(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】掃除ロボットの掃除機
(51)【国際特許分類】
A47L 9/28 20060101AFI20220531BHJP
A47L 9/04 20060101ALI20220531BHJP
A47L 11/24 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
A47L9/28 E
A47L9/04 A
A47L11/24
(21)【出願番号】P 2018168930
(22)【出願日】2018-09-10
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】中島 丘史
(72)【発明者】
【氏名】野村 敏彦
【審査官】関口 知寿
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-325814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/00- 9/32
A47L 11/00-11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行しながら床面の掃除を行う掃除ロボットの掃除機において、
支持部材と、
前記支持部材に取り付けられ、前記床面に接地されるブラシを有するブラシユニットと、
前記ブラシが前記掃除ロボットの上下方向に垂直な方向を向くように前記ブラシを跳ね上げる跳ね上げ機構とを備え
、
前記ブラシユニットは、前記支持部材に前記掃除ロボットの左右方向に延びるように取り付けられたピンに回動可能に支持され、前記ブラシを保持するブラシホルダを有し、
前記跳ね上げ機構は、前記ブラシホルダに固定され、前記ピンに対して回動可能なカムと、前記支持部材に前記左右方向に延びるように取り付けられ、前記カムをロックするためのバーとを有し、
前記カムには、前記ブラシが跳ね上げられていない状態において前記バーと係合する第1切欠部と、前記ブラシが跳ね上げられた状態において前記バーと係合する第2切欠部とが設けられている掃除ロボットの掃除機。
【請求項2】
前記第1切欠部は、前記カムの頂部に設けられ、
前記第2切欠部は、前記カムの側部に設けられている請求項
1記載の掃除ロボットの掃除機。
【請求項3】
前記支持部材には、左右2つの平行リンク機構が前記上下方向に揺動可能となるように固定されており、
前記平行リンク機構は、前記支持部材に支持された下リンク及び上リンクと、前記下リンクと前記上リンクとを接続し、前記上下方向に延びる接続リンクとを有し、
前記ピンは、前記2つの平行リンク機構における前記下リンクと前記接続リンクとの接続部同士を連結しており、
前記接続リンクには、前記上下方向に延びる長孔が設けられており、
前記バーは、前記長孔と係合した状態で前記接続リンクに前記上下方向に移動可能に支持されている請求項
2記載の掃除ロボットの掃除機。
【請求項4】
前記第1切欠部は、前記掃除ロボットの前後方向に延びている請求項
2または
3記載の掃除ロボットの掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掃除ロボットの掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における掃除ロボットの掃除機としては、例えば特許文献1に記載されている技術が知られている。特許文献1に記載の掃除ロボットは、前部の下面に吸込口が設けられた本体筐体と、本体筐体に設けられた1対の駆動輪と、本体筐体の前端部に設けられた前輪と、本体筐体の後端部に設けられた後輪と、吸込口内に配置された回転ブラシと、吸込口の側方に配置された1対のサイドブラシとを備えている。このような掃除ロボットの前進時に、回転ブラシにより床面上の塵埃が掻き上げられると共に、サイドブラシにより吸込口の側方の塵埃が吸込口に導かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば回転ブラシに付着したゴミが絡まった状態になると、回転ブラシにゴミが付着されたままとなる。そこで、定期的に回転ブラシのメンテナンスを行う必要がある。しかし、上記従来技術においては、回転ブラシは本体筐体の吸込口内に配置されているため、作業者が回転ブラシに対してアクセスしにくい。このため、回転ブラシを本体筐体から取り外す必要があり、回転ブラシのメンテナンスに手間がかかる。
【0005】
本発明の目的は、ブラシを取り外すことなく、ブラシのメンテナンスを容易に行うことができる掃除ロボットの掃除機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、走行しながら床面の掃除を行う掃除ロボットの掃除機において、支持部材と、支持部材に取り付けられ、床面に接地されるブラシを有するブラシユニットと、ブラシが掃除ロボットの上下方向に垂直な方向を向くようにブラシを跳ね上げる跳ね上げ機構とを備える。
【0007】
このような掃除ロボットの掃除機においては、ブラシのメンテナンスを行う際に、跳ね上げ機構によってブラシが掃除ロボットの上下方向に垂直な方向を向くようにブラシを跳ね上げることにより、作業者がブラシに対してアクセスしやすくなる。これにより、ブラシを取り外すことなく、ブラシのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0008】
ブラシユニットは、支持部材に掃除ロボットの左右方向に延びるように取り付けられたピンに回動可能に支持され、ブラシを保持するブラシホルダを有し、跳ね上げ機構は、ブラシホルダに固定され、ピンに対して回動可能なカムと、支持部材に左右方向に延びるように取り付けられ、カムをロックするためのバーとを有し、カムには、ブラシが跳ね上げられていない状態においてバーと係合する第1切欠部と、ブラシが跳ね上げられた状態においてバーと係合する第2切欠部とが設けられていてもよい。このような構成では、カム及びバーという簡単な構造で、ブラシが掃除ロボットの上下方向に垂直な方向を向くようにブラシを跳ね上げることができる。また、バーがカムの第2切欠部と係合することで、ブラシが跳ね上げられた状態にロックされる。従って、ブラシが掃除ロボットの上下方向に垂直な方向を向くように跳ね上げられた状態を保つことができる。
【0009】
第1切欠部は、カムの頂部に設けられ、第2切欠部は、カムの側部に設けられていてもよい。このような構成では、バーを持ち上げてカムの第1切欠部から抜き出した後、カムの第2切欠部が上方を向くようにカムをピンに対して回動させた状態で、バーを下げることにより、バーを第2切欠部と係合させることができる。従って、カムの形状を単純化しつつ、ブラシが掃除ロボットの上下方向に垂直な方向を向くように跳ね上げられた状態を保つことができる。
【0010】
支持部材には、左右2つの平行リンク機構が上下方向に揺動可能となるように固定されており、平行リンク機構は、支持部材に支持された下リンク及び上リンクと、下リンクと上リンクとを接続し、上下方向に延びる接続リンクとを有し、ピンは、2つの平行リンク機構における下リンクと接続リンクとの接続部同士を連結しており、接続リンクには、上下方向に延びる長孔が設けられており、バーは、長孔と係合した状態で接続リンクに上下方向に移動可能に支持されていてもよい。このような構成では、ブラシユニットは、支持部材に2つの平行リンク機構及びピンを介して取り付けられていることになる。このため、掃除ロボットの走行時に床面に段差等があっても、床面の段差等に追従してブラシが上下方向に移動するようになる。これにより、段差等がある床面にもブラシを接地させることができる。また、バーは、接続リンクの長孔と係合した状態で接続リンクに上下方向に移動可能に支持されている。従って、バーが接続リンクに支持された構造であっても、バーがカムの第1切欠部と係合した状態から、バーがカムの第2切欠部と係合した状態に容易に変更することができる。
【0011】
第1切欠部は、掃除ロボットの前後方向に延びていてもよい。このような構成では、ブラシが跳ね上げられていない状態において、バーがカムに対して相対的に前後方向に移動可能となる。従って、ピンを中心としてブラシが前後方向に揺動可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ブラシを取り外すことなく、ブラシのメンテナンスを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る掃除機を備えた掃除ロボットを示す側面図である。
【
図6】掃除機が前後方向に揺動する様子を示す側面図である。
【
図7】掃除機が左右方向に揺動する様子を示す正面図である。
【
図9】昇降ユニットにより回転ブラシが床面から上昇した状態を示す側面図である。
【
図10】昇降ユニットにより回転ブラシが床面から上昇した状態を示す正面図である。
【
図11】走行台車の車輪が床面の段差部に乗り上げた場合に、平行リンク機構が下がることで、回転ブラシが床面に接地した状態を示す側面図である。
【
図12】跳ね上げ機構により回転ブラシが前方を向くように跳ね上げられた状態を示す側面図である。
【
図13】跳ね上げ機構により回転ブラシが前方を向くように跳ね上げられた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る掃除機を備えた掃除ロボットを示す側面図である。
図1において、掃除ロボット1は、走行しながら床面Lの掃除を行う自走式のロボットである。掃除ロボット1は、走行台車2と、この走行台車2の前端に連結部材3を介して取り付けられた掃除機4とを備えている。走行台車2は、4つの全方向移動型の車輪2aを有し、前後左右の全方向に移動可能である。
【0016】
図2は、掃除機4の外観を示す斜視図である。
図3は、掃除機4の側面図である。
図4は、掃除機4の正面図である。なお、
図2~
図4では、
図1におけるブラシユニット9(後述)の一部の構成については、便宜上省略されている。
【0017】
図1~
図4において、本実施形態の掃除機4は、掃除ロボット1の前部に搭載され、床面Lを掃除する。掃除機4は、支持部材5と、左右2つの平行リンク機構6と、下連結ピン7と、上連結ピン8と、ブラシユニット9と、昇降ユニット10と、跳ね上げ機構40とを備えている。
【0018】
支持部材5は、走行台車2の連結部材3に固定されたベース板11と、このベース板11の左右両端部から前側に突出した2つの突出部12とを有している。突出部12は、掃除ロボット1の上下方向(Z方向)に延びている。
【0019】
平行リンク機構6は、支持部材5の左右両側に上下方向に揺動可能となるように固定されている。平行リンク機構6は、突出部12の内側面の下部に回動可能に支持された下リンク13と、突出部12の内側面の上部に回動可能に支持された上リンク14と、下リンク13と上リンク14とを接続する接続リンク15とを有している。下リンク13及び上リンク14は、掃除ロボット1の前後方向(X方向)に延びている。接続リンク15は、掃除ロボット1の上下方向に延びている。
【0020】
下リンク13と接続リンク15とは、互いに回動可能に接続されている。下リンク13と接続リンク15との接続部は、下ジョイント部16を構成している。上リンク14と接続リンク15とは、互いに回動可能に接続されている。上リンク14と接続リンク15との接続部は、上ジョイント部17を構成している。
【0021】
下連結ピン7は、2つの平行リンク機構6の下ジョイント部16同士を連結している。上連結ピン8は、下連結ピン7の上方に配置され、2つの平行リンク機構6の上ジョイント部17同士を連結している。下連結ピン7及び上連結ピン8は、掃除ロボット1の左右方向(Y方向)に延びている。
【0022】
ブラシユニット9は、支持部材5に2つの平行リンク機構6及び下連結ピン7を介して取り付けられている。ブラシユニット9は、床面Lに接地され、床面L上のゴミを掃き上げる円筒状の回転ブラシ18と、この回転ブラシ18を回転可能に保持する箱状のブラシホルダ19とを有している。回転ブラシ18及びブラシホルダ19は、掃除ロボット1の左右方向に延びている。
【0023】
ブラシホルダ19には、
図5に示されるように、回転ブラシ18が収容されるブラシ収容部19aが設けられている。また、ブラシホルダ19の左右一端側には、後述するベルト25を配置するための開口部19bが設けられている。なお、
図5は、ブラシユニット9の底面図である。ブラシホルダ19の左右両端側には、回転軸20を回転可能に支持する支持ブラケット21がそれぞれ取り付けられている。回転ブラシ18は、回転軸20に固定され、回転軸20と一体で回転する。回転軸20の開口部19b側の端部には、プーリー22が固定されている。
【0024】
図1に示されるように、ブラシホルダ19の上面の左右一方側には、ブラシモータ23が取り付けられている。ブラシモータ23の出力軸23aには、プーリー24が固定されている。プーリー22,24には、ベルト25が掛け渡されている。ブラシモータ23が回転駆動されると、ブラシモータ23の回転がプーリー24、ベルト25、プーリー22及び回転軸20を介して回転ブラシ18に伝達され、回転ブラシ18が回転する。
【0025】
また、ブラシユニット9は、下連結ピン7に回動可能に支持された側面視U字状のブロック26を有している。下連結ピン7は、ブロック26を貫通している。ブロック26には、前後方向に延びる支持ピン27が固定されている。そして、ブラシホルダ19は、支持ピン27に回動可能に支持されている。従って、ブラシホルダ19は、下連結ピン7にブロック26及び支持ピン27を介して回動可能に支持されている。
【0026】
昇降ユニット10は、平行リンク機構6を上下方向に揺動させることにより、ブラシユニット9を昇降させる。具体的には、昇降ユニット10は、上連結ピン8を昇降させることにより、平行リンク機構6を上下方向に揺動させて、ブラシユニット9を昇降させる。昇降ユニット10は、支持部材5のベース板11に取り付けられた昇降モータ28と、この昇降モータ28の出力軸28aに固定され、上連結ピン8を押し上げるL字型の昇降カム29とを有している。
【0027】
昇降カム29は、回転ブラシ18が床面Lに接地した状態において、上連結ピン8から下方に離間して配置されている。昇降カム29の先端には、昇降カム29が上連結ピン8を押し上げたときに上連結ピン8が昇降カム29から外れないようにするためのストッパ29aが設けられている。
【0028】
跳ね上げ機構40は、回転ブラシ18が真っ直ぐ前方を向くように回転ブラシ18を跳ね上げる。ここでいう前方は、掃除ロボット1の上下方向に垂直な方向に相当する。跳ね上げ機構40は、ブラシホルダ19の上面に固定され、下連結ピン7に対して回動可能な2つの跳ね上げカム41と、支持部材5に2つの平行リンク機構6を介して左右方向に延びるように取り付けられ、跳ね上げカム41をロックするためのロック用バー42とを有している。跳ね上げカム41は、ブロック26の左右両側に配置されている。下連結ピン7は、各跳ね上げカム41を貫通している。
【0029】
跳ね上げカム41の頂部には、回転ブラシ18が跳ね上げられていない状態においてロック用バー42と係合する切欠部43(第1切欠部)が設けられている。このため、回転ブラシ18が床面Lに接地した状態では、ロック用バー42は切欠部43と係合する。跳ね上げカム41の前側部には、回転ブラシ18が跳ね上げられた状態(
図12及び
図13参照)においてロック用バー42と係合する切欠部44(第2切欠部)が設けられている。跳ね上げカム41は、通常はロック用バー42が切欠部43と係合するような状態となっている。なお、跳ね上げカム41の頂部及び前側部は、跳ね上げカム41が通常状態にあるときの部位である。
【0030】
切欠部43は、跳ね上げカム41が通常状態にあるときに前後方向に延びるような断面弓状を呈している。切欠部44は、断面U字状を呈している。従って、切欠部43の前後方向の寸法は、切欠部44の上下方向の寸法よりも大きい。なお、切欠部43の前後方向の寸法及び切欠部44の上下方向の寸法は、跳ね上げカム41が通常状態にあるときの寸法である。下連結ピン7の中心軸と切欠部44の中心とを結ぶ線は、下連結ピン7の中心軸と切欠部43の中心とを結ぶ線に対して直交している。
【0031】
ロック用バー42は、2つの平行リンク機構6の接続リンク15に支持されている。接続リンク15には、上下方向(接続リンク15の延在方向)に延びる長孔45が設けられている。ロック用バー42は、長孔45と係合した状態で接続リンク15に上下方向に移動可能に支持されている。なお、図示はしないが、ロック用バー42の両端部には、ロック用バー42が接続リンク15から抜けることを防止するための抜け止めが設けられている。
【0032】
ロック用バー42には、作業者が手でロック用バー42を持ち上げるための取っ手46が設けられている。取っ手46は、ロック用バー42の左右方向の中央部において上側に立設されている。
【0033】
ブラシホルダ19は、上述したように、下連結ピン7にブロック26を介して回動可能に支持されている。また、跳ね上げカム41の切欠部43は前後方向に延びているため、ロック用バー42が切欠部43と係合した状態では、ロック用バー42は、跳ね上げカム41に対して相対的に前後方向に移動可能である。これにより、ブラシホルダ19は、
図6に示されるように、下連結ピン7(
図6では不図示)を中心にして前後方向に揺動可能である。
【0034】
ブラシホルダ19は、上述したように、支持ピン27に回動可能に支持されている。また、ロック用バー42は、接続リンク15の長孔45に沿って上下方向に移動可能である。これにより、ブラシホルダ19は、
図7に示されるように、支持ピン27を中心にして左右方向に揺動可能である。
【0035】
走行台車2には、
図8に示されるように、モードスイッチ30及びコントローラ31が搭載されている。モードスイッチ30は、掃除モードと移動モードとを切り換えるスイッチである。掃除モードは、掃除ロボット1が走行しながら床面Lの掃除を行うモードである。移動モードは、掃除ロボット1が床面Lの掃除を行わないで移動するだけのモードである。
【0036】
コントローラ31は、モードスイッチ30により選択されたモードに応じてブラシモータ23及び昇降モータ28を制御する。
【0037】
コントローラ31は、モードスイッチ30により掃除モードが選択されているときは、回転ブラシ18が床面Lに接地した状態(
図1、
図3及び
図4参照)に維持されるように昇降モータ28を制御すると共に、回転ブラシ18が回転するようにブラシモータ23を制御する。これにより、掃除機4により床面Lの掃除を行うことが可能となる。
【0038】
コントローラ31は、モードスイッチ30により掃除モードから移動モードに切り換えられたときは、回転ブラシ18の回転が停止するようにブラシモータ23を制御すると共に、昇降モータ28の出力軸28aに固定された昇降カム29が上連結ピン8を押し上げるように昇降モータ28を制御する。このとき、コントローラ31は、回転ブラシ18が床面Lに接地した状態から昇降モータ28を半回転させる。すると、
図9及び
図10に示されるように、昇降カム29が上連結ピン8を押し上げることで、上連結ピン8が上昇するため、平行リンク機構6が上昇する。従って、下連結ピン7に支持されたブラシユニット9が上昇するため、回転ブラシ18が床面Lから上方に離れるようになる。
【0039】
なお、例えば平行リンク機構6の下リンク13における支持部材5との回動部にカムを設けると共に、当該カムの回転を検出するリミットスイッチを設けることにより、昇降モータ28をフィードバック制御してもよい。
【0040】
以上のような掃除ロボット1において、モードスイッチ30により掃除モードが設定されているときは、掃除ロボット1の走行中に、掃除機4により床面Lが掃除される。このとき、回転ブラシ18によって掃き上げられた床面L上のゴミは、ホース(図示せず)に吸い取られる。
【0041】
ここで、回転ブラシ18は、平行リンク機構6により自由に上下動すると共に、前後方向及び左右方向に自由に揺動する。このため、床面Lに段差やうねりがある場合でも、回転ブラシ18が床面Lに確実に接地するようになる。
【0042】
例えば、
図11に示されるように、走行台車2の左右両側の車輪2aが床面Lの段差部Dに乗り上げた場合には、段差部Dに追従して平行リンク機構6が下がるため、回転ブラシ18が下がって床面Lに接地する。また、走行台車2の左右片側の車輪2aが床面Lの段差部Dに乗り上げた場合には、段差部Dに追従して平行リンク機構6が下がることで回転ブラシ18が下がると共に、段差部Dに追従して回転ブラシ18が左右方向に揺動するため、回転ブラシ18が全体的に床面Lに接地する。
【0043】
このように掃除ロボット1の走行時に床面Lに段差やうねりがあっても、床面Lの段差やうねりに追従して回転ブラシ18が上下方向に移動すると共に、床面Lの段差やうねりに追従して回転ブラシ18が前後方向及び左右方向に揺動する。これにより、段差やうねりがある床面Lに回転ブラシ18を確実に且つスムーズに接地させることができる。その結果、段差やうねりがある床面Lの掃除を安定して行うことが可能となる。
【0044】
一方、モードスイッチ30により移動モードが設定されているときは、
図9及び
図10に示されるように、昇降ユニット10によって平行リンク機構6を上昇させることで、ブラシユニット9が床面Lから上昇した状態に保たれる。これにより、掃除ロボット1が回転ブラシ18を引きずることなく走行することができる。その結果、掃除ロボット1が必要以上に速度を下げずに走行することが可能となると共に、回転ブラシ18の摩耗を抑えることが可能となる。
【0045】
回転ブラシ18のメンテナンスを実施するときは、モードスイッチ30により移動モードが設定される。このため、
図9及び
図10に示されるように、ブラシユニット9が床面Lから上昇した状態に保たれる。その状態から、作業者は、手動で跳ね上げ機構40を動かすことで、
図12及び
図13に示されるように、回転ブラシ18が前方を向くように回転ブラシ18を跳ね上げる。
【0046】
具体的には、作業者は、まずロック用バー42の取っ手46を手に持って、ロック用バー42を持ち上げる。すると、ロック用バー42が跳ね上げカム41の切欠部43から抜け出る。このとき、ロック用バー42は、接続リンク15の長孔45の長手方向に沿って上がる。
【0047】
そして、作業者は、ロック用バー42を持ち上げたまま、跳ね上げカム41の切欠部44が上方を向くように、下連結ピン7を中心として跳ね上げカム41を後側に90度だけ回動させる。これにより、回転ブラシ18が真っ直ぐ前方を向くようになる。そして、作業者は、ロック用バー42を下げて跳ね上げカム41の切欠部44に係合させる。これにより、跳ね上げカム41がロック用バー42により前後方向に対して拘束されるため、回転ブラシ18が真っ直ぐ前方を向いた状態にロックされる。そして、作業者は、手作業で回転ブラシ18に付着したゴミを取り除く。
【0048】
その後、回転ブラシ18のメンテナンスが終了すると、作業者は、ロック用バー42の取っ手46を手に持って、ロック用バー42を持ち上げる。すると、ロック用バー42が跳ね上げカム41の切欠部44から抜け出る。そして、作業者は、ロック用バー42を持ち上げたまま、跳ね上げカム41の切欠部43が上方を向くように、下連結ピン7を中心として跳ね上げカム41を前側に90度だけ回動させる。そして、作業者は、ロック用バー42を下げて跳ね上げカム41の切欠部43に係合させる。これにより、回転ブラシ18が床面Lに接地可能な状態に戻る。
【0049】
以上のように本実施形態にあっては、回転ブラシ18のメンテナンスを行う際に、跳ね上げ機構40によって回転ブラシ18が掃除ロボット1の前方を向くように回転ブラシ18を跳ね上げることにより、作業者が回転ブラシ18に対してアクセスしやすくなる。これにより、回転ブラシ18をブラシホルダ19から取り外すことなく、回転ブラシ18のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0050】
また、本実施形態では、跳ね上げカム41及びロック用バー42という簡単な構造で、回転ブラシ18が前方を向くように回転ブラシ18を跳ね上げることができる。また、ロック用バー42が跳ね上げカム41の切欠部44と係合することで、回転ブラシ18が跳ね上げられた状態にロックされる。従って、回転ブラシ18が前方を向くように跳ね上げられた状態を保つことができる。
【0051】
また、本実施形態では、ロック用バー42を持ち上げて跳ね上げカム41の切欠部43から抜き出した後、跳ね上げカム41の切欠部44が上方を向くように跳ね上げカム41を下連結ピン7に対して回動させた状態で、ロック用バー42を下げることにより、ロック用バー42を切欠部44と係合させることができる。従って、跳ね上げカム41の形状を単純化しつつ、回転ブラシ18が前方を向くように跳ね上げられた状態を保つことができる。
【0052】
また、本実施形態では、ブラシユニット9は、支持部材5に2つの平行リンク機構6及び下連結ピン7を介して支持されている。このため、掃除ロボット1の走行時に床面Lに段差やうねりがあっても、床面Lの段差やうねりに追従して回転ブラシ18が上下方向に移動するようになる。これにより、段差やうねりがある床面Lにも回転ブラシ18を接地させることができる。また、ロック用バー42は、接続リンク15の長孔45と係合した状態で接続リンク15に上下方向に移動可能に支持されている。従って、ロック用バー42が接続リンク15に支持された構造であっても、ロック用バー42が跳ね上げカム41の切欠部43と係合した状態から、ロック用バー42が跳ね上げカム41の切欠部44と係合した状態に容易に変更することができる。
【0053】
また、本実施形態では、跳ね上げカム41の切欠部43は掃除ロボット1の前後方向に延びているので、回転ブラシ18が跳ね上げられていない状態において、ロック用バー42が跳ね上げカム41に対して相対的に前後方向に移動可能となる。このため、下連結ピン7を中心として回転ブラシ18が前後方向に揺動可能となる。従って、床面Lに段差やうねりがあっても、床面Lの段差やうねりに追従して回転ブラシ18が前後方向に揺動するようになる。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、跳ね上げ機構40は、回転ブラシ18が真っ直ぐ前方を向くように回転ブラシ18を跳ね上げているが、特にその形態には限られず、跳ね上げカム41の切欠部44の位置を適宜変えることで、回転ブラシ18が斜め上前方または斜め下前方を向くように回転ブラシ18を跳ね上げてもよい。つまり、回転ブラシ18は、真っ直ぐ前方を向く状態よりも跳ね上がってもよいし、真っ直ぐ前方を向く状態よりも跳ね上がっていなくてもよい。このとき、回転ブラシ18の跳ね上げ角度としては、作業者が回転ブラシ18にアクセスしやすい角度であればよい。
【0055】
また、上記実施形態では、回転ブラシ18が跳ね上げられていない状態において、ロック用バー42が跳ね上げカム41に対して相対的に前後方向に移動可能となるように、跳ね上げカム41の切欠部43が前後方向に延びているが、特にその形態には限られず、回転ブラシ18を前後方向に揺動させる必要が無ければ、切欠部43が前後方向に延びていなくてもよく、切欠部44と同様に断面U字状の切欠部43であってもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、跳ね上げ機構40は、ブラシホルダ19に固定され、下連結ピン7に対して回動可能な跳ね上げカム41と、この跳ね上げカム41をロックするためのロック用バー42とを有しているが、回転ブラシ18が前方を向くように回転ブラシ18を跳ね上げるのであれば、跳ね上げ機構40としては、特に跳ね上げカム41とロック用バー42との組み合わせには限られない。
【0057】
また、上記実施形態では、昇降ユニット10によってブラシユニット9を昇降させた状態で、跳ね上げ機構40によって回転ブラシ18が前方を向くように回転ブラシ18を跳ね上げているが、特にその形態には限られず、回転ブラシ18が床面Lに接地した状態において、跳ね上げ機構40によって回転ブラシ18が前方を向くように回転ブラシ18を跳ね上げてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、ブラシユニット9を昇降させる昇降ユニット10が具備されているが、そのような昇降ユニット10は、特に無くてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、ブラシユニット9は、円筒状の回転ブラシ18を有しているが、床面L上のゴミを掃き上げるブラシとしては、特に回転ブラシ18には限られず、振動ブラシまたは揺動ブラシ等であってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、掃除機4は、4つの全方向移動型の車輪2aを有する走行台車2に取り付けられているが、本発明は、例えば一般的な車輪を有する車両に取り付けられた掃除機にも適用可能である。
【0061】
また、上記実施形態では、掃除機4は掃除ロボット1の前部に搭載されているが、本発明は、掃除ロボットの後部等に搭載された掃除機にも適用可能である。掃除機が掃除ロボットの後部に搭載されている場合には、跳ね上げ機構によってブラシが後方を向くように跳ね上げられる。
【符号の説明】
【0062】
1…掃除ロボット、4…掃除機、5…支持部材、6…平行リンク機構、7…下連結ピン(ピン)、9…ブラシユニット、13…下リンク、14…上リンク、15…接続リンク、16…下ジョイント部(接続部)、18…回転ブラシ(ブラシ)、19…ブラシホルダ、40…跳ね上げ機構、41…跳ね上げカム(カム)、42…ロック用バー(バー)、43…切欠部(第1切欠部)、44…切欠部(第2切欠部)、45…長孔、L…床面。