駆動信号の電圧レベルを反転するとともに、パワー半導体素子13aを駆動できる電圧レベルの信号に当該駆動信号を増幅したゲート制御信号を生成するようになっている。ゲート駆動回路121aは、生成したゲート制御信号をゲート抵抗122aを介してパワー半導体素子13aのゲート端子Gに入力するようになっている。パワー半導体素子13aは、ゲート制御信号の電圧レベルに応じてオン/オフ動作したり遮断したりする。
【0069】
<半導体素子の遮断動作特性>
次に、本実施形態における半導体素子の電流遮断動作の特性について
図3から
図5を用いて説明する。
図3に示すように、半導体素子の電流遮断動作の特性を測定するために用いられた測定回路4は、本実施形態による電力変換装置1のインバータ部10に設けられた3つのアームの各相と同様の構成を有している。
【0070】
測定回路4は、直流電圧を生成する電源43を有している。測定回路4は、電源43の正極端子に接続されたパワー半導体素子13gと、電源43の負極端子に接続されたパワー半導体素子13hとを有している。パワー半導体素子13g,13hは、本実施形態におけるパワー半導体素子13aなどと同様に、炭素ケイ素(SiC)製の半導体素子である。パワー半導体素子13g及びパワー半導体素子13hは、電源43の正極端子と負極端子との間に直列に接続されている。パワー半導体素子13g及びパワー半導体素子13hの接続部は、負荷インダクタンス41の一端子に接続されている。負荷インダクタンス41の他端子は電源43の負極端子に接続されている。
【0071】
より具体的には、パワー半導体素子13gのドレイン端子Dは、電源43の正極端子に接続され、パワー半導体素子13gのソース端子Sは、パワー半導体素子13hのドレイン端子D及び負荷インダクタンス41の一端子に接続されている。パワー半導体素子13hのソース端子Sは、電源43の負極端子及び負荷インダクタンス41の他端子に接続されている。
【0072】
また、測定回路4は、パワー半導体素子13gのスイッチング動作を制御するゲート駆動装置12gと、パワー半導体素子13hのスイッチング動作を制御するゲート駆動装置12hとを有している。ゲート駆動装置12gは、ゲート駆動回路121gと、ゲート駆動回路121g及びパワー半導体素子13gのゲート端子Gの間に接続されたゲート抵抗122gとを有している。ゲート駆動装置12hは、ゲート駆動回路121hと、ゲート駆動回路121h及びパワー半導体素子13hのゲート端子Gの間に接続されたゲート抵抗122hとを有している。
【0073】
測定回路4は、制御部44を有している。制御部44は、ゲート駆動装置12g,12hのそれぞれに駆動信号を出力するようになっている。ゲート駆動装置12g,12gは、制御部44から入力される駆動信号に基づいて、パワー半導体素子13g,13hのスイッチング動作を制御するための信号を生成する。
【0074】
測定回路4は、パワー半導体素子13g及びパワー半導体素子13hのそれぞれに流れるドレイン電流を検出する電流センサ34を有している。電流センサ34は、パワー半導体素子13g及びパワー半導体素子13hの接続点と負荷インダクタンス41の一端子とを接続する配線ケーブルに取り付けられている。電流センサ34で検出されたドレイン電流に基づく検出信号は制御部44に入力される。制御部44は、電流センサ34から入力される検出信号に基づくドレイン電流が所定の参照電流を超えるとパワー半導体素子13g及びパワー半導体素子13hのうちのオン状態のパワー半導体素子をオフ状態とする(すなわちドレイン電流Idを遮断する)ための駆動信号を当該パワー半導体素子に出力するようになっている。
【0075】
このように、測定回路4は、モータ負荷17に代えて負荷インダクタンス41を有しているものの、電力変換装置1のインバータ部10に設けられた各相のそれぞれと同様の動作(保護回路3a,3b,3c,3d,3e,3fの動作を除く)が可能に構成されている。
【0076】
ここで、パワー半導体素子13gのドレイン電流Idを遮断するための参照電流を変更した場合のパワー半導体素子13gのドレイン電流Idの電流波形及びドレインソース間電圧Vdsの電圧波形の測定結果を
図4に示す。その際、パワー半導体素子13hはオフ状態に維持されている。
図4中の上段には、パワー半導体素子13gのドレイン電流Idの電流波形が示され、
図4中の下段には、パワー半導体素子13gのドレインソース間電圧Vdsの電圧波形が示されている。
【0077】
図4に示すように、時刻t1において、パワー半導体素子13gがオフ状態からオン状態に切り替わる。これにより、
図4中の上段に示すように、パワー半導体素子13gのドレイン電流Idが流れ出す。また、パワー半導体素子13gがオン状態になることにより、パワー半導体素子13gのドレイン端子D及びソース端子Sが接続されるため、
図4中の下段に示すように、パワー半導体素子13gのドレインソース間電圧Vdsが0となる。
【0078】
時刻t1から時間が経過することにより、パワー半導体素子13gのドレイン電流Idが上昇する。パワー半導体素子13gのドレイン電流Idは、パワー半導体素子13gのゲート端子Gに印加される電圧(すなわちゲートソース間電圧Vgs)に応じて上昇する。また、時刻t1から時間が経過することにより、パワー半導体素子13gのオン抵抗に応じてパワー半導体素子13gのドレインソース間電圧Vdsが僅かに上昇し続ける。
【0079】
図4に示すように、パワー半導体素子13gのドレイン電流Idが上昇し続けている時刻t2,t3,t4,t5,t6,t7のそれぞれでパワー半導体素子13gに流れるドレイン電流Idを遮断すると、パワー半導体素子13gのソース端子Sとドレイン端子Dとの間にサージ電圧が印加される。このように、パワー半導体素子の過電流対策として、パワー半導体素子のドレイン電流を遮断する電流値を設けていたとしても、サージ電圧によって、パワー半導体素子のドレインソース間電圧が絶対最大定格電圧を超えてしまう可能性がある。つまり、パワー半導体素子のドレイン電流が絶対最大定格電流を超えないように遮断電流を設定しても、サージ電圧によってドレインソース間電圧が絶対最大定格電圧を超えてしまうという問題がある。
【0080】
ここで、測定回路4に設けられたパワー半導体素子13gのソース端子Sとドレイン端子Dとの間にサージ電圧が印加される原因について
図5を用いて説明する。
【0081】
パワー半導体素子13gをオン状態からオフ状態に移行させる際には、大電流を遮断することとなる。ところで、電源43とパワー半導体素子13gとを接続する配線ケーブルには、浮遊インダクタンス42が存在する(
図4参照)。このため、
図5に示すように、パワー半導体素子13gをオン状態からオフ状態に移行してドレイン電流Idを遮断すると、遮断時のドレイン電流Idの減少率(-di/dt)に応じて、浮遊インダクタンス42に電圧が誘起される。浮遊インダクタンス42に誘起される誘起電圧ΔVは、電源43が供給する電圧に重畳されてパワー半導体素子13gに印加されることになる。この誘起電圧は、浮遊インダクタンス42の値をLsとすれば、Ls×(di/dt)で与えられる。したがって、遮断されるドレイン電流Idの電流値が大きいと、パワー半導体素子13gのソース端子S及びドレイン端子Dとの間に高いサージ電圧が印加される。
【0082】
パワー半導体素子13gは、ゲート端子Gに印加された電圧(すなわちゲート端子Gとソース端子Sとの間に印加されるゲートソース間電圧Vgs)に応じてドレイン電流Idの電流値が決まる。このため、
図5に示すように、パワー半導体素子13gのドレイン電流Idは、ゲートソース間電圧Vgsによって決定される電流値で飽和する。
【0083】
パワー半導体素子13gのドレイン電流Idが飽和し始めると、負荷インダクタンス41の電流変化率が小さくなる。このため、負荷インダクタンス41に発生する誘導起電力が徐々に小さくなる。パワー半導体素子13gのドレイン電流Idが飽和すると、負荷インダクタンス41に供給される電流はほぼ一定になる。このため、負荷インダクタンス41には誘導起電力が発生しなくなるので、電源43が供給する電圧は、パワー半導体素子13gのソース端子S及びドレイン端子Dの間に印加される。これにより、
図4中の下段に示すように、パワー半導体素子13gのドレインソース間電圧Vdsが急激に増加する。
【0084】
ところで、パワー半導体素子やその他の半導体素子のドレインソース間電圧Vdsに対するドレイン電流Idの動作領域は、線形領域と飽和領域とに分けられる。
図5に示すように、線形領域は、ドレインソース間電圧Vdsにほぼ比例して増加する動作領域である。飽和領域は、ドレインソース間電圧Vdsが増加してもドレイン電流Idがほとんど増加しない動作領域である。
【0085】
図4に戻って、パワー半導体素子13gは、ドレイン電流Idが上昇し続けている時刻t1,t2,t3,t4,t5,t6,t7のそれぞれは、線形領域での動作である。一方、パワー半導体素子13gのドレイン電流Idがほぼ一定であり、かつパワー半導体素子13gのドレインソース間電圧Vdsが電源43の供給する電圧にほぼ等しくなると、パワー半導体素子13gは飽和領域での動作に移行する(時刻t8)。
【0086】
パワー半導体素子13gの動作が飽和領域に移行した後にドレイン電流Idが遮断されると、パワー半導体素子13gの電気的特性により、ドレイン電流Idの遮断スピードが緩やかになり、ドレイン電流Idの変化率(di/dt)が抑制される。その結果、
図4中の下段に示すように、パワー半導体素子13gが飽和領域で動作している時刻に相当する時刻t9及び時刻t10において、パワー半導体素子13gのソース端子S及びドレイン端子Dとの間に印加されるサージ電圧が抑制される。
【0087】
パワー半導体素子13gが線形領域で動作している時刻t6と、パワー半導体素子13gが飽和領域で動作している時刻t10とを比較すると、パワー半導体素子13gのドレイン電流Idは両時刻でほぼ同じ電流値である。しかしながら、パワー半導体素子13gのソース端子S及びドレイン端子Dの間に印加されるサージ電圧は、時刻t10の方が時刻t6よりもΔVsだけ低くなる。したがって、パワー半導体素子13gを線形領域においてターンオフ(オン状態からオフ状態に移行)させるよりも飽和領域においてターンオフさせる方がサージ電圧は抑制される。
【0088】
以上、
図4に示す測定回路4を用いてパワー半導体素子13gに印加されるサージ電圧について説明したが、パワー半導体素子13hに印加されるサージ電圧も同様の現象を生じる。また、
図1に示す電力変換装置1に設けられたパワー半導体素子13a,13b,13c,13d,13e,13fに印加されるサージ電圧も同様の現象を生じる。
【0089】
このため、本実施形態による保護回路3aは、パワー半導体素子13aのドレイン電流Idが所定の参照電流よりも大きくなり、かつパワー半導体素子13aのドレインソース間電圧Vdsが所定の参照電圧よりも高くなった場合に、ドレイン電流Idを遮断するようになっている。所定の参照電流は、例えばパワー半導体素子13aのゲート端子Gに印加される電圧値に基づいてパワー半導体素子13aが飽和領域で動作する飽和電流の電流値よりも所定量だけ小さい値に設定される。当該所定量は、例えばパワー半導体素子の電流特性の素子ばらつきや使用環境の変動による電気的特性の変動を考慮して設定される。また、所定の参照電圧は、例えばコンバータ部15及び平滑用コンデンサ16(
図1参照)によって生成される直流電圧の電圧値に設定される。これにより、保護回路3aは、パワー半導体素子13aが飽和領域での動作中にパワー半導体素子13aのドレイン電流Idを遮断できる。
【0090】
パワー半導体素子13a,13b,13c,13d,13e,13fは、互いに同一の電気的特性を有している。また、パワー半導体素子13a,13b,13c,13d,13e,13fをオフ状態からオン状態に移行させるためにゲート端子Gに印加される電圧は、同一の電圧値に設定されている。このため、保護回路3b,3c,3d,3e,3fのそれぞれは、保護回路3aと同じ参照電流及び参照電圧に設定されている。
【0091】
<半導体素子の保護回路の動作>
次に、本実施形態による半導体素子の保護回路の動作、すなわち半導体素子の保護方法について、保護回路3aを例にとって
図1から
図3を再び用いて説明する。なお、保護回路3b,3c,3d,3e,3fのそれぞれは、保護回路3aと同様に動作する。
【0092】
保護回路3aは、パワー半導体素子13aに流れるドレイン電流(主電流の一例)を検出し、パワー半導体素子13aのドレイン端子D及びソース端子Sの間(主端子間の一例)の電圧(すなわち、ドレインソース間電圧)を検出する。保護回路3aは、検出された主電流(すなわち、パワー半導体素子13aのドレイン電流)が所定の参照電流よりも大きく、かつ検出された主端子間の電圧(すなわち、パワー半導体素子13aのドレインソース間電圧)が所定の参照電圧よりも高い場合に、パワー半導体素子13aに流れる電流を遮断するための遮断信号を出力する。以下、保護回路3aによるパワー半導体素子13aの保護方法についてより具体的に説明する。
【0093】
図1に示すように、パワー半導体素子13aがオン状態になり、かつパワー半導体素子13bがオフ状態になると、パワー半導体素子13aに流れるドレイン電流Idが負荷電流としてモータ負荷17に供給される。これにより、
図2に示すように、電流センサ31の巻線311から出力電流が負荷抵抗312に流れる。当該出力電流は、例えば負荷抵抗312の電流検出部35aに接続された端子から電流検出部35aに接続されていない端子に向かって流れる。これにより、電流検出部35aには、正の検出電圧V31(>0)が入力される。
【0094】
電流検出部35aは、入力される検出電圧V31が正(>0)の場合、ダイオード354aが非導通状態になる。これにより、増幅器351aの出力端子が増幅器356aの非反転入力端子(+)から電気的に切り離される。このため、増幅器351aから出力される出力電圧は、電流検出部35aが出力する出力電圧V35aには何ら寄与しない。一方、入力される検出電圧V31が正(>0)の場合、増幅器356aの非反転入力端子(+)には、バイパス抵抗355aを介して検出電圧V31が入力される。増幅器356aは電圧フォロワ部として動作するので、増幅器356aから検出電圧V31と同電位の出力電圧が出力される。これにより、電流検出部35aから検出電圧V31と同電位の出力電圧V35aが出力される。
【0095】
詳細な説明は省略するが、パワー半導体素子13aがオフ状態かつパワー半導体素子13bがオン状態の場合、電流センサ31の巻線311には、パワー半導体素子13aがオン状態かつパワー半導体素子13bがオフ状態の場合と逆向きの電流が流れる。このため、電流検出部35aには、負の検出電圧V31(<0)が入力される。電流検出部35aは、入力される検出電圧V31が負(<0)の場合、ダイオード353aが非導通状態となり、ダイオード354aが導通状態となる。これにより、ダイオード354a、増幅器356a及び帰還抵抗357aによる負帰還ループが構成される。増幅器356aは、当該帰還ループに含まれているので、電流検出部35aの出力電圧V35aには影響しない。本実施形態では、入力抵抗352aと帰還抵抗357aとが同じ抵抗値に設定されている。このため、電流検出部35aの出力電圧V35aは、検出電圧V31とは絶対値が同一でありかつ正負が逆転した電圧(すなわち性の電圧)となる。したがって、パワー半導体素子13a及びパワー半導体素子13bのオン/オフ状態の組み合わせによらず、電流検出部35aの出力電圧V35aは正の電圧となる。
【0096】
出力電圧V35aは、電流判定部371aの非反転入力端子(+)に入力される。電流判定部371aは、非反転入力端子(+)に入力される出力電圧V35aが反転入力端子(-)に入力される第一比較電圧Vc1よりも低い場合には、電圧レベルが低レベルの出力電圧V371aを出力する。電力変換装置1が正常に動作している場合、出力電圧V35aは、第一比較電圧Vc1よりも低くなる。また、モータ負荷17やその他の箇所で短絡故障が発生したり、モータ負荷17やその他の箇所が何らかの原因で、パワー半導体素子13aに対して設計値よりも重い負荷になったりすると、パワー半導体素子13aのドレイン電流Idが上昇する。その結果、出力電圧V35aが第一比較電圧Vc1よりも高くなると、電流判定部371aは、電圧レベルが高レベルの出力電圧V371aを出力する。
【0097】
一方、パワー半導体素子13aがオン状態になり、かつパワー半導体素子13bがオフ状態になると、パワー半導体素子13aのソース端子Sとドレイン端子Dとは接続される。このため、電圧検出部36aに設けられた増幅器361aの非反転入力端子(+)及び反転入力端子(-)には、同電位の電圧が入力される。電圧検出部36aは、差動増幅回路として機能する。このため、電圧検出部36aの出力電圧V36aは0Vとなる。
【0098】
出力電圧V36aは、電圧判定部372aの非反転入力端子(+)に入力される。電圧判定部372aは、非反転入力端子(+)に入力される出力電圧V36aが反転入力端子(-)に入力される第二比較電圧Vc2よりも低い場合には、電圧レベルが低レベルの出力電圧V372aを出力する。電力変換装置1が正常に動作している場合、出力電圧V36aは、第二比較電圧Vc2よりも低くなる。また、モータ負荷17やその他の箇所で短絡故障が発生したり、モータ負荷17やその他の箇所が何らかの原因で、パワー半導体素子13aに対して設計値よりも重い負荷になったりすると、パワー半導体素子13aのドレイン電流Idが上昇する。その結果、パワー半導体素子13aが飽和領域での動作に移行して出力電圧V36aが第二比較電圧Vc2よりも高くなると、電圧判定部372aは、電圧レベルが高レベルの出力電圧V372aを出力する。
【0099】
ANDゲート373aは、出力電圧V371a及び出力電圧V372aの電圧レベルがいずれも高レベルになった場合に、電圧レベルが高レベルの遮断信号を出力する。第一比較電圧Vc1は、パワー半導体素子13aのドレイン電流Idの飽和電流よりも所定量だけ小さい値に設定されている。一方、第二比較電圧Vc2は、パワー半導体素子13aが飽和領域で動作可能な電圧(本実施形態では、コンバータ部15及び平滑用コンデンサ16によって生成される直流電圧の電圧値)に設定されている。このため、ANDゲート373aは、パワー半導体素子13aが飽和領域での動作に移行した後に、電圧レベルが高レベルの遮断信号をORゲート112aに出力する。一方、ANDゲート373aは、パワー半導体素子13aが飽和領域での動作に移行しない場合には、電圧レベルが高レベルの遮断信号をORゲート112aに出力しない。ANDゲート373aは、電圧レベルが低レベルの出力信号をORゲート112aに出力する。
【0100】
ORゲート112aには、ANDゲート373aが出力する出力信号の他に、動作信号生成部111aが出力する動作信号が入力される。ORゲート112aは、ANDゲート373aが遮断信号を出力するまでは、動作信号生成部111aが出力する動作信号と同じ電圧レベルの駆動信号をゲート駆動装置12aに出力する。これにより、制御部11は、パワー半導体素子13aが異常動作を開始して飽和領域での動作に移行するまでは、動作信号生成部111aが出力する動作信号と同じ駆動信号をゲート駆動装置12aに出力する。一方、制御部11は、パワー半導体素子13aが異常動作を開始して飽和領域での動作に移行すると、保護回路3aが出力する遮断信号と同一の駆動信号をゲート駆動装置12aに出力する。
【0101】
ゲート駆動装置12aは、入力される駆動信号に基づいてパワー半導体素子13aを制御する。このため、保護回路3aがパワー半導体素子13aの異常を検出して遮断信号を出力した場合には、ゲート駆動装置12aは、パワー半導体素子13aのドレイン電流Idを遮断するためにパワー半導体素子13aをオフ状態に移行させる。これにより、保護回路3aは、パワー半導体素子13aが飽和領域で動作しているタイミングでパワー半導体素子13aのドレイン電流Idを遮断できるので、パワー半導体素子13aに印加されるサージ電圧をパワー半導体素子13aのドレインソース間電圧Vdsの絶対最大定格の電圧以下(耐圧以下)に抑制できる。
【0102】
ところで、パワー半導体素子に印加されるサージ電圧を当該パワー半導体素子のドレインソース間電圧の絶対最大定格の電圧以下に抑制するために、ゲート駆動装置に設けられたゲート抵抗を高くする方法がある。ゲート抵抗を高くすることにより、パワー半導体素子のスイッチングスピード(-di/dt)が遅くなるため、浮遊インダクタンスによって誘起されるサージ電圧が小さくなる。しかしながら、パワー半導体素子のスイッチングスピードを遅くすると、パワー半導体素子の通常動作時のスイッチングスピードも遅くなるという問題が生じる。また、パワー半導体素子のスイッチングスピードを遅くすると、パワー半導体素子のスイッチング損失が増加する。その結果、パワー半導体素子の発熱が大きくなる。パワー半導体素子の発熱が大きくなると、パワー半導体素子を冷却するための冷却体を大型化する必要があるという問題が生じる。さらに、パワー半導体素子のスイッチング損失が増加すると、電力変換装置の変換効率が悪化してしまうという問題が生じる。
【0103】
これに対し、本実施形態による半導体素子の保護回路は、パワー半導体素子のスイッチングスピードを遅くしなくても、浮遊インダクタンスによって誘起されるサージ電圧を小さくできる。これにより、パワー半導体素子の過電流対策のために、パワー半導体素子の通常動作時のスイッチングスピードが遅くなってしまうことを防止できる。また、ゲート抵抗を用いたパワー半導体素子の過電流対策を適用した場合と比較して、パワー半導体素子のスイッチングスピードを速くできる。このため、パワー半導体素子のスイッチング損失が防止され、パワー半導体素子を冷却するための冷却体の大型化が防止される。さらに、パワー半導体素子のスイッチング損失が防止されるので、ゲート抵抗を用いたパワー半導体素子の過電流対策を適用した場合と比較して、電力変換装置の変換効率が向上される。
【0104】
以上説明したように、本実施形態による半導体素子の保護回路3aは、パワー半導体素子13aに流れるドレイン電流Idを検出する電流検出部35aと、パワー半導体素子13aのドレインソース間電圧Vdsを検出する電圧検出部36aと、電流検出部35aで検出された主電流(すなわち、ドレイン電流Id)が所定の参照電流よりも大きく、かつ電圧検出部36aで検出されたドレインソース間電圧Vdsが所定の参照電圧よりも高い場合に、パワー半導体素子13aに流れるドレイン電流Idを遮断するための遮断信号を生成する遮断信号生成部37aとを備えている。
【0105】
当該構成を備えた保護回路3aは、パワー半導体素子13aに印加されるサージ電圧を低減して、パワー半導体素子13aの破損を防止できる。
【0106】
また、保護回路3b,3c,3d,3e,3fは、保護回路3aと同様の構成を有し、同様の機能を発揮することができる。これにより、保護回路3b,3c,3d,3e,3fは、保護回路3aと同様の効果が得られる。
【0107】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例による半導体素子の保護回路、半導体素子の保護回路を備えた電力変換装置及び半導体素子の保護方法について
図7を用いて説明する。本変形例による半導体素子の保護回路に備えられた電流検出部は、半導体素子に内蔵された電流センス部に流れる電流を検出する点に特徴を有している。
【0108】
図7に示すように、本変形例におけるパワー半導体素子18は、電流センス部181を有している。電流センス部181には、パワー半導体素子18に流れるドレイン電流Idの数%(例えば1%)程度に相当する電流が流れるようになっている。電流センス部181と基準電位の領域(グランド)との間に負荷抵抗38を設けられている。電流センス部181から流れるドレイン電流Idの一部が負荷抵抗38に流れることによって、負荷抵抗38の両端には電圧が発生する。電流検出部(不図示)は、負荷抵抗38に発生する電圧に基づいて、パワー半導体素子18に流れるドレイン電流Idを検出できる。
【0109】
本変形例による電力変換装置は、上記第1実施形態による電力変換装置1に設けられたパワー半導体素子13a,13b,13c,13d,13e,13fに代えて、パワー半導体素子18及び負荷抵抗38を備える。また、パワー半導体素子18が電力変換装置1に設けられた場合、電流センス部181から流れる電流の方向は、各相において同一方向となる。このため、本変形例による保護回路の電流検出部は、負荷抵抗38に発生する電圧を全波整流する必要がない。このため、本変形例による保護回路の電流検出部は、全波整流回路を構成する増幅器、ダイオード、入力抵抗、バイパス抵抗及び帰還抵抗を有さなくてよい。すなわち、本変形例による保護回路の電流検出部は、
図2に示す増幅器351a、ダイオード353a,354a、入力抵抗352a、バイパス抵抗355a及び帰還抵抗357aに相当する各電子部品を有さなくてよい。本変形例による保護回路の電流検出部は、電圧フォロワ部を構成する増幅器(
図2に示す増幅器356aに相当)の非反転入力端子(+)に負荷抵抗38に発生する電圧が入力される構成を有していてもよい。また、本変形例による保護回路の電流検出部は、負荷抵抗38に発生する電圧を増幅する増幅回路を有し、当該増幅回路の出力電圧を電圧フォロワ部を構成する増幅器(
図2に示す増幅器356aに相当)の非反転入力端子(+)に入力する構成を有していてもよい。
【0110】
詳細な説明は省略するが、本変形例による半導体素子の保護方法は、電流センス部181から流れる電流に基づいてパワー半導体素子18に流れる電流を検出し、パワー半導体素子18の両端電圧を検出する。本変形例による保護回路は、検出された電流が所定の参照電流よりも大きく、かつ検出された両端電圧が所定の参照電圧よりも高い場合に、パワー半導体素子18に流れる電流を遮断するための遮断信号を出力する。
【0111】
本変形例による保護回路は、電流検出部の構成以外は、上記第1実施形態による保護回路3aと同様の構成を有していてもよい。これにより、本変形例による保護回路は、上記第1実施形態による保護回路3aと同様の効果が得られる。さらに、本変形例による保護回路を備えた電力変換装置は、上記第1実施形態による電力変換装置1と同様の効果が得られる。
【0112】
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
上記実施形態では、パワー半導体素子に流れる電流を検出する電流センサ31,32,33は、2つのパワー半導体素子の接続部とモータ負荷との間に設けられているが、本発明はこれに限られない。例えば、電流センサは、パワー半導体素子のドレイン端子の入力側又はソース端子の出力側に設けられていてもよい。
【0113】
上記実施形態による半導体素子の保護回路は、保護対象の半導体素子に流れる電流と両端電圧に基づいて遮断信号を生成するようになっているが、本発明はこれに限られない。例えば、半導体素子の保護回路は、保護対象の半導体素子の電流特性に基づいて遮断信号を生成してもよい。
図4中の上段に示すように、半導体素子の電流特性は、線形領域において上昇し、飽和領域では減少する傾向を示す。このため、半導体素子の保護回路は、半導体素子に流れる電流が上昇から減少に切り替わることに基づいて、遮断信号を生成してもよい。
【0114】
上記実施形態では、半導体素子の保護回路の保護対象としてパワー半導体素子を例にとって説明したが、半導体素子の保護回路の保護対象は、小信号用の半導体素子(例えばシリコン製の半導体素子)、あるいは絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)であってもよい。
【0115】
本発明の技術的範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の技術的範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0116】
1 電力変換装置
3a,3b,3c,3d,3e,3f 保護回路
4 測定回路
10 インバータ部
11,44 制御部
12a,12b,12c,12d,12e,12f ゲート駆動装置
13a,13b,13c,13d,13e,13f,13g,13h,18 パワー半導体素子
14 三相交流電源
15 コンバータ部
15a,15b,15c,15d,15e,15f,353a,354a ダイオード
16 平滑用コンデンサ
17 モータ負荷
31,32,33,34 電流センサ
35a,35b,35c,35d,35e,35f 電流検出部
36a,36b,36c,36d,36e,36f 電圧検出部
37a,37b,37c,37d,37e,37f 遮断信号生成部
38,312 負荷抵抗
41 負荷インダクタンス
42 浮遊インダクタンス
43 電源
111a 動作信号生成部
112a ORゲート
121a,121b,121c,121d,121e,121f ゲート駆動回路
122a,122b,122c,122d,122e,122f,122g,122h ゲート抵抗
181 電流センス部
311 巻線
351a、356,356a,361a,AP1a,AP2a 増幅器
352a,362a,363a,365a 入力抵抗
355a バイパス抵抗
357a,364a 帰還抵抗
371a 電流判定部
372a 電圧判定部
373a ANDゲート